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特許7544574X線診断装置およびX線診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】X線診断装置およびX線診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240827BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/40 500J
A61B6/00 550D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020194175
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082973
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗塚 則夫
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 考宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基裕
(72)【発明者】
【氏名】前濱 登美男
(72)【発明者】
【氏名】中山 博士
(72)【発明者】
【氏名】工藤 工
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勇介
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055970(JP,A)
【文献】特開2016-214362(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054417(WO,A1)
【文献】特開2019-126581(JP,A)
【文献】国際公開第2009/004677(WO,A1)
【文献】特開2015-208618(JP,A)
【文献】特開2010-017376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0119338(US,A1)
【文献】特開2012-075644(JP,A)
【文献】特開2011-189115(JP,A)
【文献】特開2012-061086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0169847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01 、 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線源および当該X線を透過させる開口を有する可動絞りと、天板に載置された被検体を透過したX線を検出する検出器とを、前記天板を挟んで対向させて支持する支持部材と、
前記天板の面に平行な所定方向において前記検出器の幅よりも大きい幅を有する撮像範囲と、X線の照射領域の大きさと、前記撮像範囲における前記照射領域の前記所定方向の移動向きと、を設定する設定部と、
設定された前記照射領域の大きさに応じて前記可動絞りの前記開口の大きさを決定するとともに設定された前記所定方向の移動向きに応じて前記開口の位置を前記天板の面に平行に移動する絞り駆動回路と、
設定された前記所定方向の移動向きに応じて前記支持部材を前記天板の面に平行に移動する支持部材駆動回路と、
前記天板の面に対して前記照射領域が一定の速度で移動するように、前記照射領域と前記検出器との位置関係に応じて、前記絞り駆動回路による前記可動絞りの前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材駆動回路による前記支持部材の前記所定方向の移動とが連動するよう、前記支持部材駆動回路と前記絞り駆動回路を制御する連動制御部と、
を備え
前記連動制御部は、
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記検出器の前記所定方向の下流側端部から所定距離よりも上流側にあるときは、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度で移動するように、前記支持部材を移動させずに前記開口の位置を移動させることで前記照射領域の前記検出器上の位置を前記所定方向に移動させ、
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記下流側端部から前記所定距離以内に到達すると、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度の移動を維持するように、前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材の前記所定方向の移動とを連動させる、
線診断装置。
【請求項2】
前記連動制御部は、
前記撮像範囲の撮像中に前記照射領域の大きさが変更されると、前記照射領域が前記一定の速度の移動を維持するように前記絞り駆動回路と前記支持部材駆動回路とを制御する、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記連動制御部は、
設定された前記照射領域が小さいほど前記一定の速度が遅くなるよう、前記絞り駆動回路と前記支持部材駆動回路とを制御する、
請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記照射領域に対応するX線透視画像をリアルタイムに生成してディスプレイに表示させる画像生成部、
をさらに備えた請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項5】
設定された前記所定方向の移動向きに応じて、前記天板をその面に平行に移動する天板駆動回路、
をさらに備え、
前記連動制御部は、
前記天板の面に対して前記照射領域が一定の速度で移動するように、前記照射領域と前記検出器との位置関係に応じて、前記天板駆動回路と前記絞り駆動回路と前記支持部材駆動回路とを制御する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記連動制御部は、
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記検出器の前記所定方向の下流側端部から所定距離よりも上流側にあるときは、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度で移動するように、前記支持部材を移動させずに前記開口の位置を移動させることで前記照射領域の前記検出器上の位置を前記所定方向に移動させ、
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記下流側端部から前記所定距離以内に到達すると、前記検出器が下流側に隣接する領域への移動を終えるまでは、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度の移動を維持するように、前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材の前記所定方向の移動とを連動させる、
ことを繰り返す、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のX線診断装置。
【請求項7】
X線を発生するX線源および当該X線を透過させる開口を有する可動絞りと、天板に載置された被検体を透過したX線を検出する検出器とを、前記天板を挟んで対向させて支持する支持部材を備えたX線診断装置の制御方法であって、
前記天板の面に平行な所定方向において前記検出器の幅よりも大きい幅を有する撮像範囲と、X線の照射領域の大きさと、前記撮像範囲における前記照射領域の前記所定方向の移動向きと、を設定するステップと、
設定された前記照射領域の大きさに応じて前記可動絞りの前記開口の大きさを決定するステップと、
前記天板の面に対して前記照射領域が一定の速度で移動するように、前記照射領域と前記検出器との位置関係に応じて、前記可動絞りの前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材の前記所定方向の移動とを連動させるステップと、
を有し、
前記可動絞りの前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材の前記所定方向の移動とを連動させるステップは、
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記検出器の前記所定方向の下流側端部から所定距離よりも上流側にあるときは、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度で移動するように、前記支持部材を移動させずに前記開口の位置を移動させることで前記照射領域の前記検出器上の位置を前記所定方向に移動させるステップと
前記照射領域の前記検出器上の位置が、前記下流側端部から前記所定距離以内に到達すると、前記天板の面に対して前記照射領域が前記一定の速度の移動を維持するように、前記開口の前記所定方向の移動と前記支持部材の前記所定方向の移動とを連動させるステップと
を含む、
線診断装置の制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、X線診断装置およびX線診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置では、消化管の検査や下肢血管の検査など、観察対象領域が広範囲にわたることがある。たとえば、X線診断装置は、上流から下流へと撮像範囲内を移動する造影剤の動きを追跡する。この場合、たとえばX線検出器を停止した状態で、X線可動絞りを制御してX線の照射領域を移動させてX線透視することで、ユーザは観察対象領域の全体を観察することができる。
【0003】
ところが、ユーザの所望する撮像範囲は、X線検出器のサイズに収まらないことがある。この場合、照射領域がX線検出器外にはみ出してしまうことがないよう、ユーザは、移動している照射領域がX線検出器の下流側の端部まで到達すると、一旦観察を中断して、X線検出器を下流側に移動させるとともに、移動後のX線検出器の上流側端部に照射領域が位置するようX線可動絞りを操作してから、観察対象領域の観察を再開する必要がある。この場合、ユーザは観察を中断して撮像系の煩雑な位置調整の作業を強いられてしまう。また、ユーザは、当該位置調整の作業の間に観察対象を見失ってしまう場合がある。また、位置調整の作業のために検査時間が長くなってしまうため、被検体の負担が増加してしまう。また、位置調整の作業中も、当該作業を支援するためにX線透視が継続されるため、被検体の被ばく線量が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-159913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線検出器の幅よりも広範囲の撮像領域を自動で撮像することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線診断装置は、支持部材と、設定部と、絞り駆動回路と、支持部材駆動回路と、連動制御部とを備える。支持部材は、X線を発生するX線源および当該X線を透過させる開口を有する可動絞りと、天板に載置された被検体を透過したX線を検出する検出器とを、天板を挟んで対向させて支持する。設定部は、天板の面に平行な所定方向において検出器の幅よりも大きい幅を有する撮像範囲と、X線の照射領域の大きさと、撮像範囲における照射領域の所定方向の移動向きと、を設定する。絞り駆動回路は、設定された照射領域の大きさに応じて可動絞りの開口の大きさを決定するとともに設定された所定方向の移動向きに応じて開口の位置を天板の面に平行に移動する。支持部材駆動回路は、設定された所定方向の移動向きに応じて支持部材を天板の面に平行に移動する。連動制御部は、天板の面に対して照射領域が一定の速度で移動するように、照射領域と検出器との位置関係に応じて、絞り駆動回路による可動絞りの開口の所定方向の移動と支持部材駆動回路による支持部材の所定方向の移動とが連動するよう、支持部材駆動回路と絞り駆動回路を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るX線診断装置の一構成例を示すブロック図。
図2】X線可動絞りの一構成例を示す斜視図。
図3】処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
図4】開口と照射領域の関係の一例を示す説明図。
図5】(a)は支柱が天板の長手方向に沿って移動する場合の一例を説明するための側面図、(b)は上面図。
図6】(a)はディスプレイの透視画像表示領域の一例を示す説明図、(b)は他の例を示す説明図。
図7】X線検出器と撮像範囲の関係の一例を示す説明図。
図8】照射領域を移動させる方法の一例を示す説明図。
図9】照射領域を一定速で移動させる方法の一例を示す説明図。
図10】処理回路のプロセッサにより、X線の照射領域を被検体に対して一定の速度で移動させながらX線検出器の幅よりも広範囲の撮像範囲を自動で透視するための処理際の手順の一例を示すフローチャート。
図11】照射領域の大きさが変化する場合の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線診断装置およびX線診断装置の制御方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係るX線診断装置10の一構成例を示すブロック図である。なお、実施形態に係るX線診断装置10は、透視や撮影が可能なものであればよく、たとえばX線TV装置やX線アンギオ装置などを含む。本実施形態では、X線診断装置10としてX線TV装置を用いる場合の一例を示す。
【0010】
X線診断装置10は、図1に示すように、X線源11、X線可動絞り20を収容する収容器12と、X線検出器13と、支柱14、支柱駆動機構15、天板16、寝台17、およびコンソール30を有する。なお、本実施形態では、天板16の短手方向をx軸、天板16の法線方向をy軸、天板16の長手方向をz軸と定義する(図1参照)。
【0011】
X線源11は、たとえば図示しない高電圧発生装置により電圧を印加されてX線を発生するX線菅である。X線管は、高電圧発生装置からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管により構成される。
【0012】
収容器12は、金属により構成された筐体であり、少なくともX線可動絞り20を収容するほか、関心領域フィルタ(ROIフィルタ)を収容してもよい。X線源11および収容器12は、図1に示すように支柱14の一端に支持される。
【0013】
図2は、X線可動絞り20の一構成例を示す斜視図である。
【0014】
X線可動絞り20は、X線の照射領域を制限する(絞る)ための開口25を有し、開口25ではX線を通過させる一方、開口25以外の領域ではX線の通過を制限する。X線可動絞り20は、たとえば複数の羽根要素を含む絞り羽根により構成される。
【0015】
絞り羽根は、たとえば図2に示すように4枚の羽根要素21、22、23、および24を有する。羽根要素21-24は、それぞれ平板状の鉛羽などにより構成されてX線を遮蔽する。羽根要素21-24により囲まれた領域は、X線が通過する開口25を形成する(図2参照)。
【0016】
これらの羽根要素21-24が互いに独立にX線源11に対して平行移動することにより、支柱14が静止しX線源11およびX線検出器13の位置を固定したまま、開口25の位置を天板16の面に平行に移動させることができるとともに、開口25の大きさを変更することができる。このため、X線源11およびX線検出器13の位置を固定したままでも、開口25に対応する照射領域の位置および大きさを変更することが可能である。なお、絞り羽根の羽根要素の数は図2に示す4つに限られず、たとえば絞り羽根として多葉コリメータを用いてもよい。
【0017】
X線検出器13は、寝台17の天板16に載置された被検体を挟んでX線源11およびX線可動絞り20と対向配置されるよう支柱14の他端に支持される。X線検出器13は、平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)により構成され、被検体を透過してX線検出器13に照射されたX線を検出し、この検出したX線にもとづいてX線透視画像やX線撮影画像の画像データを出力し、コンソール30に与える。なお、X線検出器13は、イメージインテンシファイア、TVカメラなどを含むものであってもよい。
【0018】
支柱14は、X線源11、X線可動絞り20およびX線検出器13を含む撮像系を支持する支持部材である。X線可動絞り20の構成については図2を用いて後述する。
【0019】
支柱駆動機構15は、支柱14を天板16の面に平行な方向(たとえば天板16の長手方向や短手方向)に移動させることで、X線源11、X線可動絞り20およびX線検出器13を一体として移動させる。また、支柱駆動機構15は、支柱駆動機構15を中心としてx軸を中心に天板16とともに寝台17を起倒させてもよい。支柱駆動機構15は、撮像系を天板16の面に平行な方向に沿って移動させるためおよび寝台17を起倒させるための駆動源としてのモータ、およびこのモータを制御するための電子部品などを有する。
【0020】
寝台17の上部には天板16が設けられ、被検体は天板16に載置される。また、寝台17には、被検体を支持するためのショルダーレストや、フットレスト、横手ハンドグリップなどが取り付けられてもよい。天板16は、図示しない天板駆動機構により、寝台17に対して天板16の長手方向および短手方向に沿って移動する。天板駆動機構は、天板16を移動させるための駆動源としてのモータ、およびこのモータを制御するための電子部品などを有する。
【0021】
ユーザは、たとえばX線撮像により取得されるリアルタイムなX線透視画像を確認しながら、観察対象を観察し、あるいは被検体に対する手技を行う。
【0022】
コンソール30は、たとえば一般的なパーソナルコンピュータやワークステーションなどにより構成され、入力インターフェース31、ディスプレイ32、記憶回路33、ネットワーク接続回路34および処理回路35を有する。なお、コンソール30は独立して設けられずともよく、たとえばコンソール30の構成31-35の一部が寝台17などに分散して設けられてもよい。
【0023】
入力インターフェース31は、たとえばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路35に出力する。たとえば、ユーザは、入力インターフェース31を介して撮像条件を設定することができる。また、入力インターフェース31は、ばく射のオンオフを制御するばく射スイッチを含んでもよい。
【0024】
また、入力インターフェース31は、支柱駆動機構15に対する天板16の長手方向および短手方向への支柱14の移動を指示する支柱移動指示レバー311と、天板16に対する照射領域41の移動方向および移動向きを指示する領域移動指示レバー312を含む。
【0025】
ディスプレイ32は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、X線撮像にもとづいて処理回路35により生成された透視画像などの各種情報を表示する。
【0026】
記憶回路33は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記録媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。
【0027】
ネットワーク接続回路34は、たとえば所定のプリント回路基板を有するネットワークカードなどにより構成され、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路34は、この各種プロトコルに従ってX線診断装置10と他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0028】
処理回路35は、記憶回路33に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、X線の照射領域を被検体に対して移動させながらX線検出器の幅よりも広範囲の撮像領域を自動で透視するための処理を実行するプロセッサである。
【0029】
図3は、処理回路35のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。図3に示すように、処理回路35のプロセッサは、設定機能351、連動制御機能352、および画像生成機能353を有する。これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で記憶回路33に記憶されている。
【0030】
設定機能351は、ユーザによる入力インターフェース31の領域移動指示レバー312を介した指示にもとづいて、天板16の面に平行な所定方向(以下、設定移動方向という)においてX線検出器13の幅よりも大きい幅を有する撮像範囲と、X線の照射領域の大きさと、撮像範囲における照射領域の設定移動方向の移動向きと、を設定する。
【0031】
連動制御機能352は、天板16の面に対して照射領域が設定移動方向に一定の速度で移動させる。このために、連動制御機能352は、照射領域とX線検出器13との位置関係に応じて、絞り駆動回路26によるX線可動絞り20の開口25の設定移動方向の移動と支柱駆動機構15の支柱駆動回路27による支柱14の設定移動方向の移動とが連動するよう、絞り駆動回路26と支柱駆動回路27とを制御する。
【0032】
絞り駆動回路26は、設定された照射領域の大きさに応じてX線可動絞り20の開口25の大きさを決定する。また、絞り駆動回路26は、連動制御機能352に制御されて、設定移動方向の移動向きに応じて開口25の位置を天板16の面に平行に移動させる。
【0033】
図4は、開口25と照射領域41の関係の一例を示す説明図である。図4には設定移動方向の移動向きがz方向正の向きである場合の例を示した。
【0034】
開口25を設定移動方向に移動させることで、X線束40を移動させることができる。したがって、X線源11およびX線検出器13を静止させたままでも、X線のX線検出器13上の照射領域41は、開口25を設定移動方向に移動させることで、X線検出器13の設定移動方向の上流側端部13uから下流側端部13dまで移動することが可能である(図4参照)。
【0035】
図5(a)は、支柱14が天板16の長手方向に沿って移動する場合の一例を説明するための側面図であり、(b)は上面図である。
【0036】
支柱駆動回路27は、連動制御機能352に制御されて、設定移動方向の移動向きに応じて支柱14を天板16の面に平行に移動させることで、X線源11と収容器12とX線検出器13とを一体に、設定移動方向に沿って移動させる(図5参照)。X線源11の移動に伴い、X線束40が天板16の面に対して設定移動方向に沿って移動する。
【0037】
また、このとき、連動制御機能352は、図示しない天板駆動機構の天板駆動回路28による天板16の設定移動方向への移動をさらに連動させてもよい。
【0038】
画像生成機能353は、照射領域41に対応するX線透視画像をリアルタイムに生成してディスプレイ32に表示させる。
【0039】
図6(a)は、ディスプレイ32の透視画像表示領域42の一例を示す説明図であり、(b)は他の例を示す説明図である。
【0040】
画像生成機能353は、照射領域41に対応する透視画像をディスプレイ32の透視画像表示領域42に表示させる。このとき、透視画像表示領域42をディスプレイ32の表示領域の大半を占めるようにしてもよい(図6(a)参照)。この場合、照射領域41に対応する透視画像を拡大して表示することができるため、ユーザは観察対象の詳細な観察が可能となる。また、透視画像表示領域42は、X線検出器13内での照射領域41の位置に応じた領域としてもよい。この場合、たとえばディスプレイ32の全表示領域をX線検出器13の全検出面に対応させてもよい(図6(b)参照)。この場合、ユーザはX線検出器13上の現在の照射領域41の位置を容易且つ直感的に把握することができる。また、これらの表示方法は、ユーザの指示に応じて切り替え可能としてもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係るX線診断装置10の動作の一例について説明する。
【0042】
図7は、X線検出器13と撮像範囲50の関係の一例を示す説明図である。
【0043】
上述の通り、設定機能351は、ユーザによる入力インターフェース31を介した指示にもとづいて、設定移動方向においてX線検出器13の幅よりも大きい幅を有する撮像範囲50と、X線の照射領域41の大きさと、撮像範囲50における照射領域41の設定移動方向の移動向きと、を設定する。
【0044】
図7には、設定移動方向の移動向きがz方向(体軸方向)正の向き(頭から足に向かう向き)である場合の例を示した。また、以下の説明では、設定移動方向に直交する方向において、撮像範囲50の幅と照射領域41の幅が等しい場合の例を示す。この場合、照射領域41は設定移動方向に直交する方向に移動する必要はなく、設定移動方向の移動向きに移動することで撮像範囲50の全範囲を透視撮像することが可能である。移動向きの設定により、X線検出器13の上流側端部13uおよび下流側端部13dが定義される。
【0045】
図8は、照射領域41を移動させる方法の一例を示す説明図である。以下、照射領域41の上端とX線検出器13の上流側端部13uとが一致した状態からの方法を説明する。
【0046】
まず、連動制御機能352は、支柱14は動かさず、照射領域41を一定の速度vfで移動させるようにX線可動絞り20の開口25を一定の速度vcで移動させはじめる(図8上段左参照)。なお、開口25の移動速度vcは、たとえば収容器12に対する開口25の速度として定義される。また、照射領域41の移動速度vfは、天板16の上面に対する速度として定義されてもよいし、被検体に対する速度として定義されてもよい。
【0047】
次に、照射領域41の下端がX線検出器13の下流側端部13dに達すると(図8上段中央参照)、連動制御機能352は、X線検出器13を下流側に隣接する次の領域に移動させるため、X線検出器13の設定移動方向の幅だけX線検出器13(すなわち支柱14)を速度vdで移動させるとともに、移動後のX線検出器13の上流側端部13uと照射領域41の上端とが一致するよう、開口25を速度vcで移動させる(図8上段右参照)。このとき、速度vcの向きは設定移動方向と逆向き(z方向負の向き)を有する。X線検出器13の移動と開口25の移動とは同時並行的に行われることが好ましい。なお、X線検出器13の移動速度vdは、たとえば天板16に対するX線検出器13の速度として定義される。
【0048】
次に、連動制御機能352は再び、支柱14は動かさず、照射領域41を一定の速度vfで移動させるようにX線可動絞り20の開口25を一定の速度vcで移動させはじめる(図8下段参照)。
【0049】
照射領域41の下端がX線検出器13の下流側端部13dまで到達した場合にユーザが手動で撮像系の位置調整作業を行う場合には、ユーザは現在の照射領域41がX線検出器13からはみ出しているか否かを常に意識しなければならず、支柱移動指示レバー311を操作して撮像系の位置調整、および領域移動指示レバー312を操作して照射領域の調整を行う必要があるとともに位置調整作業中には観察を中断する必要がある。
【0050】
一方、図8に示す方法によれば、X線検出器13の幅よりも広範囲の撮像範囲50を撮像する場合であっても、ユーザは、支柱移動指示レバー311を操作することなく、領域移動指示レバー312により照射領域41の移動方向を指示するだけで、連動制御機能352により自動的に、照射領域41を被検体に対して移動させながら流れるように撮像範囲50を透視することができる。また、図8に示すよう法によれば、ユーザは作業負担から解放されるばかりでなく、現在の照射領域41がX線検出器13からはみ出しているか否かを意識する必要がない。また、手動で撮像系の位置調整作業を行う場合に比べ、はるかに短時間に撮像範囲50を透視することができるため、被検体の被ばく線量を低減することができる。
【0051】
図9は、照射領域41を一定速度vf0で移動させる方法の一例を示す説明図である。
【0052】
図9に示す方法は、照射領域41の下端がX線検出器13の下流側端部13dに達するよりも前にX線検出器13の移動を開始することにより、撮像範囲50の全範囲において照射領域41を一定の速度vf0で移動可能とする。
【0053】
具体的には、連動制御機能352は、照射領域41の下端のX線検出器13上の位置が、X線検出器13の下流側端部13dから所定距離Dよりも上流側にあるときは、支柱14は動かさず、照射領域41を一定の速度vf0で移動させるように、X線可動絞り20の開口25を一定の速度vcで移動させる(図9上段左参照)。
【0054】
なお、照射領域41の一定の移動速度vf0の速さは、ユーザによって設定されてもよいし、照射領域41の大きさに応じて自動設定されてもよい。
【0055】
照射領域41のX線検出器13上の位置が、下流側端部13dから所定距離D以内に到達すると(図9上段中央参照)、連動制御機能352は、照射領域41の速度vf0を維持するように、X線検出器13を速度vdで移動させつつ開口25を速度vcで移動させる(図9上段右参照)。より具体的には、連動制御機能352は、照射領域41の速度vf0が維持されるように、開口25の速度vcおよびX線検出器13の速度vdのそれぞれの速さおよび向きを、互いの位置に応じて連動制御する。
【0056】
このとき、連動制御機能352は、さらに、X線検出器13が次の領域に移動し終わるタイミングと、照射領域41の上端が次の領域に移動後のX線検出器13の上流側端部13uに一致するタイミングが同時となるように開口25の速度vcおよびX線検出器13の速度vdのそれぞれの速さおよび向きを制御してもよい(図9下段左参照)。X線検出器13が次の領域に移動し終えると、支柱14を停止し、照射領域41を一定の速度vf0で移動させるように開口25を一定の速度vcで移動させる(図9下段右参照)。
【0057】
図9に示す方法によっても、図8に示す方法と同様の効果を奏する。また、図9に示す方法によれば、照射領域41の移動速度vf0が一定のまま撮像範囲50の全体を透視観察することができる。
【0058】
また、図9に示す方法では、図8に示す方法に比べ、照射領域41の下端がX線検出器13の下流側端部13dに達してから次の領域の透視が再開されるまでの時間が不要となる。したがって、図9に示す方法は、図8に示す方法よりもさらに検査時間を短縮することができ、被検体の被ばく線量を大幅に低減することができる。
【0059】
また、図9に示す方法では、照射領域41の下端がX線検出器13の下流側端部13dに達する前にX線検出器13の移動を開始して開口25の移動との連動制御を行うことができるため、X線検出器13の始動直後の加速期間においても容易に照射領域41の速度を一定の速度vf0に維持することができる。
【0060】
図10は、処理回路35のプロセッサにより、X線の照射領域41を被検体に対して一定の速度vf0で移動させながらX線検出器13の幅よりも広範囲の撮像範囲50を自動で透視するための処理際の手順の一例を示すフローチャートである。図10において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。図10に示す手順は、図9に示す方法に対応する。
【0061】
まず、ステップS1において、設定機能351は、ユーザによる入力インターフェース31を介した指示にもとづいて、撮像範囲50と照射領域41の大きさを設定する。
【0062】
次に、ステップS2において、設定機能351は、ユーザによる入力インターフェース31の領域移動指示レバー312を介した指示にもとづいて、撮像範囲50における照射領域41の設定移動方向および移動向きを設定する。
【0063】
撮像範囲50の透視が開始されると(ステップS3)、ステップS4において、連動制御機能352は、照射領域41を一定の速度vf0で移動させるように、X線可動絞り20の開口25を一定の速度vcで移動させる(図9上段左参照)。
【0064】
次に、ステップS5において、連動制御機能352は、照射領域41の下端のX線検出器13上の位置が、X線検出器13の下流側端部13dから所定距離D以内にあるか否かを判定する。
【0065】
照射領域41の下端のX線検出器13上の位置がX線検出器13の下流側端部13dから所定距離Dよりも上流側にあるときは、ステップS4に戻る。
【0066】
一方、X線検出器13の下流側端部13dから所定距離D以内にあるときは、ステップS6において、連動制御機能352は、照射領域41が一定の速度vf0を維持したまま移動するように、開口25の移動とX線検出器13の移動とを連動させる(図9上段右参照)。
【0067】
X線検出器13が下流側に隣接する次の領域に到達するまでは(ステップS7のNO)、ステップS6を繰り返す。一方、X線検出器13が下流側に隣接する次の領域に到達すると(ステップS7のYES)、ステップS4に戻る。そして、照射領域41の下端が撮像範囲50の下端に達すると、一連の手順は終了となる。
【0068】
以上の手順により、図9に示す方法が実行され、X線の照射領域41を被検体に対して一定の速度vf0で移動させながらX線検出器13の幅よりも広範囲の撮像範囲50を自動で透視することができる。このため、ユーザは、最初から最後まで、一定の速度で流れるように撮像範囲50の透視画像を観察することができる。
【0069】
図11は、照射領域41の大きさが変化する場合の一例を説明するための図である。
【0070】
照射領域41の大きさは、開口25の大きさと、X線焦点受像面間距離(SID:Source to Image Distance)とから一意に定まる。したがって、開口25の大きさが同じ場合は、図11に示すように、X線焦点受像面間距離(SID:Source to Image Distance)が長くなると、照射領域41が大きくなる。また、開口25の移動速度vcが一定の場合は、SIDが長くなると、照射領域41の移動速度vfは速くなる。このため、撮像範囲50の透視中にSIDが変更されると、照射領域41の移動速度が変化してしまい、ユーザは観察対象の観察が困難になってしまう場合がある。
【0071】
そこで、連動制御機能352は、撮像範囲50の透視中に照射領域41の大きさが変更された場合であっても、照射領域41が一定の速度vf0で移動するように、照射領域41の大きさに応じて開口25の移動速度vcおよびX線検出器13の移動速度vdを制御するとよい。
【0072】
また、図6(a)に示す拡大表示方法を採用する場合、照射領域41が小さいほど細やかな画像観察が可能となる一方で、照射領域41が小さい場合は、照射領域41の移動速度が速いと観察対象を見失いやすくなる。他方、照射領域41が大きい場合は、照射領域41の移動速度が遅いと観察対象を発見しづらくなり操作性が悪い。そこで、連動制御機能352は、設定機能351が設定した照射領域41が小さいほど照射領域41の一定の速度vf0が遅くなるよう開口25の移動速度vcおよびX線検出器13の移動速度vdを制御するとよい。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線の照射領域を被検体に対して移動させながらX線検出器の幅よりも広範囲の撮像領域を自動で透視することができる。
【0074】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0075】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0076】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
10 X線診断装置
11 X線源
13 X線検出器
13d 下流側端部
13u 上流側端部
16 天板
20 X線可動絞り
25 開口
26 絞り駆動回路
27 支柱駆動回路
28 天板駆動回路
32 ディスプレイ
35 処理回路
40 X線束
41 照射領域
42 透視画像表示領域
50 撮像範囲
351 設定機能
352 連動制御機能
353 画像生成機能
D 所定距離
vc 開口の移動速度
vd X線検出器の速度
vf 照射領域の移動速度
vf0 照射領域の一定の移動速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11