(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】原稿給送装置及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
(21)【出願番号】P 2020203599
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】福田 法旦
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-040522(JP,A)
【文献】特開2019-116349(JP,A)
【文献】特開2015-202912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される原稿台を昇降させる昇降手段と、
前記原稿台の昇降における可動範囲の最下位置に配置され、前記原稿台が、該原稿台の昇降動作の原点となるホーム位置にいることを検知する第1の検知手段と、
前記原稿台に原稿が積載されているか否かを検知する第2の検知手段と、
前記原稿台に積載された最上面の原稿を取り込む取込手段と、
前記取込手段により取込可能な位置まで前記最上面の原稿が上昇したことを検知する第3の検知手段と、
前記原稿台を昇降させるために前記昇降手段が駆動した駆動量をカウントして、前記原稿台が前記ホーム位置から上昇した上昇量をカウント値として保持しつつ、前記カウント値に基づいて前記昇降手段の昇降動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記取込手段により原稿が順次取り込まれて給送されている間に、前記第3の検知手段が原稿を検知していない間は前記昇降手段により前記原稿台を上昇させ、原稿を検知した場合に前記原稿台を停止させ、
前記第2の検知手段が原稿を検知しなくなったときに、前記カウント値が既定の正常範囲から外れていた場合に、前記昇降手段を制御して前記第1の検知手段の検知結果に基づいて前記原稿台を前記ホーム位置まで下降させることを特徴とする原稿給送装置。
【請求項2】
前記原稿台の中間待機位置を設定可能であり、前記制御手段は、前記第2の検知手段が原稿を検知しなくなったときに、前記カウント値が正常範囲内である場合には、前記原稿台を前記中間待機位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の原稿給送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記取込手段により原稿が順次取り込まれている間に、前記ホーム位置から前記原稿台の昇降可能な範囲の上限位置までの上昇量に相当する値に前記カウント値が到達しても前記第2の検知手段が原稿を検知している場合、前記取込手段による原稿の取り込みを停止し、前記原稿台を前記ホーム位置まで下降させた後に前記原稿台を上昇させて前記取込手段による原稿の取り込みを再開するよう前記昇降手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の原稿給送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の検知手段が原稿を検知しなくなったときに前記カウント値が前記正常範囲内であれば、前記原稿台の前記ホーム位置から前記取込可能な位置までの上昇量に相当する値を前記カウント値としてセットすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の原稿給送装置。
【請求項5】
前記正常範囲の最大値は、前記ホーム位置から前記原稿台の昇降可能な範囲の上限位置まで前記原稿台が上昇する上昇量に相当する値とし、前記正常範囲の最小値は、前記ホーム位置から前記取込可能な位置よりも原稿1枚の最大厚だけ下の位置まで前記原稿台が上昇する上昇量に相当する値とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の原稿給送装置。
【請求項6】
前記昇降手段は駆動パルスによって駆動されるモーターであり、前記カウント値は前記モーターが前記原稿台を上昇させる方向に回転したときのパルス数に応じて加算され、前記モーターが前記原稿台を下降させる方向に回転したときのパルス数に応じて減算され、前記第1の検知手段が前記原稿台を検知したときに0にリセットされることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の原稿給送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の原稿給送装置と、
前記原稿給送装置により給送された原稿の画像を読み取る読み取り手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を給送可能な原稿給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターを駆動することで昇降可能な原稿台に積載された複数枚の原稿の最上面から順次原稿を分離して給送する原稿給送装置及び給送される原稿の画像を読み取る画像読取装置が知られている。このような装置において、原稿台に積載可能な最大量に対し少量の原稿を積載するときには、原稿台を可動範囲の中間位置で待機させることで上昇時間を短縮する方法が知られている。
【0003】
ここで、上記のような装置では、原稿台が最下位置であるホーム位置にあることを検知するセンサが設けられており、センサ位置を原点としてモーター駆動に伴うモーターパルスをカウントして原稿台の位置を制御している。そのため、原稿台の正確な位置出しをするには、原稿台を定期的に最下位置であるホーム位置へ下降させてカウント値を初期化する必要がある。
【0004】
このような原稿台の位置制御動作を行いつつ、原稿台を可動範囲の中間位置で待機させる動作を行う場合、次のような問題が発生する。つまり、原稿台に積載されている原稿束の給送が終わる度に原稿台をホーム位置へ下降させて位置出しを行うと、一旦原稿台を最下位置まで下降させてから、再び中間位置まで上昇させることになり、原稿台の昇降動作に時間がかかり、ユーザーの待ち時間が増加する。
【0005】
特許文献1では、原稿台を中間待機位置から上昇させ始めたときからのモーターのパルス数をカウントし、原稿台を中間待機位置へ下降させるときにはパルス数の積算値分だけ下降させることで、原稿台をホーム位置まで下降させることなく中間待機位置に戻す方法が提案されている。
【0006】
特許文献1に開示されている装置では、ユーザーの誤操作等により生じる原稿台への過負荷に対しては、モーターから原稿台への駆動力の伝達経路の間にトルクリミッタを設けて対処している。そのため、トルクリミッタに過負荷が作用したことを別途設けられたセンサにより検知し、センサが過負荷を検知すると、原稿台の位置ズレが発生したと判断して原稿台を最下位のホーム位置へ下降させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、原稿台への過負荷の検出に専用のセンサを設ける必要がある。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、原稿台のホーム位置出しを伴う原稿台の位置制御を行う場合に、待ち時間の増加や専用のセンサを追加することなく、過負荷等による原稿台の位置ズレを補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる原稿給送装置は、原稿が積載される原稿台を昇降させる昇降手段と、前記原稿台の昇降における可動範囲の最下位置に配置され、前記原稿台が、該原稿台の昇降動作の原点となるホーム位置にいることを検知する第1の検知手段と、前記原稿台に原稿が積載されているか否かを検知する第2の検知手段と、前記原稿台に積載された最上面の原稿を取り込む取込手段と、前記取込手段により取込可能な位置まで前記最上面の原稿が上昇したことを検知する第3の検知手段と、前記原稿台を昇降させるために前記昇降手段が駆動した駆動量をカウントして、前記原稿台が前記ホーム位置から上昇した上昇量をカウント値として保持しつつ、前記カウント値に基づいて前記昇降手段の昇降動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記取込手段により原稿が順次取り込まれて給送されている間に、前記第3の検知手段が原稿を検知していない間は前記昇降手段により前記原稿台を上昇させ、原稿を検知した場合に前記原稿台を停止させ、前記第2の検知手段が原稿を検知しなくなったときに、前記カウント値が既定の正常範囲から外れていた場合に、前記昇降手段を制御して前記第1の検知手段の検知結果に基づいて前記原稿台を前記ホーム位置まで下降させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿台のホーム位置出しを伴う原稿台の位置制御を行う場合に、待ち時間の増加や専用のセンサを追加することなく、過負荷等による原稿台の位置ズレを補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置の構成を概略的に示す断面図。
【
図2】
図1の画像読取装置の主要部の構成を概略的に示す模式図。
【
図3】シート積載台に上方向の過負荷がかかった場合の給紙部周辺を示す模式図。
【
図4】シート積載台に下方向の過負荷がかかった場合の給紙部周辺を示す模式図。
【
図5】第1の実施形態での電源ON後の手順を示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態でのホーム位置出しの手順を示すフローチャート。
【
図7】第1の実施形態での中間待機位置への移動手順を示すフローチャート。
【
図8】第1の実施形態でのシート積載台制御の手順を示すフローチャート。
【
図9】第2の実施形態でのシート積載台制御の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0014】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態に係る原稿給送装置及び当該原稿給送装置を備える画像読取装置について説明する。
【0015】
<画像読取装置200>
図1は、第1の実施形態に係る、原稿給送装置を備える画像読取装置の構成を概略的に示す部分断面図であり、
図2は、
図1の画像読取装置の主要部の構成を概略的に示す模式図である。
【0016】
図1及び
図2において、画像読取装置200は、シート取込装置101を備える。シート積載台(原稿台)1には複数枚のシート(原稿)Fが積載(載置)されており、シート積載台1は昇降自在に構成されている。積載台駆動モーター2は、回転駆動されることにより、シート積載台1を昇降させる。シート検知センサ3は、シート積載台1に積載されたシートがシート取込位置(取込可能な位置)にあることを検知する。シート積載台1に積載されたシートFがシート取込位置に無い場合は積載台駆動モーター2を駆動し、シート最上面が取込位置になるようシート積載台1を移動させる。シート積載検知センサ12は、シート積載台1のシート積載面1aにシートFが積載されていることを検知する。
【0017】
ピックアップローラ4(取込ローラ)は、シート積載台1のシートを順次取り込んで給送ローラ6へ送り出す。ピックアップモーター5は、ピックアップローラ4を回転させる。
図2ではシート上面がシート取込位置にあり、ピックアップローラ4を回転させればシートFの取り込みが始まる状態である。
【0018】
給送ローラ6は、ピックアップローラ4の下流側に設けられており、給送モーター8によって、シートFを搬送方向下流側に給送する方向に回転するよう駆動されている。給送ローラ6はワンウェイクラッチを介して給送モーター8と連結され、給送モーター8の駆動は一方向のみ伝達される。給送モーター8により給送するときは給送ローラ6に駆動力が伝達されるが、レジストローラ17,18等によりシートFが給送モーター8以上の速度で搬送されるときは、ワンウェイクラッチにより給送モーター8の回転は伝達されず、給送ローラ6はシートFの搬送に連れて従動回転する。給送ローラ6と搬送路を挟んで対向して設けられてニップを形成する分離ローラ7は、シートFを搬送方向上流側に押し戻す方向に回転する回転力を不図示のトルクリミッタ(スリップクラッチ)を介して分離モーター9から常時受けている。給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートFが1枚存在するときは、上記トルクリミッタが伝達する分離ローラ7がシートFを上流側に押し戻す方向の回転力の上限値より、給送ローラ6によって下流側に送られる方向への回転力が上回り、分離ローラ7は給送ローラ6に追従して回転する(連れ回りする)。
【0019】
一方、給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートFが複数枚存在するときは、分離ローラ7のシートFを上流側に押し戻す方向の回転力がシートF同士の摩擦によって搬送方向下流側に送られる方向に働く力よりも大きく、最も上のシート以外が下流側に搬送されないようにする。
【0020】
このように給送ローラ6のシートFを下流側に給送する作用と、分離ローラ7のシートFを下流側に搬送されないようにする作用とによって、シートFが重なって給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部に送り込まれたとき、最も上のシートFのみ下流側に給送される。そして、それ以外のシートFは下流側に搬送されないようにされることで、重なったシートFが分離給送される。このように、給送ローラ6と分離ローラ7とは、一対の分離ローラ対42を構成する。分離ローラ対42は、搬送対象の複数のシートFを1枚ずつ分離して搬送するためのシート分離部の一例として機能する。
【0021】
本実施形態では、分離ローラ7によるシートFの分離力を変更できる。分離モーター9を回転させずに保持するだけでもシートFを分離できる。分離ローラ7がシートFを上流側へ戻す方向へ回転するよう分離モーター9を駆動することでさらに強い分離力が得られる。
【0022】
なお、本実施形態では、分離ローラ対42を使用しているが、分離ローラ対42の代わりに分離ローラと給送ローラのどちらか一方をベルトにした、分離ベルトローラ対を使用してもよい。また、分離ローラを分離パッドに置き換え、シートFに当接することで下流側へ複数枚のシートFが搬送されることを防ぐようにしてもよい。
【0023】
また、分離されたシートFが通過する位置に重送検知センサ30を備えることで、シート分離部によってシートFが一枚ずつに分離できているかを検知することができる。本実施形態においては重送検知センサ30として超音波の送受信部を用いた検知装置を用いており、搬送路を跨いだ送受信部間における超音波の減衰量によって重送を検知することができる。
【0024】
搬送モーター10は、シート分離後のシートFを、画像読取センサ14,15(画像読取部)によってシート(原稿)Fの画像の読み取りが行われる画像読取位置まで搬送し、更に排出位置まで搬送するため、レジストローラ18、搬送ローラ21,23を駆動する。各ローラの駆動により、ローラ対として構成される対向側の各ローラ(レジストローラ17、搬送ローラ20,22)が従動することで、シートを排出位置まで搬送することができる。また、搬送モーター10は、シートFの読み取りに最適な速度や、シートFの解像度等の設定に応じてシートFの搬送速度を変更できるよう各ローラを駆動する。なお、レジストクラッチ19は、搬送モーター10の回転駆動力をレジストローラ18(原稿搬送部)に伝達、又は当該伝達を遮断することにより、レジストローラ18を駆動し、又はその駆動を停止する。
【0025】
ニップ隙間調整モーター11は、給送ローラ6と分離ローラ7との隙間、或いは分離ローラ7に対してシートを介して給送ローラ6が圧接される圧接力を調整する。これにより、シートFの厚みに適合した隙間、或いは圧接力が調整され、シートFを分離することができる。
【0026】
搬送ローラ20,21で構成される搬送ローラ対、搬送ローラ22,23で構成される搬送ローラ対、及び
図1に示すさらに下流側のローラ対は、シートを排出積載部44に搬送する。上ガイド板40と下ガイド板41との2つのガイド板は、分離ローラ対、レジストローラ対、各搬送ローラ対及び下流側のローラ対により搬送されるシートFを案内する。
【0027】
なお、画像読取装置200は、装置全体の動作を制御する制御部45を備えている。制御部45は、例えば、1つ以上のプロセッサ(CPU)で構成される。
【0028】
<シート積載台の位置制御>
シート積載台1は昇降動作の可動範囲の最下位置に配置されたホーム位置検知センサ13を備え、ホーム位置検知センサ13の検知結果に基づいてシート積載台1がホーム位置にあることを検知する。積載台駆動モーター2はステッピングモーター(パルスモーター)であり、制御部45からの駆動パルスにより駆動される。制御部45は、積載台駆動モーター2を駆動しながらモーターの駆動分解能(最小単位)である駆動パルスをカウントし、カウント値をパルスカウンタとして保持する。上昇駆動時は正方向にカウントアップ(カウントを加算)し、下降駆動時は負方向にカウントダウン(カウントを減算)する。また、ホーム位置をシート積載台1の昇降動作の原点とし、ホーム位置からの上昇量をモーターのパルス数でカウントすることで、シート積載台1の現在位置を把握することができる。
【0029】
ユーザーは積載したいシート束の枚数に応じてシート積載台1の待機位置を複数の選択肢から選択することで設定可能である。積載可能な最大量のシートFを積載したい場合は最下位置のホーム位置を設定する。例えば最大500枚積載可能なシート積載台1であれば、ホーム位置は500枚積載位置となる。一方、シートFを少量だけ積載したい場合はホーム位置よりも上方に設定された中間位置を設定する(設定可能)。予め決められた枚数、例えば、300枚、100枚といった枚数を積載可能な位置を中間待機位置とすれば、中間待機位置として、300枚積載位置、100枚積載位置が設定される。ユーザーはこれらの500枚、300枚、100枚のいずれかの待機位置を選択することができる。ユーザーにより選択された待機位置が中間待機位置の300枚か100枚の積載位置であれば、ホーム位置から必要な上昇距離に相当するパルス数だけ積載台駆動モーター2を上昇方向に駆動する。
【0030】
なお、本実施形態では、積載台駆動モーター2はステッピングモーターで構成したが、モーターによる駆動量が分かればよく、ステッピングモーターに限定されるものではない。例えば、DCモーターを替わりに用い、DCモーターにエンコーダーを設ければ駆動量をカウントすることができる。
【0031】
<過負荷によるシート積載台位置ズレ>
図3の模式図を元に、シート積載台1にユーザーにより誤って過負荷が加えられ、シート積載台1が本来あるべき位置からずれてしまった場合の動作について説明する。
【0032】
図3(a)では、シート積載台1はホーム位置検知センサ13により検知されており、ホーム位置にある状態である。ここからユーザーによる設定に従い中間待機位置へ移動した状態を
図3(b)に示す。ここではシート積載台1の実際の位置と、パルスカウンタによる想定位置とは一致している。その後、ユーザーはシート積載台1にシート束を積載しつつ、誤ってシート積載台1を押し上げてしまったとする。すると、実際のシート積載台1の位置はパルスカウンタによる想定位置よりも上方に移動してしまい、位置ズレが発生してしまう。ホーム位置検知センサ13より上方にシート積載台1があるため、現時点では位置ズレを検知することはできない。とはいえ、ユーザーが積載したいシートFは積載できているので、このままシートFの給送を始める。
【0033】
シート積載台1を上昇させ、シート検知センサ3でシート上面が取込位置まで上昇したことを検知したら、シート積載台1を停止させる(
図3(d))。ピックアップローラ4は
図3(a)~(c)ではシート検知センサ3よりも下方にあるが、シート積載台1の上昇により押し上げられ、ピックアップローラ4の自重によりシート上面に押圧されて
図3(d)のようになり、シート上面とピックアップローラ4との接触部が取込位置と同じ高さになる。この状態で給送モーター8を駆動して給送ローラ6を回転させつつ、ピックアップモーター5を駆動してピックアップローラ4を回転させるとシート分離部にシートFを取り込んでシートを分離できる(
図3(e))。
【0034】
そのままシートFを順次給送していき、シート検知センサ3がシートFを検知していない間にシート積載台1を上昇させる制御を繰り返す。最後のシートを給送した図が
図3(f)である。シート後端がシート積載検知センサ12を通過すると、シート積載台1にシートが残っていないと判断し、シート給送を終了し、シート積載台1の上昇も停止する。このとき、シート積載台1の実際の位置は取込位置にある。一方で、パルスカウンタによる想定位置は
図3(c)において過負荷で上昇させられた分の位置ズレが生じたままとなっているため、このまま中間待機位置まで下降すると、
図3(g)のずれた位置のままで待機することになる。このように実際のシート積載台位置とパルスカウンタによる想定位置とに大きな差があったときのみ、シート積載台1を一旦ホーム位置まで下降させて、ホーム位置出しをした後に中間待機位置まで上昇させることで、
図3(b)の正しい位置に移動させる。
【0035】
図3の例では、ユーザーによる過負荷でシート積載台1が上方へ移動した場合を示したが、
図4に下方へ移動した場合を示す。
図4(a)、(b)は
図3と同じであり、シート積載台1を下方へ押し下げた場合の図が
図4(c)である。このままシート積載台1を上昇させ、給送を順次行う(
図4(d)、(e))。最後のシートFを給送したとき(
図4(f))、実際のシート積載台位置は
図3(f)と同じであるが、パルスカウンタによる想定位置は異なり、押し下げた分だけ上方にある。このまま中間待機位置まで下降すると
図4(g)のようになり、
図4(c)と同様に位置がずれた状態となる。このため一旦ホーム位置出しをした後に中間待機位置まで上昇させることで
図4(b)の正しい位置に移動させる。
【0036】
<シート積載台の中間待機位置への移動フロー>
シート積載台1の動作について、まず画像読取装置200の電源をONにしたときから、中間待機位置へ移動して待機するまでを
図5~
図7のフローチャートを元に説明する。
【0037】
まず、画像読取装置200の電源をONにする(S101)。すると、まずシート積載台1のホーム位置出しをする(S102)。ホーム位置出しは
図6のフローチャートの通りである(S201)。
【0038】
図6において、シート積載台1の下降動作を開始し(S202)、ホーム位置検知センサ13がシート積載台1を検知し、シート積載台1がホーム位置に下降したことを確認するまで待つ(S203でNo)。ホーム位置まで下降すると(S203でYes)、パルスカウンタを0にクリアし(S204)、この位置を昇降動作の原点とする。同時にシート積載台1の下降動作を停止し(S205)、ホーム位置出しは終了となる(S206)。このとき
図3(a)の状態になり、シート積載台1はホーム位置検知センサ13で検知された位置で停止している。
【0039】
次に、
図5のS103に戻り、ユーザーによる待機位置の設定がホーム位置か中間位置かを確認する。設定がホーム位置であれば(S103でNo)、シート積載台1はすでにホーム位置にあるため、終了となる(S105)。
【0040】
設定が中間待機位置であれば(S103でYes)、中間待機位置へ移動する(S104)。
図7は中間待機位置へ移動する動作を示すフローチャートである。
図5のS104に入る時点ではシート積載台1はホーム位置にあるため、上昇のみが必要であるが、
図7の処理はどの位置にあっても中間位置へ移動できる処理になる。
【0041】
図7において、まず、すでに中間位置にあるかどうかを判断するため、パルスカウンタと中間位置に相当するパルス数とを比較する(S302)。もしパルスカウンタが中間位置のパルス数と一致していれば(S302でYes)、シート積載台1は中間位置にあるため、処理を終了する(S308)。
【0042】
もし一致していなければ(S302でNo)、中間位置よりも上方か下方かを判断する(S303)。パルスカウンタが中間位置に相当するパルス数よりも大きければ(S303でYes)、シート積載台1は中間位置よりも上方にあるため、シート積載台1の下降を開始する(S304)。パルスカウンタが中間位置に相当するパルス数よりも小さければ(S303でNo)、シート積載台1は中間位置よりも下方にあるためシート積載台1の上昇を開始する(S305)。積載台駆動モーター2の駆動に伴いパルスカウンタを常に更新し、パルスカウンタが中間位置に相当するパルス数と一致するまでは駆動を継続する(S306でNo)。パルスカウンタが中間位置に相当するパルス数と一致すると(S306でYes)、シート積載台1の動作を停止し(S307)、中間待機位置への移動処理は終了となる(S308)。ここまでで
図5の電源ON時の処理が終了となる(S105)。このとき
図3では(b)の状態となり、シート積載台1はホーム位置よりも上方の中間位置で待機する。
【0043】
<給送中のシート積載台の動作フロー>
次に、
図8のフローチャートを元に、ユーザーの操作によるシートの給送及び画像読取のときのシート積載台1の動作について説明する。
【0044】
画像読取装置200が待機状態となったときから処理が始まる(S401)。このときにユーザーはシート積載台1にシートFを積載する。その間、ユーザーからの操作で給送開始指示があるまで待機する(S402でNo)。
【0045】
給送開始指示があれば(S402でYes)、給送すべきシートFがシート積載台1にあるか確認する(S403)。シートFが無ければ(S403でNo)、給送開始指示をキャンセルし、再度指示があり、かつ、シートFが積載されるまで待機する。シート積載台1にシートFがあるのを検知できれば(S403でYes)、シート積載台1を上昇させ(S404)、シート検知センサ3により取込位置でシートFを検知するまでシート積載台1の上昇を継続する(S405でNo)。取込位置でシートFを検知できれば(S405でYes)、シート積載台1の上昇を停止する(S406)。
【0046】
ここまででシートを給送する準備が整ったため、シートFの給送を開始し(S407)、シート積載台1に積載されたシートFを順次給送していく。ここからシート積載台1のシートFの最上面と取込位置が常に一致するようにシート積載台1の動作を制御する。
【0047】
取込位置にシートFがあるかどうかをシート検知センサ3で検知する。取込位置でシートFを検知した場合(S408でYes)、シート積載台1が動作中なら停止し(S410)、シートFを検知していない場合(S408でNo)、シート積載台1を上昇させる(S409)。シート積載台1が上昇中のとき、パルスカウントが上限位置に達していなければ(S411でNo)、シート積載台1の上昇を続ける。
【0048】
シート積載検知センサ12でシートFの積載を検知していれば(S414でYes)、給送を継続できるためS408に戻る。もしシートFの積載を検知しなくなれば(S414でNo)、シート積載台1を停止する(S415)。
【0049】
S411において、パルスカウントが上限位置に到達した場合(S411でYes)、シート積載台1が可動範囲の上限にある可能性がある。例えば、シート積載検知センサ12上に異物等があり常にシートを検知してしまう状態にあると、シート積載台1をどこまででも上昇させてしまい、装置の破損に繋がる可能性があり、制限を設ける必要がある。パルスカウント値で上限位置に達していれば、シートFの給送を一旦停止した後(S412)、シート積載台1をホーム位置へ移動させ(S413)、ホーム位置出しをしてパルスカウントをクリア(リセット)する。その後、シート積載台1を再度上昇させ(S404)、シートの給送を再開する。
【0050】
図8のS415でシート積載台1を停止した後、パルスカウント値が正常かどうか(正常範囲内かどうか)を判断する(S416)。シート積載台1が中間待機位置で待機中のときかホーム位置から上昇する間にユーザーが誤ってシート積載台1を押し下げたり押し上げたり過負荷をかけてしまうと、シート積載台1の位置がパルスカウント値に相当する想定位置からずれてしまう。位置ズレが発生したかどうかを判断するため、パルスカウンタが既定の正常範囲内かどうかを判断する(S416)。もし正常範囲内であれば位置ズレは起きていないと判断し、ホーム位置出しをすることなく中間待機位置へ移動する(S418)。もしパルスカウンタが正常範囲外であれば位置ズレが起きている可能性があるため、シート積載台1をホーム位置へ移動させてホーム位置出しを行い(S417)、その後に中間待機位置へ移動させる(S418)。移動が終わると終了となる(S419)。
【0051】
図8のS416でパルスカウンタが正常範囲内かどうか判定している。この正常範囲の最大値は、シート積載台1の昇降できる可動範囲の上限位置に相当するパルス数とする。本実施形態では、S411によってパルスカウントが上限位置を超えないようになっているが、シート積載台1が上限位置を超えて上昇しても装置が破損しない構成となっていればS411及びS412,S413の処理を省略しても良い。その場合、S416の正常範囲の最大値を超えているかの判断が常に有効になる。
【0052】
正常範囲の最小値は、取込位置に相当するパルス数から、給送可能なシート1枚(原稿1枚)の最大厚分のパルス数を減算した値とする。この理由は、
図3のようにシート積載台1に上方向に過負荷がかかって位置ズレが起きた場合、
図3(f)のようにシート積載台1が取込位置と同じ高さにあるとき、パルスカウンタによる想定位置が取込位置よりも下方になる。このときにシート積載検知センサ12に異物等があってシートが無いにもかかわらず検知していると、パルスカウンタでの上限位置まではシート積載台1を上昇させようとする。このときに正常範囲の最小値が取込位置よりも大きく下方に設定されていると、シート積載台1を上限位置を大きく超えて上昇させようとしてしまう。本実施形態では、この状況を考慮し、過負荷が無かったときに確実に正常範囲に入りつつ、過負荷が生じたときでも可動範囲の上限位置を大きく超えないような範囲設定としている。
【0053】
図8のS416でNoと判定した場合、シート積載台1の位置に異常があることをユーザーに通知しても良い。表示部やブザーを備えた画像読取装置においては、表示部にシート積載台1の異常を表示したりブザーを鳴らしたりしてユーザーへ通知する。ユーザーがシート積載台1に過負荷をかけた場合、それに気付かなければ何度も繰り返される可能性があり、装置が破損してしまう恐れがある。ユーザーに通知することで注意を促せば、過負荷をかける頻度が低くなって装置の破損を防止できる。
【0054】
中間位置での待機中や給送動作中に、ホーム位置検知センサ13でシート積載台1を検知した場合、シート積載台1の位置が異常だと判断しても良い。中間位置での待機中や給送動作中にはシート積載台1はホーム位置検知センサ13で検知されておらず、さらにシート積載台1は停止または上昇しており、ホーム位置検知センサ13でシート積載台1を検知することは異常状態であると判断できる。この場合にも表示部やブザーによりユーザーへ通知しても良い。シート積載台1がホーム位置まで押し下げられたとすると、仕様を大幅に超えるシートの積載やユーザーの誤操作などにより非常に大きな過負荷がかかったと想定される。その場合は上述の通知内容よりもさらに強く注意を促しても良い。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る原稿給送装置及び当該原稿給送装置を備える画像読取装置について説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、主に第1の実施形態との相違点について説明する。
【0056】
図9のフローチャートは、第1の実施形態で示した
図8に対しS502の処理を追加したものであり、
図8と同じ処理については同じ符号を付している。
図9において、シートの給送中にシート積載検知センサ12でシートを検知しなくなったら(S415)、シートの給送は終了となるが、そのときにパルスカウンタが正常範囲内にあれば(S416でYes)、シート積載台1をホーム位置から取込位置まで上昇させるのに必要なパルス数をこの時点でのパルスカウンタにセット(更新)する(S502)。これ以降にシート積載台1を昇降させるときはここでセットした値を元にカウントアップ/カウントダウンを進める。
【0057】
このS502の処理によりパルスカウンタが正常範囲内であっても僅かな位置ズレが生じていれば補正される。
【0058】
図3、
図4で説明すると、
図3(f)、
図4(f)の状態においてパルスカウンタによる想定位置はずれているが、このときのシート積載台1の位置は取込位置となっているため、パルスカウンタには取込位置に相当するパルス数をセットする。これにより、パルスカウンタによる想定位置を実際のシート積載台1の位置に一致させることができる。そして、シート積載台1を中間待機位置まで下降させるとそれぞれ
図3(b)、
図4(b)の正しい位置に移動できる。よって、シート積載台1に対してユーザーの誤操作により過負荷がかかり、上昇あるいは下降してしまってもホーム位置出しをすることなく正しい位置へ移動できるようになる。また、給送途中にシート積載台1に残っているシートすべてを引き抜いた場合、
図9のS416においてパルスカウンタが正常範囲外(S416でNo)と判定することになり、その場合はホーム位置出しをするため、位置ズレが生じない。
【符号の説明】
【0059】
F:シート、1:シート積載台、1a:シート積載面、2:積載台駆動モーター、3:シート検知センサ、4:ピックアップローラ、5:ピックアップモーター、6:給送ローラ、7:分離ローラ、8:給送モーター、9:分離モーター、10:搬送モーター、11:ニップ隙間調整モーター、12:シート積載検知センサ、13:ホーム位置検知センサ、14,15:画像読取センサ、42:分離ローラ対、45:制御部、101:シート取込装置、200:画像読取装置