(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】旅客接近検知システム及び旅客接近検知方法
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20240827BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240827BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
G06T7/00 660B
(21)【出願番号】P 2020201394
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝日 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】榎原 俊太
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-058296(JP,A)
【文献】特開2019-041207(JP,A)
【文献】特開2020-128126(JP,A)
【文献】特開2016-212657(JP,A)
【文献】特開2014-234085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00-25/08
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の進行方向と略平行な方向の撮影が可能となるように設置され、前記列車およびホーム縁端部の所定範囲の画像を連続して取得する撮像部と、
前記撮像部によって連続して取得された前記列車の画像を解析して、前記列車がホームを出発して移動を開始したかを判断する判断部と、
前記判断部により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された場合に、以後に前記撮像部によって取得された前記ホーム縁端部の所定範囲の画像から前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する接近旅客の存在を検知する検知部と、
を備え
、
前記判断部は、前記列車の移動を、前記列車の屋根部の画像解析により判断することを特徴とする旅客接近検知システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記判断部により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された時点から、前記列車が列車進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間、前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する前記接近旅客の存在を検知することを特徴とする請求項1に記載の旅客接近検知システム。
【請求項3】
前記検知部は、機械学習を用いた画像解析により、前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する前記接近旅客の存在を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の旅客接近検知システム。
【請求項4】
前記検知部により前記接近旅客が検知された場合に、所定の装置の制御により通知する通知部を有することを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の旅客接近検知システム。
【請求項5】
前記所定の装置は、特殊信号発光装置や出発信号機、乗務員や駅係員が携帯する表示装置、列車非常停止装置のいずれかであることを特徴とする請求項
4に記載の旅客接近検知システム。
【請求項6】
前記撮像部は、前記ホーム縁端部から所定高さの位置に設置されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の旅客接近検知システム。
【請求項7】
旅客接近検知システムにより行われる旅客接近検知方法であって、
列車の進行方向と略平行な方向の撮影が可能となるように設置され、前記列車およびホーム縁端部の所定範囲を連続して撮像した画像を取得する取得工程と、
前記取得工程により連続して取得された前記列車の画像を解析して、前記列車がホームを出発して移動を開始したかを判断する判断工程と、
前記判断工程により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された場合に、以後に前記取得工程によって取得された前記ホーム縁端部の所定範囲の画像から前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する接近旅客の存在を検知する検知工程と、
を含
み、
前記判断工程においては、前記列車の移動を、前記列車の屋根部の画像解析により判断することを特徴とする旅客接近検知方法。
【請求項8】
前記検知工程においては、前記判断工程により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された時点から、前記列車が列車進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間、前記ホーム縁端部の所定範囲における前記接近旅客の存在を検知することを特徴とする請求項
7に記載の旅客接近検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客接近検知システム及び旅客接近検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車発車時における駅ホームの安全確認は、一般に、駅ホームの上方に設置された数台のカメラと、これらのカメラにより撮影された画像を表示する表示装置とにより、駅ホーム上の利用者の状況を乗務員に視覚的に知らせるシステムを構築することで行われていた。
また、鉄道車両の支障物検知において、鉄道車両が有する撮像部によって得られた画像および走行位置から、走行の支障となる支障物を検知し、検出したことを表示部に表示させるシステムに関する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、線路上での衝突回避のため、少なくとも2台の映像装置から受信した画像から物体及び障害物検出を実行して、線路及び物体を運転士モニタに提示し、障害物が検出されると警報ユニットに警報を発するシステムに関する発明が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、走行中の車両において、畳み込みニューラルネットワークを用いて、車載カメラにより取得された画像内の危険領域を推定し、危険度として出力する危険予測方法に関する発明が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-1476号公報
【文献】特表2019-537534号公報
【文献】特開2017-162438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されている発明では、車両に搭載されたカメラにより取得された画像により検出を行っているため、駅内の警報装置により警報を行う場合、車両内の装置と駅内の装置との間で通信接続を行う必要があり、システム構築が煩雑である。
さらに、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されているいずれの発明においても、汎用的な移動手段における支障物検出を目的しており、混雑した駅ホーム環境において効率的に旅客の接近を検出できない虞がある。特に、列車が駅ホームに到着後、列車を乗り降りする旅客で混雑している最中に、列車が駅ホームを出発した場合、ホームドアの存在しない狭隘なホームでは、旅客が出発した列車に接近し接触する虞があり、このような虞のある旅客を確実に検知することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、システム構築が比較的簡易で、駅ホームが混雑する列車出発時に旅客の列車への接近を効率的に検出することができる旅客接近検知システム及び旅客接近検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
列車の進行方向と略平行な方向の撮影が可能となるように設置され、前記列車およびホーム縁端部の所定範囲の画像を連続して取得する撮像部と、
前記撮像部によって連続して取得された前記列車の画像を解析して、前記列車がホームを出発して移動を開始したかを判断する判断部と、
前記判断部により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された場合に、以後に前記撮像部によって取得された前記ホーム縁端部の所定範囲の画像から前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する接近旅客の存在を検知する検知部と、
を備え、
前記判断部は、前記列車の移動を、前記列車の屋根部の画像解析により判断する。
【0009】
上記のような構成を有する旅客接近検知システムによれば、列車がホームを出発して移動を開始したと判断された場合に、ホーム縁端部の所定範囲における接近旅客の存在を検知するため、ホーム縁端部の所定範囲以外の領域・列車出発時以外の時間帯での検知を排除することができることとなって、旅客の列車への接近を効率よく検出することができる。
また、列車の出発時以外の時間帯では駅ホームの混雑が発生しにくいため、不要な列車の出発時以外の検知を排除することで誤検知の発生をより抑制することができるため、列車の運行阻害が防止できるので、安定輸送を確保できる。
また、撮像部によって取得された列車の屋根部の画像を解析して、列車がホームを出発して移動を開始したかを判断するため、当該旅客接近検知システムは、列車内の装置との接続が不要であることとなって、比較的簡易にシステム構築することができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記検知部は、前記判断部により前記列車がホームを出発して移動を開始したと判断された時点から、前記列車が列車進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間、前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する前記接近旅客の存在を検知する。
かかる構成によれば、列車出発時点から列車が列車進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間以外の時間帯での検知を排除することができ、旅客の列車への接近をより効率よく検出することができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記検知部は、機械学習を用いた画像解析により、前記ホーム縁端部の所定範囲に位置する前記接近旅客の存在を検知する。
かかる構成によれば、駅ホームが混雑する列車出発時のホーム縁端部の所定範囲における旅客の列車への接近をより精度よく検出することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記検知部により前記接近旅客が検知された場合に、所定の装置の制御により通知する通知部を有する。
かかる構成によれば、通知を受けた係員等は、緊急停止ボタンを押下することにより列車の起動を停止させることができ、これにより、接近旅客が走行中の列車に接触することを防ぐことができる。
【0014】
また、望ましくは前記所定の装置は、特殊信号発光装置や出発信号機、乗務員や駅係員が携帯する表示装置、列車非常停止装置のいずれかである。
かかる構成によれば、通知を受けた係員等は、緊急停止ボタンを押下することにより列車の起動を停止させることができ、これにより、接近旅客が走行中の列車に接触することを防ぐことができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記撮像部は、前記ホーム縁端部から所定高さの位置に設置される。
かかる構成によれば、見通しよくホーム縁端部の所定範囲における旅客の列車への接近を検知することができ、安全輸送を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る旅客接近検知システム及び旅客接近検知方法によれば、システム構築が比較的簡易で、駅ホームが混雑する列車出発時に旅客の列車への接近を効率的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る旅客接近検知システムの一実施例を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る旅客接近検知システムにおいて使用する画像データを取得する撮像部の据付け方の一例を示す図である。
【
図3A】実施例の撮像部が取得する画像における出発検知エリアの設定と判断部による列車の出発判断例(列車到着前)を示す図である。
【
図3B】実施例の撮像部が取得する画像における出発検知エリアの設定と判断部による列車の出発判断例(列車到着時)を示す図である。
【
図3C】実施例の撮像部が取得する画像における出発検知エリアの設定と判断部による列車の出発判断例(旅客乗降時)を示す図である。
【
図3D】実施例の撮像部が取得する画像における出発検知エリアの設定と判断部による列車の出発判断例(列車出発時)を示す図である。
【
図3E】実施例の撮像部が取得する画像における出発検知エリアの設定と判断部による列車の出発判断例(列車出発後)を示す図である。
【
図4】実施例の出発判断処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施例の接近旅客検知処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る旅客接近検知システム100の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る旅客接近検知システム100の一実施例のブロック図が示されている。
図1に示されているように、旅客接近検知システム100は、撮像装置10と、管理装置20と、報知装置30を備える。管理装置20は、通信ネットワークを介して撮像装置10と報知装置30と通信可能となっている。
【0020】
撮像装置10は、撮像部11及び通信部12を備える。
撮像部11は、動画を撮影可能なビデオカメラが望ましいが、短時間に複数枚の静止画を連続して撮影可能なスチールカメラでも良い。
通信部12は、管理装置20との間の通信に用いられる。例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、通信ネットワークを介したデータ通信を行う。また、通信部12は、撮像部11によって取得された画像データを管理装置20に出力する。
【0021】
図2には、本発明に係る旅客接近検知システム100において使用する画像データを取得する撮像装置10の据付け方の一例を示す。
図2では、列車TがホームHに停車している状態を表している。
撮像装置10は、ホームHの天井付近に備えられているケーブルラック等に設置されており、列車Tの進行方向と略平行な方向を撮影可能な場所に位置する。また、撮像装置10は、例えば、列車Tの1車両に2台ずつの間隔で設置されている。
撮像装置10が設置される位置のホームHからの高さは、
図2に示す高さh(例えば、3m以上)である。高さhは3mに限られず、列車Tの屋根部TR及びホームHのホーム縁端部Haを見通しよく撮像できる高さであれば良い。また、撮像装置10の撮影範囲は、少なくとも列車Tの一部(例えば、屋根部TR)及び
図2に示すホーム縁端部Haから所定距離だけホームHの内側に入った所定範囲wを含む範囲であり、本実施形態においては、所定範囲wは、例えば、250mmの範囲である。当該位置に撮像装置10を設置することで、ホーム縁端部Haの真上から、列車Tの屋根部TR及びホーム縁端部Haを見通しよく撮像することができる。
【0022】
図1に戻り、管理装置20は、例えば、駅事務室内に設置されており、制御部21と、記憶部22と、通信部23を備える。また、管理装置20は、中央の指令室や警備員詰め所等に設置されていてもよい。
制御部21は、管理装置20の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部22に記憶されたプログラムデータとCPUとの協働により、管理装置20の各部を統括制御する。
また、制御部21は、判断部211と、検知部212と、通知部213を備える。
【0023】
判断部211は、撮像装置10によって取得された列車Tの屋根部TRの画像を解析して、列車TがホームHを出発して移動を開始したかを判断する。
【0024】
検知部212は、判断部211により列車TがホームHを出発して移動を開始したと判断された場合に、以後に撮像装置10によって取得されたホーム縁端部Haの所定範囲wの画像を解析してホーム縁端部Haの所定範囲wに位置する接近旅客の存在を検知する。
また、検知部212による接近旅客の存在の検知は、機械学習を用いた画像解析によって実施される。当該接近旅客の存在の検知に関しては、既に種々のアルゴリズムや人工知能によるDNN(ディープ・ニューラル・ネットワーク)などが開発されているので、そのような公知の技術を用いることができる。
【0025】
通知部213は、検知部212により旅客の接近を検知された場合に、通信部23を介して、所定の装置である報知装置30の制御により係員、運転士、接近旅客、またはホームHに存在する旅客等に通知する。
【0026】
記憶部22は、管理装置20の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等の管理装置20の運用に必要となるデータを、制御部21から読み書き可能に記憶する。
【0027】
通信部23は、撮像装置10と、報知装置30との間の通信に用いられる部分である。例えば、通信用IC及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、制御部21の制御の元、通信ネットワークを介したデータ通信を行う。
【0028】
報知装置30は、特殊信号発光装置や出発信号機、乗務員や駅係員が携帯する表示装置、列車非常停止装置等である。
報知装置30は、報知部31及び通信部32を備える。
報知部31は、特殊信号発光装置や出発信号機の発光部、表示装置の表示部、列車非常停止装置の音声部である。また、報知部31は、検知部212により接近旅客が検知された場合に、検知アラートを発出する。報知部31による検知アラートを受けた係員は、緊急停止ボタンを押下することで列車の起動を停止し、接近旅客が走行中の列車に接触することを防ぐ。
通信部32は、管理装置20との間の通信に用いられる部分である。例えば、通信用IC及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、通信ネットワークを介したデータ通信を行う。また、通信部32は、検知部212により接近旅客が検知された場合に、通知部213より検知アラート発出の指示を受信する。
【0029】
図3A~
図3Eに、撮像装置10が取得する画像における出発検知エリアAの設定と判断部211による列車Tの出発判断例を示す図を示す。
図3Aは、ホームHに列車Tが不在の場合を示す図である。線路上に設けられた矩形のエリアは、出発検知エリアAである。また、ホームH上に設けられた矩形のエリアは、ホーム縁端部Haから所定距離だけホームHの内側に入った所定範囲wである。
図3Bは、列車Tが駅に到着し、出発検知エリアA内に列車Tの屋根部TRが進入している場合を示す図である。
図3Cは、列車TがホームHに停車し、旅客が列車Tに乗降車する場合を示す図である。出発検知エリアA内には、列車Tの屋根部TRが入っている状態である。
図3Dは、列車TがホームHから出発する場合を示す図である。判断部211は、撮像装置10が取得する画像データにおける出発検知エリアA内の列車Tの屋根部TRを画像解析することにより、列車Tが出発したことを判断する。
図3Eは、列車Tが駅から発車した後を示す図である。この場合、出発検知エリアA内から列車Tの屋根部TRは逸脱している。判断部211は、
図3Dに示す列車TがホームHを出発して移動を開始したと判断した時点から、列車Tの屋根部TRが列車進行方向において出発検知エリアA内から逸脱するまでの間において、検知部212により接近旅客の存在を検知する処理を行い、接近旅客がいるかいないかを判断する。
【0030】
以下、本実施形態に係る旅客接近検知システム100の動作について、
図4の出発判断処理を示すフローチャート、及び
図5の接近旅客検知処理を示すフローチャートに従って説明する。
【0031】
出発判断処理において、まず、判断部211は、通信部23を介して、撮像装置10から出発検知エリアAを含む画像データを受信する(ステップS1)。
次に、判断部211は、当該画像データ内の出発検知エリアAの画像解析を実施する(ステップS2)。
次に、判断部211は、出発検知エリアAに列車Tの屋根部TRが入っているか否かを判断する(ステップS3)。
出発検知エリアAに屋根部TRが入っている場合(ステップS3;YES)、判断部211は、出発検知エリアAに入っている屋根部TRは動いているか、つまり列車Tは動いているか否かを判断する(ステップS4)。
列車Tが動いている場合(ステップS4;YES)、判断部211は、列車Tは出発中であるか否かを判断する(ステップS5)。
列車Tが出発中である場合(ステップS5;YES)、判断部211は、
図5に示す接近旅客検知処理を開始する(ステップS6)。
【0032】
次に接近旅客検知処理において、検知部212は、画像データにおけるホーム縁端部Haから所定距離だけホームHの内側に入った所定範囲wの画像解析を実施する(ステップS61)。
次に、検知部212は、ステップS61において画像解析したホーム縁端部Haの所定範囲w内に旅客がいるか否かを判断する(ステップS62)。
ホーム縁端部Haの所定範囲w内に旅客がいる場合(ステップS62;YES)、検知部212は、検知アラートは発出済みか否かを判断する(ステップS63)。
検知アラートが発出済みでない場合(ステップS63;NO)、通知部213は、通信部23を介して、報知装置30に検知アラート発出の指示を送信し、報知装置30の報知部31は、検知アラートを発出し(ステップS64)、処理を終了し、
図4に示す出発判断処理に戻る。
また、検知アラートが発出済みである場合(ステップS63;YES)、検知部212は、処理を終了し、
図4に示す出発判断処理に戻る。
【0033】
また、ホーム縁端部Haの所定範囲w内に旅客がいない場合(ステップS62;NO)、検知部212は、検知アラートは発出済みか否かを判断する(ステップS65)。
検知アラートが発出済みである場合(ステップS65;YES)、通知部213は、通信部23を介して、報知装置30に検知アラート停止の指示を送信し、報知装置30の報知部31は、検知アラートを停止する(ステップS66)。
その後、検知部212は、処理を終了し、
図4に示す出発判断処理に戻る。
また、検知アラートが発出済みでない場合(ステップS65;NO)、検知部212は、処理を終了し、
図4に示す出発判断処理に戻る。
【0034】
次に判断部211は、通信部23を介して、撮像装置10から出発検知エリアAを含む次の画像データを受信する(ステップS7)。
次に、判断部211は、当該次の画像データ内の出発検知エリアAの画像解析を実施する(ステップS8)。
次に、判断部211は、次の画像データ内の出発検知エリアAに列車Tの屋根部TRが入っているか否かを判断する(ステップS9)。
出発検知エリアAに屋根部TRが入っている場合(ステップS9;YES)、つまり列車Tがまだ出発中である場合、判断部211は、ステップS5に戻る。
また、出発検知エリアAに屋根部TRが入っていない場合(ステップS3;NO)、列車Tが動いていない場合(ステップS4;NO)、列車Tが出発中でない場合(ステップS5;NO)、及び出発検知エリアAに屋根部TRが入っていない場合(ステップS9;NO)、つまり出発検知エリアAから屋根部TRが逸脱した場合、判断部211は、接近旅客の存在検知不要の時間帯であると判断し(ステップS10)、ステップS1に戻る。
【0035】
上記出発判断処理は、管理装置20の制御部21が処理終了の指示を受信するまで継続的に実施される。
【0036】
以上、上記の実施形態に係る旅客接近検知システム100は、列車Tの進行方向と略平行な方向の撮影が可能となるように設置され、列車Tおよびホーム縁端部Haの所定範囲wの画像を連続して取得する撮像部11と、撮像部11によって連続して取得された列車Tの画像を解析して、列車TがホームHを出発して移動を開始したかを判断する判断部211と、判断部211により列車TがホームHを出発して移動を開始したと判断された場合に、以後に撮像部11によって取得されたホーム縁端部Haの所定範囲wの画像からホーム縁端部Haの所定範囲wに位置する接近旅客の存在を検知する検知部212と、を備える。
従って、列車がホームを出発して移動を開始したと判断された場合に、ホーム縁端部の所定範囲における接近旅客の存在を検知するため、ホーム縁端部の所定範囲以外の領域・列車出発時以外の時間帯での検知を排除することができることとなって、旅客の列車への接近を効率よく検出することができる。
また、不要な列車の出発時以外の検知を排除することで誤検知の発生をより抑制することができるため列車の運行阻害が防止できるので、安定輸送を確保できる。
また、撮像部によって取得された列車の画像を解析して、列車がホームを出発して移動を開始したかを判断するため、当該旅客接近検知システムは、列車内の装置等との接続が不要であることとなって、比較的簡易にシステム構築することができる。
【0037】
また、検知部212は、判断部211により列車TがホームHを出発して移動を開始したと判断された時点から、列車Tが列車T進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間、ホーム縁端部Haの所定範囲wに位置する接近旅客の存在を検知する。
従って、列車出発時から列車が列車進行方向の所定範囲を逸脱するまでの間以外の時間帯で誤検知を排除することができ、旅客の列車への接近をより効率よく検出することができる。
【0038】
また、検知部212は、機械学習を用いた画像解析により、ホーム縁端部Haの所定範囲wに位置する接近旅客の存在を検知する。
従って、駅ホームが混雑する列車出発時のホーム縁端部の所定範囲における旅客の列車への接近を精度よく検出することができることができる。
【0039】
また、判断部211は、列車Tの移動を、列車Tの屋根部TRの画像解析により判断する。
従って、撮像部によって取得された列車の屋根部の画像を解析して、列車がホームを出発して移動を開始したかを判断するため、当該旅客接近検知システムは、列車内の装置と等との接続が不要であることとなって、比較的簡易にシステム構築することができる。
【0040】
また、検知部212により接近旅客が検知された場合に、所定の装置の制御により通知する通知部213を有する。
従って、通知を受けた係員等は、緊急停止ボタンを押下することにより列車の起動を停止させることができ、これにより、接近旅客が走行中の列車に接触することを防ぐことができる。
【0041】
また、所定の装置は、特殊信号発光装置や出発信号機、乗務員や駅係員が携帯する表示装置、列車非常停止装置のいずれかである。
従って、通知を受けた係員等は、緊急停止ボタンを押下することにより列車の起動を停止させることができ、これにより、接近旅客が走行中の列車に接触することを防ぐことができる。
【0042】
また、撮像部11は、ホーム縁端部Haから所定高さhの位置に設置される。
従って、見通しよくホーム縁端部の所定範囲への旅客の接近を検知することができ、安全輸送を確保できる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、撮像装置10は、列車Tの1車両に2台ずつの間隔で設置されているとしたがこれに限らない。列車Tの全車両分の屋根部TR及びホーム縁端部Haを見通しよく撮像することができる撮像装置10を設置してもよい。この場合、撮像装置10は1台を設置すればよい。
【0044】
また、上記実施形態において、ホーム縁端部Haの所定範囲wの幅は250mmであるとしたがこれに限らない。旅客が列車Tに接近すると危険である距離であればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 撮像装置
11 撮像部
12 通信部
20 管理装置
21 制御部
211 判断部
212 検知部
213 通知部
22 記憶部
23 通信部
30 報知装置
31 報知部
32 通信部
100 旅客接近検知システム
H ホーム
Ha ホーム縁端部
T 列車
TR 屋根部