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特許7544663作業機械を制御するためのシステム、方法、及び作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム、方法、及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240827BHJP
   E02F 3/85 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F3/85 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021100723
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000102
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210643(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021341(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179384(WO,A1)
【文献】特開2003-064725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を含む本体と、前記本体に取り付けられた作業機とを含む作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の位置を検出する位置センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得し、
前記本体の位置を取得し、
前記作業機の位置を取得し、
前記目標設計面に追従して前記作業機を制御しながら、前記作業機械を前進させ、
前記目標設計面と前記本体の所定部分との高低差を取得し、
前記高低差に基づいて、前記作業機に保持されている土が無くなったかを判定する、
システム。
【請求項2】
前記所定部分は、前記走行装置に含まれる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記走行装置は、履帯を含み、
前記所定部分は、履帯に含まれる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業機に保持されている土が無くなったと判定したときには、前記作業機械の前進を止めて前記作業機械を後進させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
排土作業の始点と終点との位置を取得し、
前記始点と前記終点とを結ぶ基準線を決定し、
前記基準線を高さ方向に所定距離だけ変位させた直線を前記目標設計面として決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、
排土作業の始点と終点との位置を取得し、
前記始点と前記終点とを結ぶ基準線を決定し、
前記基準線を下方に所定距離ずつ変位させた複数の直線を決定し、
前記複数の直線のうち、前記始点と前記終点との間で少なくとも一部が前記現況地形の上方に位置する最も下方の直線以上の直線を前記目標設計面として決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記複数の直線のうち、前記始点と前記終点との間で少なくとも一部が前記現況地形の上方に位置する最も下方の直線よりも少なくとも1つ以上、上方の直線を第1目標設計面として決定する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記複数の直線のうち、前記第1目標設計面の1つ上の直線を、第2目標設計面として決定し、
前記第1目標設計面に追従して前記作業機を制御しながら、前記作業機械を前進させ、
前記第1目標設計面に対する作業後に、前記第2目標設計面に追従して前記作業機を制御しながら、前記作業機械を前進させる、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記高低差が閾値以上であるときに、前記作業機に保持されている土が無くなったと判定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記目標設計面と前記所定部分との前記高低差を第1高低差として取得し、
前記目標設計面と前記作業機械が走行する前の前記現況地形との高低差を第2高低差として取得し、
前記第2高低差に対する前記第1高低差の比率が閾値以上であるときに、前記作業機に保持されている土が無くなったと判定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
走行装置を含む本体と、前記本体に取り付けられた作業機とを含む作業機械を制御するための方法であって、
少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得することと、
前記本体の位置を取得することと、
前記作業機の位置を取得することと、
前記目標設計面に追従して前記作業機を制御しながら、前記作業機械を前進させることと、
前記目標設計面と前記本体の所定部分との高低差を取得することと、
前記高低差に基づいて、前記作業機に保持されている土が無くなったかを判定すること、
を備える方法。
【請求項12】
前記所定部分は、前記走行装置に含まれる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記走行装置は、履帯を含み、
前記所定部分は、履帯に含まれる、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記作業機に保持されている土が無くなったと判定したときには、前記作業機械の前進を止めて前記作業機械を後進させることをさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
排土作業の始点と終点との位置を取得することと、
前記始点と前記終点とを結ぶ基準線を決定することと、
前記基準線を高さ方向に所定距離だけ変位させた直線を前記目標設計面として決定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項16】
排土作業の始点と終点との位置を取得することと、
前記始点と前記終点とを結ぶ基準線を決定することと、
前記基準線を下方に所定距離ずつ変位させた複数の直線を決定することと、
前記複数の直線のうち、前記始点と前記終点との間で少なくとも一部が前記現況地形の上方に位置する最も下方の直線以上の直線を前記目標設計面として決定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の直線のうち、前記始点と前記終点との間で少なくとも一部が前記現況地形の上方に位置する最も下方の直線よりも少なくとも1つ以上、上方の直線を第1目標設計面として決定する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記高低差が閾値以上であるときに、前記作業機に保持されている土が無くなったと判定することをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記目標設計面と前記所定部分との前記高低差を第1高低差として取得することと、
前記目標設計面と前記作業機械が走行する前の前記現況地形との高低差を第2高低差として取得することと、
前記第2高低差に対する前記第1高低差の比率が閾値以上であるときに、前記作業機に保持されている土が無くなったと判定すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項20】
走行装置を含む本体と、
前記本体に取り付けられた作業機と、
前記作業機械の位置を検出する位置センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得し、
前記本体の位置を取得し、
前記作業機の位置を取得し、
前記目標設計面に追従して前記作業機を制御しながら、前記作業機械を前進させ、
前記目標設計面と前記本体の所定部分との高低差を取得し、
前記高低差に基づいて、前記作業機に保持されている土が無くなったかを判定する、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を制御するためのシステム、方法、及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目標設計面に従って作業機が移動するように作業機械を自動的に制御する技術が知られている。例えば、特許文献1では、コントローラは、現況地形の下方に位置する目標設計面を決定する。コントローラは、目標設計面に従って作業機が移動するように作業機械を制御する。それにより、作業機械は、現況地形を掘削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-173470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、掘削以外にも、埋め戻し、或いは盛土等の排土作業を行うことがある。排土作業では、コントローラは、現況地形の上方に位置する目標設計面を決定し、目標設計面に従って作業機を移動させる。それにより、作業機によって保持されている土が、現況地形上に、目標設計面に沿って配置される。作業機械は、現況地形上に配置された土の上を走行することで、土を締め固める。
【0005】
排土作業では、作業中に、作業機によって保持されている土が足りなくなる場合がある。その場合、作業を続けても、現況地形上に土を置くことはできない。従って、作業効率を向上させるためには、作業機によって保持されている土が足りなくなったことを精度よく検出することが望まれる。本開示の目的は、作業機械の自動制御において、作業機によって保持されている土が足りなくなったことを、精度よく検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムである。作業機械は、走行装置を含む本体と、本体に取り付けられた作業機とを含む。当該システムは、位置センサとコントローラとを備える。位置センサは、作業機械の位置を検出する。コントローラは、少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得する。コントローラは、本体の位置を取得する。コントローラは、作業機の位置を取得する。コントローラは、目標設計面に追従して作業機を制御しながら、作業機械を前進させる。コントローラは、目標設計面と本体の所定部分との高低差を取得する。コントローラは、高低差に基づいて、作業機に保持されている土が無くなったかを判定する。
【0007】
本開示の第2態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法である。作業機械は、走行装置を含む本体と、本体に取り付けられた作業機とを含む。当該方法は、少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得することと、本体の位置を取得することと、作業機の位置を取得することと、目標設計面に追従して作業機を制御しながら、作業機械を前進させることと、目標設計面と本体の所定部分との高低差を取得することと、高低差に基づいて作業機に保持されている土が無くなったかを判定すること、を備える。
【0008】
本開示の第3態様に係る作業機械は、走行装置を含む本体と、本体に取り付けられた作業機と、作業機械の位置を検出する位置センサと、コントローラとを備える。コントローラは、少なくとも一部が現況地形の上方に位置する目標設計面を取得する。コントローラは、本体の位置を取得する。コントローラは、作業機の位置を取得する。コントローラは、目標設計面に追従して作業機を制御しながら、作業機械を前進させる。コントローラは、目標設計面と本体の所定部分との高低差を取得する。コントローラは、高低差に基づいて、作業機に保持されている土が無くなったかを判定する。
【発明の効果】
【0009】
排土作業中に作業機械に保持されている土が無くなると、作業機械は、排土された土の上から、土が置かれていない現況地形上へ移動する。そのとき、目標設計面に対する本体の所定部分の高低差が変化する。本開示によれば、目標設計面と本体の所定部分との高低差に基づいて、作業機によって保持されている土が足りなくなったことが、精度よく検出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業機械の構成を示す模式図である。
図4】作業機械の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図5】現況地形の一例を示す図である。
図6】目標設計面の一例を示す図である。
図7】自動制御による作業機械の動作を示す図である。
図8】自動制御による作業機械の動作を示す図である。
図9】自動制御による作業機械の動作を示す図である。
図10】自動制御による作業機械の動作を示す図である。
図11】自動制御による作業機械の動作を示す図である。
図12】変形例に係る作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図13】変形例に係る判定処理を示す図である。
図14】第1変形例に係る目標設計面の一例を示す図である。
図15】第2変形例に係る目標設計面の一例を示す図である。
図16】第3変形例に係る目標設計面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、本体10と作業機13とを備えている。
【0012】
本体10は、車体11と走行装置12とを含む。車体11は、運転室14とエンジン室15とを含む。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0013】
作業機13は、本体10に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。リフトフレーム17は、上下に動作可能に走行装置12に取付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトシリンダ19は、車体11とブレード18とに連結されている。或いは、リフトシリンダ19は、車体とリフトフレーム17とに連結されてもよい。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、上下に動作する。リフトシリンダ19が伸びることによって、ブレード18が下降する。リフトシリンダ19が縮むことによって、ブレード18が上昇する。
【0014】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0015】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0016】
制御システム3は、コントローラ26と制御弁27とを備える。コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ30とを含む。プロセッサ30は、例えばCPUを含む。記憶装置28は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサ30によって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0017】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、作業機13が上昇、或いは下降するように、制御弁27を制御する。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0018】
制御システム3は、入力装置25を備えている。入力装置25は、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、入力装置25は、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。オペレータは、入力装置25を用いて、後述する自動制御の設定を入力することができる。
【0019】
制御システム3は、位置センサ31を備えている。位置センサ31は、作業機械1の位置を測定する。位置センサ31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU33と、アンテナ35とを備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナ35の位置を演算する。GNSSレシーバ32は、アンテナ35の位置を示す車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。
【0020】
IMU33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU33は、車体傾斜角データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。コントローラ26は、IMU33から車体傾斜角データを取得する。
【0021】
制御システム3は、作業機センサ29を備えている。作業機センサ29は、作業機13の姿勢を検出する。作業機13の姿勢は、例えば、車体11に対する作業機13のリフト角である。作業機センサ29は、例えば、リフトシリンダ19のストローク長を検出する。コントローラ26は、リフトシリンダ19のストローク長から、作業機13のリフト角を算出する。或いは、作業機センサ29は、作業機13のリフト角を検出する角度センサであってもよい。作業機センサ29は、作業機13の姿勢を示す作業機データを生成する。コントローラ26は、作業機センサ29から作業機データを取得する。
【0022】
図3は、作業機械1を模式的に示す側面図である。コントローラ26は、機械寸法データを記憶している。機械寸法データは、作業機械1の各部の寸法と位置関係とを示す。コントローラ26は、機械寸法データと、車体位置データと、車体傾斜角データと、作業機データとから、ブレード18の刃先位置P0を演算する。また、コントローラ26は、機械寸法データと、車体位置データと、車体傾斜角データとから、車体11の所定部分P1の位置を演算する。所定部分P1は、履帯16の底面に位置する。所定部分P1は、例えば、走行装置12のフロントアイドラ21の直下に位置する。或いは、所定部分P1は、履帯16の底面の前後方向における中央に位置してもよい。
【0023】
コントローラ26は、作業機械1を自動的に制御する。以下、コントローラ26によって実行される、埋め戻し作業における作業機械1の自動制御について説明する。図4は、埋め戻し作業における自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0024】
図4に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、作業機械1の現在位置を取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したブレード18の現在の刃先位置P0を、作業機械1の現在位置として取得する。
【0025】
ステップS102では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業対象の現況地形50を示す。図5は、現況地形50の一例を示す図である。現況地形データは、作業機械1の進行方向に位置する現況地形50上の複数の地点の座標と高度を含む。コントローラ26は、外部のコンピュータから、現況地形データを取得してもよい。後述するように、コントローラ26は、所定部分P1の位置により、現況地形データを更新してもよい。
【0026】
ステップS103では、コントローラ26は、作業の始点S0と終点E0との位置を取得する。作業の始点S0と終点E0とは、現況地形50上の地点である。作業機械1の進行方向において、終点E0は、始点S0の前方に位置する。コントローラ26は、外部のコンピュータから、作業の始点S0と終点E0との位置を取得してもよい。或いは、コントローラ26は、オペレータによる入力装置25の操作によって、作業の始点S0と終点E0との位置を取得してもよい。
【0027】
ステップS104では、コントローラ26は、目標設計面60を取得する。図6は、目標設計面60の一例を示す図である。目標設計面60の少なくとも一部は、現況地形50の上方に位置する。目標設計面60は、作業機械1の前後方向、すなわち作業機械1の進行方向に延びる線で示される。なお、目標設計面60は、作業機械1の幅方向において水平であるものとする。コントローラ26は、作業の始点S0と終点E0との位置と、現況地形50とから、目標設計面60を決定する。以下、目標設計面60を決定するための処理について説明する。
【0028】
図6に示すように、コントローラ26は、始点S0と終点E0とを結ぶ基準線L0を決定する。コントローラ26は、基準線L0を下方に所定距離A1ずつ変位させた複数の直線L1-L5を決定する。所定距離A1は、コントローラ26に記憶されている。所定距離A1は、固定値であってもよく、或いは可変であってもよい。コントローラ26は、複数の直線L1-L5のうち、始点S0と終点E0との間で少なくとも一部が現況地形50よりも上方に位置する最も下方の直線L4を決定する。コントローラ26は、直線L4の1つ上の直線L3を、第1目標設計面61として決定する。なお、コントローラ26は、直線L4を、第1目標設計面61として決定してもよい。或いは、コントローラ26は、直線L4より2つ以上上方の直線を、第1目標設計面61として決定してもよい。
【0029】
コントローラ26は、第1目標設計面61の1つ上の直線L2を、第2目標設計面62として決定する。同様に、コントローラ26は、第2目標設計面62の1つ上の直線L1を、第3目標設計面63として決定する。なお、目標設計面60の数は3つに限らない。目標設計面60の数は3つより少なくてもよく、3つより多くてもよい。
【0030】
ステップS105では、コントローラ26は、目標設計面60に従って、作業機械1を制御する。目標設計面60は、それぞれ始端と終端とを含む。目標設計面60の始端と終端とは、それぞれ目標設計面60と現況地形50とが交差する地点である。例えば、第1目標設計面61は、始端S1と終端E1とを含む。
【0031】
まず、図7に示すように、コントローラ26は、作業機械1を前進させて、作業機13によって土を運びながら第1目標設計面61の始端S1に移動する。そして、図8に示すように、コントローラ26は、第1目標設計面61に追従するように作業機13を制御しながら、作業機械1を前進させる。それにより、第1目標設計面61に沿って、現況地形50上に土が配置される。作業機械1は、土の上を前進することで、履帯16によって土を締め固める。
【0032】
ステップS106では、コントローラ26は、本体10の所定部分P1の位置を取得する。上述したように、所定部分P1は、履帯16の底面に位置する。ステップS107では、コントローラ26は、現況地形データを更新する。コントローラ26は、所定部分P1の位置の軌跡によって、現況地形データを更新する。すなわち、履帯16の底面が移動した軌跡が、作業機械1の走行後の現況地形50を示すものとして、現況地形データが更新される。
【0033】
ステップS108では、コントローラ26は、刃先位置P0が第1目標設計面61の終端E1に到着したかを判定する。刃先位置P0が第1目標設計面61の終端E1に到着していないときには、処理はステップS109へ進む。
【0034】
ステップS109では、コントローラ26は、作業機13によって保持されている土が無くなったかを判定する。コントローラ26は、第1目標設計面61と所定部分P1との高低差D1を算出する。図9に示すように、高低差D1は、第1目標設計面61と所定部分P1と間の高さ方向における距離である。高さ方向は、例えば鉛直方向である。ただし、高さ方向は、第1目標設計面61に垂直な方向であってもよい。
【0035】
コントローラ26は、高低差D1が閾値以上であるかを判定する。閾値は、固定値であってもよい。或いは、閾値は、可変であってもよい。閾値は、履帯16による土の圧縮高さを考慮して決定されてもよい。図9に示すように、作業機13によって保持されている土が無くなると、作業機械1が、前進して、締め固められた土を越えることで、第1目標設計面61と本体10の所定部分P1との高低差D1が大きくなる。従って、コントローラ26は、高低差D1が閾値以上であるかを判定することで、作業機13に保持されている土が無くなったかを判定する。
【0036】
作業機13に保持されている土が残っているときには、処理はステップS105へ戻る。それにより、コントローラ26は、引き続き、第1目標設計面61に追従するように作業機13を制御しながら、作業機械1を前進させる。高低差D1が閾値以上であるときには、処理はステップS110に進む。
【0037】
ステップS110では、コントローラ26は、作業機械1を後進させる。図10に示すように、コントローラ26は、作業機械1の前進を止めた後、作業機械1を後進させる。そして、ステップS111において、コントローラ26は、作業機13に土を補充する。その後、処理はステップS105に戻る。それにより、コントローラ26は、引き続き、第1目標設計面61に追従するように作業機13を制御しながら、作業機械1を前進させる。
【0038】
ステップS108において、図11に示すように、刃先位置P0が第1目標設計面61の終端E1に到着すると、コントローラ26は、第1目標設計面61に従う作業を終了する。そして、コントローラ26は、第2目標設計面62に対して、上記と同様の処理を行う。また、第2目標設計面62に従う作業が終了すると、コントローラ26は、第3目標設計面63に対して、上記と同様の処理を行う。
【0039】
以上説明した本実施形態に係る制御システム3では、目標設計面60と本体10の所定部分P1との高低差D1に基づいて、作業機13によって保持されている土が無くなったかを判定する。それにより、作業機13によって保持されている土が無くなったことを、簡易、且つ、精度よく検出することができる。つまり、本実施形態に係る制御システム3では、作業機13によって保持された土がなくなったかが推定される。作業機械1がブルドーザである場合は、本実施形態に係る制御システム3は、ブレード18が抱えていた土がなくなったかが推定される。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。入力装置25は、作業機械1の外部に配置されてもよい。作業機械1は、オペレータが搭乗する有人の機械であってもよく、或いはオペレータが搭乗しない無人の機械であってもよい。運転室は、作業機械1から省略されてもよい。
【0042】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。例えば、図12に示すように、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業機械1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、目標設計面60を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0043】
コントローラ26による処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上述した処理の一部が省略されてもよい。或いは、上述した処理の一部が変更されてもよい。例えば、作業機13によって保持されている土が無くなったかを判定するための処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0044】
図13は、変形例に係る判定の処理を示す図である。図13に示すように、コントローラ26は、目標設計面60と所定部分P1の位置との高低差を、第1高低差D1として算出してもよい。コントローラ26は、目標設計面60と、作業機械1の走行前の現況地形50’との高低差を、第2高低差D2として算出してもよい。コントローラ26は、第2高低差D2に対する第1高低差D1の比率(D1/D2)が閾値以上であるときに、作業機13に保持されている土が無くなったと判定してもよい。
【0045】
コントローラ26は、目標設計面60と所定部分P1の位置との高低差D1が閾値以上であることが、所定時間継続したときに、作業機13に保持されている土が無くなったと判定してもよい。コントローラ26は、第2高低差D2に対する第1高低差D1の比率が閾値以上であることが、所定時間継続したときに、作業機13に保持されている土が無くなったと判定してもよい。
【0046】
目標設計面60の形状は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。目標設計面60は、水平に限らず、水平方向に対して傾斜していてもよい。例えば、図14は、第1変形例に係る目標設計面60を示す図である。図14に示すように、目標設計面60は、下り勾配であってもよい。図15は、第2変形例に係る目標設計面60を示す図である。図15に示すように、目標設計面60は、上り勾配であってもよい。
【0047】
作業機械1による作業は、埋め戻しに限らず、盛土などの他の作業であってもよい。例えば、図16は、第3変形例に係る目標設計面60を示す図である。図16においては、図6に示す構成に対応する構成に対して同じ符号が付されている。図16に示すように、盛土作業では、作業の始点S0と終点E0とは、現況地形50の上方に位置してもよい。目標設計面60を決定するための処理については、上述した実施形態と同様である。
【0048】
所定部分P1は、履帯16の底面に限らず、他の部分であってもよい。例えば、所定部分P1は、走行装置12の他の部分であってもよい。或いは、所定部分P1は、車体11の一部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示によれば、作業機によって保持されている土が足りなくなったことを、精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 作業機械
10 本体
12 走行装置
13 作業機
16 履帯
26 コントローラ
31 位置センサ
50 現況地形
61 第1目標設計面
62 第2目標設計面
S0 始点
E0 終点
L0 基準線
P1 所定部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16