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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】掃除機並びに掃除機管理システム
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20240827BHJP
   A47L 5/24 20060101ALI20240827BHJP
   A47L 9/04 20060101ALI20240827BHJP
   G16Y 40/40 20200101ALI20240827BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20240827BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240827BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
A47L9/28 Z
A47L9/28 Q
A47L9/28 U
A47L5/24 A
A47L5/24 Z
A47L9/28 G
A47L9/28 K
A47L9/04 A
A47L9/28 L
G16Y40/40
G16Y40/10
G16Y40/20
G16Y40/35
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021067641
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022162696
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
(72)【発明者】
【氏名】倉田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】高木 一輝
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000442(JP,A)
【文献】特開2020-089431(JP,A)
【文献】特開2020-151010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
A47L 5/24
A47L 9/04
G16Y 40/40
G16Y 40/10
G16Y 40/20
G16Y 40/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯情報端末と掃除機とセンタ装置がインターネットを介して接続された掃除機管理システムであって、
前記掃除機は、電力変換器により制御されるモータの回転数並びにモータ電流を計測するセンサと、前記センサの出力をインターネットに伝送するための通信手段を備えており、前記モータは、回転ブラシを駆動する吸口モータとブロワを駆動するファンモータであり、前記電力変換器は、設定された前記モータの回転数並びにモータ電流の設定と、回転数並びにモータ電流の帰還信号の偏差に応じて制御され、前記モータの回転数並びにモータ電流の設定は、前記通信手段を介して前記センタ装置から与えられるとともに、
前記センタ装置は、個別の掃除機の前記電力変換器が入力一定制御または電流一定制御を行うときにはその掃除機から入手したモータの回転数が閾値を超えると目詰まり判定として当該の個別の掃除機のメンテナンスに関する情報を当該の個別の掃除機の利用者が保有する前記携帯情報端末に送信個別の掃除機の前記電力変換器が回転数一定制御を行うときにはその掃除機から入手したモータのモータ電流が閾値を超えると目詰まり判定として当該の個別の掃除機のメンテナンスに関する情報を当該の個別の掃除機の利用者が保有する前記携帯情報端末に送信し、
また前記センタ装置は、複数の掃除機からの入力を用いて床面判定処理を行い、床面の割合と過去の掃除時間から個別の掃除機についての最適な吸込力と掃除時間を算出し、前記モータの回転数並びにモータ電流の設定として前記通信手段を介して個別の掃除機に送信することを特徴とする掃除機管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の掃除機管理システムであって、
前記モータは、回転ブラシを駆動する吸口モータであり、
前記センタ装置は、吸口モータの負荷電流の増加により前記回転ブラシへのごみ絡みをメンテナンスの情報として前記携帯情報端末に送信することを特徴とする掃除機管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の掃除機管理システムであって、
前記掃除機のモータは、回転ブラシを駆動する吸口モータとブロワを駆動するファンモータであり、床面の性状が木材であるときに前記ファンモータの回転数設定を上昇させ、床面の性状が絨毯であるときに前記吸口モータの回転数設定を上昇させる回転数の設定を送信することを特徴とする掃除機管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の掃除機管理システムであって、
前記センタ装置は、掃除機のメンテナンスの情報を用いて床面に積もるごみの量を推定
し、その地域で同じ傾向を示している場合に、花粉によるものと推定し、前記掃除機に対
して花粉除去に適するモータの回転数またはモータ電流の設定を送信し、前記掃除機は送
信により設定された設定により前記電力変換器を操作することを特徴とする掃除機管理シ
ステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機並びに掃除機管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭の電気製品について、これをIoT(Internet of things)化する傾向にある。例えば、掃除機を対象として特許文献1では、遠隔地からであっても家屋内を掃除することができる家屋内清掃システムを提供することを目的として、「携帯電話網及びインターネットを介した遠隔操作によって家屋内を清掃する家屋内清掃システムであって、通信機能を有し、稼動指示に応じて家屋内を清掃する掃除機ロボットと、携帯電話網、インターネット及び無線LAN基地局を介して、掃除機ロボットに稼動指示を与える携帯電話機とを備える。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-118354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、掃除機ロボットを対象とし、その動作を制御管理するものである。これに対し、I0Tのより進化した利用形態においては、掃除機ロボットばかりではなく、一般的な掃除機に対しても適用でき、かつ動作の制御管理にとどまらず、掃除機の性能に関与する運用を可能とすることで、より利便性の高い掃除機並びに掃除機管理システムとすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のことから本発明においては「電力変換器により制御されるモータを備えた掃除機であって、モータの回転数並びにモータ電流を計測するセンサと、センサの出力をインターネットに伝送するための通信手段を備えることを特徴とする掃除機」としたものである。
【0006】
また本発明においては「携帯情報端末と掃除機とセンタ装置がインターネットを介して接続された掃除機管理システムであって、掃除機は、電力変換器により制御されるモータの回転数並びにモータ電流を計測するセンサと、センサの出力をインターネットに伝送するための通信手段を備えており、センタ装置は、複数の掃除機から入手した前記モータの回転数並びにモータ電流を入力して、前記掃除機に関する情報を前記携帯情報端末に送信することを特徴とする掃除機管理システム」としたものである。
【0007】
また本発明においては「携帯情報端末と掃除機とセンタ装置がインターネットを介して接続された掃除機管理システムであって、掃除機は、電力変換器により制御されるモータの回転数並びにモータ電流を計測するセンサと、センサの出力をインターネットに伝送するための通信手段を備えており、センタ装置は、複数の掃除機から入手したモータの回転数並びにモータ電流を入力して、掃除機に対してモータの回転数またはモータ電流の設定を送信し、掃除機は送信により設定された設定により電力変換器を操作することを特徴とする掃除機管理システム」としたものである。
【0008】
また本発明においては「携帯情報端末と掃除機とセンタ装置がインターネットを介して接続された掃除機管理システムであって、掃除機は、電力変換器により制御されるモータの回転数並びにモータ電流を計測するセンサと、センサの出力をインターネットに伝送するための通信手段を備えており、センタ装置は、掃除機のメンテナンスの情報を用いて床面に積もるごみの量を推定し、その地域で同じ傾向を示している場合に、例えば、花粉によるものと推定し、掃除機に対して花粉除去に適するモータの回転数またはモータ電流の設定を送信し、掃除機は送信により設定された設定により電力変換器を操作することを特徴とする掃除機管理システム」としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一般的な掃除機に対して適用でき、かつ動作の制御管理にとどまらず、掃除機の性能に関与する運用を可能とすることで、より利便性の高い掃除機並びに掃除機管理システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る掃除機の構成例を示す図。
図2】ファンモータM1の主回路構成とファンモータ側センサS1の出力の関係を示す図。
図3】吸口モータM2の主回路構成と吸口モータ側センサS2の出力の関係を示す図。
図4】本発明に係る掃除機管理システムの構成例を示す図。
図5】通信路の形成事例を示す図。
図6】センタ装置11における処理、判断機能を纏めて示す図。
図7】入力一定制御または電流一定制御を行うときの目詰まりによる物理量への反映経緯を示す図。
図8】回転数一定制御を行うときの目詰まりによる物理量への反映経緯を示す図。
図9】吸口におけるごみ絡みの時の物理量への反映経緯を示す図。
図10】吸口モータ負荷トルクを横軸に、吸口モータ回転数と吸口モータ電流を縦軸に示した特性図。
図11】各家庭の床面の判定と最適化処理におけるセンタ装置11での処理内容を示す図。
図12図10の特性線図の上に、床面の相違による特性変更を加味して示す図。
図13】最適な掃除モードの調整例を示す図。
図14】携帯情報端末2への表示事例を示す図。
図15】センタ装置における処理Dの例を示す図。
図16】花粉や黄砂などの細かいごみの場合の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本発明の実施例について、図面を用いて説明する。なお実施例1では、本発明に係る掃除機について説明し、実施例2では本発明に係る掃除機を利用する掃除機管理システムについて説明し、実施例3では掃除機管理システムの運用事例について説明する。
【実施例1】
【0012】
まず本発明に係る掃除機について図1により説明する。図1に示す掃除機1は、掃除機本体1aと充電台1bで構成されたスタンド型掃除機を例示している。この掃除機では、掃除機本体1aは、その作業終了後に、充電台1bに据え付けられ、次回の作業に備えた充電が行われる。
【0013】
掃除機1は、蓄電池による駆動であっても、電源コードに直結されたものであってもよいが、掃除機本体1aは吸口モータM2により回転ブラシを駆動して吸い込み口からごみを吸引し、ごみ収納部にごみを蓄積、保管するとともに、ブロワをファンモータM1により駆動して吸引、排気を行う。
【0014】
本発明の掃除機本体1aは、吸口モータM2の回転数と電流を検知する吸口モータ側センサS2と、ファンモータM1の回転数と電流を検知するファンモータ側センサS1と、電力制御を含む各種制御を行う本体基板3を備えている。またこれらにより検知した情報をインタネットなどを経由して伝送するための通信手段5を、掃除機本体1aと充電台1bのいずれか一方または双方に備えている。図では、掃除機本体1aに備えた通信手段を5a,充電台1bに備えた通信手段を5bと表示している。なお図1の例では掃除機1は、掃除機本体1aと充電台1bで構成されたスタンド型掃除機を示しているが、掃除機自体の構造はスタンド型以外にも任意な形式を採用可能である。なお掃除機自体が本来備える機能はすでによく知られたことであるので、ここでの説明を割愛する。
【0015】
図2は、ファンモータM1の主回路構成とファンモータ側センサS1の出力の関係を示す図である。この例では、電池31の直流出力が本体基板3上に形成された電力変換器においてPWM制御され、交流出力に変換されてファンモータM1を駆動している。この時に、電流が電流センサS1aにより検知され、回転数が回転数センサS1bにより検知される。これらのセンサ出力は、本体基板3に取り込まれる。
【0016】
図3は、吸口モータM2の主回路構成と吸口モータ側センサS2の出力の関係を示す図である。この例では、電池31の直流出力が本体基板3上に形成された電力変換器において制御され、パルス状出力に変換されて吸口モータ2を駆動している。この時に、電流が電流センサS2aにより検知され、回転数が回転数センサS2bにより検知される。これらのセンサ出力は、本体基板3に取り込まれる。
【0017】
なお図2図3において、各モータの駆動電源の直流、交流の区別、電力変換器の変換制御方式などは適宜選択が可能であり、本発明の場合にはいかなる組み合わせのものであってもよい。要するに、モータ入力が制御可能なものであり、モータ電流と回転数が計測できればよい。
【0018】
また図2図3のモータは、電力変換器の制御により、負荷電流や回転速度を調整可能であり、設定された負荷電流や回転速度の目標値とこれらの帰還値の偏差に応じて、制御されている。このことは、後述するように外部から設定変更の指令が来た場合に、負荷電流や回転速度の目標値を変更することが可能であり、掃除機の運転状態を外部から変更可能であることを意味している。これらの目標値は、通信手段5a,5bを介して与えられる。
【実施例2】
【0019】
図4は、本発明に係る掃除機管理システムの構成例を示す図である。図4に示すように、掃除機管理システム10は、複数の掃除機1が複数の携帯情報端末2とともにセンタ装置11とインタネットなどを経由して接続されて構成されている。このうち、掃除機本体1aと充電台1bで構成された掃除機1は、図1で説明したところの機能を有している。
【0020】
図4の構成によれば、掃除機本体1aは、本体基板3と電池31とモータM1,M2を基本構成要素として備え、電池31からの給電によりモータM1,M2が駆動され、ごみを吸引し、あるいは排気を行っている。また掃除機本体1aは、吸口モータM2について電流センサS2aにより検知た電流と回転数センサS2bにより検知した回転数、及びファンモータM1について電流センサS1aにより検知た電流と回転数センサS1bにより検知した回転数を、本体基板3を経由して通信手段5aからセンタ装置11に伝送している。充電台1bは、掃除機本体1aが載置されたときにコンセント35につながれた充電台基板34により、掃除機本体1a内の電池31の充電を制御する。なおセンタ装置11との間での通信は、通信手段5bから行うものとすることもできる。
【0021】
センタ装置11は計算機で構成され、バスBUS上に通信手段5C,処理プログラムや入手した清掃情報Dを格納するROM,プログラムに従い演算処理を実行するCPU,演算で使用するデータを一時蓄積するRAM、キーボード、マウスなどの入力部I,プリンタ、モニタなどの出力部Oなどを含んで構成されている。
【0022】
これにより管理者Mは、出力部Oに表示されたオンラインまたはオフラインの出力を確認しながら、必要に応じて入力部Iから適宜の情報を入力することで、適正な処理が可能となる。
【0023】
図4の、センタ装置11,掃除機1、携帯情報端末2は、例えば図5に示すような通信路を形成することで相互間での通信を行うことができる。宅内の場合に、携帯情報端末2はWLANにより無線LANルータ101を介して掃除機1との通信が行われ、さらに無線LANルータ101、インターネット102を介してセンタ装置11との通信が行われる。さらに屋外では、LTE,キャリア103を介して宅内の掃除機1及びセンタ装置11との間での通信を行うことができる。
【0024】
係る通信路により、センタ装置11には複数の掃除機1から、モータ電流及び回転数が収集され、センタ装置11における処理、判断結果が携帯情報端末2、あるいは複数の掃除機1に伝達可能である。
【実施例3】
【0025】
実施例1の掃除機と、実施例2のシステム構成を利用して、センタ装置は以下の処理を行う。実施例3では、この処理内容について説明する。
【0026】
センタ装置11における処理、判断結果は、図6にまとめて示すように、A:フィルタメンテナンスの必要性判断とメンテナンス時期の通達、B:吸口メンテナンスの必要性判断とメンテナンス時期の通達、C:各家庭の床面の判定と最適化処理、D:ビッグデータとしての活用などである。なお、本実施例は一例であり、吸口モータM2とファンモータM1の電流や入力・回転数をセンタ装置11で処理し必要データを掃除機1へフィードバックする、また、そのデータを複数集め応用する事でのビックデータとしての活用が本システムの目的となる。
【0027】
まず、センタ装置11における処理A:フィルタメンテナンスの必要性判断とメンテナンス時期の通達について、図7図8により説明する。ここでは、センタ装置11において目詰まり判定ができることについて説明する。処理Aは、掃除機1が情報をセンタ装置11に提供し、センタ装置11での判断結果が携帯情報端末2に通知されて利用者に提示されるという流れの中で行われる。
【0028】
図1に示す掃除機1のモータ(吸口モータM2、ファンモータM1)について、その運転制御方式は複数あるが、これらは回転数一定制御であり、或は入力一定制御または電流一定制御とされることが多い。本発明では、モータM1、M2の電流と回転数を計測するわけであるが、これらの計測はフィルタの目詰まりを検知する目的で利用可能である。
【0029】
図7図8を用いて、電力変換器における制御方式とフィルタの目詰まり検知の指標となる物理量(電流と回転数)との関係について説明する。まず図7は、入力一定制御または電流一定制御を行うときの目詰まりによる物理量への反映経緯を示している。なお入力一定制御または電流一定制御では、運転時に入力または電流を一定に制御する運転モードであり、この運転時に掃除機1の強、標準などで入力または電流を可変に設定する。
【0030】
この運転モードでの目詰まり発生、検知プロセスは、フィルタ目詰まり(41)すると、フィルタが詰まっているので、流入する空気が少なくなり、ファン室内の空気が減り(42)抵抗になる空気が少ない為に羽根負荷減少(43)し、この結果として回転数が増加する(44)というものである。つまり、入力一定制御では、羽根負荷×回転数を一定に制御しており、羽根負荷が減るので回転数が増加し、電流一定制御では、羽根負荷を一定にしているので、回転数を上げ羽根負荷を増やすことになる。
【0031】
入力一定制御または電流一定制御を行うときには、いずれの場合にも回転数を目詰まり監視の指標として管理すればよいことになるので、通信手段5により回転数を指標として送信(45)すればよい。センタ装置11では、回転数が閾値を越えると目詰まりと判定し、携帯情報端末2へその旨の連絡を行う(46)。
【0032】
図8は、回転数一定制御を行うときの目詰まりによる物理量への反映経緯を示している。なお回転数一定制御では、運転時に回転数を一定で制御する運転モードであり、この運転時に掃除機の強、標準などで回転数を可変に設定する。
【0033】
この運転モードでの目詰まり発生、検知プロセスは、フィルタ目詰まり(51)すると、フィルタが詰まっているので、流入する空気が少なくなり、ファン室内の空気が減り(52)抵抗になる空気が少ない為に羽根負荷減少(53)し、この結果として電流が減少する(54)というものである。つまり、回転数一定制御では、入力である羽根負荷×回転数を一定に制御するので、羽根負荷が減るので回転数が増加し、電流一定制御では、羽根負荷を一定にしているので、電流が減少することになる。
【0034】
このように回転数一定制御を行うときには、電流を目詰まり監視の指標として管理すればよいことになるので、通信手段5により電流を指標として送信(55)すればよい。センタ装置11では、電流が閾値を越えて減少すると目詰まりと判定し、携帯情報端末2へその旨の連絡を行う(56)。
【0035】
次に、センタ装置11における処理、判断結果である、B:吸口メンテナンスの必要性判断とメンテナンス時期の通達について図9図10を用いて説明する。処理Bは、掃除機1が情報をセンタ装置11に提供し、センタ装置11での判断結果が携帯情報端末2に通知されて利用者に提示されるという流れの中で行われる。
【0036】
このうち図9は、吸口におけるごみ絡みの時の物理量への反映経緯を示しており、回転ブラシへのごみの絡まり(61)が発生すると、これにより回転ブラシへの負荷が増加し(62)、吸口モータM1の負荷が増加(63)し、この結果としてモータ電流が増加する(64)というものである。このように吸口メンテナンスを判断するときには、吸口モータM1の電流増加を指標として管理すればよいことになるので、通信手段5により電流を指標として送信(65)すればよい。センタ装置11では、電流が閾値を越えると吸口メンテナンスが必要と判定し、携帯情報端末2へその旨の連絡を行う(66)。
【0037】
図10は、モータ負荷トルクを横軸にし、モータ回転数とモータ電流を縦軸に示した特性図であり、一般には、モータ付加トルクが増大するに従い、回転数が減少し、電流が増加する傾向を示す。このため、通常はモータ負荷トルクが小さい領域を通常使用域とし、モータ負荷トルクが大きい領域ではモータ電流が予め設定したメンテ電流閾値を超過することをもって、回転ブラシへのごみの絡まりと判断し、吸口メンテナンスの必要性判断とメンテナンス時期の通達を実施することができる。
【0038】
図6に示すセンタ装置11での処理のうち、A,Bは個別の掃除機1ごとに行う処理、判定の機能であるが、以下の処理C,Dは、複数の掃除機からのデータを集積し、解析することに基づいた処理を行うものである。
【0039】
まずセンタ装置11における処理、判断結果である、C:各家庭の床面の判定と最適化処理について図11図12図13図14を用いて説明する。処理Cは、掃除機1が情報をセンタ装置11に提供し、センタ装置11での判断結果が携帯情報端末2に通知されて利用者に提示されるとともに、掃除機1に対しても情報伝達が行われ、その運転状態をセンタ装置11側から可変に制御するという流れの中で行われる。
【0040】
処理Cでは、センタ装置11に収集された複数の掃除機のデータから、その国・地域の床面が有する性状をセンタ装置11で判定できる点に着目している。これらは例えば、木材の床面、畳の床面、絨毯の床面を区別できるということであり、特にごみを保持しやすい、逆に言えばごみを吸い取りにくい絨毯の床面が地域全体に占める割合がわかるということである。この結果、センタ装置11では場所による床面の調査を行わずに済み、次回開発時のバックデータとすることができる。これにより、海外の状況調査が不要になる等のメリットが有る。また、その国に適した吸口を開発可能であり、絨毯の多い国はブラシを固く、木床の多い国はブラシを柔らかく等の対応が可能となる。
【0041】
また処理Cでは、最適な掃除時間・吸引力を過去のデータから自動で調整するモード(AIモード)を実現することができ、有限な電池のエネルギーを有効利用することができる。また携帯情報端末から自分で、回転ブラシ回転数・ファンモータ回転数を手動調整することも可能である。
【0042】
図11は、C:各家庭の床面の判定と最適化処理におけるセンタ装置11での処理内容を示している。センタ装置11が、処理Cを実現するためには、掃除機1から情報を入手する必要があり、これらはモータ電流70a、地域70b、掃除時間、掃除モード70cの情報である。なおこのうち、地域70bは必ずしも掃除機1からの入力とする必要はなく、顧客データなどからの入手であってもよい。
【0043】
これらの複数の掃除機からのデータは、処理71に示すように、床面判定処理に用いられ、その割合を計算してセンタ装置11(サーバ)に蓄えられる。図12は、図10のモータ負荷トルクに対するモータ回転数とモータ電流の特性線図の上に、床面の相違による特性変更を加味して示した図である。
【0044】
収集した複数のデータの解析結果によれば、モータ負荷トルクが小さい使用可領域内を例えば木材の床面と絨毯による床面を区別して示すことができ、一般的には絨毯による床面の方が、モータ負荷トルクが高い領域に存在している。また、同じ通常使用域であっても、絨毯の床面の方がモータ電流が高く、モータ回転数が低くなる傾向が表れる。
これらの物理量の変化に現れる相違に着目すると、その地域における絨毯床面の割合が判明する。
【0045】
図11に戻り、処理72ではサーバで過去の掃除時間と床面の割合から、最適な吸込力と掃除時間を算出し、処理73ではサーバから掃除機1へ、その掃除機の最適な吸口モータの入力、ファンモータの入力(回転数)を送付する。これにより掃除機1は、その掃除機の最適な吸口モータM1の入力、ファンモータM2の入力(回転数)となるように設定変更され、以降運用がされる。
【0046】
吸口動作の一例を示す。絨毯が多いと判定されると、PWM制御によるduty比がアップし、印加電圧が上がる。これに伴い、吸口モータM1の電流のパルス幅も変化する。duty比がアップすると、実線と点線で示すように、同じ負荷での吸口モータM1の回転数が上昇する。これにより吸口の回転ブラシの回転数が上がり、その結果絨毯上のごみ取性能が向上する。
【0047】
処理74では掃除機1のデータを更新し、処理75ではサーバから掃除機1の状況を携帯情報端末2に送信し、携帯情報端末2にその掃除機の最適の運用情報である回転ブラシ回転数(吸口モータ入力)や、ファンモータ回転数(入力)や運転時間の情報を表示する。これをもって、利用者は、自己の保有する掃除機1が、自己の家庭内床面環境に応じて、自動的に最適設定され、運用されていることを確認することができる。
【0048】
図13は、最適な掃除モードの調整例を示した図である。図13の上部には掃除機1にサーバから送られた情報である、その掃除機の最適な吸口モータM2の入力、ファンモータM1の入力(回転数)の例を示している。これによれば、木材の床面と絨毯による床面に関して、木材の床面で使用することが多いと判断された家庭環境の掃除機に対しては、木床上はファンモータM1の入力増加の方が効率よくごみが取れることからファンモータM1の入力増加とする。また絨毯の床面で使用することが多いと判断された家庭環境の掃除機に対しては、絨毯上は吸口モータM2の入力増加の方が効率よくごみが取れることから吸口モータM2の入力増加とする。このようにして、各掃除機の運転状態が自動的に変更され、かつ変更の旨が利用者の携帯情報端末2を通じて利用者に通達される。
【0049】
また図11に示すセンタ装置11の処理では、入力として各家庭の掃除機を用いた掃除時間、掃除モード70cの情報を得ており、これを通じて得られる利用者の掃除傾向からの掃除機運用の適正化情報を与えることが可能である。
【0050】
図13の左下の例では、例えば掃除時間、掃除モード70cの情報から、掃除終了時に電池が余っている人に対しては同じ掃除時間で電池を使い切るように入力をアップするように、床面と絨毯の割合に応じて掃除機1の設定を変更し、通知する。また図13の右下の例では、例えば掃除時間、掃除モード70cの情報から、電池切れで掃除終了し、充電後にすぐに掃除する人に対しては一定の時間で掃除時間を賄えるように入力を下げるように、床面と絨毯の割合に応じて掃除機1の設定を変更し、通知する。
【0051】
図14は、携帯情報端末2への表示事例を示しており、掃除機の最適な吸口モータM2の入力、ファンモータM1の入力(回転数)を設定可能な形で掃除機状態として表示し、電池残量に基づく運転可能時間を表示し、また床面ごとの掃除強さの情報を表示するものとできる。
【0052】
なお、掃除機単体としての機能としてある既存の床面に応じての吸込力の変更(木床:弱、絨毯:強)や被清掃面にたまっているごみの量に応じての吸込力の変更(ごみ小:弱、ごみ多:強)の値全体を平行移動(木床:弱+、絨毯:強+)(ごみ小:弱+、ごみ多:強+)する形で上記データを使用することで、より高い効果を得ることが可能となる。
【0053】
図15は、センタ装置における処理Dの例を示している。ここではビッグデータとしての活用事例として花粉の時期になってくるとその地域の吸引力を少し上げる等の対応事例について説明する。処理Dは、掃除機1が情報をセンタ装置11に提供し、センタ装置11での判断結果が携帯情報端末2に通知されて利用者に提示されるとともに、掃除機1に対しても情報伝達が行われ、その運転状態をセンタ装置11側から可変に制御するという流れの中で行われる。
【0054】
本発明のシステム構成によれば、季節によって、掃除機1の吸引力-運間時間を自動で最適化出来る。またセンタ装置11に収集したデータを、他の製品・事業への展開が可能である。例えば、空気清浄機と掃除機のデータを相互に共用し、花粉が多いときは空気清浄機を強めに回す等ができる。さらには、細かいごみが増えてきたら、その情報を他業種(例:マスク業者)へ流し(売る)、その地域での在庫数を増やせるようにする等ができる。
【0055】
このため図15のセンタ装置11の利用場面Dでは、掃除機1からフィルタお手入れの情報80a,地域情報80b、掃除時間・モード情報80cを入手する。これらの情報をもとに、処理81では掃除強さと、フィルタメンテナンスまでの時間から、床面に積もるごみの量を推定する。これらは花粉・黄砂等に絞ってもよい。処理82ではサーバでその地域全体の掃除機が同様の挙動をしているか判定し、処理83では同様の挙動を示していれることをもって花粉と判定する。
【0056】
なお、処理81から処理83に関して、図16に示すように、花粉や黄砂などの細かいごみの場合、掃除機1のフィルタの目詰まりまでの時間が早くなる傾向があり、このことから、一部地域の掃除機1が、ある時期に早めに目詰まりしやすくなると花粉が多くなっていると判定することができる。
【0057】
花粉判定を受けて処理84では、センタ装置11から掃除機1へ吸口モータの入力、ファンモータの入力(回転数)を送付し、個々の掃除機のファンモータ入力・吸口モータ入力を上げるように設定変更を行う。また処理85では、掃除機のデータを更新する。これにより掃除機は花粉の除去に適した運用に変更できる。
【0058】
処理86では、サーバから掃除機1の状況を携帯情報端末2に送信し、携帯情報端末2にその掃除機の最適の運用情報である回転ブラシ回転数(吸口モータ入力)や、ファンモータ回転数(入力)や運転時間の情報を表示する。これをもって、利用者は、自己の保有する掃除機1が、自己家庭内の花粉環境に応じて、自動的に最適設定され、運用されていることを確認することができる。
【0059】
なお、花粉などのごみの情報は外部機関からのデータをネットワークを介してインプットすることや、ごみセンサを流路に設けることでデータを得ても良い。
【符号の説明】
【0060】
1:掃除機
1a:掃除機本体
1b:充電台
2:携帯情報端末
M1:吸口モータ
M2:ファンモータ
S1吸口モータ側センサ
S2:ファンモータ側センサ
3:本体基板
5:通信手段
11:センタ装置
31:電池
図1
図2
図3
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図16