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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/16 20060101AFI20240827BHJP
   B01D 24/26 20060101ALI20240827BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20240827BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D23/10 C
B01D23/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006011
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110537
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡村 知也
(72)【発明者】
【氏名】神座 豊
(72)【発明者】
【氏名】手金 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-192519(JP,A)
【文献】特開平07-289812(JP,A)
【文献】特開2005-000804(JP,A)
【文献】実公昭48-000480(JP,Y1)
【文献】特開2008-012425(JP,A)
【文献】特開2000-070624(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147229(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1615356(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1741449(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
B01D21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に含まれる固形分を沈殿させる沈殿部を有する沈殿池に設けられるろ過装置であって、
深さ方向に延在し、かつ枠状に形成されている壁部によって区分けされた複数の区画、前記複数の区画のそれぞれに設けられ、かつ前記壁部の上部開口空間と連通する複数の連通孔を有する天部及び、前記複数の区画のそれぞれに設けられ、かつ前記沈殿部と連通する複数の連通孔を有する底部、を有するろ過部と、
前記ろ過部の前記複数の区画の前記天部と前記底部との間に所定の空間を設けて流動可能な状態で保持されたろ材層と、
前記壁部の上部開口に隣接して配置され、前記ろ過部から越流した処理水が流入する流出トラフと、ブロア、前記ブロアに接続されたヘッダー管、及び前記ヘッダー管に接続された複数の枝管を有し、かつ複数の前記区画の各々に少なくとも1の前記枝管が配置された曝気部と、
前記ろ過部の前記壁部又は、前記流出トラフに設けられ、前記曝気部によって曝気されることによって生じる洗浄排水を、前記沈殿部又は、前記ろ過部に隣接配置された洗浄排水槽に流出させる流出口と、前記区画の各々から前記流出口までの流下距離に応じて、少なくとも1の前記枝管から噴出される空気の量を調整する調整手段と、
を有することを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記調整手段は、1の前記枝管から噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁を有し、
前記風量調整弁は、少なくとも1の前記枝管に設けられていることを特徴とする請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記枝管は、前記ヘッダー管に接続する第1の枝管と、前記第1の枝管に接続する複数の第2の枝管と、を有し、
前記区画の各々は、少なくとも1の前記第2の枝管が配され、
前記風量調整弁は、複数の前記第1の枝管及び、複数の前記第2枝管のうち、少なくとも1つに設けられていることを特徴とする請求項2記載のろ過装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記曝気部が曝気を開始してからの経過時間に基づいて、1の前記枝管から噴出される空気の量の調整を開始することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記流出トラフは、前記処理水を外部に流出させるための処理水排出ゲートと、前記洗浄排水を前記沈殿部に戻すための洗浄排水排出ゲートとを有し、
前記洗浄排水排出ゲートは、前記流出口を閉塞可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場の最終沈殿池などとして好適に使用し得るろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場などでは、最初沈殿池、生物反応槽及び最終沈殿池を備える水処理システムが用いられている。近年においては、最初沈殿池や最終沈殿池などの沈殿池として、被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿部と、沈殿部で固形分の一部を沈殿させた被処理水をろ過するろ過部とを備える沈殿池を用いることが提案されている。
【0003】
従来の沈殿池では、ろ過部の固液分離性能が低下した際にろ過部のろ過材の洗浄がなされる。下記特許文献1に示されるように、ろ過材の洗浄は、ろ過部の下方に配置された複数の曝気管から空気を供給し、ろ過材を揺動させることによってなされる。
【0004】
ろ過材に付着した固形分の大部分は、洗浄排水とともに浮上して、排出用トラフに流れるので、これを沈殿池に戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3015274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のろ過装置では、ろ過部の下方に配置された複数の曝気管から、ろ過部の全体が均等に散気されるように曝気が行われている。曝気処理がなされた後、ろ過材に付着した固形物の大部分は洗浄排水とともに、排出用トラフに流れる。その際、ろ過部の排出用トラフから離れた部分においては、洗浄排水の排出がスムーズになされず、洗浄不良が生じることがあった。
【0007】
本発明は、ろ過部に充填されたろ材が、ろ過部の全体に亘って偏りなく良好に曝気洗浄されると共に、曝気洗浄の時間の短縮を図ることが可能なろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のろ過装置は、被処理水に含まれる固形分を沈殿させる沈殿部を有する沈殿池に設けられるろ過装置であって、深さ方向に延在し、かつ枠状に形成されている壁部によって区分けされた複数の区画、前記複数の区画のそれぞれに設けられ、かつ前記壁部の上部開口空間と連通する複数の連通孔を有する天部及び、前記複数の区画のそれぞれに設けられ、かつ前記沈殿部と連通する複数の連通孔を有する底部、を有するろ過部と、前記ろ過部の前記複数の区画の前記天部と前記底部との間に所定の空間を設けて流動可能な状態で保持されたろ材層と、前記壁部の上部開口に隣接して配置され、前記ろ過部から越流した処理水が流入する流出トラフと、ブロア、前記ブロアに接続されたヘッダー管、及び前記ヘッダー管に接続された複数の枝管を有し、かつ複数の前記区画の各々に少なくとも1の前記枝管が配置された曝気部と、前記ろ過部の前記壁部又は、前記流出トラフに設けられ、前記曝気部によって曝気されることによって生じる洗浄排水を、前記沈殿部又は、前記ろ過部に隣接配置された洗浄排水槽に流出させる流出口と、前記区画の各々から前記流出口までの流下距離に応じて、少なくとも1の前記枝管から噴出される空気の量を調整する調整手段と、を有する。
【0009】
本発明のろ過装置によれば、調整手段が、区画から流出口までの流下距離に応じて、少なくとも1の枝管から噴出される空気の量を調整することにより、ろ過部で発生する曝気による洗浄排水の水流を流下距離に応じて調整することができる。したがって、例えば、ろ過部の流出口から離れた位置の区画の曝気量を多くすることにより、その区画の洗浄排水を流出させやすくすることができる。その結果、ろ過部の全体の洗浄排水の流出を均一になされるようにすることができる。また、洗浄排水の流出が均一になされることによって、曝気洗浄の時間の短縮を図ることができる。
【0010】
本発明のろ過装置において、前記調整手段は、1の前記枝管から噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁を有し、前記風量調整弁は、少なくとも1の前記枝管に設けられていることが好ましい。
【0011】
このような態様によれば、例えば、洗浄排水を排出する等の調整が必要な場合にのみ空気の量を調整することが可能となる。したがって、ろ過部の洗浄効率を高めることが可能となる。
【0012】
本発明のろ過装置において、前記枝管は、前記ヘッダー管に接続する第1の枝管と、前記第1の枝管に接続する複数の第2の枝管と、を有し、前記区画の各々は、少なくとも1の前記第2の枝管が配され、前記風量調整弁は、複数の前記第1の枝管及び、複数の前記第2枝管のうち、少なくとも1つに設けられていることが好ましい。
【0013】
このような態様によれば、空気の量を調整可能な区画をより細分化することが可能となる。
【0014】
前記調整手段は、前記曝気部が曝気を開始してからの経過時間に基づいて、1の前記枝管から噴出される空気の量の調整を開始することが好ましい。
【0015】
このような態様によれば、曝気部が曝気を開始してろ過材の洗浄がある程度進んだ時点で、曝気量を調整して洗浄排水を流出口から排出させやすくすることにより、ろ過材の洗浄効果を高めることができる。
【0016】
前記流出トラフは、前記処理水を外部に流出させるための処理水排出ゲートと、前記洗浄排水を前記沈殿部に戻すための洗浄排水排出ゲートとを有し、前記洗浄排水排出ゲートは、前記流出口を閉塞可能に形成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態のろ過装置としての沈殿池を示す平面図である。
図2図1に示す沈殿池のII-II線断面図である。
図3図1に示す沈殿池のA-A線断面図であって、通常運転時の状態を示す説明図である。
図4】本発明の第1実施形態における沈殿池の曝気部及び調整手段の構造を示す説明図である。
図5】本発明の第1実施形態における沈殿池の処理水排出ゲートを閉じた状態を示す説明図である。
図6】本発明の第1実施形態における沈殿池のろ過部におけるろ過材の曝気洗浄操作を示す説明図である。
図7】本発明の第1実施形態における沈殿池のろ過部におけるろ過材のリンス洗浄操作を示す説明図である。
図8】本発明の第2実施形態のろ過装置としての沈殿池を示す平面図である。
図9】本発明の第3実施形態のろ過装置としての沈殿池を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1~7には、本発明によるろ過装置の第1実施形態が示されている。図1は、本実施形態のろ過装置としての沈殿池を示す平面図である。図2は、図1に示す沈殿池のII-II線断面図である。図3は、図1に示す沈殿池のA-A線断面図であって、通常運転時の状態を示す説明図である。図4は、同ろ過装置における曝気部及び調整手段の構造を示す説明図である。図5は、同ろ過装置における処理水排出ゲートを閉じた状態を示す説明図である。図6は、同ろ過装置におけるろ過材の洗浄操作を示す説明図である。図7は、同ろ装置におけるろ過材のリンス洗浄操作を示す説明図である。
【0019】
図1図3に示すように、ろ過装置としての沈殿池10は、上流側に位置する沈殿部20を有する。図1及び2に示すように、沈殿部20は、例えば、壁部21及び底部22を有する略直方体状に形成されている。沈殿部20は、上面視において矩形状に形成されている。本実施例においては、被処理水は、沈殿部20の長手方向に沿って、具体的には、図1中の左側から右側に向かって流れる。図3に示すように、底部22は、下流側に向かうにつれて徐々に深さが浅くなるように形成されている。
【0020】
沈殿部20は、特に限定されることなく、被処理水中の固形分を重力沈降により沈降させて被処理水から固形分を分離する横流式沈殿槽である。沈殿部20の底部22には、図示しない固形分排出弁を有する固形分排出配管が設けられている。沈殿部20で沈殿した固形分は、固形分排出配管に設けられた固形分排出弁を、例えば所定の開度で常時開いておく、あるいは所定時間毎に開くことにより、沈殿池10から排出されて処理される。尚、沈殿部20は、固形分の沈降を促進する傾斜板や、底部22に沈殿した固形分を掻き寄せる往復式掻寄機などを備えていてもよい。
【0021】
沈殿池10は、被処理水の下流側(図1の右側)において、沈殿部20に包含されるように配設されたろ過部30を有する。具体的には、ろ過部30は、沈殿部20の下流側を占有するように収容されている。
【0022】
ろ過部30は、深さ方向に延在し、かつ枠状に形成されている壁部31を有する略直方体状に形成されている。
【0023】
図2にも示すように、ろ過部30は、壁部31の上方の開口空間(上部開口空間)と連通するように上方が開口し、かつ沈殿部20と連通するように下方が開口して形成されている。したがって、ろ過部30は、沈殿部20と被処理水が通過可能に連通している。
【0024】
ろ過部30は、壁部31によって画定されている領域が隔壁33によって区分けされた複数の区画34a~34iを有する。隔壁33は、ろ過部30の深さ方向に延在する。本実施形態において、隔壁33は、上面視が格子状に形成されている。なお、複数の区画34a~34iは、それぞれが壁部で囲まれた独立した枠状体で構成され、複数の独立した枠状体を集めて構成されてもよい。本発明における壁部とは、枠状体の外周を囲む壁だけでなく、該壁内を仕切る隔壁をも含めた概念である。
【0025】
ろ過部30の複数の区画34a~34iのそれぞれには、図2,3に示すように、ろ過部30の天部としての上部スクリーンSC1及びろ過部30の底部としての下部スクリーンSC2が設けられている。上部スクリーンSC1及び下部スクリーンSC2の間には、ろ過材36が所定の空間を設けて流動可能な状態で保持され、ろ材層35を構成している。この実施形態の場合、ろ過材36は、浮上性のものからなり、常時は上部スクリーンSC1の下方に堆積した状態で保持されている。
【0026】
上部スクリーンSC1及び下部スクリーンSC2には、その厚さ方向に貫通して形成されている複数の連通孔が設けられている。複数の連通孔は、例えば、パンチングボード状に形成され、通水可能であり、かつろ材層35を構成するろ過材36を通過不能に形成されている。したがって、ろ過部30は、上部スクリーンSC1の連通孔を介して壁部21の上部開口空間と連通している。また、ろ過部30は、下部スクリーンSC2の連通孔を介して沈殿部20と連通している。
【0027】
上部スクリーンSC1は、例えば、壁部31の上下方向の略中間に設けられている。上部スクリーンSC1は、被処理水がろ材層35を下方から上方に通過可能な位置であればよく、その位置は適宜設定することができる。上部スクリーンSC1は、例えば、壁部31の上端より低い位置に設けられることが好ましい。
【0028】
下部スクリーンSC2は、上部スクリーンSC1よりも下方に設けられている。本実施形態において、下部スクリーンSC2は、壁部31の沈殿部20側の一端及び隔壁33の沈殿部20側の一端に設けられている。下部スクリーンSC2は、上部スクリーンSC1の下方に堆積したろ過材36の下方に所定の空間が設けられるように、上部スクリーンSC1の下方に配置されている。なお、下部スクリーンSC2は、壁部31及び隔壁33の下端部よりやや上方に設けてもよい。
【0029】
したがって、ろ過材36は、一対のスクリーンSC1,SC2の間に配置されて保持されており、図3に示すように、通常運転時には、その浮上性によって上部スクリーンC1の下面に堆積し、下部スクリーンC2との間には所定の空間が設けられるようになっている。その結果、曝気洗浄時にろ過材36がろ材層35内で流動できるようになっている。
【0030】
ろ過材36としては、例えば、比重が1.0未満の発泡プラスチック、スポンジ、または繊維状材料などを適宜選択できる。また、ろ過材36は、粒状、筒状、中空孔空き球状、らせん状とすることができる。尚、ろ過材36の大きさは、3~100mm程度とするとよい。
【0031】
図1、2に示すように、沈殿地10は、ろ過部30に隣接して配設されている2つの流出トラフ40を有する。この実施形態の場合、2つの流出トラフ40は、ろ過部30の両側に隣接して(ろ過部30を挟み込むように配され)、沈殿部20の長手方向に沿って配置されている。流出トラフ40は、両側壁と底壁とを有する樋状をなしている。流出トラフ40の底壁の一側は、ろ過部30の壁部31に連結されて、流出トラフ40の側壁の一側はろ過部30の壁部31から更に所定高さ高く延出された壁で構成されている。流出トラフ40の底壁の他側は、沈殿部20の壁部21に連結されて、流出トラフ40の側壁の他側は沈殿部20の壁部21で構成されている。
【0032】
一対の流出トラフ40の下流側には、ろ過部30によって浄化処理がなされた処理水を排出する処理水排出ゲート50が設けられている。図3、5に示すように、一対の処理水排出ゲート50は、アクチュエータA1によって開閉(傾倒)可能に構成されている。
【0033】
したがって、図3に示す通常運転時においては、処理水排出ゲート50が開いており、ろ過部30を通過して浄化処理がなされた処理水は、ろ過部30の上縁を越流して流出トラフ40に流れ込み、流出トラフ40の下流側に配設された一対の処理水排出ゲート50から沈殿池10の外に排出され、図示しない流出路を通して、例えば河川等に放流するための下流側設備に送られる。
【0034】
洗浄排水槽60は、ろ過部30の下流側端部にある壁部31に隣接して設けられている。流出トラフ40の下流側には、後述する曝気部70によって曝気されることによって生じる洗浄排水を洗浄排水槽60に流出させる流出口41が設けられている。尚、流出口41の上端縁は、流出トラフ40の底部よりも高い位置に設けられている。したがって、通常運転時に流出トラフ40に流入した処理水は、洗浄排水槽60には流入せず、開いた状態の処理水排出ゲート50を通って、沈殿池10の外部に流出する。
【0035】
尚、ろ過材36の曝気洗浄時には、洗浄排水槽60に流れ込んだ洗浄排水をポンプ(図示せず)によって吸い上げて沈殿池10又は、それより上流側の流路に戻すように構成されている。したがって、沈殿池10には、常に水が流入し、処理水排出ゲート50が開いている場合には外部に水が流出し、処理水排出ゲート50が閉じている場合には洗浄排水槽60に水が流入するように構成されている。
【0036】
図4は、沈殿池10のろ過部30における洗浄の態様を示している。尚、図中の矢印は洗浄排水の流れを示している。図4に示すように、沈殿池10は、区画34a~34iの各々に曝気することが可能な曝気部70を有する。曝気部70は、ブロア71、ブロア71に接続されたヘッダー管72、ヘッダー管72に接続された3つの第1の枝管73a~73c、第1の枝管73a~73cに接続する複数の第2の枝管74a~74iを有する。区画34a~34iの各々には、少なくとも1の第2の枝管74a~74iが配置されている。尚、上記第2の枝管74a~74iは、ろ材層35内に配設されてもよい。
【0037】
曝気部70は、1の枝管から噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁を有する。風量調整弁は、第1の枝管73a~73c及び第2の枝管74a~74iのうちの少なくとも1つの枝管に設けられている。本実施形態においては、第1の枝管73aから噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁V1、第1の枝管73bから噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁V2、第1の枝管73cから噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁V3、第2の枝管74gから噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁V4、第2の枝管74iから噴出される空気の量を調整可能な風量調整弁V5を有する。
【0038】
曝気部70は、区画34a~34iから流出口41までの流下距離に応じて、少なくとも1の枝管73a~73cら噴出される空気の量を調整する調整手段75を有する。本実施形態において、調整手段75は、風量調整弁V1~V5の各々の開度を独立して調整可能である。調整手段75は、例えば、曝気部70が曝気を開始してからの経過時間に基づいて、1の枝管から噴出される空気の量の調整を開始するとよい。曝気を開始してからの経過時間は、例えば、ろ過材の洗浄に要する時間に設定するとよい。
【0039】
上述の沈殿池10において、例えば、被処理水中の固形物等を除去するには、まず、アクチュエータA1によって、処理水排出ゲート50を開状態とする。
【0040】
被処理水は、図示しない生物反応槽において、SS(suspended solids)濃度が、例えば、1000~10000mg/lの範囲となるように生物処理した後、沈殿池10に導入される。導入された被処理水は、沈殿部20において比較的粗大な固形分を自然沈降させて、底部に堆積させる。これによって、被処理水は、粗大な固形分が除去され、SS濃度が例えば5~30mg/lまで低減される。堆積した固形分は、上述したような図示しない固形分排出弁を介して固形分排出配管から沈殿池10外に排出される。
【0041】
沈殿部20に被処理水が流入し、沈殿部20の水位がろ過部30の水位よりも高くなると、沈殿部20の被処理水がろ過部30に流入し、ろ過部30のろ過材36を上向きに通過して、ろ過材36によって微細な固形分が捕捉されて除去される。そして、ろ過部30の水位が流出トラフ40よりも高くなると、ろ過部30を通過した処理水がろ過部30と流出トラフ40との境界壁を越流して、流出トラフ40に流れ込む。そして、処理水排出ゲート50を通って沈殿池10の外部に流出する。こうして、ろ過部30を通過した処理水を、図示しない流出路を通して、そのまま、又は更に下流の設備で処理して、例えば河川等に放流することができる。
【0042】
このように、沈殿池10において被処理水の浄化操作を行っていると、ろ過部30、特にろ過材36に微細な固形分が付着し、ろ過効率が下がるので、ろ過材36を洗浄する必要がある。
【0043】
図4図6は、沈殿池10のろ過部30におけるろ過材36の洗浄操作を説明する図である。尚、図中の矢印は水の流れ、あるいは空気の流れを示すものである。
【0044】
洗浄操作は、空気洗浄工程及びリンス洗浄工程を含む。洗浄操作は、最初に、空気洗浄工程が行われる。空気洗浄工程は、図5に示すように、アクチュエータA1によって、処理水排出ゲート50を閉じ、ろ過部30から沈殿池10外への水の流出を止めることによって開始される。尚、図5、6中の矢印Wは水の流れを示している。図5に示すように、処理水排出ゲート50が閉じられると、ろ過部30の水面が上昇して、沈殿部20とろ過部30との水位差がなくなる。その状態で通水をストップする。
【0045】
次いで、図6に示すように、沈殿池10に配設されたブロア71からろ過部30のろ過材36に、ろ過部30の下方に設けられた第1の枝管73及び、第2の枝管74を介して空気を送り込んで曝気し、その際に発生した水流でろ過材36が流動し、ろ過材36同士を接触させる第1曝気洗浄が行われる。このとき、ろ過材36が旋回流に乗ってスクリーンSC1及びスクリーンSC2の間で流動するため、ろ材層35がスクリーンSC1及びスクリーンSC2の間の空間に広がることになる。尚、図8中の矢印Bは空気の流れを示している。ろ過材36同士が接触して擦れることによって、ろ過材36に付着していた固形分は剥離して、洗浄排水中に再懸濁する。
【0046】
調整手段75は、曝気部70による曝気が開始されてから所定時間が経過すると、風量調整弁V1~V5の開度を調整して第2曝気洗浄を行う。具体的には、調整手段75は、区画34a~34iから流出口41までの流下距離に応じて、風量調整弁V1~V5の開度を調整する。
【0047】
本実施形態においては、調整手段75は、区画34a~34cにおける風量が、他の区画34d~34iよりも多くなるように調整する。また、調整手段75は、区画34d~34fにおける風量が、他の区画34g~34iよりも多くなるように調整する。
【0048】
具体的には、調整手段75は、風量調整弁V1の開度が他の風量調整弁V2、V3よりも高くなるように調整する。また、調整手段75は、風量調整弁V2の開度が他の風量調整弁V3よりも高くなるように調整する。また、調整手段75は、区画34hに曝気される量が、区画34g、34iよりも多くなるように風量調整弁V4、V5を調整する。
【0049】
一方、ろ過材36の洗浄排水には曝気した際の空気が含まれるために、当該洗浄排水の水面が上昇する。このとき、図4に示すように、ろ過部30の洗浄排水が、流出トラフ40を介して流出口41から洗浄排水槽60に流出する。
【0050】
調整手段75は、ブロア71を一定時間駆動させた後、ブロア71を停止させて、処理水排出ゲート50を閉じたまま、被処理水を沈殿池10に流入させることにより、リンス洗浄を行う。図7に示すように、リンス洗浄中、沈殿池10に流入した被処理水は、ろ過部30を下方から上方に通過して、流出トラフ40を介して流出口41から洗浄排水槽60に流出する。この状態を所定時間継続することにより、ろ過材36が上部スクリーンSC1の下方に堆積して、ろ過層35が通常運転時の状態に戻る。そして、洗浄排水が流通する被処理水によって流し出され、次第に清浄化していく。
【0051】
調整手段75は、ブロア71を停止して一定時間が経過すると処理水排出ゲート50を開にして、前述した被処理水の浄化処理を行う。尚、調整手段75によるブロア71の停止は、図示しない水質センサによって測定された洗浄排水の水質に基づいて行ってもよく、例えば濁度もしくはSS濃度が所定の値以下、または光透過率が所定の値以上となった場合をブロア71の停止タイミングとして設定することができる。
【0052】
以上のように、本発明の濾過装置によれば、調整手段75が、区画34a~34iから流出口41までの流下距離に応じて、少なくとも1の枝管73,74から噴出される空気の量を調整することにより、ろ過部30で発生する曝気による水流を流下距離に応じて調整することができる。したがって、洗浄排水を効率的にろ過部30から排出させることが可能となり、曝気洗浄の時間を短縮することができ、良好な曝気洗浄を行うことができる。
【0053】
さらに、風量調整弁を設ける数及び、風量調整弁を設ける位置は、実施の態様に応じて適宜変更することが可能である。例えば、第1の枝管73a~73cのみに風量調整弁V1~V3を設けるようにしてもよい。この場合、調整手段75は、第2曝気洗浄において、第1の枝管73aに対して曝気される空気の量を第1の枝管73b、73cよりも多くするように調整するとよい。
【0054】
また、第2の枝管74b、74e、74hのみに風量調整弁V1~V3を設けるようにしてもよい。この場合、調整手段75は、第2曝気洗浄において、第2の枝管74b、74e、74hに対して曝気される空気の量を他の第2の枝管74a、74c、74d、74f、74g、74iよりも多くするように調整するとよい。このように、風量調整弁を設けることにより、少ない部品点数で、ろ過部30で発生する曝気による水流を流下距離に応じて調整することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、ろ過部30から流出した洗浄排水を洗浄排水槽60に流入するように沈殿池を構成した。しかし、洗浄排水槽60を設けずに沈殿池を構成してもよい。
【0056】
図8は、第2実施形態に係るろ過装置としての沈殿池を示している。図8に示すように、本実施形態において、流出トラフ40の上流側には、沈殿部20に臨む開口である流出口42が設けられている。
【0057】
流出口42は、洗浄排水排出ゲート52によって閉塞されている。この実施形態の場合、洗浄排水排出ゲート52は、ろ過部30の上流側端部にある壁部31とほぼ同じ位置に設けられている。洗浄排水排出ゲート52は、アクチュエータA2によって開閉(傾倒)可能である。したがって、一対の処理水排出ゲート50を閉じた状態で、一対の洗浄排水排出ゲート52を開くと、図中矢印で示すように、洗浄排水は、流出トラフ40を介して洗浄排水排出ゲート52から沈殿部20に流出する。
【0058】
調整手段75は、区画34a~34iから流出口42までの流下距離に応じて、風量調整弁V1~V5の開度を調整する。本実施形態においては、調整手段75は、区画34g~34iにおける風量が、他の区画34a~34fよりも多くなるように調整する。また、調整手段75は、区画34d~34fにおける風量が、他の区画34a~34cよりも多くなるように調整する。
【0059】
具体的には、調整手段75は、風量調整弁V3の開度が他の風量調整弁V1、V2よりも高くなるように調整する。また、調整手段75は、風量調整弁V2の開度が他の風量調整弁V1よりも高くなるように調整する。また、調整手段75は、区画34hに曝気される量が、区画34g、34iよりも多くなるように風量調整弁V4、V5を調整する。
【0060】
このように沈殿池を構成することにより、部材点数が減少するためコンパクトであり、かつ低廉な沈殿池を提供することが可能となる。
【0061】
尚、流出口42は、流出トラフ40だけでなく、ろ過部30の壁部31に形成されるようにしてもよい。例えば、上流側に位置するろ過部30の壁部31を沈殿部20の深さ方向に移動可能に構成することにより、流出口を形成することができる。このように流出口を構成した場合、上流側に位置するろ過部30の壁部31によって、流出トラフ40の上流側の開口を閉塞する洗浄排水排出ゲート52を構成してもよい。
【0062】
(第3実施形態)
上述の実施形態においては、枝管73、74から噴出される空気の量は、風量調整弁によって調整された。しかし、枝管73、74から噴出される空気の量は、例えば、枝管の太さによって調整してもよい。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0063】
図9は、第3実施形態に係るろ過装置としての沈殿池10を示している。図9に示すように、第2の枝管74hは、他の第2の枝管74a~74g、74iよりも太く形成されている。また、第2の枝管74hには、その風量を調整する風量調整弁V6が設けられている。
【0064】
調整手段75は、ろ過材36を洗浄する洗浄工程(第1曝気洗浄)においては、第2の枝管74hから噴出される風量を、他の第2の枝管74a~74g、74iから噴出される風量と同等に調整する(風量調整弁V6を絞る)とよい。このように風量を調整することで、ろ過部30の洗浄状態を均一にすることができる。
【0065】
調整手段75は、洗浄工程(第1曝気洗浄)が終了した後に(第2曝気洗浄において)、第2の枝管74hから噴出される風量を、他の第2の枝管74a~74g、74iから噴出される風量よりも多くするように調整する(風量調整弁V6を開く)とよい。このように風量を調整することで、区画34hから流出する洗浄排水を効果的に流出口42に導くことが可能となる。
【0066】
尚、第2の枝管74a~74iから噴出される空気の量は、風量調整弁や、第2の枝管の太さの調整に限られず、例えば、第2の枝管74a~74iに設けられる散気孔の数や、散気孔の大きさによって調整してもよい。具体的には、第2の枝管74b、74e、74hの散気孔を他の第2の枝管の散気孔よりも大きくしたり、多く形成してもよい。
【0067】
また、各枝管73,74を流れる風量は、風量調整弁及び枝管の形状(枝管の管径の太さ、散気孔の数、散気孔の大きさ等)を適宜組み合わせて調整してもよい。
【0068】
さらに、本実施形態においては、風量調整弁を設けたが、風量調整弁を設けずに枝管の形状(管径の太さ、散気孔の数、散気孔の大きさ等)のみで枝管73,74を流れる風量を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 沈殿池
20 沈殿部
30 ろ過部
31 壁部
34a~34i 区画
35 ろ材層
37 流出口
40 流出トラフ
41、42 流出口
50 処理水排出ゲート
52 洗浄排水排出ゲート
60 洗浄排水槽
70 曝気部
71 ブロア
72 ヘッダー管
73 第1の枝管
74 第2の枝管
75 調整手段
SC1 上部スクリーン(天部)
SC2 下部スクリーン(底部)
V1~V6 風量調整弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9