(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】車両用内装部材及びハンドル
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20240827BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20240827BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20240827BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60R21/203
B60R13/00
F16B5/06 Q
(21)【出願番号】P 2021038130
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健志
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-226345(JP,A)
【文献】特開2005-145329(JP,A)
【文献】特開平06-191354(JP,A)
【文献】特開2006-281952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0315306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 21/203
B60R 13/00
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付凹部を有する部材本体部と、
この部材本体部の少なくとも前記取付凹部を覆って配置される表皮部材と、
この表皮部材上から前記部材本体部の前記取付凹部に取り付けられる装飾部材と、を備え、
前記表皮部材は、前記装飾部材の前記取付凹部への取り付け状態での前記表皮部材の延伸を補助する切込部を有
し、
前記切込部は、前記取付凹部の開口縁形状に対して内側にオフセットされた形状に沿って配置されている
ことを特徴とする車両用内装部材
。
【請求項2】
切込部は、二列配置されている
ことを特徴とする請求項
1記載の車両用内装部材。
【請求項3】
切込部は、千鳥状に二列配置されている
ことを特徴とする請求項1
または2記載の車両用内装部材。
【請求項4】
切込部は、一方の列が取付凹部の底部に対向して位置し、他方の列が前記取付凹部の側壁部に対向して位置する
ことを特徴とする請求項
2または
3記載の車両用内装部材。
【請求項5】
ハンドル本体と、
請求項1ないし
4いずれか一記載の車両用内装部材を有し、前記ハンドル本体に取り付けられたモジュールと、
を備えることを特徴とするハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材本体部を覆う表皮部材上から取り付けられる装飾部材を有する車両用内装部材及びこれを備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両用のハンドルであるステアリングホイールに取り付けられるエアバッグ装置などのモジュールに、エンブレム体を有するカバー体を用いるものがある。このようなカバー体において、エンブレム体は、カバー本体部の表面に形成された取付凹部に嵌合されるように取り付けられる。そのため、カバー本体部の表面を皮革などの表皮部材で覆う構成とする場合、エンブレム体を安定的に取り付けるためには、取付凹部の底部の周縁部と側壁部とのエッジ部分から表皮部材が浮き上がらないようにすることが望まれる。例えば、表皮部材を真空引きしてカバー本体部の表面に貼り付けることで、取付凹部のエッジ部に対して表皮体を密着させ、その状態でエンブレム体を取付凹部に取り付けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-145329号公報 (第7頁、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両用内装部材では、真空引きのための大掛かりな装置が必要であり、製造コストの高騰が懸念される。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、装飾部材を安定的に取り付け可能で安価に製造でき、かつ、装飾部材のデザインの自由度を向上できる車両用内装部材及びこれを備えたハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用内装部材は、取付凹部を有する部材本体部と、この部材本体部の少なくとも前記取付凹部を覆って配置される表皮部材と、この表皮部材上から前記部材本体部の前記取付凹部に取り付けられる装飾部材と、を備え、前記表皮部材は、前記装飾部材の前記取付凹部への取り付け状態での前記表皮部材の延伸を補助する切込部を有し、前記切込部は、前記取付凹部の開口縁形状に対して内側にオフセットされた形状に沿って配置されているものである。
【0007】
請求項2記載の車両用内装部材は、請求項1記載の車両用内装部材において、切込部は、二列配置されているものである。
【0008】
請求項3記載の車両用内装部材は、請求項1または2記載の車両用内装部材において、切込部は、千鳥状に二列配置されているものである。
【0009】
請求項4記載の車両用内装部材は、請求項2または3記載の車両用内装部材において、切込部は、一方の列が取付凹部の底部に対向して位置し、他方の列が前記取付凹部の側壁部に対向して位置するものである。
【0010】
請求項5記載のハンドルは、ハンドル本体と、請求項1ないし4いずれか一記載の車両用内装部材を有し、前記ハンドル本体に取り付けられたモジュールと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の車両用内装部材によれば、部材本体部を覆うように表皮部材を部材本体部に取り付ける際に切込部が開いて表皮部材のテンションを逃がし、表皮部材を取付凹部の内面に追従させて取り付けできるので、表皮部材がテンションによって取付凹部から剥がれて浮き上がることを抑制でき、装飾部材を取付凹部に安定的に取り付けできる。しかも、表皮部材に切込部を形成するだけであるから、安価に製造できる。さらに、切込部によって、取付凹部を深く設定しても表皮部材を追従させることができるので、厚みがあるデザインの装飾部材を設定でき、デザインの自由度も向上する。また、切込部を取付凹部の内部で取付凹部の形状に沿わせて開かせることができるので、取付凹部の内面に対して表皮部材をより確実に追従させることができる。
【0012】
請求項2記載の車両用内装部材によれば、請求項1記載の車両用内装部材の効果に加えて、切込部によって表皮部材の延伸をより効果的に補助でき、切込部が開くことにより取付凹部の内面に対して表皮部材をより精度よく追従させることができる。
【0013】
請求項3記載の車両用内装部材によれば、請求項1または2記載の車両用内装部材の効果に加えて、一方の列の切込部の開きを他方の列の切込部の開きが妨げにくく、切込部が開く幅を大きく取ることができ、取付凹部の内面に対して表皮部材をより精度よく追従させることができる。
【0014】
請求項4記載の車両用内装部材によれば、請求項2または3記載の車両用内装部材の効果に加えて、取付凹部の底部と側壁部とのそれぞれに対して表皮部材をより精度よく追従させることができる。
【0015】
請求項5記載のハンドルによれば、安価で見栄えが良好なハンドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態の車両用内装部材を示し、(a)はその一部の斜視図、(b)は断面図である。
【
図4】同上車両用内装部材を備えるハンドルの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図4において、10は車両である自動車用のハンドル(ステアリングハンドル)としてのステアリングホイールである。ステアリングホイール10は、ハンドル本体としてのステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるモジュール12と、を備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面側とし、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
【0019】
ステアリングホイール本体11は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部14と、リム部14の内側に位置するボス部15と、これらリム部14とボス部15とを連結する複数のスポーク部16と、から構成されている。スポーク部16は、本実施の形態において、三本のものを図示するが、三本には限定されない。
【0020】
また、ボス部15の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、ボスに芯体を構成するボスプレートが一体的に固着されている。そして、ボスプレートから、スポーク部16の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、スポーク部16の芯金に、リム部14の芯金が溶接などにより固着されている。リム部14の芯金とスポーク部16の芯金との一部が、合成樹脂製などの被覆部により被覆されている。
【0021】
一方、モジュール12は、本実施の形態において衝撃吸収装置である。また、モジュール12は、好ましくはエアバッグ装置である。モジュール12は、ステアリングホイール本体11のボス部15の正面側を覆うように配置される。モジュール12は、本実施の形態において、被取付部材としてのベースプレート、緩衝体などを備えるとともに、
図1ないし
図3に示す車両用内装部材であるカバー体20を備えている。モジュール12がエアバッグ装置である場合、緩衝体は袋状のエアバッグであり、このエアバッグを膨張展開させるためのインフレータがモジュール12にさらに備えられる。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体11(
図4)に取り付けられ、ベースプレートに、緩衝体及びカバー体20が取り付けられている。
【0022】
カバー体20は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれるものである。カバー体20は、例えば部材本体部であるカバー本体部22を備え、カバー本体部22の表面が表皮部材23により覆われるとともに、カバー本体部22に装飾部材であるエンブレム24が取り付けられて構成されている。
【0023】
カバー本体部22は、例えば合成樹脂により形成されている。カバー本体部22は、ボス部15及びスポーク部16(
図4)の一部を覆う被覆部としての表板部27と、表板部27の背面(裏面)から正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部28とを備えている。周板部28には、ベースプレートとカバー体20とを係合するためのカバー体係合部などが形成されていてもよい。そして、表板部27と周板部28とに囲まれた部分が、緩衝体、本実施の形態では折り畳まれたエアバッグを収納する収納部となり、この収納部の正面側に臨む部分が運転席の乗員に対向する装飾部材取付部である正面板部30となる。
【0024】
表板部27には、正面板部30に位置して、エンブレム24が取り付けられる取付凹部32が形成されている。取付凹部32は、エンブレム24の外形に即した形状に形成されている。取付凹部32は、底部32aと、底部32aの外縁から立ち上がる側壁部32bと、を有し、正面側に開口されて配置されている。本実施の形態において、側壁部32bは、底部32aから急峻に立ち上がっており、取付凹部32は、底部32aと側壁部32bとが連なる部分がエッジ状となっている。また、本実施の形態において、取付凹部32は、左右方向に長手状に形成されている。図示される例では、取付凹部32は、左右方向に長軸を有する楕円形状となっている。また、取付凹部32は、正面板部30において、左右方向の中央部にて上側寄りの位置に配置されている。
【0025】
また、取付凹部32の底部32aには、エンブレム24を係止するための穴部34が開口されている。穴部34は、正面板部30を前後方向に貫通して形成されている。穴部34は、エンブレム24を上下左右にバランスよく固定できれば、その形状などに応じて単数、または複数など適宜設定できる。本実施の形態において、穴部34は、例えば三つ形成されている。穴部34は、上下左右に対称または略対称に配置されている。
【0026】
さらに、本実施の形態において、表板部27には、収納部に臨み、テアライン37が形成され、テアライン37の開裂によりエアバッグの展開時に表皮部材23の一部とともに複数の扉部が形成される。テアライン37は、予定線部あるいは破断予定部となどとも呼び得るもので、正面板部30の背面(裏面)側に溝状に形成され、正面板部30の他の部分より脆弱な弱部となっている。テアライン37は、設定したい扉部の形状及び枚数に応じて、エンブレム24(取付凹部32)を避ける位置に任意に設定される。図示される例では、テアライン37は、表板部27(正面板部30)の両側に位置する側部テアライン37a,37aと、これら側部テアライン37a,37aを連結する連結テアライン37bと、が設定されている。側部テアライン37aは、上下方向に延びて端末部が湾曲状に折り返されている。また、連結テアライン37bは、左右方向に延び、取付凹部32の下部の位置で取付凹部32に沿って湾曲している。すなわち、本実施の形態において、テアライン37は、正面から見てH字状に形成されている。
【0027】
表皮部材23は、カバー本体部22の表板部27を覆い、カバー体20の意匠面を構成する。表皮部材23は、天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されている。表皮部材23は、カバー本体部22の表板部27に対し、接着剤などにより固定される。表皮部材23は、正面板部30を覆う表皮部材本体部40と、表皮部材本体部40の両側部に位置する側縁部41と、を一体的に備える。表皮部材本体部40の両側部に沿って、側縁部41が上下方向に帯状に位置する。また、表皮部材23には、ステッチ部42が配置されている。ステッチ部42は、見栄えを向上する装飾部である。ステッチ部42は、表皮部材本体部40と側縁部41とが連なる位置の近傍に配置されている。本実施の形態において、ステッチ部42は、表皮部材本体部40の両側部近傍に、この側部に沿って配置されている。ステッチ部42は、表皮部材本体部40と側縁部41とを連結する連結部の機能を有していてもよいし、単なる装飾部であってもよい。
【0028】
表皮部材本体部40は、カバー本体部22の表板部27の過半部分を覆う主体部である。表皮部材本体部40は、カバー本体部22の取付凹部32を覆う位置に配置される。表皮部材本体部40には、カバー本体部22の穴部34に対応する位置に穴部44が形成されている。穴部44は、表皮部材本体部40を厚み方向に貫通して形成されている。穴部44は、穴部34のそれぞれに対応する箇所に形成されている。穴部44は、穴部34と位置合わせされることで、表皮部材23とカバー本体部22とを位置合わせする機能を有する。穴部44には、エンブレム24の一部が挿入される。
【0029】
また、表皮部材本体部40には、切込部46が形成されている。切込部46は、エンブレム24の取付凹部32への取付時の表皮部材23の延伸を補助する延伸補助部である。切込部46は、スリット状、及び/または、穴状に形成されている。つまり、切込部46は、スリットのみ、あるいは、穴部のみで形成されていてもよいし、スリットと穴部との併用により形成されていてもよい。
【0030】
切込部46は、取付凹部32の開口縁形状に対して内側にオフセットされた形状に沿って配置されている。すなわち、切込部46は、取付凹部32に対応する位置、すなわち取付凹部32に収容される位置に形成されている。本実施の形態において、取付凹部32は、左右方向を長軸とする楕円形状に形成されているため、切込部46は、この取付凹部32の開口縁形状である楕円形状と同心状の楕円上に間欠的に配置されている。つまり、切込部46は、仮想的な楕円上に、非切込部47と交互に配置されている。図示される例では、切込部46は、取付凹部32の開口縁形状(楕円)に沿ってスリット状となっている。
【0031】
さらに、切込部46は、複数列配置されている。
図1(a)に示す例では、切込部46は、仮想的な同心形状に沿って二列配置されている。つまり、切込部46には、内側に位置する第一切込部列48と、その外側に位置する第二切込部列49と、が設定されている。本実施の形態において、切込部46は、千鳥状に二列配置されている。すなわち、第一切込部列48の各切込部46の中心部と第二切込部列49の各切込部46の中心部とは、切込部46の配置の周回方向(楕円の円周方向)に互いに交互にずれて配置されている。つまり、第一切込部列48の各切込部46の中心部の外側には第二切込部列49の各切込部46の中間の非切込部47が位置し、第二切込部列49の各切込部46の中心部の内側には、第一切込部列48の各切込部46の中間の非切込部47が位置する。
【0032】
また、
図3に示すように、表皮部材本体部40には、テアライン37に対応する位置に、表皮部材テアライン51が形成され、表皮部材テアライン51の開裂によりエアバッグの展開時にカバー本体部22と一体的に複数の扉部をなす。表皮部材テアライン51は、予定線部あるいは破断予定部となどとも呼び得るもので、表皮部材23(表皮部材本体部40)の背面(裏面)側に溝状に形成され、表皮部材23の他の部分より脆弱な弱部となっている。図示される例では、表皮部材テアライン51は、両側に位置する側部表皮部材テアライン51a,51aと、これら側部表皮部材テアライン51a,51aを連結する連結表皮部材テアライン51bと、が設定されている。側部表皮部材テアライン51aは、上下方向に延びて端末部が湾曲状に折り返されている。また、連結表皮部材テアライン51bは、左右方向に延び、切込部46の第二切込部列49の下部の位置に沿って湾曲している。すなわち、本実施の形態において、表皮部材テアライン51は、テアライン37と同様に、正面から見てH字状に形成されている。
【0033】
また、
図1(b)及び
図3に示すエンブレム24は、オーナメントなどとも呼ばれるものである。エンブレム24は、意匠部55と、係止部56と、を一体的に備えている。なお、本実施の形態において、エンブレム24は、1ピース構造となっているが、これに限らず、複数ピースから構成されていてもよい。また、エンブレム24は、カバー本体部22に直接取り付けられてもよいし、別部材を用いて、例えばカバー本体部22の表板部27(正面板部30)をエンブレム24と別部材とで前後方向に挟むように取り付けられてもよい。
【0034】
意匠部55は、エンブレム24の意匠部分を構成する。意匠部55は、正面板部30の反エアバッグ側である正面側に取り付けられる。意匠部55は、外形が取付凹部32の開口縁形状に沿った形状に形成されている。本実施の形態において、意匠部55は、取付凹部32に嵌合され、底部32aとの間で表皮部材23を前後に挟み込むようになっている。意匠部55は、所定の厚みを有する板状に形成されている。本実施の形態において、意匠部55は、左右方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【0035】
係止部56は、ピンとも呼ばれる部分である。係止部56は、意匠部55の背面側に突設され、エンブレム24をカバー本体部22に取り付けた状態で穴部34,44に挿入される。本実施の形態において、係止部56の先端部は、拡大されて形成された拡大部58となっており、当該拡大部58が穴部34の背面側にてカバー本体部22の背面側に係止されることでエンブレム24が抜け止めされる。なお、係止部56の本数及び配置は、意匠部55のデザインに応じて、意匠部55を上下左右にバランスよく支持できれば、その形状などに応じて適宜設定してよい。
【0036】
そして、カバー体20の製造の際には、カバー本体部22、表皮部材23、及びエンブレム24を予め形成しておき、これらを組み付ける。カバー本体部22、及びエンブレム24は、それぞれ合成樹脂などにより射出成形する。また、表皮部材23は、表皮部材本体部40と側縁部41とを成形しステッチ部42を予め形成する。表皮部材23には、表皮部材テアライン51、穴部44、及び、切込部46を、同一のカット工程で形成する。
【0037】
次いで、この表皮部材23をカバー本体部22の表板部27の表面を覆ってカバー本体部22に接着剤などを用いて貼り付ける。このとき、表皮部材23の穴部44をカバー本体部22の穴部34と位置合わせして貼り付けることにより、表皮部材23がカバー本体部22と位置合わせされ、テアライン37と表皮部材テアライン51とが位置ずれすることなく重ねられる。また、表皮部材23は、カバー本体部22の取付凹部32の位置で取付凹部32の側壁部32b及び底部32aに沿って延伸させて押し付けることで、切込部46が短冊状に開いて延伸の反力として生じるテンションを分散させ、取付凹部32に馴染んだ凹形状に固定される。この状態で、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、切込部46の一方の列である第一切込部列48が取付凹部32の底部32aに対向して位置し、切込部46の他方の列である第二切込部列49が取付凹部32の側壁部32bに対向して位置する。
【0038】
その後、エンブレム24の係止部56を穴部34,44に挿入して拡大部58によりエンブレム24をカバー本体部22に係止し、表板部27の正面板部30の取付凹部32に意匠部55が嵌合した状態でエンブレム24がカバー本体部22に強固に固定される。
【0039】
そして、完成したカバー体20をモジュール12に組み付け、このモジュール12をステアリングホイール本体11に組み付けて、必要に応じてモジュール12を制御装置やホーン装置などと結線し、ステアリングホイール10を完成する。
【0040】
本実施の形態では、カバー体20を備えたモジュール12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、エアバッグにガスを供給する。すると、エアバッグが急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力でカバー本体部22の表板部27及び表皮部材23をテアライン37及び表皮部材テアライン51に沿ってエンブレム24を迂回した位置で破断して扉部を形成する。テアライン37と表皮部材テアライン51とが位置合わせされているので、扉部を安定的に展開させることができる。そして、この扉部がヒンジ部を軸として回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口を形成し、この突出口からエアバッグが乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
【0041】
このように、一実施の形態によれば、表皮部材23の取付凹部32への取り付け状態での表皮部材23の延伸を補助する切込部46を表皮部材23に形成することで、カバー本体部22を覆うように表皮部材23をカバー本体部22に取り付ける際に切込部46が開いて表皮部材23のテンションを逃がし、表皮部材23を取付凹部32の内面すなわち底部32a及び側壁部32bに追従させて取り付けできるので、表皮部材23がテンションによって取付凹部32から剥がれて浮き上がることを抑制できる。そのため、エンブレム24を取付凹部32に取り付ける際に、表皮部材23がエンブレム24を押し上げることがなく、エンブレム24を取付凹部32に安定的に取り付けできるとともに、取付凹部32とエンブレム24との合わせも向上し、見栄えがよくなる。しかも、このカバー体20は、表皮部材23に切込部46を形成するだけであるから、安価に製造できる。特に、切込部46は、エンブレム24とカバー本体部22との間に挟み込まれる表皮部材23に必須として形成される穴部44と同一工程で形成できるので、追加の製造工程や大掛かりな設備が不要で、表皮部材23を安価に製造できる。
【0042】
切込部46を、取付凹部32の開口縁形状に対して内側にオフセットされた形状に沿って配置することで、切込部46を取付凹部32の内部で取付凹部32の形状に沿わせて開かせることができるので、取付凹部32の内面すなわち底部32a及び側壁部32bに対して表皮部材23をより確実に追従させることができる。さらに、切込部46は、表皮部材23にて取付凹部32に収容される位置に形成されるため、取付凹部32にエンブレム24を取り付けた状態で切込部46がエンブレム24により覆われ、外部に露出することがないので、切込部46によって見栄えを低下させることがない。
【0043】
また、切込部46を二列配置することで、切込部46によって表皮部材23の延伸をより効果的に補助でき、切込部46が開くことにより取付凹部32の内面すなわち底部32a及び側壁部32bに対して表皮部材23をより精度よく追従させることができる。
【0044】
特に、切込部46を千鳥状に二列配置することで、一方の列の切込部46の開きを他方の列の切込部46の開きが妨げにくく、切込部46が開く幅を大きく取ることができ、取付凹部32の内面すなわち底部32a及び側壁部32bに対して表皮部材23をより精度よく追従させることができる。
【0045】
そして、切込部46の一方の列が取付凹部32の底部32aに対向して位置し、他方の列が取付凹部32の側壁部32bに対向して位置するので、取付凹部32の底部32aと側壁部32bとのそれぞれに対して表皮部材23をより精度よく追従させることができる。
【0046】
このように、切込部46によって、取付凹部32を深く設定しても表皮部材23を追従させることができるので、厚みがあるデザインのエンブレム24を設定でき、デザインの自由度も向上する。
【0047】
また、カバー体20を、ステアリングホイール本体11に取り付けられるモジュール12のカバー体とすることで、安価で見栄えが良好なステアリングホイール10を提供できる。
【0048】
さらに、カバー本体部22の取付凹部32に対応する位置にて表皮部材23を全面カットした場合、カバー本体部22と表皮部材23との位置合わせが困難になるのに対し、本実施の形態では、切込部46を形成しているに過ぎないため、取付凹部32に形成される穴部34と位置合わせ可能な穴部44を形成できる。したがって、カバー本体部22と表皮部材23とを精度よく位置合わせできるので、特に、モジュール12がエアバッグ装置である場合には、カバー本体部22のテアライン37と表皮部材23の表皮部材テアライン51とのずれが生じにくく、エアバッグの展開時にこれらテアライン37,51からカバー体20を確実に破断させることができる。しかも、エアバッグの膨張展開時にカバー本体部22が表皮部材23及びエンブレム24とともに展開する際、表皮部材23のテンションがエンブレム24に加わりにくいので、より安定的に展開させることができる。
【0049】
なお、上記一実施の形態において、エンブレム24の形状は、楕円形状以外でも、円形や非円形など、任意の形状としてよい。
【0050】
また、モジュール12は、エアバッグを備えない構成としてもよい。例えば、エアバッグに代えて、緩衝体として、EA体などの衝撃吸収体を用いてもよい。
【0051】
さらに、カバー体20は、モジュール12のカバー体に限らず、任意の車両用内装部材として用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば、自動車のハンドル(ステアリングホイール)に用いられるモジュールとしてのエアバッグ装置のカバー体に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 ハンドルとしてのステアリングホイール
11 ハンドル本体としてのステアリングホイール本体
12 モジュール
20 車両用内装部材であるカバー体
22 部材本体部であるカバー本体部
23 表皮部材
24 装飾部材であるエンブレム
32 取付凹部
32a 底部
32b 側壁部
46 切込部