(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント経路阻害剤と併用したインターロイキン-10の組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20240827BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240827BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240827BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240827BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20240827BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240827BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 Y
A61K45/00
A61K47/60
A61K47/61 ZNA
A61K47/68
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020544561
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018058837
(87)【国際公開番号】W WO2019094268
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520153280
【氏名又は名称】アーモ・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARMO BIOSCIENCES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・オフト
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】松波 由美子
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】Efficacy and Immune Activation with PEGylated human IL-10(AM0010) in Combination with an anti-PD1 in Advanced NSCLC - Update, 2017年9月9日
【文献】Mol Cancer Therapeutics;16(11) 1.Nov. 2017, p.2598-2608
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/ENBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント経路調節剤およびIL-10剤を含む、哺乳類対象における腫瘍性疾患を治療または予防するための薬剤であって、前記対象に、
a)治療有効量の前記免疫チェックポイント経路調節剤と、
b)治療有効量の前記IL-10剤と、を投与するように用いられることを特徴とし、前記免疫チェックポイント経路調節剤が、ニボルマブまたはペンブロリズマブを含み、前記IL-10剤が、IL-10受容体に結合し、IL-10と同一のシグナル伝達経路を調節し、IL-10に特徴的な生物学的応答を誘発することができる2つのIL-10ポリペプチドを含むIL-10活性を有する二量体であり、前記腫瘍性疾患が、配列決定された1メガベース当たり
15個超100個未満の変異である腫瘍変異負荷を有する
非小細胞肺がん
(NSCLC)である、薬剤。
【請求項2】
前記
NSCLCが、原発性腫瘍である、請求項
1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記IL-10剤が、治療の過程を通して少なくとも1.0ng/mLの平均IL-10剤血清トラフ濃度を維持するのに十分に投与される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記IL-10剤が、各々が配列番号25のアミノ酸配列を有する2つのIL-10ポリペプチドを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記IL-10剤が、各々が配列番号26のアミノ酸配列を有する2つのIL-10ポリペプチドを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記IL-10剤が、各々が配列番号27のアミノ酸配列を有する2つのIL-10ポリペプチドを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項7】
前記IL-10剤が、ペグ化されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
前記薬剤が、第2の免疫チェックポイント経路調節剤の添加を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項9】
前記IL-10剤が、修飾IL-10剤を形成するための少なくとも1つの修飾を含み、前記修飾が、前記IL-10剤のアミノ酸配列を改変しない、請求項1~
8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項10】
前記修飾IL-10剤が、PEG-IL-10剤である、請求項
9に記載の薬剤。
【請求項11】
前記PEG-IL-10剤が、IL-10の少なくとも1つのサブユニットの少なくとも1つのアミノ酸残基に共有結合した少なくとも1つのPEG分子を含む、請求項
10に記載の薬剤。
【請求項12】
前記PEG-IL-10剤が、モノペグ化IL-10とジペグ化IL-10との混合物を含む、請求項
10に記載の薬剤。
【請求項13】
前記PEG-IL-10剤の前記PEG構成成分が、5kDa~50kDaの分子量を有する、請求項
12に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんおよび免疫関連障害を含む疾患および障害の治療または予防において、免疫チェックポイント経路阻害剤と併用してIL-10剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインインターロイキン-10(IL-10)は、T細胞、B細胞、マクロファージ、および抗原提示細胞(APC)に対する作用を通して複数の免疫応答を制御する、多面的サイトカインである。IL-10は、活性化単球および活性化マクロファージにおけるIL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α、GM-CSF、およびG-CSFの発現を阻害することによって免疫応答を抑制することができ、それはまた、NK細胞によるIFN-γ産生も抑制する。IL-10は主に、マクロファージ内で発現されるが、活性化T細胞、B細胞、マスト細胞、単球内でも、発現が検出されている。IL-10は、免疫応答の抑制に加えて、IL-2およびIL-4処理した胸腺細胞の増殖の刺激、B細胞の生存率の増強、ならびにMHCクラスIIの発現の刺激を含む、免疫刺激特性を呈する。
【0003】
その多面的活性の結果として、IL-10は、炎症性病態、免疫関連障害、線維性障害、代謝障害、およびがんを含む、幅広い疾患、障害、および病態に関連付けられている。いくつかのそのような疾患、障害、および病態に対するIL-10による臨床および前臨床評価は、複数の用途での治療におけるその治療潜在性を固めている。さらに、ペグ化IL-10などのIL-10の変異体は、がんの治療を含む複数の治療用途で有効性を実証している(例えば、米国特許第8,865,652号および同第9,364,517号を参照されたい)。
【0004】
腫瘍細胞に特徴的な幅広い遺伝子改変およびエピジェネティック改変は、免疫系が腫瘍細胞をそれらの正常な対応物から区別するのに使用することができる、一組の多様な抗原を提供する。T細胞媒介性応答の場合、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を通して開始される免疫応答の大きさ(例えば、サイトカイン産生または増殖のレベル)および質(例えば、サイトカイン産生のパターンなどの、生成される免疫応答の種類)は、共刺激シグナルと阻害シグナルとの間のバランスによって制御されている。T細胞活性化を制御する共刺激性および阻害性の受容体およびリガンドは、正常組織と比較して、がんではしばしば過剰発現されない一方で、組織内のT細胞エフェクター機能を制御する抑制性リガンドおよび受容体は一般的に、腫瘍細胞上または腫瘍微小環境に関連する非形質転換細胞上で過剰発現される。
【0005】
T細胞媒介性免疫は、複数の連続的なステップを含み、その各々が、刺激性シグナルおよび阻害性シグナルの均衡によって制御されて、応答を最適化する。通常の条件下では、刺激および阻害のバランスが、自己免疫の予防(すなわち、自己寛容の維持)において、および免疫系による病原性感染への応答時の組織損傷を最小化する適切な応答を確実にするために、重要な役割を果たす。免疫応答のほぼ全ての刺激性シグナルまたは阻害性シグナルが、最終的には細胞内シグナル伝達経路を調節する一方で、その多くは、膜受容体を通して開始され、そのリガンドは、膜結合型または可溶性のいずれかである。
【0006】
免疫チェックポイント経路は、付帯的組織損傷を最小化するための、自己寛容の維持ならびに末梢組織内の生理学的免疫応答の持続時間および振幅の調節に重要である、免疫系に組み込まれた経路の集まりを指す。場合によっては、腫瘍は、特に腫瘍抗原に特異的なT細胞に対する免疫耐性の主要機構として、特定の免疫チェックポイント経路を支配する。例えば、Stagg and Allard,(2013)Ther.Adv.Med.Oncol.5(3):169-81を参照されたい。免疫チェックポイント経路の多くを通したシグナル伝達が、リガンド-受容体相互作用によって開始されるため、免疫チェックポイント経路は、抗体、組み換え形態のリガンドまたは受容体、および小分子化合物などの様々な薬剤によって調節することができる。腫瘍特異的抗原に対して指向される、がん治療に現在承認されているほとんどの抗体とは対照的に、免疫チェックポイントの調節剤は、腫瘍細胞を直接標的とするのではなく、むしろリンパ球受容体またはそれらのリガンドを標的として、内因性抗腫瘍活性を調節する。例えば、Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64を参照されたい。
【0007】
おそらく、免疫チェックポイント経路およびそのがんとの関係についての最もよく研究された例は、PD1経路である。PD1(プログラム細胞死タンパク質1、CD279としても知られる)とその対応物PDL1(PD1リガンド、B7-H1としても知られる)との相互作用によって活性化される免疫チェックポイント経路は、T細胞を負に制御する。PD1は、組織内のT細胞エフェクター機能を制限する。腫瘍は、T細胞上のPD1との相互作用によって免疫応答を負に制御するPD-L1を発現することによって、宿主免疫監視を逃れる可能性がある。Iwai Y,et al.(2002)PNAS(USA)99:12293-7。PDL1の発現を上方制御することによって、腫瘍細胞は、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答を遮断し、T細胞消耗を誘導することができる。臨床試料からのデータは、腫瘍上でのPD1リガンドの発現の上昇が、予後不良と相関することを示唆している。Thompson RH,et al.(2004)PNAS(USA)101:17174-9、およびThompson RH,et al.(2007)PNAS(USA)19:813-24。PD1/PDL1結合を妨害する薬剤の投与は、PD1免疫チェックポイント経路の阻害、T細胞消耗の逆転、サイトカイン産生の回復、および抗原依存性T細胞の拡大の増大をもたらす。PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を妨害する薬剤は、移植、感染、腫瘍、および自己免疫疾患を含む、いくつかの疾患、障害、および病態において有用性および/または見込みを実証している(Wu et al.,(2012)Int.J.Biol.Sci.8:1420-30)。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、そのような免疫チェックポイント経路調節剤の臨床的有効性は、いくつかの腫瘍において、特に低度の腫瘍変異負荷を有する腫瘍において、ならびにPDL1および/またはIFNγ関連遺伝子発現が低い腫瘍において、有効性の低下を示した。本発明は、IL-10剤および免疫チェックポイント経路の調節剤の併用効果を用いる、腫瘍性疾患の治療のための組成物および方法を提供する。
【0009】
本開示は、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療のための方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を含む、方法を提供する。
【0010】
本開示は、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療のための方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を含み、腫瘍が、低度もしくは中等度の腫瘍変異負荷を有する、方法をさらに提供する。
【0011】
本開示は、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療のための方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を含み、腫瘍が、低度もしくは中等度の発現レベルの免疫チェックポイント分子を有する、方法をさらに提供する。
【0012】
本開示は、哺乳動物対象における転移性腫瘍性疾患の治療のための方法であって、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を含む、方法をさらに提供する。
【0013】
本開示は、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療のための方法であって、PD1免疫チェックポイント経路阻害剤と併用したIL-10剤の投与を含む、方法をさらに提供する。
【0014】
本開示は、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療のための方法であって、腫瘍性疾患の治療のためのペンブロリズマブと併用したIL-10剤の投与を含む、方法をさらに提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、がんの治療のためのニボルマブと併用したIL-10剤の薬学的製剤。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】腫瘍PDL1発現および腫瘍変異負荷に関して、IL-10剤(AM0010)と抗PD1抗体ニボルマブおよびペンブロリズマブとの併用の投与に対する、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患する対象の応答を評価するように設計したヒト臨床試験で得られた結果の図解を提供する。この図面は、抗PD1抗体療法と併用したAM0010の投与が、低度または中等度の腫瘍変異負荷および低度または中等度のPDL1発現レベルを有する患者において、好ましい臨床結果をもたらすのに有効であることを例示する。
【
図2】遺伝子STAT1、HLA-DRA、CXCL9、IDO、IFN-γ、およびCXCL10を含む発現インターフェロンガンマ遺伝子発現プロファイル、ならびに腫瘍変異負荷に関して、IL-10剤(AM0010)と抗PD1抗体ニボルマブおよびペンブロリズマとの併用に対する、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患する対象における応答を評価するヒト臨床試験において得られた結果の図解を提供する。この図面は、抗PD1抗体療法と併用したAM0010の投与が、低IFNγ発現プロファイルおよび低PDL1発現レベルを有する患者において、好ましい臨床結果をもたらすのに有効であることを例示する。
【
図3】より詳細に後述される併用療法による治療期間の関数としての、IL-10剤(AM0010)と抗PD1抗体ニボルマブおよびペンブロリズマブとの併用に対する、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患する対象における腫瘍負荷(パーセント)の変化を評価するように設計したヒト臨床試験において得られた結果の図解を提供する。
【
図4】より詳細に後述される併用療法による治療期間の関数としての、IL-10剤(AM0010)と抗PD1抗体ニボルマブおよびペンブロリズマブとの併用の投与に対する、腎細胞がん(RCC)に罹患する対象における腫瘍負荷(パーセント)の変化を評価するように設計したヒト臨床試験において得られた結果の図解を提供する。
【
図5】パネルAおよびBは、治療前(パネルA)、および本明細書でより詳細に後述される治療プロトコルに従うIL-10剤(AM0010)とペンブロリズマブ抗PD1療法との併用による7ヶ月の治療後(パネルB)の、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患しているヒト臨床試験対象から得た肝組織の組織学的検査を提供する。
図5パネルAの矢印は、肝臓内の転移性病変の存在を例示する。パネルBは、IL-10剤と免疫チェックポイント経路の調節剤との併用の投与に応答して、そのような病変が有意に低減または排除されたことを例示する。
【
図6】本明細書でより詳細に後述される治療プロトコルに従うAM0010とペンブロリズマブとの併用による治療の週数の関数としての、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患しているヒト臨床試験対象から得た肝組織の組織学的検査によって決定される、測定可能な肝病変の数の変化の図形表現を提供する。このグラフは、AM0010とペンブロリズマブとの併用が、NSCLC患者において、測定可能な肝病変の有意な低減をもたらすことを例示しており、これは、転移性腫瘍性疾患の治療において、IL-10剤と免疫チェックポイント経路の調節剤との併用の投与の有効性を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示についてさらに記載する前に、本開示が、本明細書に明記される特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の記載を目的とするに過ぎず、限定的であることは意図されないこともまた理解されるべきである。
【0018】
値の範囲が提供される場合、別段文脈が明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1までの、その範囲の上限と下限との間の各介在値、および任意の他の述べられた範囲またはその述べられた範囲内の介在値が、包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は独立して、より小さな範囲に含めることができ、それらもまた、述べられた範囲内のあらゆる具体的に除外される限度を条件として、本発明に包含される。述べられた範囲が、限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度の一方または両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、別段文脈が明確に指示しない限り、複数の参照物を含むことに留意しなくてはならない。さらに、特許請求の範囲は、いかなる任意の要素を除外するように起草されてもよいことに留意されたい。したがって、この陳述は、特許請求の範囲の要素の引用に関連して、「単独で」および「唯一の」などの排他的な用語を使用するための、または「否定的な」限定を使用するための、先行基準として機能することが意図される。
【0020】
別段示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏(℃)であり、圧力は大気圧または大気圧付近でのものである。以下、bp=塩基対(複数可)、kb=キロベース(複数可)、pl=ピコリットル(複数可)、sまたはsec=秒(複数可)、min=分(複数可)、hまたはhr=時間(複数可)、aa=アミノ酸(複数可)、kb=キロベース(複数可)、nt=ヌクレオチド(複数可)、pg=ピコグラム、ng=ナノグラム、μg=マイクログラム、mg=ミリグラム、g=グラム、kg=キログラム、dlまたはdL=デシリットル、μlまたはμL=マイクロリットル、mlまたはmL=ミリリットル、lまたはL=リットル、μM=マイクロモル、mM=ミリモル、M=モル、kDa=キロダルトン、i.m.=筋肉内(に)、i.p.=腹腔内(に)、SCまたはSQ=皮下(に)、QD=1日1回、BID=1日2回、QW=1週間に1回、QM=1ヶ月に1回、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、BW=体重、U=単位、ns=統計的に有意ではない、PBS=リン酸緩衝食塩水、PCR=ポリメラーゼ連鎖反応、NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド、HSA=ヒト血清アルブミン、MSA=マウス血清アルブミン、DMEM=ダルベッコ変法イーグル培地、GC=ゲノムコピー、EDTA=エチレンジアミン四酢酸を含む、標準的な略語が使用される。
【0021】
分子生物学における標準的な方法は、科学文献に記載されている(例えば、Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、ならびに細菌細胞内でのクローニングおよびDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合多糖およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびに生物情報学(Vol.4)について記載する、Ausubel,et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,N.Y.を参照されたい)。
【0022】
科学文献は、免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含む、タンパク質精製、ならびに化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、およびタンパク質のグリコシル化のための方法について記載している(例えば、Coligan,et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vols.1-2,John Wiley and Sons,Inc.,NYを参照されたい)。
【0023】
別段示されない限り、以下の用語は、以下に明記される意味を有することが意図される。他の用語は、明細書全体を通して別の箇所で定義されている。
【0024】
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、ある分子が別の分子と接触したときに測定可能な応答をもたらす、分子の特性を指す。分子の「活性」の例には、以下、(a)分子がリガンドまたは受容体に結合する能力、(b)分子が酵素の触媒活性を誘導または阻害する能力、(c)分子が遺伝子発現または細胞シグナル伝達、分化、もしくは成熟を刺激する能力、分子の抗原活性に対する能力、(d)分子が他の分子の活性を調節する能力が含まれるが、これらに限定されない。「活性」は、定量化することができ、典型的には、分子の量に関する効果の程度、例えば、[触媒活性]/[タンパク質mg]、または[免疫学的活性]/[タンパク質mg]として表される。「生物活性」という用語は、生物系における薬剤の活性を記載するのに使用される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「投与」および「投与する」という用語は、対象の細胞、組織、器官、または体液をインビトロ、インビボ、またはエキソビボで薬剤と接触させることを含む、対象と接触する作用を指すために互換的に使用される。薬剤が、IL-10剤である場合、「投与」、「投与する」、および「治療する」という用語は、対象または対象の細胞、組織、器官、または体液をインビトロ、インビボ、またはエキソビボでIL-10剤を含む組成物と接触させることを指す。薬剤の投与は、局所、静脈内(静脈内注入を含む)、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、頭蓋内、腫瘍内、皮下、経皮、経粘膜、リンパ内、胃内、前立腺内、血管内(静脈内、動脈内を含む)、膀胱内(膀胱へ)、イオン泳動、呼吸、眼内、腹腔内、病巣内、卵巣内、脳内、および脳室内注射(ICVI)などを含むがこれらに限定されない、様々な当該技術分野で認められた方法のいずれかを通して達成することができる。「投与」という用語は、薬剤を細胞に接触させること、および薬剤を流体(この流体は、細胞と接触している)に接触させることを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「有害事象」という用語は、患者における化合物の使用に関連する任意の望ましくない経験を指す。有害事象は、化合物によって引き起こされる必要はない。有害事象は、軽度、中等度、または重度であり得る。本明細書で使用される有害事象の分類は、米国保健福祉省の国立衛生研究所国立がん研究所によって発行された、2010年6月14日付けの有害事象の一般用語基準v4.03(CTCAE)に準拠している。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト」という用語は、標的と相互作用して、標的の活性化の増加を引き起こすかまたは促進する分子を指す。活性化剤またはアゴニストは、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、生物学的経路(免疫チェックポイント経路を含む)、または細胞を、増加、活性化、促進、その活性化を増強、感作、または上方制御する分子である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」または「阻害剤」という用語は、アゴニストの作用(複数可)に対抗する分子を指す。アンタゴニストは、アゴニストの活性を予防、低減、阻害、または中和し、アンタゴニストはまた、特定されたアゴニストが存在しない場合でさえ、標的、例えば、標的受容体の構成的活性を予防、阻害、または低減することができる。阻害剤は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、生物学的経路(免疫チェックポイント経路を含む)、または細胞などを、低下、遮断、予防、その活性化を遅延、不活性化、減感、または下方制御する分子である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は集合的に、(a)標的分子に特異的に結合するグリコシル化および非グリコシル化免疫グロブリン(哺乳動物免疫グロブリンクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されない)、ならびに(b)標的分子への結合について、それが由来する免疫グロブリンと競合する、IgG(1-4)デルタCH2、F(ab’)2、Fab、ScFv、VH、VL、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、dsFv、F(ab’)3、scFv-Fc、および(scFv)2を含むがこれらに限定されない、免疫グロブリン誘導体を指す。抗体という用語は、任意の特定の哺乳動物種に由来する免疫グロブリンに制限されず、マウス、ヒト、ウマ、ラクダ、およびヒト抗体を含む。「抗体」という用語は、天然源から単離可能な天然に存在する抗体、ならびにモノクローナル抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植、ベニア、または(例えば、T細胞エピトープを除去するための)脱免疫化抗体を含む、操作された抗体を包含する。「抗体」という用語は、任意の特定の合成手段に限定されるものと解釈されるべきではなく、天然源から単離可能な天然に存在する抗体、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれらから調製されたハイブリドーマについてトランスジェニックであるトランスジェニック動物から単離された抗体、抗体の発現をもたらす核酸構築物で形質転換された宿主細胞から単離された抗体、ファージ提示ライブラリを含むコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体を含む、「組み換え」手段によって得られる操作された抗体分子を含む。一実施形態では、「抗体」は、結合およびエフェクター機能を提供する可変ドメインおよび定常ドメインを含む「完全長抗体」である、哺乳動物免疫グロブリンである。ほとんどの場合、完全長抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含み、各軽鎖は、可変領域および定常領域を含む。一実施形態では、抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む「完全長抗体」であり、各軽鎖は、結合およびエフェクター機能を提供する可変領域および定常領域を含む。好ましい実施形態では、定常領域および可変領域は、「ヒト」である(すなわち、ヒト免疫グロブリンに特徴的なアミノ酸配列を有する)。
【0030】
本明細書で使用される場合、「循環腫瘍細胞(CTC)」という用語は、腫瘍体積から末梢循環へと脱落した腫瘍細胞を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「同等の」という用語は、評価可能なパラメータの2つの測定における差異の程度を記載するのに使用される。例えば、評価可能なパラメータの第1の測定(例えば、IL-10アッセイによって測定されるIL-10活性)および評価可能なパラメータの第2の測定が、許容範囲(すなわち、当業者が、その状況における、2つの結果間の効果の統計的に有意な差をもたらさないと認識する範囲)を超えて逸脱しない場合に、2つの測定は、「同等」であると見なされる。場合によっては、1つの測定が、35%未満だけ、30%未満だけ、25%未満だけ、20%未満だけ、15%未満だけ、10%未満だけ、7%未満だけ、5%未満だけ、4%未満だけ、3%未満だけ、2%未満だけ、または1%未満だけ別の測定から逸脱する場合に、測定は、「同等」であると見なすことができる。特定の実施形態では、1つの測定は、それが15%未満だけ、10%未満だけ、または5%未満だけ参照標準から逸脱する場合に、参照標準と同等である。
【0032】
本明細書で使用される場合、標的病変に関する「完全応答(CR)」、「部分応答(PR)」、「安定疾患(SD)」、および「進行性疾患(PD)」という用語、ならびに非標的病変に関する「完全応答(CR)」、「不完全反応/安定疾患(SD)」、および進行性疾患(PD)という用語は、RECIST基準で定義されているとおりであると理解される。
【0033】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の文脈における「に由来する」という用語(例えば、IL-10ポリペプチド「に由来する」アミノ酸配列)は、ポリペプチドまたは核酸が、参照ポリペプチドまたは核酸(例えば、天然に存在するIL-10ポリペプチドまたはIL-10をコードする核酸)の配列に基づく配列を有することを示すことが意図され、タンパク質または核酸が作製される源または方法に関して限定的であることは意図されない。例として、「に由来する」という用語は、参照アミノ酸またはDNA配列の相同体およびムテインを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ドライバー変異」という用語は、腫瘍の成長および生存に寄与し、それにより選択的利点を付与する腫瘍性細胞内の変異を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「免疫関連完全応答(irCR)」、「免疫関連部分応答(irPR)」、「免疫関連進行性疾患(irPD)」、および「免疫関連安定疾患(irSD)」という用語は、免疫関連応答基準(irRC)に従って定義されるとおりである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「DNA」、「核酸」、「核酸分子」、および「ポリヌクレオチド」などの用語は、本明細書では、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体である、任意の長さの重合体形態のヌクレオチドを指すために互換的に使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、線状および環状の核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組み換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、およびプライマーなどが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「免疫関連応答基準(irRC)」という用語は、Wolchok,et al.(2009)Guidelines for the Evaluation of Immune Therapy Activity in Solid Tumors:Immune-Related Response Criteria,Clinical Cancer Research15(23):7412-7420に記載の免疫療法に対する応答の評価のためのシステムを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「と併用して」という用語は、対象への第1の薬剤および第2の薬剤の投与を指す。本発明の目的のために、第1の薬剤および第2の薬剤の治療効果が重複するように、第1の薬剤の投与から生じる生物学的効果が、第2の薬剤の投与の時点で対象において持続している場合に、1つの薬剤(例えば、IL-10剤)は、第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント経路の調節剤)と併用して投与されるものと見なされる。例えば、PD1免疫チェックポイント阻害剤(例えば、エグニボルマブまたはペンブロリズマブ)は、典型的には、2週間に1回または3週間に1回、静脈内注入によって投与される一方で、hIL-10またはペグ化hIL-10などの本開示によって企図される分子と併用される薬剤は一般的には、1日1回皮下投与される。しかしながら、第1の薬剤の投与が、長期間にわたって治療効果を提供し、第2の薬剤の投与が、第1の薬剤の治療効果が依然として進行中である間に、その治療効果を提供することで、第1の薬剤が、第2の薬剤の投与の時点から有意に離れた(例えば、数日間または数週間)時点で投与されているにも関わらず、第2の薬剤は、第1の薬剤と併用して投与されるものと見なされる。一実施形態では、第1および第2の薬剤が同時期または連続的に同時(互いに30分以内に)投与される場合、1つの薬剤(例えば、IL-10剤)は、第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント経路の調節剤)と併用して投与されるものと見なされる。分子の作用の持続時間が有意である本発明の文脈では、第1および第2の薬剤が、互いに約24時間以内、好ましくは互いに約12時間以内、好ましくは互いに約6時間以内、好ましくは互いに約2時間以内、または好ましくは互いに約30分以内に投与される場合、第1の薬剤は、第2の薬剤と「同時期に」投与されるものと見なされる。「と併用して」という用語はまた、第1の薬剤(例えば、PEG-IL-10剤)および第2の薬剤(例えば、PD1免疫チェックポイント阻害剤アンタゴニスト抗体)が単一の薬学的に許容される製剤(例えば、静脈内投与用緩衝等張液)中に同時に製剤化され、同時製剤が対象に投与される状況にも適用されるものと理解されるものとする。
【0039】
本明細書で使用される場合、「変化をもたらすのに十分な量で」という用語は、治療を必要とする対象に投与される治療剤(複数可)の量に関して使用されるために、特定の治療剤(複数可)の投与前(例えば、ベースラインレベル)および投与後に測定される指標のレベルの間には、検出可能な差異が存在する。指標には、任意の客観的パラメータ(irCR、irRC応答基準、CR、PR、もしくはSDのRECIST応答基準を含むがこれらに限定されない)または主観的パラメータ(例えば、対象の幸福感)が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「予防を必要とする」という用語は、対象が予防的ケアを必要とするか、またはその恩恵を受ける病態を発症する可能性を決定するために、当該分野で受け入れられる入手可能な情報に基づいた、医師の判断における、対象に関する治療の過程の決定を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「治療を必要とする」という用語は、対象が必要とするか、またはその恩恵を受ける、X線、CTスキャン、従来の研究室診断検査(例えば、血球数など)、ゲノムデータ、タンパク質発現データ、免疫組織化学検査を含むがこれらに限定されない、疾患、障害、または病態の特定のために、当該分野で受け入れられる入手可能な情報に基づいた、医師によって行われる対象に関する決定を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「腫瘍内異質性(ITH)」という用語は、腫瘍内、または同じ患者における個々の腫瘍病変間の遺伝的変動および表現型の変動を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「濃縮された」という用語は、試料が、(例えば、科学者によって)非自然的に操作されるために、目的の分子(例えば、ポリペプチド)が、(a)生物学的試料(例えば、ポリペプチドが天然に存在する試料もしくはそれが投与後に存在する試料)などの出発試料中の目的の分子の濃度よりも高い濃度(例えば、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも64倍高い、もしくはそれ以上)で、または(b)目的の分子が作製された環境(例えば、組み換え細菌細胞)よりも高い濃度で存在するようになることを意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、および「予防」などの用語は、対象が(例えば、臨床症状の不在によって決定される)疾患、障害、もしくは病態などを発症するリスクを一時的もしくは永続的に予防、抑制、阻害、もしくは低減するか、または一般に特定の疾患、障害、もしくは病態を有する素因がある対象の文脈において、それらの発症を遅延させる様式で、(例えば、疾患、障害、病態、またはそれらの症状の発症前に)開始される作用の過程(IL-10またはIL-10を含む薬学的組成物を投与することなど)を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、原発性腫瘍から周囲組織および遠隔臓器へのがん細胞の伝播を記載する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「調節する」および「調節」などの用語は、薬剤が生物系を含む系または生化学経路において、直接的または間接的に、正または負の応答をもたらす能力を指す。調節剤という用語は、アゴニストおよびアンタゴニストの両方を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「次世代配列決定(NGS)」という用語は、個々のDNA鎖の配列決定ではなく、大規模並列処理のプロセスを使用する、いくつかのハイスループットDNA配列決定法のいずれかを指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「腫瘍性疾患」という用語は、細胞の過剰増殖または制御されない(もしくは制御不全の)細胞複製から生じる、対象における障害または病態を指す。腫瘍性疾患という用語は、対象における腫瘍の存在から生じる障害を指す。腫瘍は、(1)良性、(2)前悪性(または「前がん性」)、および(3)悪性(または「がん性」)として分類することができる。本発明の組成物および方法を使用する治療に適した良性腫瘍の例には、腺腫、線維腫、血管腫、および脂肪腫が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物および方法を使用する治療に適した前悪性腫瘍の例には、過形成、非定型性、化生、および異形成が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物および方法を使用する治療に適した悪性腫瘍の例には、がん腫(皮膚、または内臓を覆う組織などの上皮組織から生じるがん)、白血病、リンパ腫、および(典型的には、骨、脂肪、筋肉、血管、または結合組織に由来する)肉腫が含まれるが、これらに限定されない。「腫瘍性疾患」という用語は、乳がんなどのがん;肉腫(骨肉腫および血管肉腫ならびに線維肉腫を含むがこれらに限定されない)、白血病、リンパ腫、泌尿生殖器がん(卵巣がん、尿道がん、膀胱がん、および前立腺がんを含むがこれらに限定されない);消化器がん(結腸食道がんおよび胃がんを含むがこれらに限定されない);肺がん;骨髄腫;膵臓がん;肝臓がん;腎臓がん;内分泌がん;皮膚がん;ならびに神経膠腫および神経芽腫、星状細胞腫、骨髄異形成障害を含む、悪性または良性の脳腫瘍または中枢および末梢神経(CNS)系腫瘍;子宮頸上皮内がん;腸ポリープ症;口腔白板症;組織球増殖症、過剰増殖性瘢痕(ケロイド瘢痕を含む)、血管腫;過剰増殖性動脈狭窄、乾癬、炎症性関節炎;角質増殖症および丘疹鱗屑性発疹(関節炎を含む)を含む。ウイルス誘導腫瘍(疣贅など)およびEBV誘導疾患(すなわち、伝染性単核症)、瘢痕形成、過剰増殖性血管疾患(内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄、および血管閉塞などを含む)もまた含まれる。「腫瘍性疾患」という用語は、骨髄性腫瘍およびリンパ系腫瘍を含む。各カテゴリは、形態学、病理生物学、治療、および/または予後を定義する特徴を有する、異なる種類の造血がんを含有する。最適な治療を可能にするには、予後または化学療法に対する応答に影響を与える可能性がある追加の因子の特定とともに、正しい分類が不可欠である。骨髄性腫瘍には、骨髄増殖性腫瘍、好酸球増加症を伴う骨髄性およびリンパ系障害、骨髄増殖性/骨髄異形成性腫瘍、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病および関連する前駆腫瘍、ならびに分化系統不明瞭な急性白血病が含まれるが、これらに限定されない。リンパ系腫瘍には、前駆リンパ系腫瘍、成熟B細胞腫瘍、成熟T細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、および免疫不全関連リンパ増殖性障害が含まれるが、これらに限定されない。造血系の他のがんには、組織球性腫瘍および樹状細胞腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。「腫瘍性疾患」という用語は、腫瘍性疾患に直接的または間接的に関連する病態を指す、腫瘍性関連疾患、障害、および病態を含み、例えば、血管新生および前がん性病態(異形成など)を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「がん遺伝子中毒」という用語は、がん細胞の生存が、変異したがん遺伝子の継続的な活性に依存する現象を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「パッセンジャー変異(複数可)」という用語は、変異速度の増加の結果として腫瘍の発生中に生じるが、腫瘍の成長には寄与しない変異(複数可)を指す。
【0051】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、化学的または生化学的に修飾された分子を含む、任意の長さのアミノ酸の重合体形態である分子を指す。ポリペプチドは、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、または誘導体化されたアミノ酸、および非アミド結合の組み込みなどによって修飾ポリペプチド骨格を有するポリペプチドを組み込むことができる。ポリペプチドという用語は、多様な源に由来するドメインで構成される融合タンパク質、シグナルペプチドリーダー配列を有する成熟タンパク質の前駆体形態を含むがこれらに限定されない、融合タンパク質;直接的な組み換え発現から生じるN末端メチオニンまたはN-ホルミルメチオニン残基を有するポリペプチド;および免疫学的に活性なタンパク質の融合タンパク質(例えば、抗原性ジフテリアまたは破傷風毒素断片)などを含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「増殖活性」という用語は、例えば、正常な細胞分裂、ならびにがん、腫瘍、異形成、細胞形質転換、転移、および血管新生を促進するか、それに必要であるか、またはそれと特異的に関連する、細胞活性を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「低減または阻害する」という用語は、薬剤が、単独または併用で、薬剤への曝露前の既存の状態と比較して、観察可能なパラメータの20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の低下を提供する能力に関して使用される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「応答」という用語は、薬剤の投与に応答した、細胞、組織、器官、生物、または対象の客観的パラメータ(例えば、生化学的もしくは生理学的パラメータ)または主観的パラメータ(例えば、幸福感)を含む、評価可能なパラメータの変化を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「固形腫瘍応答評価基準(RECIST)」という用語は、Eisenhauer,et al.,(2009)New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version1.1)European Journal of Cancer45(2):228-247において更新されている、Therasse,et al.,(2000)New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors(RECIST Guidelines)J.Natl.Cancer Inst.92:205-216に記載の一連のルールを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「RNA配列決定(RNA-Seq)」という用語は、試料中のトランスクリプトームの配列または完全な組のRNA転写物を決定するためのNGSの使用を指す。
【0057】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書では1つの分子が別の分子に結合する選択性または親和性の程度を指すために使用される。結合対(例えば、リガンド/受容体、抗体/抗原、抗体/リガンド、抗体/受容体結合対)の文脈では、結合対の第1の分子が、試料中に存在する他の構成成分に有意な量で結合しない場合に、結合対の第1の分子は、結合対の第2の分子に特異的に結合すると言われる。第2の分子に対する第1の分子の親和性が、試料中に存在する他の構成成分に対する第1の分子の親和性よりも、少なくとも2倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも20倍高い、または少なくとも100倍高い場合に、結合対の第1の分子は、結合対の第2の分子に特異的に結合すると言われる。特定の実施形態では、結合対の第1の分子が抗体である場合、結合対の第2の分子に対する抗体の親和性が、例えば、スキャッチャード分析(Munsen,et al.1980Analyt.Biochem.107:220-239)によって決定して、約109リットル/モルよりも高いか、あるいは約1010リットル/モルよりも高いか、約1011リットル/モルよりも高いか、約1012リットル/モルよりも高い場合に、抗体は、結合対の第2の分子(例えば、タンパク質、抗原、リガンド、または受容体)に特異的に結合する。特異的結合は、競合ELISA、BIACORE(登録商標)アッセイ、および/またはKINEXA(登録商標)アッセイを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の技術を使用して評価することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、約10kDa未満、約2kDa未満、または約1kDa未満の分子量を有する、化学化合物を指す。小分子には、無機分子、有機分子、無機構成成分を含有する有機分子、放射性原子を含有する分子、および合成分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用される場合、「体細胞変異」という用語は、変異した細胞の子孫は受け継ぐことができるが、生殖系列DNA(精子または卵)中には存在しなかった、細胞が獲得する遺伝子改変を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」という用語は、ある構成成分(例えば、ポリペプチド)が、組成物の総含有量の約50%超および典型的には総含有量の約60%超を占めることを示す。より典型的には、「実質的に純粋な」は、全組成物の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、またはそれ以上が、目的の構成成分である、組成物を指す。場合によっては、目的の構成成分は、組成物の総含有量の約90%超、または約95%超、または約99%超を構成する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を指す。非ヒト哺乳動物種の例には、イヌ(犬)、ウマ(馬)、ネコ(猫)、ブタ(豚)、ウシ(牛)が含まれる。「患者」という用語は、対象がヒトである場合、本明細書では「対象」という用語と互換的に使用される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、疾患、障害、または病態に罹患する対象に投与したときに、疾患、障害、または病態の任意の症状、態様、または特徴に対して客観的な正の効果または主観的な正の効果(例えば、対象の幸福感)を提供する薬剤の量を指す。薬剤の治療有効量の決定に寄与する因子には、年齢、体重、性別、一般的な健康状態、ECOGスコア、観察可能な生理学的パラメータ(例えば、体温、血圧など)、追加の条件(例えば、糖尿病、メタボリックシンドローム)、対象の分析(例えば、X線、超音波、CTスキャン、体液の分析)、バイオマーカー(炎症性サイトカイン、IFN-γ、およびグランザイムなど)などの容易に特定可能な兆候が含まれるが、これらに限定されない。薬剤の治療有効量の決定に寄与する追加の因子には、疾患の種類、疾患進行の状態、腫瘍負荷、ならびに治療モダリティ、および組成物が非互換性または交差反応をもたらし得る他の薬剤の他の同時投与と併用して投与されているかどうかを含む、治療される特定の疾患の特徴が含まれるが、これらに限定されない。治療有効量は、投薬レジメンおよび/または対象の病態の評価、ならびに前述の因子の変動に関連して、対象の治療の過程にわたって調整することができる。一実施形態では、治療有効量は、単独で、または別の薬剤と併用して使用した場合に、哺乳動物対象への投与の過程で、不可逆的で深刻な有害事象をもたらさない薬剤の量である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、および「治療」などの用語は、薬剤を含む組成物を対象(該対象は、疾患、障害、もしくは病態、またはその症状に苦しんでいる)に投与することで、そのような疾患、障害、または病態の原因または少なくとも1つの症状を、一時的、一過的、または永続的に排除、低減、抑制、軽減、または寛解する行為を指すが、必ずしも対象を苦しめている全ての障害症状の完全な排除を示すわけではない。「治療する」という用語は、疾患、障害、もしくは病態の一時停止もしくはその進行の減速、または有害もしくは別様に望ましくない状態へのその進行の阻害を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「腫瘍変異負荷(TMB)」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸配列決定によって決定される1メガベース当たりの変異の数として表される、腫瘍試料中に存在する体細胞変異の数を指し、この核酸配列決定では、腫瘍試料中の核酸の少なくとも0.2メガベースが配列決定されるか、あるいは腫瘍試料中の核酸の少なくとも0.5メガベースが配列決定されるか、あるいは腫瘍試料中の核酸の少なくとも1メガベースが配列決定されるか、またはあるいは少なくとも5メガベース、またはあるいは腫瘍試料中の核酸の少なくとも10メガベースが配列決定される。Chalmers,et al.(2017)Genome Medicine9:34に記載のように、低腫瘍変異負荷(低TMB)を評価する正確性は、FoundationOneアッセイ(Frampton,et al.(2013)Development and validation of a clinical cancer genomic profiling test based on massively parallel DNA sequencing.Nature Biotechnology31:1023-31、He,et al.(2016)Integrated genomic DNA/RNA profiling of hematologic malignancies in the clinical setting.Blood127:3004-14)に記載のFoundation Medicine,Cambridge MA)を使用し、より大量の核酸を配列決定することで改善されるが、偏差パーセンテージは、TMBを有する試料中でより低いために、(この研究では1メガベース当たり20個超の変異として定義される)高TMBは、数百個のみの遺伝子の標的化配列決定によって、効果的に特定することができる一方で、中等度のTMBは、配列決定した少なくとも0.5Mbの配列によって改善される一方で、低TMBの信頼できる評価は、5メガベース、あるいは10メガベース、またはそれ以上の腫瘍試料中の核酸の配列決定によって改善される。TMBを評価するための配列決定は、部分ゲノム配列決定、WES、またはNGSを使用するWGSを含む、当該技術分野で受け入れられている様々な方法のいずれかによって達成することができる。腫瘍変異負荷は、腫瘍試料中の本質的にゲノム全体を配列決定した場合、ゲノムにおける変異の総数として表すことができる。腫瘍変異負荷はまた、腫瘍試料中で配列決定された1メガベースの核酸当たりの変異の数としても表すことができる。腫瘍変異負荷の比率は、腫瘍性疾患間で変動することが理解されているため、腫瘍変異負荷は、所与の疾患の種類の文脈で評価されるべきである。例えば、特定の種類のがんは、1メガベース当たり1個未満の変異から、1メガベース当たり数百個の変異まで、幅広い変異率を呈する。一般に、「低腫瘍変異負荷」という用語は、配列決定された1メガベース当たり15個以下の変異、配列決定された1メガベース当たり10個以下の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり7個以下の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり5個以下の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり2個以下の変異、またはあるいは配列決定された1メガベース当たり1個以下の変異の腫瘍変異負荷を意味する。「中等度の腫瘍変異負荷」という用語は、特定の文脈で「低変異負荷」という用語に適用される腫瘍変異負荷のレベルの上限閾値を超える腫瘍変異負荷を意味する。いくつかの実施形態では、中等度の腫瘍変異負荷という用語は、配列決定された1メガベース当たり約15個超の変異であるが、配列決定された1メガベース当たり約100個未満の変異であり、あるいは配列決定された1メガベース当たり約10個超の変異であるが、配列決定された1メガベース当たり約75個未満の変異であり、あるいは配列決定された1メガベース当たり約5個超の変異であるが、配列決定された1メガベース当たり約50個未満の変異であり、あるいは配列決定された1メガベース当たり約1個超の変異であるが、配列決定された1メガベース当たり約30個未満の変異であり、あるいは配列決定された1メガベース当たり約1個超の変異であるが、配列決定された1メガベース当たり約20個未満の変異である。高腫瘍変異という用語は、配列決定された1メガベース当たり100個以上の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり75個以上の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり50個以上の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり30個以上の変異、あるいは配列決定された1メガベース当たり20個以上の変異、またはあるいは配列決定された1メガベース当たり10個以上の変異の、中等度の腫瘍変異負荷を超える腫瘍変異負荷である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「低PD-L1発現」は、1%未満の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、「中等度のPD-L1発現」は、1%~49%の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、「高PD-L1発現」は、50%以上の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、PD-L1発現は、Rizzi et al.(2015)Science348:124-128におけるように当該技術分野で利用可能な方法論に従って評価される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、変異体が由来する親ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を含むポリペプチドの、天然に存在する誘導体および天然に存在しない誘導体を指す。天然に存在する変異体には、相同体(それぞれアミノ酸またはヌクレオチド配列が種ごとに異なるポリペプチドおよび核酸)、ならびに対立遺伝子変異体(それぞれアミノ酸またはヌクレオチド配列がある種において個体ごとに異なるポリペプチドおよび核酸)が含まれる。アミノ酸配列の変化が人工的に導入される、アミノ酸配列に対する1つ以上の修飾を含む、ポリペプチドの天然に存在しない変異体は、本明細書では「ムテイン」と称される。例示的なIL-10ムテインは、2015年2月2日公開のEatonらの米国特許出願公開第S2015/0038678A1号、2003年10月2日公開のHansenらの米国特許出願公開第US203/0186386A1号、および2016年3月10日公開のVanらの米国特許出願公開第US20160068583A1号に記載されている。
【0067】
本明細書で使用される場合、「全エクソーム配列決定(WES)」という用語は、あるゲノムにおけるタンパク質コード遺伝子内の全てのエクソンのDNA配列を決定するための方法を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「全ゲノム配列決定(WGS)」という用語は、ある生物のゲノム(典型的には、腫瘍学研究では体細胞がんゲノム)の完全なDNA配列を一度に決定するための配列決定を指す。
【0069】
この開示全体を通して、一文字または三文字のコードに従って、天然に存在するアミノ酸への言及がなされることが理解されるであろう。読者の便宜のために、一文字および三文字のアミノ酸コードを、以下の表1に提供する。
【表1】
【0070】
ポリペプチドの構造の文脈において、本明細書で使用される場合、「N末端」(または「アミノ末端」)および「C末端」(または「カルボキシル末端」)という用語はそれぞれ、ポリペプチドの最端のアミノ末端およびカルボキシル末端を指す一方で、「N末端の」および「C末端の」という用語はそれぞれ、N末端およびC末端に向かうポリペプチドのアミノ酸配列内の相対的な位置を指し、それぞれN末端およびC末端の残基を含むことができる。「最N末端の」または「最C末端の」は、第1および第2のアミノ酸残基が共有結合して、近接するアミノ酸配列を提供する、第2のアミノ酸残基に対する第1のアミノ酸残基の位置を指す。
【0071】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路調節剤と併用してIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)を投与することによる、哺乳動物対象における腫瘍性疾患(例えば、がん)の治療方法を提供する。本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント経路調節剤」という用語は、免疫適格哺乳動物を含む生物系における免疫チェックポイント経路の活性を阻害または刺激する分子を指す。免疫チェックポイント経路調節剤は、免疫チェックポイントタンパク質(がん細胞および/もしくは免疫Tエフェクター細胞などの抗原提示細胞(APC)の表面上に発現される免疫チェックポイントタンパク質など)に結合することによってその効果を発揮することができるか、または免疫チェックポイント経路の上流および/もしくは下流の反応に対してその効果を発揮することができる。例えば、免疫チェックポイント経路調節剤は、PD-1およびCTLA-4シグナル伝達に関与するチロシンホスファターゼであるSHP2の活性を調節することができる。「免疫チェックポイント経路調節剤」という用語は、阻害性免疫チェックポイント(本明細書では「免疫チェックポイント経路阻害剤」または「免疫チェックポイント経路アンタゴニスト」と称される)の機能を少なくとも部分的に下方制御することができる免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および刺激性免疫チェックポイント(本明細書では「免疫チェックポイント経路エフェクター」または「免疫チェックポイント経路アゴニスト」と称される)の機能を少なくとも部分的に上方制御することができる免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)の両方を包含する。
【0072】
一実施形態では、IL-10剤と併用して用いられる免疫チェックポイント経路調節剤は、負の免疫チェックポイント経路阻害剤/アンタゴニストである。別の実施形態では、IL-10剤と併用して用いられる免疫チェックポイント経路調節剤は、正の免疫チェックポイント経路アゴニストである。別の実施形態では、IL-10剤と併用して用いられる免疫チェックポイント経路調節剤は、免疫チェックポイント経路アンタゴニストである。
【0073】
本開示の特定の実施形態は、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路調節剤に加えて、1つ以上の追加の抗腫瘍剤(例えば、化学療法剤)または抗腫瘍治療モダリティ(例えば、放射線)と併用した、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10剤)の投与を企図する。追加の薬剤(複数可)の同一性は、治療される基礎病態の性質に大きく依存する(例えば、膀胱がんの治療では、シスプラチンなどのアルキル化剤の追加が適切である場合がある)。1つ以上の追加の治療剤または予防剤(例えば、化学療法剤)が、IL-10剤と1つ以上の免疫チェックポイント経路阻害剤との併用と併せて投与される実施形態については、本明細書以下でさらに記載する。
【0074】
「免疫チェックポイント経路」という用語は、抗原提示細胞(APC)上に発現される第1の分子(例えば、PD1などのタンパク質)が、免疫応答の刺激(例えば、T細胞活性の上方制御)または阻害(例えば、T細胞活性の下方制御)のいずれかを通して免疫応答を調節する免疫細胞(例えば、T細胞)上に発現される第2の分子(例えば、PDL1などのタンパク質)に結合することによって引き起こされる、生物学的応答を指す。免疫応答を調節する結合対の形成に関与する分子は一般に、「免疫チェックポイント」と称される。そのような免疫チェックポイント経路によって調節される生物学的応答は、細胞活性化、サイトカイン産生、細胞遊走、細胞毒性因子分泌、および抗体産生などの下流免疫エフェクター経路をもたらす細胞内シグナル伝達経路によって媒介される。免疫チェックポイント経路は一般に、第1の細胞表面発現分子が免疫チェックポイント経路に関連する第2の細胞表面分子に結合すること(例えば、PD1がPDL1に、CTLA4がCD28に結合することなど)によって引き起こされる。免疫チェックポイント経路の活性化は、免疫応答の刺激または阻害をもたらすことができる。
【0075】
その活性化が免疫応答の刺激をもたらす免疫チェックポイント経路は、本明細書では「正の免疫チェックポイント経路」と称される。正の免疫チェックポイント経路という用語には、ICOSLがICOS(CD278)に、B7-H6がNKp30に、CD155がCD96に、OX40LがOX40に、CD70がCD27に、CD40がCD40Lに、およびGITRLがGITRに結合することによって調節される生物学的経路が含まれるが、これらに限定されない。正の免疫チェックポイントを刺激する分子(免疫応答を刺激する結合対の構成成分に対する、そのような天然または合成リガンド)は、免疫応答の上方制御に有用である。そのような正の免疫チェックポイントアゴニストの例には、ICOS(JTX-2011、Jounce Therapeuticsなど)、OX40(MEDI6383、Medimmuneなど)、またはCD27(バルリルマブ、Celldex Therapeuticsなど)、CD40(ダセツズマブCP-870、893、Roche、Chi Lob7/4など)、HVEM、CD28、CD137 4-1BB、CD226、およびGITR(MEDI1873、Medimmune、INCAGN1876、Agenusなど)などのT細胞活性化受容体に結合するアゴニスト抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
その活性化が免疫応答の阻害または下方制御をもたらす免疫チェックポイントは、本明細書では「負の免疫チェックポイント経路」と称される。負の免疫チェックポイントの活性化から生じる免疫応答の阻害は、宿主免疫系が腫瘍関連抗原などの外来抗原を認識する能力を低下させる。負の免疫チェックポイント経路という用語には、PD1がPDL1に、PD1がPDL2に、およびCTLA4がCDCD80/86に結合することによって調節される生物学的経路が含まれるが、これらに限定されない。そのような負の免疫チェックポイントアンタゴニストの例には、PD1(CD279とも称される)、TIM3(T細胞膜タンパク質3、HAVcr2としても知られる)、BTLA(BおよびTリンパ球減衰因子、CD272としても知られる)、VISTA(B7-H5)受容体、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3、CD233としても知られる)、ならびにCTLA4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原4、CD152としても知られる)を含むがこれらに限定されない、T細胞阻害性受容体に結合するアンタゴニスト(例えば、アンタゴニスト抗体)が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
免疫チェックポイント経路によって媒介される免疫応答は、T細胞媒介性免疫応答に限定されない。例えば、NK細胞のKIR受容体は、NK細胞によって媒介される腫瘍細胞に対する免疫応答を調節する。腫瘍細胞は、HLA-Cと呼ばれる分子を発現し、この分子が、NK細胞のKIR受容体を阻害し、減少または抗腫瘍免疫応答をもたらす。HLA-CのKIR受容体への結合をアンタゴナイズする薬剤(抗KIR3マブ(例えば、リリルマブ、BMS)など)の投与は、HLA-CがNK細胞阻害性受容体(KIR)に結合する能力を阻害し、それによりNK細胞ががん細胞を検出および攻撃する能力を回復させる。したがって、HLA-CがKIR受容体に結合することによって媒介される免疫応答は、その阻害が非T細胞媒介性免疫応答の活性化をもたらす、負の免疫チェックポイント経路の一例である。
【0078】
以前に考察したように、「負の免疫チェックポイント経路阻害剤」は、負の免疫チェックポイント経路の活性化を妨害し、免疫応答の上方制御または増強をもたらす、免疫チェックポイント経路調節剤を指す。例示的な負の免疫チェックポイント経路阻害剤には、プログラム死1(PD1)経路阻害剤、プログラム死リガンド1(PDL1)経路阻害剤、TIM3経路阻害剤、および抗細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4)経路阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
一実施形態では、免疫チェックポイント経路調節剤は、PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を阻害する負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「PD1経路阻害剤」)である。PD1経路阻害剤は、T細胞の消耗の逆転、サイトカイン産生の回復、抗原依存性T細胞の拡大などの、様々な好ましい免疫応答の刺激をもたらす。PD1経路阻害剤は、黒色腫、肺がん、腎臓がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、膀胱がん、および尿路上皮がんを含む様々ながんの治療についてUSFDAから承認を受けており、様々ながんに有効であるものとして認識されている。
【0080】
PD1経路阻害剤という用語は、PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を妨害するモノクローナル抗体を含む。抗体PD1経路阻害剤は、当該技術分野で周知である。PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を妨害するモノクローナル抗体である市販のPD1経路阻害剤の例には、ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BMS-936558、MDX1106、BristolMyers Squibb、Princeton NJから市販)、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)MK-3475、ラムブロリズマブ、Merck and Company、Kenilworth NJから市販)、およびアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech/Roche、South San Francisco CA)が含まれる。デュルバルマブ(MEDI4736、Medimmune/AstraZeneca)、ピディリズマブ(CT-011、CureTech)、PDR001(Novartis)、BMS-936559(MDX1105、BristolMyers Squibb)、ならびにアベルマブ(MSB0010718C、Merck Serono/Pfizer)およびSHR-1210(Incyte)を含むがこれらに限定されない、追加のPD1経路阻害剤抗体が、臨床開発段階にある。追加の抗体PD1経路阻害剤は、2012年7月10日発行の米国特許第8,217,149号(Genentech,Inc)、2012年5月1日発行の米国特許第8,168,757号(Merck Sharp and Dohme Corp.)、2011年8月30日発行の米国特許第8,008,449号(Medarex)、2011年5月17日発行の米国特許第7,943,743号(Medarex,Inc)に記載されている。
【0081】
本発明の一実施形態では、PD1免疫チェックポイント経路調節剤は、以下の表2に提供されるCDR配列を含む抗体である。
【表2】
【0082】
「相補性決定領域」という用語およびその略語「CDR」は、本明細書では免疫グロブリンの可変ドメインの超可変ドメインを指すために使用される結合特性を決定する免疫グロブリン分子内で典型的に提供される配列である。CDR内に含まれる残基の体系的な特定は、Kabatによって開発されている(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)。本明細書におけるCDR位置の番号付けは、Kabatの番号付け規則に従って提供される。
【0083】
本発明の一実施形態では、PD1免疫チェックポイント経路阻害剤は、以下の表3に提供される可変ドメイン配列(配列番号7および配列番号8)を含む抗体である。
【表3】
【0084】
本発明の一実施形態では、PD1アンタゴニスト抗体は、AM0001であり、これは、ラムダ2軽鎖、および228位にセリンからプロリンへの置換(S228P)を有することで、「ヒンジ安定化」重鎖を提供するIgG4を有する、モノクローナル抗体であり、本明細書上記の表2に明記される配列番号1~6に対応するアミノ酸配列を有するVLおよびVH CDRを特徴とし、軽鎖可変領域は、配列番号7の配列を特徴とし、重鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列を特徴とする。AM0001抗体は、25℃で、約10pM以下のヒトおよびカニクイザルPD-1に対する結合親和性(K
d)を有することを特徴とする。バイオレイヤー干渉法(BLI)で測定されるAM0001の結合親和性を、以下の表4に示す。
【表4】
【0085】
AM0001の重鎖および軽鎖の完全長アミノ酸配列を、以下に提供する。
AM0001成熟重鎖タンパク質配列(ヒトIgG4 S228Pフレームワーク):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCPASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLGWVSDISGGGGTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRGEDTAVYYCAKSGTVVTDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号11)
AM0001成熟軽鎖タンパク質配列(ヒトラムダ-2フレームワーク):
SYVLTQPPSVSVAPGQTARVTCGGNSIGSYSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPSGIPERFSGSNSGNTAALTISRVEAGDEADYYCQVWDTSSYWVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号12)
【0086】
PD-1経路阻害剤抗体は、組み換え手段によって産生することができる。本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、本開示は、PD1アンタゴニスト抗体がAM0001である場合の核酸配列を提供し、AM0001の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列(配列番号11および配列番号12)はそれぞれ、配列番号13および配列番号14として以下に明記されるとおりである。
AM0001成熟重鎖DNA配列(ヒトIgG4 S228Pフレームワーク):
GAGGTCCAGCTCCTGGAATCCGGGGGCGGTCTGGTCCAGCCGGGCGGCTCGCTCCGCCTGTCCTGCCCGGCGAGCGGCTTCACCTTCTCCTCCTACGCCATGTCCTGGGTGAGGCAGGCCCCCGGCAAGGGCCTCGGCTGGGTCAGCGACATCTCCGGCGGCGGCGGCACCACGTACTACGCGGACTCGGTGAAGGGCCGGTTCACGATCTCCCGGGACAACTCCAAGAACACCCTGTACCTGCAGATGAACTCACTGCGGGGCGAGGACACGGCGGTGTATTACTGCGCCAAGTCCGGAACGGTTGTGACTGATTTCGACTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGTCCAGCGCCTCCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCGCCGTGCTCGCGGAGCACCAGCGAGTCCACCGCCGCGCTCGGTTGCCTCGTCAAGGACTACTTCCCCGAGCCGGTCACAGTGTCATGGAACTCCGGCGCGCTGACGAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCCGTGCTCCAGTCCAGCGGCCTGTACAGCCTCAGTAGCGTCGTGACGGTGCCCTCGTCGTCGCTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTGGACCACAAGCCGTCCAACACCAAGGTCGATAAGCGAGTGGAGAGCAAGTACGGCCCCCCGTGCCCCCCCTGCCCGGCCCCGGAGTTCCTGGGTGGCCCCTCCGTGTTCCTCTTCCCCCCGAAGCCCAAAGACACCCTCATGATCAGCCGGACGCCGGAGGTCACGTGCGTCGTCGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCGGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTCGAGGTGCATAACGCCAAGACCAAGCCTCGCGAGGAACAGTTCAACTCCACTTACCGCGTCGTGTCCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTCAACGGGAAGGAATACAAGTGCAAGGTCTCGAACAAGGGCCTGCCGTCGTCCATCGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCGCGGGAGCCCCAGGTCTACACCCTCCCCCCCTCCCAGGAAGAGATGACGAAGAACCAGGTGAGCCTGACGTGCCTCGTGAAGGGGTTCTACCCCTCCGACATCGCAGTCGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCGGAGAACAACTACAAGACGACCCCCCCGGTGCTGGACAGCGACGGGTCCTTCTTCCTCTACTCGCGTCTCACAGTCGACAAGTCGCGCTGGCAGGAGGGCAACGTCTTCTCGTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGTCGCTGTCCCTGTCCCTGGGCAAG(配列番号13)
AM0001成熟軽鎖タンパク質配列(ヒトラムダ-2フレームワーク):
AGCTACGTGCTGACCCAGCCGCCCTCGGTGTCGGTCGCCCCGGGCCAGACGGCACGTGTGACCTGCGGCGGTAACAGCATCGGCTCCTACTCGGTCCACTGGTATCAGCAGAAGCCGGGGCAGGCCCCGGTCCTGGTGGTCTACGACGACAGCGACCGCCCGTCCGGCATCCCCGAACGCTTCAGCGGCTCAAACAGCGGGAACACCGCGGCCCTGACGATCTCGCGCGTCGAGGCGGGGGACGAAGCCGATTACTACTGCCAGGTCTGGGACACCTCGAGTTACTGGGTGTTCGGCGGGGGCACGAAGCTGACCGTCCTCGGCCAGCCGAAGGCCGCCCCCTCAGTAACCCTGTTCCCCCCGTCCTCGGAGGAGTTGCAGGCGAACAAGGCGACGCTGGTGTGCTTGATCTCGGACTTCTACCCCGGAGCGGTGACGGTCGCCTGGAAGGCCGACTCCTCCCCGGTCAAGGCGGGCGTGGAGACGACCACCCCCTCCAAGCAGAGCAACAACAAGTACGCCGCCTCGAGCTACCTCTCGCTGACACCCGAGCAGTGGAAGTCCCACCGGTCCTACTCGTGCCAGGTAACCCACGAGGGCTCCACCGTCGAGAAGACCGTGGCCCCCACCGAGTGCAGC(配列番号14)
【0087】
PD1経路阻害剤という用語は、アンタゴニスト抗体に限定されない。PD-L2 IgG2a融合タンパク質であるAMP-224を含む非抗体生物学的PD1経路阻害剤もまた、臨床開発中であり、PDL2融合タンパク質であるAMP-514は、AmplimmuneおよびGlaxo SmithKlineによって臨床開発中である。アプタマー化合物はまた、PD1経路阻害剤として有用であるものとして、文献にも記載されている(Wang,et al.Selection of PD1/PD-L1 X-Aptamers,Biochimie(印刷中)、2017年9月11日時点で、https://doi.org/10.1016/j.biochi.2017.09.006.のインターネットアドレスにてオンラインで入手可能)。
【0088】
PD1経路阻害剤という用語は、2016年8月23日発行のSasikumarらの米国特許第9,422,339号、および2014年12月9日発行のSasilkumarらの米国特許第8,907,053号に記載のものなどの、ペプチジルPD1経路阻害剤を含む。CA-170(AUPM-170、Aurigene/Curis)は、免疫チェックポイントPDL1およびVISTAを標的とする、経口で生体利用可能な小分子であると報告されている。Pottayil Sasikumar,et al.Oral immune checkpoint antagonists targeting PD-L1/VISTA or PD-L1/Tim3for cancer therapy.[要約].In:Proceedings of the107th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;2016Apr16-20;New Orleans,LA.Philadelphia(PA):AACR;Cancer Res2016;76(14Suppl):Abstract No.4861.CA-327(AUPM-327、Aurigene/Curis)は、免疫チェックポイント、プログラム死リガンド1(PDL1)、ならびにT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質3(TIM3)を阻害する、経口で利用可能な小分子であると報告されている。
【0089】
PD1経路阻害剤という用語は、小分子PD1経路阻害剤を含む。本発明の実施に有用な小分子PD1経路阻害剤の例は、Sasikumarらの、免疫調節剤としての1,2,4-オキサジアゾールおよびチアジアゾール化合物(2016年3月7日提出のPCT/IB2016/051266、WO2016142833A1として2016年9月15日に公開)、ならびにSasikumarらの、免疫調節剤としての3-置換-1,2,4-オキサジアゾールおよびチアジアゾール化合物(2016年3月9日出願のPCT出願第PCT/IB2016/051343号、WO2016142886A2として公開)、以下の構造を有するBMS-1166およびBMS-1001(Skalniak,et al(2017)Oncotarget8(42):72167-72181)を含む当該技術分野に記載されている。
【化1】
Chupak LS amd Zheng X.Compounds useful as immunomodulators.Bristol-Myers Squibb Co.2015WO2015/034820A1、EP3041822B1(2017年8月9日認可)、WO2015034820A1、およびChupak,et al.Compounds useful as immunomodulators.Bristol-Myers Squibb Co.2015WO2015/160641A2.WO2015/160641A2、Chupak,et al.Compounds useful as immunomodulators.Bristol-Myers Squibb Co.Sharpe,et al.Modulators of immunoinhibitory receptor PD-1,and methods of use thereof、WO2011082400A2(2011年7月7日公開)、米国特許第7,488,802号(Wyeth)(2009年2月10日発行)。
【0090】
一実施形態では、免疫チェックポイント経路調節剤は、CTLA4のCD28への結合を阻害する負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「CTLA4経路阻害剤」)である。免疫チェックポイント受容体CTLA4は、PD1、BTLA、リンパ球減衰因子、TIM3、およびT細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子もまた含む、受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。CD80(B7.1としても知られる)およびCD86(B7.2としても知られる)は、CTLA4受容体リガンドとして特定されている。臨床的に標的とされる第1の免疫チェックポイント受容体であるCTLA4は、もっぱらT細胞上にのみ発現され、T細胞上で、それは、主にT細胞活性化の初期段階の振幅を制御する。それは、T細胞共刺激受容体CD28の活性を相殺することが示されている。
【0091】
抗原認識時、CD28シグナル伝達は、T細胞受容体シグナル伝達を強く増幅して、T細胞を活性化する。例えば、Riley et al.,(2002)Proc.Natl Acad.Sci.USA99:11790-95を参照されたい。CTLA4は、T細胞活性化後に転写的に誘導される。CTLA4は、活性化CD8+エフェクターT細胞によって発現されるが、その主な生理学的役割は、CD4+T細胞の2つの主要なサブセットに対する異なる効果、つまりi)ヘルパーT細胞活性の下方調節、およびii)制御性T細胞の免疫抑制活性の増強を通して顕在化すると考えられている。具体的には、CTLA4遮断は、ヘルパーT細胞に依存した免疫応答の増強をもたらす一方で、制御性T細胞のCTLA4関与は、それらの抑制機能を増加させる。例えば、Fontenot et al.,(2003)Nat.Immunol.Proc.4:330-36を参照されたい。CTLA4経路阻害剤の例は、当該技術分野で周知である(例えば、2004年1月27日発行の米国特許第6,682,736号(Abgenix)、2007年5月29日発行の米国特許第6,984,720号(Medarex,Inc.)、2009年10月20日発行の米国特許第7,605,238号(Medarex,Inc.)を参照されたい。
【0092】
現在、CTLA4経路阻害剤抗体治療アプローチに、欠点がないわけではない。例として、ヒト化抗CTLA4アンタゴニスト抗体を用いた転移性黒色腫の治療は、特定の自己免疫毒性(例えば、腸の炎症および皮膚炎)を引き起こすことが報告されており、許容される治療ウインドウの決定が促進されている(Wu et al.,(2012)Int.J.Biol.Sci.8:1420-30)。CTLA4経路阻害剤(例えば、イピリムマブなどの抗体)とIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)との併用の増強された治療有効性は、治療有効性を維持しながら投薬量を低減する潜在性を提供する。
【0093】
一実施形態では、免疫チェックポイント経路調節剤は、BTLAのHVEMへの結合を阻害する負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「BTLA経路阻害剤」)である。BTLAは、CTLA-4およびPD-1に構造的および機能的に関連する共阻害分子である。BTLAは、ウイルス特異的なヒトCD8+T細胞上に発現されるが、それは、それらがナイーブ表現型からエフェクター表現型へと分化した後、漸進的に下方制御される(Paulos et al.,(Jan.2010)J.Clin.Invest.120(1):76-80)。特定の腫瘍細胞型(黒色腫など)および腫瘍関連内皮細胞上に発現される、ヘルペスウイルス侵入媒介因子(HVEM、TNFRSF14としても知られる)は、BTLAリガンドとして特定されている。BTLAとHVEMとの間の相互作用は、複雑であるため、BTLAの治療阻害戦略は、他の免疫チェックポイント経路阻害受容体およびリガンドの場合よりも単純ではない。Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64。抗BTLA抗体およびアンタゴニストHVEM-Igを使用してBTLA/HVEM経路を標的とする、いくつかのアプローチが評価されており、そのようなアプローチは、移植、感染、腫瘍、および自己免疫疾患を含む、いくつかの疾患、障害、および病態において見込みがある有用性を示唆している(Wu et al.,(2012)Int.J.Biol.Sci.8:1420-30)。
【0094】
一実施形態では、免疫チェックポイント経路調節剤は、TIM3がTIM3活性化リガンドに結合する能力を阻害する負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「TIM3経路阻害剤」)である。TIM3は、Tヘルパー1(TH1)細胞応答を阻害し、抗TIM3抗体は、抗腫瘍免疫を増強することが示されている。TIM3経路の調節に関与する分子であるガレクチン9は、乳がんを含む様々な種類のがんにおいて上方制御される。TIM3は、腫瘍特異的CD8+T細胞上にPD1とともに同時発現されることが報告されている。がん精巣抗原NY-ESO-1によって刺激されると、両方の分子の二重阻害により、ヒトT細胞のインビトロでの増殖およびサイトカイン産生が大幅に増強される。さらに、動物モデルでは、PD1およびTIM3の協調的な遮断が、個々の分子の遮断によるわずかな影響のみが観察される状況で、抗腫瘍免疫応答を増強することが報告された。例えば、Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64、Zhu et al.,(2005)Nature Immunol.6:1245-52、Ngiow et al.,(2011)Cancer Res.71:3540-51を参照されたい。TIM3経路阻害剤の例は、当該技術分野で既知であり、代表的で非限定的な例は、2016年9月15日公開の米国特許公開第PCT/US2016/021005号、2016年9月8日公開のLifkeらの米国特許公開第US20160257749A1号(F.Hoffman-LaRoche)、2017年4月27日発行のKarunskyの米国特許第9,631,026号、2014年9月23日発行のKarunsky、Sabatos-Peytonらの米国特許第8,841,418号、米国特許第9,605,070号、および2013年10月8日発行のTakayanagiらの米国特許第8552156号に記載されている。
【0095】
LAG3は、制御性T(TReg)細胞の機能を増強する役割、および独立してCD8+エフェクターT細胞機能を阻害する役割を果たすことが示されている。LAG3のリガンドであるMHCクラスII分子は、いくつかの上皮がんで(しばしばIFNγに応答して)上方制御され、腫瘍浸潤マクロファージおよび樹状細胞上でも発現される。LAG3-MHCクラスIIの相互作用の役割は、決定的には解明されていないが、この相互作用は、TReg細胞機能の増強におけるLAG3の役割の重要な構成要素である可能性がある。
【0096】
LAG3は、TReg細胞およびアネルギーT細胞の両方で協調的に上方制御されるいくつかの免疫チェックポイント受容体のうちの1つである。LAG3およびPD1の同時遮断は、1つの受容体のみの遮断と比較して、アネルギー状態の逆転の増強を引き起こすことができる。実際、LAG3およびPD1の遮断は、慢性感染の設定では、腫瘍特異的CD8+T細胞とウイルス特異的CD8+T細胞との間のアネルギーを相乗的に逆転させることが示されている。IMP321(ImmuFact)は、黒色腫、乳がん、および腎細胞がんにおいて評価されている。一般に、Woo et al.,(2012)Cancer Res72:917-27、Goldberg et al.,(2011)Curr.Top.Microbiol.Immunol.344:269-78、Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64、Grosso et al.,(2007)J.Clin.Invest.117:3383-392を参照されたい。
【0097】
A2aRは、CD4+T細胞をTReg細胞へと発達するように刺激することによって、T細胞応答を阻害する。A2aRは、腫瘍免疫において特に重要であるが、これは、細胞の代謝回転による腫瘍内の細胞死の速度が高く、瀕死の細胞がA2aRのリガンドであるアデノシンを放出するためである。加えて、A2aRの欠失は、感染に対する炎症応答の増強、および場合によっては病理学的な炎症応答に関連付けられている。A2aRの阻害は、アデノシン結合を阻害する抗体によって、またはアデノシン類似体によってもたらすことができる。そのような薬剤は、がんおよびパーキンソン病などの障害において有用である可能性がある。一般に、Zarek et al.,(2008)Blood111:251-59、Waickman et al.,(25Nov2011)Cancer Immunol.Immunother.(doi:10.1007/s00262-011-1155-7)]を参照されたい。
【0098】
IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)は、通常、腫瘍細胞内および活性化免疫細胞内で発現される、免疫制御酵素である。IDOは、トリプトファンの酸化を通した免疫応答を下方制御する。これは、T細胞活性化の阻害およびT細胞アポトーシスの誘導をもたらし、これにより、腫瘍特異的細胞毒性Tリンパ球が機能的に不活性化されるか、または対象のがん細胞を攻撃することができない環境が作り出される。インドキシモド(NewLink Genetics)は、転移性乳がんにおいて評価されているIDO阻害剤である。
【0099】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化は、記載されおり(例えば、Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)、リガンド/受容体相互作用を特性評価するための標準的な技術が利用可能であり(例えば、Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,NYを参照されたい)、蛍光標識細胞分取(FACS)を含むフローサイトメトリーのための方法が利用可能であり(例えば、Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照されたい)、例えば、診断試薬として使用するための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含む、核酸の修飾に好適な蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR.、Sigma-Aldrich(2003)Catalog,St.Louis,MO.)。
【0100】
以前に記載したように、本発明は、2つ、3つ、またはそれ以上の免疫チェックポイント経路を調節する免疫チェックポイント経路調節剤を含む、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路を調節する薬剤(複数可)と併用して、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)を投与することによる、哺乳動物対象における腫瘍性疾患(例えば、がん)の治療方法を提供する。
【0101】
一実施形態では、複数の免疫チェックポイント経路は、複数の免疫チェックポイント経路の調節剤として作用することができる多機能分子の投与によって調節することができる。そのような多重免疫チェックポイント経路調節剤の例には、二重特異性抗体または多特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。調節剤または複数の免疫チェックポイント経路として作用することができる多特異性抗体の例は、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許公開第2013/0156774号は、PD1およびTIM3を同時発現する細胞を標的とするための二重特異性薬剤および多重特異性薬剤(例えば、抗体)、ならびにそれらの使用方法を記載している。さらに、BTLAおよびPD1の二重遮断は、抗腫瘍免疫を増強することが示されている(Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64)。本開示は、PD1およびLAG3の両方に結合する二重特異性抗体を含むがこれに限定されない、複数の免疫チェックポイント経路を標的とする免疫チェックポイント経路調節剤と併用した、IL-10剤の使用を企図する。したがって、抗腫瘍免疫は、複数のレベルで増強することができ、様々な機構的考察を考慮して、コンビナトリアル戦略を生成することができる。
【0102】
他の実施形態は、複数のチェックポイント経路調節剤と併用したIL-10剤の投与を企図し、さらなる実施形態は、3つ以上の免疫チェックポイント経路調節剤と併用したIL-10剤の投与を企図する。IL-10剤と複数の免疫チェックポイント経路調節剤とのそのような併用は、免疫チェックポイント経路が、異なる作用機構を有することができ、これが、複数の異なる治療角度から基礎疾患、障害、または病態を攻撃する機会を提供するという点で、有利であり得る。IL-10薬剤の投与と併用することができる免疫チェックポイント経路調節剤の代表的な併用(以下に特定されるように、それらのいくつかは臨床試験中である)には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
(a)PD1/PDL1経路阻害剤(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、PDR001、MEDI4736、アテゾリズマブ、およびデュルバルマブを含むがこれらに限定されない)と、LAG3アンタゴニスト抗体(例えば、BMS-986016、臨床試験識別子NCT01968109)、CTLA4アンタゴニスト抗体(例えば、イピルムマブ)、B7-H3アンタゴニスト抗体(例えば、エノブリツズマブ、臨床試験識別子NCT01968109)、KIRアンタゴニスト抗体(例えば、リリルマブ、臨床試験識別子NCT01714739)との併用、
【0104】
(b)PD1/PDL1経路阻害剤(ニボルマブ、ペンブロリズマブ、PDR001、MEDI4736、アテゾリズマブ、およびデュルバルマブを含むがこれらに限定されない)と、4-1BBに対するアゴニスト抗体(レルマブ、臨床試験識別子NCT02253992)、ICOSに対するアゴニスト抗体(例えば、JTX-2011、例えば、臨床試験識別子NCT02904226)、CD27に対するアゴニスト抗体(例えば、バルリルマブ、例えば、臨床試験識別子NCT02335918)、GITRに対するアゴニスト抗体(例えば、GWN323、例えば、臨床試験識別子NCT02740270)、およびOX40に対するアゴニスト抗体などの正の免疫チェックポイントアゴニスト抗体(例えば、MEDI6383(例えば、臨床試験識別子NCT02221960))との併用、
【0105】
(c)CTLA4経路阻害剤(イピルムアブを含むがこれに限定されない)と、LAG3アンタゴニスト抗体(例えば、BMS-986016)、TIM3アンタゴニスト抗体との併用。
【0106】
IL-10剤の追加によって補うことができるPD1/PDL1経路阻害剤を用いた他の代表的な併用療法には、PD1/PDL1経路阻害剤と、BRAF/MEK阻害剤、スニチニブ(NCT02484404)などのキナーゼ阻害剤、オラパリブなどのPARP阻害剤(NCT02484404)、オシメルチニブなどのEGFR阻害剤(Ahn,et al.(2016)J Thorac Oncol.11:S115)、エパカドスタットなどのIDO阻害剤、およびタリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)などの腫瘍溶解性ウイルスとの併用が含まれる。IL-10剤の追加によって補うことができるCTL4経路阻害剤を用いた他の代表的な併用療法には、CTL4経路阻害剤と、IL2、GMCSF、およびIFN-αとの併用が含まれる。
【0107】
IL-10剤:
本明細書で使用される場合、「IL-10剤」という用語は、IL-10受容体に結合し、IL-10と同じシグナル伝達経路を調節し、IL-10に特徴的な生物学的応答を誘発することができる2つのIL-10ポリペプチドを含むIL-10活性を有する、二量体分子を指す。IL-10剤という用語は、IL-10類似体およびIL-10変異体および修飾IL-10剤を含む。
【0108】
IL-10ポリペプチドという用語は、広く解釈されるべきであり、それには、例えば、相同体、変異体(ムテインを含む)、およびそれらの断片を含む、ヒトおよび非ヒトIL-10関連ポリペプチド、ならびに例えば、リーダー配列(例えば、シグナルペプチド)を有するIL-10ポリペプチド、ならびに前述のものの修飾バージョンが含まれる。さらなる特定の実施形態では、IL-10、IL-10ポリペプチド(複数可)、およびIL-10剤(複数可)は、アゴニストである。本明細書で使用される場合、「IL-10類似体」という用語は、IL-10剤を通して作動するIL-10剤を指し、IL-10と同じ作用機構を通して作動するIL-10類似体およびIL-10変異体(すなわち、IL-10受容体、およびIL-10に類似した様式でIL-10と同じシグナル伝達経路を調節する薬剤に特異的に結合し、その活性を調節するもの)を含み、IL-10と同等の生物学的応答を誘発することができる。
【0109】
「IL10ポリペプチド」という用語は、保存的アミノ酸置換を含むIL-10ポリペプチドを含む。「保存的アミノ酸置換」という用語は、タンパク質中のアミノ酸(複数可)を、その側鎖と類似の酸性度、塩基性度、電荷、極性、またはサイズの側鎖を有するアミノ酸で置き換えることによって、タンパク質の活性を保存する置換を指す。保存的アミノ酸置換は一般に、以下の群、1)L、I、M、V、F、2)R、K、3)F、Y、H、W、R、4)G、A、T、S、5)Q、N、および6)D、Eにおけるアミノ酸残基の置換を伴う。置換、挿入、または欠失についてのガイダンスは、異なる変異タンパク質または異なる種由来のタンパク質のアミノ酸配列の整列に基づくことができる。したがって、任意の天然に存在するIL-10ポリペプチドに加えて、本開示は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個、通常20、10、または5個以下のアミノ酸置換を有することを企図し、置換は、通常、保存的アミノ酸置換である。
【0110】
場合によっては、IL-10ポリペプチドは、ペプチド結合以外の1つ以上の結合を含み、例えば、少なくとも2つの隣接するアミノ酸は、望ましくないタンパク質分解もしくは他の分解手段を低減または排除するように、および/または血清安定性を増加させるように、および/または構造的柔軟性を制限もしくは増加させるように、アミド結合以外の結合を介して接合され、IL-10のバックボーン内の1つ以上のアミド結合は、置換されてもよい。IL-10ポリペプチド中の1つ以上のアミド結合(-CO-NH-)は、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、または-CH2SO-などのアミド結合の同配体である結合で置き換えることができる。IL-10中の1つ以上のアミド結合はまた、例えば、還元同配体偽ペプチド結合によって置き換えることもできる。Couder et al.(1993)Int.J.Peptide Protein Res.41:181-184を参照されたい。そのような置換およびそれらをもたらす方法は、当業者に既知である。
【0111】
「IL10ポリペプチド」という用語は、以下のものを含むがこれらに限定されない、1つ以上のアミノ酸置換を含むIL-10ポリペプチドを含む。a)アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ノルロイシン、(S)-2-アミノ酪酸、(S)-シクロヘキシルアラニン、または分岐状、環状、および直鎖状アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル置換を含む、C1-C10炭素由来の脂肪族側鎖によって置換された他の単純αアミノ酸を含む、アルキル置換疎水性アミノ酸の置換、
【0112】
b)フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、スルホチロシン、ビフェニルアラニン、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-ベンゾチエニルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、ヒスチジン(上記に列挙した芳香族アミノ酸のアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アザ、ハロゲン化(フルオロ、クロロ、ブロモ、もしくはヨード)、または(C1-C4由来の)アルコキシ置換形態を含み、これらの例示となる例は、2-、3-、または4-アミノフェニルアラニン、2-、3-、または4-クロロフェニルアラニン、2-、3-、または4-メチルフェニルアラニン、2-、3-、または4-メトキシフェニルアラニン、5-アミノ-、5-クロロ-、5-メチル-、または5-メトキシトリプトファン、2’-、3’-、または4’-アミノアラニン、2’-、3’-、または4’-クロロアラニン、2、3、または4-ビフェニルアラニン、2’-、3’-、または4’-メチルアラニン、2-、3-、または4-ビフェニルアラニン、および2-または3-ピリジルアラニンである)を含む、芳香族置換疎水性アミノ酸の置換、c)アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、ホモアルギニン(置換がヘテロ原子(α-窒素または遠位の窒素(複数可)など)上にあるかα-炭素(例えば、プロ-R位におけるもの)上にあるかに関わらず、前のアミノ酸の(C1-C10分岐状、直鎖状、または環状由来の)アルキル、アルケニル、またはアリール置換誘導体を含む)を含む、塩基性側鎖を含有するアミノ酸の置換。例示となる例として機能する化合物には、N-イプシロン-イソプロピル-リジン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-グリシン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-アラニン、N,N-ガンマ、ガンマ’-ジエチル-ホモアルギニンが含まれる。α-メチル-アルギニン、α-メチル-2,3-ジアミノプロピオン酸、α-メチル-ヒスチジン、α-メチル-オルニチンなどの化合物もまた含まれ、アルキル基は、α-炭素のプロ-R位を占める。アルキル、芳香族、ヘテロ芳香族(ヘテロ芳香族基が、1つ以上の窒素、酸素、または硫黄原子を単独または組み合わせで有する場合)、カルボン酸、または多くの周知の活性化誘導体のいずれか(塩化物、活性エステル、活性アゾリド、および関連誘導体など)から形成されるアミド、ならびにリジン、オルニチン、または2,3-ジアミノプロピオン酸もまた含まれる、d)アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、2,4-ジアミノプリオピオン酸、オルニチン、またはリジンのチロシン、アルキル、アリール、アリールアルキル、およびヘテロアリールスルホンアミド、ならびにテトラゾール置換アルキルアミノ酸を含む、酸性アミノ酸の置換、e)アスパラギン、グルタミン、およびアスパラギンまたはグルタミンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含む、側鎖アミド残基の置換、ならびにf)セリン、スレオニン、ホモセリン、2,3-ジアミノプロピオン酸、およびセリンまたはスレオニンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含む、ヒドロキシル含有アミノ酸の置換。
【0113】
「IL10ポリペプチド」という用語は、1つ以上の天然に存在する非遺伝的にコードされたL-アミノ酸、合成L-アミノ酸、またはアミノ酸のD-鏡像異性体を含むIL-10ポリペプチドを含む。例えば、IL-10は、D-アミノ酸のみを含んでもよい。例えば、IL-10ポリペプチドは、以下の残基、ヒドロキシプロリン、β-アラニン、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、m-アミノメチル安息香酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、オルニチン、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、ホモアルギニン、N-アセチルリジン、2,4-ジアミノ酪酸、rho-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、ε-アミノヘキサン酸、ω-アミノヘキサン酸、ω-アミノヘプタン酸、ω-アミノオクタン酸、ω-アミノデカン酸、ω-アミノテトラデカン酸、シクロヘキシルアラニン、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、δ-アミノ吉草酸、および2,3-ジアミノ酪酸の1つ以上を含んでもよい。
【0114】
「IL10ポリペプチド」という用語は、IL-10ポリペプチドがジスルフィド結合を介して別のポリペプチドに結合するのを促進するため、またはIL-10ポリペプチドの環化を提供するための、1つ以上の追加のシステイン残基またはシステイン類似体を含むIL-10ポリペプチドを含む。システインまたはシステイン類似体を導入する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第8,067,532号を参照されたい。
【0115】
「IL10ポリペプチド」という用語は、環化ポリペプチドを含む。環化結合は、架橋の導入を可能にする官能基を有するアミノ酸の任意の組み合わせを用いて(またはアミノ酸および-(CH2)n-CO-または-(CH2)n-C6H4-CO-を用いて)生成することができる。いくつかの例は、ジスルフィド、ジスルフィド模倣物(-(CH2)n-カルバ架橋など)、チオアセタール、チオエーテル架橋(シスタチオニンまたはランチオニン)、ならびにエステルおよびエーテルを含有する架橋である。これらの例では、nは、任意の整数であることができるが、しばしば10未満である。
【0116】
「IL10ポリペプチド」という用語は、例えば、N-アルキル(またはアリール)置換(ψ[CONR])、またはラクタムおよび他の環状構造を構築するための骨格架橋を含む、追加の修飾を含む。他の誘導体には、C末端ヒドロキシメチル誘導体、o修飾誘導体(例えば、C末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、アルキルアミドおよびヒドラジドなどの置換アミドを含むN末端修飾誘導体が含まれる。
【0117】
「IL10ポリペプチド」という用語は、レトロインベルソ類似体を含む(例えば、Sela and Zisman(1997)FASEBJ.11:449を参照されたい)。レトロインベルソペプチド類似体は、アミノ酸配列の方向が逆転(レトロ)しており、例えば、L-アミノ酸ではなくD-アミノ酸を使用するなどして、その中の1つ以上のアミノ酸のキラリティー(D-またはL-)が逆位(インベルソ)である、線状ポリペプチドの異性体である。[例えば、Jameson et al.(1994)Nature368:744およびBrady et al.(1994)Nature368:692を参照されたい]。
【0118】
「IL10ポリペプチド」という用語は、「タンパク質形質導入ドメイン」(PTD)を含むような修飾を含む。「タンパク質形質導入ドメイン」という用語は、脂質二重層、ミセル、細胞膜、オルガネラ膜、または小胞膜の横断を促進する、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、または有機もしくは無機分子を指す。別の分子に結合したPTDは、分子による膜の横断(例えば、細胞外空間から細胞内空間への移動、またはサイトゾルからオルガネラ内への移動)を促進する。いくつかの実施形態では、PTDは、IL-10ポリペプチドのアミノ末端に共有結合される一方で、他の実施形態では、PTDは、IL-10ポリペプチドのカルボキシル末端に共有結合される。例示的なタンパク質形質導入ドメインには、最小ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(YGRKKRRQRRRを含むHIV-1 TATの残基47~57に対応、配列番号15)、細胞内への進入を指向するのに十分ないくつかのアルギニン残基を含むポリアルギニン配列(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、または10~50個のアルギニン)、VP22ドメイン(Zender et al.(2002)Cancer Gene Ther.9(6):489-96)、Drosophila Antennapediaタンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al.(2003)Diabetes52(7):1732-1737)、切断型ヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al.(2004)Pharm.Research21:1248-1256)、ポリリジン(Wender et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:13003-13008)、RRQRRTSKLMKR(配列番号16)、トランスポータンGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号17)、KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号18)、およびRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号19)が含まれるが、これらに限定されない。例示的なPTDには、YGRKKRRQRRR(配列番号15)、RKKRRQRRR(配列番号20)、3個のアルギニン残基~50個のアルギニン残基のアルギニン同種重合体が含まれるが、これらに限定されず、例示的なPTDドメインのアミノ酸配列には、以下、YGRKKRRQRRR(配列番号15)、RKKRRQRR(配列番号21)、YARAAARQARA(配列番号22)、THRLPRRRRRR(配列番号23)、およびGGRRARRRRRR(配列番号24)のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
IL-10ポリペプチドのC末端にあるアミノ酸のカルボキシル基COR3は、遊離形態(R3=OH)、または生理学的に許容されるアルカリもしくはアルカリ土類塩の形態(例えば、ナトリウム、カリウム、もしくはカルシウム塩)で存在することができる。カルボキシル基はまた、第一級、第二級、または第三級アルコール(例えば、メタノールなど)、分岐状または非分岐状C1-C6-アルキルアルコール(例えば、エチルアルコールまたはtert-ブタノール)でエステル化されてもよい。カルボキシル基はまた、第一級または第二級アミン(アンモニアなど)、分岐状または非分岐状C1-C6アルキルアミンまたはC1-C6ジアルキルアミン(例えば、メチルアミンまたはジメチルアミン)でアミド化されてもよい。
【0120】
IL-10ポリペプチドのN末端にあるアミノ酸NR1R2のアミノ基は、遊離形態(R1=HおよびR2=H)、または生理学的に許容される塩の形態(例えば、塩化物もしくは酢酸塩)で存在することができる。アミノ基はまた、R1=HおよびR2=アセチル、トリフルオロアセチル、またはアダマンチルなどの酸でアセチル化されてもよい。アミノ基は、上記に提供されるもの(例えば、Fmoc、ベンジルオキシ-カルボニル(Z)、Boc、およびAlloc)などの、ペプチド化学で従来使用されるアミノ保護基によって保護された形態で存在することができる。アミノ基は、N-アルキル化されてもよく、R1および/またはR2=C1-C6アルキルまたはC2-C8アルケニルまたはC7-C9アラルキルである。アルキル残基は、直鎖状、分岐状、または環状(例えば、それぞれ、エチル、イソプロピル、およびシクロヘキシル)であり得る。
【0121】
「IL10ポリペプチド」という用語は、IL-10ポリペプチドの活性断片を含む。「活性IL-10ポリペプチド断片」という用語は、天然に存在するIL-10種に由来する近接するアミノ酸残基を含有する天然に存在するIL-10種の断片(例えば、部分配列)であり、別のIL-10ポリペプチドとともに二量体化することができる(そのような二量体は、IL-10活性を有する)、IL-10ポリペプチドを指す。ペプチドまたはポリペプチド部分配列の近接するアミノ酸残基の長さは、部分配列が由来する特定の天然に存在するアミノ酸配列に応じて変動する。一般に、ペプチドおよびポリペプチドは、約20アミノ酸長~約40アミノ酸長、約40アミノ酸長~約60アミノ酸長、約60アミノ酸長~約80アミノ酸長、約80アミノ酸長~約100アミノ酸長、約100アミノ酸長~約120アミノ酸長、約120アミノ酸長~約140アミノ酸長、約140アミノ酸長~約150アミノ酸長、約150アミノ酸長~約155アミノ酸長、約155アミノ酸長~最大で完全長ペプチドまたはポリペプチドであり得る。
【0122】
加えて、IL-10ポリペプチドは、定義された長さの近接するアミノ酸(例えば、「比較ウインドウ」)にわたって、参照配列と比較して、定義された配列同一性を有し得る。比較のための配列の整列方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局地的相同性アルゴリズムによって、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムによって、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin Genetics Software Package,Madison,Wis.の、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動整列および目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995supplement)を参照されたい)によって実行することができる。例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質折り畳み、機能ドメイン、グリコシル化部位、および配列整列を決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが、利用可能である(例えば、GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA)、およびDeCypher(商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,NV)を参照されたい)。
【0123】
一例として、好適なIL-10ポリペプチドは、約20アミノ酸長~約40アミノ酸長、約40アミノ酸長~約60アミノ酸長、約60アミノ酸長~約80アミノ酸長、約80アミノ酸長~約100アミノ酸長、約100アミノ酸長~約120アミノ酸長、約120アミノ酸長~約140アミノ酸長、約140アミノ酸長~約150アミノ酸長、約150アミノ酸長~約155アミノ酸長、約155アミノ酸長~最大で完全長ペプチドまたはポリペプチドの近接する区間と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0124】
以下にさらに考察されるように、IL-10ポリペプチドは、天然源(例えば、それが天然に存在する環境以外の環境)から単離することができ、組み換えにより(例えば、細菌、酵母、Pichia、および昆虫細胞などの遺伝子組み換え宿主細胞内で)作製することもでき、遺伝子組み換え宿主細胞は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で修飾されている。IL-10ポリペプチドはまた、合成により(例えば、無細胞化学合成によって)生成することもできる。
【0125】
本開示は、オルソログを含む様々な哺乳動物源および非哺乳動物源から得られるIL-10ポリペプチド、ならびにそれらの修飾形態で構成される、IL-10剤を企図する。ヒトポリペプチドおよびそれらをコードする核酸分子に加えて、本開示は、マウス、ラット(受託NP_036986.2、GI148747382)、ウシ(受託NP_776513.1、GI41386772)、ヒツジ(受託NP_001009327.1、GI57164347)、イヌ(受託ABY86619.1、GI166244598)、およびウサギ(受託AAC23839.1、GI3242896)を含む他の種に由来する、IL-10ポリペプチドおよび対応する核酸分子を企図する。
【0126】
非哺乳動物源に由来するIL-10剤の例には、ヘルペスウイルス科ベータヘルペスウイルス亜科、ヒトサイトメガロウイルスを含むサイトメガロウイルス属(Genbank受託番号AAR31656およびACR49217)、ミドリザルサイトメガロウイルス(Genbank受託番号AEV80459)、アカゲザルサイトメガロウイルス(Genbank受託番号AAF59907)、ヒヒサイトメガロウイルス(Genbank受託番号AAF63436)、ヨザルサイトメガロウイルス(Genbank受託番号AEV80800)、およびリスザルサイトメガロウイルス(Genbank受託番号AEV80955);ガンマヘルペスウイルス科リンホクリプトウイルス属エプスタイン・バーウイルス(Genbank受託番号CAD53385)、ボノボヘルペスウイルス(Genbank受託番号XP_003804206.1)、アカゲザルリンホクリプトウイルス(Genbank受託番号AAK95412)、ヒヒリンホクリプトウイルス(Genbank受託番号AAF23949);ヒツジヘルペスウイルス2(Genbank受託番号AAX58040)を含むマカウイルス属;ウマヘルペスウイルス2(Genbank受託番号AAC13857)を含むペルカウイルス属;コイヘルペスウイルス3(Genbank受託番号ABG429610)、ウナギヘルペスウイルス1(Genbank受託番号AFK25321)を含むアロヘルペスウイルス科コイヘルペスウイルス属;羊鵞口瘡ウイルス(Genbank受託番号AAR98352)、ウシ丘疹性口内炎ウイルス(Genbank受託番号AAR98483)、偽牛痘ウイルス(Genbank受託番号ADC53770)を含むポックスウイルス科コードポックスウイルス(chodopoxvirinae)亜科;ランピースキン病ウイルス(Genbank受託番号AAK84966)、羊痘ウイルス(Genbank受託番号NP_659579)、山羊痘ウイルス(Genbank受託番号YP_00129319)を含むカプリポックスウイルス属;ならびにカナリアポックスウイルス(Genbank受託番号NP_955041)を含むトリポックスウイルスに由来するウイルスIL-10が含まれる。
【0127】
「IL-10活性」という用語は、IL-10剤が、典型的には、IL-10受容体に結合することによってそれらの効果を発揮することを指す。II型サイトカイン受容体であるIL-10受容体は、それぞれR1およびR2とも称される、アルファおよびベータサブユニットからなる。受容体の活性化には、アルファおよびベータの両方への結合が必要とされる。二量体IL-10の一方のIL-10単量体は、アルファに結合し、IL-10の他方のIL-10モノマーは、ベータに結合する。IL-10活性は、当該技術分野で周知のアッセイによって評価することができる。例えば、IL-10剤のIL-10活性は、TNF-α阻害アッセイ、MC9増殖アッセイ、CD8 T細胞IFNγ分泌アッセイを使用して、または以下に提供される腫瘍モデルおよび腫瘍分析において決定することができる。しかしながら、以下のアッセイは、IL-10活性を決定するためのアッセイの代表的なものであり、排他的なものではないことが当業者に理解される。当業者は、IL-10活性を測定するための任意の当該技術分野で認識されているアッセイまたは方法論を単独または組み合わせで使用して、本明細書に記載のIL-10剤の活性を評価することができることを理解する。
【0128】
IL-10剤のIL-10活性は、実質的に以下のTNFα阻害アッセイに従って評価することができる。簡潔には、U937細胞(Sigma-Aldrich(番号85011440)、St.Louis,MOから入手可能な肺由来のリンパ芽球ヒト細胞株)のPMA刺激が、細胞にTNFαを分泌させ、その後これらのTNFα分泌細胞を、IL-10活性を有する試験剤で処理することにより、用量依存的な様式でTNFα分泌の低下がもたらされる。例示的なTNFα阻害アッセイは、以下のプロトコルを使用して実行することができる。10%のFBS/FCSおよび抗生物質を含有するRMPI中でU937細胞を培養した後、96ウェルの平底プレート(任意のプラズマ処理された組織培養プレート(例えば、Nunc、Thermo Scientific,USA)を使用することができる)に、1つの条件当たり三連で、1×105個、90%の生存U937細胞を播種する。細胞を播種して、以下の条件、5ng/mlのLPS単独;5ng/mLのLPS+0.1ng/mLのrhIL-10;5ng/mLのLPS+1ng/mLのrhIL-10;5ng/mLのLPS+10ng/mLのrhIL-10;5ng/mLのLPS+100ng/mLのrhIL-10;5ng/mLのLPS+1000ng/mLのrhIL-10;5ng/mLのLPS+0.1ng/mLのPEG-rhIL-10;5ng/mLのLPS+1ng/mLのPEG-rhIL-10;5ng/mLのLPS+10ng/mLのPEG-rhIL-10;5ng/mLのLPS+100ng/mLのPEG-rhIL-10;および5ng/mLのLPS+1000ng/mLのPEG-rhIL-10を提供する(全て少なくとも三連、「培地単独」の場合、2分の1が10nMのPMAとのインキュベーション後の生存に使用されるため、ウェルの数は倍になる)。各ウェルを200μL中10nMのPMAに24時間曝露し、37℃、5%のCO2のインキュベーター内で培養した後、細胞の約90%が接着性であるはずである。3つの余分なウェルを再懸濁し、細胞を計数して、生存率を評価する(90%超が生存可能である必要がある)。新鮮な非PMA含有培地で穏やかに、しかし完全に3回洗浄し、細胞がウェル内に残ることを確実にする。1ウェル当たり100μLの適切な濃度のIL-10剤を含有する培地を添加し(体積が100%だけ希釈されるため、2倍になる)、37℃、5%のCO2のインキュベーター内で30分間インキュベートする。1ウェル当たり100μLの10ng/mLのストックLPSを添加して、各ウェル内で5ng/mlのLPSの最終濃度を達成し、37℃、5%のCO2のインキュベーター内で18~24時間インキュベートする。上清を除去し、製造業者の指示に従ってTNFαELISAを実行する。各条件付けされた上清を、ELISA内、二連で実行する。
【0129】
IL-10剤のIL-10活性は、実質的に以下のMC/9細胞増殖アッセイに従って評価することができる。簡潔には、MC/9細胞に対するIL-10活性を有する化合物の投与は、用量依存的な様式で細胞増殖の増加を引き起こす。MC/9は、Cell Signaling Technology、Danvers,MAから入手可能なマスト細胞の特徴を有するマウス細胞株である。Thompson-Snipes,L.ら((1991)J.Exp.Med.173:507-10)は、MC/9細胞にIL3+IL10およびIL3+IL4+IL10を補った標準的なアッセイプロトコルについて記載している。当業者であれば、細胞にIL-10のみを補うように、Thompson-Snipes,L.らに記載の標準的なアッセイプロトコルを変更することができる。
【0130】
IL-10剤のIL-10活性は、実質的に以下のCD8 T細胞IFNγ分泌アッセイに従って評価することができる。簡潔には、活性化初代ヒトCD8 T細胞は、IL-10活性を有する化合物で処理し、その後抗CD3抗体で処理したときに、IFNγを分泌する。以下のプロトコルは、例示的なCD8 T細胞IFNγ分泌アッセイを提供する。ヒト初代末梢血単核細胞(PBMC)は、任意の標準的なプロトコルに従って単離することができる(例えば、Fuss et al.(2009)Current Protocols in Immunology,Unit7.1,John Wiley,Inc.,NYを参照されたい)。2.5mLのPBMC(1000万個の細胞/mLの細胞密度)は、任意の標準的な組織培養処理された6ウェルプレート(BD、Franklin Lakes,NJ)内、RPMI(Life Technologies、Carlsbad,CA)、10mMのHEPES(Life Technologies、Carlsbad,CA)、10%のウシ胎児血清(Hyclone Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)、およびペニシリン/ストレプトマイシンカクテル(Life Technologies、Carlsbad,CA)を含有する完全RPMIとともに、ウェルごとに培養することができる。その後、IL-10剤を、100ng/mLの最終濃度でウェルに添加し、阻害性受容体/チェックポイント受容体の機能を遮断する、10μg/mLの最終濃度の抗体もまた、IL-10剤と組み合わせて添加してもよい。細胞を、5%のCO2を有する37℃の加湿インキュベーター内で6~7日間培養することができる。インキュベーション後、Miltenyi BiotecのMACS細胞分離技術を、実質的に製造業者の指示(Miltenyi Biotec、Auburn,CA)に従って使用して、CD8 T細胞を単離する。その後、単離したCD8 T細胞を、任意の標準的な組織培養プレート内、1μg/mLの抗CD3抗体(Affymetrix eBioscience、San Diego,CA)を含有する完全RPMIとともに、4時間培養することができる。4時間のインキュベーション後、培地を収集し、実質的に製造業者の指示に従って、市販のELISAキット(例えば、Affymetrix、eBioscience、San Diego,CA)を使用して、IFNγについてアッセイする。
【0131】
腫瘍モデルはまた、様々な腫瘍に対するIL-10剤の活性の評価にも使用することができる。本明細書以下に記載の腫瘍モデルおよび腫瘍分析は、利用可能な腫瘍モデルおよび腫瘍分析の代表的なものである。同系マウス腫瘍細胞を、1回の腫瘍接種当たり104、105、または106個の細胞で、皮下または皮内注射する。Ep2乳がん、CT26結腸がん、PDV6皮膚の扁平上皮がん、および4T1乳がんモデルを使用することができる(例えば、Langowski et al.(2006)Nature442:461-465を参照されたい)。免疫適格Balb/CまたはB細胞欠損Balb/Cマウスを使用することができる。マウスIL-10種に基づくIL-10剤を、免疫適格マウスに投与することができ、ヒトIL-10または他の非マウス種処理に基づくIL-10剤を、典型的には、B細胞欠損マウスに提供する。腫瘍成長は、典型的には、電子ノギスを使用して、1週間に2回監視する。腫瘍体積は、式(幅2×長さ/2)を使用して計算することができ、式中、長さは、より長い方の寸法である。IL-10試験剤の投与前に、腫瘍を、90~250mm3のサイズに到達させる。IL-10剤または緩衝液対照を、腫瘍移植から離れた部位に投与する。IL-10試験剤の投与後の腫瘍成長を、典型的には、上記の電子ノギスを使用して、1週間に2回監視し、IL-10試験剤の投与に応答した腫瘍体積に対する効果を、経時的に評価する。腫瘍組織およびリンパ器官を、様々なエンドポイントで採取して、いくつかの炎症マーカーのmRNA発現を測定し、いくつかの炎症細胞マーカーの免疫組織化学を実行する。組織を、液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で保管する。
【0132】
一実施形態では、IL-10ポリペプチドは、ヒトIL-10ポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「ヒトIL-10」または「hIL10」という用語は、2つのヒトiIL-10ポリペプチドで構成されるIL10剤を指す。一実施形態では、ヒトIL-10ポリペプチドは、(アミノ末端からカルボキシ末端へ)以下のアミノ酸配列を有する160アミノ酸長のポリペプチドである。
SPGQGTQSEN SCTHFPGNLP NMLRDLRDAF SRVKTFFQMK DQLDNLLLKE SLLEDFKGYL GCQALSEMIQ FYLEEVMPQA ENQDPDIKAH VNSLGENLKT LRLRLRRCHR FLPCENKSKA VEQVKNAFNK LQEKGIYKAM SEFDIFINYI EAYMTMKIRN(配列番号25)
【0133】
一実施形態では、ヒトIL-10ポリペプチドは、(アミノ末端からカルボキシ末端へ)以下のアミノ酸配列を有する161アミノ酸長のポリペプチドである。
MSPGQGTQSE NSCTHFPGNL PNMLRDLRDA FSRVKTFFQM KDQLDNLLLK ESLLEDFKGY LGCQALSEMI QFYLEEVMPQ AENQDPDIKA HVNSLGENLK TLRLRLRRCH RFLPCENKSK AVEQVKNAFN KLQEKGIYKA MSEFDIFINY IEAYMTMKIR N(配列番号26)
【0134】
一実施形態では、ヒトIL-10ポリペプチドは、(アミノ末端からカルボキシ末端へ)以下のアミノ酸配列を有する161アミノ酸長のポリペプチドである。
N-ホルミル-MSPGQGTQSE NSCTHFPGNL PNMLRDLRDA FSRVKTFFQM KDQLDNLLLK ESLLEDFKGY LGCQALSEMI QFYLEEVMPQ AENQDPDIKA HVNSLGENLK TLRLRLRRCH RFLPCENKSK AVEQVKNAFN KLQEKGIYKA MSEFDIFINY IEAYMTMKIR N(配列番号27)
【0135】
本開示のポリペプチドおよび核酸分子に関連するいかなる「ヒト」への言及も、ポリペプチドもしくは核酸が得られる様式または源に関して限定的であることは意図されず、むしろ配列(それは、天然に存在するヒトポリペプチドまたは核酸分子の配列に対応し得るため)に言及するに過ぎないことに留意されたい。
【0136】
IL-10ポリペプチドは、天然源(例えば、それが天然に存在する環境以外の環境)から単離することができ、組み換えにより(例えば、細菌、酵母、Pichia、および昆虫細胞などの遺伝子組み換え宿主細胞内で)作製することもでき、遺伝子組み換え宿主細胞は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸で修飾されている。IL-10ポリペプチドはまた、合成により(例えば、無細胞化学合成によって)生成することもできる。
【0137】
IL-10ポリペプチドが、化学的に合成される場合、合成は、液相または固相を介して進行することができる。固相ペプチド合成(SPPS)は、非天然アミノ酸および/またはペプチド/タンパク質の骨格修飾の組み込みを可能にする。本開示のポリペプチドの合成には、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびt-ブチルオキシカルボニル(Boc)などのSPPSの様々な形態が利用可能である。化学合成の詳細は、当該技術分野で既知である(例えば、Ganesan A.(2006)Mini Rev.Med.Chem.6:3-10、およびCamarero J.A.et al.,(2005)Protein Pept Lett.12:723-8)。
【0138】
固相ペプチド合成は、本明細書以下に記載のように実行することができる。アルファ機能(Nα)および反応性側鎖は、酸に不安定な基または塩基に不安定な基で保護されている。保護基は、アミド結合の結合のための条件下では安定しているが、形成されたペプチド鎖を傷害することなく容易に切断することができる。α-アミノ機能に好適な保護基には、以下、Boc、ベンジルオキシカルボニル(Z)、O-クロルベンジルオキシカルボニル、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル、tert-アミルオキシカルボニル(Amoc)、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルオキシカルボニル、o-ニトロスルフェニル、2-シアノ-t-ブトキシ-カルボニル、Fmoc、および1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
好適な側鎖保護基には、アセチル、アリル(All)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジル(Bzl)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシメチル(Bom)、o-ブロモベンジルオキシカルボニル、t-ブチル(tBu)、t-ブチルジメチルシリル、2-クロロベンジル、2-クロロベンジルオキシカルボニル、2,6-ジクロロベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)、イソプロピル、4-メトキシ-2,3-6-トリメチルベンジルスルホニル(Mtr)、2,3,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、ピバリル、テトラヒドロピラン-2-イル、トシル(Tos)、2,4,6-トリメトキシベンジル、トリメチルシリル、およびトリチル(Trt)が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
固相合成では、C末端アミノ酸は、好適な支持材料にカップリングする。好適な支持体材料は、合成プロセスの段階的な縮合および切断反応のための試薬および反応条件に対して不活性であり、かつ使用される反応培地中に溶解しないものである。市販の支持材料の例には、反応性基および/またはポリエチレングリコールで修飾されたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体、クロロメチル化スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ならびにヒドロキシメチル化またはアミノメチル化スチレン/ジビニルベンゼン共重合体などが含まれる。ペプチド酸の調製が所望される場合、ポリスチレン(1%)-ジビニルベンゼン、または4-ベンジルオキシベンジル-アルコール(Wangアンカー)または2-クロロトリチルクロリドで誘導体化されたTentaGel(登録商標)を使用することができる。ペプチドアミドの場合、ポリスチレン(1%)-ジビニルベンゼン、または5-(4’-アミノメチル)-3’,5’-ジメトキシフェノキシ)吉草酸(PALアンカー)またはp-(2,4)-ジメトキシフェニル-アミノメチル)-フェノキシ基(Rinkアミドアンカー)で誘導体化されたTentaGel(登録商標)を使用することができる。
【0141】
重合体支持体への結合は、エタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、または類似の溶媒中の活性化試薬を添加することによって、室温または高温(例えば、40℃~60℃)および例えば、2~72時間の反応時間で、C末端Fmoc保護アミノ酸を支持体材料と反応させることによって達成することができる。
【0142】
Nα保護アミノ酸(例えば、Fmocアミノ酸)の、PAL、Wang、またはRinkアンカーへのカップリングは、例えば、N、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)または他のカルボジイミド、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)または他のウロニウム塩、O-アシル-ウレア、ベンゾトリアゾール-1-イル-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)または他のホスホニウム塩、N-ヒドロキシスクシンイミド、他のN-ヒドロキシイミドまたはオキシムなどのカップリング試薬の助けを借りて、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールの存在下または不在下で、例えば、HOBtを添加したTBTUの助けを借りて、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、またはN-メチルモルホリンなどの塩基を添加するかまたは添加せずに、例えば、ジイソプロピルエチルアミンで2~72時間の反応時間で(例えば、1.5~3倍過剰のアミノ酸およびカップリング試薬中で3時間、例えば、2倍過剰および約10℃~50℃の温度で、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、またはジクロロメタンなどの溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)中25℃で)実行することができる。
【0143】
カップリング試薬の代わりに、活性エステル(例えば、ペンタフルオロフェニルまたはp-ニトロフェニルなど)、Nα-Fmoc-アミノ酸の対称無水物、その酸塩化物または酸フッ化物を、上述の条件下で使用することもまた可能である。
【0144】
Nα保護アミノ酸(例えば、Fmocアミノ酸)は、10~120分間、例えば、20分間の反応時間を有して、DIEAを添加したジクロロメタン中の2-クロロトリチル樹脂にカップリングすることができるが、この溶媒およびこの塩基の使用には限定されない。
【0145】
保護アミノ酸の連続的なカップリングは、ペプチド合成における従来の方法に従って、典型的には、自動化ペプチド合成機内で実行することができる。例えば、ジメチルホルムアミド中のピペリジン(10%~50%)で5~20分間、例えば、DMF中50%のピペリジンで、2×2分間、DMF中20%のピペリジンで、1×15分間処理することによって、固相にカップリングしたアミノ酸のNα-Fmoc保護基を切断した後、3~10倍過剰、例えば、10倍過剰の次の保護アミノ酸を、ジクロロメタン、DMF、またはその2つの混合物などの不活性、非水性極性溶媒中、および約10℃~50℃の温度、例えば、25℃で、前のアミノ酸にカップリングする。第1のNα-Fmocアミノ酸を、PAL、Wang、またはRinkアンカーにカップリングするための前述の試薬が、カップリング試薬として好適である。保護アミノ酸の活性エステル、またはその塩化物もしくはフッ化物もしくは対称無水物もまた、代替物として使用することができる。
【0146】
固相合成の終了時に、側鎖保護基を同時に切断しながら、ペプチドを支持体材料から切断する。切断は、5~20%V/Vのスカベンジャー(ジメチルスルフィド、エチルメチルスルフィド、チオアニソール、チオクレゾール、m-クレゾール、アニソールエタンジチオール、フェノール、または水、例えば、15%v/vのジメチルスルフィド/エタンジチオール/m-クレゾール1:1:1)を添加したトリフルオロ酢酸または他の強酸性培地を用いて、0.5~3時間以内、例えば、2時間、実行することができる。2-クロロトリチルアンカーを氷酢酸/トリフルオロエタノール/ジクロロメタン2:2:6で切断することによって、側鎖が完全に保護されたペプチドが得られる。保護ペプチドを、シリカゲルでのクロマトグラフィーで精製してもよい。ペプチドが、Wangアンカーを介して固相に結合している場合、およびC末端がアルキルアミド化したペプチドを得ることが意図される場合は、切断は、アルキルアミンまたはフルオロアルキルアミンを用いたアミノ分解によって実行することができる。アミノ分解は、約-10℃~50℃(例えば、約25℃)の温度で、および約12~24時間(例えば、約18時間)の反応時間で実行される。加えて、ペプチドは、例えば、メタノールでの再エステル化によって支持体から切断することができる。
【0147】
得られた酸性溶液を、3~20倍量の冷エーテルまたはn-ヘキサン、例えば、10倍過剰のジエチルエーテルと混合して、ペプチドを沈殿させることで、エーテル中に残るスカベンジャーおよび切断された保護基を分離することができる。氷酢酸からペプチドを数回再沈殿させることによって、さらなる精製を実行することができる。得られた沈殿物は、水もしくはtert-ブタノール、または2つの溶媒の混合物中、例えば、tert-ブタノール/水の1:1混合物中に取り込ませ、凍結乾燥することができる。
【0148】
得られたペプチドは、アセテート形態の弱塩基性樹脂でのイオン交換;非誘導体化ポリスチレン/ジビニルベンゼン共重合体(例えば、Amberlite(登録商標)XAD)での疎水性吸着クロマトグラフィー;シリカゲルでの吸着クロマトグラフィー;例えば、カルボキシメチルセルロースでのイオン交換クロマトグラフィー;例えば、Sephadex(登録商標)G-25での分配クロマトグラフィー;向流分配クロマトグラフィー;または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、例えば、オクチルもしくはオクタデシルシリルシリカ(ODS)相での逆相HPLCを含む、様々なクロマトグラフィー法で精製することができる。
【0149】
ヒトおよびマウスIL-10の調製について記載する方法は、例えば、組み換え技術および他の合成技術を含む、IL-10活性を有するタンパク質の産生のための方法を教示する、米国特許第5,231,012号に見出すことができる。IL-10は、ウイルス起源のものであってもよく、エプスタイン・バーウイルス(BCRF1タンパク質)からのウイルスIL-10のクローニングおよび発現は、Moore et al.,(1990)Science248:1230に開示されている。IL-10は、本明細書に記載のものなどの、当該技術分野で既知の標準的な技術を使用して、いくつかの方法で得ることができる。組み換えヒトIL-10はまた、例えば、PeproTech,Inc.、Rocky Hill,N.Jからも市販されている。
【0150】
それらの天然に存在するおよび天然に存在しないアイソフォーム、対立遺伝子変異体、およびスプライス変異体を含む、IL-10剤をコードする核酸分子が、本開示によって企図される。本開示はまた、天然に存在するDNA配列とは1つ以上の塩基が変動するが、遺伝暗号の縮重のためにIL-10ポリペプチドに対応するアミノ酸配列に依然として翻訳される、核酸配列も包含する。
【0151】
ポリペプチドが、組み換え技術を使用して産生される場合、ポリペプチドはそれぞれ、任意の好適な構築物および任意の好適な宿主細胞(原核細胞もしくは真核細胞(細菌(例えば、E.coli)など)であり得る)または酵母宿主細胞を使用して、細胞内タンパク質として、または分泌タンパク質として産生されてもよい。宿主細胞として使用することができる真核細胞の他の例には、昆虫細胞、哺乳動物細胞、および/または植物細胞が含まれる。哺乳動物宿主細胞が使用される場合、それらには、ヒト細胞(例えば、HeLa、293、H9、およびJurkat細胞)、マウス細胞(例えば、NIH3T3、L細胞、およびC127細胞)、霊長類細胞(例えば、Cos1、Cos7、およびCV1)、ならびにハムスター細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)が含まれ得る。
【0152】
当該技術分野で既知の標準的な手順に従って、ポリペプチドの発現に好適な様々な宿主-ベクター系を用いることができる。例えば、Sambrook et al.,1989Current Protocols in Molecular Biology Cold Spring Harbor Press,New York、およびAusubel et al.1995Current Protocols in Molecular Biology,Eds.Wiley and Sonsを参照されたい。遺伝子材料を宿主細胞に導入するための方法には、例えば、形質転換、電気穿孔、共役、およびリン酸カルシウム法などが含まれる。導入のための方法は、導入されるポリペプチドをコードする核酸の安定した発現を提供するように選択することができる。ポリペプチドをコードする核酸は、遺伝性エピソーム要素(例えば、プラスミド)として提供されてもよく、またはゲノム的に組み込まれてもよい。目的のポリペプチドの産生に使用するための様々な適切なベクターが、市販されている。
【0153】
ベクターは、宿主細胞内で染色体外維持を提供することができるか、または宿主細胞ゲノムへの組み込みを提供することができる。発現ベクターは、転写および翻訳制御配列を提供し、コード領域が転写開始領域ならびに転写および翻訳終結領域の転写制御下で作動可能に結合している、誘導性発現または構成的発現を提供することができる。一般に、転写および翻訳制御配列には、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれ得るが、これらに限定されない。プロモーターは、構成的であっても誘導性であってもよく、強力な構成的プロモーター(例えば、T7)であってもよい。
【0154】
発現構築物は一般に、目的のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するための、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を有する。ベクターを含有する細胞の選択を促進するために、発現宿主内で作動する選択可能なマーカーが存在してもよい。さらに、発現構築物は、追加の要素を含んでもよい。例えば、発現ベクターは、1つまたは2つの複製システムを有してもよく、それにより生物内で(例えば、発現のために哺乳動物細胞または昆虫細胞内で、ならびにクローンニングおよび増幅のために原核生物宿主内で)それを維持することが可能になる。加えて、発現構築物は、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能なマーカー遺伝子を含有してもよい。選択可能な遺伝子は、当該技術分野で周知であり、使用される宿主細胞とともに変動する。
【0155】
タンパク質の単離および精製は、当該技術分野で既知の方法に従って達成することができる。例えば、タンパク質は、構成的におよび/もしくは誘導時にタンパク質を発現する遺伝子組み換え細胞の溶解物から、または一般に試料を抗タンパク質抗体と接触させることと、洗浄して非特異的に結合した材料を除去することと、特異的に結合したタンパク質を溶出することとを伴う免疫親和性精製によって合成反応混合物から、単離することができる。単離されたタンパク質は、透析およびタンパク質精製で通常用いられる他の方法によってさらに精製することができる。一実施形態では、タンパク質は、金属キレートクロマトグラフィー法を使用して単離することができる。タンパク質は、単離を促進するための修飾を含有してもよい。
【0156】
ポリペプチドは、実質的に純粋な形態または単離された形態(例えば、他のポリペプチドを含まない)で調製することができる。ポリペプチドは、存在し得る他の構成成分(例えば、他のポリペプチドまたは他の宿主細胞構成成分)と比較して、ポリペプチドが濃縮されている組成物中に存在してもよい。例えば、精製されたポリペプチドは、ポリペプチドが他の発現タンパク質を実質的に含まない(例えば、約90%未満、約60%未満、約50%未満、約40未満%、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満)組成物中に存在するように提供されてもよい。
【0157】
IL-10ポリペプチドは、当該技術分野で既知の異なるIL-10関連核酸を操作して、IL-10ポリペプチドをコードすることができる構築物を提供する、組み換え技術を使用して生成することができる。特定のアミノ酸配列が提供される場合、当業者は、その背景および例えば、分子生物学における経験を考慮して、そのようなアミノ酸配列をコードする様々な異なる核酸分子を認識することが理解される。
【0158】
「修飾IL-10剤」という用語は、ペグ化グリコシル化(N結合およびO結合);ポリシアリル化;血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、カニクイザル血清アルブミン、またはウシ血清アルブミン(BSA))を含むアルブミン融合分子;例えば、共役脂肪酸鎖を通したアルブミン結合(アシル化);ならびにFc融合タンパク質などの1つ以上の修飾によって修飾されたIL-10剤である。修飾IL-10剤は、1つ以上の特性、例えば、免疫原性の調節;水溶性、生体利用能、血清半減期、および/もしくは治療半減期を増加させる方法;生物学的活性の調節を増強するために調製することができる。特定の修飾はまた、例えば、検出アッセイで使用するための抗体(例えば、エピトープタグ)の産生、およびタンパク質精製の容易さの提供に有用である可能性がある。
【0159】
一実施形態では、修飾IL-10剤は、PEG-IL10剤である。「PEG-IL-10剤」という用語は、IL-10ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基に共有結合(共役)した少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)分子を含む修飾IL-10剤を指す。「モノペグ化IL-10剤」および「モノ-PEG-IL-10剤」という用語は、一般にリンカーを介して、IL-10二量体の1つのIL-10ポリペプチド上の単一のアミノ酸残基に共有結合したポリエチレングリコール分子を有するIL-10剤を指す。本明細書で使用される場合、「ジペグ化IL-10」および「ジ-PEG-IL-10」という用語は、少なくとも1つのポリエチレングリコール分子が、一般にリンカーを介して、IL-10二量体のIL-10ポリペプチド上の単一の残基に結合していることを示す。
【0160】
IL-10剤のペグ化は、薬物動態学的パラメータ(例、血清半減期)を含む特定の特性の改善、活性の増強、物理的および熱的安定性の改善、酵素分解への感受性に対する保護、溶解性の増加、より長いインビボ循環半減期およびクリアランスの低下、免疫原性および抗原性の低減、ならびに毒性の低減をもたらす。薬物動態学的パラメータに対するペグ化の有益な効果に加えて、ペグ化自体が、活性を増強することができる。例えば、PEG-IL-10は、非ペグ化IL-10よりも特定のがんに対して有効であることが示されている(例えば、EP206636A2を参照されたい)。
【0161】
特定の実施形態では、本開示で使用されるPEG-IL-10剤は、1~9個のPEG分子が、IL-10二量体の1つのIL-10ポリペプチドのN末端で、アミノ酸残基のα-アミノ基にリンカーを介して共有結合している、モノ-PEG-IL-10剤である。1つのIL-10ポリペプチドのモノペグ化は一般に、サブユニットのシャッフリングのために、非ペグ化、モノペグ化、およびジペグ化IL-10ポリペプチドの不均一な混合物をもたらす。本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の方法によって生成されるモノジペグ化IL-10剤とジペグ化IL-10剤との混合物の投与を含む。特定の実施形態では、IL-10剤は、モノペグ化IL-10種とジペグ化IL-10種との混合物として提供され、混合物は、約50%のモノ-PEG-IL-10および約50%のジ-PEG-IL-10を有するか、あるいは約40%のモノ-PEG-IL-10および約60%のジ-PEG-IL-10を有するか、あるいは約60%のモノ-PEG-IL-10および約40%のジ-PEG-IL-10を有するか、あるいは、約55%のモノ-PEG-IL-10および約45%のジ-PEG-IL-10を有するか、あるいは約45%のモノ-PEG-IL-10および約55%のジ-PEG-IL-10を有する。
【0162】
PEG-IL-10薬剤の生物学的活性は、米国特許第7,052,686号に記載のように、細菌抗原(リポ多糖(LPS))に曝露され、かつPEG-IL-10で治療される対象の血清中の炎症性サイトカイン(例えば、TNF-αまたはIFN-γ)のレベルによって評価することができる。
【0163】
IL-10へのPEG結合の方法または部位は、重要ではないが、特定の実施形態では、ペグ化は、IL-10剤の活性を改変しないか、または最小限にしか改変しない。特定の実施形態では、半減期の増加は、生物学的活性のいかなる低下よりも大きい。
【0164】
IL-10ポリペプチド配列への共役に好適なPEGは一般に、室温で水溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素または保護基(アルキルもしくはアルカノール基など)であり、nは、1~1000の整数である)を有する。Rが保護基である場合、それは一般に、1~8個の炭素を有する。ポリペプチド配列に共役したPEGは、線状または分岐状であり得る。
【0165】
分岐状PEG誘導体、「スターPEG」およびマルチアームPEGは、本開示によって企図される。
【0166】
本開示で使用されるPEGの分子量は、いかなる特定の範囲にも制限されない。PEG-IL-10剤のPEG構成成分は、約5kDa超、約10kDa超、約15kDa超、約20kDa超、約30kDa超、約40kDa超、または約50kDa超の分子量を有することができる。いくつかの実施形態では、分子量は、約5kDa~約10kDa、約5kDa~約15kDa、約5kDa~約20kDa、約10kDa~約15kDa、約10kDa~約20kDa、約10kDa~約25kDa、または約10kDa~約30kDaである。
【0167】
本開示はまた、PEGが異なるn値を有し、それにより様々な異なるPEGが特定の比率で存在する、共役体の組成物も企図する。例えば、いくつかの組成物は、n=1、2、3、および4である、共役体の混合物を含む。いくつかの組成物では、n=1が18~25%である共役体のパーセンテージ、n=2が50~66%である共役体のパーセンテージ、n=3が12~16%である共役体のパーセンテージ、およびn=4が最大で5%である共役体のパーセンテージ。そのような組成物は、当該技術分野で既知の反応条件および精製方法によって生成することができる。クロマトグラフィーを使用して、共役体画分を分解することができ、その後例えば、所望の数のPEGが結合し、未修飾タンパク質配列および他の数のPEGが結合した共役体を含まないように精製した共役体を含有する画分を特定する。
【0168】
ポリペプチド配列への共役に好適なPEGは一般に、室温で水溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R(式中、Rは、水素または保護基(アルキルもしくはアルカノール基など)であり、nは、1~1000の整数である)を有する。Rが保護基である場合、それは一般に、1~8個の炭素を有する。
【0169】
2つの広く使用されている第1世代の活性化モノメトキシPEG(mPEG)は、スクシンイミジルカーボネートPEG(SC-PEG、例えば、Zalipsky,et al.(1992)Biotehnol.Appl.Biochem15:100-114、およびMiron and Wilcheck(1993)Bio-conjug.Chem.4:568-569を参照されたい)ならびにベンゾトリアゾールカーボネートPEG(BTC-PEG、例えば、Dolenceらの米国特許第5,650,234号を参照されたい)であり、これらは、リジン残基と優先的に反応して、カルバメート結合を形成するが、ヒスチジン残基およびチロシン残基と反応することも知られている。特定の分子(例えば、IFNα)上のヒスチジン残基への結合は、加水分解に不安定なイミダゾールカルバメート結合であることが示されている(例えば、Lee and McNemarの米国特許第5,985,263号を参照されたい)。第2世代のペグ化技術は、これらの不安定な結合、および残基の反応性における選択性の欠如を回避するように設計されている。PEG-アルデヒドリンカーの使用は、還元的アミノ化を通してポリペプチドのN末端上の単一部位を標的とする。
【0170】
ポリペプチド配列に共役したPEGは、線状または分岐状であり得る。分岐状PEG誘導体、「スターPEG」およびマルチアームPEGは、本開示によって企図される。本発明の実施において有用な特定の実施形態のPEGには、10kDaの線状PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-100AL、NOF America Corporation、One North Broadway,White Plains,NY10601USA)、10kDaの線状PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)ME-100CS、Sunbright(登録商標)ME-100AS、Sunbright(登録商標)ME-100GS、Sunbright(登録商標)ME-100HS、NOF)、20kDaの線状PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-200AL、NOF)、20kDaの線状PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)ME-200CS、Sunbright(登録商標)ME-200AS、Sunbright(登録商標)ME-200GS、Sunbright(登録商標)ME-200HS、NOF)、20kDaの2アーム分岐状PEG-アルデヒド、2つの10kDA線状PEG分子を含む20kDAのPEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-200AL3、NOF)、20kDaの2アーム分岐状PEG-NHSエステル、2つの10kDAの線状PEG分子を含む20kDAのPEG-NHSエステル(Sunbright(登録商標)GL2-200TS、Sunbright(登録商標)GL200GS2、NOF)、40kDaの2アーム分岐状PEG-アルデヒド、2つの20kDAの線状PEG分子を含む40kDAのPEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3)、40kDaの2アーム分岐状PEG-NHSエステル、2つの20kDAの線状PEG分子を含む40kDAのPEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3、Sunbright(登録商標)GL2-400GS2、NOF)、線状30kDaのPEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-300AL)、および線状30kDaのPEG-NHSエステルが含まれる。
【0171】
ペグ化は、ポリペプチドのN末端のα-アミノ基、リジン残基の側鎖上のイプシロンアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基で最も頻繁に生じる。ほとんどの組み換えポリペプチドは、単一のアルファ基ならびにいくつかのイプシロンアミノ基およびイミダゾール基を有するため、リンカー化学に応じて、多数の位置異性体を生成することができる。当該技術分野で既知の一般的なペグ化戦略を、本明細書で適用することができる。
【0172】
PEGは、ポリペプチド配列の1つ以上の遊離アミノ基またはカルボキシル基とポリエチレングリコールとの間の結合を媒介する末端反応性基(「スペーサー」)を介して、本開示のIL-10ポリペプチドに結合することができる。遊離アミノ基に結合することができるスペーサーを有するPEGは、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシスクシニルイミドで活性化することによって調製することができる、N-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールを含む。遊離アミノ基に結合することができる別の活性化ポリエチレングリコールは、2,4-ビス(O-メトキシポリエチレングリコール)-6-クロロ-s-トリアジンであり、これは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルをシアヌル酸クロリドと反応させることによって調製することができる。遊離カルボキシル基に結合している活性化ポリエチレングリコールは、ポリオキシエチレンジアミンを含む。
【0173】
本開示のIL-10ポリペプチド配列の1つ以上の、スペーサーを有するPEGへの共役は、様々な従来の方法によって実行することができる。例えば、共役反応は、4:1~30:1の試薬対タンパク質のモル比を利用して、5~10のpHで溶液中、4℃~室温の温度で、30分~20時間実行することができる。反応条件は、主に所望の程度の置換を生成するように反応を指向するように選択することができる。一般に、低温、低pH(例えば、pH=5)、および短い反応時間は、結合するPEGの数を低下させる傾向がある一方で、高温、中性~高pH(例えば、pH≧7)、およびより長い反応時間は、結合するPEGの数を増加させる傾向がある。当該技術分野で既知の様々な手段を使用して、反応を停止させることができる。いくつかの実施形態では、反応混合物を酸性化し、例えば、-20℃で凍結することによって、反応を停止させる。様々な分子のペグ化は、例えば、米国特許第5,252,714号、同第5,643,575号、同第5,919,455号、同第5,932,462号、および同第5,985,263号で考察されている。PEG-IL-10は、例えば、米国特許第7,052,686号に記載されている。本明細書での使用が企図される特定の反応条件は、実験の節に明記されている。
【0174】
ペグ化は、ポリペプチドのN末端のアルファ-アミノ基、リジン残基の側鎖上のイプシロンアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基で最も頻繁に生じる。ほとんどの組み換えポリペプチドは、単一のアルファ基ならびにいくつかのイプシロンアミノ基およびイミダゾール基を有するため、リンカー化学に応じて、多数の位置異性体を生成することができる。当該技術分野で既知の一般的なペグ化戦略が、本明細書に適用され得る。
【0175】
本開示のポリペプチド配列の1つ以上の、スペーサーを有するPEGへの共役は、様々な従来の方法によって実行することができる。例えば、共役反応は、4:1~30:1の試薬対タンパク質のモル比を利用して、5~10のpHで溶液中、4℃~室温の温度で、30分~20時間実行することができる。反応条件は、主に所望の程度の置換を生成するように反応を指向するように選択することができる。一般に、低温、低pH(例えば、pH=5)、および短い反応時間は、結合するPEGの数を低下させる傾向がある一方で、高温、中性~高pH(例えば、pH≧7)、およびより長い反応時間は、結合するPEGの数を増加させる傾向がある。当該技術分野で既知の様々な手段を使用して、反応を停止させることができる。いくつかの実施形態では、反応は、反応混合物を酸性化し、例えば、-20℃で凍結することによって停止される。様々な分子のペグ化は、例えば、米国特許第5,252,714号、同第5,643,575号、同第5,919,455号、同第5,932,462号、および同第5,985,263号で考察されている。PEG-IL-10は、例えば、米国特許第7,052,686号に記載されている。
【0176】
本開示は、当業者に既知の任意の手段によるペグ化IL-10の合成を企図するが、以下は、モノ-PEG-IL-10を生成するためのいくつかの代替的な合成スキームを提供し、モノ-PEG-IL-10とジ-PEG-IL-10との混合物は、例示を意図したものに過ぎない。モノ-PEG-IL-10、およびモノ-PEG-IL-10とジ-PEG-IL-10との混合物の両方は、多くの同等の特性を有するが、選択的にペグ化したモノ-PEG-IL-10とジ-PEG-IL-10との混合物は、最終ペグ化生成物の収率を改善させる(例えば、米国特許第米国特許第7,052,686号および米国特許公開第2011/0250163号を参照されたい)。本開示の実施に好適なPEG(および他の薬物送達技術)の生成および使用における自身の技術を活用することに加えて、当業者はまた、PEG関連技術(および他の薬物送達技術)の多くの商業的供給業者にも精通している。例として、NOF America Corp(Irvine,CA)は、単官能性線状PEG、二官能性PEG、マルチアームPES、分岐状PEG、ヘテロ官能性PEG、フォーク型PEG、および放出可能PEGを供給しており、Parchem(New Rochelle,NY)は、PEG生成物および他の特殊原材料の世界的卸売業者である。
【0177】
例示的なPEG-IL-10合成スキーム番号1。IL-10を、10mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)、100mMのNaClに対して透析する。透析したIL-10を、透析緩衝液を使用して、約0.5~12mg/mLの濃度まで3.2倍に希釈する。リンカー、SC-PEG-12K(Delmar Scientific Laboratories、Maywood,Ill.)の添加前に、1体積の100mMの四ホウ酸ナトリウム(pH9.1)を9体積の希釈IL-10に添加して、IL-10溶液のpHを8.6まで上昇させる。SC-PEG-12Kリンカーを、透析緩衝液中に溶解させ、適切な体積のリンカー溶液(1モルのIL-10あたり1.8~3.6モルのリンカー)を希釈IL-10溶液に添加して、ペグ化反応を開始する。反応の速度を制御するために5℃で反応を実行し、反応溶液を穏やかに撹拌する。サイズ排除HPLC(SE-HPLC)によって決定されるモノ-PEG-IL-10の収率が、40%に近づいたとき、1Mのグリシン溶液を30mMの最終濃度まで添加することによって、反応を停止させる。HCl溶液を使用して、反応溶液のpHを7.0に緩徐に調整し、反応物を0.2ミクロンで濾過し、-80℃で保管する。
【0178】
例示的なPEG-IL-10合成スキーム番号2。メトキシ-PEG-アルデヒド(PALD-PEG)をリンカーとして使用して、モノ-PEG-IL-10を調製する(Inhale Therapeutic Systems Inc.(Huntsville,AL)、NOF America Corp(Irvine,CA)からも入手可能)。PALD-PEGは、5KDa、12KDa、または20KDaの分子量を有し得る。反応緩衝液のpHが6.3~7.5であることを除いて、IL-10を、上述のように透析および希釈する。活性化PALD-PEGリンカーを、1:1のモル比で反応緩衝液に添加する。水性シアノ水素化ホウ素を、0.5~0.75mMの最終濃度になるまで反応混合物に添加する。室温(18~25℃)で15~20時間、穏やかに撹拌しながら、反応を実行する。1Mのグリシンで反応を停止させる。SE-HPLCによって収率を分析する。モノ-PEG-IL-10を、未反応のIL-10、PEGリンカー、およびジ-PEG-IL-10から、ゲル濾過クロマトグラフィーによって分離し、RP-HPLCおよびバイオアッセイ(例えば、IL-10応答性細胞または細胞株の刺激)によって特性評価する。
【0179】
例示的なPEG-IL-10合成スキーム番号3。IL-10(例えば、げっ歯類または霊長類)を、50mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム(pH範囲5~7.4)に対して透析する。1:1~1:7のモル比の5K PEG-プロピルアルデヒドを、0.75~30mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下、1~12mg/mLの濃度のIL-10と反応させる。あるいは、反応は、類似の様式でピコリンボランで活性化してもよい。反応物を、5~30℃で3~24時間インキュベートする。ペグ化反応物のpHを6.3に調整し、7.5mg/mLのhIL-10をPEGと反応させて、IL-10対PEGリンカーの比を1:3.5にする。シアノ水素化ホウ素の最終濃度は、約25mMであり、反応は、15℃で12~15時間実行される。モノ-PEG IL-10およびジ-PEG IL-10は、最大の反応生成物であり、反応停止時の各々の濃度は、約45~50%である。反応は、グリシンもしくはリジンなどのアミノ酸、またはあるいはトリス緩衝液を使用して、停止させることができる。ゲル濾過、陰イオンおよび陽イオン交換クロマトグラフィー、ならびにサイズ排除HPLC(SE-HPLC)などの複数の精製方法を用いて、所望のペグ化IL-10分子を単離することができる。
【0180】
本発明の一実施形態では、修飾IL-10剤は、グリコシル化IL-10である。本開示の目的のために、「グリコシル化」は、グリカンを、タンパク質、脂質、または他の有機分子に結合させる酵素プロセスを広く指すことが意図される。本開示と併せた「グリコシル化」という用語の使用は一般に、(基礎をなすグリコシル化部位の除去、または化学的および/もしくは酵素的手段によるグリコシル化の欠失のいずれかによる)1つ以上の炭水化物部分の追加または欠失、ならびに/あるいは天然配列内に存する可能性も存在しない可能性もある1つ以上のグリコシル化部位の追加を意味することが意図される。加えて、この語句は、存在する様々な炭水化物部分の性質および割合の変化を伴う、天然タンパク質のグリコシル化の定性的変化を含む。グリコシル化は、IL-10などのポリペプチドの物理的特性(溶解性など)に劇的な影響を与える可能性があり、タンパク質の安定性、分泌、および細胞内局在化にも重要である可能性がある。グリコシル化ポリペプチドはまた、増強した安定性を呈することもでき、半減期などの1つ以上の薬物動態学的特性を改善することもできる。加えて、溶解性の改善により、例えば、非グリコシル化ポリペプチドを含む製剤よりも薬学的投与に好適な製剤の生成が可能になる。
【0181】
グリコシル化部位の付加は、IL-10ポリペプチドのアミノ酸配列を改変することにより達成することができる。IL-10ポリペプチドへの改変は、例えば、1つ以上のセリンもしくはスレオニン残基(O結合型グリコシル化部位の場合)またはアスパラギン残基(N結合型グリコシル化部位の場合)の付加、またはそれによる置換によって行うことができる。N結合型およびO結合型オリゴ糖の構造、ならびに各種類に見出される糖残基は、異なる場合がある。両方に一般的に見出される糖の1つの種類は、N-アセチルノイラミン酸(本明細書以下、シアル酸と称される)である。シアル酸は、通常、N結合型オリゴ糖およびO結合型オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷により、糖タンパク質に酸性特性を付与することができる。本開示の特定の実施形態は、N-グリコシル化変異体の生成および使用を含む。グリコシル化部位を組み込むための修飾アミノ酸配列を含むIL-10ポリペプチドの例は、例えば、2016年3月10日公開のVan Vlasselaerらの米国特許出願公開第US20160068583A1号に提供されている。本開示のIL-10ポリペプチド配列は、核酸レベルの変化を通して、特に、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成して、グリコシル化部位の導入を促進するように、ポリペプチドをコードする核酸を事前選択した塩基で変異させることによって、任意で改変されてもよい。
【0182】
本発明の一実施形態では、修飾IL-10剤は、ポリシアル化IL-10である。「ポリシアリル化」という用語は、ポリペプチドの安定性およびインビボ薬物動態を改善するための、ポリペプチドと天然に存在する生分解性α-(2→8)結合ポリシアル酸(「PSA」)との共役を指す。PSAは、高度に親水性である、生分解性で非毒性の天然重合体であり、これにより血中の見かけの分子量が高くなり、その血清半減期が増加する。加えて、様々なペプチドおよびタンパク質治療剤のポリシアリル化は、タンパク質分解の著しい低減、インビボ活性における活性の保持、ならびに免疫原性および抗原性の低減をもたらしている(G.Gregoriadis et al.,Int.J.Pharmaceutics300(1-2):125-30を参照されたい)。部位特異的ポリシアリル化のための様々な技術が、利用可能である(例えば、T.Lindhout et al.,PNAS108(18)7397-7402(2011)を参照されたい)。
【0183】
本発明の一実施形態では、修飾IL-10剤は、本明細書では「IL-10アルブミン融合体」と称されるアルブミンに共役される。IL-10アルブミン融合体の文脈で使用される場合、「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミン(HSA)、カニクイザルアルブミン、およびウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミンを含む。本開示に従うと、アルブミンは、カルボキシル末端、アミノ末端、カルボキシル末端およびアミノ末端の両方、ならびに内部において、IL-10ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)に共役させることができる(例えば、米国特許第5,876,969号および同第7,056,701号を参照されたい)。本開示によって企図されるHSA-IL-10ポリペプチド共役体では、アルブミン分泌プレ配列、ならびにそれらの変異体、それらの断片および変異体、およびHSA変異体などの様々な形態のアルブミンを使用することができる。そのような形態は一般に、1つ以上の所望のアルブミン活性を有する。追加の実施形態では、本開示は、アルブミン、アルブミン断片、およびアルブミン変異体などに直接的または間接的に融合したIL-10ポリペプチドを含む融合タンパク質に関与し、融合タンパク質は、非融合薬物分子よりも高い血漿安定性を有し、かつ/または融合タンパク質は、非融合薬物分子の治療活性を保持する。いくつかの実施形態では、間接的な融合は、ペプチドリンカーまたはその修飾バージョンなどのリンカーによってもたらされる。
【0184】
あるいは、IL-10アルブミン融合は、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列およびIL-10ポリペプチドを含む融合タンパク質である、IL-10ポリペプチドを含む。上記に言及したように、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列およびIL-10ポリペプチドを含む融合タンパク質は、例えば、HSAまたはその断片をコードする核酸が1つ以上のIL-10ポリペプチド配列をコードする核酸に接合されるような遺伝子操作によって達成することができる。
【0185】
IL-10剤への共役のための追加の好適な構成成分および分子には、例えば、チログロブリン;破傷風トキソイド;ジフテリアトキソイド;ポリ(D-リジン:D-グルタミン酸)などのポリアミノ酸;ロタウイルスのVP6ポリペプチド;インフルエンザウイルスヘマグルチニン、インフルエンザウイルス核タンパク質;キーホールリンペットヘモシアニン(KLH);ならびにB型肝炎ウイルスのコアタンパク質および表面抗原;または前述のものの任意の組み合わせが含まれる。
【0186】
本開示は、別のポリペプチド(例えば、主題のポリペプチドに対して異種のアミノ酸配列を有するポリペプチド)などのポリペプチド配列、または担体分子の、N末端および/またはC末端における1つ以上の追加の構成成分または分子の共役を企図する。したがって、例示的なポリペプチド配列は、別の構成成分または分子との共役体として提供され得る。
【0187】
IL-10ポリペプチドはまた、タンパク質;セファロース、アガロース、セルロース、またはセルロースビーズなどの多糖;ポリグルタミン酸などの重合体アミノ酸、またはポリリジン;アミノ酸共重合体;不活性化ウイルス粒子;ジフテリア、破傷風、コレラ、またはロイコトキシン分子由来のトキソイドなどの不活性化細菌毒素;不活化細菌;および樹状細胞などの、大きく、緩徐に代謝される巨大分子に共役させることもできる。そのような共役形態は、所望される場合、本開示のポリペプチドに対する抗体の産生に使用してもよい。
【0188】
共役のための追加の候補構成成分および分子には、単離または精製に好適なものが含まれる。特定の非限定的な例には、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対)などの結合分子、抗体、受容体、リガンド、レクチン、または例えば、プラスチックもしくはポリスチレンビーズ、プレートもしくはビーズ、磁気ビーズ、試験片、および膜を含む固体支持体を含む分子が含まれる。
【0189】
特定の実施形態では、本開示のIL-10ポリペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシル末端を免疫グロブリンFc領域(例えば、ヒトFc)と融合させて、融合共役体(または融合分子)を形成することができる。Fc融合共役体は、バイオ医薬品の全身半減期を増加させることが示されており、それによりバイオ医薬品生成物は、より少ない頻度の投与を必要とし得る。Fcは、血管を覆う内皮細胞内の新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、結合時に、Fc融合分子は、分解から保護され、循環に再放出され、分子の循環をより長く保つ。このFc結合は、内因性IgGがその長い血漿半減期を保持する機構であると考えられている。より最近のFc融合技術は、バイオ医薬品の単一コピーを抗体のFc領域に結合させて、従来のFc融合共役体と比較して、バイオ医薬品の薬物動態学的および薬力学的特性を最適化する。
【0190】
本開示は、現在既知であるか、または将来開発される、1つ以上の特性を改善するためのIL-10剤の他の修飾の使用を企図する。例には、ヘシル化(その様々な態様は、例えば、米国特許出願に第2007/0134197号および同第2006/0258607号に記載されている)、ならびに融合タグとしてSUMOを含むIL-10ポリペプチド融合分子(LifeSensors,Inc.、Malvern,PA)が含まれる。
【0191】
本開示はまた、IL-10ポリペプチドが、IL-10ポリペプチドおよびPEG模倣物の融合タンパク質である、IL-10剤も企図する。いくつかの追加の有利な特性を付与しながら、PEGの属性(例えば、増強した血清半減期)を保持する、ポリペプチドPEG模倣物が開発されている。例として、PEGと類似した拡張構造を形成することができる単純なポリペプチド鎖(例えば、Ala、Glu、Gly、Pro、Ser、およびThrを含む)を、目的のペプチドまたはタンパク質薬物に既に融合された状態で、組み換えにより生成することができる(例えば、AmunixのXTEN技術、Mountain View,CA)。そのようなポリペプチド配列の融合タンパク質を含むIL-10剤は、この融合タンパク質をコードする核酸配列の発現による組み換え手段によって生成することができ、これは、製造プロセス中の追加の共役ステップの必要性を取り除く。さらに、確立された分子生物学技術は、ポリペプチド鎖の側鎖組成の制御を可能にし、これにより免疫原性および製造特性の最適化が可能となる。
【0192】
リンカーおよびそれらの使用については、上述されている。本開示のポリペプチド配列の修飾に使用される前述の構成成分および分子のいずれも、任意で、リンカーを介してIL-10剤またはIL-10ポリペプチドに共役させることができる。好適なリンカーには、修飾ポリペプチド配列と結合した構成成分および分子との間のいくらかの移動を許容するのに一般に十分な長さである「可動性リンカー」が含まれる。リンカー分子は一般に、約6~50原子長である。リンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2~10個の単量体単位を含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。好適なリンカーは、容易に選択することができ、1アミノ酸長(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50アミノ酸長、または50以上のアミノ酸長などの任意の好適な長さのものであり得る。
【0193】
可動性リンカーの例には、グリシン重合体(G)n、グリシン-セリン重合体(例えば、(GS)n、GSGGSn(配列番号9)、およびGGGSn(配列番号10)(式中、nは、少なくとも1の整数である))、グリシン-アラニン重合体、アラニン-セリン重合体、ならびに他の可動性リンカーが含まれる。グリシン重合体およびグリシン-セリン重合体は、比較的構造不定であるため、構成成分間の中性テザーとして機能することができる。
【0194】
可動性リンカーのさらなる例には、グリシン重合体(G)n、グリシン-アラニン重合体、アラニン-セリン重合体、グリシン-セリン重合体(例えば、(GmSo)n、(GSGGS)n(配列番号28)、(GmSoGm)n、(GmSoGmSoGm)n(配列番号29)、(GSGGSm)n(配列番号30)、(GSGSmG)n(配列番号31)、および(GGGSm)n(配列番号32)、ならびにそれらの組み合わせ(式中、m、n、およびoは各々独立して、少なくとも1~20の整数、例えば1~18、2~16、3~14、4~12、5~10、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10から選択される))、ならびに他の可動性リンカーが含まれる。グリシン重合体およびグリシン-セリン重合体は、比較的構造不定であるため、構成成分間の中性テザーとして機能することができる。可動性リンカーの例には、GGSG(配列番号33)、GGSGG(配列番号34)、GSGSG(配列番号35)、GSGGG(配列番号36)、GGGSG(配列番号37)、およびGSSSG(配列番号38)が含まれるが、これらに限定されない。
【0195】
追加の可動性リンカーには、グリシン重合体(G)nまたはグリシン-セリン重合体(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号9)、(GGGS)n(配列番号10)、および(GGGGS)n(配列番号39)(式中、n=1~50、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50である))が含まれる。例示的な可動性リンカーには、GGGS(配列番号40)、GGGGS(配列番号41)、GGSG(配列番号33)、GGSGG(配列番号34)、GSGSG(配列番号35)、GSGGG(配列番号36)、GGGSG(配列番号37)、およびGSSSG(配列番号38)が含まれるが、これらに限定されない。これらのリンカー配列の多量体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、または30~50)をともに結合させて、異種アミノ酸配列の、本明細書に開示されるポリペプチドへの共役に使用され得る、可動性リンカーを提供してもよい。本明細書に記載のように、異種アミノ酸配列は、アルブミンおよびFc配列などのシグナル配列および/または融合パートナーであり得る。
【実施例】
【0196】
腫瘍性疾患の治療:
本開示は、対象における腫瘍性疾患、および腫瘍性疾患に関連する疾患、障害、または病態の治療および/または予防のための、1つ以上の免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)と併用したIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)の併用の投与を企図する。
【0197】
本開示の組成物および方法は、黒色腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、腎細胞がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん、子宮肉腫、胃がん、食道がん、DNAミスマッチ修復欠損結腸がん、DNAミスマッチ修復欠損子宮内膜がん、肝細胞がん、乳がん、メルケル細胞がん、甲状腺がん、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、菌状息肉症、末梢T細胞リンパ腫を含むがこれらに限定されない、疾患の治療のためのFDAの承認または臨床試験における臨床有効性の実証を通して、PD1経路阻害剤がヒトにおける臨床効果を実証している腫瘍性病態の治療に特に適している。
【0198】
免疫チェックポイント経路阻害剤に対する治療応答は一般に、チロシンキナーゼ阻害剤などの従来の化学療法に対する応答よりもはるかに後に顕在化する。場合によっては、免疫応答チェックポイント経路阻害剤を用いた治療開始後、治療応答の客観的な兆候が観察されるまでに、6ヶ月以上かかる可能性がある。加えて、抗CTLA4抗体療法に関与する場合によっては、転移性病変は実際に、コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)スキャンでサイズが増加してから、その後に退縮する[例えば、Pardoll,(2012)Nature Rev.Cancer12:252-64を参照されたい]。したがって、本開示のIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)と併用した免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)を用いた治療についての決定は、しばしば従来の化学療法よりも長い進行までの時間にわたって行わなくてはならない。所望の応答は、その状況下で好ましいと思われる任意の結果であり得る。いくつかの実施形態では、所望の応答は、疾患、障害、または病態の進行の予防である一方で、他の実施形態では、所望の応答は、疾患、障害、または病態の1つ以上の特徴の退縮または安定化(例えば、腫瘍サイズの低減)である。さらに他の実施形態では、所望の応答は、併用の1つ以上の薬剤に関連する1つ以上の有害作用の低減または排除である。
【0199】
がんの治療における臨床有効性の決定は一般に、病変の低減、特に転移性病変の低減、転移の低減、腫瘍体積の低減、およびECOGスコアの改善などの、1つ以上の当該技術分野で認識されているパラメータの達成に関連付けられる。治療に対する応答の決定は、そのような療法に対する対象の応答の存在および程度、ならびにそのような療法によって引き起こされる有害作用の存在および程度を含む、IL-10または免疫チェックポイント経路調節剤のいかなる態様でも有用な、再現性のある情報を提供することができるバイオマーカーの測定を通して、評価することができる。限定ではなく、例として、PD1/PDL1に関連するバイオマーカーは、IFNγの増強、ならびにグランザイムA、グランザイムB、およびパーフォリンの上方制御を含み、BTLAに関連するバイオマーカーは、CD8+T細胞の数および機能の増加を含み、CTLA4に関連するバイオマーカーは、IFNγの増強、グランザイムA、グランザイムB、およびパーフォリンの上方制御、ならびにCD8+T細胞上でのICOS発現の増加を含み、TIM3に関連するバイオマーカーは、グランザイムA、グランザイムB、およびパーフォリンの上方制御を含み、LAG3に関連するバイオマーカーは、IL-10発現TReg細胞の増強を含む。エフェクター分子IP-10(誘導性タンパク質10)およびMIG(IFNγによって誘導されるモノカイン)の発現は、LPSまたはIFNγのいずれかによって、特定のIL-10発現腫瘍内で増加することが知られており、これらのエフェクター分子はまた、本明細書に記載のコンビナトリアル療法によって増強され得る潜在的な血清バイオマーカーとして活用することもできる。治療に対する応答は、従来の臨床有効性の指標によって特性評価することができ、完全応答(CR)、部分応答(PR)、安定疾患(SD)、および標的病変に関しては、RECISTによって定義される、完全応答(CR)、不完全応答/安定疾患(SD)、ならびに免疫関連応答基準(irRC)によって定義される、免疫関連完全応答(irCR)、免疫関連部分応答(irPR)、および免疫関連安定疾患(irSD)などを用いることができ、腫瘍性疾患の治療における有効性を証明するものと見なすことができる。
【0200】
さらなる実施形態は、併用における最適な量の薬剤(複数可)を決定するための方法またはモデルを含む。最適な量は、例えば、対象または対象集団において最適な効果を達成する量、または1つ以上の薬剤に関連する悪影響を最小化もしくは排除しながら、治療効果を達成する量であり得る。いくつかの実施形態では、IL-10と免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)自体との併用は、対象(例えば、ヒト)または対象集団における、本明細書に記載の疾患、障害、または病態(例えば、がん性病態)の治療または予防に有効であることが既知であるか、または決定されており、1つの薬剤の量が、他の薬剤(複数可)の量を一定に保ちながら、滴定される。この様式で薬剤(複数可)の量を操作することによって、臨床医は、例えば、特定の疾患、障害、もしくは病態の治療、または副作用の排除もしくはその状況下で許容されるような副作用の低減に最も有効な薬剤の比率を決定することができる。
【0201】
おそらく、最も多くの臨床経験を有する最もよく研究された免疫療法は、抗PD1モノクローナル抗体のペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))およびニボルマブを用いて得られている。これらの生成物は、有意な有効性を実証しており、現在、多種多様ながんに対して複数の承認を取得している。これらの薬剤の臨床経験は、成功の可能性が最も高いことを示す一連のパラメータを実証している。抗PD1療法は、高レベルのPDL1の発現が存在する腫瘍内で最高レベルの有効性を実証しており(Garon et al.(2015)New England Journal of Medicine372:2018-2028)、ここで腫瘍は、腫瘍変異負荷を有し(Rizvi et al.,Science(2015)Science348:124-128、Carbone et al.(2017)New England Journal of Medicine376:2415-2426)、腫瘍内の高レベルのCD8+T細胞(Tumeh et al.,(2014)Nature515:568-571)、IFNγに関連する免疫活性化符号(Prat et al.(2017)Cancer Research77(13):OF1-OF11),Cancer Res.2017、Ayers et al(2107)J.Clinical Investigation127:2930-2940)、および転移性疾患、特に肝臓転移の欠如(Tumeh et al.(2017)Cancer Imm.Research5:417-424)、Pillai et al.(2017))J.Clin.Oncology34:15suppl.e20665-e20665)が存在する。これらの因子は、PD1療法の有効性を、比較的小さな範囲の腫瘍に制限する。多種多様な腫瘍は、稀なネオ抗原特異的CD8+t細胞による低ネオ抗原負荷を有し、高ネオ抗原負荷を有する腫瘍は、最終的にICIから逃れている。他の状況では、腫瘍微小環境内に、T細胞が消耗し、アポトーシスした、免疫砂漠が存在し、T細胞発現の欠如は、腫瘍内の低レベルのグランザイムおよびIFNγ発現をもたらす。IL-10単剤療法は、これらのパラメータの多くに対処する。IL-10は、腫瘍内CD8+T細胞の活性を増加させ、グランザイムであるFasLおよびIFNγのレベルを増加させることが観察されている。Mumm et al.,(2011)Cancer Cell20(6):781-796、Emmerich,et al.,(2012)Cancer Research72(14):3570-81、Oft,(2014)Cancer Immunology Research.72(14):3570-81)。これらの障害物への対処におけるIL-10の確立された有用性のために、我々は、抗PD1Mab療法と併用したIL-10剤を評価した。
【0202】
モノPEG化IL-10とジPEG化IL-10との混合物を含むhIL-10のPEG化形態であるAM0010は、複数の臨床試験で評価されており、単一薬剤として耐容性がよいことが示されている(治療の開始後、最大で2.5年間、優れたコンプライアンスを有する144人の患者)。AM0010という用語は、モノ-PEG化IL-10ポリペプチドとジ-PEG化IL-10ポリペプチドとの混合物を含み、リンカーを介してIL-10ポリペプチドのN末端に結合した5kDaのポリエチレングリコール(PEG)を用いる、組み換えヒトインターロイキン10(rHuIL-10)を指す。AM0010は、2つの非共有結合で関連付けられたrHuIL-10ポリペプチド単量体で構成される非グリコシル化ホモ二量体タンパク質であり、各単量体は、直接的な組み換え産生から生じる天然ヒトIL-10ポリペプチドには存在しないN末端メチオニンを含む、161個のアミノ酸で構成され、各単量体は、2つの分子内ジスルフィド結合を含み、第1のジスルフィド結合は、161個のアミノ酸のrHuIL-10ポリペプチドの13位および109位のシステインの間であり、第2のジスルフィド結合は、63位および115位のシステインの間である(天然に存在するhIL-10ポリペプチドの、12位および108位のシステインならびに62位および114位のシステインに対応する)。AM0010単剤療法から観察されたTrAEはを含むは、管理可能かつ可逆的であり、大腸炎、肺炎、肝炎、または内分泌障害などの、耐久性のある自己免疫関連TrAEは存在しなかった。これらの研究では、20マイクログラム/kgの1日1回の皮下用量でのAM0010単剤療法は、腎細胞がん(RCC、25%のORR)、ブドウ膜黒色腫における客観的応答、ならびに皮膚T細胞リンパ腫における最大で2.5年間の耐久性のある応答を有するCR、ならびにCRCおよびPDACにおける安定疾患延長を誘導する。
【0203】
AM0010がない場合、CD8+T細胞は、腫瘍細胞を認識し、消耗し、アポトーシスを受ける。AM0010がある場合、腫瘍を認識するCD8+T細胞が活性化され、増殖する。AM0010は、CD8+T細胞のアポトーシスを阻害し、腫瘍細胞死を誘導するグランザイムおよびFasLを誘導し、AM0010は、持続的な免疫記憶を刺激する。AM10単剤療法の一次用量は、1日1回皮下投与される2mgまたは(20マイクログラム/kg)である。
【0204】
IL-10剤と免疫チェックポイント調節剤との併用を評価するために、腎細胞がん(RCC)に罹患する57人のヒト対象に関与する臨床試験を実行して、AM0010単剤療法を、抗PD1免疫チェックポイント経路アンタゴニスト抗体ペンブロリズマブおよびニボルマブと併用した、各々2つの異なる用量のAM0010の併用と比較した。患者集団および研究設計を、以下の表3にまとめる。
【表5】
【0205】
ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck and Co,Rahway NJ)を、3週間に1回静脈内投与される160mg(2mg/kg)の用量で投与した。ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BristolMyers Squibb,Princeton NJ)を、2週間に1回静脈内投与される240mg(3mg/kg)の改訂ラベル承認用量に従って投与した。AM0010を、単剤療法群で20マイクログラム/kgの用量で1日1回皮下投与し、抗PD1併用療法群の各々で10マイクログラム/kgおよび20マイクログラム/kgの各々で1日1回皮下投与した。この研究の結果を、以下の表4および表5、ならびに添付の図面の
図4にまとめる。
【表6】
【表7】
【0206】
上記に提示されるデータから理解することができるように、AM0010単剤療法群の評価可能な患者の56%は、約25%の客観的応答率(ORR)で耐久性のある臨床応答(DCR)を呈した。しかしながら、前述のデータは、AM0010とPD1チェックポイント阻害剤との併用が、AM0010単剤療法または抗PD1単剤療法(文献に報告されている結果に基づく)と比較して、有意に改善した結果をもたらすことを示している。AM0010とペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))との併用は、10および20マイクログラム/kgの用量の両方で、ペンブロリズマブと併用したAM0010を受けた患者の100%でDCRを示し、50%の全体的なORRを示した。同様に、10マイクログラム/kgの用量のAM0010と併用してニボルマブを受けた患者では、100%のDCRを示し、20マイクログラム/kgの用量のAM0010では患者の70%が、81%のDCRおよび42の合計ORRを示した。RCCにおけるニボルマブの投与後のRCCにおける応答率に関する文献の報告は、約20~22%のORR(Motzer,et al.,Nivolumab for Metastatic Renal Cell Carcinoma:Results of a Randomized Phase II Trial,(2015)Journal of Clinical Oncology33(13):1430-1437)および25%のORR(Mazza,et al.(2017)Nivolumab in renal cell carcinoma:latest evidence and clinical potential,Therapeutic Advances in Medical OncologyVol.9(3)171-18)で約57~65%のDCRを実証している。これらのデータは、免疫チェックポイント経路阻害剤(例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ)と併用したIL-10剤(AM0010)の併用が、ヒト対象における腎細胞がんの治療における治療結果の有意な改善をもたらすことを実証している。
【0207】
この研究の第2の焦点は、この併用療法に関連する有害事象を評価することであった。この研究から生じる有害事象の結果を、以下の表6に示す。
【表8】
【0208】
前述のデータは、AM10と抗PD-1との併用が、ペンブロリズマブ(2mg/kg、3週間に1回)またはニボルマブ(3mg/kg、2週間に1回)と併用したAM0010の各用量で、腎細胞がん患者において耐容性がよいことを実証している。全てのグレード3およびグレード4の有害事象は、一過的であり、消散したが、前述の有効性データに照らして、PD1経路阻害剤と併用した10mcg/kgの用量のAM10が、この限定的な臨床データに基づいて好ましいようである。
【0209】
前述のRCC研究と並行して、非小細胞肺がん(NSCLC)に罹患する対象において、ヒト対象におけるPD-1免疫チェックポイント経路阻害剤(例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ)と併用したIL-10剤(AM0010)の併用を評価するための、別の臨床研究を実行した。この研究では、腫瘍試料のPDL1発現レベルを評価した。研究設計は、前述のRCC研究に類似しており、患者集団は、研究の開始前に抗PD1療法を受けていなかった。研究設計および患者集団データを、以下の表7にまとめる。「低PD-L1発現」は、1%未満の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、「中等度のPD-L1発現」は、1%~49%の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、「高PD-L1発現」は、o50%以上の細胞表面PD-L1発現のレベルを指し、PD-L1発現は、Rizzi et al.(2015)Science348:124-128におけるように当該技術分野で利用可能な方法論に従って評価される。
【表9】
【0210】
ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))を、3週間に1回静脈内投与される160mg(2mg/kg)の用量で投与した。ニボルマブ(Opdivo(登録商標))を、2週間に1回静脈内投与される240mg(3mg/kg)の改訂ラベル承認用量に従って投与した。AM0010を、実質的に上記のように調製し、単剤療法群で20マイクログラム/kgの用量で1日1回皮下投与し、抗PD1併用療法群の各々で10マイクログラム/kgおよび20マイクログラム/kgの各々で1日1回皮下投与した。この研究の結果を、以下の表8、ならびに添付の図面の
図3にまとめる。
【表10】
【0211】
上記に提示されるデータから理解することができるように、AM0010単剤療法群の評価可能な患者の57%(7/9人)は、耐久性のある臨床応答(DCR)を呈した。しかしながら、このデータは、AM0010とPD1チェックポイント阻害剤との併用が、AM0010単剤療法または抗PD1単剤療法(文献に報告されている結果に基づく)と比較して、有意に増強された治療結果を提供することを示している。AM0010とペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))との併用は、10および20マイクログラム/kgの用量の両方で、ペンブロリズマブと併用したAM0010を受けた患者の100%でDCRを示し(両方のAM0010用量の合計のデータ)、40%の全体的なORRを示した(両方のAM0010用量の合計のデータ)。同様に、10および20マイクログラム/kgの用量のAM0010と併用してニボルマブを受けた患者では、42%のORR(両方のAM0010用量の合計のデータ)で82%のDCR(両方のAM0010用量の合計のデータ)を示した。ペンブロリズマブの投与後のNSCLCにおける応答率についての文献の報告は、抗PD1単剤療法では41%のDCR、および約20~22%のORRを示唆している(Garon,et al.(2015)NEJM372:2018-28)。これらのデータは、免疫チェックポイント経路阻害剤(例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ)と併用したIL-10剤(AM0010)の併用が、ヒト対象における非小細胞肺がんの治療における治療結果の有意な改善をもたらすことを実証している。
【0212】
有意に注目すべきことは、PDL1状態に基づいて観察された、この研究における応答であった。前述のように、低PDL1状態は、典型的には、ペンブロリズマブおよびニボルマブなどの抗PD1経路阻害剤に応答した予後不良と関連している。PDL1発現の因子としてのORRに関するデータを、以下の表にまとめる。
【表11】
【0213】
前述のデータによって示されるように、AM0010と抗PD1抗体ペンブロリズマブおよびニボルマブ(データは上記に集約)とを併用することによって、PDL1の全ての発現レベルで、ORRの有意な増加を実証している。しかしながら、おそらく最も注目すべきなのは、低(1%未満)PDL1発現レベル(この併用は、33%のORRを示した(ペンブロリズマブの単剤療法の歴史的データに対する、ORRの362%の増加))での、および中等度(1%~49%)のPDL1発現レベル(67%のORRを示す(ペンブロリズマブの単剤療法の歴史的データに対する、ORRの429%の改善))での、NSCLCにおける応答率である。これらのデータは、免疫チェックポイント経路阻害剤(例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ)と併用したIL-10剤(AM0010)の併用が、腫瘍の低または中等度のPDL1発現レベルですら、ヒト対象における非小細胞肺がんの治療における治療結果の有意な改善をもたらすことを実証している。
【0214】
低腫瘍変異負荷を有する腫瘍における効果:
上述のNSCLC研究の過程で評価した別のパラメータは、腫瘍変異負荷であった。Carboneらによって報告されているように、低または中等度の腫瘍変異負荷を有するNSCLC患者の111人中23人(21%)は、ニボルマブ単独に対する応答率が低減した(n=111人中23人、21%)。対照的に、低または中等度のTMBを有する8人中5人の患者(60%)は、以下の表10および添付の図面の
図1にまとめられるように、AM0010と抗PD1との併用に対してPRを呈した。
【表12】
【0215】
これらのデータは、免疫チェックポイント経路阻害剤(例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ)と併用したIL-10剤(AM0010)の併用が、PD1療法を緩和するものとして認識されている2つの因子である、低または中等度のPDL1発現レベルの存在下ですら、低TMBを有するヒト対象における非小細胞肺がんの治療における治療結果の有意な改善をもたらすことを実証している。
【0216】
転移性疾患に対する、ペンブロリズマブと併用したAM0010の効果
転移は、がんによる死亡の約90%を占める、がんの罹患率および死亡率の主因である。Chaffer&Weinberg(2011).A perspective on cancer cell metastasis,Science.331:1559-64。肝転移を有する患者は、免疫チェックポイント阻害に対するより低い応答率を有する。Tumehら(2017)、Pillaiら(2017)(上記)。前述のNSCLC研究では、肝転移の評価を行い、結果を添付の図面の
図5および6に提示する。例示されるように、AM0010とペンブロリズマブとの併用は、治療の過程にわたって測定可能な肝転移病変の有意な低減をもたらした。
【0217】
IFNγ関連遺伝子発現プロファイルの関数としての、抗PD1Mab療法と併用したAM0010の効果
文献に報告されているように、IFNγ関連の遺伝子発現プロファイル(例えば、STAT1、HLA-DRA、CXCL9、IDO、IFNγ、およびCXCL10の発現)が低い患者は、ペンブロリズマブに対する応答率が低減している(Pratら(2017)(上記)、Ayersら(2017)(上記))。上記のNSCLC研究の一部として、IFNg関連遺伝子発現プロファイルの関数としての、抗PD1mAb療法と併用したAM0010の併用に対する治療応答を評価した。結果を、添付の図面の
図2に提示する。例示されるように、IFNγ関連遺伝子発現プロファイルが低い(5人中)2人の患者は、AM0010と抗PD-1mAb療法との併用に応答した部分応答を有し、追加の2人の対象が、6ヶ月超の安定疾患を呈した。
【0218】
腫瘍性疾患に罹患するヒト対象で生成された前述の臨床データは、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を実証し、調節剤は、正の免疫チェックポイント経路のアゴニストまたは負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニストであり、哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療に有効である。
【0219】
腫瘍性疾患に罹患するヒト対象で生成された前述の臨床データは、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を実証し、調節剤は、正の免疫チェックポイント経路のアゴニストまたは負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニストであり、腫瘍が低または中等度の腫瘍変異負荷を有する哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療に有効である。
【0220】
腫瘍性疾患に罹患するヒト対象で生成された前述の臨床データは、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を実証し、調節剤は、正の免疫チェックポイント経路のアゴニストまたは負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニストであり、腫瘍が低または中等度の発現レベルの免疫チェックポイント分子を有する哺乳動物対象における腫瘍性疾患の治療に有効である。
【0221】
腫瘍性疾患に罹患するヒト対象で生成された前述の臨床データは、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を実証し、調節剤は、正の免疫チェックポイント経路のアゴニストまたは負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニストであり、哺乳動物対象における転移性腫瘍性疾患の治療に有効である。
【0222】
腫瘍性疾患に罹患するヒト対象で生成された前述の臨床データは、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路の少なくとも1つの調節剤の投与と併用したIL-10剤の投与を実証し、調節剤は、正の免疫チェックポイント経路のアゴニストまたは負の免疫チェックポイント経路のアンタゴニストであり、低または中等度のIFNγ関連遺伝子発現プロファイルを有する対象における腫瘍性疾患の治療に有効であり、IFNγ関連遺伝子発現プロファイルは、STAT1、HLA-DRA、CXCL9、IDO、IFNγ、およびCXCL10からなる群から選択される遺伝子の1つ以上を含む。
【0223】
本開示は、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)、1つ以上の免疫チェックポイント経路調節剤、および少なくとも1つの追加の治療剤または診断剤を用いて、腫瘍性疾患を治療するための方法をさらに提供する。そのようなさらなる併用は、「補助的併用」、「補助的併用療法」と称され、IL-10と1つ以上の免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)との併用に追加される薬剤は、「補助剤」と称され得る。
【0224】
そのような「補助剤」の例には、化学療法剤が含まれる。「化学療法剤」という用語は、チオテパおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチルオロメラミンを含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン;キオランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスウレア(nitrosurea);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金および白金配位錯体(シスプラチンおよびカルボプラチンなど);ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含むが、これらに限定されない。「化学療法剤」という用語はまた、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストン、およびトレミフェンなどの抗エストロゲン;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体などの、腫瘍に対するホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含む。いくつかの実施形態では、補助剤は、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト(IL-12など)、INFα、または抗上皮成長因子受容体、放射線療法、腫瘍抗原に対する抗体、モノクローナル抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、または抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法)、抗腫瘍ワクチン、複製可能ウイルス、およびCAR-t細胞を含むがこれらに限定されない、腫瘍性疾患の治療に有用なものとして当該技術分野で特定される、1つ以上の化学的または生物学的薬剤であってもよい。
【0225】
そのような補助的併用療法では、様々な補助活性剤(複数可)は、しばしばIL-10および/または免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)とは異なる作用機構を有する。そのような補助的併用療法は、1つ以上の薬剤の用量低減を促進し、それにより薬剤の1つ以上に関連する有害作用を低減または排除することによって特に有利であり得る。さらに、そのような補助的併用療法は、基礎疾患、障害、または病態に対して相加的または相乗的な治療効果または予防効果をもたらすことができる。本開示のいくつかの実施形態では、補助剤(複数可)は、診断剤(複数可)である。
【0226】
本開示のいくつかの実施形態では、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)の各々は、別個の剤形中にあってもよい。例として、PEG-IL-10は、皮下投与に好適な製剤中にあってもよく、免疫チェックポイント経路阻害剤は、静脈内投与に好適な製剤中にあってもよく、補助剤は、経口投与に好適な製剤中にあってもよく、この文脈では、薬剤の各々が、別個に収容されてもよく、または薬剤の2つ以上が、(例えば、キットの異なる構成成分として)ともに収容されてもよい。本開示の他の実施形態では、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)の2つ以上は、同じ剤形中にあってもよい。例えば、PEG-IL-10、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)は、静脈内投与のために製剤化されてもよく、この文脈では、薬剤の1つ以上が、(例えば、シリンジ内の活性治療剤として)同時に製剤化されてもよい。本開示は、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を包含する。
【0227】
特定の実施形態では、IL-10剤、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)(例えば、化学療法剤)は、他の薬剤と併用して投与または適用され(連続的な投与または適用を含む)、例えば、IL-10剤が最初に投与され、免疫チェックポイント経路阻害剤が2番目に投与され、補助剤が最後に投与される。他の実施形態では、IL-10剤、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)は、同時に投与され、例えば、薬剤の2つが同時に投与され、第3の薬剤がその前または後のいずれかに投与される。IL-10剤、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)が、連続的に、同時に、またはそれらのいくつかの変形で投与されるかに関わらず、それらは、本開示の目的のための補助的併用療法として投与されるものと見なされる。
【0228】
本開示は、その状況下で許容されるか、適切であるか、または最適であり得、かつ不可逆的なグレード4またはグレード4の有害事象の誘導をもたらさない、補助的併用療法のための投薬レジメンの使用を企図する。本明細書以下に記載のレジメンは、例示的なものであり、排他的なものではない。一実施形態では、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)を用いた治療は、一定期間にわたって維持される。別の実施形態では、IL-10剤、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)、および補助剤(複数可)を用いた治療は、(例えば、対象が安定している場合)一定期間にわたって低減または継続される。別の実施形態では、IL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)を用いた治療が、一定の投薬レジメンで維持されている間、補助剤(複数可)を用いた治療は、(例えば、対象が安定している場合)低減または中断される。さらなる実施形態では、補助剤(複数可)を用いた治療は、(例えば、対象が安定している場合)低減または中断され、IL-10剤を用いた治療は、低減され(例えば、より低い用量、より少ない頻度の投薬、またはより短い治療レジメン)、免疫チェックポイント経路阻害剤を用いた治療は、一定の投薬レジメンで維持される。さらなる実施形態では、補足剤(複数可)を用いた治療は、(例えば、対象が安定している場合)低減または中止され、IL-10剤を用いた治療は、低減され(例えば、より低い用量、より少ない頻度の投薬、またはより短い治療レジメン)、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)を用いた治療は、一定の投薬レジメンで維持される。
【0229】
投与:
本開示は、様々な疾患、障害、および病態(例えば、がん)、ならびに/またはそれらの症状を治療および/または予防するための、1つ以上の免疫チェックポイント経路阻害剤と併用した、本明細書に記載のIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)およびそれらの組成物の使用を企図する。いくつかの実施形態では、IL10剤は、特定の実施形態では皮下注射を含む、非経口注射によって投与される。1つ以上の免疫チェックポイント経路調節剤はまた、調節剤の性質および調節される免疫チェックポイント経路を考慮して、有効な任意の経路によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、IL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)は、同じ経路によって(例えば、静脈内)投与することができる一方で、他の実施形態では、それらは、異なる経路によって投与することができる(例えば、IL-10剤は、皮下投与されてもよく、免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)は、静脈内投与されてもよい)。
【0230】
本開示の特定の態様では、そのような治療または予防は、個々の療法の投与自体に関連するあらゆる有害作用を最小化するように機能する、特定の投薬パラメータを利用することによってもたらされる。例として、イピリムマブ(抗CTLA4mAb)を含むレジメンへの、PEG-IL-10レジメンの追加は、治療目標の達成に必要なイピリムマブの量の低減を可能にし、それによりイピリムマブの免疫介在性の有害反応を緩和することができる。特定のIL-10および免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)は、併用して使用される場合、(例えば、治療目標とともに)投与、投薬レジメン、投薬パラメータなどに影響を与える。
【0231】
本開示のIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)および免疫チェックポイント経路調節剤は、例えば、投与の目標(例えば、所望の消散の程度);製剤が投与される対象の年齢、体重、性別、健康状態、および健康状態;投与経路;ならびに疾患、障害、病態、またはその症状の性質に依存する量で、対象に投与することができる。投薬レジメンはまた、投与される薬剤(複数可)に関連するあらゆる有害作用の存在、性質、および程度も考慮に入れることができる。有効な投薬量および投薬レジメンは、例えば、安全性および用量漸増試験、インビボ研究(例えば、動物モデル)、ならびに当業者に既知の他の方法から容易に決定することができる。
【0232】
本明細書に記載の方法におけるIL-10剤の血漿レベルは、(1)ある特定のレベルを超えるか、またはあるレベルの範囲内の、平均IL-10剤血清トラフ濃度、(2)ある期間にわたって、ある特定のレベルを超える平均IL-10剤血清トラフ濃度、(3)ある特定のレベルを超えるかもしくはそれ未満であるか、またはあるレベルの範囲内の、定常状態のIL-10剤血清濃度レベル、あるいは(4)ある特定のレベルを超えるかもしくはそれ未満であるか、またはあるレベルの範囲内の、濃度プロファイルのCmaxを含む、いくつかの様式で特性評価することができる。本明細書に明記されるように、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、特定の適応症における有効性にとって特に重要であることが見出されている。
【0233】
一実施形態では、本開示は、特定の血清トラフ濃度を達成するため、および/または特定の平均血清トラフ濃度を維持するための、IL-10剤の投与を企図する。本開示のいくつかの実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、1.0pg/mL~100pg/mL、0.1ng/mL~1.0ng/mL、1.0ng/mL~10ng/mL、0.5ng/mL~5.0ng/mL、0.75ng/mL~1.25ng/mL、または0.9ng/mL~1.1ng/mLの範囲内である。本開示の特定の実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、1.25ng/mL、少なくとも1.5ng/mL、少なくとも1.6ng/mL、少なくとも1.7ng/mL、少なくとも1.8ng/mL、少なくとも1.85ng/mL、少なくとも1.9ng/mL、少なくとも1.95ng/mL、少なくとも1.97ng/mL、および少なくとも1.98ng/mL、少なくとも1.99ng/mL、少なくとも2.0ng/mL、または2ng/mL超である。さらなる実施形態では、前述の期間は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6週間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、または12ヶ月間超である。本開示の特定の実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、この期間の少なくとも85%、この期間の少なくとも90%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%維持される。
【0234】
本開示のいくつかの実施形態では、生成することができる血漿および/または血清レベルの濃度プロファイルには、約1.0pg/mL超、約10.0pg/mL超、約20.0pg/mL超、約30pg/mL超、約40pg/mL超、約50.0pg/mL超、約60.0pg/mL超、約70.0pg/mL超、約80.0pg/mL超、約90pg/mL超、約0.1ng/mL超、約0.2ng/mL超、約0.3ng/mL超、約0.4ng/mL超、約0.5ng/mL超、約0.6ng/mL超、約0.7ng/mL超、約0.8ng/mL超、約0.9ng/mL超、約1.0ng/mL超、約1.5ng/mL超、約2.0ng/mL超、約2.5ng/mL超、約3.0ng/mL超、約3.5ng/mL超、約4.0ng/mL超、約4.5ng/mL超、約5.0ng/mL超、約5.5ng/mL超、約6.0ng/mL超、約6.5ng/mL超、約7.0ng/mL超、約7.5ng/mL超、約8.0ng/mL超、約8.5ng/mL超、約9.0ng/mL超、約9.5ng/mL、または約10.0ng/mL超の、平均IL-10剤血漿および/または血清トラフ濃度が含まれる。
【0235】
本開示の特定の実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、1.0pg/mL~10ng/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、1.0pg/mL~100pg/mLの範囲内である。他の実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、0.1ng/mL~1.0ng/mLの範囲内である。さらに他の実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、1.0ng/mL~10ng/mLの範囲内である。本開示は、そのような範囲が明示的に列挙されていなくても、本明細書に明記されるものによって包含される任意の濃度を組み込む範囲を企図することを理解されたい。例として、一実施形態では、平均IL-10剤血清濃度は、0.5ng/mL~5ng/mLの範囲内であり得る。さらなる例として、本開示の特定の実施形態は、約0.5ng/mL~約10.5ng/mL、約1.0ng/mL~約10.0ng/mL、約1.0ng/mL~約9.0ng/mL、約1.0ng/mL~約8.0ng/mL、約1.0ng/mL~約7.0ng/mL、約1.5ng/mL~約10.0ng/mL、約1.5ng/mL~約9.0ng/mL、約1.5ng/mL~約8.0ng/mL、約1.5ng/mL~約7.0ng/mL、約2.0ng/mL~約10.0ng/mL、約2.0ng/mL~約9.0ng/mL、約2.0ng/mL~約8.0ng/mL、および約2.0ng/mL~約7.0ng/mLの範囲内の平均IL-10剤血清トラフ濃度を含む。
【0236】
本開示は、上記に明記されるIL-10剤血清トラフ濃度のいずれかの維持をもたらす、任意の用量および投薬レジメンの投与を企図する。限定ではなく、例として、対象がヒトである場合、非ペグ化hIL-10は、0.5μg/kg/日超、1.0μg/kg/日超、2.5μg/kg/日超、5μg/kg/日超、7.5μg/kg超、10.0μg/kg超、12.5μg/kg超、15μg/kg/日超、17.5μg/kg/日超、20μg/kg/日超、22.5μg/kg/日超、25μg/kg/日超、30μg/kg/日超、または35μg/kg/日超の用量で投与することができる。加えて、限定ではなく、例として、対象がヒトである場合、比較的小さいPEG(例えば、5kDaのモノ-ジ-PEG-hIL-10)を含むペグ化hIL-10剤は、0.5μg/kg/日/皮下、あるいは約0.75μg/kg/日/皮下、あるいは約1μg/kg/日/皮下、あるいは約1.5μg/kg/日/皮下、あるいは約1.75μg/kg/日、あるいは約2.0μg/kg/日/皮下、あるいは約3μg/kg/日/皮下、あるいは約4μg/kg/日/皮下、あるいは約5μg/kg/日/皮下、あるいは約8μg/kg/日/皮下、あるいは約10μg/kg/日/皮下、あるいは約12μg/kg/日/皮下、あるいは約15μg/kg/日/皮下、あるいは約20μg/kg/日/皮下の用量で投与することができる。
【0237】
所望の定常状態の血清トラフ濃度(例えば、1ng/mL)を維持するのに十分な投薬レジメンは、所望の定常状態の血清トラフ濃度よりも高い初期血清トラフ濃度をもたらすことができると想定される。哺乳動物対象におけるIL-10の薬力学的および薬物動態学的特徴のため、(例えば、1回以上の負荷用量の投与、その後の一連の維持用量の投与を通して達成される)初期トラフ濃度は、投薬パラメータ(量および頻度)が一定に維持されている場合でも、ある期間にわたって徐々にではあるが継続的に低下する。その期間の後、徐々にではあるが継続的な低下は終わり、定常状態の血清トラフ濃度が維持される。例として、マウス(例えば、C57BL/6マウス)への、約0.1mg/kg/日のIL-10剤(例えば、mIL-10)の非経口投与(例えば、皮下および静脈内)が、定常状態の2.0ng/mLの血清トラフ濃度の維持に必要とされる。しかしながら、その定常状態の血清トラフ濃度は、0.1mg/kg/日での投薬の開始後(かつ任意の負荷用量(複数可)後でもある)、約30日まで達成されない可能性がある。むしろ、初期血清トラフ濃度(例えば、2.5ng/mL)が達成された後、その濃度は、治療の過程にわたって徐々にではあるが継続的に低下し、その後所望の定常状態の血清トラフ濃度(2.0ng/mL)が維持される。当業者は、例えば、ADMEおよび患者に特異的なパラメータを使用して、所望の定常状態のトラフ濃度の維持に必要な用量を決定することができるであろう。
【0238】
一般に、投薬パラメータは、投薬量が、対象に不可逆的に毒性であり得る量(すなわち、最大耐量、「MTD」)未満であり、かつ対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量未満ではないことを指示する。そのような量は、例えば、投与経路および他の因子を考慮して、ADMEに関連する薬物動態学的および薬力学的パラメータによって決定される。
【0239】
有効用量(ED)は、それを服用する対象の一部において治療応答または所望の効果をもたらす薬剤の用量または量である。ある薬剤の「有効用量中央値」またはED50は、それが投与される集団の50%において治療応答または所望の効果をもたらす薬剤の用量または量である。ED50は一般的に、薬剤の効果の妥当な期待値の尺度として使用されるが、臨床医が必ずしも全ての関連する要因を考慮して適切と見なし得る用量であるわけではない。したがって、いくつかの状況では、有効量は、ED50計算値を超える可能性があり、他の状況では、有効量は、ED50計算値未満である可能性があり、さらに他の状況では、有効量は、ED50計算値と同じである可能性がある。加えて、本開示のIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)の有効用量は、対象に1回以上の用量で投与した場合に、健康な対象と比較して、所望の結果をもたらす量であり得る。例えば、特定の障害を経験している対象の場合、有効用量は、その障害の診断パラメータ、尺度、およびマーカーなどを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超改善するものであることができ、ここで100%は、正常な対象が呈する診断パラメータ、尺度、およびマーカーなどとして定義される。IL10剤の有効用量は、当該技術分野で既知であり、本明細書の別の箇所に記載のIL-10活性アッセイによって決定することができる。例として、腫瘍の文脈では、好適なIL-10活性には、例えば、腫瘍部位へのCD8+T細胞浸潤、これらの浸潤細胞からのIFN-γ、IL-4、IL-6、IL-10、およびRANK-Lなどの炎症性サイトカインの発現、ならびに生物学的試料中のTNF-αまたはIFN-γのレベルの増加が含まれる。
【0240】
いくつかの実施形態では、例えば、IL10剤が、約50~800μgのタンパク質/体重kg/日(例えば、約1~16μgタンパク質/体重kg/日のPEG-IL-10剤)を送達するように連続的静脈内注入によって投与される、PEG-IL-10剤である場合。注入速度は、例えば、副作用および血球数の評価に基づいて変動させることができる。IL-10剤の他の特定の投薬パラメータは、本明細書の別の箇所に記載されている。
【0241】
特定の実施形態では、IL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤の投薬量は、「単位剤形」で提供される。「単位剤形」という語句は、物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果をもたらすのに十分である本開示の所定量のIL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤を、単独または1つ以上の追加の薬剤と組み合わせで含有する。単位剤形のパラメータは、特定の薬剤および達成されるべき効果に依存することが理解される。
【0242】
いくつかの実施形態では、本開示は、IL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤が、少なくとも1日1回、少なくとも48時間に1回、少なくとも72時間に1回、少なくとも1週間に1回、少なくとも2週間に1回、少なくとも1ヶ月に1回、少なくとも2ヶ月に1回、または少なくとも3ヶ月もしくはそれ以上に1回、対象に投与される方法を企図する。特定の実施形態では、IL-10剤は、3週間に1回静脈内投与される160mg(2mg/kg)の用量で投与されるペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck and Co,Rahway NJ)と併用して投与される。特定の実施形態では、IL-10剤は、2週間に1回静脈内投与される240mg(3mg/kg)の改訂ラベル承認用量に従って投与されるニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BristolMyers Squibb,Princeton NJ)と併用して投与される。イピリムマブの推奨用量は、3週間に1回、合計4回の用量で静脈内投与される、3mg/kgである。特定の実施形態では、IL-10剤は、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)に結合する組み換えヒトモノクローナル抗体である、免疫チェックポイント経路阻害剤イピリムマブ(YERVOY、Bristol-Myers Squibb)と併用して投与される。例示的な実施形態では、PEG-1L-10およびイピリムマブを含む併用療法は、同時またはほぼ同時に開始することができる。PEG-IL-10およびイピルマブを用いた併用療法を含む別の例示的な実施形態では、イピリムマブ療法(3週間に1回の投与)を最初に開始してもよく、1週間に1回のPEG-IL-10療法をその1週間後に開始してもよく、その2週間後に、第2の用量のイピリムマブを投与する。いくつかの実施形態では、治療レジメンは、PEG-IL-10、イピリムマブ、またはその両方の血清レベルが所望のレベルまで低下して、対象がイピリムマブに関連するいかなる有害作用(例えば、免疫関連副作用)からも回復できるようにする、休薬期間(「休薬日」)を含む。当業者(例えば、腫瘍学者)は、IL-10および免疫チェックポイント経路阻害剤の特徴(例えば、それらの薬物動態学的パラメータ)、患者に特異的な特徴(例えば、腎機能)、ならびに治療の目標を考慮する治療レジメンを調整することができるであろう。
【0243】
特定のIL-10血清濃度などの達成に必要なIL-10剤の血清濃度、用量、および治療プロトコルに関する前述の考察は、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)を用いた単独療法に関係しているが、特定の実施形態では、そのような用量、治療プロトコルなどはまた、1つ以上の免疫チェックポイント経路阻害剤と併用してIL-10剤を含む治療レジメンにも関連している。例えば、PEG-IL-10およびPD1アンタゴニストは、PEG-IL-10投薬レジメンは、単独で投与される場合またはPD1アンタゴニストと併用して投与される場合で同じであってもよいが、これは、それらの投薬パラメータを修正せずに薬剤の併用を可能にする異なる作用機構を有するためである。しかしながら、そのような併用は、PEG-IL-10および/または免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)の通常の投薬レジメンに対する修正を可能にすることができる。例えば、薬剤の一方もしくは両方の治療用量を低減することができ、一方もしくは両方の薬剤の投薬頻度を低下させることができ、かつ/または所望の治療効果を保持しながら薬剤の一方もしくは両方の治療期間を短縮することができる。
【0244】
当業者(例えば、薬理学者)は、IL-10剤(例えば、PEG-IL-10)を免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)と併用して投与する場合の最適な投薬レジメン(複数可)を決定することができる。例として、いくつかの実施形態では、最適なPEG-IL-10投薬レジメンは、1用量当たりに投与されるPEG-IL-10の量の低減を必要とする可能性がある(例えば、1.0μg/kg/日未満、0.75μg/kg/日未満、0.5μg/kg/日未満、0.25μg/kg/日未満、または0.125μg/kg/日未満)。本開示の特定の例示的な実施形態では、平均IL-10剤血清トラフ濃度は、約0.1ng/mL~約9.5ng/mL、約0.25ng/mL~約8.0ng/mL、約0.5ng/mL~約7.0ng/mL、約0.75ng/mL~約6.0ng/mL、または約1.0ng/mL~約5.0ng/mLの範囲内であり得る。
【0245】
IL-10剤を免疫チェックポイント経路阻害剤と併用して投与する場合、単剤療法に適用可能なIL-10剤の投薬パラメータの1つ以上が変更され得る一方で、単剤療法に適用可能な免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)の投薬パラメータは依然として同じであり得るか、単剤療法に適用可能なIL-10剤の1つ以上の投薬パラメータは依然として同じであり得る一方で、単剤療法に適用可能な免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)の1つ以上の投薬パラメータが変更され得るか、単剤療法に適用可能なIL-10剤および免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)の投薬パラメータの1つ以上が変更され得るか、または単剤療法に適用可能なIL-10剤および免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)の各々の投薬パラメータは依然として同じであり得る。
【0246】
本開示のIL-10剤および免疫チェックポイント経路阻害剤は、対象への投与に好適な組成物の形態であってもよい。一般に、そのような組成物は、IL-10および/または免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)、ならびに1つ以上の薬学的に許容されるかまたは生理学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む、「薬学的組成物」である。特定の実施形態では、IL-10剤および免疫チェックポイント経路阻害剤は各々、治療的に許容される量で存在する。薬学的組成物は、本開示の方法で使用することができ、それにより例えば、薬学的組成物を、エキソビボまたはインビボで対象に投与して、本明細書に記載の治療および予防の方法および使用を実施することができる。
【0247】
本開示の特定の実施形態は、治療的に許容される量の免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)と併用した、治療的に許容される量のIL-10剤を、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、担体、および/または賦形剤(例えば、等張注射液)とともに含む、薬学的組成物を対象とする。薬学的組成物は一般に、ヒトへの投与に好適なものである。さらに、いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも1つの追加の補助剤を含む。
【0248】
本発明の一実施形態は、IL-10剤および少なくとも1つの免疫チェックポイント経路調節剤を含む薬学的製剤、または任意で補助治療剤を含有する複数の免疫チェックポイント経路調節剤の薬学的製剤を提供する。
【0249】
薬学的組成物は、典型的には、薬学的および生理学的に許容される製剤化剤の存在下で、治療有効量のIL-10剤および/または治療有効量の免疫チェックポイント経路調節剤、任意で補助剤を含む。好適な薬学的に許容されるかまたは生理学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤には、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸および重硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート)、乳化剤、懸濁剤、分散剤、溶媒、充填剤、増量剤、洗剤、緩衝液、ビヒクル、希釈剤、ならびに/またはアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。例えば、好適なビヒクルは、おそらく非経口投与用の薬学的組成物中で一般的な他の材料を補った、生理食塩水またはクエン酸緩衝食塩水であり得る。中性緩衝食塩水または血清アルブミンと混合した食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。当業者は、本明細書で企図される薬学的組成物および剤形で使用することができる様々な緩衝液を容易に認識するであろう。典型的な緩衝液には、薬学的に許容される弱酸、弱塩基、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一例として、緩衝液構成成分は、リン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびそれらの塩などの水溶性材料であり得る。許容される緩衝剤には、例えば、トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、およびN-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)が含まれる。
【0250】
薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、本明細書で言及される好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容される希釈剤、溶媒、および分散培地には、水、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、ならびにそれらの好適な混合物が含まれる。加えて、無菌の固定油は、溶媒または懸濁培地として従来用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激の固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製において用途を見出している。特定の注射可能な製剤の吸収延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含めることによって達成することができる。
【0251】
活性剤(複数可)を含有する薬学的組成物は、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳濁液、硬質もしくは軟質カプセル、またはシロップ、溶液、マイクロビーズ、もしくはエリキシル剤としての、経口使用に好適な形態であってもよい。特定の実施形態では、活性剤または本明細書に記載のIL-10剤と同時投与される薬剤は、経口使用に好適な形態である。経口使用が意図される薬学的組成物は、薬学的組成物の製造について当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、例えば、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤などの1つ以上の薬剤を含有することで、薬学的に上品で口当たりのよい調製物を提供することができる。錠剤およびカプセルなどは、錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された、活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム;ならびに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってもよい。
【0252】
薬剤の製剤はまた、活性剤の徐放を提供するように設計することもできる。徐放性製剤は、当該技術分野で既知であり、それらには、投与される組成物の送達を制御するための、生分解性もしくは生体適合性粒子、または重合体物質(ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、ポリ無水物、ポリグリコール酸、エチレン-ビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリド共重合体、ポリラクチド/グリコリド共重合体、もしくはエチレン酢酸ビニル共重合体など)が含まれる。例えば、経口剤は、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルもしくはポリ(メチルメタクロレート)マイクロカプセルを使用することによって調製されるマイクロカプセル中、あるいはコロイド薬物送達系中に封入することができる。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、マイクロビーズ、ならびに脂質ベースの系(水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなど)が含まれる。前述の製剤を調製するための方法は、当業者に明らかになるであろう。薬剤の製剤はまた、一般に皮下または筋肉内投与されるデポ注射であってもよく、本明細書に開示される活性剤を定義された期間にわたって放出するために利用することができる。
【0253】
水性懸濁液は、その製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガントゴムおよびアラビアゴム;分散剤または湿潤剤、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシ-エチレン)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールの場合)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であり得る。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤を含有してもよい。
【0254】
本開示の薬学的組成物はまた、油性懸濁液であってもよく、活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナッツ油)中または鉱物油(流動パラフィンなど)中に懸濁させることによって製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、ミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有してもよい。上記に明記されるものなどの甘味剤、および香味剤を添加して、口当たりのよい経口調製物を提供することができる。
【0255】
本開示の薬学的組成物はまた、水の添加によって水性懸濁液を調製するのに好適な分散性粉末および顆粒であってもよく、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の保存剤と混合された活性成分を提供する。好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、本明細書に例証されている。
【0256】
本開示の薬学的組成物はまた、水中油型乳濁液の形態であってもよい。油性相は、植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、または鉱物油(例えば、流動パラフィン)、あるいはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガントガム;天然に存在するホスファチド、例えば、ダイズ、レシチン、および脂肪酸に由来するエステルまたは部分エステル;ヘキシトール無水物、例えば、モノオレイン酸ソルビタン;ならびに部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。
【0257】
本開示の薬学的組成物はまた、留置剤、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグ、およびマイクロカプセル化送達系を含む徐放性製剤などの、身体からの急速な分解または排除から組成物を保護するための担体も含んでもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を、単独またはワックスと組み合わせて使用することができる。
【0258】
本開示の薬学的組成物はまた、直腸投与のための坐剤の形態であってもよい。坐剤は、常温では固体であるが直腸温度では液体であるため、薬物と、直腸内で溶けて薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料には、カカオバターおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0259】
本開示の薬学的組成物はまた、現在既知であるか、または将来開発される任意の他の好適な薬学的組成物(例えば、経鼻または吸入使用のためのスプレー)の形態であってもよい。
【0260】
提示:
薬学的組成物を製剤化した後、それは、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体、または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として、無菌バイアル内で保管することができる。そのような製剤は、使用準備済みの形態、使用前に再構成が必要な凍結乾燥形態、使用前に希釈が必要な液体形態、または他の許容される形態のいずれかで保管することができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、使い捨て容器(例えば、使い捨てバイアル、アンプル、シリンジ、または自動注射器(例えば、EpiPen(登録商標)に類似したもの))内に提供される一方で、他の実施形態では、多用途容器(例えば、多用途バイアル)が提供される。留置剤(例えば、留置可能ポンプ)およびカテーテル系、緩徐注射ポンプおよびデバイスを含む、IL-10を送達するための任意の薬物送達装置を使用することができ、これらは全て、当業者に周知のものである。一般に皮下または筋肉内投与されるデポ注射もまた、本明細書に開示されるポリペプチドを定義された期間にわたって放出するために利用することができる。デポ注射は、通常、固体ベースまたは油ベースのいずれかであり、一般に本明細書に明記される製剤構成成分の少なくとも1つを含む。当業者は、可能な製剤およびデポ注射の使用に精通している。
【0261】
本開示の特定の実施形態は、前述の薬学的組成物のうちの1つ、および任意で1つ以上の追加の構成成分を含有する、無菌容器を企図する。限定ではなく、例として、無菌容器は、シリンジ、具体的には投与準備済みの事前充填されたシリンジであってもよい。さらなる実施形態では、無菌容器は、キットの1つの構成要素であり、キットはまた、例えば、少なくとも1つの予防剤または治療剤を含む第2の無菌容器も含有してもよく、その例は、本明細書に明記されている。
【0262】
本開示はまた、IL-10剤および免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)の薬学的製剤を含むキットも企図する。キットは一般に、後述のように、様々な構成要素を収容する物理的構造の形態であり、例えば、上述の方法を実施する際に利用することができる。キットは、無菌容器内に提供される、本明細書に開示されるIL-10剤(例えば、PEG-IL-10)の1つ以上の薬学的製剤、および免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)の1つ以上の薬学的製剤、無菌容器(複数可)内に提供される薬学的製剤を含んでもよい。薬学的製剤IL-10剤および薬学的製剤免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)は、使用準備済みの形態で、または例えば、投与前に再構成もしくは希釈が必要な形態で提供することができる。IL-10剤および/または免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)が、ユーザーによる再構成が必要な形態で提供される場合、キットはまた、IL-10剤または免疫チェックポイント経路調節剤(複数可)とともに、またはそれらとは別個にパッケージ化された、緩衝液および薬学的に許容される賦形剤などを含んでもよい。同様に、補助的療法(例えば、IL-10剤、免疫チェックポイント経路阻害剤(複数可)、および補助剤)が企図される場合、キットは、いくつかの薬剤を別個に含有しても、それらの2つ以上がキット内で既に組み合わされていてもよい。本開示のキットは、その中に収容される構成要素を適切に維持するために必要な条件(例えば、冷蔵または冷凍)のために設計することができる。
【0263】
キットは、その中の構成要素を特定する情報ならびにそれらの使用に関する指示(例えば、投薬パラメータ、活性成分(複数可)の臨床薬理学(作用機構(複数可)を含む)、薬物動態学および薬力学、有害作用、禁忌症など)を含む、ラベルまたはパッケージ挿入物を含有してもよい。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入されてもよく、様々な容器の全ては、単一のパッケージ内にあってもよい。ラベルまたは挿入物は、ロット番号および有効期限などの製造業者の情報を含んでもよい。ラベルまたはパッケージ挿入物は、例えば、構成要素を収容する物理的構造内に組み込まれても、物理的構造内に別個に含有されても、キットの構成要素(例えば、アンプル、シリンジ、またはバイアル)に貼付されてもよい。
【0264】
ラベルまたは挿入物は、ディスク(例えば、ハードディスク、カード、メモリディスク)、光ディスク(CD-ROM/RAMもしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3、磁気テープなど)、または電気記憶媒体(RAMおよびROMなど)、またはこれらのハイブリッド(磁気/光記憶媒体、FLASH媒体、もしくはメモリ型カードなど)などのコンピュータ可読媒体を追加的に含むか、またはそれに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、実際の指示は、キットには存在しないが、例えば、インターネットサイトを介して、遠隔源から指示を得るための手段が提供される。
【0265】
本発明者らに既知である、本発明を実行するための最良の機序を含む、本発明の特定の実施形態が、本明細書に記載されている。前述の記載の閲読時に、開示された実施形態の変形が、当業者に明らかになる可能性があり、当業者は、そのような変形を必要に応じて用いることができることが期待される。したがって、本発明が、本明細書に具体的に記載される方法以外の方法で実施されること、ならびに本発明が、適用可能な法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修正および同等物を含むことが意図される。さらに、その全ての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせは、別段本明細書で指示されない限り、または別段文脈が明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0266】
本明細書で引用される全ての出版物、特許出願、受託番号、および他の参考文献は、あたかも個々の各出版物または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】