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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】スクリーン印刷版用の処理液
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/14 20060101AFI20240827BHJP
   B41N 3/00 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/12 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41C1/14
B41N3/00
G03F7/12
G03F7/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021009461
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2021187151
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020092227
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】大橋 奈実
(72)【発明者】
【氏名】今市 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】冨永 大貴
(72)【発明者】
【氏名】林 大嗣
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165002(JP,A)
【文献】特開2010-201754(JP,A)
【文献】特開昭59-016794(JP,A)
【文献】特開2008-115214(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080121(WO,A1)
【文献】特開2007-190789(JP,A)
【文献】特開平04-276439(JP,A)
【文献】特開平11-263824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/14
B41N 3/00
G03F 7/12
G03F 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、水、界面活性剤A、および、前記界面活性剤Aよりも水に対する溶解度が小さい界面活性剤Bを含む、スクリーン印刷版用処理液。
【請求項2】
前記界面活性剤Aの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g以上であり、前記界面活性剤Bの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g未満である、請求項1記載のスクリーン印刷版用処理液。
【請求項3】
前記界面活性剤Aがアセチレングリコール系界面活性剤である、請求項1又は2に記載のスクリーン印刷版用処理液。
【請求項4】
前記樹脂の最低造膜温度が23℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版用処理液。
【請求項5】
シリカをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版用処理液。
【請求項6】
ポリエーテル変性シリコーン系化合物及び(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のスクリーン印刷版用処理液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スクリーン印刷版用の処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷等の孔版印刷に用いられるスクリーン印刷版は、熱可塑性樹脂フィルムを多孔性支持体に貼り合わせてなる感熱孔版マスターの熱可塑性樹脂フィルムを、サーマルヘッドなどにより選択的に加熱して溶融穿孔させることにより、画像に対応する穿孔部を形成する、感熱製版と呼ばれている方法で、得ることができる。感熱孔版マスターとしては、例えば、多孔性支持体としてスクリーン紗を用いた感熱スクリーンマスター等を用いることができる。
【0003】
感熱スクリーンマスターに用いられる熱可塑性樹脂フィルムには、サーマルヘッドでの穿孔を可能にするため、通常、厚さ1~5μm程度の非常に薄いフィルムが用いられている。フィルムが薄いことにより、多枚数印刷時にフィルムに微小孔(ピンホール)が発生し、印刷物の意図しない場所に微小点が印刷されてしまうことがある。
特許文献1には、製版後のスクリーン印刷版に樹脂溶液を塗布し、未製版部分のみに樹脂溶液を残した後乾燥して樹脂膜を形成することで、フィルムを補強する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-89043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、スクリーン印刷版の耐刷性を向上することができるスクリーン印刷版用処理液を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、樹脂、水、界面活性剤A、および、前記界面活性剤Aよりも水に対する溶解度が小さい界面活性剤Bを含む、スクリーン印刷版用処理液に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、スクリーン印刷版の耐刷性を向上することができる、スクリーン印刷版用処理液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【0009】
実施形態のスクリーン印刷版用処理液(以下、「処理液」という場合もある。)は、樹脂、水、界面活性剤A、および、界面活性剤Aよりも水に対する溶解度が小さい界面活性剤Bを含む、スクリーン印刷版用処理液である。このスクリーン印刷版用処理液は、スクリーン印刷版用補強剤として用いることができる。
【0010】
実施形態のスクリーン印刷版用処理液は、スクリーン印刷版の耐刷性を向上することができる。
【0011】
スクリーン印刷版は、通常、スクリーン紗、接着剤層、及びフィルムがこの順で含まれた積層構造を有している。感熱製版して得られたスクリーン印刷版の補強のために、特許文献1に記載される樹脂を含む液等の補強剤を、スクリーン紗側からスクリーン印刷版に塗布した場合、塗布ムラが発生し、補強剤等が塗布されない部分が発生する場合がある。補強剤が塗布されていない部分は、補強剤が塗布された部分に対して強度が弱く、多枚数印刷時にフィルムに微小孔(ピンホール)が発生しやすい。
【0012】
特定の理論に拘束されるものではないが、補強剤の塗布ムラが発生する原因の1つとして、スクリーン紗の繊維の断面はおおよそ円状であるため、スクリーン紗の繊維同士が接する部分の繊維間に隙間が生じやすく、この隙間に気泡が残ることで、補強剤等が充填されない部分が発生することが考えられる。実施形態の処理液は、水に対する溶解度の異なる2種の界面活性剤を含み、水に対する溶解度が高いほうの界面活性剤Aにより、残存する気泡を処理液の塗布層表面に移動させ、界面活性剤Aよりも水に対する溶解度が低い界面活性剤Bにより処理液の塗布層表面の気泡を除去して、塗布ムラの発生を低減し、均一な塗膜を形成することができると考えられる。このようにして、処理液の塗布ムラの発生を低減することで、スクリーン印刷版の耐刷性を向上させることができ、多枚数印刷時にもピンホールを発生させにくくすることができる。
【0013】
処理液は、樹脂を含むことができる。樹脂としては、例えば、水分散性樹脂、水溶性樹脂またはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0014】
水分散性樹脂は、水分散性を示すことから、水中で水に溶解することなく粒子状に分散して水中油(O/W)型の樹脂エマルションを形成することができる。水分散性樹脂は、処理液中で樹脂粒子として分散状態で含まれることが好ましい。
水分散性樹脂は、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂、ノニオン性樹脂のいずれであってもよい。
水分散性樹脂としては、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。
【0015】
水分散性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。水分散性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、これらの樹脂のうち1種を、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0016】
水分散性樹脂としては、水分散性ウレタン系樹脂、水分散性(メタ)アクリル系樹脂、水分散性塩化ビニル系樹脂またはそれらの組み合わせが好ましい。
【0017】
水分散性ウレタン系樹脂としては、例えば、水分散性ポリエーテル型ウレタン系樹脂、水分散性ポリエステル型ウレタン系樹脂、水分散性ポリカーボネート型ウレタン系樹脂等が挙げられる。
水分散性ウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物を用いることができる。
【0018】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系単位、アクリル系単位、又はこれらの組み合わせを少なくとも含む重合体を意味する。
【0019】
水分散性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の単位を含む重合体であることが好ましい。水分散性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の単位とともに、その他のモノマー由来の単位を含んでもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の単位としては、スチレン単位、酢酸ビニル単位、塩化ビニル単位、エポキシ単位等が挙げられる。これらは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水分散性(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル重合体、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル共重合体、エポキシエステル樹脂、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル重合体、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、又はこれらの組み合わせである。
【0020】
水分散性塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単位を含む重合体であることが好ましい。水分散性塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単位とともに、その他のモノマー由来の単位を含んでもよい。
その他の単位としては、エチレン単位、スチレン単位、(メタ)アクリル系モノマー由来の単位等が挙げられる。これらは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水分散性塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル共重合体、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
水分散性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000~100000が好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーション(GPC)法で、ポリスチレン換算による値である。以下、特に断りのない限り同じである。
【0022】
水分散性樹脂は、処理液中で粒子状となる水中油(O/W)型の樹脂エマルションとして処理液に配合することができ、処理液中で樹脂粒子の状態となることが好ましい。
【0023】
水分散性ウレタン系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス420」(商品名)、DIC株式会社製の「ハイドランAPX101H」(商品名)等が挙げられる。
水分散性(メタ)アクリル系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、DIC株式会社製「ボンコートDV-961」(商品名)等が挙げられる。
水分散性塩化ビニル系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、日信化学工業株式会社製「ビニブラン715S」(商品名)等が挙げられる。
【0024】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらは、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
樹脂は、処理液の塗布性の向上の観点から、最低造膜温度(MFT)が23℃以下であることが好ましい。このMFTとは、樹脂がフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828-2に従って測定することができる。
樹脂のMFTは、20℃以下がより好ましい。
樹脂のMFTは、0℃以上が好ましく、1℃以上がより好ましい。
樹脂のMFTは、例えば、0℃~23℃が好ましく、1℃~20℃がより好ましい。
【0026】
処理液は、樹脂を、1種のみ、または2種以上を組み合わせて含んでよい。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000~100000が好ましい。
【0027】
樹脂の処理液中の量はとくに限定されない。
スクリーン印刷版の補強の観点から、樹脂は、処理液全量に対して、固形分量で、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。一方、樹脂は、処理液全量に対して、固形分量で、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂は、処理液全量に対して、固形分量で、例えば、1~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
処理液は、後述するポリエーテル変性シリコーン系化合物及び(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、シリコーン系化合物Sという場合がある)を含んでよく、そのような化合物として、(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂等の樹脂を含んでもよい。それらの樹脂を含めた樹脂の全量は、例えば、上記の範囲内であってよい。
【0029】
処理液は、水に対する溶解度が互いに異なる2種の界面活性剤を含むことができる。
処理液は、水に対する溶解度が互いに異なる2種の界面活性剤として、界面活性剤A及び界面活性剤Aよりも水に対する溶解度が小さい界面活性剤Bを含むことができる。
【0030】
界面活性剤Aの水に対する溶解度は、界面活性剤Bの水に対する溶解度よりも大きいことが好ましい。
界面活性剤Aは、処理液の塗布性の向上の観点から、水に対する溶解度が、23℃で、1g/100g以上であることが好ましく、2g/100g以上であることがより好ましく、5g/100g以上であることがさらに好ましい。界面活性剤Aは、処理液の塗布性の向上の観点から、水に対する溶解度が、23℃で、20g/100g以下であることが好ましく、15g/100g以下であることがより好ましく、10g/100g以下であることがさらに好ましい。
界面活性剤Aは、例えば、水に対する溶解度が、23℃で、1g/100g~20g/100gであることが好ましく、2g/100g~15g/100gであることがより好ましく、5g/100g~10g/100gであることがさらに好ましい。
【0031】
界面活性剤Bの水に対する溶解度は、界面活性剤Aの水に対する溶解度よりも小さいことが好ましい。
界面活性剤Bは、水に対する溶解度が、23℃で、1g/100g未満であることが好ましく、0.5g/100以下であることがより好ましく、0.1g/100g以下であることがさらに好ましい。界面活性剤Bは、水に対する溶解度が、23℃で、0.01g/100g以上であることが好ましい。
界面活性剤Bは、例えば、水に対する溶解度が、23℃で、0.01g/100g以上1g/100g未満であることが好ましく、0.01g/100g~0.5g/100gであることがより好ましく、0.01g/100g~0.1g/100gであることがさらに好ましい。
【0032】
塗布性の向上の観点から、界面活性剤Aの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g以上であり、かつ、界面活性剤Bの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g未満であることが好ましい。より好ましくは、界面活性剤Aの水に対する溶解度が、23℃で2g/100g以上であり、かつ、界面活性剤Bの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g未満であり、さらに好ましくは、界面活性剤Aの水に対する溶解度が、23℃で2g/100g以上であり、かつ、界面活性剤Bの水に対する溶解度が、23℃で0.5g/100g以下である。
【0033】
界面活性剤AのHLB値は特に限定されないが、5~20であることが好ましい。同様に、界面活性剤BのHLB値は特に限定されないが、5~20であることが好ましい。
界面活性剤A及びBは、それぞれ独立に、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であってもよい。例えば、界面活性剤A及びBは、それぞれ独立にイオン性界面活性剤であってもよく、または、それぞれ独立に非イオン性界面活性剤であってもよいが、特に樹脂として水分散性樹脂を配合する場合は、それぞれ独立に、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤Aおよび/またはBは、それぞれ独立に、これらの界面活性剤から選択してもよい。
【0035】
非イオン性界面活性剤のなかでも、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤は、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグルコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
【0036】
処理液の塗布性の向上の観点から、界面活性剤A及びBの少なくとも一方がアセチレングリコール系界面活性剤であることが好ましく、少なくとも界面活性剤Aがアセチレングリコール系界面活性剤であることがより好ましい。
処理液の塗布性の向上の観点から、界面活性剤Aの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g以上であり、界面活性剤Bの水に対する溶解度が、23℃で1g/100g未満であり、かつ、界面活性剤Aがアセチレングリコール系界面活性剤であることが好ましい。
【0037】
アセチレングリコール系界面活性剤の例としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品の例としては、日信化学工業株式会社製の「オルフィンE1030W」、「オルフィンE1020」、「サーフィノールDF37」、「サーフィノールAD01」(いずれも商品名)等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の市販品の例として、日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL BT-7」、「NIKKOL BT-9」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0038】
界面活性剤Aは、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、界面活性剤Aは、処理液全量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤Aは、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
界面活性剤Bは、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.2質量%以上であることがより好ましい。一方、界面活性剤Bは、処理液全量に対して、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤Bは、処理液全量に対して、例えば、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~1質量%であることがより好ましい。界面活性剤Bは、消泡効果の観点から、水への溶解度量以上の量を処理液中に添加することが好ましい。
【0040】
界面活性剤A及びBの合計量は、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、界面活性剤A及びBの合計量は、処理液全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤A及びBの合計量は、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
界面活性剤A及びBの合計量に対する界面活性剤Bの量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、界面活性剤A及びBの合計量に対する界面活性剤Bの量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤A及びBの合計量に対する界面活性剤Bの量は、例えば、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
処理液に含まれる界面活性剤は、水に対する溶解度が互いに異なる2種の界面活性剤である界面活性剤A及びBのみを含むものであってよく、または、これら2種の界面活性剤に加えて、さらに1種以上の界面活性剤を含んでもよい。水に対する溶解度が互いに異なる2種の界面活性剤以外の界面活性剤は、水に対する溶解度が互いに異なる2種の界面活性剤のいずれとも異なるものであれば特に限定されず、水に対するその溶解度も特に限定されない。
処理液は、後述するシリコーン系化合物Sを含んでよく、そのような化合物として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を含んでよい。処理液は、界面活性剤A及びBを含み、さらに、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を含んでよい。
【0043】
処理液中の界面活性剤の合計量は、処理液全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。一方、処理液中の界面活性剤の合計量は、処理液全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。処理液中の界面活性剤の合計量は、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0044】
処理液は、水を含むことが好ましい。なお、上記した樹脂エマルション等の溶媒として水を含む材料を処理液の作製に用いる場合は、その水は処理液中の水の一部に換算して、処理液を作製する。
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、処理液の貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、処理液全量に対して50質量%~95質量%で含まれることが好ましく、60質量%~90質量%で含まれることがより好ましい。
【0045】
処理液は、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤は、水と相溶性を示すことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0046】
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
これらは、単独で用いてもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
スクリーン印刷版のフィルムの強度をさらに向上させ、耐刷性をさらに向上させる観点から、処理液は、シリカを含むことが好ましい。
【0048】
シリカとしては、特に制限はないが、粉末シリカ、コロイダルシリカ、及び合成非晶質シリカ等をそれぞれ単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0049】
シリカの平均粒子径は10~400nmであることが好ましく、15~300nmであることがより好ましく、25~200nmであることがさらに好ましい。ここで、シリカの平均粒子径は、動的光散乱方式による体積基準の平均粒子径であり、例として、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500により測定することができる。
【0050】
シリカの市販品としては、例えば、日産化学工業株式会社製「スノーテックス30」(商品名)等が挙げられる。
【0051】
処理液中におけるシリカの含有量は、処理液全量に対して、固形分換算で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることより好ましい。一方、処理液中におけるシリカの含有量は、処理液全量に対して、固形分換算で、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。処理液中におけるシリカの含有量は、処理液全量に対して、例えば、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましい。
【0052】
耐刷性向上の観点から、処理液は、ポリエーテル変性シリコーン系化合物及び(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、シリコーン系化合物Sという場合がある)を含むことが好ましい。特定の理論に拘束されるものではないが、シリコーン系化合物Sが処理液に含まれる場合、処理液の表面張力が低下しやすい傾向があり、このため、処理液がスクリーン紗の下にも入り込みやすくなり、残存する気泡の処理液の塗布層表面への移動を促進することができ、耐刷性をさらに向上することができると考えられる。
【0053】
ポリエーテル変性シリコーン系化合物としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、例えば、シリコーンオイルの、例えば末端および/または側鎖に、ポリエーテル基が導入された構造を有するものが好ましい。ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基等のポリアルキレンオキシ基、2種以上のアルキレンオキシ基(例えば、ポリエチレンオキシ基とポリプロピレンオキシ基を含む2種以上)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基等が挙げられる。
【0054】
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品の例としては、日信化学工業株式会社製「シルフェイス SAG002」、「シルフェイス SAG005」、「シルフェイス SAG503A」、「シルフェイス SAG008」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
処理液は、これらのポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0056】
ポリエーテル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、ポリエーテル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。ポリエーテル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル系化合物由来の構造を含むシリコーン系化合物を用いることができる。(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂等が挙げられる。(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー由来の構造とジメチルポリシロキサン等のシリコーン系化合物由来の構造とを含む共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル系モノマーと、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系化合物と、必要に応じて他のモノマー等との共重合体であってよい。(メタ)アクリル系モノマーの例としては、上述の(メタ)アクリル系化合物の例として挙げられたものが挙げられる。(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂としては、水分散性樹脂、水溶性樹脂またはこれらの組み合わせを用いることができる。
(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000~100000が好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製「KP-578」(商品名)等が挙げられる。水分散性(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂の樹脂エマルションの市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シャリーヌE-370」(商品名)等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル変性シリコーン系化合物は、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
【0060】
シリコーン系化合物Sは、処理液全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、シリコーン系化合物Sは、処理液全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。例えば、シリコーン系化合物Sは、処理液全量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
処理液は、必要に応じて、顔料、凍結防止剤、帯電防止剤等の添加剤等をさらに含んでよい。
【0062】
処理液の製造方法は特に限定されない。例えば、各材料を一度に、または分割して混合して製造することができる。
【0063】
処理液は、感熱製版により得られたスクリーン印刷版用として好ましく用いることができる。
スクリーン印刷版としては、特に限定されず、例えば、感熱スクリーンマスターを、感熱製版により製版して得られたものであってよい。
【0064】
感熱スクリーンマスターは、好ましくは、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを含む。
感熱スクリーンマスターは、好ましくは、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムが、接着剤を用いて貼り合わされたものであってよい。感熱スクリーンマスターは、例えば、スクリーン紗と、接着剤を用いて形成された接着剤層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で備えることが好ましい。
【0065】
スクリーン紗としては、サーマルヘッドの加熱によって実質的に穿孔されず、印刷においてインクを通過させることができるものであればよく、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ステンレス、絹、綿等の繊維から作られた紗を用いることができる。
【0066】
スクリーン紗の厚さは、通常40~270μmであり、好ましくは50~150μmである。
スクリーン紗のメッシュ数(1インチあたりの繊維の本数)は、通常40~500であり、好ましくは50~350メッシュである。縦方向と横方向のメッシュ数は、上記メッシュ数の範囲内である限り、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0067】
スクリーン紗が高メッシュになるほど、スクリーン紗側からスクリーン印刷版に補強剤を塗布する際に、スクリーン紗のオープニングの空気と、補強剤等との置換が行われにくくなり、塗布ムラが生じやすくなる傾向がある。
実施形態の処理液は、高メッシュのスクリーン紗が用いられた場合でも、スクリーン紗のオープニングの空気の影響を低減し、塗布ムラを低減することができる。
【0068】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム等を使用することができる。これらのうち、ポリエステル系樹脂フィルムを好ましく使用することができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/エチレンテレフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/ヘキサメチレンテレフタレート共重合体、ヘキサメチレンテレフタレート/1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、エチレンテレフタレート/エチレン-2,6-ナフタレート共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて、顔料、粘度調整剤、分散剤、染色剤、潤滑剤、架橋剤、可塑剤などの各種添加剤を含んでもよい。
【0069】
熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、感熱デジタルスクリーン製版が可能な厚さであればよいが、通常0.5~10μmであり、好ましくは1~5μmである。
【0070】
熱可塑性樹脂フィルムは、感熱デジタルスクリーン製版によって容易に溶融穿孔されるのに適した収縮性を備えることが好ましく、適宜一軸または二軸延伸されたものであってもよい。
【0071】
感熱スクリーンマスターは、例えば、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを、接着剤を用いて接着することを含む方法により製造することができる。
【0072】
接着剤としては、印刷時に必要な耐刷性を満たすように両者を貼り合わせることができるものであれば特に制限されず、例えば、水性タイプ、溶剤タイプ、無溶剤タイプ、ホットメルトタイプ、赤外線、可視光線、紫外線、電子線等の光硬化性タイプ等のものが挙げられる。
【0073】
溶剤タイプの接着剤の具体例としては、酢酸ビニル系、ポリエステル系、(メタ)アクリル系等の樹脂を以下に示す有機溶剤に溶解したもの等があげられる。有機溶剤の具体例としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、アルデヒド系、カルボン酸系、アミン系、低分子複素環化合物系、オキサイド系等が挙げられ、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルホルムアミド、ピリジン、エチレンオキサイド等が挙げられる。また、光硬化タイプの接着剤の具体例としては、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤を主体とするものが挙げられ、より具体的にはポリエステル系(メタ)アクリレート、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、ポリオール系(メタ)アクリレート系光硬化接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は、必要に応じて、帯電防止剤、滑剤、粘着付与剤、充填剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0074】
スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを、接着剤を用いて接着する方法は特に限定されない。例えば、ロールコータ等を用いて接着剤を付与し、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせてもよい。
接着剤を付与する方法はとくに限定されない。接着剤は、例えば、ロールコータ等を用いてスクリーン紗に付与してもよく、また、例えば、溶剤で希釈した接着剤にスクリーン紗を浸漬することでスクリーン紗に付与してもよい。
【0075】
接着剤の付与量は通常0.05~10.0g/mの範囲である。接着強度の観点から、付与量は0.05g/m以上が好ましい。インク通過性や良好な穿孔の観点から、付与量は10.0g/m以下が好ましい。
【0076】
感熱スクリーンマスターの熱可塑性樹脂フィルムの外面(すなわち、スクリーン紗が配置されている側と反対側の面)には、穿孔時のスティック防止のために、離型剤を付与して離型層を設けることができる。離型剤の付与方法は特に限定されないが、ロールコータ、グラビアコータ、リバースコータ、バーコータ等を用いて付与するのが好ましい。離型剤には、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、界面活性剤等を用いることができる。また、離型剤には、帯電防止剤、耐熱剤、酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料など各種添加剤を混合することができる。さらに、離型剤の塗布液には、水への分散性を向上させる目的で、各種添加剤、例えば分散助剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤を添加してもよい。離型層の厚みは、穿孔時の走行性及びサーマルヘッド(TPH)の耐汚染性の点から、0.005μm~0.4μmが好ましく、より好ましくは0.01μm~0.4μmである。
【0077】
離型剤が付与された感熱スクリーンマスターが、製版前にロール状に巻かれた状態で保管されると、熱可塑性樹脂フィルムの外面の離型剤が、熱可塑性樹脂フィルム外面に接するスクリーン紗の表面に付着する場合がある。このように、スクリーン紗表面に離型剤が付着していると、スクリーン印刷版のスクリーン紗側から補強剤等を付与する際に、付与された補強剤等がはじかれて補強剤等の塗布ムラが生じやすくなる。実施形態の処理液は、スクリーン印刷版のスクリーン紗に離型剤が付着している場合であっても、離型剤の影響を抑制し、塗布ムラを低減することができる。
【0078】
感熱スクリーンマスターを感熱製版する方法は、とくに限定されない。感熱スクリーンマスターを、サーマルヘッドを用いた感熱製版装置等で製版して、スクリーン印刷版として使用することができる。
【0079】
実施形態のスクリーン印刷版の処理方法は、上記の処理液で、スクリーン印刷版を処理することを含む、スクリーン印刷版の処理方法である。
処理液、及び、スクリーン印刷版については、それぞれ上述の通りである。
このスクリーン印刷版の処理方法により、スクリーン印刷版の耐刷性を向上させることができる。
【0080】
スクリーン印刷版を処理液で処理する方法はとくに限定されない。
【0081】
処理液は、スクリーン印刷版の、スクリーン紗側の表面に付与することが好ましい。
【0082】
処理液を付与する方法は、とくに限定されないが、処理液は、例えば、スポイトやディスペンサー等を用いてスクリーン印刷版の表面に滴下し、スキージー等で、処理液を付与したい部分に広げることが好ましい。
【0083】
処理液の付与量は、処理液全量として、10g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。処理液の付与量は、処理液全量として100g/m以下が好ましい。処理液の付与量は、例えば、10~100g/mが好ましく、20~100g/mがより好ましい。
【0084】
処理液中の溶剤を除去し、処理液から形成された補強層の強度を確保する観点から、スクリーン印刷版に処理液を付与した後、スクリーン印刷版上の処理液を乾燥させることが好ましい。乾燥方法はとくに限定されず、熱風による乾燥、自然乾燥等、適宜選択することができる。補強層を増強する観点から、熱風による乾燥をすることが好ましい。
【0085】
スクリーン印刷版の処理方法は、その他の工程または操作をさらに含んでよい。
【0086】
実施形態のスクリーン印刷版用処理液を用いて処理されたスクリーン印刷版を用いて孔版印刷を行うことができる。印刷に使用するインクとしては、例えば、スクリーン印刷等の孔版印刷に使用することができるインクを使用することができる。かかるインクは、油性インク、ソルベントインク、水性インク、油中水(W/O)型エマルションインク、水中油(O/W)型エマルションインク、プラスチゾルインクの何れであってもよい。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、塗布性の評価における塗布率(%)を除き、「%」は「質量%」である。表中の各材料の配合量も「質量%」で示す。
【0088】
<処理液の製造>
表1~3に、各実施例及び比較例の処理液の組成を示す。また、表中の樹脂及びシリコーン系化合物Sのうち、樹脂エマルションの配合量は、樹脂エマルションの総量で示す。また、コロイダルシリカ(「スノーテックス30」(SiO 30%))の配合量は、分散体の総量で示す。シリコーン1の配合量は、有効成分以外の成分を含めた総量で示す。表中の樹脂及びシリコーン系化合物Sのうち樹脂エマルションに含まれる溶媒、及びコロイダルシリカに含まれる溶媒は主に水である。
表に記載の材料を混合し、各実施例及び比較例の処理液を得た。
【0089】
表1及び2に記載の材料の詳細を下記に示す。
【0090】
(樹脂)
ウレタン系樹脂エマルション1:第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス420」(水分散性ウレタン系樹脂のエマルション、固形分32%)(MFT20℃)
ウレタン系樹脂エマルション2:DIC株式会社製「ハイドランAPX101H」(水分散性ウレタン系樹脂のエマルション、固形分45%)(MFT18℃)
(メタ)アクリル系樹脂エマルション:DIC株式会社製「ボンコートDV-961」(水分散性(メタ)アクリル系樹脂のエマルション、固形分40%)(MFT15℃)
塩化ビニル系樹脂エマルション:日信化学工業株式会社製「ビニブラン715S」(水分散性塩化ビニル系樹脂のエマルション、固形分24%)(MFT5℃)
【0091】
(界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤1:日信化学工業株式会社製「オルフィンE1020」(有効成分100%、水に対する溶解度:23℃で、10g/100g)
アセチレングリコール系界面活性剤2:日信化学工業株式会社製「サーフィノールDF37」(有効成分100%、水に対する溶解度:23℃で0.05g/100g)
アセチレングリコール系界面活性剤3:日信化学工業株式会社製「サーフィノールAD01」(有効成分100%、水に対する溶解度:23℃で0.06g/100g)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤1:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL BT-7」(有効成分100%、水に対する溶解度:23℃で10g/100g)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤2:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL BT-9」(有効成分100%、水に対する溶解度:23℃で10g/100g)
【0092】
(シリカ)
コロイダルシリカ:日産化学工業株式会社製「スノーテックス30」(SiO 30%)
【0093】
(シリコーン系化合物S)
シリコーン1:日信化学工業株式会社製「シャリーヌE-370」(水分散性(メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂のエマルション)、固形分55%)
シリコーン2:信越化学工業株式会社製「KP-578」((メタ)アクリル変性シリコーン系樹脂、固形分100%)
シリコーン3:日信化学工業株式会社製「シルフェイスSAG008」(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤:有効成分95%)
【0094】
<評価>
(塗布性)
感熱スクリーンマスター(理想科学工業株式会社製「RISOデジタルスクリーンマスターQS120P-113-50」)を、製版せずに、スクリーン印刷版として用いた。スクリーン印刷版のスクリーン紗側の表面に、各実施例、比較例の処理液を、付与面積20mm×100mm、付与量50g/mで付与した。具体的には、処理液をスクリーン印刷版のスクリーン紗側の表面に滴下し、滴下した処理液を、スキージーを用いてスクリーン印刷版の表面上で広げた。その後、付与された処理液に1分間ドライヤーで熱風をあてて乾燥させた。
その後、このスクリーン印刷版の処理液が付与された部分を顕微鏡で観察し、スクリーン紗の繊維に囲まれた1つのオープニングを1マスとしたとき、オープニング48マス(6マス×8マス)のなかで、処理液が塗布されているマスの数をカウントし、下記の式により塗布率(%)を求めた。得られた塗布率(%)を下記の評価基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
塗布率(%)=(処理液が塗布されているマスの数/48)×100
得られた塗布率(%)を下記の評価基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
【0095】
評価基準
A:塗布率100%
B:塗布率95%以上100%未満
C:塗布率90%以上95%未満
D:塗布率90%未満
【0096】
(耐刷性)
感熱スクリーンマスター(理想科学工業株式会社製「RISOデジタルスクリーンマスターQS120P-113-50」)を、製版せずに、スクリーン印刷版として用いた。スクリーン印刷版のスクリーン紗側の表面に、各実施例、比較例の処理液を、付与面積300mm×200mm、付与量50g/mで付与した。具体的には、処理液をスクリーン印刷版のスクリーン紗側の表面に滴下し、滴下した処理液を、スキージーを用いてスクリーン印刷版の表面上で広げた。その後、付与された処理液に1分間ドライヤーで熱風をあてて乾燥させた。
その後、このスクリーン印刷版を、寸法550mm×600mmのアルミ枠に張力11N/cmで枠張りした。次に、この版枠をスクリーン自動印刷機(ニューロング精密工業株式会社製「LS-34GX」)にセットし、印刷台には印刷媒体として綿布(綿100%、エビハラ製)をセットした。版上にプラスチゾルインク(WILFLEX社製「MP 19000 BLACK」(黒))を投入し、スキージー角度70°、スキージー圧力0.30MPa、スキージー背圧0.10MPa、クリアランス3mm、スキージー押し込み量0mm、スクレーパー押し込み量0mmの印刷条件にて連続印刷を行った。
連続印刷を2000回行い、2000回目に得られた印刷物に発生したインクの黒点(ピンホール)の数をカウントし、これをピンホールの数とした。カウントしたピンホール数を下記評価基準で評価した。結果を表に示す。
【0097】
評価基準
AA:ピンホール0個
A:ピンホール1個
B:ピンホール2~5個
C:ピンホール6~9個
D:ピンホール10個以上
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
表に示すように、実施例1~14では、塗布性の評価及び耐刷性の評価のいずれにおいても優れた結果を示した。
【0102】
これに対して、界面活性剤を含まない比較例1、界面活性剤を1種のみ含む比較例2及び3は、いずれも、実施例に比べ塗布性及び耐刷性に劣っていた。