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特許7544632管渠損傷特定装置、管渠損傷特定方法および管渠損傷特定プログラム
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  • 特許-管渠損傷特定装置、管渠損傷特定方法および管渠損傷特定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】管渠損傷特定装置、管渠損傷特定方法および管渠損傷特定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240827BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021041889
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141533
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】394026714
【氏名又は名称】株式会社ジャスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩下 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】角田 賢明
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 勇樹
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138755(JP,A)
【文献】特表2004-509321(JP,A)
【文献】特開2000-331168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G01N 21/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得部と、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成部と、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を作業員が特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成部と、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成部と、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付部と、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成部と、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定部と、
を備えた管渠損傷特定装置。
【請求項2】
前記第1底部展開平面画像から、前記第1底部展開平面画像の上端部分および下端部分を除去する除去部をさらに有する請求項1に記載の管渠損傷特定装置。
【請求項3】
前記第1管渠および前記第2管渠は、下水管である請求項1または2に記載の管渠損傷特定装置。
【請求項4】
前記モデル生成部は、水増しデータとして、左右反転画像を用いて前記学習済みジョイント特定モデルを生成する請求項1~3のいずれか1項に記載の管渠損傷特定装置。
【請求項5】
前記モデル生成部は、転移学習を用いて前記学習済みモデルを生成する請求項1~4のいずれか1項に記載の管渠損傷特定装置。
【請求項6】
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成ステップと、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を作業員が特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成ステップと、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成ステップと、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付ステップと、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成ステップと、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定ステップと、
を含む管渠損傷特定方法。
【請求項7】
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で
切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成ステップと、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を作業員が特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成ステップと、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成ステップと、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付ステップと、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成ステップと、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定ステップと、
をコンピュータに実行させる管渠損傷特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管渠損傷特定装置、管渠損傷特定方法および管渠損傷特定プログラムに関し、特に、コンピュータに組み込まれた画像解析プログラムおよび人工知能による特定結果から管渠の損傷を特定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ構造物の老朽化は加速度的に進んでおり,維持管理・更新の必要性は,今後さらに増大していくと言われている。労働人口が減り続ける中、維持管理・更新にかかる労務の効率化は喫緊の課題となっている。維持管理・更新にかかる労務の効率化の実現に向け、近年著しく性能が向上しているAIによる画像認識技術を適用する研究事例が増えている。深層学習と呼ばれる高度なニューラルネットワークを用いれば、従来では困難であった人間の直感に近い画像認識が実現でき損傷部位の目視点検の補助や代替が期待できる。
【0003】
一方、管渠などインフラ構造物の検査においては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の技術のように、調査対象の流路管内に投入する装置本体に、テレビカメラ等の撮影装置や蛍光灯等の照明装置を搭載し、撮影装置により撮影した管内画像をもとに損傷などの調査を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-346027号公報
【文献】特開平7-216972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、撮像した管内画像を作業員が目で見て調査を行うものであり、画像が不鮮明な場合や撮像角度によっては、見落としや見誤りが発生しやすく、管渠のジョイント部分を精度高く特定することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定装置は、
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得部と、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成部と、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成部と、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成部と、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付部と、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成部と、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定部と、
を備えた。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定方法は、
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成ステップと、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成ステップと、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成ステップと、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付ステップと、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成ステップと、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定ステップと、
を含む。
【0008】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係る管渠損傷特定プログラムは、
第1管渠の内周面を撮像した第1内周面画像を取得する画像取得ステップと、
取得した前記第1内周面画像を前記第1内周面画像における前記第1管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第1底部展開平面画像を生成する第1底部展開平面画像生成ステップと、
前記第1底部展開平面画像の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックスとして前記第1管渠のジョイント部分を特定したジョイント部分特定画像を生成する特定画像生成ステップと、
生成した前記ジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成するモデル生成ステップと、
第2管渠の内周面を撮像した第2内周面画像を受け付ける画像受付ステップと、
取得した前記第2内周面画像を前記第2内周面画像における前記第2管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる第2底部展開平面画像を生成する第2底部展開平面画像生成ステップと、
前記第2底部展開平面画像と前記学習済みジョイント特定モデルとを用いて、前記第2管渠のジョイント部分を特定するジョイント特定ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管渠損傷特定装置によれば、人工知能による機械学習を用いて管渠のジョイント部分を特定するので、管渠のジョイント部分を精度高く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る管渠損傷特定装置による処理の概要を説明するための図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る管渠損傷特定装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係る管渠損傷特定装置が有する除去量テーブルの一例を説明するための図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係る管渠損傷特定装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係る管渠損傷特定装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明の好ましい実施形態としての管渠損傷特定装置100について、図1図5を参照して説明する。管渠損傷特定装置100は、管渠の軸方向の撮像した管渠の内周面画像を管渠の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像を用いて、管渠のジョイント部分を特定する装置である。図1は、管渠損傷特定装置100による、管渠のジョイント部分の特定の概要について説明するための図である。
【0013】
ここで、管渠とは、水路の総称であり、給水、排水を目的として作られる水路全体を指す。例えば、上水管、下水管、給水管などが含まれる。本実施形態においては、管渠として下水管150(下水管170)を例に説明をする。また、管渠の材質としては、コンクリート、陶器、鉄、塩化ビニルなどが含まれ、管渠の種類としては、コンクリート管、コンクリートヒューム管、陶管、鉄管、塩化ビニル管などが含まれる。
【0014】
また、ジョイント部分180は、下水管150(170)の接続部分(継ぎ目部分)である。このような下水管150(170)においては、複数の単位ユニット管を繋ぎ合わせて1つの下水管150(170)の全長が構成される。単位ユニット管の管径(管の直径/内径)に対して単位ユニット管の長さは規格で決められているため、1つの下水管150(170)において、ジョイント部分180は、等間隔で存在することとなる。
【0015】
なお、以下の説明では、管渠として下水管150(下水管170)を例に説明をする。下水管150の管径(内径)は、作業員が下水管150内に入って作業することが困難な程度の大きさであり、例えば、200mm~3000mmの下水管150,170であるが、下水管150,170の管径は、これには限定されない。
【0016】
下水管150,170の内部の検査においては、自走式検査ロボット140のカメラ142で撮像した下水管150の内周面の画像を用いた検査が行われている。ここで、下水管150の内周面画像は、下水管150の軸方向(中心軸151方向)に撮像した軸方向内周面画像110(160)となっている。下水管150の軸方向は、下水管150の敷設方向に垂直な面における下水管150の円形断面の中心軸の方向、つまり、下水管150の敷設方向(走行方向)に沿った方向である。
【0017】
そして、作業員は、下水管150の外部に設置されたディスプレイなどを用いて、カメラ142で撮像した画像を確認し、下水管150のジョイント部分を確認する。制御部141は、自走式検査ロボット140の自走速度や撮影スケジュール、撮像条件を制御したり、管渠損傷特定装置100や作業員が所持するタブレット端末130との間の通信を制御したりする。作業員は、例えば、タブレット端末130にインストールされた操作用アプリケーションを用いて、自走式検査ロボット140を操作する。なお、自走式検査ロボット140が入れないような、管径の小さな下水管の場合、自走式検査ロボット140の代わりに、ファイバースコープなどの超小型検査装置を用いてもよい。
【0018】
そして、制御部141は、カメラ142で撮像した軸方向内周面画像110(160)を、管渠損傷特定装置100に送信する。なお、軸方向内周面画像110は、人工知能による機械学習のための画像であり、軸方向内周面画像160は、ジョイント部分を特定したい下水管170の内周面画像である。また、カメラ142は、通常のカメラ、広角カメラ、全周カメラのいずれであってもよい。広角カメラの場合、1周分の画像を複数回に分けて撮像し、撮像した複数枚の画像を繋いで軸方向内周面画像110(160)を生成してもよい。
【0019】
また、軸方向内周面画像110(160)は、所定のピッチ(例えば、0.1m)ごとに決められた位置で下水管150(170)の軸方向に撮像された画像である。例えば、下水管150の基準位置から規格で決められた下水管150の1ユニット分の長さごとに撮像した画像(軸方向内周面画像110(160))を輪切りにして、輪切り画像143を得て、これらを繋ぎ合わせることで軸方向内周面画像110(160)を生成してもよい。
【0020】
そして、本実施形態においては、まず初めに、下水管150の内周面画像の撮像前に、自走式検査ロボット140の撮像部としてのカメラ142の中心軸と下水管150の中心軸151とが合致するように、自走式検査ロボット140を下水管150にセットすることが好ましい。そして、自走式検査ロボット140を走行させながら、検査対象範囲の下水管150の内周面を撮像する。撮像が完了したら、制御部141は、撮像した画像を管渠損傷特定装置100に送信する。
【0021】
管渠損傷特定装置100は、受信した軸方向内周面画像110から、ジョイント部分180を特定して、人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成する。そして、管渠損傷特定装置100は、生成した学習済みジョイント特定モデルを用いて、下水管170のジョイント部分180を特定する。
【0022】
次に、図2を参照して本実施形態に係る管渠損傷特定装置100の構成について説明する。管渠損傷特定装置100は、画像取得部201、底部展開平面画像生成部202、除去部203、特定画像生成部204、モデル生成部205、画像受付部206、底部展開平面画像生成部207およびジョイント特定部208を有する。
【0023】
画像取得部201は、下水管150の内周面を下水管150の軸方向に撮像した軸方向内周面画像110を取得する。画像取得部201は、自走式検査ロボット140のカメラ142で撮像した軸方向内周面画像110を制御部141から取得してもよいし、作業員が所持するタブレット端末130などを経由して軸方向内周面画像110を取得してもよい。なお、軸方向内周面画像110は、後の人工知能による機械学習に用いられる画像である。ここで、軸方向内周面画像110は、下水管150の内周面を所定の間隔(ピッチ)ごとの決められた位置で下水管150の軸方向に撮像した連続画像であり、所定ピッチは、例えば、10cmであるが、これには限定されない。軸方向内周面画像110は、自走式検査ロボット140が10cm進むごとに撮像された画像である。
【0024】
底部展開平面画像生成部202は、取得した軸方向内周面画像110を軸方向内周面画像110の底部部分(下水管150の底部部分)から切り開いて展開して得られる底部展開平面画像101を生成する。つまり、底部展開平面画像生成部202は、まず、画像取得部201が取得した所定ピッチごとに撮像された軸方向内周面画像110から輪切りにされた帯状の画像である複数の輪切り画像143を生成する。
【0025】
そして、底部展開平面画像生成部202は、生成された輪切り画像143を底部部分から切り開いて展開して、底部展開画像を生成する。次に、底部展開平面画像生成部202は、生成した複数の底部展開画像を繋ぎ合わせて、横長の底部展開平面画像101を生成する。横長の底部展開平面画像101においては、下水管150の天井部分が帯状の平面画像の短手方向(縦方向)の中央に位置し、底部部分が長手方向(横方向)の左右両端に位置するので、下水管150において、水が流れない部分が平面画像の縦方向の中央に位置するようになる。このような平面画像を生成することにより、下水管150において、水が流れない部分が平面画像の縦方向の中央に位置するようになるので、後の人工知能による機械学習の効率や精度が向上する。
【0026】
なお、輪切り画像143は、自走式検査ロボット140において予め生成しておき、画像取得部201が、自走式検査ロボット140により生成された輪切り画像143を取得してもよい。そして、底部展開平面画像生成部202は、複数の輪切り画像143から生成された底部展開平面画像のそれぞれを繋げて1枚の横長の展開平面画像として底部展開平面画像101を生成する。
【0027】
除去部203は、底部展開平面画像101から、底部展開平面画像101の上端部分および下端部分を除去する。すなわち、底部展開平面画像101においては、横長の展開画像の縦方向の中心部分には、下水管150において水が流れていない部分が位置しているが、上下の端部分には、水が流れている部分が位置している。そして、この水が流れている部分は、下水管150の継ぎ目であるジョイント部分180が水により隠されてしまうため、後の人工知能による機械学習においては、学習に不必要な部分となる。そのため、除去部203は、横長の底部展開平面画像101における上端から所定の長さ分(上端部分)および下端から所定の長さ分(下端部分)を、底部展開平面画像101から取り除く。このように、人工知能による機械学習において、不要な部分を予め取り除いておくことにより、機械学習に必要な部分が写っている画像を人工知能に学習させることができるので、機械学習の効率が向上し、より精度の高いモデルを生成することが可能となる。そのため、本実施形態においては、生成された底部展開平面画像101を、いわゆるトリミングして、人工知能による機械学習にとって、不必要で、余分な部分を予め取り除くようにしている。なお、除去部203による、底部展開平面画像101の上端部分および下端部分の除去をしなくても、人工知能による機械学習を行うことは可能であるが、上述の理由から、上端部分および下端部分を除去するほうが好ましい。
【0028】
特定画像生成部204は、底部展開平面画像101の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックス190(BB)として、下水管150のジョイント部分180を特定したジョイント部分特定画像を生成する。
【0029】
すなわち、特定画像生成部204は、横長の平面画像である底部展開平面画像101において、長手方向(横方向)に対して所定幅を有し、短手方向に対して底部展開平面画像101の縦方向の長さとほぼ同じ長さを有する矩形形状のバウンディングボックス190を生成する。そして、特定画像生成部204は、生成したバウンディングボックス190を用いて、下水管150のジョイント部分180のそれぞれを囲んだ画像を生成する。つまり、特定画像生成部204は、このように、生成された底部展開平面画像101にバウンディングボックス190を用いて、ジョイント部分180であることを示す印を付けることにより、後の人工知能による機械学習において、学習し易いような画像処理を予め施している。
【0030】
なお、バウンディングボックス190の縦横の長さ(または面積)は、特に限定はされないが、例えば、下水管150の管径や全長、あるいは、学習済みモデルの精度に応じて、適切な値が選択される。なお、下水管150のジョイント部分180の幅よりも大きな幅(横幅)を有するバウンディングボックス190を用いることが好ましい。横幅の狭いバウンディングボックス190であってもよいが、ジョイント部分180の幅に対して、ある程度の大きさの幅を有するバウンディングボックス190が好ましい。
【0031】
モデル生成部205は、生成したジョイント部分特定画像を人工知能に機械学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成する。人工知能は、バウンディングボックス190で囲まれた部分が、下水管150においけるジョイント部分180に相当するため、バウンディングボックス190で囲まれた部分を重点的に学習することにより、より効率的に学習を行うことが可能となり、これにより、より精度の高い学習済みモデルを生成することが可能となる。
【0032】
なお、モデル生成部205は、生成した学習済みジョイント特定モデルを所定のストレージ等に保存しておいてもよい。この場合、新たな学習用画像(軸方向内周面画像160)を取得して、所定の処理を施した後、機械学習を行い、学習済みジョイント特定モデルを生成するたびに、保存された学習済みジョイント特定モデルを更新するようにしてもよい。
【0033】
また、人工知能による機械学習は、既知のアルゴリズムを用いて行われる。機械学習において、損失関数は、重み指定を行い、事象数の逆数を採用した。また、モデル生成部205は、人工知能による機械学習の精度を向上させて、より精度の高いジョイント特定モデルを生成するために、人工知能に学習させる軸方向内周面画像110および底部展開平面画像101の数を水増しする。モデル生成部205は、例えば、左右反転を用いて水増しデータを得る。さらに、モデル生成部205は、人工知能による機械学習の精度を向上させるために、転移学習を用いてもよい。ここで、転移学習とは、異なるデータセットを用いた学習済みモデルを、別の問題に転用し、部分的な学習をすることで、モデルの性能向上を狙う手法である。特に、教師データが十分ではない場合に、推論性能の向上と学習時間の低減とが期待できる手法である。
【0034】
なお、生成された学習済み変位特定モデルの評価には、再現率(Recall)および適合率(Precision)を用いた。再現率は、再現率=TP/(TP+FN)で表され、結果として出てくるべきもののうち、実際にでてきたものの割合を示す。すなわち、取り漏らしがないかに関する指標である(網羅性に関する指標)。適合率は、適合率=TP/(TP+FP)で表され、正しかったものの割合を示す。出てきたすべての結果の中に、どれだけ正解が含まれているかの割合を示す指標である(正確性に関する指標)。
なお、TP=真陽性(True Positive)、FP=偽陽性(False Positive)、FN=偽陰性(False Negative)である。
【0035】
画像受付部206は、下水管170の内周面を下水管170の軸方向に撮像した軸方向内周面画像160を受け付ける。軸方向内周面画像160は、自走式検査ロボット140が撮像した画像であり、制御部141から画像受付部206に対して送信された画像である。なお、軸方向内周面画像160は、検査対象となる下水管170の内周面画像を撮像した画像であり、下水管170におけるジョイント部分180を特定したい下水管170である。
【0036】
底部展開平面画像生成部207は、受け付けた軸方向内周面画像160を軸方向内周面画像160における下水管170の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像161を生成する。底部展開平面画像生成部207は、底部展開平面画像生成部202と同様に、受け付けた軸方向内周面画像160を軸方向内周面画像110の底部の位置から切り開いて展開して得られる底部展開平面画像161を生成する。底部展開平面画像161は、底部展開平面画像101と同様に、複数の輪切り画像を繋ぎ合わせて生成された画像である。
【0037】
ジョイント特定部208は、底部展開平面画像161と学習済みジョイント特定モデルとを用いて、下水管170のジョイント部分180の位置などを特定する。そして、管渠損傷特定装置100は、ジョイント部分180が特定された場合、特定されたジョイント部分180の位置などを示す情報を軸方向内周面画像160に重畳した画像を、作業員が所持するタブレット端末130に出力する出力部を有していてもよい。また、作業員は、タブレット端末130のディスプレイに表示された特定結果を参照することにより、下水管170のジョイント部分180の位置等を認識できる。さらに、出力部は、特定された位置などに応じたアラートを出力してもよい。出力部は、警告音や振動、光、メッセージ等によるアラートを出力してもよい。
【0038】
図3は、管渠損傷特定装置100が有する除去量テーブル301の一例を説明するための図である。除去量テーブル301は、画像ID311に関連付けて管径312および除去量313を記憶する。画像ID311は、軸方向内周面画像160や底部展開平面画像161などを識別するための識別子である。管径312は、各画像に写っている下水管170の内径(直径)である。除去量313は、下水管170の直径(管径)に応じて決めれられた、底部展開平面画像161から取り除く上端部分および下端部分の量である。そして、除去部203は、除去量テーブル301を参照して、除去量を決定する。
【0039】
図4を参照して、管渠損傷特定装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2の管渠損傷特定装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0040】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。内周面画像データ441は、下水管150,170の軸方向に撮像した内周面の画像である。底部展開平面画像データ442は、撮像された軸方向内周面画像110,160を下水管150,170の底部部分で切り開いて展開した2次元の平面画像データでえある。下水管データ443は、下水管150,170に関するデータであり、管径や全長などのデータである。撮像条件データ444は、カメラ142で下水管150,170の内周面を撮像した際の条件である。
【0041】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0042】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、除去量テーブル301を格納する。除去量テーブル301は、図3に示した、画像ID311と除去量313などとの関係を管理するテーブルである。
【0043】
ストレージ450は、さらに、画像取得モジュール451、底部展開平面画像生成モジュール452、除去モジュール453、特定画像生成モジュール454、モデル生成モジュール455、画像受付モジュール456および底部展開平面画像生成モジュール458を格納する。画像取得モジュール451は、軸方向内周面画像110を取得するモジュールである。底部展開平面画像生成モジュール452は、取得した軸方向内周面画像110を下水管150の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像を生成するモジュールである。除去モジュール453は、底部展開平面画像101から、底部展開平面画像101の上端部分および下端部分を除去するモジュールである。特定画像生成モジュール454は、底部展開平面画像101の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックス190として、下水管150のジョイント部分180を特定したジョイント部分特定画像を生成するモジュールである。モデル生成モジュール455は、学習済みジョイント特定モデルを生成するモジュールである。画像受付モジュール456は、下水管170の内周面を下水管170の軸方向に撮像した軸方向内周面画像160を受け付けるモジュールである。底部展開平面画像生成モジュール457は、取得した軸方向内周面画像160を軸方向内周面画像160における下水管170の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像161を生成するモジュールである。ジョイント特定モジュール458は、底部展開平面画像161および学習済みジョイント特定モデルを用いて、下水管170のジョイント部分180を特定するモジュールである。これらのモジュール451~458は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム459は、管渠損傷特定装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0044】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、管渠損傷特定装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0045】
次に図5に示したフローチャートを参照して、管渠損傷特定装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2の管渠損傷特定装置100の各機能構成を実現する。
【0046】
ステップS501において、画像取得部201は、下水管150の内周面を撮像した軸方向内周面画像110を取得する。ステップS503において、底部展開平面画像生成部202は、取得した軸方向内周面画像110を軸方向内周面画像110における下水管150の底部部分で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像101を生成する。ステップS505において、底部展開平面画像101から、底部展開平面画像101の上端部分および下端部分を除去する。底部展開平面画像101の上端部分および下端部分の除去量は、下水管150の管径などに応じて決められる。ステップS507において、特定画像生成部204は、底部展開平面画像101の長手方向に対して所定幅を有するバウンディングボックス190として下水管150のジョイント部分180を特定したジョイント部分特定画像を生成する。
【0047】
ステップS509において、モデル生成部205は、生成したジョイント部分特定画像を人工知能に学習させて、学習済みジョイント特定モデルを生成する。ステップS511において、画像受付部206は、下水管170の内周面を下水管170の軸方向に撮像した軸方向内周面画像160を受け付ける。ステップS513において、底部展開平面画像生成部207は、受け付けた軸方向内周面画像160を軸方向内周面画像160における下水管170の底部位置で切り開いて展開して得られる底部展開平面画像161を生成する。ステップS515において、ジョイント特定部208は、底部展開平面画像161と学習済みジョイント特定モデルとを用いて、下水管170のジョイント部分180の位置などを特定する。
【0048】
本実施形態によれば、バウンディングボックスとして下水管のジョイント部分を特定するので、人工知能による機械学習により精度の高いジョイント特定モデルを生成でき、管渠のジョイント部分を効率よく、確実に特定することができる。
【0049】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0050】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5