(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】汚泥焼却設備、及び汚泥焼却方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/06 20060101AFI20240827BHJP
B01D 46/04 20060101ALI20240827BHJP
F23G 5/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C02F11/06 B ZAB
B01D46/04 103
F23G5/04 A
F23G5/04 B
(21)【出願番号】P 2021003499
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 滋敏
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】宍田 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 透
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩幹
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151239(JP,A)
【文献】特開平07-213839(JP,A)
【文献】特開2019-171303(JP,A)
【文献】特開2016-7572(JP,A)
【文献】特開平10-061931(JP,A)
【文献】特開平11-325452(JP,A)
【文献】特開2003-190726(JP,A)
【文献】特開2003-220313(JP,A)
【文献】特開2006-046693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B01D 46/04
B01D 53/34ー53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
F23G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却設備であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得手段と、
前記差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する炉温制御手段と、
を備える汚泥焼却設備。
【請求項2】
前記炉温制御手段は、前記脱水汚泥乾燥機への脱水汚泥の供給量、前記脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥温度、前記脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥時間のうちの少なくとも一つを調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する請求項1に記載の汚泥焼却設備。
【請求項3】
前記焼却炉は、乾燥汚泥を前記燃焼室内へと供給する汚泥供給装置、前記燃焼室内で乾燥汚泥を送る火格子、前記燃焼室内への燃焼空気の供給量を調整する燃焼空気用ダンパ、及び前記燃焼室内への再循環排ガスの供給量を調節する再循環排ガス用ダンパのうちの少なくとも一つを有し、
前記炉温制御手段は、前記汚泥供給装置による前記燃焼室内への乾燥汚泥の供給量、前記火格子による前記燃焼室内の乾燥汚泥の送り速度、前記燃焼空気用ダンパによる前記燃焼室内への燃焼空気の供給量、及び前記再循環排ガス用ダンパによる前記燃焼室内への再循環排ガスの供給量のうちの少なくとも一つを調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する請求項1又は2に記載の汚泥焼却設備。
【請求項4】
前記燃焼室の上流側に脱水汚泥を投入する脱水汚泥投入機を備え、
前記炉温制御手段は、前記脱水汚泥投入機による脱水汚泥の投入量を調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する請求項1~3の何れか一項に記載の汚泥焼却設備。
【請求項5】
前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を前記焼却炉へと搬送する乾燥汚泥搬送手段を備え、
前記炉温制御手段は、前記乾燥汚泥搬送手段による乾燥汚泥の搬送量を調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する請求項1~4の何れか一項に記載の汚泥焼却設備。
【請求項6】
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却設備であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得手段と、
前記差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の上流側、又は前記ろ過式集塵機の上流側に、乾燥汚泥に含まれるリンと化合物を形成する
塩基物質としての薬剤を供給する薬剤供給手段と、
を備える汚泥焼却設備。
【請求項7】
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却方法であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程と、
前記差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する炉温制御工程と、
を包含する汚泥焼却方法。
【請求項8】
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却方法であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程と、
前記差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の上流側、又は前記ろ過式集塵機の上流側に、リンと化合物を形成する
塩基物質としての薬剤を供給する薬剤供給工程と、
を包含する汚泥焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を焼却処理する汚泥焼却設備、及び汚泥焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥を焼却する際には、一般に、遠心分離機等の脱水機で予め脱水して脱水汚泥とし、この脱水汚泥を焼却炉に投入している。脱水汚泥は、多くの水分を含むため、そのまま焼却するには多くの助燃剤が必要となる。そこで、助燃剤使用量の削減等を意図して、汚泥乾燥機を用いて脱水汚泥を乾燥し、所定の含水率以下の乾燥汚泥にしてから焼却炉に投入して燃焼することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
下水の処理施設によっては、下水汚泥にリンが高濃度で含まれていることがある。リンを高濃度で含む下水汚泥を脱水・乾燥して得られる乾燥汚泥には、リンと化合物を形成する陽イオン(例えば、鉄、カルシウム等)に対し、リンが相対的に多く含まれる場合がある。また、乾燥汚泥の含水率が低い場合、焼却炉での燃焼時の発熱量が大きくなる。従って、リンを相対的に多く含む低含水率の乾燥汚泥を焼却炉で燃焼させた場合、乾燥汚泥に含まれるリンが揮発する温度以上に焼却炉の炉温が高くなり、飛灰(ダスト)とともに、揮発したリンを比較的多く含む排ガスが、焼却炉の下流側のろ過式集塵機へと流れることになる。
【0004】
焼却炉からろ過式集塵機へと流れる排ガスにおいて、リンの凝縮によって飛灰に粘着性が生じた場合、粘着性が生じた飛灰同士が付着・成長して、粘着性を有する状態で堆積・固化し、排ガス流れが阻害されることがある。また、粘着性が生じた飛灰がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長して、ろ布が目詰まり状態となり、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大することがある。
【0005】
特許文献2には、リンを含有する下水の脱水汚泥を焼却処理するに伴い発生した排ガスの流路での飛灰の固化(焼結)を防止するための焼結抑制剤を添加するにあたり、予め生汚泥、余剰汚泥についてのリンの成分量の基準濃度に設定しておき、焼結抑制剤の添加量を調整すべき実際の運転中に、生汚泥の固形物量と余剰汚泥の固形物量との固形物混合比をリアルタイムで把握して、その固形物混合比と、基準濃度とを用いて、焼結抑制剤の添加量の調整を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-1062号公報
【文献】特開2020-32375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾燥汚泥を焼却処理する汚泥焼却設備においては、乾燥汚泥中のリンの含有率が高いほど、飛灰が焼却炉の排出口以降の煙道等に堆積・固化する事象や、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大する事象が発生し易くなる。これらの事象は、リンの揮散、凝縮によるものや、低融点のリン化合物が液状化することによるものであるが、汚泥焼却設備における安定運転に支障を来すものであり、その対策が急務である。
【0008】
特許文献2に開示された技術では、リアルタイムで把握される固形物混合比と基準濃度とを用いて、焼結抑制剤の添加量の調整を行うことにより、排ガスの流路での飛灰の固化(焼結)を防止するができるものの、ろ過式集塵機に導入される排ガスにリンが含まれるのを抑制することができないため、リンの凝縮等によって粘着性が生じた飛灰がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長するのを防止することができず、ろ布が目詰まり状態となり、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大する虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる汚泥焼却設備、及び汚泥焼却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却設備の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却設備であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得手段と、
前記差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する炉温制御手段と、
を備えることにある。
【0011】
本構成の汚泥焼却設備によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報が差圧情報取得手段によって取得される。差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときには、ろ過式集塵機のろ布の目詰まりが通常よりも進行している可能性が高い。すなわち、乾燥汚泥に含まれるリンが炉温の上昇により揮散し、揮散したリンを比較的多く含む排ガスがろ過式集塵機に導入され、リンの凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長するため、単に飛灰がろ布の表面側に付着・成長する場合と比べて、ろ布の目詰まりが急激に進行していると予測することができる。そこで、差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときには、焼却炉の炉温が所定範囲となるように炉温制御手段によって制御する。例えば、炉温制御手段によって制御される炉温を、リンの揮発を抑制できる所定範囲に設定する。こうすることにより、リンが焼却炉において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明に係る汚泥焼却設備において、
前記炉温制御手段は、前記脱水汚泥乾燥機への脱水汚泥の供給量、前記脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥温度、前記脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥時間のうちの少なくとも一つを調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御することが好ましい。
【0013】
本構成の汚泥焼却設備によれば、炉温制御手段は、脱水汚泥乾燥機への脱水汚泥の供給量、脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥温度、脱水汚泥乾燥機での脱水汚泥に対する乾燥時間のうちの少なくとも一つを調整する。これにより、焼却炉での発熱量を調整することができ、焼却炉の炉温が所定範囲となるように確実に制御することができる。
【0014】
本発明に係る汚泥焼却設備において、
前記焼却炉は、乾燥汚泥を前記燃焼室内へと供給する汚泥供給装置、前記燃焼室内で乾燥汚泥を送る火格子、前記燃焼室内への燃焼空気の供給量を調整する燃焼空気用ダンパ、及び前記燃焼室内への再循環排ガスの供給量を調節する再循環排ガス用ダンパのうちの少なくとも一つを有し、
前記炉温制御手段は、前記汚泥供給装置による前記燃焼室内への乾燥汚泥の供給量、前記火格子による前記燃焼室内の乾燥汚泥の送り速度、前記燃焼空気用ダンパによる前記燃焼室内への燃焼空気の供給量、及び前記再循環排ガス用ダンパによる前記燃焼室内への再循環排ガスの供給量のうちの少なくとも一つを調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御することが好ましい。
【0015】
本構成の汚泥焼却設備によれば、焼却炉は、乾燥汚泥を燃焼室内へと供給する汚泥供給装置、燃焼室内で乾燥汚泥を送る火格子、燃焼室内への燃焼空気の供給量を調整する燃焼空気用ダンパ、及び燃焼室内への再循環排ガスの供給量を調節する再循環排ガス用ダンパのうちの少なくとも一つを有している。そして、炉温制御手段は、汚泥供給装置による燃焼室内への乾燥汚泥の供給量、火格子による燃焼室内の乾燥汚泥の送り速度、燃焼空気用ダンパによる燃焼室内への燃焼空気の供給量、及び再循環排ガス用ダンパによる燃焼室内への再循環排ガスの供給量のうちの少なくとも一つを調整する。これにより、焼却炉での発熱量を調整することができ、焼却炉の炉温が所定範囲となるように確実に制御することができる。
【0016】
本発明に係る汚泥焼却設備において、
前記燃焼室の上流側に脱水汚泥を投入する脱水汚泥投入機を備え、
前記炉温制御手段は、前記脱水汚泥投入機による脱水汚泥の投入量を調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御することが好ましい。
【0017】
本構成の汚泥焼却設備によれば、焼却炉の燃焼室の上流側に脱水汚泥を投入する脱水汚泥投入機を備えている。そして、炉温制御手段は、脱水汚泥投入機による脱水汚泥の投入量を調整する。これにより、焼却炉での発熱量を調整することができ、焼却炉の炉温が所定範囲となるように確実に制御することができる。
【0018】
本発明に係る汚泥焼却設備において、
前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を前記焼却炉へと搬送する乾燥汚泥搬送手段を備え、
前記炉温制御手段は、前記乾燥汚泥搬送手段による乾燥汚泥の搬送量を調整することにより、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御することが好ましい。
【0019】
本構成の汚泥焼却設備によれば、脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉へと搬送する乾燥汚泥搬送手段を備えている。そして、炉温制御手段は、乾燥汚泥搬送手段による乾燥汚泥の搬送量を調整する。これにより、焼却炉での発熱量を調整することができ、焼却炉の炉温が所定範囲となるように確実に制御することができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却設備の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却設備であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得手段と、
前記差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の上流側、又は前記ろ過式集塵機の上流側に、乾燥汚泥に含まれるリンと化合物を形成する薬剤を供給する薬剤供給手段と、
を備えることにある。
【0021】
本構成の汚泥焼却設備によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報が差圧情報取得手段によって取得される。差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときには、乾燥汚泥に含まれるリンの揮散・凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長することに起因して、ろ過式集塵機のろ布の目詰まりが通常よりも進行している可能性が高い。そこで、差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときには、焼却炉の上流側、又はろ過式集塵機の上流側に、乾燥汚泥に含まれるリンと化合物を形成する薬剤を薬剤供給手段によって供給する。焼却炉の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で乾燥汚泥に含まれることになり、リンが焼却炉において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。また、ろ過式集塵機の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で排ガスに含まれることになり、排ガス中の飛灰に粘着性を生じさせることがなくなるため、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0022】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却設備の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却設備であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得手段と、
前記差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記ろ過式集塵機における前記ろ布に対する逆洗空気の空気圧、及び前記逆洗空気の噴射の間隔のうちの少なくとも一つを調整するろ布清掃制御手段と、
を備えることにある。
【0023】
本構成の汚泥焼却設備によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報が差圧情報取得手段によって取得される。そして、ろ布清掃制御手段は、差圧情報取得手段によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、ろ過式集塵機におけるろ布に対する逆洗空気の空気圧、及び逆洗空気の噴射の間隔のうちの少なくとも一つを調整する。これにより、リンの凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長しても、逆洗空気の作用によって払い落とされる。従って、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0024】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却方法の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却方法であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程と、
前記差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する炉温制御工程と、
を包含することにある。
【0025】
本構成の汚泥焼却方法によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報が取得する差圧情報取得工程が実施され、差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、焼却炉の炉温が所定範囲となるように制御する炉温制御工程が実施される。炉温制御工程においては、制御対象の炉温を、例えば、リンの揮発を抑制できる所定範囲に設定する。こうすることにより、リンが焼却炉において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0026】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却方法の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却方法であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程と、
前記差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記焼却炉の上流側、又は前記ろ過式集塵機の上流側に、リンと化合物を形成する薬剤を供給する薬剤供給工程と、
を包含することにある。
【0027】
本構成の汚泥焼却方法によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程が実施され、差圧情報取得工程によって取得される差圧の上昇率が増大したときに、焼却炉の上流側、又はろ過式集塵機の上流側に、リンと化合物を形成する薬剤を供給する薬剤供給工程が実施される。薬剤供給工程において、焼却炉の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で乾燥汚泥に含まれることになり、リンが焼却炉において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。また、薬剤供給工程において、ろ過式集塵機の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で排ガスに含まれることになり、排ガス中の飛灰に粘着性を生じさせることがなくなるため、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0028】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る汚泥焼却方法の特徴構成は、
脱水汚泥を脱水汚泥乾燥機で乾燥し、前記脱水汚泥乾燥機からの乾燥汚泥を焼却炉の燃焼室に供給し、当該燃焼室での燃焼に伴い発生した排ガスを、ろ布を具備するろ過式集塵機で除塵処理するようにした汚泥焼却方法であって、
前記ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程と、
前記差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、前記ろ過式集塵機における前記ろ布に対する逆洗空気の空気圧、及び前記逆洗空気の噴射の間隔のうちの少なくとも一つを調整するろ布清掃制御工程と、
を包含することにある。
【0029】
本構成の汚泥焼却方法によれば、ろ過式集塵機における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得する差圧情報取得工程が実施され、差圧情報取得工程によって取得された差圧の上昇率が増大したときに、ろ布清掃制御工程が実施される。ろ布清掃制御工程において、ろ過式集塵機におけるろ布に対する逆洗空気の空気圧、及び逆洗空気の噴射の間隔のうちの少なくとも一つを調整することにより、リンの凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長しても、逆洗空気の作用によって払い落とすることができる。従って、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の制御システムの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、ろ過式集塵機における差圧の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0032】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、汚泥焼却設備1は、脱水汚泥乾燥機10が併設された焼却炉2を備えている。焼却炉2の下流側には、ボイラ3、エコノマイザ4、減温塔5、ろ過式集塵機6、誘引送風機7及び煙突8がそれぞれ順に配設されている。
【0033】
焼却炉2では、脱水汚泥乾燥機10によって脱水汚泥が乾燥された後の汚泥(乾燥汚泥)が燃焼される。本明細書において、「汚泥」とは、排水処理や下水処理の過程で出てくる泥状の物質で有機物と無機物との集合体のことである。なお、以下の説明において、脱水汚泥及び乾燥汚泥を総称して単に「汚泥」と称する場合がある。
【0034】
焼却炉2での燃焼に伴い発生した燃焼排ガスは、誘引送風機7の誘引作用により、ボイラ3、エコノマイザ4、減温塔5及びろ過式集塵機6にそれぞれ順に送り込まれる。
【0035】
ボイラ3では、燃焼排ガスの熱を利用して蒸気を発生させ、エコノマイザ4では、ボイラ3に供給する水を燃焼排ガスの余熱を利用して加熱し、減温塔5では、エコノマイザ4からの燃焼排ガスを所定温度まで冷却し、ろ過式集塵機6では、燃焼排ガスに含まれる飛灰(ダスト)等を除去する。
【0036】
そして、飛灰等が除去された後の燃焼排ガスは、誘引送風機7により煙突8を介して外部に排出される。なお、焼却炉2及びボイラ3を含む燃焼ボイラ設備においては、ボイラ3に接続されたタービン(図示省略)を用いて発電機を駆動して発電するように構成してもよい。
【0037】
<焼却炉>
焼却炉2は、一次燃焼室51及び二次燃焼室52を有する炉本体50を備えている。炉本体50の一側(
図1において左側)には、炉本体50内に汚泥を供給するための汚泥供給装置55が配設されるとともに、汚泥供給装置55に汚泥を送り込むためのホッパ56が配設されている。ホッパ56は、逆四角錐状の受入部56a、及び受入部56aに一体的に垂設される四角筒状のシュート部56bを有し、汚泥の送り込み方向に受入部56aとシュート部56bとが順に配されて構成されている。炉本体50の下部側には、ストーカ60が配設されるとともに、ストーカ60に一次燃焼空気を供給するための一次燃焼空気供給装置61が配設されている。焼却炉2において、二次燃焼室52には、二次燃焼空気供給装置62によって二次燃焼空気が供給されるようになっている。また、焼却炉2において、再循環排ガス供給装置63によって再循環排ガスが焼却炉2内に供給されるようになっている。炉本体50の炉温は、炉温センサ58によって検出され、検出信号が後述する制御装置151に送信される。
【0038】
<汚泥供給装置>
汚泥供給装置55は、プッシャー65の往復動により、シュート部56b内の汚泥を炉本体50内に押し込むプッシャー方式の供給装置である。プッシャー65は、油圧シリンダー等のプッシャー駆動装置66によって往復動する。
【0039】
<火格子>
ストーカ60は、可動火格子70aと固定火格子70bとが交互に階段状に配列された階段式ストーカである。ストーカ60は、乾燥段を形成する乾燥ストーカ71、燃焼段を形成する燃焼ストーカ72、及び後燃焼段を形成する後燃焼ストーカ73が、汚泥送り方向の上流側から下流側に向けて順に区分けされている。乾燥ストーカ71には、当該乾燥ストーカ71における可動火格子70aを往復動させる乾燥ストーカ駆動装置75が連結されている。燃焼ストーカ72には、当該燃焼ストーカ72における可動火格子70aを往復動させる燃焼ストーカ駆動装置76が連結されている。後燃焼ストーカ73には、当該後燃焼ストーカ73における可動火格子70aを往復動させる後燃焼ストーカ駆動装置77が連結されている。
【0040】
乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73のそれぞれの下部側には、風箱78が付設されている。そして、一次燃焼空気供給装置61からの一次燃焼空気が、風箱78を介して、乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73にそれぞれ供給される。
【0041】
<一次燃焼空気供給装置>
一次燃焼空気供給装置61は、一次燃焼空気を送り出す送風機79と、送風機79からの一次燃焼空気が流通される主管路80と、主管路80から分岐して乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73のそれぞれに対応する風箱78に繋がる第一分岐管路81、第二分岐管路82及び第三分岐管路83とを備え、送風機79からの一次燃焼空気を、主管路80から第一分岐管路81、第二分岐管路82及び第三分岐管路83を介して乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73へとそれぞれ供給することができるように構成されている。
【0042】
主管路80には、主流量調節ダンパ装置85が介設されている。また、第一分岐管路81、第二分岐管路82及び第三分岐管路83には、それぞれ第一流量調節ダンパ装置86、第二流量調節ダンパ装置87及び第三流量調節ダンパ装置88が介設されている。
【0043】
<二次燃焼空気供給装置>
二次燃焼空気供給装置62は、二次燃焼空気を送り出す送風機90と、この送風機90からの二次燃焼空気を二次燃焼室52へと導く管路91とを備え、送風機90からの二次燃焼空気を、管路91を通して二次燃焼室52内に供給することができるように構成されている。管路91には、流量調節ダンパ装置92が介設されている。
【0044】
<再循環排ガス供給装置>
再循環排ガス供給装置63は、煙突8から大気中へ排出される低温の排ガスの一部を再循環排ガスとして送り出す送風機95と、この送風機95からの再循環排ガスを焼却炉2内へと導く管路96とを備え、送風機95からの再循環排ガスを、管路96を通して焼却炉2内に供給することができるように構成されている。管路96には、流量調節ダンパ装置97が介設されている。
【0045】
<汚泥乾燥機>
脱水汚泥乾燥機10は、溝型(トラフ型)で低速撹拌型の伝導伝熱乾燥機であり、伝熱ジャケット11を有するトラフ12と、トラフ12に回転自在に支持される伝熱体13とを備えている。
【0046】
トラフ12は、一端側に被処理汚泥である脱水汚泥を受け入れるための汚泥受入口15を備えるとともに、他端側に乾燥汚泥を排出するための汚泥排出口16を備えている。伝熱ジャケット11の一側には、熱媒導入口21が設けられ、伝熱ジャケット11の他側には、熱媒排出口22が設けられ、熱媒導入口21から導入された熱媒が、伝熱ジャケット11の内部を通って熱媒排出口22から排出されるようになっている。
【0047】
トラフ12の他端部寄りの部分には、汚泥乾燥キャリアガスをトラフ12の内部に導入するためのキャリアガス導入口17が設けられ、トラフ12の一端部寄りの部分には、トラフ12の内部に導入された汚泥乾燥キャリアガスをトラフ12の外部に排出するためのキャリアガス排出口18が設けられている。
【0048】
トラフ12の内部には、例えば、後述する脱水汚泥保管庫30内の空気を図示されない導入キャリアガス加熱器で加熱し、加熱された空気が汚泥乾燥キャリアガスとしてキャリアガス導入口17を通してトラフ12の内部に導入される。汚泥乾燥キャリアガスは、脱水汚泥を乾燥するに伴い蒸発した蒸発物を取り込んだ後、蒸発物と共にキャリアガス排出口18から排出される。排出された汚泥乾燥キャリアガスは、減湿設備(図示省略)が介設された還流路(図示省略)を通して再び脱水汚泥乾燥機10に導入され、再度、汚泥乾燥キャリアガスとして利用される、又は除塵処理を施した後に二次燃焼空気としての役目も兼ねて二次燃焼室52へと圧送される。
【0049】
伝熱体13は、回転軸23に複数の伝熱翼(パドル翼)24が軸方向に適宜間隔で配列されてなるものであり、回転軸23と伝熱翼24とが互いに連通するような中空構造とされている。回転軸23の一端側には、熱媒導入口25が設けられ、回転軸23の他端側には、熱媒排出口26が設けられ、熱媒導入口25から導入された熱媒が、回転軸23及び伝熱翼24の中空部を通って熱媒排出口26から排出されるようになっている。また、回転軸23には、電動機27の回転動力が動力伝達機構28を介して伝達されるようになっている。
【0050】
脱水汚泥乾燥機10においては、熱媒として、例えば、蒸気や熱媒油、高温水が用いられる。熱媒は、熱媒導入口21から伝熱ジャケット11の内部を通って熱媒排出口22から出て行く間にトラフ12を加熱するとともに、熱媒導入口25から回転軸23及び伝熱翼24の中空部を通って熱媒排出口26から出て行く間に伝熱体13を加熱する。熱媒の供給管路の途中には、熱交換器29が介設されている。
【0051】
脱水汚泥乾燥機10においては、伝熱体13の回転速度を制御することにより、脱水汚泥に対する乾燥時間を調整することができる。また、脱水汚泥乾燥機10においては、熱交換器29での熱交換量の制御にて熱媒の温度を調整することにより、脱水汚泥に対する乾燥温度を調整することができる。
【0052】
脱水汚泥乾燥機10における汚泥受入口15の上流側には、脱水汚泥貯留槽31が配設されている。脱水汚泥貯留槽31には、図示されない遠心分離機等の脱水機で予め脱水した脱水汚泥が貯留されている。脱水汚泥貯留槽31は、臭気が漏れないように脱水汚泥保管庫30に保管されている。脱水汚泥貯留槽31には、スクリューフィーダ等よりなるフィーダ32が付設され、フィーダ32と脱水汚泥乾燥機10の汚泥受入口15との間には、脱水汚泥供給ポンプ33が配設されている。そして、脱水汚泥貯留槽31に貯留されている脱水汚泥がフィーダ32によって切り出され、切り出された脱水汚泥が脱水汚泥供給ポンプ33により脱水汚泥乾燥機10の汚泥受入口15へと圧送されるようになっている。
【0053】
脱水汚泥乾燥機10における汚泥排出口16の下流側には、乾燥汚泥が貯留される乾燥汚泥貯留槽35が配設されている。汚泥排出口16と乾燥汚泥貯留槽35との間には、第一乾燥汚泥搬送コンベヤ36が配設されている。乾燥汚泥貯留槽35と焼却炉2におけるホッパ56との間には、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37が配設されている。乾燥汚泥貯留槽35には、スクリューフィーダ等よりなる乾燥汚泥切出装置38が付設されている。こうして、汚泥排出口16から排出された乾燥汚泥は、第一乾燥汚泥搬送コンベヤ36によって乾燥汚泥貯留槽35へと搬送されて貯留され、乾燥汚泥貯留槽35に貯留されている乾燥汚泥は、乾燥汚泥切出装置38によって切り出される。切り出された乾燥汚泥は、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37の投入口37aからホッパ56の上方に位置する排出口37bへと搬送され、排出口37bから排出されてホッパ56内に投入される。
【0054】
<脱水汚泥投入機>
第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37には、脱水汚泥を投入する脱水汚泥投入機100が付設されている。脱水汚泥投入機100は、脱水汚泥を貯留する脱水汚泥貯留槽101と、脱水汚泥貯留槽101に付設されるフィーダ102とを備え、脱水汚泥貯留槽101に貯留されている脱水汚泥がフィーダ102によって切り出されるようになっている。切り出された脱水汚泥は、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37の投入口37aからホッパ56の上方に位置する排出口37bへと搬送され、排出口37bから排出されてホッパ56内に投入される。
【0055】
<第一薬剤供給手段>
焼却炉2の上流側には、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37の内部に薬剤を供給する第一薬剤供給装置110が配設されている。第一薬剤供給装置110は、薬剤を貯留する薬剤タンク111と、薬剤タンク111に付設されるフィーダ112と、フィーダ112と第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37との間に配される薬剤供給管113とを備え、薬剤タンク111に貯留されている薬剤をフィーダ112で送り出し、送り出した薬剤を、薬剤供給管113を介して第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37の内部に供給することができるように構成されている。ここで、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37の内部に供給される薬剤としては、汚泥に含まれるリンと化合物を形成するような塩基物質、例えば、Feイオンを含有する塩基物質(鉄塩)や、Alイオンを含有する塩基物質(アルミニウム塩)、Caイオンを含有する塩基物質(カルシウム塩)等が挙げられる。鉄塩としては、例えば、ポリ塩化第二鉄や硫酸第一鉄等を用いることが望ましい。また、アルミニウム塩としては、例えば、ポリ塩化アルミニウムや塩化アルミニウム等を用いることが望ましく、カルシウム塩としては、水酸化カルシウムや炭酸カルシウム、酸化カルシウム等を用いることが望ましい。
【0056】
<ろ過式集塵機>
ろ過式集塵機6は、ケーシング40の内部に、所要のろ布41が組み込まれてなるものである。なお、ろ過式集塵機6で捕集された飛灰等は、図示されないスクリューコンベヤやロータリーバルブ等を介して順次排出されて飛灰処理設備42へと搬送される。
【0057】
ケーシング40の内部は、ケージプレート43によって上下に仕切られており、ケーシング40の内部には、ケージプレート43の下側にろ過処理前排ガス室44が、ケージプレート43の上側にろ過処理後排ガス室45が、それぞれ区画形成されている。ろ過処理前排ガス室44は、ダクト46を介して減温塔5に接続されている。ろ過処理後排ガス室45は、ダクト47を介して誘引送風機7に接続されている。ケージプレート43には、ろ布41の吊り下げ用の開口部が所要個数設けられており、各開口部からは、ろ布41がろ過処理前排ガス室44内に配されるように吊り下げ支持されている。
【0058】
ろ布41は、円筒状の袋体であり、閉鎖された一端側(下端側)がろ過処理前排ガス室44内に差し込まれる一方で、開放された他端側(上端側)がろ過処理後排ガス室45に臨ませて配され、該ろ布41の内部には、その円筒形状を維持するための骨材(図示省略)が組み込まれている。なお、ろ布41の構成材としては、例えば、ガラス繊維やPTFE繊維からなる二重織、綾織り、平織り等の織布又はフェルトなどが好適に用いられる。なお、ろ布41に代えて、有害物質を分解する触媒をろ布に担持させてなる触媒担持ろ布や、触媒粉末をろ布に付着させてなる触媒プレコートろ布を採用してもよい。
【0059】
ろ過式集塵機6の上流側(入口側)におけるダクト46内の圧力と、ろ過式集塵機6の下流側(出口側)におけるダクト47内の圧力との差圧は、差圧計48によって検出され、この差圧計48の検出信号は後述する制御装置151へと送られる。
【0060】
<第二薬剤供給手段>
ろ過式集塵機6の上流側には、ダクト46の内部に薬剤を供給する第二薬剤供給装置120が配設されている。第二薬剤供給装置120は、薬剤を貯留する薬剤タンク121と、薬剤タンク121に付設されるフィーダ122と、フィーダ122とダクト46との間に配される薬剤供給管123とを備え、薬剤タンク121に貯留されている薬剤をフィーダ122で送り出し、送り出した薬剤を、薬剤供給管123を介してダクト46の内部に供給することができるように構成されている。ここで、ダクト46の内部に供給される薬剤としては、汚泥に含まれるリンと化合物を形成するような塩基物質、例えば、Ca(OH)2(水酸化カルシウム:消石灰)やCaCO3(炭酸カルシウム)、CaO(酸化カルシウム:生石灰)等のカルシウム化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を用いることが望ましい。
【0061】
<払落し装置>
ろ過式集塵機6には、払落し装置130が付設されている。払落し装置130は、エアコンプレッサ131と、このエアコンプレッサ131からの圧縮空気が流通される主供給管132と、主供給管132に介設される減圧弁133と、主供給管132から分岐して各ろ布41のグループへと繋がる分岐供給管134と、分岐供給管134の管路を開閉する開閉弁135と、分岐供給管134の先端側に配される噴射ノズル136とを備え、後述する制御装置151からの開信号を受けて開閉弁135が開かれると、エアコンプレッサ131からの圧縮空気が主供給管132、分岐供給管134及び噴射ノズル136を介してろ布41の内表面側へと噴射され、圧縮空気をろ布41の内周側から外周側へと通過させることでろ布41の外表面側に付着堆積した飛灰等を吹き飛ばすことができるようになっている。なお、ろ布41の内表面側へと噴射される圧縮空気(逆洗空気)の空気圧は、制御装置151からの減圧信号を受ける減圧弁133によって調整される。また、逆洗空気の噴射の間隔は、制御装置151からの開閉信号を受ける開閉弁135によって調整される。
【0062】
図2は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の制御システムの概略構成を示すブロック図である。汚泥焼却設備1は、
図2に示すような制御システム150を備えている。
図2に示す制御システム150は、CPU151aやメモリ151b、I/Oポート151c等を内蔵するマイクロコンピュータを主体に構成される制御装置151と、制御装置151に信号伝達可能に接続される各種機器152とを備えて構成されている。各種機器152としては、電動機27、熱交換器29、フィーダ32、脱水汚泥供給ポンプ33、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37、差圧計48、炉温センサ58、プッシャー駆動装置66、乾燥ストーカ駆動装置75、燃焼ストーカ駆動装置76、後燃焼ストーカ駆動装置77、一次燃焼空気供給に関わる流量調節ダンパ装置85~88、二次燃焼空気供給に関わる流量調節ダンパ装置92、再循環排ガス供給に関わる流量調節ダンパ装置97、フィーダ102,112,122、減圧弁133、開閉弁135等が挙げられる。
【0063】
制御装置151において、メモリ151bには、所定のアルゴリズムに従って作成された所定プログラム等や、燃焼制御等に必要なデータ等が記憶されている。制御装置151においては、メモリ151bに格納されている所定プログラム等や各種データ等をCPU151aが読み込んで所定の処理を実行することにより、
図3の機能ブロック図に示される各種機能部の機能が発揮される。
【0064】
図3は、本発明の一実施形態に係る汚泥焼却設備の制御システムの機能ブロック図である。
図3の機能ブロック図に示される制御装置151の各種機能部としては、差圧・温度計測部160、モータ制御部161、熱交換器制御部162、フィーダ制御部163、コンベヤ制御部164、ポンプ制御部165、プッシャー制御部166、ストーカ制御部167、ダンパ制御部168、弁制御部169及び記憶部170が挙げられる。
【0065】
<差圧情報取得手段>
差圧・温度計測部160は、差圧計48からの検出信号に基づいて、ろ過式集塵機6における排ガスの入口側と出口側との差圧を算出する。さらに、差圧・温度計測部160は、算出した差圧に基づいて、リアルタイムで差圧の上昇率(差圧変化量/時間変化量)を算出する。こうして、差圧計48及び差圧・温度計測部160は、ろ過式集塵機6における排ガスの入口側と出口側との差圧に関する情報を取得することができる。なお、差圧計48及び差圧・温度計測部160を含む構成が、本発明の「差圧情報取得手段」に相当する。また、差圧・温度計測部160は、炉温センサ58からの検出信号に基づいて、炉本体50内の温度を算出する。
【0066】
モータ制御部161は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を電動機27に送信する。これにより、伝熱体13の回転速度が制御されて、脱水汚泥乾燥機10での脱水汚泥に対する乾燥時間を調整することができる。
【0067】
熱交換器制御部162は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を熱交換器29に送信する。これにより、熱交換器29での熱交換量が制御されて、脱水汚泥乾燥機10での脱水汚泥に対する乾燥温度を調整することができる。
【0068】
フィーダ制御部163は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号をフィーダ32,102,112,122に送信する。これにより、脱水汚泥貯留槽31,101に貯留されている脱水汚泥の切出し量や、薬剤タンク111,121に貯留されている薬剤の切出し量が制御され、脱水汚泥乾燥機10への脱水汚泥の供給量や、焼却炉2の上流側への脱水汚泥の供給量、焼却炉2の上流側への薬剤の供給量、ろ過式集塵機6の上流側への薬剤の供給量を調整することができる。
【0069】
コンベヤ制御部164は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37に送信する。これにより、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37による乾燥汚泥の搬送量が制御され、炉本体50への乾燥汚泥の供給量を調整することができる。
【0070】
ポンプ制御部165は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を脱水汚泥供給ポンプ33に送信する。これにより、脱水汚泥供給ポンプ33からの脱水汚泥の送出量が制御され、脱水汚泥乾燥機10への脱水汚泥の供給量を調整することができる。
【0071】
プッシャー制御部166は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号をプッシャー駆動装置66に送信する。これにより、プッシャー65のストローク、作動速度、作動間隔が調節されて、乾燥汚泥の供給量が制御される。
【0072】
ストーカ制御部167は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を乾燥ストーカ駆動装置75、燃焼ストーカ駆動装置76及び後燃焼ストーカ駆動装置77に送信する。これにより、乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73のそれぞれの可動火格子70aが往復動する速度、すなわちストーカ71,72,73による炉本体50内での乾燥汚泥の送り速度が制御される。
【0073】
ダンパ制御部168は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を各流量調節ダンパ装置85~88,92,97に送信する。これにより、一次燃焼空気や二次燃焼空気、再循環排ガスの供給量が制御される。
【0074】
弁制御部169は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧及び差圧の上昇率に基づいて、所定の制御信号を減圧弁133に送信する。これにより、エアコンプレッサ131からの圧縮空気の空気圧が制御され、ろ過式集塵機6におけるろ布41に対する逆洗空気の空気圧を調整することができる。また、弁制御部128は、差圧計48及び差圧・温度計測部160によって算出された差圧に基づいて、所定の制御信号を開閉弁135に送信する。これにより、開閉弁135の弁開閉動作が制御され、ろ過式集塵機6におけるろ布41に対する逆洗空気の噴射の間隔を調整することができる。
【0075】
記憶部170は、CPU151aが所定の演算処理を行う場合に使用するデータ、その他、燃焼制御等に必要なデータ等を保持するストレージとして機能する。
【0076】
<基本的な作動説明>
以上に述べたように構成される
図1に示す汚泥焼却設備1において、脱水汚泥貯留槽31に貯留されている脱水汚泥は、フィーダ32によって切り出され、切り出された脱水汚泥は、脱水汚泥供給ポンプ33により脱水汚泥乾燥機10の汚泥受入口15へと圧送される。汚泥受入口15へと圧送された脱水汚泥は、汚泥受入口15を通してトラフ12の内部に投入される。トラフ12の内部に投入された脱水汚泥は、熱媒によって加熱された伝熱体13の回転により、トラフ12の汚泥排出口16に向かって搬送され、搬送されている間にトラフ12と伝熱体13とによって加熱され、加熱によって乾燥されて乾燥汚泥となる。
【0077】
汚泥排出口16から排出された乾燥汚泥は、第一乾燥汚泥搬送コンベヤ36によって乾燥汚泥貯留槽35へと搬送されて一旦貯留される。乾燥汚泥貯留槽35に貯留されている乾燥汚泥は、乾燥汚泥切出装置38によって切り出され、切り出された乾燥汚泥は、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37によってホッパ56へと搬送される。
【0078】
ホッパ56には、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37からの乾燥汚泥が投入される。ホッパ56に投入された乾燥汚泥は、シュート部56bを介して一次燃焼室51に供給されて燃焼される。
【0079】
図4は、ろ過式集塵機における差圧の経時変化の一例を示すグラフである。
図4のグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は差圧計48からの検出信号に基づいて差圧・温度計測部160により算出されるろ過式集塵機6の入口側と出口側との差圧を示す。
図4のグラフにおける時刻t
1からt
2の間においては、所定のサイクルタイムで実施される払落し装置130によるダストの払落し動作により、差圧が上下動を繰り返しながら、時刻t
1からt
2における差圧全体の上昇率を示す傾きラインL
1に沿って、全体として差圧が徐々に上昇している。このような傾きラインL
1に沿って差圧全体が徐々に上昇するのは、ろ過式集塵機6の運転として正常な状態にある。
【0080】
しかしながら、
図4のグラフにおける時刻t
2からt
3の間においては、所定のサイクルタイムで実施される払落し装置130によるダストの払落し動作により、差圧が上下動を繰り返しながら、時刻t
2からt
3における差圧全体の上昇率を示す傾きラインL
2に沿って、全体として差圧が急激に増大している。このような傾きラインL
2に沿って差圧全体が急激に上昇するのは、ろ過式集塵機6の運転として異常な状態にある。これは、ろ過式集塵機6のろ布41の目詰まりが通常よりも進行している可能性が高い。すなわち、乾燥汚泥に含まれるリンが炉本体50の炉温の上昇(例えば、850~900℃程度から1000℃以上に上昇)によって揮散し、揮散したリンを比較的多く含む排ガスがろ過式集塵機6に導入され、リンの凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機6のろ布41の表面側に付着・成長するため、単に飛灰がろ布41の表面側に付着・成長する場合と比べて、ろ布41の目詰まりが急激に進行していると予測することができる。
【0081】
<差圧情報取得工程>
そこで、差圧計48からの検出信号に基づいて差圧・温度計測部160により差圧を算出するとともに、差圧の上昇率を算出する差圧情報取得工程の実施によって取得された差圧の上昇率が、
図4のグラフにおける傾きラインL
1で示す上昇率に対し、傾きラインL
2で示すように、急激に増大したときには、以下に述べる、炉温制御工程、薬剤供給工程、及びろ布清掃制御工程のうちの一つ、又は二つ以上を組み合わせて実施することにより、ろ過式集塵機6での圧力損失が急激に増大するのを防ぐようにする。
【0082】
<炉温制御工程>
炉温制御工程においては、炉温センサ58からの検出信号に基づいて差圧・温度計測部160により算出される炉本体50内の温度が、NOxの生成を抑制しつつ、飛灰に粘着性を付与するリンが揮発しない所定範囲(例えば、850~900℃)となるように炉温を制御する。炉温を制御する具体例として、以下の具体例(1.1)~(1.8)を挙げることができる。
【0083】
[具体例(1.1)]
フィーダ制御部163は、所定の制御信号をフィーダ32に送信する。また、ポンプ制御部165は、所定の制御信号を脱水汚泥供給ポンプ33に送信する。こうして、脱水汚泥貯留槽31に貯留されている脱水汚泥の切出し量、及び脱水汚泥供給ポンプ33からの脱水汚泥の送出量を制御して、脱水汚泥乾燥機10への脱水汚泥供給量を調整し、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0084】
[具体例(1.2)]
熱交換器制御部162は、所定の制御信号を熱交換器29に送信し、熱交換器29での熱交換量を制御して、脱水汚泥乾燥機10での脱水汚泥に対する乾燥温度を調整する。こうして、乾燥汚泥の含水率を調整し、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0085】
[具体例(1.3)]
モータ制御部161は、所定の制御信号を電動機27に送信し、伝熱体13の回転速度を制御して、脱水汚泥乾燥機10での脱水汚泥に対する乾燥時間を調整する。こうして、乾燥汚泥の含水率を調整し、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0086】
[具体例(1.4)]
コンベヤ制御部164は、所定の制御信号を第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37に送信し、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37による乾燥汚泥の搬送量を制御して、炉本体50への乾燥汚泥の供給量を調整する。こうして、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0087】
[具体例(1.5)]
プッシャー制御部166は、所定の制御信号をプッシャー駆動装置66に送信し、プッシャー65のストローク、作動速度、作動間隔を制御して、乾燥汚泥の供給量を調整する。こうして、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0088】
[具体例(1.6)]
ストーカ制御部167は、所定の制御信号を乾燥ストーカ駆動装置75、燃焼ストーカ駆動装置76及び後燃焼ストーカ駆動装置77に送信し、乾燥ストーカ71、燃焼ストーカ72及び後燃焼ストーカ73のそれぞれの可動火格子70aが往復動する速度、すなわちストーカ71,72,73による炉本体50内での乾燥汚泥の送り速度を制御する。こうして、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0089】
[具体例(1.7)]
ダンパ制御部168は、所定の制御信号を各流量調節ダンパ装置85~88,92,97に送信し、一次燃焼空気や二次燃焼空気、再循環排ガスの供給量を制御する。こうして、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0090】
[具体例(1.8)]
フィーダ制御部163は、所定の制御信号をフィーダ102に送信し、脱水汚泥貯留槽101に貯留されている脱水汚泥の切出し量を制御して、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37を介してホッパ56へと投入される脱水汚泥の投入量を調節する。こうして、焼却炉2において乾燥汚泥と脱水汚泥とを混焼して、焼却炉2での発熱量を調整することで、焼却炉2の炉温が所定範囲となるように制御する。
【0091】
上記のように、炉温制御工程を実施することにより、炉本体50の炉温を、リンの揮発を抑制できる所定範囲(例えば、850~900℃)に制御することができる。これにより、リンが焼却炉2において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機6に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布41の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機6での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0092】
<薬剤供給工程>
薬剤供給工程においては、焼却炉2の上流側、又はろ過式集塵機6の上流側に、リンと化合物を形成する薬剤を供給する。薬剤を供給する具体例として、以下の具体例(2.1)及び(2.2)を挙げることができる。
【0093】
[具体例(2.1)]
フィーダ制御部163は、所定の制御信号をフィーダ112に送信し、薬剤タンク111に貯留されている薬剤の切出し量を制御して、焼却炉2の上流側への薬剤の供給量を調節する。
【0094】
[具体例(2.2)]
フィーダ制御部163は、所定の制御信号をフィーダ122に送信し、薬剤タンク121に貯留されている薬剤の切出し量を制御して、ろ過式集塵機6の上流側への薬剤の供給量を調節する。
【0095】
上記の薬剤供給工程において、焼却炉2の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で乾燥汚泥に含まれることになり、リンが焼却炉2において揮発するのを抑制することができる。従って、ろ過式集塵機6に導入される排ガスに、リンが含まれるのを抑制することができ、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布41の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機6での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。また、上記の薬剤供給工程において、ろ過式集塵機6の上流側に薬剤を供給すれば、リンが薬剤との反応で形成される化合物の形態で排ガスに含まれることになり、排ガス中の飛灰に粘着性を生じさせることがなくなるため、ろ布41の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機6での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0096】
<ろ布清掃制御工程>
ろ布清掃制御工程においては、ろ過式集塵機6におけるろ布41に対する払落し動作を制御する。具体例として、以下の具体例(3.1)及び(3.2)を挙げることができる。
【0097】
[具体例(3.1)]
弁制御部169は、所定の制御信号を減圧弁133に送信し、エアコンプレッサ131からの圧縮空気の空気圧を制御して、ろ過式集塵機6におけるろ布41に対する逆洗空気の空気圧を調整する。
【0098】
[具体例(3.2)]
弁制御部169は、所定の制御信号を開閉弁135に送信し、開閉弁135の弁開閉動作を制御して、ろ過式集塵機6におけるろ布41に対する逆洗空気の噴射の間隔を調整する。
【0099】
上記のろ布清掃制御工程において、ろ過式集塵機におけるろ布に対する逆洗空気の空気圧、及び逆洗空気の噴射の間隔のうちの少なくとも一つを調整することにより、リンの凝縮で粘着性が生じた飛灰同士がろ過式集塵機のろ布の表面側に付着・成長しても、逆洗空気の作用によって払い落とすことができる。従って、粘着性が生じた飛灰に起因して、ろ布の目詰まりが急激に進むのを防ぐことができ、ろ過式集塵機での圧力損失が急激に増大するのを防ぐことができる。
【0100】
以上、本発明の汚泥焼却設備、及び汚泥焼却方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。具体的な別実施形態は以下のとおりである。
【0101】
上記実施形態では、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37に第一薬剤供給装置110を付設する態様例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、脱水汚泥乾燥機10に第一薬剤供給装置110を付設して、脱水汚泥と共に薬剤を脱水汚泥乾燥機10に投入する態様例や、脱水汚泥貯留槽31の上流側における脱水前の汚泥に薬剤を添加できるように第一薬剤供給装置110を配設する態様例もあり得る。また、第一薬剤供給装置110から薬剤をホッパ56に直接供給できるように第一薬剤供給装置110を配設する態様例もあり得る。
【0102】
上記実施形態では、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37に脱水汚泥投入機100を付設する態様例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、脱水汚泥投入機100から脱水汚泥をホッパ56に直接供給できるように脱水汚泥投入機100を配設する態様例もあり得る。
【0103】
上記実施形態では、第二乾燥汚泥搬送コンベヤ37に脱水汚泥投入機100を付設することで脱水汚泥を乾燥汚泥と混合する態様例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、脱水汚泥乾燥機10における汚泥排出口16よりも上流側と、脱水汚泥貯留槽31との間にバイパス管路を設け、脱水汚泥貯留槽31に貯留されている脱水汚泥を、前記バイパス管路を介して脱水汚泥乾燥機10内に直接投入して乾燥汚泥と混合する態様例もあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の汚泥焼却設備、及び汚泥焼却方法は、リンの含有量が比較的多い脱水汚泥や乾燥汚泥を、焼却炉によって焼却処理する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 汚泥焼却設備
2 焼却炉
6 ろ過式集塵機
10 脱水汚泥乾燥機
37 第二乾燥汚泥搬送コンベヤ(乾燥汚泥供給手段)
41 ろ布
48 差圧計(差圧情報取得手段)
51 一次燃焼室
52 二次燃焼室
55 汚泥供給装置(炉温制御手段)
70a 可動火格子(炉温制御手段)
70b 固定火格子(炉温制御手段)
85~88 流量調節ダンパ装置(一次燃焼空気用ダンパ、炉温制御手段)
92 流量調節ダンパ装置(二次次燃焼空気用ダンパ、炉温制御手段)
97 流量調節ダンパ装置(再循環排ガス用ダンパ、炉温制御手段)
100 脱水汚泥投入機
110 第一薬剤供給装置(薬剤供給手段)
120 第二薬剤供給装置(薬剤供給手段)
133 減圧弁(ろ布清掃制御手段)
135 開閉弁(ろ布清掃制御手段)
160 差圧・温度計測部(差圧情報取得手段)
161 モータ制御部(炉温制御手段)
162 熱交換器制御部(炉温制御手段)
163 フィーダ制御部(炉温制御手段、薬剤供給手段)
164 コンベヤ制御部(炉温制御手段)
165 ポンプ制御部(炉温制御手段)
166 プッシャー制御部(炉温制御手段)
167 ストーカ制御部(炉温制御手段)
168 ダンパ制御部(炉温制御手段)
169 弁制御部(ろ布清掃制御手段)