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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/00 20170101AFI20240827BHJP
【FI】
E05F5/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021009782
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113495
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-029980(JP,A)
【文献】特開2018-071192(JP,A)
【文献】特開平07-317426(JP,A)
【文献】実公昭47-019300(JP,Y1)
【文献】実公平01-033740(JP,Y2)
【文献】実開昭56-133085(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2023481(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00
E06B 3/42 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子を移動可能に支持するレール部が下枠に設けられた建具であって、
前記下枠には、前記障子に当接することによって前記障子の移動を制限するストッパ部材が設けられ、
前記ストッパ部材は、前記レール部よりも一方側に配設される第1当接部と、前記レール部よりも他方側に配設される第2当接部と、これら第1当接部及び第2当接部を連結する連結部とを有し、
前記レール部には、上方に開口するように切欠部が設けられ、
前記連結部は、前記切欠部においてのみ前記第1当接部及び前記第2当接部の間を連結するように設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記下枠は、両端部にそれぞれ縦枠を備えて枠体を構成するものであり、
前記切欠部は、前記縦枠のそれぞれとの間に前記レール部を残すように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記下枠は、両端部にそれぞれ縦枠を備えて枠体を構成するものであり、
前記縦枠の少なくとの一方は、内周側となる見込み面に別体の縦枠カバー部材が取り付けられるものであり、
前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記縦枠カバー部材の端面に対向する位置まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記連結部には、前記障子が当接する側の端面に前記レール部の通過が可能となる通過溝部が開口するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記レール部は、上縁部に板厚の大きな膨出部を有し、
前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくとも一方には、前記膨出部の下方部分に係合する係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、より詳細には下枠に障子の移動を制限するストッパ部材が設けられた建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引き違い窓のように下枠のレール部に沿って障子が移動可能に配設された建具には、下枠の端部にストッパ部材が配設され、障子をストッパ部材に当接させることで障子の移動を制限するようにしたものがある。こうした建具によれば、障子が全開する以前にストッパ部材に当接させることで、縦框が縦枠に衝突したり、縦框に設けたクレセントが縦枠に衝突したりする事態を未然に防止することができる等の利点がある。この種のストッパ部材としては、レール部よりも室外側に配設される第1当接部と、レール部よりも室内側に配設される第2当接部と、これら第1当接部及び第2当接部を連結する連結部とを有したものが用いられ、連結部がレール部の上面を覆うように下枠に配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-294030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストッパ部材には、障子が繰り返し当接するため、十分な板厚を確保することにより、早期に損傷を来す事態を防止することが好ましい。このため、ストッパ部材を取り付けた下枠にあっては、レール部の上端から連結部の板厚分だけストッパ部材が突出することとなり、例えば建具をバリアフリー化する際の妨げとなる等の問題を招来するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、レール部からの突出寸法を増大させることなくストッパ部材に所望の強度を確保することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、障子を移動可能に支持するレール部が下枠に設けられた建具であって、前記下枠には、前記障子に当接することによって前記障子の移動を制限するストッパ部材が設けられ、前記ストッパ部材は、前記レール部よりも一方側に配設される第1当接部と、前記レール部よりも他方側に配設される第2当接部と、これら第1当接部及び第2当接部を連結する連結部とを有し、前記レール部には、上方に開口するように切欠部が設けられ、前記連結部は、前記切欠部においてのみ前記第1当接部及び前記第2当接部の間を連結するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連結部がレール部の上方を通過しないため、レール部からの突出寸法を増大させることなく切欠部において十分に板厚を確保することができるようになり、障子が繰り返し当接した場合にも早期に損傷を来すおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た図である。
図2図1に示した建具の縦断面図である。
図3図1に示した建具において図2とは異なる部分で破断した縦断面図ある。
図4図1に示した建具の横断面図である。
図5図1に示した建具の要部を室内側から見たもので、(a)は斜視図、(b)はスペーサ部材を省略した斜視図である。
図6図1に示した建具の要部を示すもので、(a)図4におけるX-X線拡大断面図、(b)は図4におけるY-Y線拡大断面図である。
図7図1に示した建具に適用する下枠の斜視図である。
図8図6に示した下枠にストッパ部材を取り付けた状態を示すもので、(a)は斜視図、(b)は破断斜視図である。
図9図1に示した建具に適用するストッパ部材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)におけるZ-Z線断面図である。
図10図1に示した建具においてレール部に設けた切欠部とストッパ部材の連結部との関係を室内側から見た要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1図4は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10に対して室外側の外障子20A及び室内側の内障子20Bをそれぞれ左右方向に移動可能に配設した引き違い窓と称されるものである。枠体10において外障子20Aよりもさらに室外側となる部分には、網戸20Cが左右方向に沿って移動可能に配設してある。外障子20Aは、四角形状を成す面材21Aの四周に上框22A、下框23A及び左右の縦框24A,25Aを装着することによって構成したものである。内障子20Bは、四角形状を成す面材21Bの四周に上框22B、下框23B及び左右の縦框24B,25Bを装着することによって構成したものである。図示の例では、室内側から見た場合、左側に外障子20Aを配置し、かつ右側に内障子20Bを配置することによって枠体10を閉じることが可能となるように建具が構成してある。
【0011】
室内側から見て外障子20Aの右側に位置する縦框(以下、外召し合わせ框24Aともいう)及び内障子20Bの左側に位置する縦框(以下、内召し合わせ框24Bともいう)は、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形したものである。外召し合わせ框24Aには、クレセント受け26Aが設けてあり、内召し合わせ框24Bにおいてクレセント受け26Aに対応する部分にはクレセント26Bが設けてある。クレセント26Bをクレセント受け26Aに係合させた場合には、枠体10に対して外障子20A及び内障子20Bを閉じた状態に維持することが可能である。内召し合わせ框24Bにおいて室内に露出される表面には、樹脂材からなる縦框カバー部材27が装着してある。外障子20Aの上框22A、下框23A、室内側から見て左側に位置する縦框25A及び内障子20Bの上框22B、下框23B、室内側から見て右側に位置する縦框25Bは、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した室外側の金属框部分31と、樹脂によって成形した室内側の樹脂框部分32とを有し、金属框部分31及び樹脂框部分32の間に面材21A,21Bを挟持するように構成してある。
【0012】
一方、枠体10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成したものである。左右の縦枠13,14は、アルミニウム合金等の金属の押し出し形材によって一体に成形したものである。左右の縦枠13,14の内周側に位置する見込み面には、外障子20A及び内障子20Bを閉じた場合に室内に露出される部分を覆うように樹脂製の縦枠カバー部材41,42が装着してある。これに対して上枠11及び下枠12は、アルミニウム合金等の金属の押し出し形材によって構成した室外側部分43及び室内側部分44を有し、これら室外側部分43及び室内側部分44の間を断熱材45によって連結することにより構成してある。上枠11の室外側部分43及び下枠12の室外側部分43には、それぞれ外障子20Aを移動可能に支持する外方レール部45Aが設けてあり、上枠11の室内側部分44及び下枠12の室内側部分44には、それぞれ内障子20Bを移動可能に支持する内方レール部(レール部)45Bが設けてある。以下、下枠12の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分の説明を行う。
【0013】
下枠12の室内側部分44は、内方基板部44a、内方レール部45B、内方見付け板部44bを一体に成形したものである。内方基板部44aは、室内側から室外側に向けて漸次低くなるように延在した薄板状を成すものである。内方基板部44aの上面において見込み方向のほぼ中央となる部分には、後述する内方下枠カバー部材51の見込み方向に沿った移動を制限するための突条44cが全長にわたって形成してある。内方基板部44aの室外側となる縁部には、下方に向けて内方断熱材充填部44dが設けてある。内方断熱材充填部44dは、室外側部分43との間を連結する断熱材45が充填されるものである。内方基板部44aの下面において見込み方向のほぼ中央となる部分には、縦枠13,14との間を連結する際に取付ネジ(図示せず)が螺合されるビスホール44eが設けてある。内方レール部45Bは、内方基板部44aの室外側となる縁部から上方に向けて突出した薄板状を成すものである。内方レール部45Bの上縁部には、板厚の大きな膨出部44fが室内側に向けて突出するように設けてある。内方見付け板部44bは、内方基板部44aの室内側となる縁部から上下方向に突出したものである。内方見付け板部44bの上縁部には、室内側に向けてほぼ直角に屈曲して延在するように見込み板部44gが設けてある。内方見付け板部44bの上方への突出高さは、内方レール部45Bの突出高さとほぼ等しくなるように構成してある。
【0014】
図からも明らかなように、室内側から見て左側に位置する縦枠(以下、左右の縦枠を区別する場合に、この縦枠を左縦枠(一方の縦枠)13といい、室内側から見て右側に位置する縦枠を右縦枠(他方の縦枠)14という)に装着する縦枠カバー部材41は、下端部が長手に直交して延在するように直線状に構成してあり、下端面がこれら内方レール部45B及び内方見付け板部44bの上端に当接している。
【0015】
下枠12の室外側部分43は、外方基板部43a、外方レール部45A、外方支持板部43bを一体に成形したものである。外方基板部43aは、室内側から室外側に向けて漸次低くなるように延在した薄板状を成すものである。外方基板部43aの室内側となる縁部には、下方に向けて外方断熱材充填部43cが設けてある。外方断熱材充填部43cは、室内側部分44に設けた内方断熱材充填部44dとの間に断熱材45が充填されるものである。図からも明らかなように、本実施の形態では、外方基板部43a及び外方断熱材充填部43cが下方横板部43d及び外方縦板部43eとともに、略四角状の中空部を構成するように室外側部分43が構成してある。外方基板部43aの下面においてわずかに室外側に片寄った部分には、ビスホール43fが設けてある。外方レール部45Aは、外方基板部43aの上面においてビスホール43fに対応する位置から上方に向けて突出した薄板状を成すもので、内方レール部45Bとほぼ同じ突出高さとなるように構成してある。外方レール部45Aの上縁部には、内方レール部45Bと同様、板厚の大きな膨出部43gが室内側に向けて突出するように設けてある。外方支持板部43bは、外方基板部43aの室外側となる縁部から室外に向けてほぼ水平に突出した後、上方に向けてほぼ直角に屈曲して延在するものである。外方支持板部43bの突出高さは、外方レール部45Aの突出高さよりも小さくなるように構成してある。
【0016】
上述の構成を有する下枠12には、内方下枠カバー部材51、外方下枠カバー部材52、網戸レール構成部材53が装着してある。内方下枠カバー部材51は、内方基板部44aの上面において内方レール部45Bと内方見付け板部44bとの間に配設することにより、内方レール部45Bと内方見付け板部44bとの間の開口幅を狭めるためのものである。この内方下枠カバー部材51は、内方基板部44aの上面に配置した場合に内方レール部45Bとほぼ同じ突出高さとなるように構成してある。内方下枠カバー部材51と内方レール部45Bとの間には、内障子20Bを移動させることのできる隙間が確保してある。外方下枠カバー部材52は、外方基板部43aの上面において外方レール部45Aよりも室内側となる部分に配設することにより、内方レール部45Bと外方レール部45Aとの間の開口幅を狭めるためのものである。この外方下枠カバー部材52は、外方基板部43aの上面に配置した場合に外方レール部45Aとほぼ同じ突出高さとなるように構成してある。外方下枠カバー部材52と内方レール部45Bとの間及び外方下枠カバー部材52と外方レール部45Aとの間には、それぞれ外障子20Aを移動させることのできる隙間が確保してある。網戸レール構成部材53は、室外側部分43において外方レール部45Aと外方支持板部43bとの間に配設することにより、外方レール部45Aと外方支持板部43bとの間の隙間を狭めるとともに、下枠12に網戸用レール部53aを設けるためのものである。網戸レール構成部材53と外方レール部45Aとの間には、それぞれ外障子20Aを移動させることのできる隙間が確保してある。図には明示していないが、内方下枠カバー部材51及び外方下枠カバー部材52の長手に沿った寸法は、後述するストッパ部材60を下枠12の上面に配設することができるように左右の縦枠13,14の相互間よりも短く設定してある。網戸レール構成部材53の長手に沿った寸法は、内方下枠カバー部材51及び外方下枠カバー部材52より大きく、左右の縦枠13,14の相互間に隙間無く配設することができるように設定してある。
【0017】
さらに、下枠12には、図5図10に示すように、内方レール部45Bにおいて室内側から見て左側に位置する端部に切欠部46が設けてあるとともに、この切欠部46を覆うように下枠12の上面にストッパ部材60が設けてある。
【0018】
切欠部46は、左縦枠13との間に内方レール部45Bが一部残るように、左縦枠13から離隔した部分に設けたもので、内方レール部45Bの上方に開口するとともに、内方レール部45B及び内方見付け板部44bの間の空間と、内方レール部45B及び外方レール部45Aの間の空間とを互いに連通するように見込み方向に沿って内方レール部45Bを貫通している。本実施の形態では、室内側から見た場合に右側に位置する内方レール部45Bの右縁部46a及び左側に位置する内方レール部45Bの左縁部46bがそれぞれ上下方向に沿って互いに平行となるように、長方形状の切欠部46が内方レール部45Bに形成してある。切欠部46の右側に位置する内方レール部45Bの右縁部46aは、左縦枠13に装着した縦枠カバー部材41までの距離がクレセント26Bの突出寸法よりも大きくなる位置に設けてある。
【0019】
ストッパ部材60は、内障子20Bを室内側から見て左側に移動させた場合に内召し合わせ框24Bに当接することにより、枠体10に対する内障子20Bの移動を制限するものである。本実施の形態では、第1当接部61と第2当接部62と連結部63とを一体に成形した樹脂製のストッパ部材60を適用している。
【0020】
第1当接部61は、内方レール部45Bよりも室内側において内方見付け板部44bとの間の空間に配設されるものである。第2当接部62は、内方レール部45Bよりも室外側において外方レール部45Aとの間の空間に配設されるものである。これら第1当接部61及び第2当接部62は、下枠12の長手に沿った寸法が互いに等しい。第1当接部61及び第2当接部62の長手方向に沿った寸法は、内方レール部45Bの右縁部46aから左縦枠13までの距離よりもわずかに小さい寸法に設定してある。第1当接部61及び第2当接部62の上下に沿った寸法は、左縦枠13に近接する一端部よりも他端部が大きくなるように構成してある。具体的に説明すると、第1当接部61及び第2当接部62の一端部は、ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合、それぞれの最上端位置が内方レール部45Bの上端位置とほぼ同じとなるように上下に沿った寸法が設定してある。ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合とは、図6に示すように、第1当接部61の下面が内方基板部44aの上面に設けた突条44cに当接し、かつ第2当接部62の下面が外方基板部43aの上面に当接した状態である。第1当接部61及び第2当接部62の他端部は、ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合、それぞれの最上端位置が内方レール部45Bの上端位置と同一、もしくは内方レール部45Bの上端位置よりもわずかに突出するように上下に沿った寸法が設定してある。
【0021】
連結部63は、第1当接部61の他端部と第2当接部62の他端部との間を連結するものである。図7図9では、便宜的にドットを施すことによって連結部63を明示している。この連結部63は、ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合に内方レール部45Bの切欠部46に挿通可能となるように、下枠12の長手に沿った寸法及び上下に沿った寸法が、それぞれ設定してある。この連結部63には、内方レール部45Bの右縁部46aに対向する端面、換言すれば内障子20Bが当接する側の端面に通過溝部63aが設けてある。通過溝部63aは、内方レール部45Bの右縁部46aに対向する端面及び連結部63の下面に開口する縦長の切欠であり、見込み方向に沿った寸法が内方レール部45Bを通過させることのできる大きさに形成してある。通過溝部63aの上下に沿った寸法は、ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合に内方レール部45Bよりもわずかに低く設定してある。従って、ストッパ部材60の一方の端部を下枠12の上面に当接させたまま他方の端部を上方に持ち上げた場合には、通過溝部63aに内方レール部45Bを通過させることが可能である。
【0022】
またストッパ部材60には、係合部61aが設けてある。係合部61aは、第1当接部61において連結部63よりも左縦枠13に近接した部分の上縁部に設けたもので、第2当接部62に向けて突出している。この係合部61aは、ストッパ部材60を下枠12の上面に配置した場合に内方レール部45Bの膨出部43gに対して下方側から当接することにより、第1当接部61の上方への移動を制限するように機能するものである。本実施の形態では、連結部63に近接した部分及び左縦枠13に近接した部分にそれぞれ互いに離隔して2つの係合部61aが設けてある。
【0023】
上記のように構成した建具では、下枠12の上面にストッパ部材60を配置すると、左縦枠13に装着した縦枠カバー部材41の見込み面からクレセント26Bの突出寸法よりも大きな寸法を確保した位置にストッパ部材60の端面が配置された状態となる。従って、内障子20Bを左縦枠13に向けて勢い良く移動させた場合にも、クレセント26Bが左縦枠13に衝突する以前に内召し合わせ框24Bがストッパ部材60に当接することによって以降の移動が阻止されることになり、クレセント26Bが左縦枠13に衝突する事態を防止することができる。
【0024】
しかも、ストッパ部材60の第1当接部61と第2当接部62との間を連結する連結部63は、内方レール部45Bに設けた切欠部46のみを通過しているため、連結部63が内方レール部45Bの上方に重なることがない。従って、内方レール部45Bからの突出寸法を増大させることなく、切欠部46において連結部63に十分な板厚を確保して強度を向上させることができるようになり、内障子20Bが繰り返し当接した場合にもストッパ部材60に早期に損傷を来すおそれがなくなる。加えて、下枠12からストッパ部材60が突出する事態を防止することができ、下枠12の上面を凹凸の少ない平坦状に構成することが容易になる等、建具をバリアフリー化し易くなる。
【0025】
さらに、切欠部46よりも左縦枠13に近接する部分に内方レール部45Bを一部残すようにしているため、内障子20Bが当接することによってストッパ部材60に加えられる衝撃力は、左縁部46bを介して内方レール部45Bに伝達されることになり、左縦枠13に直接伝達されるおそれがない。これにより、左縦枠13から下枠12のビスホール44e,43fに螺合した取付ネジ(図示せず)が緩んで互いの間に隙間が生じるような事態を招来するおそれがなくなる。
【0026】
また、ストッパ部材60の一端部が縦枠カバー部材41の下端面に対向する位置まで延在しているため、縦枠カバー部材41の下端面を単純に直接状に形成しても下枠12との間に隙間が生じることがなくなり、縦枠カバー部材41に煩雑な加工を要することなく外観品質の向上を図ることができる。
【0027】
しかも、ストッパ部材60において内方レール部45Bに対向する端面に通過溝部63aを設けているため、ストッパ部材60の一端部に対向する縦枠カバー部材41が左縦枠13に取り付けられた状態のままでも下枠12に対してストッパ部材60を着脱することが可能である。すなわち、ストッパ部材60の一端部を下枠12に当接させた状態のまま他端部を上方に持ち上げて傾斜姿勢とした場合にも、内方レール部45Bが通過溝部63aを通過することでストッパ部材60が内方レール部45Bに干渉することがない。従って、ストッパ部材60を傾斜姿勢とすることで縦枠カバー部材41の端面に対向する部分に対してストッパ部材60の一端部を出し入れさせることが可能となる。これにより、左縦枠13から縦枠カバー部材41を取り外すことなくストッパ部材60の着脱作業が可能となり、ストッパ部材60を交換する場合の作業を容易化することができる等の利点がある。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、引き違い窓を例示しているが、下枠のレール部に沿って障子が移動するものであれば、必ずしも引き違い窓である必要はなく、例えば片引き窓の下枠にも適用することが可能である。また、室内側から見て右側が内障子となるように構成した引き違い窓を例示しているが、左側が内障子となるものであっても構わない。さらに、下枠として室外側部分及び室内側部分の間を断熱材によって連結したものを例示しているが、必ずしも下枠が断熱材を備えている必要はない。
【0029】
また、上述した実施の形態では、内方レール部、内方見付け板部、外方レール部をほぼ同じ高さに構成するとともに、下枠の上面に内方下枠カバー部材、外方下枠カバー部材、網戸レール構成部材を装着するようにしているが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
さらに、上述した実施の形態では、一方の縦枠(左縦枠13)との間にもレール部を残すように切欠部を設けているが、レール部に切欠部を設ける場合に必ずしも両側の縦枠との間にレール部を残す必要はない。さらに、一方の縦枠としては必ずしも縦枠カバー部材を備えている必要もなく、この場合にはストッパ部材に通過溝部を設ける必要もない。またさらに、ストッパ部材は必ずしも係合部を有している必要はない。
【0031】
以上のように、本発明に係る建具は、障子を移動可能に支持するレール部が下枠に設けられた建具であって、前記下枠には、前記障子に当接することによって前記障子の移動を制限するストッパ部材が設けられ、前記ストッパ部材は、前記レール部よりも一方側に配設される第1当接部と、前記レール部よりも他方側に配設される第2当接部と、これら第1当接部及び第2当接部を連結する連結部とを有し、前記レール部には、上方に開口するように切欠部が設けられ、前記連結部は、前記切欠部においてのみ前記第1当接部及び前記第2当接部の間を連結するように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、連結部がレール部の上方を通過しないため、レール部からの突出寸法を増大させることなく切欠部において十分に板厚を確保することができるようになり、障子が繰り返し当接した場合にも早期に損傷を来すおそれがなくなる。
【0032】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠は、両端部にそれぞれ縦枠を備えて枠体を構成するものであり、前記切欠部は、前記縦枠のそれぞれとの間に前記レール部を残すように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、障子が当接した際にストッパ部材に加えられる衝撃力が縦枠との間に残ったレール部において受け止めることができるため、縦枠と下枠との連結状態に影響を与えるおそれがなくなる。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠は、両端部にそれぞれ縦枠を備えて枠体を構成するものであり、前記縦枠の少なくとも一方は、内周側となる見込み面に別体の縦枠カバー部材が取り付けられるものであり、前記第1当接部及び前記第2当接部は、前記縦枠カバー部材の端面に対向する位置まで延在していることを特徴としている。
この発明によれば、縦枠カバー部材の端面に対向する部分においてレール部よりも一方側となる部分及びレール部よりも他方側となる部分がストッパ部材の第1当接部及び第2当接部によって覆われることになる。従って、縦枠カバー部材の端面を直線状に構成した場合にも、下枠との間に隙間が生じる事態を防止することができるようになる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記連結部には、前記障子が当接する側の端面に前記レール部の通過が可能となる通過溝部が開口するように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ストッパ部材をほぼ水平となるように下枠の上面に配置した状態から、他方の縦枠に近接する部分のみが上方となるように傾斜した姿勢まで変更する際に通過溝部が逃げとなるため、レール部に干渉することがない。従って、予め一方の縦枠に縦枠カバー部材が装着された状態であっても下枠に対してストッパ部材を着脱することが可能となる。
【0035】
また本発明は、上述した建具において、前記レール部は、上縁部に板厚の大きな膨出部を有し、前記第1当接部及び前記第2当接部の少なくとも一方には、前記膨出部の下方部分に係合する係合部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ストッパ部材に障子が当接した場合に第1当接部及び第2当接部が下枠から浮き上がる事態を防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 枠体、12 下枠、13 左縦枠、14 右縦枠、20B 内障子、41 縦枠カバー部材、44f 膨出部、45B 内方レール部、46 切欠部、60 ストッパ部材、61 第1当接部、61a 係合部、62 第2当接部、63 連結部、63a 通過溝部
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