(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】管理機制御システム及び歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
A01B 33/16 20060101AFI20240827BHJP
B60K 23/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A01B33/16
B60K23/02 S
(21)【出願番号】P 2021107662
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 恵一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-119597(JP,A)
【文献】特開2019-088272(JP,A)
【文献】特開2020-018255(JP,A)
【文献】特開2021-083332(JP,A)
【文献】特開2020-103146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/16
B60K 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行型管理機を走行させる場所を含む地図情報が記憶される記憶部と、
前記地図情報上における前記歩行型管理機の位置情報を検出する検出部と、
前記記憶部からの前記地図情報、及び前記検出部からの前記位置情報に基づいて前記歩行型管理機の走行速度を制御する制御部と、
を具備
し、
前記記憶部には、
前記歩行型管理機での走行を禁止する禁止区域を前記地図情報上に示した禁止区域情報が記憶され、
前記制御部は、
前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を減速又は停止させ、
前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行していない場合に、走行中の前記歩行型管理機の減速及び停止を行わない、
管理機制御システム。
【請求項2】
前記地図情報又は前記禁止区域情報の少なくともいずれかを受信して前記記憶部に記憶させる受信部をさらに具備する、
請求項1に記載の管理機制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を減速させる、
請求項
1又は請求項2に記載の管理機制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値よりも小さい第二閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を停止させる、
請求項
3に記載の管理機制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が第三閾値以下である場合に、減速又は停止を促す報知を行う、
請求項
1から請求項4までのいずれか一項に記載の管理機制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記歩行型管理機の機体の長さを考慮して前記走行速度を制御する、
請求項
1から請求項5までのいずれか一項に記載の管理機制御システム。
【請求項7】
前記歩行型管理機の前方を撮像する撮像部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記撮像部の撮像結果に基づいて前記走行速度を制御する、
請求項
1から請求項6までのいずれか一項に記載の管理機制御システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の管理機制御システムを具備する歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機を制御する管理機制御システム及び歩行型管理機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者により運転可能な歩行型管理機の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、操縦用のハンドルを備えた歩行型管理機が開示されている。上記特許文献1に記載された歩行型管理機は、利用者のハンドルを用いた操縦により運転を行うことができる。
【0004】
しかし、利用者による減速や停止の操作が遅れた場合、走行が困難な場所(例えば、整備されていない畦や側溝等)へ歩行型管理機が進入し、当該歩行型管理機を安定して走行させることが困難となってしまう可能性がある。このため、走行速度を制御して、歩行型管理機を安定して走行させることができる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、歩行型管理機を安定して走行させることが可能な管理機制御システム及び歩行型管理機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、歩行型管理機を走行させる場所を含む地図情報が記憶される記憶部と、前記地図情報上における前記歩行型管理機の位置情報を検出する検出部と、前記記憶部からの前記地図情報、及び前記検出部からの前記位置情報に基づいて前記歩行型管理機の走行速度を制御する制御部と、を具備し、前記記憶部には、前記歩行型管理機での走行を禁止する禁止区域を前記地図情報上に示した禁止区域情報が記憶され、前記制御部は、前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を減速又は停止させ、前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行していない場合に、走行中の前記歩行型管理機の減速及び停止を行わないものである。
【0009】
請求項2においては、前記地図情報又は前記禁止区域情報の少なくともいずれかを受信して前記記憶部に記憶させる受信部をさらに具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記制御部は、前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を減速させるものである。
【0011】
請求項4においては、前記制御部は、前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が前記第一閾値よりも小さい第二閾値以下であり、かつ前記歩行型管理機が前記禁止区域に向かって走行している場合に、前記歩行型管理機を停止させるものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、前記歩行型管理機と前記禁止区域との間の距離が第三閾値以下である場合に、減速又は停止を促す報知を行うものである。
【0013】
請求項6においては、前記制御部は、前記歩行型管理機の機体の長さを考慮して前記走行速度を制御するものである。
【0014】
請求項7においては、前記歩行型管理機の前方を撮像する撮像部をさらに具備し、前記制御部は、前記撮像部の撮像結果に基づいて前記走行速度を制御するものである。
【0015】
請求項8においては、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の管理機制御システムを具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、地図情報及び位置情報に応じた走行速度の制御により、歩行型管理機を安定して走行させることができる。また請求項1においては、歩行型管理機と禁止区域との位置関係を考慮して走行速度を適切に制御することができる。また請求項1においては、禁止区域の近くを走行する歩行型管理機が禁止区域に進入するおそれがある場合に歩行型管理機を減速又は停止させ、走行速度を適切に制御することができる。
【0020】
請求項2においては、受信部により地図情報又は禁止区域情報を更新することができ、利便性を向上させることができる。
【0021】
請求項3においては、歩行型管理機が禁止区域に近い場合に走行速度を落として、歩行
型管理機を安定して走行させることができる。
【0022】
請求項4においては、歩行型管理機が誤って禁止区域に進入するのを防止することができる。
【0023】
請求項5においては、歩行型管理機が禁止区域に近い場合に利用者に減速又は停止を促す報知を行うことができる。当該報知に基づいて利用者が歩行型管理機を減速又は停止させることで、歩行型管理機を安定して走行させることができる。
【0024】
請求項6においては、機体の長さを考慮することで、走行速度の制御をより適切に行うことができる。
【0025】
請求項7においては、前方を撮像した結果から得られる情報を用いて、走行速度を適切に制御することができる。
【0026】
請求項8においては、歩行型管理機を安定して走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歩行型管理機を示した側面図。
【
図3】制御システムの構成を概念的に示したブロック図。
【
図7】(a)歩行型管理機と禁止区域との距離が閾値X以下となった状態を示した図。(b)歩行型管理機と禁止区域との距離が閾値Y以下となった状態を示した図。
【
図8】側溝に沿って歩行型管理機を動作させる様子を示した図。
【
図9】雪がない状態で道路を撮像した結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0031】
以下では、本発明の一実施形態に係る歩行型管理機10について説明する。
【0032】
図1及び
図2に示す歩行型管理機10は、機体フレーム11、車輪12、エンジン13、燃料タンク14、ボンネット15、カバー16、ミッションケース17、ロータリ18、抵抗棒19、作業板20、クラッチ機構21、ハンドルフレーム22、ハンドル連結部23、操縦ハンドル24、ハンドル操作部25及び制御システム30等を具備する。
【0033】
機体フレーム11は、板材を適宜折り曲げて形成される部材である。機体フレーム11は、左右一対の車輪12に支持される。エンジン13は、機体フレーム11に載置される。エンジン13としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の燃料を用いて駆動する種々のエンジンを採用可能である。燃料タンク14は、エンジン13の後方に配置される。当該エンジン13及び燃料タンク14は、ボンネット15によって覆われる。エンジン13の左側方には、エンジン13の動力をミッションケース17に伝達するクラッチ機構21を覆うカバー16が設けられる。
【0034】
ミッションケース17は、エンジン13からの動力を、車輪12や回転軸17bに伝達する変速機構17aを収容するケースである。変速機構17aは、車輪12や回転軸17bの駆動速度の変速を行う操作が可能な変速レバー17cを備える。ロータリ18は、回転軸17bに固定される耕耘爪18aと、耕耘爪18aを上方から覆う耕耘カバー18bと、を具備する。耕耘カバー18bには、抵抗棒19及び作業板20が取り付けられる。
【0035】
クラッチ機構21は、エンジン13から変速機構17a(車輪12や耕耘爪18a)への動力の伝達の可否を切り替えるためのものである。本実施形態のクラッチ機構21としては、プーリに巻回されたベルトに張力(テンション)を付与することで動力を伝達可能とする、いわゆるベルトテンションクラッチを想定している。
【0036】
耕耘カバー18bの上方には、ハンドルフレーム22が配置される。ハンドルフレーム22は、操縦ハンドル24を支持するためのフレームである。ハンドルフレーム22は、後上方へ延びるように形成される。ハンドルフレーム22の後上端部には、ハンドル連結部23を介して操縦ハンドル24が取り付けられる。
【0037】
操縦ハンドル24は、利用者が歩行型管理機10を操縦するためのものである。
図2に示すように、操縦ハンドル24は、平面視で略三角形状の枠(フレーム)状に形成される。操縦ハンドル24は、ハンドル連結部23から後上方へ延びるように形成される。操縦ハンドル24は、断面視で略円形状の部材を適宜折り曲げて形成される。操縦ハンドル24は、側部24a、後部24b及び横架部24cを具備する。
【0038】
図2に示す側部24aは、操縦ハンドル24の左右両側部を構成する部分である。側部24aは、ハンドル連結部23から、互いに左右方向に離間するように後方(後上方)へ延びる。
【0039】
後部24bは、操縦ハンドル24の後部を構成する部分である。後部24bは、左右の側部24aの後端部同士を連結するように左右方向に延びる。後部24bは、利用者の手指により把持される。
【0040】
横架部24cは、左右の側部24aの前後方向途中部同士を連結する部分である。横架部24cは、操縦ハンドル24の前後方向中央部よりも後方に位置するように設けられる。横架部24cを設けたことで、操縦ハンドル24を補強することができる。
【0041】
ハンドル操作部25は、歩行型管理機10の運転に関する各種の操作を行う部分である。ハンドル操作部25は、操縦ハンドル24に設けられる。ハンドル操作部25は、クラッチレバー25a、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dを具備する。
【0042】
クラッチレバー25aは、クラッチ機構21の作動の操作が可能なレバーである。クラッチレバー25aは、ケーブル(不図示)を介してクラッチ機構21と接続される。クラッチレバー25aは、左右の側部24aの前後方向途中部(横架部24cの後方)の間に設けられる。利用者が、クラッチレバー25aを握るように操作すれば、
図1に示すようにクラッチレバー25aは、左右の側部24aに対して左側面視時計回りに回動する。また、クラッチレバー25aは、利用者が手を離せば、自動的に操作前の位置に戻る。
【0043】
エンジンスイッチ25bは、エンジン13を始動可能な状態と、エンジン13を停止する状態と、を切り替える操作が可能なスイッチである。エンジンスイッチ25bは、適宜の回転操作により、エンジン13を始動可能とする運転位置と、エンジン13を停止する停止位置とに切り替えられる。また、エンジンスイッチ25bは、上記回転操作に加えて、押圧操作が可能とされている。エンジンスイッチ25bは、押圧操作がされることで運転位置から停止位置に切り替え可能とされている。また、エンジンスイッチ25bとしては、例えば、特定のキー(鍵)をシリンダーに差し込んだ状態で当該キーを介した操作を行うものを採用可能である。
【0044】
始動スイッチ25cは、エンジン13を始動させるためのスイッチである。始動スイッチ25cとしては、押圧操作が可能なスイッチを採用可能である。
【0045】
スロットルレバー25dは、エンジン13の出力(回転数)制御の操作が可能なレバーである。スロットルレバー25dは、レバーの操作量を検知する適宜のセンサを有する。スロットルレバー25dとしては、適宜の回転操作が可能なレバーを採用可能である。
【0046】
図2及び
図3に示す制御システム30は、機体の走行速度を制御するためのものである。制御システム30は、端末40、取付部50、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を具備する。
【0047】
図1から
図3までに示す端末40は、各種の情報を入出力可能なものである。端末40は、携帯可能な小型のものを採用可能である。端末40としては、例えばスマートフォン(携帯電話)を採用可能である。また、端末40としては、スマートフォンに限られず、例えばタブレット端末等の種々の端末を採用可能である。端末40は、後述する取付部50を介して、操縦ハンドル24に設けられる。端末40は、
図3に示すように、スピーカ41、カメラ42、電子コンパス43、タッチパネル44、制御手段45及び端末通信部46を具備する。
【0048】
スピーカ41は、音声を出力するためのものである。
【0049】
カメラ42は、所定のレンズ部(不図示)を介して画像や映像を撮像可能なものである。カメラ42は、前面カメラ42a及び後面カメラ42bを具備する。
【0050】
図2及び
図5に示す前面カメラ42aは、端末40の前面(後述するタッチパネル44側の面)に設けられるものである。
【0051】
後面カメラ42bは、端末40の後面(タッチパネル44とは反対側の面)に設けられるものである。
【0052】
図3に示す電子コンパス43は、端末40が向いた方角を検出可能なものである。
【0053】
タッチパネル44は、情報の入出力を行うためのものである。タッチパネル44は、所定の情報を表示することができる。また、タッチパネル44には、利用者のタッチ操作により各種情報を入力することができる。
【0054】
制御手段45は、端末40を制御するものである。制御手段45は、主としてCPU等の演算処理装置や、ストレージ(記憶装置)等により構成される。制御手段45には、カメラ42(前面カメラ42a及び後面カメラ42b)の撮像結果、電子コンパス43の検出結果、タッチパネル44での操作結果等が入力される。
【0055】
端末通信部46は、情報を通信可能なものである。端末通信部46は、後述するエンジン通信部70との間で相互に情報通信を行うことができる。端末通信部46による情報の通信には、例えば「ブルートゥース(Bluetooth)」(登録商標)等の無線通信技術を採用可能である。なお、端末通信部46が用いる無線通信技術としては、上述した例に限られず、例えば赤外線通信等の種々の無線通信技術を採用可能である。また端末通信部46は、エンジン通信部70と情報をやりとり可能となるように、有線でエンジン通信部70と接続されてもよい。
【0056】
また端末通信部46は、インターネット回線を介して、サーバSとの間で相互に情報通信を行うことができる。本実施形態の制御手段45は、当該情報通信により地図情報M(
図5参照)を取得し、ストレージに記憶することができる。地図情報Mは、情報処理装置(端末40や後述するエンジン制御部60)で処理可能な地図のデータである。地図情報Mでは、圃場や道路や側溝等が区画される。なお、端末通信部46とサーバSとの情報通信に用いられる回線はインターネット回線に限られず、適宜選択可能である。例えば専用回線等であってもよい。
【0057】
図1及び
図2に示す取付部50は、端末40を取り付け可能なものである。取付部50は、操縦ハンドル24に設けられる。本実施形態では、取付部50を、横架部24cの左右方向中央部に設けた例を示している。取付部50は、端末40を着脱可能に取り付けることができる。取付部50による端末40の取付態様としては、例えば、適宜のアームで端末40の側部を挟むようにして端末40を取り付ける態様を採用可能である。また、例えば、磁石を用いて端末40を取り付ける態様や、適宜のベルト(バンド)等で端末40を取り付ける態様も採用可能である。
【0058】
取付部50は、端末40の前面が後方(後上方)を向いた姿勢で、端末40を取り付けることができる。これにより、取付部50に取り付けられた端末40のタッチパネル44を、歩行型管理機10を運転する利用者の方へ向けることができる。この状態では、前面カメラ42aにより後上方の景色を撮像することができる。また、後面カメラ42bにより前下方の景色を撮像することができる。
【0059】
図3に示すエンジン制御部60は、所定の情報に基づいて、エンジン13の始動や停止、駆動速度の変更等の制御が可能なものである。エンジン制御部60としては、適宜のエンジンコントロールユニット(エンジンコントロールモジュール)を採用可能である。エンジン制御部60は、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dと電気的に接続されており、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dの操作に基づいて、エンジン13の動作の制御を行うことができる。また、エンジン制御部60は、記憶装置を具備し、当該記憶装置に種々の情報を記憶することができる。エンジン制御部60は、位置検出部61を具備する。
【0060】
位置検出部61は、歩行型管理機10の現在の位置を示す位置情報P(地図情報M上における位置、
図6参照)を検出するためのものである。位置検出部61は、GPS衛星からの信号を受信し、歩行型管理機10の位置情報P(緯度及び経度)を検出することができる。なお、位置情報Pを検出する手段は、上述のようなGPS衛星を用いたものに限るものではない。例えば携帯電話基地局からの信号を受信することで位置情報Pを検出してもよい。
【0061】
上述の如く構成されるエンジン制御部60は、歩行型管理機10に設けられた適宜のバッテリーの電力を用いて動作可能である。また、エンジン制御部60は、エンジンスイッチ25bが運転位置へ切り替えられた場合に、前記バッテリーから電力供給を受けて動作する。
【0062】
エンジン通信部70は、種々の情報を無線通信可能なものである。エンジン通信部70は、エンジン13の外部に設けられた機器(例えば端末40)との間で情報を送受信することができる。エンジン通信部70による情報の通信には、端末40の端末通信部46と同様、種々の無線通信技術を採用可能である。エンジン通信部70は、エンジン制御部60と情報をやりとり可能なように(有線又は無線を問わず)電気的に接続される。
【0063】
エンジン制御部60及びエンジン通信部70は、エンジン13に一体的に設けられる。本実施形態に係るエンジン13によれば、エンジン13、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を一体的に取り扱うことができ、エンジン13の組付けや交換の際の作業性を向上させることができる。
【0064】
以下では、上述の如く構成された歩行型管理機10の動作について説明する。
【0065】
エンジンスイッチ25bが運転位置に切り替えられた状態で、利用者により始動スイッチ25cが押圧操作された場合、エンジン13の始動の信号がエンジン制御部60に送信され、エンジン制御部60が上記信号を検出することができる。エンジン制御部60は、上記信号を検出した場合、エンジン13に設けられた適宜のセルモーター(不図示)や点火プラグ(不図示)を動作させることで、エンジン13の始動を行う。
【0066】
また、利用者によりスロットルレバー25dが操作された場合、スロットルレバー25dの操作量に基づく信号がエンジン制御部60に送信され、エンジン制御部60が上記信号を検出することができる。エンジン制御部60は、上記信号を検出した場合、当該信号に基づいてエンジン13に設けられた適宜の燃料噴射装置(インジェクタ)による燃料の噴射量や、スロットルバルブの開度(吸気量)を調節することでエンジン13の出力を制御する。上記燃料噴射装置としては、コモンレールシステム等、適宜の電子制御式のものを採用可能である。これにより、エンジン13(車輪12や耕耘爪18a)の駆動速度の加速又は減速を行うことができる。このように、本実施形態に係る歩行型管理機10は、電子制御によりエンジン13の始動や出力の制御を行うことができる。
【0067】
また、利用者が、クラッチレバー25aを握るように操作すれば、前記ベルトに張力が付与されてクラッチ機構21が作動される。これにより、エンジン13からの動力が、変速機構17aを介して車輪12や回転軸17bへと伝達される。これによって、歩行型管理機10は、走行したり、耕耘爪18aを回転させて圃場を耕耘することができる。
【0068】
また、利用者がクラッチレバー25aの操作を解除することで、前記ベルトへの張力の付与が停止され、クラッチ機構21の作動が停止される。これにより、車輪12や耕耘爪18aの回転が停止される。
【0069】
また、エンジン制御部60は、利用者によりエンジンスイッチ25bが押圧操作された場合に送信されるエンジン13の停止の信号を検出すれば、エンジン13の燃料噴射装置やスロットルバルブ、点火プラグ等を制御し、エンジン13を停止させる。このように、利用者は、クラッチレバー25aやエンジンスイッチ25bの操作により歩行型管理機10を停止させることができる。
【0070】
ここで、仮にこのような利用者の操作だけで歩行型管理機10を動作させる場合、減速や停止の操作が遅れると、走行が困難な場所(例えば、整備されていない畦や側溝等)へ歩行型管理機10が進入してしまうことが懸念される。そこで本実施形態のエンジン制御部60は、速度制御処理を行うことで、利用者による操作よりも優先させて歩行型管理機10の走行速度を制御する。こうして、エンジン制御部60は、走行が困難な場所への進入を防止している。以下では、
図4から
図7までを用いて速度制御処理について説明する。
【0071】
速度制御処理は、端末40で適宜の操作が行われたことを契機に実行される。例えば、利用者によるタッチパネル44の操作により、速度制御処理を実行するアプリが端末40で起動されたことを契機に実行される。
図4に示すように、速度制御処理が実行されると、エンジン制御部60はステップS10へ移行する。
【0072】
ステップS10においてエンジン制御部60は、地図情報Mを取得する。エンジン制御部60は、エンジン通信部70及び端末通信部46を介して制御手段45と通信し、当該制御手段45に対して地図情報Mを要求する。制御手段45は、当該要求を受けるとサーバSと通信し、当該サーバSから地図情報Mを受信(ダウンロード)する。制御手段45は、こうして受信した地図情報Mをエンジン制御部60へ送信する。エンジン制御部60は、当該地図情報Mを記憶する。
【0073】
また、制御手段45は、ステップS10において地図情報Mを受信すると、
図5に示すように、当該地図情報Mをタッチパネル44に表示する。また制御手段45は、エンジン制御部60から歩行型管理機10の現在位置(位置情報P)を取得し、当該取得結果もタッチパネル44に表示する。
図4に示すように、エンジン制御部60は、ステップS10の処理が終了すると、ステップS20へ移行する。なお、エンジン制御部60は、地図情報Mの取得が必要ない場合、例えば過去に実行された速度制御処理で既に地図情報Mを取得している場合、ステップS10を行わずにステップS20へ移行してもよい。
【0074】
ステップS20においてエンジン制御部60は、
図6に示す禁止区域Aを設定する。禁止区域Aとは、歩行型管理機10での走行を禁止する領域を指す。
図6以降の図面では、禁止区域Aを斜線で示している。禁止区域Aは、ステップS20で利用者により任意に設定される。以下、ステップS20の流れについて具体的に説明する。
【0075】
ステップS20においてエンジン制御部60は、制御手段45に対して禁止区域情報を要求する。禁止区域情報とは、禁止区域Aを地図情報M上に示した情報を指す。なお、禁止区域情報は、実体的には地図情報Mにおける特定の領域を、情報処理装置で識別可能な情報である。制御手段45は、禁止区域情報の要求を受けると、利用者に対して禁止区域Aの設定を促す報知を行う。例えば、スピーカ41から「禁止区域を設定してください」等のメッセージを出力させる。当該報知後に利用者により端末40が操作され、禁止区域Aが設定される。この際、例えば、走行することが困難な場所(例えば、側溝等)が禁止区域Aとして設定される。また、圃場の一部を耕耘する場合(例えば貸農園を耕耘する場合)、耕耘する場所よりも外側の領域も、禁止区域Aとして設定される。このように、禁止区域Aには、主に歩行型管理機10で走行するのが望ましくない場所が設定される。制御手段45は、こうして設定された禁止区域A(禁止区域情報)をエンジン制御部60へ送信する。エンジン制御部60は、当該禁止区域A(禁止区域情報)を記憶する。
【0076】
また、
図6に示すように、ステップS20において制御手段45は、設定された禁止区域Aを地図情報Mと重ね合わせてタッチパネル44に表示する。また制御手段45は、位置情報Pも、地図情報Mと重ね合わせて表示する。さら制御手段45は、エンジン制御部60から位置情報Pを所定の微小時間(例えば0.1秒~1秒)ごとに取得し、位置情報Pを随時更新する。これによって利用者は、地図情報M上における歩行型管理機10の現在位置と禁止区域Aとの位置関係をリアルタイムに把握することができる。
図4に示すように、エンジン制御部60は、ステップS20の処理が終了すると、ステップS30へ移行する。なお、エンジン制御部60は、禁止区域Aの設定が必要ない場合、例えば過去に設定された禁止区域Aを再利用する場合、ステップS20で禁止区域Aを設定せずにステップS30へ移行してもよい。
【0077】
ステップS30においてエンジン制御部60は、機体(歩行型管理機10)から禁止区域Aまでの距離D(
図7(a)参照)の変化に基づいて、機体が禁止区域Aに向かっているか否かを判定する。具体的には、エンジン制御部60は、機体の位置情報P及び禁止区域情報に基づいて機体から禁止区域Aまでの最短距離を算出することで、禁止区域Aまでの距離Dを求める。エンジン制御部60は、当該算出結果を、過去(例えば、数秒前)における禁止区域Aまでの距離Dの算出結果と比較し、禁止区域Aまでの距離Dが短くなっているか否かを判定する。エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが短くなっている場合に機体が禁止区域Aに向かっていると判定し(ステップS30:YES)、ステップS40へ移行する。一方エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが短くなっていない場合に(ステップS30:NO)ステップS30へ移行する。こうしてエンジン制御部60は、機体が禁止区域Aに向かって走行するまでステップS30を繰り返し実行する。
【0078】
ステップS40においてエンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値X以下であるか否かを判定する(
図7(a)参照)。閾値Xは、減速すべきことを利用者に報知する必要がある程度に機体が禁止区域Aに近いか否かを判定するための値である。閾値Xは、種々の情報(歩行型管理機10の機種や寸法等)に基づいて予め設定される。なお、閾値Xを設定する方法は特に限定されるものではなく、例えば利用者が任意に閾値Xを設定してもよい。エンジン制御部60は、距離Dが閾値X以下である場合に(ステップS40:YES)、ステップS50へ移行する。一方エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Xよりも大きい場合に(ステップS40:NO)、再びステップS30へ移行する。
【0079】
ステップS50においてエンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Y(
図7(a)参照)以下であるか否かを判定する。閾値Yは、機体を減速させる必要がある程度に機体が禁止区域Aに近いか否かを判定するための値である。閾値Yは、閾値Xよりも小さい。閾値Yは、種々の情報(歩行型管理機10の機種や寸法等)に基づいて予め設定される。なお、閾値Yを設定する方法は特に限定されるものではなく、例えば利用者が任意に閾値Yを設定してもよい。エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Y以下である場合に(ステップS50:YES)、ステップS70へ移行する。一方エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Yよりも大きい場合に(ステップS50:NO)、ステップS60へ移行する。こうしてエンジン制御部60は、距離Dが閾値X以下、かつ閾値Yよりも大きい場合に、ステップS60へ移行する。
【0080】
ステップS60においてエンジン制御部60は、機体を減速すべきであることを利用者に報知する。例えばエンジン制御部60は、スピーカ41からブザーを出力したり、タッチパネル44にメッセージを表示させることで、利用者に報知する。なお、報知の方法は特に限定されるものではなく、端末40に設けられたランプ(不図示)を点灯させてもよい。また、上記ブザーやメッセージ等を適宜組み合わせて報知してもよい。ステップS60の処理が終了すると、ステップS30へ移行する。
【0081】
ステップS70においてエンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Z(
図7(b)参照)以下であるか否かを判定する。閾値Zは、機体を停止させる必要がある程度に機体が禁止区域Aに近いか否かを判定するための値である。閾値Zは、閾値Yよりも小さい。閾値Zは、種々の情報(歩行型管理機10の機種や寸法等)に基づいて予め設定される。なお、閾値Zを設定する方法は特に限定されるものではなく、例えば利用者が任意に閾値Zを設定してもよい。エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Z以下である場合に(ステップS70:YES)、ステップS90へ移行する。一方エンジン制御部60は、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Yよりも大きい場合に(ステップS70:NO)、ステップS80へ移行する。こうしてエンジン制御部60は、距離Dが閾値Y以下、かつ閾値Zよりも大きい場合に、ステップS80へ移行する。
【0082】
ステップS80においてエンジン制御部60は、機体を一定の速度まで減速させる。具体的には、エンジン制御部60は、エンジン13に設けられた適宜の燃料噴射装置(インジェクタ)による燃料の噴射量やスロットルバルブの開度(吸気量)を調節し、スロットルレバー25dで設定された回転数よりも小さくなるようにエンジン13の回転数を制御する。こうしてエンジン制御部60は、利用者の操作よりも優先して機体の走行速度を制御する。また、エンジン制御部60は、端末40に機体を減速させたことを通知する信号を送信する。端末40は、当該信号を受信すると、機体を減速させたことを利用者に報知する。報知の手法としては、ステップS60と同様のものを採用することができる。なお、機体を減速させるための手法は、エンジン13の回転数の制御に限るものではない。例えば、変速機構17aによる変速を制御してもよい。この場合は、歩行型管理機10を、電子制御により変速が可能なものとしてもよい。また、この場合は、変速機構17aとして、プーリに巻回されたベルトを用いたベルト式の変速機構や、HST(Hydraulic Static Transmission)等を採用可能である。エンジン制御部60は、ステップS80の処理が終了すると、ステップS30へ移行する。
【0083】
一方ステップS90においてエンジン制御部60は、機体を停止させる。具体的には、エンジン制御部60は、エンジン13の燃料噴射装置やスロットルバルブ、点火プラグ等を制御し、エンジン13を停止させる。また、エンジン制御部60は、端末40に機体を停止させたことを通知する信号を送信する。端末40は、当該信号を受信すると、機体を停止させたことを利用者に報知する。報知の手法としては、ステップS60と同様のものを採用することができる。なお、機体を停止させるための手法は、エンジン13の制御に限るものではない。例えば、クラッチ機構21の作動を停止させて車輪12への動力伝達を遮断することで、機体を停止させてもよい。また、変速機構17aの変速を制御して、車輪12への動力伝達を遮断してもよい。エンジン制御部60は、ステップS90の処理が終了すると、ステップS30へ移行する。
【0084】
このように、速度制御処理では、ステップS30~S90が繰り返し実行され、禁止区域Aまでの距離Dに応じて報知や機体の減速や停止が行われる。利用者は、当該報知や減速等を任意に解除することができる。例えば利用者は、タッチパネル44で所定の操作を行うことで、報知や減速等を解除することができる。なお、報知や減速等を解除するタイミングは任意に設定可能である。例えば、機体が禁止区域Aから所定の距離だけ離れたタイミングで報知や減速等を解除することも可能である。
【0085】
上記速度制御処理は、端末40で所定の操作が行われたことを契機に終了する。
【0086】
以下では、
図6から
図8までを用いて、速度制御処理により走行速度を制御する場合(ステップS30~90)の具体例を説明する。以下では、
図6に示す符号Pに位置する機体が、側溝側(紙面上方)へ向けて走行する場合を例に挙げて説明する。
【0087】
図6に示す状態から機体が進行し、
図7(a)に示すように、禁止区域Aまでの距離Dが閾値X以下となると(ステップS30:YES、ステップS40:YES、ステップS50:NO)、エンジン制御部60は、減速を促す報知を行う(ステップS60)。当該報知を受けて利用者が機体を減速させることで、禁止区域A付近での走行を慎重に行うことができる。
【0088】
図7(a)に示す状態からさらに機体が進行し、
図7(b)に示すように、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Y以下となると(ステップS30:YES、ステップS40:YES、ステップS50:YES、ステップS70:NO)、エンジン制御部60は、機体を減速させる(ステップS80)。これにより、機体の走行速度を強制的に落とすことができる。
【0089】
図7(b)に示す状態からさらに機体が進行し、禁止区域Aまでの距離Dが閾値Z以下となると(ステップS30:YES、ステップS40:YES、ステップS50:YES、ステップS70:YES)、エンジン制御部60は、機体を停止させる(ステップS90)。これにより、機体を強制的に停止して、当該機体が禁止区域Aへ進入することを防止することができる。
【0090】
また、本実施形態では、機体の進行方向を考慮して(ステップS30)、減速の報知(ステップS60)や走行速度の制御(ステップS80・90)を行っている。これにより、機体が禁止区域Aに近くても、当該機体が禁止区域Aに向かって走行していなければ減速又は停止されることはない。したがって、例えば
図8に示すように、側溝(禁止区域A)付近で、当該側溝に沿って機体を走行させる場合に(
図8に二点鎖線で示す矢印参照)、利用者による操作を優先させ、歩行型管理機10による作業を継続して行うことができる。
【0091】
以上の如く、本実施形態に係る制御システム30(管理機制御システム)は、歩行型管理機10を走行させる場所を含む地図情報Mが記憶されるエンジン制御部60の記憶装置(記憶部)と、前記地図情報M上における前記歩行型管理機10の位置情報Pを検出する位置検出部61(検出部)と、前記記憶装置からの前記地図情報M、及び前記位置検出部61からの前記位置情報Pに基づいて前記歩行型管理機10の走行速度を制御するエンジン制御部60(制御部)と、を具備するものである。
【0092】
このように構成することにより、歩行型管理機10を安定して走行させることができる。
すなわち、地図情報M及び位置情報Pに応じた走行速度の制御により、例えば走行が困難な場所付近を走行する際に走行速度を落として、歩行型管理機10を安定して走行させることができる。
【0093】
また、前記記憶装置には、前記歩行型管理機10での走行を禁止する禁止区域Aを前記地図情報M上に示した禁止区域情報が記憶され、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10の位置情報Pと前記禁止区域情報との位置関係に基づいて前記歩行型管理機10を減速又は停止させるものである(ステップS30~S50・S70~S90)。
【0094】
このように構成することにより、歩行型管理機10と禁止区域A(例えば、走行が困難な場所)との位置関係を考慮して走行速度を適切に制御することができる。
【0095】
また、前記制御システム30は、前記地図情報M又は前記禁止区域情報の少なくともいずれか(本実施形態では、地図情報M及び禁止区域情報のそれぞれ)を受信して前記エンジン制御部60の記憶装置に記憶させるエンジン通信部70(受信部)をさらに具備するものである。
【0096】
このように構成することにより、地図情報M又は禁止区域情報を更新することができる(ステップS10・S20)。これにより、例えば利用者が任意に禁止区域情報の内容を変更することができ、利便性を向上させることができる。また、例えば最新の地図情報Mを用いて走行速度を適切に制御することもできる。
【0097】
また、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10と前記禁止区域Aとの間の距離Dが第一閾値(閾値Y)以下である場合に(ステップS50:YES)、前記歩行型管理機10を減速させるものである(ステップS80)。
【0098】
このように構成することにより、歩行型管理機10が禁止区域Aに近い(歩行型管理機10と禁止区域Aとの間の距離Dが第一閾値以下である)場合に走行速度を落として、歩行型管理機10を安定して走行させることができる。
【0099】
また、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10と前記禁止区域Aとの間の距離Dが前記第一閾値よりも小さい第二閾値(閾値Z)以下である場合に(ステップS70:YES)、前記歩行型管理機10を停止させるものである(ステップS90)。
【0100】
このように構成することにより、歩行型管理機10が誤って禁止区域Aに進入するのを防止することができる。
【0101】
また、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10と前記禁止区域Aとの間の距離Dが第三閾値(閾値Y)以下であり、かつ前記歩行型管理機10が前記禁止区域Aに向かって走行している場合に(ステップS30:YES、ステップS50:YES)、前記歩行型管理機10を減速又は停止させるものである(ステップS80・S90)。
【0102】
このように構成することにより、禁止区域Aの近くを走行する歩行型管理機10が禁止区域Aに進入するおそれがある場合に歩行型管理機10を減速又は停止させることができる。これにより、走行速度を適切に制御することができる。
【0103】
また、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10と前記禁止区域Aとの間の距離Dが第四閾値(閾値X)以下である場合に(ステップS40:YES)、減速又は停止を促す報知を行うものである(ステップS60)。
【0104】
このように構成することにより、歩行型管理機10を安定して走行させることができる。
【0105】
また、以上の如く、本実施形態に係る歩行型管理機10は、前記制御システム30を具備するものである。
【0106】
このように構成することにより、歩行型管理機10を安定して走行させることができる。
【0107】
なお、本実施形態に係る制御システム30は、本発明に係る管理機制御システムの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエンジン制御部60の記憶装置は、本発明に係る記憶部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る位置検出部61は、本発明に係る検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエンジン制御部60は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエンジン通信部70は、本発明に係る受信部の実施の一形態ある。
【0108】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、本実施形態における歩行型管理機10の態様は限られない。例えば、歩行型の除雪機や芝刈り機や草刈り機等であってもよい。
【0110】
また、本実施形態では、取付部50を操縦ハンドル24に設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば側部24a上に設けてもよいし、エンジン13、燃料タンク14、ボンネット15等に設けてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を、エンジン13に一体的に設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を、エンジン13と別体に設けるようにしてもよい。
【0112】
また、本実施形態では、エンジン13からの動力で歩行型管理機10が動作される例を示したが、このような態様に限られない。例えば、電気を用いて駆動するモータで歩行型管理機10が動作されるものでもよい。
【0113】
また、本実施形態では、走行速度の制御がエンジン制御部60により行われるものとしたが、走行速度を制御する機器(本発明に係る制御部)はエンジン制御部60に限定されるものではなく、他の機器であってもよい。例えば、端末40の制御手段45等であってもよい。また、走行速度の制御のための各種処理(ステップ)を、複数の機器(例えば端末40及びエンジン制御部60等)で分担して行うことも可能である。
【0114】
また、本実施形態では、エンジン制御部60に地図情報Mが記憶されるものとしたが、地図情報Mが記憶される機器は、特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば制御手段45等に地図情報Mが記憶されてもよい。
【0115】
また、歩行型管理機10の位置情報Pは、エンジン制御部60で検出されるものとしたが、位置情報Pを検出する機器は、任意に変更可能である。例えば、端末40等により位置情報Pが検出されてもよい。
【0116】
また、禁止区域Aは、手動で設定されるものとしたが、禁止区域Aを設定する手法はこれに限定されるものではなく、自動的に設定されるものでもよい。例えば、禁止区域Aの設定時に利用者が機体を走行させ、このときの走行軌跡から禁止区域Aが自動的に設定されてもよい。
【0117】
また、地図情報Mは、速度制御処理の中でエンジン制御部60に記憶されるものとしたが、地図情報Mが記憶されるタイミングはこれに限定されるものではない。地図情報Mは、報知や機体の減速を行うか否かの判定(ステップS30~S90)よりも前にエンジン制御部60に記憶されていればよい。したがって地図情報Mは、例えばエンジン13を始動した際に記憶されてもよい。
【0118】
また、地図情報Mは、端末40からエンジン制御部60へ送信されるものとしたが、地図情報Mをエンジン制御部60へ送信する機器は特に限定されるものではなく、他の機器であってもよい。
【0119】
また、地図情報M及び禁止区域情報は、必ずしも1台の歩行型管理機10だけで使用される必要はなく、例えば複数台の歩行型管理機10で共有されるものでもよい。このように地図情報M等が共有される場合、例えば、共通の端末40を介して複数台の歩行型管理機10へ地図情報M等が送信され、これら歩行型管理機10のエンジン制御部60に同じ地図情報M及び禁止区域情報が記憶される。こうして複数台の歩行型管理機10で地図情報M等を共有することで、地図情報Mの取得や禁止区域Aの設定(ステップS10・S20)を省略することができる。なお、地図情報M等を共有する手法は、端末40を用いたものに限定されるものではなく、種々の手法を採用することができる。例えば、ある歩行型管理機10と他の歩行型管理機10との間で通信が行われることで、地図情報M等が共有されるものであってもよい。
【0120】
また、速度制御処理では、機体を減速させる処理(ステップS80)及び停止させる処理(ステップS90)がそれぞれ行われるものとしたが、走行速度を制御する手法は、これに限定されるものではない。すなわち速度制御処理では、利用者の操作よりも優先して走行速度を変更する処理が、少なくとも1回行われるものであればよい。よって、速度制御処理では、機体を減速させる処理(ステップS80)又は機体を停止させる処理(ステップS90)のいずれかのみが行われるものでもよい。また、速度制御処理では、機体を減速させる処理を複数回行って、走行速度を段階的に遅くしてもよい。
【0121】
また、速度制御処理では、禁止区域Aまでの距離Dの変化に基づいて機体が禁止区域Aに向かっているかが判定されるものとしたが(ステップS30)、当該判定に用いられる情報は距離Dの変化に限定されるものではない。すなわち速度制御処理では、種々の情報により、禁止区域Aに向かっているか判定することができる。例えば、電子コンパス43の算出結果(機体の向いた方角)に基づいて、禁止区域Aに向かっているかを判定することができる。
【0122】
また、速度制御処理では、機体が禁止区域Aに向かっている場合に(ステップS30:YES)、減速を促す報知が行われるものとしたが、当該報知は、少なくとも機体が禁止区域Aに近い場合に行われるものであればよい。よって、機体が禁止区域Aに近ければ、当該機体が禁止区域Aに向かっているか否か(ステップS30)に関わらず、減速を促す報知が行われてもよい。この場合、機体が禁止区域Aに向かっている場合(ステップS30:YES)と、禁止区域Aに向かっていない場合(ステップS30:NO)のそれぞれで、減速を促す報知が行われる。速度制御処理では、これら報知の内容を、互いに異なるものとしてもよい。
【0123】
ここで、歩行型管理機10の位置情報Pは、厳密には位置検出部61の現在の位置である。禁止区域Aまでの距離Dは、位置検出部61の取り付け位置によって変動する。そこでエンジン制御部60は、機体の長さ及び位置検出部61の取り付け位置を考慮して、報知や走行速度の制御を行ってもよい。例えば、位置情報P、機体の長さ及び位置検出部61の取り付け位置に基づいて、機体の先端から禁止区域Aまでの距離を算出し、当該算出結果と閾値X等とを比較することで報知や走行速度の制御を行ってもよい。これにより、例えば、禁止区域Aへ機体の先端が達する直前に機体を停止させる等、より精密な制御が可能となる。
【0124】
このように、前記エンジン制御部60は、前記歩行型管理機10の機体の長さを考慮して前記走行速度を制御するものである。
【0125】
このように構成することにより、走行速度の制御をより適切に行うことができる。
【0126】
また、本実施形態では、機体が禁止区域Aに近づくと、減速や停止よりも先に報知が行われるものとしたが(ステップS40~S60)、報知を行うタイミングはこれに限定されるものではなく任意に設定可能である。例えば、報知及び減速の処理が同時に行われるものであってもよい。
【0127】
また、速度制御処理では、禁止区域情報等に基づいて走行速度が制御されるものとしたが、走行すべきではない場所への進入を防止するように走行速度を制御可能であれば、必ずしも禁止区域情報を用いる必要はない。例えばエンジン制御部60は、地図情報M及び位置情報Pから圃場の端部付近を走行していると判定した場合に、機体を減速させてもよい。また例えば、エンジン制御部60は、過去の作業の履歴に基づいて走行速度を制御してもよい。この場合エンジン制御部60は、地図情報M及び位置情報Pに基づいて、過去の作業と同じ場所を当該作業に準じた耕耘速度で走行するようにエンジン13を制御する。
【0128】
また、速度制御処理では、後面カメラ42bで前方を撮像した結果を用いて、走行速度を制御してもよい。具体的には、後面カメラ42bの撮像結果には、障害物(例えば石)や側溝等が映る可能性がある。そこでエンジン制御部60は、機体の走行中に後面カメラ42bから撮像結果を取得して解析する。エンジン制御部60は、後面カメラ42bの撮像結果から障害物等を検出した場合に機体が当該障害物等に近いか否かを判定する。そしてエンジン制御部60は、障害物等に近い場合に機体の減速や停止を行う。このような構成により、障害物との衝突を回避することができると共に、禁止区域Aへの進入を防止することができる。
【0129】
また、エンジン制御部60は、後面カメラ42bの撮像結果を解析することで、機体が圃場の端部付近に到達しているか否かを判定してもよい。これにより、例えば、圃場の端部に到達する直前まで歩行型管理機10を走行させたり、機体が旋回不能となる直前の位置で歩行型管理機10を停止させることができる。
【0130】
なお、後面カメラ42bを用いた走行速度の制御は、常に行われる必要はなく、一時的に(例えば禁止区域Aに近い場合に)行われるものであってもよい。
【0131】
このように、前記歩行型管理機10は、前記歩行型管理機10の前方を撮像する後面カメラ42b(撮像部)をさらに具備し、前記エンジン制御部60は、前記後面カメラ42bの撮像結果に基づいて前記走行速度を制御するものである。
【0132】
このように構成することにより、走行速度を適切に制御することができる。
【0133】
なお、上記後面カメラ42bは、本発明に係る撮像部の実施の一形態ある。
【0134】
ここで、歩行型の除雪機で作業を行う場合、雪により地面が見えないことが想定される。このような場合に後面カメラ42bの撮像結果を用いることで、走行が困難な場所(側溝等)へ除雪機が進入するのを効果的に防止することができる。以下、
図9を用いて具体的に説明する。なお、
図9は、雪が積もる前の作業場所(道路)を模式的に示すものである。
【0135】
エンジン制御部60には、
図9に示すような、雪が積もっていない状態の作業場所を撮像した結果が予め記憶される。当該撮像結果には、側溝(走行が困難な場所)と、目印Gとが映される。目印Gは、機体の位置を認識するためのものである。目印Gは、雪が積もっても見えるような部分(
図9では塀)に設けられる。
【0136】
除雪作業を行う際には、上記撮像結果により機体が側溝に近いか否かが判定される。具体的には、除雪作業を行う際に後面カメラ42bにより目印Gが撮像される。エンジン制御部60は、当該目印Gの位置や大きさに基づいて目印Gと機体との位置関係を算出する。またエンジン制御部60は、当該算出結果と事前に撮像された作業場所の撮像結果とに基づいて、機体と側溝との間の距離を算出する。そしてエンジン制御部60は、当該算出結果から機体が側溝に近いと判定した場合に、機体の減速や停止を行う。このような構成により、除雪作業を行う場合に、走行が困難な場所に除雪機が進入するのを効果的に防止することができる。なお、上記制御の対象は、除雪機に限られず、例えば、芝刈り機等であってもよい。
【0137】
また、機体の停止(ステップS90)後、機体の再始動に関しては周囲の安全が確保されていればその方法は限定されない。例えば、進行方向を後方へと切り替えるレバー等の入力信号を受信している場合や、機体の進行方向が安全な方向を向いていることを検知した場合、上記後面カメラ42bによる画像から安全が確保されたと判断された場合など、その方法は限定されない。
【0138】
また、機体の停止(ステップS90)後、機体の再始動がされた際、距離Dが閾値Zを越えるまで、機体の速度を減速させるなどの速度制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0139】
10 歩行型管理機
30 管理機制御システム(制御システム)
45 エンジン制御部(記憶部、制御部)
61 位置検出部(検出部)
M 地図情報
P 位置情報