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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240827BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20240827BHJP
   G01W 1/14 20060101ALI20240827BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240827BHJP
【FI】
G05B23/02 R
C02F11/00 Z ZAB
G01W1/14 Z
G06N20/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021047654
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146606
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 明
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0017982(US,A1)
【文献】特開2013-161336(JP,A)
【文献】特開2015-54286(JP,A)
【文献】特開2018-111065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
C02F 11/00-11/20
G01W 1/14
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析装置であって、
前記対象期間における天候情報を取得する天候情報取得部と、
前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択する選択部と、
前記選択部によって選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得する演算部と、
を含む、解析装置。
【請求項2】
前記天候情報は、雨量の情報を含み、
前記選択部は、前記雨量の情報に基づいて前記対象期間が晴天であるか雨天であるかを判断し、晴天である場合には前記第1AIモデルを選択し、雨天である場合には前記第2AIモデルを選択する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記天候情報は、前記対象期間の季節情報と、前記対象期間の曜日の情報と、前記対象期間が祝日であるか平日であるかを示す情報と、前記対象期間における最高気温と、前記対象期間より前の所定期間における前記設備からの汚泥の流出量の情報との、少なくとも1つを含む、請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1AIモデルを用いる場合に入力する前記天候情報には含まれない天候情報を、前記第2AIモデルを用いる場合に入力する、請求項2又は請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第2AIモデルが選択された場合には、前記対象期間における天候情報として、前記対象期間までに連続して雨天となる期間を指す連続雨天期間の情報と、前記対象期間における単位時間当たりの雨量の情報との少なくとも1つを、前記第2AIモデルに入力して、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得する、請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記第1AIモデルは、サポートベクター回帰により前記設備からの汚泥の流出量の予測値を算出し、前記第2AIモデルは、ランダムフォレスト回帰により前記設備からの汚泥の流出量の予測値を算出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項7】
前記第1AIモデルと前記第2AIモデルとを生成する学習部を更に含み、
前記学習部は、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量を教師データとして機械学習させることで前記第1AIモデルを生成し、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量を教師データとして機械学習させることで前記第2AIモデルを生成する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項8】
未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析方法であって、
前記対象期間における天候情報を取得するステップと、
前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択するステップと、
選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得するステップと、
を含む、解析方法。
【請求項9】
未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記対象期間における天候情報を取得するステップと、
前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択するステップと、
選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得するステップと、
を、コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水処理施設から送泥され汚泥処理施設に受泥される汚泥の量を、予測することが求められている。例えば特許文献1には、下水流入量と汚泥処理量とを関連づけた時系列値と、固形物流入量と、固形物流入量の変化率とを用いて、バックプロパゲーション法によりニューラルネットワークの重み係数を決定し、重み係数を元に、現在より先の固形物流入量を予測する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-283274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように施設から送られる汚泥量を予測する際には、予測精度を向上させることが求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、施設から送られる汚泥量を予測する際には、予測精度を向上可能な解析装置、解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の解析装置は、未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析装置であって、前記対象期間における天候情報を取得する天候情報取得部と、前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択する選択部と、前記選択部によって選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得する演算部と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の解析方法は、未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析方法であって、前記対象期間における天候情報を取得するステップと、前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択するステップと、選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得するステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のプログラムは、未来の対象期間における設備からの汚泥の流出量を予測する解析方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記対象期間における天候情報を取得するステップと、前記対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルと、過去の雨天時における天候情報と前記設備からの汚泥の流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルとのうちから、使用するAIモデルを選択するステップと、選択されたAIモデルに、前記対象期間における天候情報を入力することで、前記対象期間における前記設備からの汚泥の流出量の予測値を取得するステップと、を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施設から送られる汚泥量を予測する際に、予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る設備の模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る解析装置の模式的なブロック図である。
図3図3は、教師データを示す図表である。
図4図4は、AIモデルへの入力データを示す図表である。
図5図5は、汚泥の流出量の予測値の取得フローを説明するフローチャートである。
図6図6は、本実施形態の他の例に係る設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る設備の模式図である。本実施形態に係る解析装置100は、設備Fからの汚泥の流出量を予測する。設備Fは、本実施形態においては下水処理設備である。図1に示すように、設備Fは、第1沈殿池F1と、反応槽F2と、第2沈殿池F3と、処理槽F4とを備える。第1沈殿池F1には、下水Wが流入する。第1沈殿池F1においては、下水Wが一時貯留され、下水Wから生汚泥S1が分離、沈殿する。第1沈殿池F1において生汚泥S1が分離された後の下水W1は、反応槽F2に導入される。反応槽F2は、例えば活性汚泥によって下水W1を生物処理する槽である。反応槽F2で生物処理された後の下水W3は、第2沈殿池F3に導入される。第2沈殿池F3においては、下水W3が一時貯留され、下水W3から汚泥S2が分離、沈殿する。第2沈殿池F3において汚泥S2が分離された後の下水W3は、処理槽F4に導入される。処理槽F4においては、下水W3に塩素が添加されて、処理水W4として、河川などの設備Fの系外に流出される。一方、第2沈殿池F3の汚泥S2は、一部の汚泥S2Aが返送汚泥として反応槽F2に返送される。そして、第1沈殿池F1からの生汚泥S1と、第2沈殿池F3の汚泥S2のうち汚泥S2Aとされなかった余剰汚泥S2Bとが、汚泥Sとして、設備Fから流出される。汚泥Sは、設備FAに導入される。設備FAは、本実施形態では汚泥を処理する汚泥処理設備であり、設備FAに導入された汚泥Sは、設備FAにて処理される。
【0013】
本実施形態に係る解析装置100は、設備Fから設備FAに導入される汚泥Sの量を予測する。すなわち、解析装置100は、設備Fからの汚泥Sの流出量を予測する。また、本実施形態の例では、設備Fからの汚泥Sの流出量(送泥量)が、設備FAへの汚泥Sの流入量(受泥量)に相当するため、解析装置100は、設備FAへの汚泥Sの流入量を予測するともいえる。
【0014】
なお、解析装置100が汚泥Sの流出量を予測する対象となる設備Fは、以上説明した構成に限られず、汚泥が流出される設備であれば任意のものであってよい。
【0015】
(解析装置)
図2は、本実施形態に係る解析装置の模式的なブロック図である。解析装置100は、コンピュータであるともいえ、通信部10と、記憶部12と、制御部14とを備える。通信部10は、外部の装置と通信を行う通信モジュールであり、例えばアンテナなどである。解析装置100は、無線通信で外部の装置と通信を行うが、有線通信でもよく、通信方式は任意であってよい。
【0016】
記憶部12は、制御部14の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部12が記憶する制御部14用のプログラムは、解析装置100が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。また、記憶部12は、AI(Artificial Interigence)における学習モデルである、第1AIモデルM1と第2AIモデルM2とを記憶している。
【0017】
制御部14は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部14は、学習部20と解析部30とを含む。制御部14は、記憶部12からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、学習部20と解析部30とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部14は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、学習部20と解析部30との処理の少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0018】
学習部20は、学習前の第1AIモデルM1と第2AIモデルM2とを機械学習させて、学習済みの第1AIモデルM1と第2AIモデルM2とを生成する。解析部30は、学習済みの第1AIモデルM1と第2AIモデルM2との少なくとも一方を用いて、未来の対象期間における汚泥Sの流出量の予測結果を取得する。
【0019】
以降においては、学習部20による、第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2の学習方法を説明し、その後に、解析部30による、学習済みの第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2を用いた汚泥Sの流出量の予測結果の取得方法を説明する。
【0020】
(学習部)
(第1AIモデルの学習)
学習部20は、過去における設備Fの天候情報を、未学習のAIモデルへの入力用の教師データとして取得し、過去における設備Fからの汚泥Sの流出量を、未学習のAIモデルからの出力データの解となる出力用の教師データとして取得する。最初に、第1AIモデルM1の学習について説明する。第1AIモデルM1は、晴天時における汚泥Sの流出量を予測するためのAIモデルである。学習部20は、過去の晴天時の所定期間における設備Fの天候情報を、第1AIモデルM1の入力用の教師データとして取得し、同じ期間における設備Fからの汚泥Sの流出量を、第1AIモデルM1の出力用の教師データとして取得する。なお、設備Fの天候情報とは、設備Fを含む地域の天候を示す情報である。また、晴天とは、対象となる期間において、設備Fを含む地域の雨量が0mmであることを指す。例えば気象庁が観測した雨量のデータが0mmである期間を、晴天としてよい。また、所定期間は任意の長さであってよく、例えば数時間であってもよいし、数日であってもよい。
【0021】
このように、学習部20は、過去の晴天時の所定期間における設備Fの天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量とを、第1AIモデルM1用の1つのデータセットとして取得する。すなわち、学習部20は、過去の設備Fの天候情報に基づき、晴天であった期間を抽出し、抽出した期間における天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、第1AIモデルM1用の教師データとするといえる。本実施形態では、学習部20は、過去の設備Fの天候情報として雨量の情報を取得し、雨量が0mmとなっている期間を、晴天であった期間として抽出する。学習部20は、晴天時の所定期間における天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、時期を異ならせて複数取得する。言い換えれば、学習部20は、時期が異なる複数のデータセットを取得する。
【0022】
図3は、教師データを示す表である。本実施形態においては、図3に示すように、学習部20は、第1AIモデルM1の教師データ用の設備Fの天候情報として、季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量とを取得する。
【0023】
季節情報とは、その所定期間の季節を表す情報であり、本実施形態では、その所定期間が属する日の、基準の月日(例えば1月1日)からの経過日数(例えば0日から365日)を示す情報である。所定期間が複数日にまたがる場合には、季節情報は、所定期間の初日の、基準の月日からの経過日数としてよいが、それに限られず、最終日など所定期間に属する所定の日の、基準の月日からの経過日数としてもよい。ただし、季節情報は、基準の月日からの経過日数に限られず、所定期間が属する月など、季節を表す任意の情報であってよい。このように季節情報を教師データとすることで、汚泥量の予測に季節の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0024】
曜日情報とは、その所定期間の曜日を表す情報である。所定期間が複数日にまたがる場合には、曜日情報は、所定期間の初日の曜日としてよいが、それに限られず、最終日など所定期間に属する所定の日の曜日としてよい。このように曜日情報を教師データとすることで、汚泥量の予測に曜日の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0025】
休日情報とは、その所定期間が休日であるか平日であるかを表す情報である。休日とは、例えば、土曜、日曜日及び祝日である。平日とは、休日、土曜、及び日曜以外の日である。所定期間が複数日にまたがる場合には、休日情報は、所定期間の初日が休日であるか平日であるかを表す情報であってよいが、それに限られず、最終日など所定期間に属する所定の日が休日であるか平日であるかを表す情報であってもよい。このように休日情報を教師データとすることで、汚泥量の予測に休日の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0026】
最高気温は、その所定期間における最高気温である。最高気温は、気象庁から発表された設備Fが含まれる地域の最高気温のうちで、その所定期間における最高値を指すが、それに限られず、所定期間に属する指定された期間(例えば初日)における、気象庁から発表された設備Fが含まれる地域の最高気温を指してもよい。このように最高気温を教師データとすることで、汚泥量の予測に最高気温の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。さらにいえば、気温に関するデータとしては、平均気温や最低気温を用いることも考えられるが、平均気温や最低気温でなく最高気温を用いることで、予測精度をより適切に向上できる。
【0027】
過去汚泥量とは、その所定期間より前の期間である過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量を指す。ここでの過去汚泥量は、過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の実測値である。過去期間は、所定期間より前であれば任意の時期及び長さであってよいが、本実施形態では、所定期間の初日より5日前から3日前までを指す。すなわち、過去汚泥量とは、所定期間の初日より5日前から3日前までの設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の、実測値である。このように過去汚泥量を教師データとすることで、汚泥量の予測に過去汚泥量の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0028】
第1AIモデルM1の教師データ用の設備Fの天候情報を、以上のような情報とすることで、晴天時用の第1AIモデルM1を適切に学習させて、第1AIモデルM1の予測精度を向上させることができる。ただし、第1AIモデルM1用の設備Fの天候情報は、以上のものに限られない。例えば、第1AIモデルM1用の設備Fの天候情報として、季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量との少なくとも1つを用いてよい。
【0029】
また、学習部20は、第1AIモデルM1の教師データ用の設備Fからの汚泥Sの流出量として、その所定期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の実測値を取得する。
【0030】
学習部20は、教師データとして取得した晴天時の設備Fの天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、学習前の第1AIモデルM1に入力して、晴天時における設備Fの天候情報と汚泥Sの流出量との対応関係を、第1AIモデルM1に機械学習させる。これにより、学習済みの第1AIモデルM1は、過去の晴天時における天候情報と設備Fからの汚泥の流出量との対応関係が機械学習されたモデルとなる。学習部20は、機械学習済みの第1AIモデルM1を、記憶部12に記憶させる。
【0031】
第1AIモデルM1は、サポートベクター回帰方式のアルゴリズムである。サポートベクター回帰方式は、境界線から一番近いサンプルデータまでのマージンの和が最大になる線を境界線とする手法である。学習部20は、複数のデータセットを第1AIモデルM1に入力することで、例えばサポートベクター回帰における予測式である式(1)における、回帰係数b1と誤差fとを、説明変数x1(ここでは天候情報)毎に設定することで、第1AIモデルM1に機械学習させる。なお、yは目的変数(ここでは汚泥Sの流出量の予測値)である。
【0032】
y=x1・b1+f ・・・(1)
【0033】
第1AIモデルM1として、サポートベクター回帰方式を用いることで、晴天時の汚泥量の予測精度を向上できる。ただし、第1AIモデルM1は、サポートベクター回帰方式に限られず任意の方式を用いてよい。
【0034】
(第2AIモデルの学習)
第2AIモデルM2は、雨天時における汚泥Sの流出量を予測するためのAIモデルである。学習部20は、過去の雨天時の所定期間における設備Fの天候情報を、第2AIモデルM2の入力用の教師データとして取得し、同じ期間における設備Fからの汚泥Sの流出量を、第2AIモデルM2の出力用の教師データとして取得する。雨天とは、対象となる期間において、設備Fを含む地域の雨量が0mmより大きいことを指す。例えば気象庁が観測した雨量のデータが0mmより大きい期間を、雨天としてよい。また、所定期間は任意の長さであってよく、例えば数時間であってもよいし、数日であってもよい。
【0035】
このように、学習部20は、過去の雨天時の所定期間における設備Fの天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量とを、第2AIモデルM2用の1つのデータセットとして取得する。学習部20は、過去の設備Fの天候情報に基づき雨天であった期間を抽出し、抽出した期間における天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、第2AIモデルM2用の教師データとするといえる。本実施形態では、学習部20は、過去の設備Fの天候情報として雨量の情報を取得し、雨量が0mmより大きい期間を、雨天であった期間として抽出する。学習部20は、雨天時の所定期間における天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、時期を異ならせて複数取得する。言い換えれば、学習部20は、時期が異なる複数のデータセットを取得する。
【0036】
学習部20は、第2AIモデルM2の教師データ用の設備Fの天候情報として、第1AIモデルM1の教師データ用の設備Fの天候情報には含まれない情報を用いる。具体的には、図3に示すように、学習部20は、第2AIモデルM2の教師データ用の設備Fの天候情報として、季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量と、雨量と、単位雨量と、連続雨天期間とを取得する。季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量とについては、第1AIモデルM1にも用いられたものなので、説明を省略する。
【0037】
雨量とは、その所定期間の雨量を示す情報であり、設備Fが含まれる地域の、その所定期間の雨量の合計値である。雨量は、気象庁が観測した雨量のデータから取得されてよい。このように雨量を教師データとすることで、汚泥量の予測に雨量の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0038】
単位雨量とは、その所定期間における単位時間当たりの雨量を示す情報であり、降雨強度(雨の激しさを示す情報)ともいえる。例えば、学習部20は、その所定期間の雨量の合計値から、単位雨量を算出してよい。このように単位雨量を教師データとすることで、汚泥量の予測に雨の激しさの影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0039】
連続雨天期間とは、その所定期間までに連続して雨天となった期間の長さを示す情報である。すなわち例えば、所定期間の開始タイミングより1日前から所定時間の開始タイミングまで、連続して雨天であった場合には、連続雨天期間は1日となる。学習部20は、気象庁が観測した雨量のデータから、連続雨天期間を算出してよい。このように単連続雨天期間を教師データとすることで、汚泥量の予測にこれまでの雨の影響を考慮することができるため、予測精度を向上できる。
【0040】
第2AIモデルM2の教師データ用の設備Fの天候情報を、以上のような情報とすることで、雨天時用の第2AIモデルM2を適切に学習させて、第2AIモデルM2の予測精度を向上させることができる。ただし、第2AIモデルM2用の設備Fの天候情報は、以上のものに限られない。例えば、第2AIモデルM2用の設備Fの天候情報として、季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量と、雨量との少なくとも1つを用いてよい。また例えば、第2AIモデルM2用の設備Fの天候情報として、単位雨量と連続雨天期間との少なくとも1つを用いてよい。
【0041】
また、学習部20は、第2AIモデルM2の教師データ用の設備Fからの汚泥Sの流出量として、その所定期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の実測値を取得する。
【0042】
学習部20は、教師データとして取得した雨天時の設備Fの天候情報と汚泥Sの流出量とのデータセットを、学習前の第2AIモデルM2に入力して、雨天時における設備Fの天候情報と汚泥Sの流出量との対応関係を、第2AIモデルM2に機械学習させる。これにより、学習済みの第2AIモデルM2は、過去の雨天時における天候情報と設備Fからの汚泥の流出量との対応関係が機械学習されたモデルとなる。学習部20は、機械学習済みの第2AIモデルM2を記憶部12に記憶させる。
【0043】
第2AIモデルM2は、ランダムフォレスト回帰方式のアルゴリズムである。ランダムフォレスト回帰方式は、入力用の各教師データ(天候情報)と出力用の教師データ(汚泥Sの流出量)との関係を表す決定木がランダムに複数生成されることで、学習が行われる。第2AIモデルM2は、決定木毎に入力データが入力されて、決定木毎に算出された複数の汚泥Sの流出量に基づき、汚泥Sの流出量の予測値を決定する。(例えば決定木毎の流出量の代表値や平均値を、汚泥Sの流出量の予測値に決定する)。
【0044】
第2AIモデルM2として、ランダムフォレスト回帰方式を用いることで、晴天時の汚泥量の予測精度を向上できる。ただし、第2AIモデルM2は、ランダムフォレスト回帰方式に限られず任意の方式を用いてよいが、第1AIモデルM1と異なるアルゴリズムであることが好ましい。なお、学習部20は、適宜タイミング毎に(例えば季節単位ごとに)、新たな教師データを用いて第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2を更に学習させて、第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2を更新してもよい。
【0045】
(解析部)
次に、解析部30による、学習済みの第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2を用いた汚泥Sの流出量の予測結果の取得方法について説明する。以降においては、汚泥Sの流出量を予測したい未来の期間を、対象期間とする。対象期間は、任意の時期、長さであってよいが、例えば3日間などであってよい。
【0046】
図2に示すように、解析部30は、天候情報取得部32と、選択部34と、演算部36とを含む。
【0047】
天候情報取得部32は、対象期間における天候情報を取得する。天候情報取得部32は、天候情報として、対象期間における雨量を取得する。対象期間における雨量は、設備Fが含まれる地域の、対象期間の雨量の合計の予測値である。対象期間における雨量は、気象庁が予測した雨量のデータから取得されてよい。
【0048】
選択部34は、天候情報取得部32が取得した対象期間における天候情報に基づき、第1AIモデルM1と第2AIモデルM2とのうちから、使用するAIモデルを選択する。演算部36は、選択部34によって選択されたAIモデルに、対象期間における天候情報を入力することで、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を取得する。具体的には、選択部34は、天候情報取得部32が取得した対象期間における雨量の情報に基づき、対象期間が晴天であるか雨天であるかを判断する。選択部34は、対象期間における雨量が0mmである場合には、晴天であると判断し、対象期間における雨量が0mmより多い場合には、雨天であると判断する。選択部34は、対象期間が晴天であると判断した場合には、第1AIモデルM1を使用するAIモデルとして選択する。一方、選択部34は、対象期間が雨天であると判断した場合には、第2AIモデルM2を使用するAIモデルとして選択する。
【0049】
(第1AIモデルを使用する場合)
図4は、AIモデルへの入力データを示す表である。天候情報取得部32は、第1AIモデルM1が選択された場合には、すなわち対象期間が晴天である場合には、第1AIモデルM1の教師データとして用いられた天候情報と同じ種類の天候情報を、対象期間における天候情報として取得して、第1AIモデルM1への入力データとする。すなわち、図4に示すように、天候情報取得部32は、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量とを取得して、入力データとする。
【0050】
天候情報取得部32は、対象期間の月日に基づき、対象期間の季節情報を取得する。対象期間の季節情報は、本実施形態では、対象期間が属する日の、基準の月日からの経過日数を示す情報である。対象期間が複数日にまたがる場合には、季節情報は、対象期間の初日の、基準の月日からの経過日数としてよいが、それに限られず、最終日など対象期間に属する所定の日の、基準の月日からの経過日数としてよい。ただし、対象期間の季節情報は、基準の月日からの経過日数に限られず、対象期間が属する月など、季節を表す任意の情報であってよい。
【0051】
天候情報取得部32は、対象期間の月日に基づき、対象期間の曜日情報を取得する。対象期間が複数日にまたがる場合には、曜日情報は、対象期間の初日の曜日としてよいが、それに限られず、最終日など対象期間に属する所定の日の曜日としてよい。
【0052】
天候情報取得部32は、対象期間の月日に基づき、対象期間の休日情報を取得する。対象期間が複数日にまたがる場合には、休日情報は、対象期間の初日が休日であるか平日であるかを表す情報であってよいが、それに限られず、最終日など対象期間に属する所定の日が休日であるか平日であるかを表す情報であってもよい。
【0053】
天候情報取得部32は、対象期間における設備Fを含む地域の最高気温の予測値を、対象期間の最高気温として取得する。対象期間の最高気温は、気象庁から発表された設備Fが含まれる地域の最高気温の予測値のうちで、その対象期間における最高値を指すが、それに限られず、対象期間に属する指定された期間(例えば初日)における、気象庁から発表された設備Fが含まれる地域の最高気温の予測値を指してもよい。
【0054】
天候情報取得部32は、対象期間よりも前の期間である過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量を、対象期間における過去汚泥量として取得する。過去期間は、対象期間より前であれば任意の時期及び長さであってよいが、本実施形態では、対象期間の初日より5日前から3日前までを指す。すなわち、過去汚泥量とは、対象期間の初日より5日前から3日前までの設備Fからの汚泥Sの流出量の合計である。天候情報取得部32は、過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の実測値を、対象期間における過去汚泥量として取得する。ただし、過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量が実測されていない場合(例えば対象期間に対する過去期間が、現在よりも後の期間である場合)、天候情報取得部32は、過去期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を、対象期間における過去汚泥量として取得してよい。
【0055】
演算部36は、学習済みの第1AIモデルM1を記憶部12から読み出し、天候情報取得部32が取得した対象期間における天候情報を取得する。演算部36は、天候情報取得部32が取得した対象期間における天候情報を、学習済みの第1AIモデルM1に入力する。すなわち本実施形態の例では、演算部36は、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量とを、第1AIモデルM1に入力する。第1AIモデルM1においては、対象期間におけるこれらの天候情報が入力データとして入力されて、演算が実行される。その結果、第1AIモデルM1からは、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値(対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の予測値)が、出力データとして出力される。これにより、演算部36は、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測結果を取得する。このように、第1AIモデルM1は、対象期間における天候情報が入力されると、対象期間における汚泥Sの流出量が出力される学習済みのプログラムであるともいえる。
【0056】
なお、第1AIモデルM1を用いて設備Fからの汚泥流出量を予測する際に用いる天候情報は、以上のものに限られない。例えば、第1AIモデルM1用の天候情報として、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量との少なくとも1つを用いてよい。
【0057】
(第2AIモデルを使用する場合)
図4に示すように、天候情報取得部32は、第2AIモデルM2が選択された場合には、すなわち対象期間が雨天である場合には、第2AIモデルM2の教師データとして用いられた天候情報と同じ種類の天候情報を、対象期間における天候情報として取得して、第2AIモデルM2への入力データとする。すなわち、天候情報取得部32は、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量と、対象期間における雨量と、対象期間における単位雨量と、対象期間における連続雨天期間とを取得して、第2AIモデルM2への入力データとする。季節情報と、曜日情報と、休日情報と、最高気温と、過去汚泥量とについては、第1AIモデルM1にも用いられたものなので、説明を省略する。
【0058】
天候情報取得部32は、設備Fが含まれる地域の、対象期間の雨量の合計の予測値を、対象期間における雨量として取得する。天候情報取得部32は、気象庁が予測した雨量のデータから、対象期間における雨量を取得してよい。
【0059】
天候情報取得部32は、設備Fが含まれる地域の、対象期間における単位時間当たりの雨量の予測値を、対象期間における単位雨量として取得する。天候情報取得部32は、対象期間の雨量の予測値から、対象期間における単位雨量を算出してよい。
【0060】
天候情報取得部32は、設備Fが含まれる地域の、対象期間までに連続して雨天となった期間の長さを、対象期間における連続雨天期間として取得する。天候情報取得部32は、気象庁が観測した雨量のデータから、連続雨天期間を算出してよい。ただし、対象期間より前の雨量が観測されていない場合(例えば現在よりも後の期間である場合)、天候情報取得部32は、気象庁による雨量の予測値から、連続雨天期間を算出してよい。
【0061】
演算部36は、学習済みの第2AIモデルM2を記憶部12から読み出し、天候情報取得部32が取得した対象期間における天候情報を取得する。演算部36は、天候情報取得部32が取得した対象期間における天候情報を、学習済みの第2AIモデルM2に入力する。すなわち本実施形態の例では、演算部36は、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量と、対象期間における雨量と、対象期間における単位雨量と、対象期間における連続雨天期間とを、第2AIモデルM2に入力する。第2AIモデルM2においては、対象期間におけるこれらの天候情報が入力データとして入力されて、演算が実行される。その結果、第2AIモデルM2からは、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値(対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の合計の予測値)が、出力データとして出力される。これにより、演算部36は、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測結果を取得する。このように、第2AIモデルM2は、対象期間における天候情報が入力されると、対象期間における汚泥Sの流出量が出力される学習済みのプログラムであるともいえる。
【0062】
なお、第2AIモデルM2を用いて設備Fからの汚泥流出量を予測する際に用いる天候情報は、以上のものに限られない。例えば、第2AIモデルM2用の天候情報として、対象期間における季節情報と、対象期間における曜日情報と、対象期間における休日情報と、対象期間における最高気温と、対象期間における過去汚泥量と、対象期間における雨量との少なくとも1つを用いてよい。また例えば、第2AIモデルM2用の天候情報として、対象期間における単位雨量と対象期間における連続雨天期間との少なくとも1つを用いてよい。
【0063】
(処理フロー)
以上説明した対象期間における汚泥Sの流出量の予測値の取得の処理フローを説明する。図5は、汚泥の流出量の予測値の取得フローを説明するフローチャートである。図5に示すように、解析装置100は、対象期間における雨量の予測値を取得し(ステップS10)、対象期間における雨量の予測値に基づき、対象期間が晴天であるか雨天であるかを判断する(ステップS12)。対象期間が晴天である場合(ステップS12;Yes)、解析装置100は、第1AIモデルM1を選択し(ステップS14)、対象期間における天候情報を第1AIモデルM1に入力する(ステップS16)。第1AIモデルM1で、対象期間における天候情報が入力されることで、対象期間における汚泥Sの流出量の予測値が出力され、解析装置100は、第1AIモデルM1から出力された汚泥Sの流出量の予測値を取得する(ステップS18)。一方、対象期間が雨天である場合(ステップS12;No)、解析装置100は、第2AIモデルM2を選択し(ステップS20)、対象期間における天候情報を第1AIモデルM1に入力する(ステップS22)。第2AIモデルM2で、対象期間における天候情報が入力されることで、対象期間における汚泥Sの流出量の予測値が出力され、解析装置100は、第2AIモデルM2から出力された汚泥Sの流出量の予測値を取得する(ステップS24)。
【0064】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る解析装置100は、未来の対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量を予測するものであって、天候情報取得部32と、選択部34と、演算部36とを含む。天候情報取得部32は、対象期間における天候情報を取得する。選択部34は、対象期間における天候情報に基づき、過去の晴天時における天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量との対応関係を機械学習させた第1AIモデルM1と、過去の雨天時における天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量との対応関係を機械学習させた第2AIモデルM2とのうちから、使用するAIモデルを選択する。演算部36は、選択部34によって選択されたAIモデルに、対象期間における天候情報を入力することで、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を取得する。
【0065】
設備Fからの送泥量を予測する際には、予測精度を向上させることが求められている。それに対し、本実施形態においては、晴天時用の第1AIモデルM1と雨天用の第2AIモデルM2とを準備しておき、予測の対象とする対象期間における天候情報から、第1AIモデルM1と第2AIモデルM2のうちから使用するAIモデルを選択して、使用する。そのため、対象期間の天候に最適なAIモデルを用いて、送泥量を予測することが可能となり、予測精度を向上させることができる。
【0066】
また、天候情報は、雨量の情報を含み、選択部34は、雨量の情報に基づいて対象期間が晴天であるか雨天であるかを判断し、晴天である場合には第1AIモデルM1を選択し、雨天である場合には第2AIモデルM2を選択する。本実施形態に係る解析装置100によると、対象期間の天候に最適なAIモデルを用いて、送泥量を予測することが可能となり、予測精度を向上させることができる。
【0067】
また、天候情報は、対象期間の季節情報と、対象期間の曜日の情報と、対象期間が祝日であるか平日であるかを示す情報と、対象期間における最高気温と、対象期間より前の所定期間における設備からの汚泥の流出量(過去汚泥量)の情報との、少なくとも1つを含む。このような天候情報をAIモデルの入力データとして用いることで、予測精度をより好適に向上させることができる。
【0068】
また、演算部36は、第1AIモデルM1を用いる場合に入力する天候情報には含まれない天候情報を、第2AIモデルM2を用いる場合に入力する。雨天時には、送泥量に影響を及ぼすパラメータが多くなる。そのため、本実施形態のように、雨天時用の第2AIモデルM2の入力データのパラメータを多くすることで、雨天時の予測精度をより好適に向上させることができる。
【0069】
また、演算部36は、第2AIモデルM2が選択された場合には、対象期間における天候情報として、対象期間までに連続して雨天となる期間を指す連続雨天期間の情報と、対象期間における単位時間当たりの雨量の情報との少なくとも1つを、第2AIモデルM2に入力して、対象期間における設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を取得する。雨天時用の第2AIモデルM2の入力データとしてこれらを用いることで、雨天時の予測精度をより好適に向上させることができる。
【0070】
また、第1AIモデルM1は、サポートベクター回帰により設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を算出し、第2AIモデルM2は、ランダムフォレスト回帰により設備Fからの汚泥Sの流出量の予測値を算出する。晴天時にはサポートベクター回帰方式のAIモデルを用い、雨天時にはランダムフォレスト回帰方式のAIモデルを用いることで、晴天時及び雨天時の予測精度をより好適に向上させることができる。
【0071】
また、解析装置100は、第1AIモデルM1と第2AIモデルM2とを生成する学習部20を更に含む。学習部20は、過去の晴天時における天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量を教師データとして機械学習させることで第1AIモデルM1を生成し、過去の雨天時における天候情報と設備Fからの汚泥Sの流出量を教師データとして機械学習させることで第2AIモデルM2を生成する。このように各AIモデルを学習させることで、AIモデルによる晴天時及び雨天時の予測精度をより好適に向上させることができる。
【0072】
(他の例)
以下、本実施形態の他の例について説明する。本実施形態においては、対象期間が晴天であるか雨天であるかを判断し、対象期間が晴天時においては第1AIモデルM1を用い、対象期間が雨天時には第2AIモデルM2を用いることで、汚泥の流出量の予測値の予測精度を向上させる。ただし、晴天であるか雨天であるかの判断に加えて、残留雨天日であるかの判断も行ってよい。残留雨天日とは、対象期間が晴天であるが、対象期間よりも48時間前までの間に雨天とされる期間があることを指す。すなわち、対象期間の雨量の予測値が0mmより大きい場合には、対象期間は雨天であるとされ、対象期間の雨量の予測値が0mmであるが48時間前までの間の雨量が0mmより大きい場合には、対象期間は残留雨天日であるとされ、対象期間の雨量の予測値が0mmであり48時間前までの間の雨量も0mmの場合には、対象期間は晴天であるとされる。この場合、残留雨天日とされた場合には、晴天と同様に第1AIモデルM1が用いられる。ただしそれに限られず、残留雨天日とされた場合には、第1AIモデルM1及び第2AIモデルM2とは別のIAモデルを用いてもよい。
【0073】
図6は、本実施形態の他の例に係る設備の模式図である。本実施形態の例では、設備Fからの汚泥Sが設備FAに流入されていたため、設備Fからの汚泥Sの流出量が、設備FAへの汚泥の流入量に合致していたが、図6の例に示すように、設備FAには、設備Fからの汚泥Sに加えて、別の設備FBからの汚泥S3も流入する場合がある。この場合、設備FAへの汚泥の流入量は、設備Fからの汚泥Sの流出量と設備FBからの汚泥S3の流入量との合計となる。この場合、解析装置100は、設備FBからの汚泥S3の流入量を考慮して、設備FAへの汚泥の流入量を予測してよい。以下、その場合の例を説明する。
【0074】
図6の例の場合においては、学習部20は、第1AIモデルM1に学習させる場合に、本実施形態で説明したもの(季節情報、曜日情報、休日情報、最高気温、過去汚泥量)に加えて、所定期間における設備FBからの汚泥S3の流出量を、第1AIモデルM1の教師データ用の天候情報として用いる。所定期間における設備FBからの汚泥S3の流出量は、実測値であってよい。そして、学習部20は、所定期間における設備FAへの汚泥の流入量の実測値を、第1AIモデルM1からの出力データの解となる出力用の教師データとする。学習部20は、これらの教師データを用いて、第1AIモデルM1を機械学習させる。
【0075】
そして、演算部36は、第1AIモデルM1を用いて設備FAへの汚泥の流入量を予測する際には、本実施形態で説明したもの(季節情報、曜日情報、休日情報、最高気温、過去汚泥量)に加えて、対象期間における設備FBからの汚泥S3の流出量の予測値を、第1AIモデルM1に入力する天候情報として用いる。対象期間における設備FBからの汚泥S3の流出量の予測値は、例えば対象期間における予定送泥量であってもよいし、本実施形態と同様の方法で予測した値であってもよい。演算部36は、これらの天候情報を第1AIモデルM1に入力し、第1AIモデルM1から、設備FAへの汚泥の流入量の予測値を取得する。
【0076】
また、図6の例の場合においては、学習部20は、第2AIモデルM2に学習させる場合に、本実施形態で説明したもの(季節情報、曜日情報、休日情報、最高気温、過去汚泥量、雨量、単位雨量、連続雨天期間)に加えて、所定期間における設備FBからの汚泥S3の流出量を、第2AIモデルM2の教師データ用の天候情報として用いる。学習部20は、所定期間における設備FAへの汚泥の流入量の実測値を、第2AIモデルM2からの出力データ(解)となる出力用の教師データとする。学習部20は、これらの教師データを用いて、第2AIモデルM2を機械学習させる。
【0077】
そして、演算部36は、第2AIモデルM2を用いて設備FAへの汚泥の流入量を予測する際には、本実施形態で説明したもの(季節情報、曜日情報、休日情報、最高気温、過去汚泥量、雨量、単位雨量、連続雨天期間)に加えて、対象期間における設備FBからの汚泥S3の流出量の予測値を、第2AIモデルM2に入力する天候情報として用いる。演算部36は、これらの天候情報を第2AIモデルM2に入力し、第2AIモデルM2から、設備FAへの汚泥の流入量の予測値を取得する。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
20 学習部
32 天候情報取得部
34 選択部
36 演算部
100 解析装置
M1 第1AIモデル
M2 第2AIモデル
S 汚泥
図1
図2
図3
図4
図5
図6