(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20240827BHJP
B65F 3/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65F3/00 L
B65F3/20 Z
(21)【出願番号】P 2020153632
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今岡 大策
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204371(JP,A)
【文献】特開2016-120860(JP,A)
【文献】特開2014-043995(JP,A)
【文献】特開2011-068461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00
B65F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータを駆動制御するインバータと、
前記電動モータの駆動により作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプにより作動油が供給されて駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータへの作動油の給排を切り換える油圧バルブと、
前記油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令を出力する操作スイッチと、
前記操作指令に基づいて前記油圧バルブの切換制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記操作指令が入力された時点で、前記インバータの起動準備を含む準備制御が行われているか否かを判定し、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記切換制御を行わない、作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記準備制御が開始された時点から所定時間が経過していない場合に、前記準備制御が行われていると判定する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定し、かつ前記準備制御が完了した時点で前記操作指令が入力されている場合、前記切換制御を行わない、請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定し、かつ前記準備制御が完了した時点で前記操作指令が入力されている場合、前記切換制御を行う、請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定した場合、外部に報知する報知指令を出力する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記準備制御が開始された時点から所定時間が経過している場合に、前記準備制御が完了したと判定する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、バッテリと、インバータと、電動モータと、油圧ポンプと、油圧シリンダとを備えた塵芥収集車が開示されている。この塵芥収集車の油圧シリンダを駆動させる際には、バッテリを電源としたインバータを制御して電動モータを駆動させ、その電動モータの回転を油圧ポンプに伝達して油圧ポンプを回転させる。そして、油圧回路の油圧バルブを切り換えて油圧回路内に作動油の流れを発生させることで、油圧シリンダが駆動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような塵芥収集車では、油圧シリンダを駆動させる前に、インバータの起動準備などの準備制御が数秒間行われる。この準備制御中は、電動モータは停止しているため、油圧ポンプから作動油が吐出されることはない。しかし、準備制御中に、油圧シリンダを駆動させる操作スイッチが操作された場合、油圧回路に油圧がかかっていない状態で油圧バルブが切り換わるため、油圧シリンダが自重等で動き出すおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、準備制御中に操作スイッチを操作しても、油圧アクチュエータが動き出すのを抑制することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、電動モータと、前記電動モータを駆動制御するインバータと、前記電動モータの駆動により作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより作動油が供給されて駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータへの作動油の給排を切り換える油圧バルブと、前記油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令を出力する操作スイッチと、前記操作指令に基づいて前記油圧バルブの切換制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記操作指令が入力された時点で、前記インバータの起動準備を含む準備制御が行われているか否かを判定し、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記切換制御を行わない、作業車両である。
【0007】
本発明によれば、インバータの起動準備を含む準備制御が行われているときに、操作スイッチにより油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令が出力されても、制御部は油圧バルブの切換制御を行うことはない。したがって、準備制御中に操作スイッチを操作しても、油圧アクチュエータが動き出すのを抑制することができる。
【0008】
(2)前記制御部は、前記準備制御が開始された時点から所定時間が経過していない場合に、前記準備制御が行われていると判定するのが好ましい。
この場合、制御部は、準備制御が行われているか否かの判定を容易に行うことができる。
【0009】
(3)前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定し、かつ前記準備制御が完了した時点で前記操作指令が入力されている場合、前記切換制御を行わないのが好ましい。
この場合、準備制御が完了した時点で、操作スイッチにより油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令が出力されていても、制御部は油圧バルブの切換制御を行うことはない。つまり、準備制御が完了した後に、操作スイッチにより油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令を再度出力しないと、制御部は油圧バルブの切換制御を行うことはない。これにより、作業者の意図しないタイミングで油圧アクチュエータが駆動するのを抑制することができる。
【0010】
(4)前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定し、かつ前記準備制御が完了した時点で前記操作指令が入力されている場合、前記切換制御を行ってもよい。
この場合、準備制御が完了したときに油圧アクチュエータを直ちに駆動させることができるので、塵芥の積込作業や排出作業を迅速に行うことができる。
【0011】
(5)前記制御部は、前記準備制御が行われていると判定した場合、前記準備制御が完了したか否かをさらに判定し、前記準備制御が完了したと判定した場合、外部に報知する報知指令を出力するのが好ましい。
この場合、出力された報知指令により外部に報知されることで、作業者等は準備制御が完了したことを容易に把握することができる。
【0012】
(6)前記制御部は、前記準備制御が開始された時点から所定時間が経過している場合に、前記準備制御が完了したと判定するのが好ましい。
この場合、制御部は、準備制御が完了したか否かの判定を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、準備制御中に操作スイッチを操作しても、油圧アクチュエータが動き出すのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業車両である塵芥収集車の側断面図である。
【
図3】塵芥排出時の動作順序を示す塵芥収集車の概略側面図である。
【
図5】運転室内のスイッチボックスの正面図である。
【
図8】制御部による制御処理の一例を示すタイムチャートである。
【
図9】制御部による制御処理の変形例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両の側断面図である。
図1において、本実施形態の作業車両は、運転室1aの後方の車体10上に塵芥収集機器(作業機器)を架装した塵芥収集車1からなる。車体10は、シャシフレーム11と、このシャシフレーム11上に載置して固定されたサブフレーム12とを有している。
【0016】
塵芥収集車1は、上記塵芥収集機器として、サブフレーム12上に搭載された塵芥収容箱2と、塵芥収容箱2の後方に連設して設けられた塵芥投入箱3とを備えている。塵芥収容箱2の後面には、開口部2aが形成されている。塵芥投入箱3の後部には、塵芥が投入される投入口3aが形成されており、この投入口3aを上下にスライドして開閉する蓋3bが設けられている。塵芥投入箱3の前方下部には、塵芥投入箱3に投入された塵芥を塵芥収容箱2に収容するための開口3dが設けられている。
【0017】
塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点3fを中心に回動可能であり、これによって塵芥収容箱2に対しての開閉動作が可能である。塵芥投入箱3は、
図1の実線で示すように塵芥収容箱2の開口部2aを閉鎖する閉鎖位置と、
図1の二点鎖線で示すように上方回動により上記開口部2aを開放して塵芥を排出することができる開放位置との間で回動するようになっている。
【0018】
次に、塵芥投入箱3内に設けられている積込装置Tについて説明する。塵芥投入箱3の左右の側壁3cには、押込シリンダ(油圧アクチュエータ)112のシリンダ側基端部112aが軸着されており、これにより押込シリンダ112は回動可能である。また、左右の側壁3cには、押込板108が支軸113を中心として回動可能に取り付けられている。押込板108は、図示のような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示省略)により接続して一体化したものである。
【0019】
押込板108の上端部と押込シリンダ112のピストンロッド先端部とは、ピン114により互いに接続されており、これにより、押込シリンダ112が伸長駆動すると、当該押込シリンダ112自身が図の反時計回り方向に回動しながら押込板108を
図1の時計回り方向に回動させ、
図1の実線で示す状態となる。また、その状態から押込シリンダ112が収縮駆動すると、当該押込シリンダ112自身が
図1の時計回り方向に回動しながら押込板108を
図1の反時計回り方向に回動させ、
図1の二点鎖線で示す状態となる。
【0020】
左右の側壁3cには、図示の側面形状で車幅方向に延びる回転板115が支軸116を中心として回転自在に取り付けられている。回転板115は、図の時計回り方向が通常回転方向である。塵芥投入箱3の内部底面3eは、回転板115の先端の回動軌跡に沿って円弧状に形成されている。
【0021】
上記のように構成された積込装置Tにおいては、塵芥投入箱3内に塵芥が投入されると、回転板115は塵芥をかき込みながら図示の位置(9時の位置)まで上昇する。そして、回転板115が図示の位置に来たとき、押込板108が二点鎖線の位置から実線の位置まで
図1の時計回り方向に回動して、回転板115の上に載っている塵芥を塵芥収容箱2に押し込む。その後、押込板108は、回転板115が12時の位置を超える頃から
図1の反時計回り方向に回動し始め、次の押込動作開始までには元の位置(二点鎖線の位置)に戻っている。このような周期的動作が、1サイクル又は連続サイクルで行われることで、塵芥収容箱2内に塵芥を積み込む積込作業を行うことができる。
【0022】
一方、塵芥収容箱2の下方にはダンプシリンダ(油圧アクチュエータ)119が設けられており、そのシリンダ側基端部119aはサブフレーム12に軸着されている。また、ピストンロッド側先端部119bは塵芥収容箱2の下面に軸着されている。塵芥収容箱2の後端下部は、支軸120を介してサブフレーム12上に上下回動可能に支持されており、ダンプシリンダ119を伸縮駆動させることにより、塵芥収容箱2を
図3(c)に示す傾動位置と
図3(a)に示す着床位置との間で上下回動可能である。したがって、塵芥収容箱2内に積み込まれた塵芥は、ダンプシリンダ119を伸長駆動させて塵芥収容箱2を車体10に対して上方回動(傾動)させることにより、自重により開口部2aから外部へ排出される。
【0023】
図2は、塵芥収集車1の背面図である。塵芥投入箱3の左右両端に配置された一対のスイングシリンダ(油圧アクチュエータ)20は、上端が塵芥収容箱2側に取り付けられ、下端が塵芥投入箱3に取り付けられている。このスイングシリンダ20を伸長駆動させると塵芥投入箱3が上方回動(開放)され(
図3(b)参照)、収縮駆動させると塵芥投入箱3が下方回動(閉鎖)される(
図3(a)参照)。
【0024】
以上の構成により、
図3(a)に示す走行状態(塵芥投入箱3が閉鎖位置にあり、かつ塵芥収容箱2が着床位置にある状態)から、塵芥収容箱2内に積み込まれた塵芥を外部に排出する排出作業を行う際には、まず、スイングシリンダ20を伸長駆動させて塵芥投入箱3を上方回動させる。これにより、塵芥投入箱3は、
図3(b)に示すように、開放位置に到達する。この状態から、ダンプシリンダ119を伸縮駆動させて塵芥収容箱2を着床位置から上方回動させる。これにより、塵芥収容箱2は、
図3(c)に示すように傾動位置まで上方回動した状態となり、塵芥収容箱2内に塵芥は自重により開口部2aから外部に排出される。
【0025】
[油圧回路]
図4は、上記押込シリンダ112、ダンプシリンダ119、スイングシリンダ20、及び油圧モータ(油圧アクチュエータ)117に関する油圧回路図である。この油圧回路は、オイルタンク21、油圧ポンプ22、第1油圧バルブ124、第2油圧バルブ125、第3油圧バルブ126、第4油圧バルブ127、一対の第5油圧バルブ128、テールゲートロックシリンダ(油圧アクチュエータ)31、その他圧力制御弁196~199、逆止弁129a~129g、フィルタ130等を図示のように接続して構成されている。
【0026】
油圧モータ117は、回転板115を回動させるものであり、押込シリンダ112と共に積込装置Tを駆動する。油圧ポンプ22には電動モータ23が接続されており、電動モータ23により油圧ポンプ22を駆動して作動油を吐出することにより、押込シリンダ112、ダンプシリンダ119、スイングシリンダ20、及び油圧モータ117をそれぞれ駆動させるようになっている。したがって、電動モータ23は、塵芥収集機器(作業機器)を駆動する作業用駆動部D2の一部を構成している。
【0027】
第1~第4油圧バルブ124~127は、それぞれ三位置の電磁弁からなる。一対の第5油圧バルブ128は、それぞれ二位置の電磁弁からなる。
第1油圧バルブ124は、押込シリンダ112への作動油の給排を切り換える。第1油圧バルブ124のソレノイド124sが励磁されると押込シリンダ112が収縮駆動し、ソレノイド124eが励磁されると押込シリンダ112が伸長駆動する。
【0028】
第2油圧バルブ125は、油圧モータ117への作動油の給排を切り換える。第2油圧バルブ125のソレノイド125nが励磁されると油圧モータ117が正転駆動して回転板115が
図1の時計回り方向に回動する。そして、第2油圧バルブ125のソレノイド125rが励磁されると油圧モータ117が逆転駆動して回転板115が
図1の反時計回り方向に回動する。
【0029】
第3油圧バルブ126は、ダンプシリンダ119への作動油の給排を切り換える。第3油圧バルブ126のソレノイド126sが励磁されるとダンプシリンダ119が収縮駆動し、ソレノイド126eが励磁されるとダンプシリンダ119が伸長駆動する。
第4油圧バルブ127は、テールゲートロックシリンダ31及びスイングシリンダ20への作動油の給排を切り換える。第5油圧バルブ128は、スイングシリンダ20への作動油の給排を切り換える。
給排の切り換えとは、各油圧アクチュエータ20,31,112,117,119と油圧ポンプ22及び/又はオイルタンク21との間で作動油が行き来できるように連通する供給状態と、作動油の行き来を遮断するようにする遮断状態との間で各油圧バルブ124~127を切り換えることをいう。各油圧バルブ124~127を供給状態とすれば、油圧ポンプ22が駆動し、若しくは各部品の自重によりアクチュエータ20,31,112,117,119が駆動し、作業機器(積込装置Tや塵芥収容箱2)が稼働する。
【0030】
塵芥投入箱3が閉鎖位置にあるとき(
図1の実線)、スイングシリンダ20は最も収縮した状態にあり、第4油圧バルブ127は中立位置にある。また、各第5油圧バルブ128は
図4に示された位置にある。この状態から第4油圧バルブ127のソレノイド127eが励磁されると、テールゲートロックシリンダ31がロック解除方向に駆動し、スイングシリンダ20が伸長駆動して塵芥投入箱3が上方回動する。
【0031】
第4油圧バルブ127のソレノイド127eが消磁され、かつ、各第5油圧バルブ128のソレノイド128eが励磁されると、塵芥投入箱3の自重により各スイングシリンダ20内の作動油が第5油圧バルブ128および第4油圧バルブ127を介してオイルタンク21に戻される。これにより、各スイングシリンダ20が収縮駆動して塵芥投入箱3が下方回動する。また、塵芥投入箱3が閉鎖位置に達した後、第4油圧バルブ127のソレノイド127sが励磁されると、テールゲートロックシリンダ31がロック方向に駆動し、塵芥投入箱3が閉鎖位置でロックされる。その後、ソレノイド127sは消磁されるが、逆止弁129gによりテールゲートロックシリンダ31のロック解除方向への駆動は規制されるので、塵芥投入箱3は閉鎖位置においてロックされた状態で維持される。
【0032】
[スイッチボックス]
図5は、運転室1a内に設けられているスイッチボックスSB1の正面図である。スイッチボックスSB1には、メインスイッチ34、排出スイッチ35、かき出しスイッチ37、メインランプ38、ロックランプ39、及び準備完了ランプ40が設けられている。
メインスイッチ34は、「積込」、「OFF」、及び「排出」のいずれかの位置を選択することができ、手を離しても選択した位置に保持されるタイプのスイッチである。排出スイッチ35は、「排出」、「OFF」、及び「戻し」のいずれかの位置を選択することができ、手を離すと「OFF」の位置に戻るタイプのスイッチである。
【0033】
メインスイッチ34を「積込」に切り替え操作すると、第1及び第2油圧バルブ124,125の作動が許容されることで押込シリンダ112及び油圧モータ117の駆動が許容され、第3及び第4油圧バルブ126,127の作動が規制されることでダンプシリンダ119及びスイングシリンダ20の駆動が規制される。これにより、後述するスイッチボックスSB2,SB3のスイッチ42~44の操作が可能となる。
一方、メインスイッチ34を「排出」に切り替え操作すると、第3及び第4油圧バルブ126,127の作動が許容されることでダンプシリンダ119及びスイングシリンダ20の駆動が許容され、第1及び第2油圧バルブ124,125の作動が規制されることで押込シリンダ112及び油圧モータ117の駆動が規制される。これにより、排出スイッチ35の切り替え操作が可能となる。その際、排出スイッチ35は、テールゲートロックシリンダ31、スイングシリンダ20、及びダンプシリンダ119をそれぞれ駆動させるための操作指令を出力する操作スイッチとして機能する。
【0034】
具体的には、メインスイッチ34を「排出」に切り替え操作した状態で、排出スイッチ35を「排出」に切り替え操作すると、第4油圧バルブ127のソレノイド127eが励磁された後、第3油圧バルブ126のソレノイド126eが励磁される。これにより、
図3(a)~(c)の順に示すように、テールゲートロックシリンダ31がロック解除方向に駆動し、スイングシリンダ20が伸長駆動して塵芥投入箱3が上方回動した後、ダンプシリンダ119が自動的に伸長駆動して塵芥収容箱2が傾動位置まで上方回動する。
【0035】
この状態から、排出スイッチ35を「戻し」に切り替え操作すると、第3油圧バルブ126のソレノイド126sが励磁された後、第4油圧バルブ127のソレノイド127eが消磁されるとともに第5油圧バルブ128が励磁される。これにより、
図3(c)~(a)の順に示すように、ダンプシリンダ119が収縮駆動して塵芥収容箱2が自重により着床位置まで下方回動した後、スイングシリンダ20が自動的に収縮駆動して塵芥投入箱3が下方回動する。そして、塵芥投入箱3が閉鎖位置まで下方回動すると、第4油圧バルブ127のソレノイド127sが自動的に励磁される。これにより、テールゲートロックシリンダ31がロック方向に駆動して塵芥収容箱2が閉鎖位置でロックされる。
【0036】
かき出しスイッチ37は、「自動」および「手動」のいずれか一方を選択することができ、手を離しても選択した位置に保持することができるタイプのスイッチである。かき出しスイッチ37を「自動」に選択すると、塵芥投入箱3を上方回動位置まで回動させると自動的に積込と同様の動作が行われ、塵芥投入箱3内に残留している塵芥を取り除くことができる。
【0037】
メインランプ38は、スイッチボックスSB1の各スイッチ操作が可能な状態のときに点灯するようになっている。ロックランプ39は、テールゲートロックシリンダ31がロック状態のときに点灯するようになっている。準備完了ランプ40は、後述する準備制御が完了したときに点灯するようになっている。
【0038】
図2において、塵芥投入箱3の左右両側壁3cの後部には、それぞれスイッチボックスSB2,SB3が設けられている。本実施形態では、スイッチボックスSB2は、図の左側の側壁3cに設けられており、スイッチボックスSB3は、図の右側の側壁3cに設けられている。スイッチボックスSB2,SB3の各スイッチは、上述のようにメインスイッチ34を「積込」に切り替え操作したときに操作可能となる。
【0039】
スイッチボックスSB2の側面には、押込板108及び回転板115の動作として「連続サイクル」又は「1サイクル」のどちらかの動作モードに選択するための動作選択スイッチ42が設けられている。スイッチボックスSB2の正面には、各動作モードで積込動作を開始させるための積込スイッチ43、連続サイクル動作を停止させるための停止スイッチ44がそれぞれ設けられている。なお、停止スイッチ44は、スイッチボックスSB3にも設けられている。
【0040】
積込スイッチ43は、押込シリンダ112及び油圧モータ117をそれぞれ駆動させるための操作指令を出力する操作スイッチとして機能する。積込スイッチ43をオン操作すると、第2油圧バルブ125のソレノイド125nが励磁された後、第1油圧バルブ124の各ソレノイド124s,124eが所定のタイミングで交互に繰り返し励磁される。これにより、
図1に示すように、油圧モータ117が正転駆動して回転板115が回動するとともに、押込シリンダ112が収縮駆動及び伸縮駆動を繰り返すことで押込板108が前後に回動する。
なお、その他のスイッチについては、緊急時にのみ用いるスイッチ等であり、詳細な説明は省略する。
【0041】
[バッテリ]
図1において、塵芥収集車1は、キャブバックスペースS(運転室1aと塵芥収容箱2との間)のサブフレーム12上に搭載されたバッテリ4を動力源として、車両走行用駆動部D1の電動モータ5(
図6参照)を駆動して走行するEV車である。このバッテリ4は、塵芥収集機器を駆動する上記電動モータ23(作業用駆動部D2)の動力源も兼ねている。本実施形態のバッテリ4は、サブフレーム12に対して着脱自在に取り付けられており、サブフレーム12から取り外して外部の充電装置(図示省略)に接続することで充電されるようになっている。
【0042】
[電気回路]
図6は、塵芥収集車1の電気回路図である。
図6において、バッテリ4(電圧値は例えば400V)には第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1が接続されている。第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1の各下流端には分岐回路50が接続されている。分岐回路50は、3個のプラス側接続端51p,52p,53pと、3個のマイナス側接続端51n,52n,53nとを備えている。
【0043】
プラス側接続端51p及びマイナス側接続端51nには、それぞれ第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1が接続されている。プラス側接続端51pは、バッテリ4から第1プラス側電路Lp1を介して電力が入力される入力端として機能する。他の2個のプラス側接続端52p,53pは、それぞれプラス側接続端51pから入力された電力を分岐して出力する出力端として機能する。
【0044】
プラス側接続端52p及びマイナス側接続端52nには、それぞれ第2プラス側電路Lp2及び第2マイナス側電路Ln2が接続されており、これらの電路Lp2,Ln2の各下流端には車両走行用駆動部D1が接続されている。
プラス側接続端53p及びマイナス側接続端53nには、それぞれ第3プラス側電路Lp3及び第3マイナス側電路Ln3が接続されており、これらの電路Lp3,Ln3の各下流端には作業用駆動部D2が接続されている。また、第3プラス側電路Lp3の途中のプラス側バイパス接続点P1と、第3マイナス側電路Ln3の途中のマイナス側バイパス接続点P2とは、バイパス電路L4により接続されている。
【0045】
以上により、分岐回路50は、バッテリ4から入力された電力を分岐して車両走行用駆動部D1と作業用駆動部D2とに出力する。これにより、車両走行用駆動部D1および作業用駆動部D2は、バッテリ4から電力供給を受けて駆動する。
【0046】
車両走行用駆動部D1は、上記電動モータ5と、この電動モータ5を駆動制御するインバータ6とを備えている。インバータ6は、制御部90に接続されており、当該制御部90によって作動制御される。インバータ6は、その内部に、第2プラス側電路Lp2及び第2マイナス側電路Ln2に接続されたコンデンサ6aを有している。コンデンサ6aは、交流の電動モータ5を安定して駆動させるために、電動モータ5に供給する電力を充電する。
【0047】
作業用駆動部D2は、上記電動モータ23と、この電動モータ23を駆動制御するインバータ24とを備えている。インバータ24は、制御部90に接続されており、当該制御部90によって作動制御される。インバータ24は、その内部に、第3プラス側電路Lp3及び第3マイナス側電路Ln3に接続されたコンデンサ24aを有している。コンデンサ24aは、交流の電動モータ23を安定して駆動させるために、電動モータ23に供給する電力を充電する。
【0048】
第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1の途中には、これらの電路Lp1,Ln1を開閉可能な車両走行用リレー回路60が設けられている。本実施形態の車両走行用リレー回路60は、第1リレー61、第2リレー62、第3リレー63、及び制限抵抗64を備えている。
【0049】
第1リレー61は、第1プラス側電路Lp1の途中に設けられている。制限抵抗64及び第2リレー62は、第1プラス側電路Lp1の途中において、第1リレー61に対して並列に接続され、かつ上流側(バッテリ4側。以下、同様)からこの順に互いに直列に接続されている。第1及び第2リレー61,62は、第1プラス側電路Lp1を開閉するようになっている。第3リレー63は第1マイナス側電路Ln1の途中に設けられ、当該電路Lp1を開閉するようになっている。第1~第3リレー61~63は、制御部90に接続されており、当該制御部90よって開閉制御される。
【0050】
[車両走行用リレー回路]
車両走行用リレー回路60では、運転室1aに設けられた車両のパワースイッチ45(
図7参照)をオン操作すると、制御部90により各リレー61~63を開閉してバッテリ4から車両走行用駆動部D1に電力を供給する第1給電制御が行われる。
具体的には、パワースイッチ45をオン操作すると、車両走行用リレー回路60は、各リレー61~63が全て開いている状態から、制御部90により、第3リレー63を閉じた後、第2リレー62を閉じるように制御される。
【0051】
そうすると、バッテリ4のプラス側から、第1プラス側電路Lp1(制限抵抗64,閉じている第2リレー62)、分岐回路50(プラス側接続端51p,52p)、第2プラス側電路Lp2、インバータ6(コンデンサ6a)、第2マイナス側電路Ln2、分岐回路50(マイナス側接続端52n,51n)、第1マイナス側電路Ln1(閉じている第3リレー63)を通って、バッテリ4に戻る電力経路が形成される。これにより、インバータ6のコンデンサ6aの充電が開始される。
【0052】
第2リレー62を閉じてからコンデンサ6aの充電が完了するまでに必要な時間が経過すると、次に、車両走行用リレー回路60は、制御部90により第1リレー61を閉じた後に第2リレー62を開けるように制御される。
【0053】
そうすると、バッテリ4のプラス側から、第1プラス側電路Lp1(閉じている第1リレー61)、分岐回路50(プラス側接続端51p,52p)、第2プラス側電路Lp2、インバータ6(コンデンサ6a)、第2マイナス側電路Ln2、分岐回路50(マイナス側接続端52n,51n)、第1マイナス側電路Ln1(閉じている第3リレー63)を通って、バッテリ4に戻る電力経路が形成される。これにより、第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1は閉じた状態となり、バッテリ4から車両走行用駆動部D1の電動モータ5に電力が安定して供給される。
【0054】
[作業用リレー回路]
第3プラス側電路Lp3及び第3マイナス側電路Ln3の途中には、これらの電路Lp3,Ln3を開閉可能な作業用リレー回路70が配置されている。本実施形態の作業用リレー回路70は、第1リレー71、第2リレー72、第3リレー73、第4リレー74、第5リレー75、ヒューズ76、及び制限抵抗77を備えている。
【0055】
ヒューズ76及び第1リレー71は、第3プラス側電路Lp3のプラス側バイパス接続点P1よりも上流側において、上流側からこの順に直列に接続されている。第2リレー72及び制限抵抗77は、第3プラス側電路Lp3のプラス側バイパス接続点P1よりも下流側(コンデンサ24a側。以下、同様)において、上流側からこの順に直列に接続されている。なお、第2リレー72及び制限抵抗77は、下流側からこの順に直列に接続されていてもよい。
【0056】
第3リレー73は、第3プラス側電路Lp3におけるプラス側バイパス接続点P1よりも下流側で、第1リレー71に対して直列に接続され、かつ第2リレー72及び制限抵抗77に対して並列に接続されている。これにより、プラス側バイパス接続点P1は、第2リレー72及び第3リレー73の上流側の並列接続点P3と、第1リレー71との間に位置している。第1~第3リレー71~73は、第3プラス側電路Lp3を開閉するようになっている。
【0057】
第4リレー74は、第3マイナス側電路Ln3のマイナス側バイパス接続点P2よりも上流側に設けられ、当該電路Ln3を開閉するようになっている。第5リレー75は、バイパス電路Lb10の途中に設けられ、当該電路Lb10を開閉するようになっている。第1~第5リレー71~75は、制御部90に接続されており、当該制御部90によって開閉制御される。
【0058】
作業用リレー回路70では、上記の第1給電制御が行われた後、つまり、バッテリ4から、これらの電路Lp1,Ln1及び分岐回路50を介して、第3プラス側電路Lp3及び第3マイナス側電路Ln3に電力を供給可能な状態になると、制御部90により各リレー71~75を開閉制御してバッテリ4から作業用駆動部D2に電力を供給する第2給電制御が行われる。
【0059】
具体的には、第1プラス側電路Lp1及び第1マイナス側電路Ln1を閉じた状態において、作業用リレー回路70は、各リレー71~75が全て開いている状態から、制御部90により、第4リレー74および第2リレー72をこの順に閉じた後、第1リレー71を閉じるように制御される。
【0060】
そうすると、バッテリ4のプラス側から、第1プラス側電路Lp1(閉じている第1リレー61)、分岐回路50(プラス側接続端51p,53p)、第3プラス側電路Lp3(ヒューズ76,閉じている第1リレー71および第2リレー72,制限抵抗77)、インバータ24(コンデンサ24a)、第3マイナス側電路Ln3(閉じている第4リレー74)、分岐回路50(マイナス側接続端53nおよび51n)、第1マイナス側電路Ln1(閉じている第3リレー63)を通って、バッテリ4に戻る電力経路が形成される。これにより、インバータ24のコンデンサ24aの充電が開始される。
【0061】
第1リレー71を閉じてからコンデンサ24aの充電が完了するまでに必要な時間が経過すると、次に、作業用リレー回路70は、制御部90により第3リレー73を閉じた後に第2リレー72を開けるように制御される。
【0062】
そうすると、バッテリ4のプラス側から、第1プラス側電路Lp1(閉じている第1リレー61)、分岐回路50(プラス側接続端51p,53p)、第3プラス側電路Lp3(ヒューズ76,閉じている第1リレー71および第3リレー73)、インバータ24(コンデンサ24a)、第3マイナス側電路Ln3(閉じている第4リレー74)、分岐回路50(マイナス側接続端53nおよび51n)、第1マイナス側電路Ln1(閉じている第三リレー63)を通って、バッテリ4に戻る電力経路が形成される。これにより、第3プラス側電路Lp3及び第3マイナス側電路Ln3が閉じた状態となり、バッテリ4から作業用駆動部D2の電動モータ23に電力が安定して供給される。
【0063】
[制御部]
図7は、塵芥収集車1のブロック図である。
図6及び
図7において、制御部90は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータである。制御部90は、上記のように、車両走行用駆動部D1のインバータ6及び作業用駆動部D2のインバータ24を作動制御するとともに、車両走行用リレー回路60の各リレー61~63及び作業用リレー回路70の各リレー71~75を開閉制御する。また、制御部90は、準備完了ランプ40及び車両のハザードランプ13の点灯制御を行う。
【0064】
制御部90は、積込スイッチ43及び排出スイッチ35等の各種スイッチの操作指令に基づいて、第1~第5油圧バルブ124~128の切換制御を行う。
具体的には、制御部90は、積込スイッチ43をオン操作したときの操作指令が入力されると、第2油圧バルブ125のソレノイド125n、及び第1油圧バルブ124の各ソレノイド124s,124eをそれぞれ励磁させる。
【0065】
制御部90は、排出スイッチ35を「排出」に切り替え操作したときの操作指令が入力されると、第4油圧バルブ127のソレノイド127e、及び第3油圧バルブ126のソレノイド126eをそれぞれ励磁させる。
制御部90は、排出スイッチ35を「戻し」に切り替え操作したときの操作指令が入力されると、第3油圧バルブ126のソレノイド126s及び第5油圧バルブ128をそれぞれ励磁させ、第4油圧バルブ127のソレノイド127eが消磁させる。
【0066】
制御部90は、パワースイッチ45がオン操作されると、電気回路における各種機器の故障チェックや起動準備を含む準備制御を行う。準備制御は、リレー61~63の故障をチェックするとともにインバータ6の起動準備を行う第1準備制御と、各リレー71~75の故障をチェックする第2準備制御と、インバータ24の起動準備を行う第3準備制御と、を含む。
【0067】
前記故障チェックは、例えば各リレー61~63,71~75を閉じたときに、当該リレーが配置されている電路が通電するか否か、及び各リレー61~63,71~75を開いたときに当該リレーが配置されている電路が遮断する(通電しない)か否かを、図示しない検知手段で検知することによって行われる。前記起動準備では、各インバータ6,24内の図示しない制御部が正常に動作するか否か等のチェックが行われる。
【0068】
本実施形態の制御部90は、第1準備制御、第2準備制御、及び第3準備制御の順に行う。なお、準備制御は、少なくとも第3準備制御を含んでいればよい。
【0069】
[準備制御]
図8は、制御部90による制御処理の一例を示すタイムチャートである。
図6及び
図8において、制御部90は、パワースイッチ45がオン操作されると、その操作信号が入力された時点t0で第1準備制御を開始する。これにより、リレー61~63の故障チェックやインバータ6の起動準備が行われる。
【0070】
制御部90は、前記時点t0から所定時間が経過した時点t1で第1準備制御が完了したと判定し、その完了時点t1から第1給電制御を開始する。その後、第1給電制御が完了してモータ5が始動可能な状態(アクセル操作に基づき車両走行用駆動部D1に電力が供給されると走行する状態)になると、制御部90は、第1給電制御の完了時点t2から、第2準備制御を開始する。これにより、リレー71~75の故障チェックが行われる。
【0071】
制御部90は、第2準備制御が完了すると、その完了時点t3から第2給電制御を開始する。制御部90は、第2給電制御においてコンデンサ24aがバッテリ4と同等の電圧まで上昇すると、その時点t4から第3準備制御を開始する。
なお、その後、第2給電制御が完了すると、作業用駆動部D2に電力が供給されるため、第2給電制御の完了時点t5から、積込スイッチ43又は排出スイッチ35(以下、操作スイッチ43,35ともいう)の操作により、第1~第5油圧バルブ124~128の切り換えが可能な状態となる。
【0072】
制御部90は、前記時点t0から所定時間が経過した時点t7で第3準備制御(準備制御)が完了したと判定する。そして、制御部90は、前記時点t7から所定のマージン時間が経過した時点t8で、外部である準備完了ランプ40及びハザードランプ13に報知指令を出力し、準備完了ランプ40を点灯させるとともに、ハザードランプ13を点滅させる。準備完了ランプ40の点灯により、運転室1a内の作業者等に準備制御が完了したことを報知することができる。また、ハザードランプ13の点滅により、車外で塵芥の積込作業等を行う作業者等に報知することができる。なお、制御部90は、上記ランプ40,13以外に、ブザー等の他の報知手段に報知指令を出力してもよい。
【0073】
[油圧バルブの切換制御]
図4及び
図8において、制御部90は、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されたとき、その入力時点で準備制御が行われている場合、第1~第5油圧バルブ124~128のうち、前記操作指令の切り換え対象となる油圧バルブ(以下、対象油圧バルブという)の切換制御を行わない。
【0074】
図8の制御例では、操作スイッチ43,35の操作指令が制御部90に2回入力された場合を示している。1回目の操作指令は、第3準備制御が行われている途中の時点t6から、第3準備制御が完了してから所定のマージン時間が経過した時点t8よりも後の時点t9までの間で入力されている。2回目の操作指令は、前記時点t9よりも後の時点t10で入力されている。以下、
図8の制御例に基づいて、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されたときに制御部90が実行する処理を説明する。
【0075】
制御部90は、操作スイッチ43,35の1回目の操作指令が入力された時点t6において、準備制御が行われているか否かを判定する第1判定を行う。この第1判定は、準備制御が開始された時点t1から所定時間(t8-t1)が経過しているか否かによって判定される。制御部90は、所定時間(t8-t1)が経過している場合には準備制御が行われていないと判定し、所定時間(t8-t1)が経過していない場合には準備制御が行われていると判定する。本制御例では、所定時間(t8-t1)が経過していないので、制御部90は準備制御が行われていると判定する。
【0076】
制御部90は、第1判定に基づいて対象油圧バルブの切換制御を行うか否かを決定する。制御部90は、準備制御が行われていないと判定した場合には対象油圧バルブの切換制御を行い、準備制御が行われていると判定した場合には対象油圧バルブの切換制御を行わない。本制御例では、制御部90は、準備制御が行われていると判定したので、対象油圧バルブの切換制御を行わない。したがって、操作スイッチ43,35の1回目の操作指令が入力された時点t6において、対象油圧バルブは切り換わらず、インバータ24も作動しない。
【0077】
制御部90は、第1判定において準備制御が行われていると判定した場合、準備制御が完了したか否かを判定する第2判定をさらに行う。この第2判定は、第1判定と同様に、準備制御が開始された時点t1から所定時間(t8-t1)が経過しているか否かによって判定される。制御部90は、所定時間(t8-t1)が経過している場合には準備制御が完了したと判定し、所定時間(t8-t1)が経過していない場合には準備制御は完了していないと判定する。
【0078】
制御部90は、第2判定において準備制御が完了していないと判定した場合、準備制御が完了したと判定するまで、一定時間毎に第2判定を繰り返し行う。制御部90は、第2判定において準備制御が完了したと判定し、かつ準備制御の完了時点で操作スイッチ43,35の操作指令が入力されている場合、対象油圧バルブの切換制御を行わない。
【0079】
本制御例では、制御部90は、時点t8において所定時間(t8-t1)が経過するので、準備制御が完了したと判定する。そして、制御部90は、準備制御の完了時点t8で操作スイッチ43,35の操作指令が入力されているので、対象油圧バルブの切換制御を行わない。したがって、準備制御の完了時点t8で、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されている場合にも、対象油圧バルブは切り換わらず、インバータ24も作動しない。
【0080】
なお、第2判定において、準備制御の完了時点t8で入力されている操作指令は、第1判定を行った時点t6の操作指令と同じであるか否かは問わない。このため、準備制御の完了時点t8で入力されている操作指令が、時点t6の操作指令と異なる操作指令(2回目以降の操作指令)であっても、対象油圧バルブは切り換わらず、インバータ24も作動しない。
【0081】
制御部90は、操作スイッチ43,35の2回目の操作指令が入力された時点t10において、前記第1判定を行う。本制御例では、時点t10において所定時間(t8-t1)は経過しているので、制御部90は第1判定において準備制御が行われていないと判定する。そして、制御部90は、第1判定に基づいて対象油圧バルブの切換制御を行うか否かを決定する。本制御例では、制御部90は、準備制御が行われていないと判定したので、対象油圧バルブの切換制御を行う。これにより、操作スイッチ43,35の2回目の操作指令が入力された時点t10において、対象油圧バルブが切り換わり、インバータ24が作動する。
【0082】
以上のように構成された本実施形態の塵芥収集車1によれば、インバータ6,24の起動準備等を含む準備制御が行われているときに、操作スイッチ43,35により油圧アクチュエータ20,31,112,117,119を駆動させるための操作指令が出力されても、制御部90は対象油圧バルブの切換制御を行うことはない。したがって、準備制御中に操作スイッチ43,35を操作しても、油圧アクチュエータ20,31,112,117,119が自重等で動き出す(例えば押込シリンダ112が
図1の実線位置から二点鎖線位置まで自重で収縮する)のを抑制することができる。
【0083】
また、制御部90は、第1判定において、準備制御が開始された時点t6から所定時間(t8-t1)が経過していない場合に準備制御が行われていると判定するので、準備制御が行われているか否かの第1判定を容易に行うことができる。
【0084】
また、制御部90は、第2判定において、準備制御が開始された時点t6から所定時間が経過している場合に準備制御が完了したと判定するので、準備制御が完了したか否かの第2判定を容易に行うことができる。
【0085】
また、準備制御が完了した時点で、操作スイッチ43,35により油圧アクチュエータ20,31,112,117,119を駆動させるための操作指令が出力されていても(準備制御の完了時点の前後に跨って操作指令が継続して出力されていても)、制御部90は対象油圧バルブの切換制御を行うことはない。つまり、準備制御が完了した後に、操作スイッチ43,35により油圧アクチュエータ20,31,112,117,119を駆動させるための操作指令を再度出力しないと(制御部90が操作スイッチ43,35をオフからオン操作した瞬間のエッジを検出しないと)、制御部90は対象油圧バルブの切換制御を行うことはない。これにより、作業者の意図しないタイミングで対象油圧バルブが駆動するのを抑制することができる。
【0086】
また、制御部90は、準備制御が完了したと判定した場合、準備完了ランプ40及びハザードランプ13に報知する報知指令を出力する。これにより、準備完了ランプ40が点灯するとともに、ハザードランプ13が点滅するので、作業者等は準備制御が完了したことを容易に把握することができる。その結果、作業者等は、準備制御が完了した後、操作スイッチ43,35を直ちに操作することで、塵芥の積込作業や排出作業を迅速に行うことができる。
【0087】
[変形例]
図9は、制御部90による制御処理の変形例を示すタイムチャートである。
図6及び
図9において、本変形例では、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されたときの第1~第5油圧バルブ124~128の切換制御が、上記実施形態の制御例(
図8)と異なる。
図9では、操作スイッチ43,35の操作指令が制御部90に1回だけ入力された場合を示している。その操作指令は、上記実施形態の1回目の操作指令と同様に、第3準備制御が行われている途中の時点t6から、第3準備制御が完了してから所定のマージン時間が経過した時点t8よりも後の時点t9までの間で入力されている。以下、
図9の制御例に基づいて、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されたときに制御部90が実行する処理を説明する。
【0088】
制御部90は、操作スイッチ43,35の操作指令が入力された時点t6において、準備制御が行われているか否かを判定する第1判定を行う。第1判定の判定方法は上記実施形態と同様である。本変形例では、準備制御が開始された時点t1から所定時間(t8-t1)が経過していないので、制御部90は準備制御が行われていると判定する。
【0089】
制御部90は、第1判定に基づいて対象油圧バルブの切換制御を行うか否かを決定する。その決定方法は上記実施形態と同様である。本変形例では、制御部90は、準備制御が行われていると判定したので、対象油圧バルブの切換制御を行わない。したがって、操作スイッチ43,35の操作指令が入力された時点t6において、対象油圧バルブは切り換わらず、インバータ24も作動しない。
【0090】
制御部90は、第1判定において準備制御が行われていると判定した場合、準備制御が完了したか否かを判定する第2判定をさらに行う。第2判定の判定方法は上記実施形態と同様である。制御部90は、第2判定において準備制御が完了していないと判定した場合、準備制御が完了したと判定するまで、一定時間毎に第2判定を繰り返し行う。制御部90は、第2判定において準備制御が完了したと判定し、かつ準備制御の完了時点で操作スイッチ43,35の操作指令が入力されている場合、対象油圧バルブの切換制御を行う。
【0091】
本変形例では、制御部90は、時点t8において所定時間(t8-t1)が経過するので、準備制御が完了したと判定する。そして、制御部90は、準備制御の完了時点t8で操作スイッチ43,35の操作指令が入力されているので、対象油圧バルブの切換制御を行う。したがって、準備制御の完了時点t8で、操作スイッチ43,35の操作指令が入力されている場合、対象油圧バルブが切り換わり、インバータ24が作動する。
【0092】
なお、第2判定において、準備制御の完了時点t8で入力されている操作指令は、第1判定を行った時点t6の操作指令と同じであるか否かは問わない。このため、準備制御の完了時点t8で入力されている操作指令が、時点t6の操作指令と異なる操作指令(2回目以降の操作指令)であっても、対象油圧バルブは切り換わり、インバータ24が作動する。
【0093】
以上、本変形例によれば、制御部90は、第2判定により準備制御が完了したと判定し、かつ準備制御が完了した時点で操作スイッチ43,35からの操作指令が入力されている場合、対象油圧バルブの切換制御を行う。これにより、準備制御が完了したときに対象油圧バルブを直ちに駆動させることができるので、塵芥の積込作業や排出作業を迅速に行うことができる。
【0094】
[その他]
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0095】
例えば、制御部90は、準備制御中において、少なくとも油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令に基づく油圧バルブの切換制御を行わなければよい。つまり、制御部90は、準備制御中において、油圧アクチュエータの駆動を伴わない操作指令(例えば、停止スイッチ44による押込シリンダ112と油圧モータ117の各駆動を停止させる操作指令)に基づく油圧バルブの切換制御は行ってもよい。
【0096】
本実施形態の制御部90は、第1判定及び第2判定を、準備制御が開始された時点から所定時間が経過しているか否かにより判定しているが、例えば第3準備制御においてインバータ24から起動準備が完了した信号を受けているか否か等の他の方法により判定してもよい。
【0097】
本実施形態の積込装置Tは、押込板108と回転板115との協働により塵芥を積み込む回転板式であるが、押込板のみで塵芥を積み込むプレス式であってもよい。また、本実施形態の塵芥収集車1は、塵芥収容箱2をダンプさせることにより塵芥を外部へ排出しているが、塵芥収容箱内において前後移動可能に設けられた排出板により塵芥を外部へ排出するものであってもよい。
【0098】
また、塵芥収集車1は、パワースイッチ45以外に、バッテリ4から作業用駆動部D2に電力供給する専用の作業用電源スイッチを備えていてもよい。その場合、パワースイッチ45、作業用電源スイッチ、メインスイッチ34を順次操作した後に、操作スイッチ43,35の操作が行われる。このように手順で各スイッチが操作される場合において、準備制御を開始するタイミングは、以下のタイミングA~Cのいずれであってもよい。
タイミングA:パワースイッチ45がオン操作された時点(本実施形態と同様)
タイミングB:作業用電源スイッチがオン操作された時点
タイミングC:メインスイッチ34を「積込」又は「排出」に切り替え操作した時点
なお、タイミングCについては、作用用電源スイッチを備えていない場合にも適用することができる。
【0099】
制御部90は、本実施形態のタイミングAと同様に、タイミングB又はタイミングCで開始された準備制御が行われているときに、操作スイッチ43,35から油圧アクチュエータ20,31,112,117,119を駆動させる操作指令が入力されても、対象油圧バルブの切換制御を行わないようにすればよい。
【0100】
さらに、塵芥収集車1は、備制御を開始する専用の準備スイッチを備えていてもよい。その場合、準備スイッチをオン操作する(準備制御を開始する)タイミングは、以下のタイミングD~Fのいずれであってもよい。
タイミングD:パワースイッチ45がオン操作された後、作業用電源スイッチがオン操作されるまでの間
タイミングE:作業用電源スイッチがオン操作された後、メインスイッチ34が「積込」又は「排出」に切り替え操作されるまでの間
タイミングF:メインスイッチ34が「積込」又は「排出」に切り替え操作された後、操作スイッチ43,35が操作されるまでの間
なお、タイミングFについては、作用用電源スイッチを備えていない場合にも適用することができる。
【0101】
制御部90は、タイミングD~Fのいずれかで開始された準備制御が行われているときに、操作スイッチ43,35から油圧アクチュエータ20,31,112,117,119を駆動させる操作指令が入力されても、対象油圧バルブの切換制御を行わないようにすればよい。
【0102】
油圧アクチュエータを駆動させるための操作指令を出力する操作スイッチは、積込スイッチ43及び排出スイッチ35に限定されるものではなく、メインスイッチ34を前記操作スイッチとしてもよい。その場合、上記のタイミングA、B、D、Eのいずれかで開始された準備制御が行われているときに、メインスイッチ34の切り替え操作により「積込」又は「排出」の操作指令が出力されても、制御部90は、その操作指令により対象油圧バルブの作動を許容しなければよい。これにより、対象油圧バルブの切換制御が行われることはない。
【0103】
本実施形態の塵芥収集車1は、車両走行用の動力源と油圧アクチュエータ20,31,112,117,119の動力源とを兼ねたバッテリ4を備えているが、これら両動力源それぞれの専用のバッテリを備えていてもよい。
【0104】
また、塵芥収集車1は、エンジンを動力源とする車両とし、油圧アクチュエータ20,31,112,117,119専用の動力源であるバッテリを備えていてもよい。また、塵芥収集車1は、エンジンとバッテリとを動力源とする車両(いわゆるハイブリッド車両)とし、当該バッテリを油圧アクチュエータ20,31,112,117,119の動力源として用いるように構成してもよい。
また、本発明は、塵芥収集車以外に、他の油圧アクチュエータを備えた作業車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 塵芥収集車(作業車両)
20 スイングシリンダ(油圧アクチュエータ)
22 油圧ポンプ
23 電動モータ
24 インバータ
31 テールゲートロックシリンダ(油圧アクチュエータ)
35 排出スイッチ(操作スイッチ)
43 積込スイッチ(操作スイッチ)
90 制御部
112 押込シリンダ(油圧アクチュエータ)
117 油圧モータ(油圧アクチュエータ)
119 ダンプシリンダ(油圧アクチュエータ)
124 第1油圧バルブ(油圧バルブ)
125 第2油圧バルブ(油圧バルブ)
126 第3油圧バルブ(油圧バルブ)
127 第4油圧バルブ(油圧バルブ)
128 第5油圧バルブ(油圧バルブ)