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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20240827BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240827BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C11/03 300A
B60C11/12 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020218549
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103736
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 泰一
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-092110(JP,A)
【文献】特開2018-177095(JP,A)
【文献】特開2019-194051(JP,A)
【文献】特開平03-000506(JP,A)
【文献】特開2019-104417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向外端に位置する踏面、及びタイヤ回転軸方向外端に位置する外側面を有し、トレッド部のタイヤ回転軸方向外端に位置する陸部と、
前記陸部にタイヤ周方向へ間隔をあけて複数設けられ、それぞれ前記外側面からタイヤ回転軸方向内側へ延びるとともに前記踏面からタイヤ径方向内側へ窪む横溝と、
タイヤ周方向に隣り合う一対の前記横溝間にタイヤ周方向へ間隔をあけて複数設けられ、それぞれ前記踏面からタイヤ径方向内側へ窪むとともにタイヤ回転軸方向へ延び、前記外側面側に位置する外端部が前記外側面に対して間隔をあけて位置するサイプと、
前記外側面に設けられ、タイヤ回転軸方向内側へ窪むとともにタイヤ径方向に延びる凹部と
を備え、
前記凹部は、前記サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置にそれぞれ配置され、前記一対の横溝間において、タイヤ周方向中央側に位置する内側凹部と、タイヤ周方向外側に位置する外側凹部とを含み、
前記内側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法よりも短い、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側凹部と前記外側凹部はそれぞれ、タイヤ径方向の外側から内側に向けて、前記一対の横溝間のタイヤ周方向中央側へ傾斜している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれの傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる第1基準線に対して5度以上15度以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記サイプのタイヤ径方向の深さの1.25倍以上1.75倍以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法の0.25倍以上0.45倍以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側面は、前記踏面に連なり、タイヤ回転軸方向の内側から外側に向けてタイヤ径方向内側へ傾斜したテーパ部を有し、
前記サイプの前記外端部から前記テーパ部のタイヤ回転軸方向外側の端部までの間隔は、前記テーパ部のタイヤ回転軸方向の寸法の1.5倍以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ径方向の外端部は、前記テーパ部においてタイヤ径方向外側へ開放されている、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ回転軸方向の深さは、前記テーパ部のタイヤ回転軸方向の寸法の0.25倍以上0.75倍以下である、請求項6又は7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記内側凹部のタイヤ回転軸方向の深さに対する前記内側凹部のタイヤ周方向の幅の割合、及び前記外側凹部のタイヤ回転軸方向の深さに対する前記外側凹部のタイヤ周方向の幅の割合は、いずれも0.5倍以上1.0倍以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記内側凹部のタイヤ周方向の幅は前記外側凹部のタイヤ周方向の幅と同一で、前記内側凹部のタイヤ回転軸方向の深さは前記外側凹部のタイヤ回転軸方向の深さと同一である、請求項1から9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ径方向の外端部は、タイヤ周方向に延びる第2基準線上に位置している、請求項1から10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記陸部は、
前記外側面と、前記外側面のタイヤ回転軸方向内側に間隔をあけて設けられ、タイヤ周方向に延びるとともにタイヤ径方向内側に窪む主溝とによって画定されたリブ部と、
前記リブ部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向の両側が前記一対の横溝によって画定された複数のブロックと
を有し、
前記サイプ及び前記凹部は、前記複数のブロックにそれぞれ形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレッド部のタイヤ回転軸方向(以下、単に軸方向という。)の外端(ショルダー陸部)での摩耗抑制を目的とした空気入りタイヤが開示されている。この空気入りタイヤでは、ショルダー陸部のうち軸方向外端に位置する外側面に、軸方向内側へ窪み、タイヤ径方向に延びる第1サイプが形成されている。また、ショルダー陸部の踏面に、タイヤ周方向に隣り合う第1サイプ間に位置し、タイヤ径方向内側へ窪むとともに、外側面から軸方向内側へ延びる第2サイプを設けた構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸方向の外端から内側へ延びる横溝がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられており、踏面に複数の第2サイプが設けられている場合、周方向に隣り合う一対の横溝間の中央部分に偏摩耗が生じ易い。これは、ショルダー陸部に対して軸方向の外側から内側に向けて外力が加わった際、一対の横溝間のうち、タイヤ周方向の外側部分よりも中央部分の方が、第2サイプにより剛性が低下し易く、相対的な変位量も大きくなるためである。よって、特許文献1の空気入りタイヤには、トレッド部の軸方向外端での偏摩耗対策について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、踏面にタイヤ回転軸方向へ延びる複数のサイプが形成されたショルダー陸部の偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タイヤ径方向外端に位置する踏面、及びタイヤ回転軸方向外端に位置する外側面を有し、トレッド部のタイヤ回転軸方向外端に位置する陸部と、前記陸部にタイヤ周方向へ間隔をあけて複数設けられ、それぞれ前記外側面からタイヤ回転軸方向内側へ延びるとともに前記踏面からタイヤ径方向内側へ窪む横溝と、タイヤ周方向に隣り合う一対の前記横溝間にタイヤ周方向へ間隔をあけて複数設けられ、それぞれ前記踏面からタイヤ径方向内側へ窪むとともにタイヤ回転軸方向へ延び、前記外側面側に位置する外端部が前記外側面に対して間隔をあけて位置するサイプと、前記外側面に設けられ、タイヤ回転軸方向内側へ窪むとともにタイヤ径方向に延びる凹部とを備え、前記凹部は、前記サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置にそれぞれ配置され、前記一対の横溝間において、タイヤ周方向中央側に位置する内側凹部と、タイヤ周方向外側に位置する外側凹部とを含み、前記内側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法よりも短い、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本態様では、サイプに対してタイヤ周方向の異なる位置に内側凹部と外側凹部が設けられている。よって、タイヤ周方向の同じ位置にサイプと凹部が設けられている場合と比較して、陸部の過度な剛性低下を抑制できるため、サイプ及び凹部を起点とするクラックの発生を抑制できる。また、内側凹部のタイヤ径方向の寸法は、外側凹部のタイヤ径方向の寸法よりも短い。そのため、陸部の一対の横溝間のうち、タイヤ周方向外側の剛性をタイヤ周方向中央部分の剛性よりも低くできる。これにより、一対の横溝間において、タイヤ周方向の剛性バランスを最適化できるため、外力によるタイヤ周方向の変位量を平均化でき、タイヤ周方向中央部分での偏摩耗を効果的に抑制できる。
【0008】
前記内側凹部と前記外側凹部はそれぞれ、タイヤ径方向の外側から内側に向けて、前記一対の横溝間のタイヤ周方向中央側へ傾斜している。
【0009】
本態様では、内側凹部と外側凹部がタイヤ径方向の外側から内側に向けて一対の横溝間のタイヤ周方向中央側へ傾斜している。よって、タイヤの回転方向に対して凹部の傾斜が鈍角になるため、縁石や段差等に接触した際の凹部の損傷を抑制できる。
【0010】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれの傾斜角度は、タイヤ径方向に延びる第1基準線に対して5度以上15度以下である。
【0011】
本態様では、凹部の傾斜角度がタイヤ径方向に延びる第1基準線に対して5度以上15度以下である。そのため、タイヤ径方向外側から見て、短尺な内側凹部と長尺な外側凹部とに重なる部分が生じることを抑制できる。よって、内側凹部と外側凹部が重なり合うことに伴う陸部の過度な剛性低下を抑制できる。
【0012】
前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記サイプのタイヤ径方向の深さの1.25倍以上1.75倍以下である。
【0013】
本態様では、外側凹部のタイヤ径方向の寸法がサイプのタイヤ径方向の深さの1.25倍以上1.75倍以下である。これにより、一対の横溝間のタイヤ周方向外側部分での剛性を効果的に低減できるため、陸部の剛性バランスを最適化でき、偏摩耗の発生を抑制できる。
【0014】
前記内側凹部のタイヤ径方向の寸法は、前記外側凹部のタイヤ径方向の寸法の0.25倍以上0.45倍以下である。
【0015】
本態様では、内側凹部のタイヤ径方向の寸法が外側凹部のタイヤ径方向の寸法の0.25倍以上0.45倍以下である。これにより、一対の横溝間のタイヤ周方向中央部分での過度な剛性低下を抑制できるため、陸部の剛性バランスを最適化でき、偏摩耗の発生を抑制できる。
【0016】
前記外側面は、前記踏面に連なり、タイヤ回転軸方向の内側から外側に向けてタイヤ径方向内側へ傾斜したテーパ部を有し、前記サイプの前記外端部から前記テーパ部のタイヤ回転軸方向外側の端部までの間隔は、前記テーパ部のタイヤ回転軸方向の寸法の1.5倍以上である。
【0017】
本態様では、サイプの外端部からテーパ部の外側端部までの間隔がテーパ部のタイヤ回転軸方向寸法の1.5倍以上である。そのため、サイプの外端部を起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0018】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ径方向の外端部は、前記テーパ部においてタイヤ径方向外側へ開放されている。
【0019】
本態様では、内側凹部と外側凹部はそれぞれテーパ部内でタイヤ径方向外側へ開放されている。そのため、凹部の端部が閉鎖されている場合に生じ得る端部を起点としたクラックの発生を抑制できる。
【0020】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ回転軸方向の深さは、前記テーパ部のタイヤ回転軸方向の寸法の0.25倍以上0.75倍以下である。
【0021】
本態様では、凹部の深さがテーパ部のタイヤ回転軸方向寸法の0.25倍以上0.75倍以下である。そのため、縁石や段差等に対する凹部の耐外傷性を確保しつつ、一対の横溝間の剛性バランス向上のための溝深さを確保できる。
【0022】
前記内側凹部のタイヤ回転軸方向の深さに対する前記内側凹部のタイヤ周方向の幅の割合、及び前記外側凹部のタイヤ回転軸方向の深さに対する前記外側凹部のタイヤ周方向の幅の割合は、いずれも0.5倍以上1.0倍以下である。
【0023】
本態様では、凹部の深さに対する凹部の幅の割合が0.5倍以上1.0倍以下である。そのため、タイヤ周方向に隣接した内側凹部と外側凹部の干渉を防止したうえで、タイヤ径方向の寸法が異なる内側凹部と外側凹部を確実に成形できる。
【0024】
前記内側凹部のタイヤ周方向の幅は前記外側凹部のタイヤ周方向の幅と同一で、前記内側凹部のタイヤ回転軸方向の深さは前記外側凹部のタイヤ回転軸方向の深さと同一である。
【0025】
本態様では、内側凹部と外側凹部のうち、それぞれの幅が同一であり、それぞれの深さも同一である。これにより、内側凹部と外側凹部の外観(陰影)が同等になるため、空気入りタイヤの美観を向上できる。
【0026】
前記内側凹部及び前記外側凹部それぞれのタイヤ径方向の外端部は、タイヤ周方向に延びる第2基準線上に位置している。
【0027】
本態様では、内側凹部のタイヤ径方向外端と外側凹部のタイヤ径方向外端とが、タイヤ周方向に延びる第2基準線上に位置している。そのため、一対の横溝間の剛性バランスを容易に最適化できるとともに、空気入りタイヤの美観を向上できる。
【0028】
前記陸部は、前記外側面と、前記外側面のタイヤ回転軸方向内側に間隔をあけて設けられ、タイヤ周方向に延びるとともにタイヤ径方向内側に窪む主溝とによって画定されたリブ部と、前記リブ部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向の両側が前記一対の横溝によって画定された複数のブロックとを有し、前記サイプ及び前記凹部は、前記複数のブロックにそれぞれ形成されている。
【0029】
本態様では、陸部が、リブ部のタイヤ径方向外側に複数のブロックを設けた構成である。このような陸部の場合、リブ部ではタイヤ回転軸方向に加わる外力の緩和が困難になるため、外力がブロックに与える影響が大きくなる。これに対して本態様では、ブロックに内側凹部と外側凹部が形成されているため、ブロックの剛性バランスを最適化し、ブロックの偏摩耗を抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、踏面にタイヤ回転軸方向へ延びる複数のサイプが形成されたショルダー陸部の偏摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの一部を示す斜視図。
図2図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す平面図。
図3図2のIII部分の拡大図。
図4図2の空気入りタイヤの一部を示す側面図。
図5図3のV-V線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0033】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という)1のトレッド部10の一部を示す。タイヤ1は、乗用車用、ライトトラック用、及びトラックバス用のいずれであってよい。
【0034】
タイヤ1は、トレッド部10、一対のサイドウォール部(図示せず)、及び一対のビード部(図示せず)を備える。そのうち、サイドウォール部は、トレッド部10のタイヤ回転軸方向(以下、単に軸方向という。)Wの両端にそれぞれ連なり、タイヤ径方向Rの内側(図1において下側)に延びている。ビード部は、サイドウォール部のタイヤ径方向Rの内端にそれぞれ連なっている。
【0035】
トレッド部10は、円筒状であり、軸方向Wに延び、タイヤ周方向Cへ無端状に延びている。
【0036】
図1及び図2を参照すると、トレッド部10は、タイヤ径方向Rの外端に位置する踏面11と、軸方向Wの外端に位置する外側面12A,12Bとで画定されている。本実施形態では、外側面12A,12Bに凹部25をそれぞれ設けることで、一対の横溝21間での偏摩耗抑制を図る。
【0037】
具体的には、トレッド部10には、踏面11からタイヤ径方向Rの内側へ窪み、タイヤ周方向Cに延びる円環状の主溝14が形成されている。図3を参照すると、主溝14は、軸方向Wに対向する一対の側壁14aと、一対の側壁14aのタイヤ径方向Rの内端にそれぞれ連なる底壁14bとで画定されている。図2を参照すると、主溝14は、軸方向Wへ間隔をあけて複数設けられている。これらの主溝14によって、トレッド部10には複数の陸部15が軸方向Wに並べて設けられている。本実施形態のトレッド部10には、3本の主溝14が形成され、4列の陸部15が形成されている。
【0038】
以下の説明では、3本の主溝14のうち、図2において最も右側に位置する方から左側へ順番に14A,14B,14Cと言うことがある。また、4列の陸部15のうち、主溝14Aと外側面12Aの間に位置する1列をショルダー陸部15Aといい、主溝14Cと外側面12Bの間に位置する1列をショルダー陸部15Bといい、主溝14Aと14Bの間に位置する1列をセンター陸部15Cといい、主溝14Bと14Cの間に位置する1列をセンター陸部15Dということがある。
【0039】
図1及び図5を参照すると、個々の陸部15は、リブ部16と、リブ部16のタイヤ径方向Rの外側に設けられた複数のブロック18とを備える。
【0040】
ショルダー陸部15Aのリブ部16は、外側面12Aと、外側面12Aの軸方向Wの内側に間隔をあけて位置する主溝14Aとによって画定されている。図2を参照すると、ショルダー陸部15Bのリブ部16は、外側面12Bと、外側面12Bの軸方向Wの内側に間隔をあけて位置する主溝14Cとによって画定されている。図1及び図2を参照すると、センター陸部15Cのリブ部16は、一対の主溝14A,14Bによって画定され、センター陸部15Dのリブ部16は、一対の主溝14B,14Cによって画定されている。
【0041】
ブロック18は、周方向溝20と複数の横溝21によって区画されている。
【0042】
周方向溝20は、踏面11からタイヤ径方向Rの内側へ窪み、タイヤ周方向Cへ環状に延びている。図3及び図5を参照すると、周方向溝20は、軸方向Wに対向する一対の側壁20aと、一対の側壁20aのタイヤ径方向Rの内端にそれぞれ連なる底壁20bとで画定されている。
【0043】
横溝21は、踏面11からタイヤ径方向Rの内側へ窪み、軸方向Wに延びており、タイヤ周方向Cに間隔をあけて複数設けられている。個々の横溝21は、タイヤ周方向Cに対向する一対の側壁21aと、一対の側壁21aのタイヤ径方向Rの内端にそれぞれ連なる底壁21bとで画定されている。個々の横溝21の軸方向Wの一端は、周方向溝20に連通している。軸方向Wの両端に位置するブロック18では、横溝21の軸方向Wの他端は、外側面12A,12Bで外側へ開放されている。それ以外のブロック18では、横溝21の軸方向Wの他端は、主溝14に連通している。
【0044】
図2及び図3を参照すると、一対の側壁21a間の距離である横溝21のタイヤ周方向Cの溝幅は、一対の側壁14a間の距離である主溝14の軸方向Wの溝幅よりも小さい。また、一対の側壁20a間の距離である周方向溝20の軸方向Wの溝幅は、横溝21の溝幅よりも小さい。
【0045】
図5を参照すると、周方向溝20のタイヤ径方向Rの深さ、つまり踏面11から底壁20bまでの寸法は、主溝14のタイヤ径方向の深さDr1よりも浅い。横溝21のタイヤ径方向Rの深さDr2、つまり踏面11から底壁21bまでの寸法は、主溝14の深さDr1よりも浅い。本実施形態では、周方向溝20の深さは、横溝21の深さDr2と同一である。但し、周方向溝20及び横溝21それぞれの深さは、主溝14の深さDr1よりも浅ければ、異なっていてもよい。
【0046】
図2及び図3を参照すると、個々のリブ部16のタイヤ径方向Rの外側は、周方向溝20によって、軸方向Wに並設された2列のブロック列17に区画されている。個々のブロック列17は、複数の横溝21によって、タイヤ周方向Cに並設された複数のブロック18に区画されている。
【0047】
以下の説明では、2列のブロック列17のうち、軸方向Wの外側に位置する方を外側ブロック列17Aといい、軸方向Wの内側に位置する方を内側ブロック列17Bということがある。軸方向Wの内側とは、トレッド部10を軸方向に2分する中心線CL1に近い方を意味し、軸方向Wの外側とは、中心線CL1から離れた方を意味する。
【0048】
外側ブロック列17Aの横溝21の形成位置と、内側ブロック列17Bの横溝21の形成位置とは、タイヤ周方向Cに異なっている。これにより、外側ブロック列17Aのブロック18の形成位置と、内側ブロック列17Bのブロック18の形成位置も、タイヤ周方向Cに異なっている。
【0049】
図2を参照すると、複数のブロック18のうち、ショルダー陸部15A,15Bの外側ブロック列17Aを構成するブロック18は、外側面12A,12B、周方向溝20の溝壁、及びタイヤ周方向Cに隣り合う一対の横溝21の溝壁によって画定されている。ショルダー陸部15A,15Bの外側ブロック列17A以外のブロック列17のブロック18は、主溝14の溝壁、周方向溝20の溝壁、及びタイヤ周方向Cに隣り合う一対の横溝21の溝壁によって画定されている。
【0050】
以下の説明では、複数のブロック18のうち、ショルダー陸部15A,15Bの外側ブロック列17Aを構成するブロック、つまりトレッド部10の軸方向Wの外端に位置するブロックを18Aということがある。また、複数のブロック18のうち、ブロック18A以外をブロック18Bということがある。
【0051】
タイヤ径方向Rの外側から見て、ブロック18の形状は、本実施形態では四角形状を呈しているが、必要に応じて変更可能である。言い換えれば、周方向溝20は、タイヤ周方向Cへ直線状に設けられているが、タイヤ周方向Cに沿って軸方向Wへ凹凸を繰り返す波状に形成されてもよい。また、横溝21は、軸方向Wに沿って直線状に設けられているが、軸方向Wに延びる直線(図示せず)に対して傾斜させてもよいし、軸方向Wに沿ってタイヤ周方向Cへ凹凸を繰り返す波状としてもよい。
【0052】
図2及び図3を参照すると、複数のブロック18の踏面11には、踏面11からタイヤ径方向Rの内側へ窪み、軸方向Wへ延びるサイプ23がそれぞれ形成されている。サイプ23は、タイヤ周方向Cに対向する一対の側壁23aと、一対の側壁23aのタイヤ径方向Rの内端にそれぞれ連なる底壁23bとで画定されている。個々のサイプ23は、軸方向Wに沿って直線状に設けられているが、軸方向Wに延びる直線(図示せず)に対して傾斜させてもよいし、軸方向Wに沿ってタイヤ周方向Cへ凹凸を繰り返す波状としてもよい。
【0053】
サイプ23は、ブロック18を画定する一対の横溝21間にタイヤ周方向Cへ間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では35mmの周長のブロック18に対して4本のサイプ23が形成されている。タイヤ周方向Cに隣り合うサイプ23の間隔は、5mm以上8mm以下に設定することが好ましい。サイプ23の間隔を過度に小さくすると、踏面11での剛性低減が過度なる一方、サイプ23の間隔を過度に大きくすると、踏面11での剛性が高くなり、適切なグリップ力を得ることが困難になる。これらの不都合を防ぐために、隣り合うサイプ23の間隔は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0054】
ブロック18Aに形成するサイプ23のうち、外側面12A,12B側に位置する外端部23cは、外側面12A,12B(稜部13)に対して間隔をあけて位置している。ブロック18Aのサイプ23のうち、周方向溝20側に位置する内端部23dは、周方向溝20の側壁20aに対して間隔をあけて位置している。ブロック18Bのサイプ23のうち、一端は周方向溝20の側壁20aに対して間隔をあけて位置し、他端は主溝14の側壁14aに対して間隔をあけて位置している。
【0055】
図5を参照すると、サイプ23のタイヤ径方向Rの深さDr3、つまり踏面11から底壁23bまでの寸法は、主溝14の深さDr1及び横溝21の深さDr2のいずれよりも浅い。サイプ23の深さDr3は、本実施形態では全て同一であるが、陸部15又はブロック列17毎に異なっていてもよい。
【0056】
このようにサイプ23が形成されたブロック18Aの場合、走行時に軸方向Wの外側から内側に向けて外力が加わると、踏面11と外側面12が連なる稜部13のタイヤ周方向Cの中央部分に偏摩耗が生じ易い。このような稜部13での偏摩耗を抑制するために、本実施形態の外側面12A,12Bにはそれぞれ、凹部25が設けられている。
【0057】
以下、図1図4及び図5を参照して、外側面12Aに形成する凹部25について具体的に説明する。外側面12Bに形成する凹部25についても、外側面12Aの凹部25と同様に形成される。
【0058】
まず、図1及び図5を参照すると、外側面12Aは、主部12a、テーパ部12b、及び連続部12cを備える。
【0059】
主部12aは、子午線断面上において、軸方向Wの内側から外側に向けてタイヤ径方向Rの内側へ傾斜した傾斜面である。
【0060】
テーパ部12bは、タイヤ径方向Rの内端が主部12aに連なり、タイヤ径方向Rの外端が踏面11に連なっている。テーパ部12bは、子午線断面上において、軸方向Wの内側から外側に向けてタイヤ径方向R内側へ傾斜した傾斜面である。タイヤ径方向Rに延びる基準線RL0に対するテーパ部12bの傾斜角度は、基準線RL0に対する主部12aの傾斜角度よりも大きい。テーパ部12bのタイヤ径方向Rの寸法Sr0は、主溝14の深さDr1、横溝21の深さDr2、及びサイプ23の深さDr3のうちのいずれよりも小さい。
【0061】
連続部12cは、タイヤ径方向Rの外端が主部12aに連なり、タイヤ径方向Rの内端がサイドウォール部の外表面に連なっている。連続部12cは、子午線断面上において、横溝21のタイヤ径方向Rの内側で主部12aに接し、それよりもタイヤ径方向Rの内側でサイドウォール部に接する所定曲率の曲面である。
【0062】
図5を参照すると、軸方向Wにおいて、サイプ23の外端部23cからテーパ部12bの外端部までの間隔Sw1は、テーパ部12bの寸法Sw2の1.5倍以上に設定されている。テーパ部12bの外端部とは、主部12aとテーパ部12bの境界部分(連続部分)である。寸法Sw2に対する間隔Sw1の割合を過度に小さくした場合、サイプ23の外端部23cを起点してクラックが発生する可能性がある。このクラックの発生を抑制するために、寸法Sw2に対する間隔Sw1の割合は、上記値以上に設定することが好ましい。
【0063】
図4は、ショルダー陸部15Aの外側ブロック列17Aの踏面11と外側面12Aを展開した状態を表している。
【0064】
図4を参照すると、本実施形態のブロック18Aには、それぞれ4本のサイプ23が形成されている。そのうち、タイヤ周方向Cの内側に位置する2つをサイプ23A、タイヤ周方向Cの外側に位置する2つをサイプ23Bとすると、タイヤ周方向Cにおいてブロック18Aは、一対のサイプ23A間に位置する中央領域18a、サイプ23A,23B間に位置する一対の中間領域18b、及びサイプ23Bのタイヤ周方向Cの外側に位置する外側領域18cに区画される。
【0065】
図1及び図5を参照すると、凹部25は、軸方向Wの内側へ窪み、タイヤ径方向Rに延びるように、外側面12Aの主部12aに形成されている。ブロック18Aのタイヤ周方向Cの剛性バランスを最適化するために、本実施形態の凹部25は、一対の内側凹部26と一対の外側凹部27とで構成されている。
【0066】
図3及び図4を参照すると、一対の横溝21間において、内側凹部26はタイヤ周方向Cの中心線CL2側(中央側)に形成され、外側凹部27はタイヤ周方向Cの外側(横溝21側)に形成されている。
【0067】
内側凹部26は、タイヤ周方向Cに対向する一対の側壁26aと、一対の側壁26aの軸方向Wの内端にそれぞれ連なる底壁26bとで画定された溝である。内側凹部26は、踏面11側に位置するタイヤ径方向Rの外端の外端部26cと、外端部26cよりもタイヤ径方向Rの内側に位置する内端部26dとを備える。但し、内側凹部26は、一対の側壁26aが平行に位置する溝に限られず、軸方向Wへ窪み、タイヤ径方向Rに延びる構成であれば、その形状は必要に応じて変更が可能である。
【0068】
外側凹部27は、タイヤ周方向Cに対向する一対の側壁27aと、一対の側壁27aの軸方向Wの内端にそれぞれ連なる底壁27bとで画定された溝である。外側凹部27は、踏面11側に位置するタイヤ径方向Rの外端の外端部27cと、外端部27cよりもタイヤ径方向Rの内側に位置する内端部27dとを備える。但し、外側凹部27は、一対の側壁27aが平行に位置する溝に限られず、軸方向Wへ窪み、タイヤ径方向Rに延びる構成であれば、その形状は必要に応じて変更が可能である。
【0069】
図1を参照すると、凹部26,27の外端部26c,27cは、それぞれテーパ部12bにおいてタイヤ径方向Rの外側へ開放されている。より具体的には、図4に示すように、凹部26,27の外端部26c,27cは、いずれもタイヤ周方向Cに延びる基準線(第2基準線)RL1上に位置している。
【0070】
凹部26,27はそれぞれ、サイプ23に対してタイヤ周方向の異なる位置に配置されている。より具体的には、内側凹部26の外端部26cと外側凹部27の外端部27cとは、サイプ23の外端部23cに対してタイヤ周方向Cの異なる位置に配置されている。内側凹部26の外端部26cは、隣接したサイプ23A,23B間、つまりブロック18Aの中間領域18bに配置されている。外側凹部27の外端部27cは、サイプ23Bのタイヤ周方向Cの外側、つまりブロック18Aの外側領域18cに配置されている。一対のサイプ23A間、つまりブロック18Aの中央領域18aには、凹部26,27の外端部26c,27cのいずれも配置されていない。
【0071】
引き続いて図4を参照すると、内側凹部26のタイヤ径方向Rの寸法Sr1は、外側凹部27のタイヤ径方向Rの寸法Sr2よりも短い。これにより、ブロック18Aの中央領域18aから外側領域18cに向けて、剛性が漸減するように構成されている。内側凹部26の寸法Sr1とは、内側凹部26の外端部26cから内端部26dまでのタイヤ径方向Rの距離を意味し、外側凹部27の寸法Sr2とは、外側凹部27の外端部27cから内端部27dまでのタイヤ径方向Rの距離を意味する。
【0072】
内側凹部26の寸法Sr1は、外側凹部27の寸法Sr2の0.25倍以上0.45倍以下に設定されている。外側凹部27に対する内側凹部26の寸法割合を過度に小さくすると、中間領域18bの剛性低減が不足するため、外側領域18cに偏摩耗が生じる可能性がある。外側凹部27に対する内側凹部26の寸法割合を過度に大きくすると、中間領域18bの剛性低減が過度になるため、中央領域18aに偏摩耗が生じる可能性がある。これらの不都合を防ぐために、外側凹部27に対する内側凹部26の寸法割合は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0073】
引き続いて図4を参照すると、内側凹部26と外側凹部27はそれぞれ、タイヤ径方向Rの外側から内側に向けて、一対の横溝21間のタイヤ周方向Cの中央側、つまりブロック18Aの中心線CL2側へ傾斜している。凹部26,27は、本実施形態では外端部26c,27cから内端部26d,27dまで直線状に延びているが、タイヤ径方向Rの外側から内側に向かうに従って徐々に中心線CL2に近づく構成であれば、湾曲した形状であってもよい。
【0074】
内側凹部26の傾斜角度θ1及び外側凹部27の傾斜角度θ2は、タイヤ径方向Rに延びる基準線(第1基準線)RL2に対して5度以上15度以下に設定されている。凹部26,27の傾斜角度θ1,θ2を過度に小さくした場合、凹部26,27が基準線RL2に沿って延びることになるため、ブロック18Aの中央領域18aから外側領域18cに向けた剛性の漸減が困難になる。凹部26,27の傾斜角度θ1,θ2を過度に大きくした場合、タイヤ径方向Rの外側から見て、短尺な内側凹部26と長尺な外側凹部27とに重なる部分が生じるため、中間領域18bでの剛性低減が過度になる。これらの不都合を防ぐために、凹部26,27の傾斜角度θ1,θ2は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。なお、凹部26,27の傾斜角度θ1,θ2は、本実施形態では同一に設定しているが、上記定められた範囲内であれば異なっていてもよい。
【0075】
図4を参照すると、内側凹部26のタイヤ周方向Cの幅Wc1は、外側凹部27のタイヤ周方向Cの幅Wc2と同一に設定されている。ここで、タイヤ周方向Cの幅Wc1,Wc2とは、厳密にタイヤ周方向Cに沿った方向の側壁26a間の間隔及び側壁27a間の間隔ではなく、凹部26,27それぞれの傾斜角度θ1,θ2に対して直交する方向の、側壁26a間の間隔及び側壁27a間の間隔を意味する。
【0076】
図5を参照すると、内側凹部26の軸方向Wの深さDw1は、外側凹部27の軸方向Wの深さDw2と同一に設定されている。ここで、軸方向Wの深さDw1,Dw2とは、厳密に軸方向Wに沿った方向の凹部26,27の深さではなく、外側面12Aの主部12aの傾斜に対して直交する方向の深さ、つまり主部12aの表面から底壁26b,27bまでの最短距離を意味している。
【0077】
但し、凹部26,27の幅Wc1,Wc2、及び凹部26,27の深さDw1,Dw2は、幾何学的に厳密な意味での同一に限られず、内側凹部26と外側凹部27の外観(陰影)が同等になる範囲であれば、多少異なっていてもよい。
【0078】
図4及び図5を参照すると、内側凹部26の軸方向Wの深さDw1に対する内側凹部26のタイヤ周方向Cの幅Wc1の割合は、0.5倍以上1.0倍以下に設定され、外側凹部27の軸方向Wの深さDw2に対する外側凹部27のタイヤ周方向Cの幅Wc2の割合も、0.5倍以上1.0倍以下に設定されている。深さDw1,Dw2に対する幅Wc1,Wc2の割合を過度に小さくした場合、ブロック18Aの外側面12Aでの剛性低減が不足する。深さDw1,Dw2に対する幅Wc1,Wc2の割合を過度に大きくした場合、タイヤ周方向Cに隣接した内側凹部26と外側凹部27が干渉するうえ、ブロック18Aの外側面12Aでの剛性低減が過度になる。これらの不都合を防ぐために、凹部26,27の深さDw1,Dw2に対する幅Wc1,Wc2の割合は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0079】
図5を参照すると、凹部26,27それぞれの軸方向Wの深さDw1,Dw2は、テーパ部12bの軸方向Wの寸法Sw2の0.25倍以上0.75倍以下に設定されている。テーパ部12bの寸法Sw2に対する凹部26,27の深さDw1,Dw2の割合を過度に小さくした場合、ブロック18Aの外側面12Aでの剛性低減が不足する。テーパ部12bの寸法Sw2に対する凹部26,27の深さDw1,Dw2の割合を過度に大きくした場合、縁石や段差等に対する凹部26,27の耐外傷性が低下する。これらの不都合を防ぐために、テーパ部12bの寸法Sw2に対する凹部26,27の深さDw1,Dw2の割合は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0080】
図4及び図5を参照すると、外側凹部27のタイヤ径方向Rの寸法Sr2は、サイプ23のタイヤ径方向Rの深さDr3の1.25倍以上1.75倍以下に設定されている。サイプ23の深さDr3に対する外側凹部27の寸法Sr2の割合を過度に小さくした場合、ブロック18Aの外側領域18cでの剛性低減が不足する。サイプ23の深さDr3に対する外側凹部27の寸法Sr2の割合を過度に大きくした場合、ブロック18Aの外側領域18cでの剛性低減が過度になる。これらの不都合を防ぐために、サイプ23の深さDr3に対する外側凹部27の寸法Sr2の割合は、上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0081】
このように、本実施形態では、多数のサイプ23を備えるブロック18Aの外側面12A,12Bに、タイヤ径方向Rの寸法Sr1,Sr2が異なる内側凹部26と外側凹部27が設けられている。これらの凹部26,27が無い場合、多数のサイプ23によって、ブロック18Aの外側面12A,12Bでの剛性はタイヤ周方向Cの中央が最も低くなり、外力による変位量が最も多くなるため、偏摩耗が生じ易い。これに対して、凹部26,27を設けた本実施形態では、ブロック18Aの外側面12A,12Bでの剛性を、ブロック18Aの中心線CL2側からタイヤ周方向Cの外側に向けて漸減できるため、ブロック18Aのタイヤ周方向Cの剛性バランスを最適化できる。その結果、ブロック18Aの中央領域18aでの偏摩耗を抑制できる。摩耗初期から摩耗中期にかけて、ブロック18Aの中央領域18aでの剛性低下も防止できる。
【0082】
特に、本実施形態の陸部15は、リブ部16のタイヤ径方向Rの外側に複数のブロック18を設けた構成である。このような陸部15の場合、リブ部16では軸方向Wに加わる外力の緩和が困難になるため、外力がブロック18Aに与える影響が大きくなる。これに対して本実施形態では、ブロック18Aに内側凹部26と外側凹部27が形成されているため、ブロック18Aの剛性バランスを最適化でき、ブロック18Aの偏摩耗を抑制できる。
【0083】
このように構成した空気入りタイヤ1は、以下の特徴を有する。
【0084】
サイプ23に対してタイヤ周方向Cの異なる位置に内側凹部26と外側凹部27が設けられている。よって、タイヤ周方向Cの同じ位置にサイプ23と凹部26,27が形成されている場合と比較して、陸部15の過度な剛性低下を抑制できるため、サイプ23及び凹部26,27を起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0085】
内側凹部26のタイヤ径方向Rの寸法Sr1は、外側凹部27のタイヤ径方向Rの寸法Sr2よりも短い。そのため、陸部15の一対の横溝21間のうち、タイヤ周方向Cの外側の剛性をタイヤ周方向Cの中央部分の剛性よりも低くできる。これにより、一対の横溝21間において、タイヤ周方向Cの剛性バランスを最適化できるため、外力によるタイヤ周方向Cの変位量を平均化でき、タイヤ周方向Cの中央部分での偏摩耗を効果的に抑制できる。
【0086】
内側凹部26と外側凹部27はそれぞれ、タイヤ径方向Rの外側から内側に向けて一対の横溝21間のタイヤ周方向C中央側へ傾斜している。よって、タイヤ1の回転方向に対して凹部26,27の傾斜が鈍角になるため、縁石や段差等に接触した際の凹部26,27の損傷を抑制できる。
【0087】
凹部26,27の傾斜角度θ1,θ2は、タイヤ径方向Rに延びる基準線RL2に対して5度以上15度以下である。そのため、タイヤ径方向Rの外側から見て、短尺な内側凹部26と長尺な外側凹部27とに重なる部分が生じることを抑制できる。よって、内側凹部26と外側凹部27が重なり合うことに伴う陸部15の過度な剛性低下を抑制できる。
【0088】
外側凹部27のタイヤ径方向Rの寸法Sr2は、サイプ23のタイヤ径方向Rの深さDr3の1.25倍以上1.75倍以下である。これにより、一対の横溝21間のタイヤ周方向Cの外側部分での剛性を効果的に低減できるため、陸部15の剛性バランスを最適化でき、偏摩耗の発生を抑制できる。
【0089】
内側凹部26のタイヤ径方向Rの寸法Sr1は、外側凹部27のタイヤ径方向Rの寸法Sr2の0.25倍以上0.45倍以下である。これにより、一対の横溝21間のタイヤ周方向Cの中央部分での過度な剛性低下を抑制できるため、陸部15の剛性バランスを最適化でき、偏摩耗の発生を抑制できる。
【0090】
本態様では、サイプ23の外端部23cからテーパ部12bの外側端部までの間隔Sw1は、テーパ部12bの軸方向Wの寸法Sw2の1.5倍以上である。そのため、サイプ23の外端部23cを起点とするクラックの発生を抑制できる。
【0091】
内側凹部26と外側凹部27はそれぞれテーパ部12bにおいてタイヤ径方向Rの外側へ開放されている。そのため、凹部26,27の端部が閉鎖されている場合に生じ得る端部を起点としたクラックの発生を抑制できる。
【0092】
凹部26,27の深さDw1,Dw2がテーパ部12bの軸方向Wの寸法Sw2の0.25倍以上0.75倍以下である。そのため、縁石や段差等に対する凹部26,27の耐外傷性を確保しつつ、一対の横溝21間の剛性バランス向上のための溝深さDw1,Dw2を確保できる。
【0093】
凹部26,27の深さDw1,Dw2に対する凹部26,27の幅Wc1,Wc2の割合が0.5倍以上1.0倍以下である。そのため、タイヤ周方向Cに隣接した内側凹部26と外側凹部27の干渉を防止したうえで、タイヤ径方向Rの寸法Sr1,Sr2が異なる内側凹部26と外側凹部27を確実に成形できる。
【0094】
内側凹部26と外側凹部27のうち、それぞれの幅Wc1,Wc2が同一であり、それぞれの深さDw1,Dw2も同一である。これにより、内側凹部26と外側凹部27の外観(陰影)が同等になるため、空気入りタイヤ1の美観を向上できる。
【0095】
凹部26,27それぞれのタイヤ径方向Rの外端部26c,27cは、タイヤ周方向Cに延びる基準線RL1上に位置している。そのため、一対の横溝21間の剛性バランスを容易に最適化できるとともに、空気入りタイヤ1の美観を向上できる。
【0096】
陸部15に内側凹部26と外側凹部27が形成されているため、リブ部16のタイヤ径方向Rの外側に複数のブロック18Aを設けた陸部15であっても、ブロック18Aの剛性バランスを最適化し、ブロック18Aの偏摩耗を抑制できる。
【0097】
なお、本発明の空気入りタイヤ1は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0098】
例えば、凹部25は、タイヤ径方向Rの寸法が異なる内側凹部26及び外側凹部27の2種に限られず、3種以上としてもよい。この場合、3種以上の凹部は、ブロック18Aの外側面12A,12Bに対して、タイヤ周方向Cの中央側から外側に向けて、次第に寸法が大きくなるように配置する。
【0099】
凹部26,27の傾斜方向は、タイヤ径方向Rの外側から内側に向けてブロック18Aのタイヤ周方向Cの中央側へ傾斜する構成に限られず、必要に応じて変更が可能である。
【0100】
凹部25は、ブロック18Aの外側面12A,12Bに設ける構成に限られず、リブの外側面に設けられてもよい。つまり、主溝によって複数のリブが形成された空気入りタイヤにおいて、軸方向両端のリブに、軸方向の外端から内側へ延びる横溝をタイヤ周方向へ間隔をあけて複数設け、タイヤ周方向に隣り合う横溝間に、内側凹部26と外側凹部27を備える凹部25を設けてもよい。
【0101】
空気入りタイヤ1は、外側面12A,12Bがテーパ部12bを備えるテーパーショルダータイプに限られず、テーパ部12bが無く主部12aが踏面11に連続したボックスショルダータイプであってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 空気入りタイヤ
10 トレッド部
11 踏面
12,12A,12B 外側面
12a 主部
12b テーパ部
12c 連続部
13 稜部
14,14A~14C 主溝
14a 側壁
14b 底壁
15 陸部
15A,15B ショルダー陸部
15C,15D センター陸部
16 リブ部
17 ブロック列
17A 外側ブロック列
17B 内側ブロック列
18,18A,18B ブロック
18a 中央領域
18b 中間領域
18c 外側領域
20 周方向溝
20a 側壁
20b 底壁
21 横溝
21a 側壁
21b 底壁
23,23A,23B サイプ
23a 側壁
23b 底壁
23c 外端部
23d 内端部
25 凹部
26 内側凹部
26a 側壁
26b 底壁
26c 外端部
26d 内端部
27 外側凹部
27a 側壁
27b 底壁
27c 外端部
27d 内端部
RL1 基準線(第2基準線)
RL2 基準線(第1基準線)
Dr1 主溝の深さ
Dr2 横溝の深さ
Dr3 サイプの深さ
θ1 内側凹部の傾斜角度
θ2 外側凹部の傾斜角度
Sr1 内側凹部のタイヤ径方向寸法
Sr2 外側凹部のタイヤ径方向寸法
Dw1 内側凹部の深さ
Dw2 外側凹部の深さ
Wc1 内側凹部の幅
Wc2 外側凹部の幅
Sw1 サイプの端部からテーパ部の外端部までの間隔
Sw2 テーパ部のタイヤ回転軸方向寸法
R タイヤ径方向
W タイヤ回転軸方向
C タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5