(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20240827BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240827BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/15
H01G9/028 G
(21)【出願番号】P 2021066763
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大橋 赳太
(72)【発明者】
【氏名】峯村 英利
(72)【発明者】
【氏名】多田 勝
(72)【発明者】
【氏名】根尾 定弘
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-036603(JP,A)
【文献】特開2020-059837(JP,A)
【文献】特開2017-101104(JP,A)
【文献】特開2017-081871(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153752(WO,A1)
【文献】特開2021-36603(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153242(WO,A1)
【文献】特開2019-110334(JP,A)
【文献】国際公開第2013/081099(WO,A1)
【文献】特開2014-127682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/15
H01G 9/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置されたセパレータとを有するコンデンサ素子本体部を作製する第1工程と、
第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液を調整する第2工程と、
前記コンデンサ素子本体部に、前記混合液を含浸させた後、熱処理することにより、前記コンデンサ素子本体部の空隙に導電性高分子層を形成する第3工程と、
を有し、
前記第1の導電性高分子のメジアン径が、100nm以上120nm以下であり、
前記混合液において、
前記第1の導電性高分子の濃度が、
前記第2の導電性高分子の濃度より高く、かつ、前記第2の導電性高分子の濃度の5倍以下であることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記第1の導電性高分子および
前記第2の導電性高分子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有することを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記第2の導電性高分子は、化学式1によって表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【化1】
前記化学式1において、
xは2以上の整数であり、
mは1~10の整数であり、
nは0又は1であり、
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、または第4級アンモニウムカチオンであり、
R
2は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、または、フッ素原子である
【請求項4】
誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置されたセパレータとを有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子が収容された外装体と、
を備えた電解コンデンサであり、
溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子が混合状態である導電性高分子層が前記セパレータに保持されており、
前記第1の導電性高分子のメジアン径が、100nm以上120nm以下であり、
前記導電性高分子層において、前記第1の導電性高分子が占める体積が、
前記第2の導電性高分子が占める体積より大きく、かつ、前記第2の導電性高分子が占める体積の5倍以下であることを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第1の導電性高分子および前記第2の導電性高分子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有することを特徴とする請求項
4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記第2の導電性高分子は、化学式1によって表される化合物であることを特徴とする請求項
4または
5に記載の電解コンデンサ。
【化1】
前記化学式1において、
xは2以上の整数であり、
mは1~10の整数であり、
nは0又は1であり、
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、または第4級アンモニウムカチオンであり、
R
2は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基、または、フッ素原子である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサとして、誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に配置されたセパレータとを有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が収納された外装体と、を備えた電解コンデンサが知られている。
【0003】
特許文献1には、コンデンサ素子に、導電性高分子の粒子が溶媒に分散した導電性高分子分散体を含浸させた後、乾燥(熱処理)することにより、陽極(陽極電極箔)に固体電解質層が形成された固体電解コンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陽極の表面(誘電体酸化皮膜の表面)は、ピット部(穴)がつながったスポンジ状の構造となっている。導電性高分子分散体を含浸させたとき、溶媒に分散した導電性高分子は、ある程度の大きさを有する粒子として分散しているため、ピット部とピット部との接続箇所が粒子径より狭くなっていると接続箇所を通過して深部に入り込みにくい。このようなピット部の接続箇所の先の深部には、導電性高分子分散体に含まれる溶媒だけが入り込む。しかし、熱処理工程で溶媒が蒸発することにより、ピット部に空隙ができる。
【0006】
陽極と陰極との間では、導電性高分子分散体を含浸させた後、熱処理工程で、導電性高分子の周囲に存在する溶媒が蒸発する。これにより、導電性高分子の周囲に、隙間が生じる。
【0007】
ピット部の空隙や、導電性高分子の周囲の隙間に、水分が流入した場合、電解コンデンサの特性(静電容量、等価直列抵抗(ESR)など)が劣化する。特に、コンデンサの使用環境が高湿度である場合、水分が流入しやすいため、電解コンデンサの特性が劣化しやすい。
【0008】
本発明の目的は、湿度が高い環境下でも電解コンデンサの特性劣化を抑制可能な電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置されたセパレータとを有するコンデンサ素子本体部を作製する第1工程と、前記コンデンサ素子本体部に、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液を調整する第2工程と、前記コンデンサ素子本体部に、前記混合液を含浸させた後、熱処理することにより、前記コンデンサ素子本体部に導電性高分子層を形成する第3工程と、を有し、前記混合液において、分散した導電性高分子の濃度が、溶解した導電性高分子の濃度の5倍以下である。
【0010】
本発明者らの知見から、以下のことがわかった。
上記方法によると、コンデンサ素子本体部に、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液が含浸される。
コンデンサ素子本体部に上記混合液を含浸させた場合、誘電体酸化皮膜に形成された小さなピット部に、溶解した第2の導電性高分子が入り込みやすい。溶解した第2の導電性高分子は、その後の熱処理工程で蒸発せず、ピット部に残る。そのため、ピット部に空隙が生じにくい。
また、コンデンサ素子本体部に混合液を含浸させたとき、分散した第1の導電性分子の周囲に、溶解した第2の導電性高分子が存在する。溶解した導電性高分子は、熱処理工程で蒸発しない。そのため、第1の導電性高分子の周囲に第2の導電性高分子が形成され、微細な隙間が生じにくい。
上記より、陽極のピット部、陽極と導電性高分子層との界面、陰極のピット部、陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に、空隙や隙間が生じにくい。そのため、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分が流入しにくい。
したがって、本発明によると、湿度が高い環境下でも電解コンデンサの特性劣化を抑制可能な電解コンデンサを製造することができる。言い換えると、耐湿性に優れた電解コンデンサを製造することができる。
【0011】
上記構成において、前記第1の導電性高分子および第2の導電性高分子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有するものであってもよい。
【0012】
第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有する場合、混合液中で、第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が混ざりやすい。これにより、混合液をコンデンサ素子に含浸させたとき、第1の導電性分子の周囲に、第2の導電性高分子が確実に存在するようになる。第2の導電性高分子は、熱処理工程で蒸発しない。そのため、第1の導電性高分子の周囲に隙間がより形成されにくい。そのため、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分が流入しにくい。したがって、湿度が高い環境でも電解コンデンサの特性がより劣化にしにくい。
【0013】
上記構成において、前記第2の導電性高分子は、化学式1によって表される化合物であってもよい。
【化1】
前記化学式1において、
xは2以上の整数であり、
mは1~10の整数であり、
nは0又は1であり、
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、または第4級アンモニウムカチオンであり、
R
2は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基またはフッ素原子である。
【0014】
第2の導電性高分子が、化学式1で表される化合物である場合、混合液中で、分散した第1の導電性高分子および溶解した第2の導電性高分子が混ざりやすいと考えられる。これにより、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に、空隙がより形成されにくい。そのため、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分が流入しにくい。したがって、湿度が高い環境でも電解コンデンサの特性がより劣化しにくい。
【0015】
上記構成において、前記混合液において、前記第1の導電性高分子の濃度が、前記第2の導電性高分子の濃度より高いことが好ましい。
【0016】
第1の導電性高分子の濃度が高くなるにつれて、導電性高分子層の厚さが厚くなる。導電性高分子層の厚さをある程度厚くできるため、電解コンデンサのESRを低く抑えることができる。
【0017】
本発明に係る電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜を有する陽極と、陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置されたセパレータとを有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が収容された外装体と、を備えた電解コンデンサであり、溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子が混合状態である導電性高分子層が前記セパレータに保持されており、前記導電性高分子層において、前記第1の導電性高分子が占める体積が、前記第2の導電性高分子が占める体積の5倍以下である。
【0018】
上記構成によると、溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と、溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子が混合状態である導電性高分子層が形成されている。
誘電体酸化皮膜に形成された小さなピット部には、第2の導電性高分子が入り込んでいるため、ピット部に空隙があまり存在しないと考えられる。
導電性高分子層には、第1の導電性分子の周囲に、第2の導電性高分子が存在するため、第1の導電性高分子の周囲に隙間があまり存在しないと考えられる。
上記より、陽極のピット部、陽極と導電性高分子層との界面、陰極のピット部、陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に、空隙や隙間があまり存在しないと考えられる。そのため、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に水分が流入しにくい。
したがって、湿度が高い環境下でも電解コンデンサの特性劣化を抑制可能な電解コンデンサを提供することができる。言い換えると、耐湿性に優れた電解コンデンサを提供することができる。
【0019】
上記構成において、前記第1の導電性高分子および前記第2の導電性高分子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有するものであってもよい。
また、上記構成において、前記第2の導電性高分子は、化学式1によって表される化合物であってもよい。
【化1】
前記化学式1において、
xは2以上の整数であり、
mは1~10の整数であり、
nは0又は1であり、
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、または第4級アンモニウムカチオンであり、
R
2は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基またはフッ素原子である。
【0020】
第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有する場合、第1の導電性高分子と第2の導電性高分子とが混ざりやすい。そのため、導電性高分子層で、第1の導電性高分子が偏在したり、第2の導電性高分子が偏在したりしにくい。導電性高分子層は、第1の導電性高分子の周囲に、第2の導電性高分子が存在する層となる。そのため、第1の導電性高分子の周囲に隙間があまり存在しない。したがって、陽極ならびに陰極のピット部、陽極ならびに陰極と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分がより流入しにくい。
【0021】
前記導電性高分子層において、分散液に分散した前記第1の導電性高分子が占める体積が、溶液に溶解した前記第2の導電性高分子が占める体積より大きいことが好ましい。
【0022】
導電性高分子層において、前記第1の導電性高分子が占める体積が、前記第2の導電性高分子が占める体積より大きくなるにつれて、導電性高分子層の厚さが厚くなる。導電性高分子層の厚さをある程度厚くできるため、電解コンデンサのESRを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、湿度が高い環境でも電解コンデンサの特性劣化を抑制可能な電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの要部切断正面図である。
【
図2】
図1に示すコンデンサ素子の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
電解コンデンサ1は、
図1に示すように、外装ケース2および外装ケース2の開口を封止した封口体3を有する外装体4と、外装体4に収容されたコンデンサ素子5とを備えている。
【0027】
コンデンサ素子5は、
図2に示すように、陽極11と陰極12とをセパレータ13を介して円筒形に巻回して形成され、外周面に貼り付けられたテープ14により巻止めされている。
【0028】
陽極11および陰極12にはそれぞれ図示しないリードタブが接続されている。陽極11は、リードタブを介して、リード端子21に接続されている。陰極12は、リードタブを介して、リード端子22に接続されている。リード端子21およびリード端子22は、それぞれ、
図1に示すように、封口体3に形成された孔31および孔32を通って外部に引き出されている。
【0029】
図2に示す陽極11は、表面に誘電体である誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属である。弁作用金属として、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブおよびチタンから構成される群より選択される少なくとも1つが挙げられる。誘電体酸化皮膜は、例えば、弁作用金属の箔の表面をエッチング処理により粗面化した後、化成処理を施すことによって形成される。
【0030】
陰極12は、弁作用金属を用いて形成されている。陰極12として、例えば、弁作用金属箔の表面をエッチング処理により粗面化した箔、または、粗面化後、化成処理を施した箔が使用される。陰極12として、エッチング処理を施さないプレーン箔を使用してもよい。さらに、前記粗面化箔もしくはプレーン箔の表面に、チタン、ニッケル、チタン炭化物、ニッケル炭化物、チタン窒化物、ニッケル窒化物、チタン炭窒化物およびニッケル炭窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属薄膜が形成されたコーティング箔を使用してもよい。また、粗面化箔もしくはプレーン箔の表面にカーボン薄膜が形成されたコーティング箔を使用してもよい。
【0031】
セパレータ13の材質は特に限定されない。セパレータ13として、例えば、セルロースを主体とするものを使用してもよい。
【0032】
陽極11の誘電体酸化皮膜と陰極12との間に、セパレータに保持された導電性高分子層が形成されている。導電性高分子層は、溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子が混合状態の層である。第1の導電性高分子と第2の導電性高分子が混合状態であるとは、第1の導電性高分子だけが集まって存在したり、第2の導電性高分子だけが集まって存在したりしているのではなく、第1の導電性高分子と第2の導電性高分子が混ざって存在することである。第1の導電性高分子と第2の導電性高分子が混合状態とは、例えば、第1の導電性高分子が分散し、第1の導電性高分子のそれぞれの周囲に第2の導電性高分子が存在することである。導電性高分子層は、後述するように、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液を、コンデンサ素子本体部に含浸させた後、熱処理することによって形成される。
【0033】
導電性高分子層に、溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と、溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子とが存在する。「溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子」は、溶媒に溶解することなく溶媒中ではコロイド粒子状態で存在する導電性高分子である。「溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子」は、溶媒中にイオン状態で存在する導電性高分子である。
【0034】
第1の導電性高分子の大きさは、特に限定されない。分散液に分散する性質の導電性高分子の平均粒子径が、例えば、動的光散乱法で10nm以上150nm以下でもよい。
【0035】
導電性高分子層において、第1の導電性高分子が占める体積、および、第2の導電性高分子が占める体積は、特に限定されない。第1の導電性高分子が占める体積と第2の導電性高分子が占める体積との比率は、特に限定されない。例えば、導電性高分子層において、「第1の導電性高分子が占める体積」と「第2の導電性高分子が占める体積」との比率は、例えば、1.5:1~5:1でもよい。第1の導電性高分子が占める体積と第2の導電性高分子が占める体積との比率、および、これらの大小関係は、後述する電解コンデンサの製造方法における混合液の第1の導電性高分子の濃度と第2の導電性高分子の濃度との比率、および、これらの大小関係と同様な傾向があると推測される。
【0036】
第1の導電性高分子が占める体積が大きいほど、電解コンデンサのESRが低い傾向があると推測される。この点を考慮して、例えば、導電性高分子層において、第1の導電性高分子が占める体積が第2の導電性高分子が占める体積より大きいことが好ましい。第2の導電性高分子が占める体積が小さすぎる場合、溶液に溶解していた第2の導電性高分子による効果が得られにくくなると推測される。この点を考慮して、導電性高分子層において、第1の導電性高分子が占める体積は、第2の導電性高分子が占める体積の5倍以下とする。
【0037】
第1の導電性高分子および第2の導電性高分子は、特定の導電性高分子に限定されない。第1の導電性高分子および第2の導電性高分子として、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンまたはそれらの誘導体が挙げられる。
【0038】
第1の導電性高分子および第2の導電性高分子は、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有していてもよい。第1の導電性高分子および第2の導電性高分子の一方が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有していてもよい。第1の導電性高分子および第2の導電性高分子の両方が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有していてもよい。これらの両方がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有している場合、第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が混在しやすいと考えられる。
本発明において、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有するとは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の誘導体を骨格構造として有することである。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の誘導体として、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のエチレン基が他のアルキル基に置換されたもの、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のエチレン基の水素が他の置換基に置換されたものが挙げられる。
【0039】
例えば、第1の導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸であって、第2の導電性高分子が、化学式1によって表わされるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)誘導体でもよい。
【化1】
前記化学式1において、
xは2以上の整数であり、
mは1~10の整数であり、
nは0又は1であり、
Mは水素イオン、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、または第4級アンモニウムカチオンであり、
R
2は水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、置換基を有する炭素数1~6のアルキル基またはフッ素原子である。
【0040】
第1の導電性高分子を構成するドーパントとして、例えば、ポリスチレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸および1-ナフタレンスルホン酸から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0041】
混合液および/または導電性高分子層は、上記に加え、酸化防止剤、界面活性剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
上述した電解コンデンサ1は、例えば以下の方法によって作製される。
【0043】
所定の幅に切断された陽極11および陰極12(
図2参照)に、外部引き出し電極用のリードタブを接続する。リードタブが接続された陽極11および陰極12を、セパレータ13を介して巻回することにより、コンデンサ素子本体部を作製する(第1工程)。陽極11は、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属である。
【0044】
コンデンサ素子本体部の切り口や本体部の作製時に欠損した誘電体酸化皮膜を修復するため、本体部を化成処理する。化成処理は、化成液中で本体部に電圧を印加することによって行われる。化成処理に使用される化成液として、例えば、アジピン酸およびアジピン酸塩の少なくとも一方を含む水溶液が挙げられる。
【0045】
導電性高分子層を形成するため、溶媒に分散する性質の第1の導電性高分子と溶媒に溶解する性質の第2の導電性高分子を含む混合液を準備する(第2工程)。この混合液は、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液である。混合液は、例えば、第1の導電性高分子が溶媒に分散した分散液と、第2の導電性高分子が溶媒に溶解した溶液との混合液でもよい。混合液は、例えば、第1の導電性高分子が溶媒に分散した分散液に第2の導電性高分子を溶解させたものでもよく、第2の導電性高分子が溶媒に溶解した溶液に第1の導電性高分子を分散させたものでもよい。
混合液において、分散液における導電性高分子の濃度は、溶液の導電性高分子の濃度の5倍以下である。例えば、分散液における導電性高分子の濃度を、溶液の導電性高分子の濃度より大きくしてもよい。
【0046】
第1の導電性高分子と第2の導電性高分子は、例えば、上述した導電性高分子である。第1の導電性高分子が分散した分散液として、例えば、高分子としてポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含み、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含む導電性高分子PEDOT/PSSが溶媒である水に分散した液が挙げられる。溶媒は、特定の溶媒に限定されない。溶媒は、例えば、水でもよく、有機溶媒でもよい。第2の導電性高分子が溶解した溶液として、自己ドープ型導電性高分子(S-PEDOT)であるポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)が溶媒である水に溶解した溶液が挙げられる。
【0047】
上記混合液に、コンデンサ素子本体部を浸漬することでコンデンサ素子本体部に混合液が含浸される。陽極11の誘電体酸化皮膜表面にも、混合液が含浸される。その後、コンデンサ素子本体部を熱処理することにより(例えば、40℃以上220℃以下で加熱することにより)、導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子5が得られる。導電性高分子層は、陽極11の誘電体酸化皮膜と陰極12との間にセパレータ13に保持されて形成される(第3工程)。
【0048】
得られたコンデンサ素子5を外装ケース2(
図1参照)に収容し、封口体3により外装ケース2の開口を閉じる。これにより、電解コンデンサ1が得られる。
【0049】
本発明者らにより、以下の知見が得られた。
導電性高分子層を形成するため、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液を用いる。
コンデンサ素子5に上記混合液を含浸させた場合、陽極11および陰極12に形成された小さなピット部に、溶解した第2の導電性高分子が入り込みやすいと考えられる。溶解した第2の導電性高分子は、その後の熱処理工程で蒸発せず、ピット部に残る。そのため、ピット部に空隙が生じにくいと考えられる。
また、混合液をコンデンサ素子に含浸させたとき、第1の導電性分子の周囲に、第2の導電性高分子が存在すると考えられる。第2の導電性高分子は、熱処理工程で蒸発しない。そのため、第1の導電性高分子の周囲に隙間が生じにくいと考えられる。
上記より、陽極11のピット部、陽極11と導電性高分子層との界面、陰極12のピット部、陰極12と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に、空隙や隙間が生じにくいと考えられる。そのため、陽極11ならびに陰極12のピット部、陽極11ならびに陰極12と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分が流入しにくい。
したがって、上記方法により、湿度が高い環境下でも、湿度が高くない環境下でも、電解コンデンサ1の特性劣化を抑制可能な電解コンデンサ1を製造することができる。言い換えると、耐湿性に優れた電解コンデンサ1を製造することができる。
【0050】
また、混合液において、第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)骨格を有する場合、例えば、第1の導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸であり、第2の導電性高分子が上記化学式1によって表わされるポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸))である場合、混合液中で、第1の導電性高分子および第2の導電性高分子が混ざりやすい。これにより、混合液をコンデンサ素子に含浸させたとき、第1の導電性高分子の周囲に、第2の導電性高分子が確実に存在するようになる。第2の導電性高分子は、熱処理工程で蒸発しない。そのため、第1の導電性高分子の周囲に隙間がより形成されにくい。そのため、陽極11ならびに陰極12のピット部、陽極11ならびに陰極12と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ水分が流入しにくい。したがって、湿度が高い環境でも電解コンデンサ1の特性がより劣化にしにくい。
【0051】
上記方法によって得られた電解コンデンサ1によると、上述したように、陽極11のピット部、陽極11と導電性高分子層との界面、陰極12のピット部、陰極12と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中に、空隙や隙間があまり存在しないと考えられる。そのため、陽極11のピット部、陽極11と導電性高分子層との界面、陰極12のピット部、陰極12と導電性高分子層との界面、および、導電性高分子層中へ、水分が流入しにくい。
したがって、湿度が高い環境下でも、湿度が高くない環境下でも、電解コンデンサの特性が劣化しにくい。言い換えると、電解コンデンサ1は、耐湿性に優れる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0053】
以下の方法により電解コンデンサを作製した。
【0054】
所定の幅に切断された陽極アルミ箔および陰極アルミ箔に外部引き出し電極用のアルミリードタブを接続した。陽極アルミ箔は、弁作用金属であるアルミニウム箔の表面にエッチング処理を施すことよって粗面化した後、60Vで化成処理を施すことによって誘電体酸化皮膜が形成されたものである。陰極アルミ箔は、カーボンが蒸着されたアルミニウム箔である。陽極アルミ箔および陰極アルミ箔を、ナイロンを主体とした電解紙(セパレータ)を介して巻回することにより、コンデンサ素子となる本体部を作製した。
【0055】
陽極アルミ箔の切り口およびリードタブの取り付け部に欠損した誘電体酸化皮膜を修復するため、化成処理を行った。化成処理は、化成液にコンデンサ素子本体部を浸した状態で、誘電体酸化皮膜の化成電圧値に近似した電圧を印加することにより行った。化成液として、アジピン酸アンモニウム濃度が2wt%のアジピン酸アンモニウム水溶液を使用した。
【0056】
次に、コンデンサ素子本体部に、下記の条件(後述の[導電性高分子層の作製条件])の液を含浸させた後、コンデンサ素子本体部を40℃に設定した恒温槽内で30分間保持した後、160℃に設定した恒温槽内で30分間保持し乾燥させる熱処理をすることにより、コンデンサ素子に導電性高分子層を形成した。
【0057】
得られたコンデンサ素子をアルミニウム製のケース内に収容した後、ケースの開口の周縁をカーリング加工した。150℃に設定された恒温槽内で、ケースに収容されたコンデンサ素子に定格電圧(35V)を印加し、エージング処理を施すことにより、電解コンデンサを作製した。本実験で作製した電解コンデンサは、定格電圧35WV、定格静電容量150μFおよび製品サイズφ8×10L(mm)の製品である。
【0058】
[導電性高分子層の作製条件]
<No.1(従来条件)>
水溶媒に、PEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上が、動的光散乱法による測定で粒子径分布の頻度が50%に到達したD50粒子径(メジアン径)40~60nm)と、エチレングリコールを10wt%とを混合した分散液
<No.2>
水溶媒に、PEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸))を、7:3(分散液と水溶液の混合比)で混合した混合液
<No.3(従来条件)>
自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液
<No.4>
PEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径100~1200nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、7:3(分散液と水溶液の混合比)で混合した混合液
<No.5(従来条件)>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径100~120nm)を含む分散液
<No.6>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、4:6(分散液と水溶液の混合比)で混合した混合液
<No.7>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、6:4(分散液と水溶液の混合比)で混合した混合液
<No.8>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.0wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、8:2(分散液と水溶液の混合比)で混合した混合液
<No.9>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.5wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、導電性高分子重量比5:1(分散液と水溶液の混合比4:1)で混合した混合液
<No.10(比較条件)>
水溶媒中にPEDOT/PSS(濃度 2.5wt%、PEDOT/PSS粒子の90%以上がメジアン径40~60nm)を含む分散液と、自己ドープ型のS-PEDOT(濃度 2.0wt%)が溶解した水溶液とを、導電性高分子重量比11.25:1(分散液と水溶液の混合比9:1)で混合した混合液
【0059】
(評価)
初期特性として、20℃の環境下で、No.1~10の電解コンデンサのおよび等価直列抵抗(ESR)を測定した。
次に、温度85℃、相対湿度85%の高温高湿度雰囲気に、No.1~10の電解コンデンを1000時間保持した後(高温高湿度試験後)、コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を測定した。
【0060】
表1に、実験条件および評価結果を示している。
【表1】
【0061】
導電性高分子の分散液だけを用いたNo.1およびNo.5では、高温高湿度試験後のESRが高かった。
【0062】
導電性高分子の溶液だけを用いたNo.3では、初期のESRが高く、高温高湿度試験後のESRも高かった。
【0063】
導電性高分子の分散液と溶液の混合液を用いたNo.2、No.4、No.6~No.9では、高温高湿度試験後のESRが低かった。
【0064】
なお、No.10では、導電性高分子の分散液と溶液の混合液を用いたが、第1の導電性高分子濃度:第2の導電性高分子濃度の比率が9:1と、第1の導電性高分子濃度が非常に高い条件であるため、高温高湿度試験後のESRが高い結果となった。
【0065】
上記実験より、以下のことがわかった。
導電性高分子層を形成するため、第1の導電性高分子が溶媒に分散状態であり、第2の導電性高分子が溶媒に溶解状態である混合液を用いるとともに、第1の導電性高分子の濃度を第2の導電性高分子の濃度の5倍以下にする。これにより、高温高湿環境下で、電解コンデンサの特性劣化を抑制可能な電解コンデンサ1が得られることがわかった。
なお、No.2、No.4、No.6~No.9の電解コンデンサを高温高湿環境下に保持した場合、電解コンデンサの特性劣化を抑制できた。このことから、No.2、No.4、No.6~No.9の電解コンデンサは、高温および/または高湿の環境下に長時間保持された場合にも、特性劣化が抑制されるコンデンサであると考えられる。
また、No.2、No.4、No.7~No.9の電解コンデンサは、高温高湿環境下での電解コンデンサの特性劣化を抑制しながら、初期特性のESRも小さくすることができた。このことから、第1の導電性高分子の濃度を第2の導電性高分子の濃度より大きくすることが好ましいといえる。
【0066】
また、No.2、No.4、No.6~No.9のうち、No.4の高温高湿度試験後のESRは、No.2およびNo.6~No.9の高温高湿度試験後のESRより低かった。No.4では、第1の導電性高分子として、No.2およびNo.6~No.9のときより、メジアン径が大きい導電性高分子を使用した。このことから、第1の導電性高分子として、メジアン径が大きい導電性高分子を使用した場合、高温高湿度試験後のESRが低い傾向があることがわかった。
【0067】
上記実験では、第1の導電性高分子としてPEDOTを含み、ドーパントとしてPSSを含む分散液を使用した。しかし、溶媒に分散する性質を有する第1の導電性高分子はPEDOTに限られない。また、ドーパントはPSSに限られない。第1の導電性高分子として他の導電性高分子を使用した場合にも、上記と同様な効果が得られる。また、他のドーパントを使用した場合にも、上記と同様な効果が得られる。
【0068】
また、上記実験では、第2の導電性高分子として、自己ドープ型のS-PEDOTを含む溶液を使用した。しかし、溶媒に溶解する性質を有する第2の導電性高分子はS-PEDOTに限られない。第2の導電性高分子として他の導電性高分子を使用した場合にも、上記と同様な効果が得られる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について実施例に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
また、上記実験では、定格電圧35WV、定格容量150μFおよび製品サイズφ8×10L(mm)の電解コンデンサを作製したが、本発明の電解コンデンサの定格電圧、定格容量および製品サイズは上記に限られない。
【符号の説明】
【0071】
1 電解コンデンサ
2 外装ケース
3 封口体
4 外装体
5 コンデンサ素子
11 陽極
12 陰極
21,22 リード端子