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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ホーム柵
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B61B1/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020195819
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084149
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194048(JP,A)
【文献】特開2004-268634(JP,A)
【文献】特開2019-038414(JP,A)
【文献】実開昭59-173715(JP,U)
【文献】特開2017-137014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱間に渡されたN本(N≧3)の遮断部を上下させて開閉する昇降式のホーム柵であって、
固定柱部と、
前記固定柱部に対して上下動する昇降部と、
を備え、
前記昇降部は、
複数のリンクを1本の線状に連結した伸縮リンク機構部であって、前記遮断部を1つおきのジョイント部が1本ずつ支持する伸縮リンク機構部と、
前記伸縮リンク機構部の上部を所定位置で固定する上部固定部と、
前記1つおきのジョイント部上下方向へ直線状に移動するように案内する上下案内部と、
所定の上方位置に固定されたプーリと、
一端が前記固定柱部に対して固定され、前記プーリを介して他端が前記伸縮リンク機構部の下部に接続されたベルトと、
を有する、
ホーム柵。
【請求項2】
支柱間に渡されたN本(N≧3)の遮断部を上下させて開閉する昇降式のホーム柵であって、
固定柱部と、
前記固定柱部に対して上下動する昇降部と、
を備え、
前記昇降部は、
複数のリンクを線状に連結した伸縮リンク機構部であって、前記遮断部を1つおきのジョイント部が1本ずつ支持する伸縮リンク機構部と、
前記伸縮リンク機構部の上部を所定位置で固定する上部固定部と、
前記1つおきのジョイント部の上下方向への移動を案内する上下案内部と、
前記1つおきのジョイント部に該当しない下端から所定番目のジョイント部を、当該ジョイント部が前記遮断部を上下させる際に移動する曲線軌道に沿って上下方向に移動自在に案内する曲線案内部と、
所定の上方位置に固定されたプーリと、
一端が前記固定柱部に対して固定され、前記プーリを介して他端が前記伸縮リンク機構部の下部に接続されたベルトと、
を有する、
ホーム柵。
【請求項3】
前記昇降部は、前記固定柱部の軌道側に設けられ、
前記伸縮リンク機構部は、伸縮運動面が前記遮断部の長手方向に交差する面であり、
前記1つおきのジョイント部は、軌道側に位置するジョイント部である、
請求項1又は2に記載のホーム柵。
【請求項4】
前記1つおきのジョイント部は、前記遮断部が挿入される金具と接続されており、
前記上下案内部は、前記金具の上下方向の移動を案内する溝部を有して、当該金具の上下方向の移動を案内することで前記1つおきのジョイント部の上下方向への移動を案内する、
請求項1~3の何れか一項に記載のホーム柵。
【請求項5】
前記昇降部は、前記昇降部の前記固定柱部側に上下に張設された昇降ベルト、を有し、
前記固定柱部は、前記昇降ベルトと係合する所定位置に固定された駆動プーリ、を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載のホーム柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式のホーム柵に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の駅のプラットホームから線路への旅客の転落を防止するホーム柵には、棒やロープなどの遮断部を昇降することで開閉する、いわゆる「昇降式」のホーム柵がある。
【0003】
昇降式ホーム柵としては、例えば特許文献1の図2に示される形態が知られている。昇降式ホーム柵は、引戸式ホーム柵のように遮断部(引戸式ホーム柵の場合は可動扉部が相当。)を収容するための戸袋部を必要としないので、引戸式ホーム柵よりも開閉幅を広く取れる。それ故に、昇降式ホーム柵は、引戸式ホーム柵よりも、支柱の設置間隔をホーム長や車両長、車両のドア数、等に合わせて最適化できる点と、列車停止位置のズレに対して柔軟に対応できる点、において優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-217773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図2の形態では、間隔調整機構が降下するときは上方から順番にロープ間隔が拡大し、間隔調整機構が上昇するときは下方から順番にロープ間隔が縮小する断続的な動きとなる。対して同文献の図5の形態では、パンタグラフ機構なのでロープ間隔が均等に拡縮することで自然な動きとなる。
【0006】
しかし、上記2つの形態は、リンク機構の動作面がホーム長手方向を向いているので、昇降部の横幅(ホーム長手方向の幅であり、ホーム側から軌道側を見たときの左右方向の幅のことである)が大きくなり、ホーム柵の開閉幅がその分狭くなる。また、昇降部の横幅が大きくなれば、それだけ昇降部が上がったときに車掌がホーム柵近傍の様子を確認するときの邪魔になり易い。
【0007】
また、同文献の図2の形態と、図5の形態の両方共に、昇降部を昇降させる機構にループ上のベルトと、それを懸ける上下2つのプーリと、を有する。下部プーリに着目すると、下部プーリを収容するスペースを昇降部の下部に確保する必要があるために、最下段のロープ(遮断部)の全閉時位置(降下時位置)に制限が生じ、昇降部の下端まで最下段のロープを下げることができない。そのため、昇降部が降りた状態であっても最下段のロープとホーム上面とに大きな隙間が存在する問題があった。全閉状態における最下段のロープ位置は、子供のくぐり抜け防止や、視覚障害者が杖でロープ位置を確認し易くするために、できるだけ低く、最下段のロープとホーム上面との隙間が小さい方が望ましい。
【0008】
本発明が解決しようとする第1の課題は、昇降式のホーム柵において、全閉時の最下段の遮断部をできるだけ低くすることを可能とする技術を提供すること、である。また、第2の課題は、昇降部の横幅を従来よりも小さくすることを可能とする技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、支柱間に渡されたN本(N≧3)の遮断部を上下させて開閉する昇降式のホーム柵であって、固定柱部と、前記固定柱部に対して上下動する昇降部と、を備え、前記昇降部は、複数のリンクを線状に連結した伸縮リンク機構部であって、前記遮断部を1つおきのジョイント部が1本ずつ支持する伸縮リンク機構部と、前記伸縮リンク機構部の上部を所定位置で固定する上部固定部と、前記1つおきのジョイント部の上下方向への移動を案内する上下案内部と、所定の上方位置に固定されたプーリと、一端が前記固定柱部に対して固定され、前記プーリを介して他端が前記伸縮リンク機構部の下部に接続されたベルトと、を有する、ホーム柵である。
【0010】
第2の発明は、前記昇降部が、前記固定柱部の軌道側に設けられ、前記伸縮リンク機構部は、伸縮運動面が前記遮断部の長手方向に交差する面であり、前記1つおきのジョイント部は、軌道側に位置するジョイント部である、第1の発明のホーム柵である。
【0011】
第3の発明は、前記昇降部が、前記1つおきのジョイント部に該当しない下端から所定番目のジョイント部を、当該ジョイント部が前記遮断部を上下させる際に移動する曲線軌道に沿って上下方向に移動自在に案内する曲線案内部、を有する、第1又は第2の発明のホーム柵である。
【0012】
第4の発明は、前記1つおきのジョイント部が、前記遮断部が挿入される金具と接続されており、前記上下案内部は、前記金具の上下方向の移動を案内する溝部を有して、当該金具の上下方向の移動を案内することで前記1つおきのジョイント部の上下方向への移動を案内する、第1~第3の何れかの発明のホーム柵である。
【0013】
第5の発明は、前記昇降部が、前記昇降部の前記固定柱部側に上下に張設された昇降ベルト、を有し、前記固定柱部は、前記昇降ベルトと係合する所定位置に固定された駆動プーリ、を有する、第1~第4の何れかの発明のホーム柵である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の形態によれば、リンクを線状に連結した伸縮リンク機構部を用いて、複数の遮断部の上下方向の間隔を拡縮できる。単純な構造であるが故に軽量でありながらも信頼性が高い。伸縮リンク機構部が全ての遮断部を連結していることになるので、一部の遮断部のみを動かすことは困難であり、全閉状態において一部の遮断部を動かしてホーム柵を通り抜けるのは困難である。つまり、防護柵として安全性が高い。
【0015】
また、伸縮リンク機構部を伸縮させるためのベルトは、ループ型にあらず、一端が固定柱部に固定され、上方に固定されたプーリを介して張設方向が反転されてリンクに接続されている。従来のようにループ型のベルトを用いる場合は、昇降部内の下部に下方プーリが必要になるが、本形態では下方プーリは不要であり昇降部内の下部にスペースの余裕がある。つまり、伸縮リンク機構部の下端を、従来よりも昇降部内の下方に配置する設計自由度が得られる。よって、全閉状態において最下段の遮断部をできるだけ低い位置になるように構成することができる。
【0016】
そして、伸縮リンク機構部の動作面が、遮断部の方向(ホーム長手方向)と交差するので、昇降部の横幅(ホーム長手方向の幅であり、ホーム側から軌道側を見たときの左右方向の幅のことである)は従来よりも狭くなる。よって、従来よりもホーム柵の開閉幅を広くとれる。また、昇降部が上がった全開状態において車掌がホーム柵近傍の様子を確認し易くなる。
【0017】
また、伸縮リンク機構部のジョイントに着目すれば、伸縮リンク機構部のジョイントのうち遮断部に接続されるジョイントは、金具を介して上下方向の移動が案内されるので、伸縮時の当該ジョイントの上下移動軌跡が固定され、安定した伸縮リンク機構部の伸縮が実現される。
【0018】
また、下端から所定番目のリンクのジョイントが曲線案内部によって、当該機構部が折り畳まれる際に当該下方リンクのジョイントが通過する曲線軌跡に沿って案内される。よって、伸縮時のリンクの関節が逆折れすることを防ぎ、スムーズで確実な動作が実現される。
【0019】
また、固定柱部に対する昇降部を昇降動させる構造に着目すると、本形態はベルト駆動式なので、ボールネジ機構式で実現するよりも製造コストの低減や軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ホーム柵を軌道側から見た図であって全閉状態を示す正面図。
図2】ホーム柵の全開状態を示す正面図。
図3】支柱の構成例を示す図であって、全閉状態において遮断部の長手方向から見た側面視内部構造図。
図4】支柱の構成例を示す図であって、全閉状態において軌道側から見た正面視内部構造図。
図5図4の伸縮リンク機構部の下部を拡大した部分拡大図。
図6】全閉状態と全開状態との中間状態における支柱の状態を示す側面視内部構造図。
図7】全開状態における支柱の状態を示す側面視内部構造図。
図8】支柱の構成の変形例を示す側面視内部構造図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0022】
図1は、ホーム柵2を軌道側から見た図であって全閉状態を示す正面図である。図2は、ホーム柵2の全開状態を示す正面図である。ホーム柵2は、プラットホーム3に立設された隣り合う支柱4(4a、4b)の間に3本以上の遮断部6を渡し、それらを上下させて開閉する昇降式のホーム柵である。これらの図では、支柱4を2本だけ示しているが、実際の運用では駅プラットホームの軌道側端部に2本以上の支柱4が立設される。
【0023】
図3は、支柱4の構成例を示す図であって、全閉状態において遮断部6の長手方向から見た側面視内部構造図である。図4は、軌道側から見た正面視内部構造図である。
【0024】
支柱4は、プラットホーム3に固定・立設される固定柱部10と、固定柱部10に対して上下動する昇降部20と、を有する。なお、昇降部20は、不図示のガイド構造によって固定柱部10の軌道側で、上下方向に移動自在に支持されている。ガイド構造は、例えば固定柱部10に固定されたガイドレールと、昇降部20に固定され、当該ガイドレールと係合してスライドするスライダと、によって実現できる。
【0025】
固定柱部10は、縦長の箱様の躯体11の内部に、電動モータ12と、ギヤボックス13と、駆動プーリ14と、2つの従動プーリ15と、電動モータ12を駆動制御する制御装置16と、を有する。また、躯体11の上部軌道側には、柱側ベルト固定金具17が突設されている。
【0026】
電動モータ12は、出力軸の回転数をカウントする機能と、出力軸の回転を停止状態で維持するブレーキ機能と、を有する。
電動モータ12の動力は、ギヤボックス13を介して駆動プーリ14を駆動させる。
2つの従動プーリ15は、駆動プーリ14の上方・下方それぞれに用意される。何れか一方の従動プーリ15をテンションプーリとすると好適である。
【0027】
駆動プーリ14と2つの従動プーリ15は、昇降部20のホーム側の側面に上下方向に直線状に張設された昇降ベルト22(例えば、歯付ベルト)と係合する。
【0028】
昇降ベルト22の一端は、従動プーリ軸15より少なくとも上方の位置で、昇降部20の固定支柱部10に対向する面に固定され、他端は従動プーリ軸15より少なくとも下方の位置で昇降部20の固定支柱部10に対向する面に固定されている。
【0029】
図3の例において、駆動プーリ14を時計回りに回転させると、駆動プーリ14は昇降ベルト22を固定柱部10に対して相対的に上方へ引き上げる。昇降ベルト22は昇降部20に固定されているので、昇降部20が固定柱部10に対して上昇することになる。逆に、駆動プーリ14を反時計回りに回転させると、駆動プーリ14は昇降ベルト22を相対的に下方へ引き降ろすことになり、昇降部20が固定柱部10に対して降下する。
【0030】
昇降部20は、縦長の箱様のケース21と、昇降ベルト22と、を備え、ケース21は、伸縮リンク機構部30と、上部固定部40と、上下案内部50と、プーリ60と、リンク用ベルト62と、を内部に有する。
【0031】
伸縮リンク機構部30は、遮断部6の上下方向の相対距離を変更可能に連結する伸縮可能な機構である。伸縮リンク機構部30は、複数の直状のリンク31(31a,31b,…)を一本の線状に配列し、隣り合うリンク31の端部同士を、軸方向を揃えたジョイント部32(32a,32b,…)で軸回転可能に連結して構成される。そして、伸縮リンク機構部30は、隣り合うリンク31がジョイント部32で回動して屈曲/伸展することで伸縮リンク機構部30全体として伸縮運動する。なお、リンク31を8本、ジョイント部32を9つとして例示しているが、リンク数やジョイント数はこれに限らず適宜変更可能である。
【0032】
伸縮リンク機構部30は、リンク31が上下に連なり、且つジョイント部32の軸が遮断部6の長手方向(ホーム長手方向であり、ホーム側から軌道側を見たときの左右方向(ホーム柵2の左右方向))を向くように配置されている。伸縮リンク機構部30が伸縮動作する伸縮運動面9に着目すると、伸縮リンク機構部30は、伸縮運動面9が遮断部6の長手方向に交差する面であり、ホーム柵2の前後方向と上下方向とで規定される面となるように、ケース21内の軌道側に寄せて配置されている。
【0033】
具体的には、伸縮リンク機構部30は、ジョイント部32のうち上から数えて奇数番目のジョイント部32が軌道側となり、偶数番目のジョイント部32がホーム側となるように配置されている。そして、奇数番目のジョイント部32には遮断部6が接続される。故に、伸縮リンク機構部30は、複数のリンク31を線状に連結し、遮断部6を1つおきのジョイント部32が1本ずつ支持する折り畳み式の伸縮機構部である。
【0034】
上から数えて1番目のジョイント部32aは、上部固定部40によって、ケース21の上部所定位置にて、ケース21に対して動かないように固定されている。つまり、1番目のジョイント部32aは、固定ジョイント部である。
【0035】
上から数えて3番目以降の奇数番目のジョイント部32、すなわち3番目のジョイント部32cと、5番目のジョイント部32eと、7番目のジョイント部32gと、9番目のジョイント部32jとは、例えば図5図4の伸縮リンク機構部30の下部を拡大した部分拡大図)に示すように、(1)当該ジョイント部32で連結する2つのリンク31の回転軸となる軸部33と、(2)遮断部6と接続される接続金具34と、(3)ケース21の側面に上下方向に設けられた上下案内部50に係合して案内される案内金具35と、を有している。
【0036】
軸部33は、連結するジョイント部32において軸回転可能に構成されている。
接続金具34は、カシメ、接着、クリップ止め、ネジ止め、などの方法で遮断部6と接続される。
【0037】
案内金具35は、軸部33の軸で回転し、上下案内部50の溝に接触して回転する滑車である。軸部33と案内金具35は凹凸嵌合されて、ネジ止め、圧入などにより固定される。そして、案内金具35は、上下案内部50(図3図4参照)に係合して案内される。上下案内部50は、ケース21の側面に設けられた上下方向に長い溝孔、或いはケース21の内側面に固定された溝付のレール部材である。
【0038】
上から数えて3番目、5番目、7番目、9番目のジョイント部32は、案内金具35および上下案内部50によって上下方向への直線状の移動が案内され、遮断部6の昇降軌跡が一定に保たれる。また、これらの案内機構によって、伸縮リンク機構部30は、伸縮動作する際に、上部固定部40を軸にして伸縮リンク機構部30全体が前後方向に回らない(揺動しない)よう回り止めされている。
【0039】
上から数えて偶数番目のジョイント部32のうち、2番目のジョイント部32bと、4番目のジョイント部32dと、6番目のジョイント部32fとは、軸部33を有するが接続金具34および案内金具35は有しない。つまり、これらのジョイント部32は、遮断部6や上下案内部50とは係合せず、リンク31との接続関係でのみ可動する自由可動ジョイントとなる。
【0040】
上から数えて偶数番目のジョイント部32のうち、8番目のジョイント部32hは、軸部33と、ケース21の側面(上下案内部50が設けられた位置よりも後方の側面)に上下方向に設けられた曲線案内部58(図3参照)に係合して案内される案内金具38と、を有している。
【0041】
案内金具38は、例えば軸部33の軸で回転する滑車として実現され、曲線案内部58に係合して案内される(図3参照)。
【0042】
曲線案内部58は、ケース21の側面に設けられた上下方向に長い溝孔、或いはケース21の内側面に固定された溝付のレール部材で実現される。曲線案内部58は、8番目のジョイント部32h(1つおきのジョイント部32に該当しない下端から所定番目のジョイント部)を、遮断部6を上下させる際に移動する曲線軌道に沿って、曲線状に上下方向に移動自在に案内する。曲線軌道は、下方への延長方向が、ケース21の軌道寄りの下角部に向いた方向となっており、上方への延長方向が、ホーム寄りの上角部に向いた方向となっていて、ホーム側斜め下に凸の曲線を描いている。
【0043】
プーリ60は、遮断部6の長手方向を向いた回転軸を有し、ケース21内の上方位置にてケース21に対して固定されており、リンク用ベルト62が掛け回されている。
【0044】
リンク用ベルト62は、例えば所定長に切り出された歯付ベルトであって、一端部が固定柱部10の柱側ベルト固定金具17に固定され、他端部がプーリ60を介して伸縮リンク機構部30の下部(下から1番目のリンク31)にリンク側ベルト固定金具36により接続されている。
【0045】
次に、ホーム柵2の動作について説明する。
全閉状態のホーム柵2は、図3の状態にある。ホーム柵2を開くには、制御装置16は、電動モータ12のブレーキを解除し、駆動プーリ14を図3に向かって時計回りに回転駆動させる。すると、昇降ベルト22が引き上げられる格好となり、昇降部20が固定柱部10に対して相対的に上昇を開始する。
【0046】
ここで、プーリ60と柱側ベルト固定金具17とに着目すると、昇降部20が固定柱部10に対して上昇することで、プーリ60は柱側ベルト固定金具17に対して上昇する。これに伴い、プーリ60と柱側ベルト固定金具17との距離が増加するが、リンク用ベルト62の全長は一定なので、結果としてリンク用ベルト62のプーリ60からリンク側ベルト固定金具36までの部分が引き上げられる格好になる。従って、リンク側ベルト固定金具36を有する下端側リンク(リンク31h)が引き上げられる。
【0047】
そして、リンク側ベルト固定金具36を有する下端側リンク(リンク31h)の一端側(軌道側)のジョイント部32jは、上下案内部50に係合しているので真上に上昇しようとする。しかし、同リンクの他端側(ホーム側)のジョイント部32hは、曲線案内部58に係合しているのでホーム側の斜め上へ向かって上昇する。結果、リンク側ベルト固定金具36を有すリンク31hは、図3の状態よりも横倒しに近い姿勢に変化していく。
【0048】
こうしたジョイント部32hの動きと姿勢変化は、リンク側ベルト固定金具36を有するリンク31hと、その1つ上のリンク31gとの相対角度を狭め、伸縮リンク機構部30全体を短縮させるきっかけとなる。しかも、リンク31hがリンク用ベルト62で引き上げられるとしても、ジョイント部32hが軌道側に折れるような逆関節状態になることはなく、伸縮リンク機構部30をスムーズに折り畳んで短縮させることができる。
【0049】
昇降部20の上昇が続くと伸縮リンク機構部30の折り畳みも進行し、それに伴って遮断部6も持ち上げられて、やがて遮断部6の上下方向の間隔が小さくなり図6の状態に至る。更に上昇が続くと、やがて制御装置16は、電動モータ12の駆動開始からの回転角度が所定値に達したことを検知して、電動モータ12の回転を停止させブレーキを作動させてその状態を維持すると、図7に示すホーム柵2が全開状態となる。
【0050】
制御装置16が、図7の状態からブレーキを緩め、駆動プーリ14を反時計回りさせるように電動モータ12を駆動させると、駆動プーリ14は昇降ベルト22を固定柱部10に対して相対的に下方へ引き降ろす。これにより、プーリ60から柱側ベルト固定金具17の距離は短くなり、相対的にプーリ60からリンク側ベルト固定金具36までの距離が長くなる。つまり、リンク側ベルト固定金具36がプーリ60に対して降下し、伸縮リンク機構部30が伸長して遮断部6の上下方向の間隔が広がる。
【0051】
ホーム柵2は、図6の状態を経てやがて図3の状態に戻る。この頃には、電動モータ12の回転角度が駆動開始時点のそれに戻るので、制御装置16はブレーキを全制動状態にして、電動モータ12の状態を固定・維持する。
【0052】
以上、ホーム柵2によれば、リンク31を線状に連結した伸縮リンク機構部30を用いて、複数の遮断部6の上下方向の間隔を拡縮できる。単純な構造であるが故に軽量でありながらも信頼性が高い。伸縮リンク機構部30が全ての遮断部6を連結していることになるので、一部の遮断部6のみを動かすことは困難であり、全閉状態において一部の遮断部6を動かしてホーム柵2を通り抜けるのは困難である。つまり、防護柵として安全性が高い。
【0053】
また、伸縮リンク機構部30を伸縮させるためのリンク用ベルト62は、ループ型にあらず、一端が固定柱部10に固定され、上方に固定されたプーリ60を介して張設方向が反転されて、リンク31に接続されている。従来のようにループ型のベルトを用いる場合は、昇降部20内の下部に下方プーリが必要になるが、本実施形態のホーム柵2では下方プーリは不要であり昇降部20内の下部にスペースの余裕がある。つまり、伸縮リンク機構部30の下端を、従来よりも昇降部20内の下方に配置する設計自由度が得られる。よって、全閉状態において最下段の遮断部6をできるだけ低い位置になるように構成するこができる。
【0054】
そして、伸縮リンク機構部30の伸縮運動面9が、遮断部6の方向(ホーム長手方向)と交差するので、昇降部20の横幅(ホーム長手方向の幅であり、ホーム側から軌道側を見たときの左右方向の幅のことである)は従来のホーム柵よりも狭くなる。よって、従来よりもホーム柵2の開閉幅を広くとれる。また、昇降部20が上がった全開状態において車掌がホーム柵2の近傍の様子を確認し易くなる。
【0055】
また、伸縮リンク機構部30のジョイント部32に着目すれば、ジョイント部32のうち遮断部6に接続されるジョイント部32は、案内金具35を介して上下案内部50と係合して上下方向の移動が案内されるので、伸縮時の当該ジョイントの上下移動軌跡が固定され、安定した伸縮リンク機構部30の伸縮が実現される。
【0056】
また、ジョイント部32の軸部33は、リンク31に対して回転可能な軸とされるので、ジョイント部32に接続されている遮断部6が、伸縮リンク機構部30の伸縮動作に伴って捻れたり横揺れすることはない。
【0057】
また、下端から所定番目のリンクのジョイントが曲線案内部58によって、当該機構部が折り畳まれる際に当該下方リンクのジョイントが通過する曲線軌跡に沿って案内される。よって、伸縮時のリンクの関節が逆折れすることを防ぎ、伸縮リンク機構部30のスムーズで確実な動作が実現される。
【0058】
また、固定柱部10に対する昇降部20を昇降動させる構造に着目すると、本実施形態のホーム柵2ではベルト駆動式なので、ボールネジ機構式で実現するよりも製造コストの低減や軽量化を実現できる。
【0059】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な形態は、上記実施形態に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0060】
例えば、図8に示す支柱4Xのように、全てのホーム側のジョイント部32(32b、32d、32f、32h)それぞれについて、上記実施形態のジョイント部32hと同様に曲線案内部58Xとの係合を設けるとしてもよい。この場合、伸縮リンク機構部30の伸縮の際、軌道側のジョイント部32の間隔がほぼ等しく接近/離隔するので、見た目上、遮断部6の間隔が均等に縮小/拡大するように見えるようになる。
【0061】
また、隣り合うリンク31の間に、両者間のジョイント部32を支点にして両者が開くように付勢するバネ部材(例えば、ひげバネ)を介在させることとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
2…ホーム柵
3…プラットホーム
4…支柱
6…遮断部
9…伸縮運動面
10…固定柱部
11…躯体
12…電動モータ
13…ギヤボックス
14…駆動プーリ
15…従動プーリ
16…制御装置
17…柱側ベルト固定金具
20…昇降部
21…ケース
22…昇降ベルト
30…伸縮リンク機構部
31…リンク
32…ジョイント部
33…軸部
34…接続金具
35…案内金具
36…リンク側ベルト固定金具
38…案内金具
40…上部固定部
50…上下案内部
58…曲線案内部
60…プーリ
62…リンク用ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8