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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20240827BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G06F9/50 150D
G06F1/20 B
G06F1/20 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020169065
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061210
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】月元 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 美紀
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】二渡 直樹
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126485(JP,A)
【文献】特開2018-005494(JP,A)
【文献】特開2012-104576(JP,A)
【文献】特開2006-285317(JP,A)
【文献】特開2019-021116(JP,A)
【文献】特開2020-029970(JP,A)
【文献】特開2013-073402(JP,A)
【文献】特開2010-002148(JP,A)
【文献】特開2015-001366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報処理ユニットと、
前記複数の情報処理ユニットのいずれかを冷却するための複数の電動ファンと、
前記複数の電動ファンそれぞれの消費電力を検出する消費電力検出部と、
前記複数の情報処理ユニットのうちいずれか情報処理ユニットにおいて実行されている処理の少なくとも一部を他の情報処理ユニットにて処理させる負荷移動処理が実行可能な処理制御部と
前記複数の電動ファンそれぞれについての消費電力であって、目標とする消費電力を目標ファン電力としたとき、当該目標ファン電力を決定する目標ファン電力決定部とを備え、
前記目標ファン電力決定部は、
前記複数の情報処理ユニットのうち決定対象となる情報処理ユニットにおいて実行されている処理の量、及び前記複数の電動ファンのうち当該情報処理ユニットを冷却する電動ファンの消費電力との関係を記憶する記憶部、並びに
前記電動ファンの消費電力が予め決められた値以下となる消費電力であって、前記処理の量に対する前記消費電力の変化量が予め決められた値以下となる消費電力を、前記記憶部により記憶された内容を利用して検出し、当該検出された消費電力を前記目標ファン電力とする決定部を有し、
前記処理制御部は、前記複数の電動ファンそれぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力となるように、前記負荷移動処理を実行する情報処理システム。
【請求項2】
前記複数の情報処理ユニットのうち移動対象となる処理が実行されている情報処理ユニットを移動元ユニットとし、当該処理の移動先を移動先ユニットとしたとき、
前記処理制御部は、
前記複数の情報処理ユニットのうち、前記目標ファン電力より大きな消費電力にて稼働している前記電動ファンに係る情報処理ユニットを前記移動元ユニットとし、
前記複数の情報処理ユニットのうち、前記目標ファン電力にて稼働している前記電動ファンに係る情報処理ユニットを前記移動先ユニットとする
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記処理制御部は、前記複数の情報処理ユニットのうち、前記目標ファン電力にて稼働している前記電動ファンに係る情報処理ユニットであって、実行されている処理の量が最も小さい情報処理ユニットを前記移動先ユニットとする請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記目標ファン電力は、前記電動ファンの下限回転数時の消費電力に相当する電力、又は当該電力を含む所定範囲の電力である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記処理制御部が複数設けられ、かつ、当該処理制御部は、前記複数の情報処理ユニットのうち少なくとも1つの情報処理ユニットに係る前記負荷移動処理が実行可能であり、
さらに、前記処理制御部は、当該処理制御部に係る前記情報処理ユニットを冷却する前記電動ファンの消費電力が前記目標ファン電力を越えているときに、前記負荷移動処理を実行可能とする請求項1に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の情報処理ユニットを備える情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、サーバの吸い込み温度に応じて、負荷を集約・分散させることによって、サーバの消費電力を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-71679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の情報処理ユニットを備える情報処理システムにおいて、当該情報システムの消費電力を抑制可能な情報処理システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
情報処理システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、複数の情報処理ユニット(2A)と、複数の情報処理ユニット(2A)のいずれかを冷却するための複数の電動ファン(2B)と、複数の電動ファン(2B)それぞれの消費電力を検出する消費電力検出部(S1)と、複数の情報処理ユニット(2A)それぞれにおいて実行されている処理の少なくとも一部を他の情報処理ユニット(2A)にて処理させる負荷移動処理が実行可能な処理制御部とを備え、複数の電動ファン(2B)それぞれについての消費電力であって、目標とする消費電力を目標ファン電力(Wf)としたとき、処理制御部は、複数の電動ファン(2B)それぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力(Wf)となるように、負荷移動処理を実行することである。これにより、当該情報処理システムの消費電力が抑制され得る。
【0006】
すなわち、各情報処理ユニット(2A)は、半導体の電子素子にて構成されているのに対して、電動ファン(2B)は電動機等の電子素子に比べて消費電力が大きい電気機器にて構成されている。このため、情報処理システムの消費電力を抑制するには、電動ファン(2B)の消費電力を抑制することが望ましい。
【0007】
情報処理ユニット(2A)で実行されている情報処理(以下、負荷ともいう。)が小さくなれば、当該情報処理ユニット(2A)で発生する熱量が低下するので、複数の電動ファン(2B)のうちいずれかの電動ファン(2B)の送風量、つまり当該電動ファン(2B)の消費電力が小さくなり得る。
【0008】
したがって、複数の電動ファン(2B)それぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力(Wf)となるように、各情報処理ユニット(2A)の負荷が移動された場合、情報処理システムの消費電力が抑制され得る。
【0009】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る情報処理システムを示す図である。
図2】ファンの消費電力と情報処理ユニットの情報処理量との関係を示すグラフである。
図3】第1実施形態に係る情報処理システムの負荷移動処理を示すフローチャートである。
図4】ファンの消費電力と情報処理ユニットの情報処理量との関係を示すグラフである。
図5】ファンの消費電力と情報処理ユニットの情報処理量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0012】
少なくとも符号が付されて説明された構成要件は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要件は2以上設けられていてもよい。本開示に示された情報処理システムは、少なくとも符号が付されて説明された構成要件を備える。
【0013】
(第1実施形態)
<1.情報システムの構成>
本実施形態に係る情報処理システム1は、図1に示されるように、複数の情報通信技術用機器(以下、ICT装置という。)2、及び制御装置3等を少なくとも備える。
【0014】
<ICT装置>
各ICT装置2は、情報処理ユニット2A及び電動式のファン2B等を少なくとも有する。つまり情報処理システム1は、複数の情報処理ユニット2A及び複数のファン2B等を備える。
【0015】
各情報処理ユニット2Aは、CPUやGPU等の情報処理を実行する演算ユニットである。各ファン2Bは、少なくとも情報処理ユニット2Aに冷却用空気を供給する。なお、ファン2Bは、各ICT装置2に少なくとも1つ設けられている。
【0016】
各ファン2Bは、以下の(a)~(c)等に応じて送風量が増大するように制御される。
【0017】
(a)情報処理ユニット2Aによる情報処理量の上昇
(b)当該ファン2Bにより送風される冷却空気の温度上昇
(c)情報処理ユニット2Aの温度上昇
なお、本実施形態におけるファン2Bの制御は、当該ファン2Bが設けられたICT装置2のファン制御部(図示せず。)により実行される。つまり、各ICT装置2は、当該ICT装置2が有する情報処理ユニット2Aの温度を所定温度以下に維持すべく、当該ICT装置2が有するファン2Bを制御する。
【0018】
このため、各ファン2Bは、他のICT装置2に設けられたファン2Bと連携制御されることなく、当該ファン2Bが設けられたICT装置2の状態のみに基づいて制御される。換言すれば、各ファン2Bは、他のファン2Bに対して独立的に制御されている。
【0019】
各ファン2Bには、消費電力検出部S1が設けられている。各消費電力検出部S1は、ファン2Bの消費電力を検出するためのセンサである。各消費電力検出部S1は、例えば、ファン2Bのモータ(図示せず。)に印加される電圧を検出する電圧、又は当該モータへの通電電流を検出する電流等を利用して電力を検出する。
【0020】
<制御装置>
制御装置3は、各情報処理ユニット2Aにて実行されている情報処理量等を監視・制御する。具体的には、制御装置3には、消費電力検出部S1の検出信号が入力されている。そして、制御装置3は当該検出信号を利用して、負荷移動処理が実行可能である。
【0021】
負荷移動処理とは、複数の情報処理ユニット2Aのうちいずれか情報処理ユニット2Aにおいて実行されている情報処理の少なくとも一部を他の情報処理ユニット2Aにて処理させる制御処理である。
【0022】
本実施形態に係る制御装置3は、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されている。そして、負荷移動処理を実行する処理制御部は、制御装置3がプログラムを実行することにより実現される。なお、当該プログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0023】
<2.処理制御部の作動等>
処理制御部は、複数のファン2Bそれぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力Wfとなるように、負荷移動処理を実行する。目標ファン電力Wfとは、ファン2Bそれぞれについての消費電力であって、負荷移動処理を実行する際の目標となる消費電力をいう。
【0024】
目標ファン電力Wfは、例えば、目標ファン電力決定部により決定される。目標ファン電力決定部は、記憶部Me及び決定部等を有して構成されている。なお、当該決定部は、制御装置3のCPUにてプログラムが実行されることにより実現される。
【0025】
そして、記憶部Meには、図2に示される情報処理量とファン2Bの消費電力との関係が記憶されている。なお、図2は、複数の情報処理ユニット2Aのうち決定対象となる情報処理ユニット2Aにおいて実行されている情報処理の量、及び複数のファン2Bのうち当該情報処理ユニット2Aを冷却するファン2Bの消費電力との関係を示す。
【0026】
決定部は、図2に示された関係を利用して目標ファン電力Wfを決定する。具体的には、決定部は、ファン2Bの消費電力が予め決められた値(例えば、図2の閾値)以下となる消費電力であって、情報処理の量に対する消費電力の変化量が予め決められた値以下となる消費電力を、目標ファン電力Wfとする。
【0027】
なお、本実施形態係る各ファン2Bは、同一仕様である。つまり、各ファン2Bは、同一条件で稼働したときの消費電力は同じとなる。したがって、本実施形態では、複数のファン2Bそれぞれの目標ファン電力Wfは同じである。
【0028】
そして、本実施形態に係る目標ファン電力Wfは、ファン2Bの下限回転数時の消費電力に相当する電力、又は当該電力を含む所定範囲の電力である。ファン2Bの下限回転数とは、ファン2Bを駆動する電動モータ及び当該電動モータを駆動する駆動部等の仕様によって決まる値である。
【0029】
同様に、図2に示される消費電力と情報処理量との関係もICT装置2の仕様等によって決まるものである。このため、消費電力と情報処理量との関係は、試験等により予め決定する必要がある。
【0030】
<負荷移動処理の詳細>
以下において、移動元ユニットとは、複数の情報処理ユニット2Aのうち移動対象となる情報処理が実行されている情報処理ユニットをいう。移動先ユニットとは、当該情報処理の移動先の情報処理ユニットをいう。
【0031】
そして、処理制御部は、複数の情報処理ユニット2Aのうち、目標ファン電力Wfより大きな消費電力にて稼働しているファン2Bが冷却を担当している情報処理ユニットを移動元ユニットとする。
【0032】
さらに、処理制御部は、複数の情報処理ユニット2Aのうち、目標ファン電力Wfにて稼働しているファン2Bが冷却を担当する情報処理ユニットであって、当該情報処理ユニットで実行されている情報処理の量が最も小さい情報処理ユニットを移動先ユニットとする。
【0033】
つまり、目標ファン電力Wfより大きな消費電力となっているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aで実行されている情報処理の少なくとも一部が、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aに移動される。
【0034】
なお、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aが1つの場合には、当該情報処理ユニット2Aが移動先ユニットとなる。移動先ユニットに該当する情報処理ユニット2Aが複数の場合には、移動させる情報処理は、それら複数の情報処理ユニット2Aに分配されて移動される。
【0035】
また、移動元ユニットで実行されている情報処理が大きく、これらの情報処理を移動先ユニットに移動させると、当該移動先ユニットを冷却するファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfを越える場合には、以下の移動処理が実行される。
【0036】
すなわち、移動先ユニットを冷却するファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfを越える可能性が発生すると、処理制御部は、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち移動先ユニットと異なる情報処理ユニット2Aに情報処理を移動させる。
【0037】
つまり、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aが例えば、2つの場合、最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aを第1移動先ユニットとし、次に、処理量が小さい情報処理ユニット2Aを第2移動先ユニットとする。
【0038】
この場合、処理制御部は、先ず、第1移動先ユニットに情報処理を移動させる。そして、第1移動先ユニットを冷却するファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfを越える可能性が発生すると、処理制御部は、第2移動先ユニットに情報処理を移動させる。
【0039】
ファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfを越える可能性があるか否かの判断は、処理制御部が実行する。当該判断手法は、例えば、以下の(a)又は(b)等である。
【0040】
(a)移動させる情報処理の量に対するファン2Bの消費電力の増大割合等に基づいて予測する判断手法。
【0041】
(b)第1移動先ユニットの情報処理量が、図2に示される変曲点Pに基づいて決定される量になった否に基づく判断手法。なお、変曲点Pは、ファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfより大きくなり始める情報処理量である。
【0042】
<負荷移動処理フローの一例>
図3は、負荷移動処理制御の一例を示すフローチャートである。当該制御は、制御装置3で実行される。なお、本実施形態では、各情報処理ユニット2A及び各ファン2Bは同一仕様であるので、全てのファン2Bにおいて目標ファン電力Wfが同一値となる。
【0043】
このため、本実施形態では、予め決定された目標ファン電力Wfが記憶部Meに既に記憶されている。制御装置3は、当該記憶された目標ファン電力Wfを用いて負荷移動処理制御を実行する。
【0044】
そして、当該制御が起動されると、制御装置3は、各ファン2Bの消費電力、及び各情報処理ユニット2Aの情報処理量を検出する(S1、S5)。
【0045】
次に、制御装置3は、移動元ユニットに該当する情報処理ユニット2Aが存在するか否かを判断する(S10)。
【0046】
制御装置3は、移動元ユニットが存在しないと判断した場合には(S10:NO)、S1を再び実行する。制御装置3は、移動元ユニットが存在すると判断した場合には(S10:YES)、移動先ユニットを決定した後(S15)、移動元ユニットで実行されていた情報処理の一部を当該移動先ユニットに移動させる(S20)。
【0047】
<3.本実施形態に係る情報処理システムの特徴>
各情報処理ユニット2Aは、半導体の電子素子にて構成されているのに対して、ファン2Bは電動機等の電子素子に比べて消費電力が大きい電気機器にて構成されている。このため、情報処理システム1の消費電力を抑制するには、ファン2Bの消費電力を抑制することが望ましい。
【0048】
情報処理ユニット2Aで実行されている情報処理、つまり負荷が小さくなれば、当該情報処理ユニット2Aで発生する熱量が低下するので、複数のファン2Bのうちいずれかのファン2Bの送風量、つまり当該ファン2Bの消費電力が小さくなり得る。
【0049】
したがって、複数の電動ファン2Bそれぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力Wfとなるように、各情報処理ユニット2Aの負荷が移動された場合、情報処理システム1の消費電力が抑制され得る。
【0050】
なお、本実施形態に係る目標ファン電力Wfは、ファン2Bの下限回転数時の消費電力に相当する電力、又は当該電力を含む所定範囲の電力である。このため、目標ファン電力Wfは、実質的にファン2Bの消費電力の下限値に相当する。
【0051】
したがって、複数の電動ファン2Bそれぞれの消費電力がそれぞれの目標ファン電力Wfとなるように、各情報処理ユニット2Aの負荷が移動された場合、情報処理システム1の消費電力は、下限値に近づいていく。
【0052】
本実施形態に係る情報処理システム1では、目標ファン電力Wfより大きな消費電力となっているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aで実行されている情報処理の少なくとも一部が、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aに移動される。
【0053】
つまり、図2に示されるように、変曲点Pより情報処理量が小さい領域(図2の範囲A)では、ファン2Bが下限回転数にて稼働している状態となるため、情報処理量が増大しても消費電力が増大せず、ファン2Bの消費電力は目標ファン電力Wfのままである。
【0054】
したがって、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aに情報処理が移動されて、当該情報処理ユニット2Aの情報処理量が増大しても、上記の範囲A内であれば、ファン2Bの消費電力は増大しない。
【0055】
具体的には、図2において、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aの情報処理量bである場合、当該情報処理ユニット2Aは、情報処理量が最大Bだけ増大しても消費電力が増大しない。以下、当該Bを「余裕量」という。
【0056】
そして、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aは、余裕量が最も大きい情報処理ユニット2Aに該当する。
【0057】
つまり、余裕量が最も大きい情報処理ユニット2Aは、情報処理量が増大してもファン2Bの消費電力が増大する可能性が低い。このため、本実施形態では、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aが移動先ユニットとして選択される。
【0058】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る情報処理システム1では、制御装置3が全ての情報処理ユニット2A及びファン2Bを集中的に管理する構成であった。これに対して、本実施形態に係る情報処理システムは、各ICT装置2に処理制御部が設けられ、かつ、それら処理制御部は互いに通信可能に構成されている。
【0059】
すなわち、本実施形態では、処理制御部が複数設けられ、かつ、当該処理制御部は、複数の情報処理ユニット2Aのうち、少なくとも当該処理制御部が設けられたICT装置2の情報処理ユニット2Aに係る負荷移動処理を実行する。
【0060】
具体的には、処理制御部は、当該処理制御部が設けられたICT装置2の情報処理ユニット2Aを冷却するファン2Bの消費電力が目標ファン電力Wfを越えているか否かを判断する。
【0061】
そして、処理制御部は、消費電力が目標ファン電力Wfを越えていると判断したときに、当該処理制御部が設けられたICT装置2の情報処理ユニット2Aの情報処理を、その情報処理ユニット2A以外の情報処理ユニット2Aに移動させる。
【0062】
なお、「その情報処理ユニット2A以外の情報処理ユニット2A」とは、消費電力が目標ファン電力Wf又は目標ファン電力Wf未満であると判断された情報処理ユニット2Aである。
【0063】
つまり、処理制御部は、消費電力が目標ファン電力Wfを越えていると判断したときには、他の処理制御部に対して「消費電力が目標ファン電力Wf以下であるか否か」を問い合わせる。
【0064】
そして、処理制御部は、「消費電力が目標ファン電力Wf以下」である旨の返信を発信した処理制御部が設けられたICT装置2の情報処理ユニット2Aに情報処理を移動させる。
【0065】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0066】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ファン2Bの消費電力が予め決められた値(例えば、図2の閾値)以下となる消費電力であって、情報処理の量に対する消費電力の変化量が予め決められた値以下となる消費電力を、目標ファン電力Wfとした。
【0067】
具体的には、上述の実施形態に係る目標ファン電力Wfは、ファン2Bの下限回転数時の消費電力に相当する電力、又は当該電力を含む所定範囲の電力であった。そして、図2に示される消費電力と情報処理量との関係は、ICT装置2の仕様等によって決まるものであるため、消費電力と情報処理量との関係は、試験等により予め決定する必要があった。
【0068】
しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、消費電力と情報処理量との関係は、例えば、図4又は図5に示されるように、ファン2Bの回転数が下限回転数となっても、消費電力が一定とならない場合もある。
【0069】
当該場合において、最小消費電力(図4及び図5の左端における消費電力)より大きな消費電力が目標ファン電力Wfとして選択された場合には、目標ファン電力Wfより小さい消費電力となっている情報処理ユニットが移動先ユニットとして選択される。つまり、当該場合においては、単純に、情報処理ユニットで実行されている情報処理の量が最も小さい情報処理ユニットが移動先ユニットとして選択される。
【0070】
上述の実施形態に係る目標ファン電力Wfは、ファン2Bの下限回転数時の消費電力に相当する電力、又は当該電力を含む所定範囲の電力であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0071】
すなわち、当該開示は、例えば、空調機とICT装置2の合計消費電力が最小になるときのファン2Bの消費電力を目標ファン電力Wfとしてもよい。なお、空調機は、ICT装置2が設置されたサーバ室内の室内温度を予め決められた温度に維持するための空調装置である。
【0072】
上述の実施形態に係る目標ファン電力Wfは、試験等により予め決定されるものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当初は経験的に基づく値とし、その後、運用しながら学習又は自動設定等により適宜変更されていく構成であってもよい。
【0073】
上述の実施形態では、目標ファン電力Wfを決定する目標ファン電力決定部を備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、予め決められた目標ファン電力Wfを制御装置3(処理制御部)に記憶させ、当該記憶された目標ファン電力Wfを用いて負荷移動処理を実行する構成であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、複数の目標ファン電力Wfそれぞれが同一の値であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、少なくとも2つの値が同一の場合、又は各目標ファン電力Wfが異なる値の場合等、いずれであってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、ファン2Bの個数は、情報処理ユニット2Aと同数であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ファン2Bの個数が情報処理ユニット2Aの個数より多い構成、又は情報処理ユニット2Aの個数より少ない構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態に係るファン2Bは、ICT装置2に設けられたファンであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ICT装置2外に設けられたファンをファン2Bとしてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bに係る情報処理ユニット2Aのうち最も処理量が小さい情報処理ユニット2Aが移動先ユニットとして選択された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、目標ファン電力Wfで稼働しているファン2Bであれば、いずれを移動先ユニットとして選択されてもよい。
【0078】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0079】
1… 情報処理システム
2… ICT装置
2A… 情報処理ユニット
2B… ファン
3… 制御装置
S1… 消費電力検出部
図1
図2
図3
図4
図5