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特許7544668融着ネットワークを有する透明導電性フィルムの形成のための金属ナノワイヤーインク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】融着ネットワークを有する透明導電性フィルムの形成のための金属ナノワイヤーインク
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20240827BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20240827BHJP
【FI】
H01B5/14 A
C09D11/52
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021112558
(22)【出願日】2021-07-07
(62)【分割の表示】P 2019151031の分割
【原出願日】2015-07-27
(65)【公開番号】P2021167425
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】14/464,332
(32)【優先日】2014-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/448,504
(32)【優先日】2014-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514325310
【氏名又は名称】シー3ナノ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】C3Nano Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】イン-シイ・リ
(72)【発明者】
【氏名】シーチアン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】神部 優
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ホア・グゥ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・マイケル・ラム
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・マリコ・イノウエ
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・ユン-チー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ダ・ジャン・タン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エス・スカリー
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ビーカー
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】棚田 一也
【審判官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517603(JP,A)
【文献】特表2009-505358(JP,A)
【文献】特表2010-507199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0342221(US,A1)
【文献】特表2017-529419(JP,A)
【文献】特開2020-073628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
C09D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着金属ナノ構造ネットワークとポリマーポリオールとを含む透明導電性フィルムであって、金属添加量100質量%に対して40質量%~600質量%のポリマーポリオールを含み、
前記透明導電性フィルムが、水性溶媒、金属ナノワイヤー0.001質量%~4質量%と、ポリマーポリオール0.05質量%~5質量%と、可溶性金属イオン0.0001質量%~0.5質量%とを含む金属ナノワイヤーインクの乾燥物であり、金属ナノワイヤーインク中の質量%は金属ナノワイヤーインクの総重量に基づく、透明導電性フィルム。
【請求項2】
0.1mg/m~300mg/mの金属ナノワイヤー添加量を有する、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
金属添加量100質量%に対して100質量%~450質量%の前記ポリマーポリオールを含む、請求項1または請求項2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記ポリマーポリオールがセルロース系ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記ポリマーポリオールがキトサン系ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤーが、平均直径10~120nmを有する請求項1~5のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーで、かつ前記可溶性金属イオンが可溶性銀イオンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記金属ナノワイヤーインクが、銀ナノワイヤー0.01質量%~2質量%、ポリマーポリオール0.1質量%~2質量%および可溶性銀イオン0.001質量%~0.2質量%含有し、質量%は金属ナノワイヤーインクの総重量に基づく、請求項1~7のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記可溶性金属イオンが、銀、、プラチナ、パラジウム、亜鉛、ニッケルまたはこれらの組合せである請求項1~6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
シート抵抗が100ohms/sq以下を有する請求項1~9のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
ASTM D1003で測定された全透過率%少なくとも90%およびヘイズ1.0%以下を有する請求項1~10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
前記透明導電性フィルムを支持するポリマー基材を更に含有する請求項1~11のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項13】
前記透明導電性フィルムの少なくとも一部をカバーするポリマーオーバーコートを更に含有する請求項1~12のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項14】
前記金属ナノワイヤーが、銀ナノワイヤーであり、前記フィルムがシート抵抗100ohms/sq以下、全透過率%少なくとも90%およびヘイズ1.0%以下(全透過率およびヘイズはASTM D1003により測定される)を有する請求項13記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルム、特に、融着ナノ構造金属ネットワークを形成するフィルムを形成するために適した金属ナノワイヤーを含むインクに関する。本発明はさらに、インクによって形成される構造物ならびにインクを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性フィルムは、様々な文脈で重要な機能を提供することができる。例えば、静電気が望ましくないかまたは危険であり得る時に電気導電性フィルムが静電気の散逸のために重要であり得る。光学フィルムを使用して、例えば偏光、反射防止、位相シフト、耀度向上または他の機能などの様々な機能を提供することができる。高品質ディスプレイは、1つまたは複数の光学コーティングを含むことができる。
【0003】
透明導体は、例えば、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池およびスマートウィンドウなどのいくつかの光電子用途のために使用され得る。伝統的に、酸化インジウムスズ(ITO)は、高い導電率においてその比較的高い透明性のために好ましい材料であった。しかしながらITOに関していくつかの欠点がある。例えば、ITOは、高温および真空を必要としこのため比較的時間がかかり費用効果が高くない製造方法であるスパッタリングを使用して堆積される必要がある脆いセラミックである。さらに、ITOは、可撓性の基材上で容易に亀裂を生じることが知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、約0.001重量%~約4重量%の金属ナノワイヤーと、約0.05重量%~約5重量%の親水性ポリマーバインダーと、約0.0001~約0.5重量%の金属イオンとを含む金属ナノワイヤーインクに関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、約5.5~約7.5pH単位のpHの水溶液中に約0.001重量%~約4重量%の金属ナノワイヤーと、約0.0001~約0.5重量%の金属イオンと、約20重量%~約60重量%の液体アルコールとを含む金属ナノワイヤーインクに関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、融着金属ナノ構造ネットワークとポリマーポリオールとを含む透明導電性フィルムに関し、そこでフィルムは、金属重量に対して約40重量%~約600重量%のポリマーポリオールを含む。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、融着用金属ナノワイヤーインクを基材表面上に堆積させる工程と、金属ナノワイヤーインクを乾燥させて、透明導電性フィルムを形成する工程とを含む、透明導電性ネットワークを形成するための方法に関する。金属ナノワイヤーインクは、約0.001重量%~約4重量%の金属ナノワイヤーと、約0.05重量%~約5重量%の親水性ポリマーバインダーと、約0.0001~約0.5重量%の金属イオンとを含むことができる。乾燥工程後に形成される透明導電性フィルムは、融着金属ナノ構造ネットワークの形態の融着金属ナノワイヤーを含むことができ、透明導電性フィルムが約250ohms/sq以下のシート抵抗を有する。
【0008】
他の態様において、本発明は、約45ohms/sq~約250ohms/sqのシート抵抗および約0.8%以下のヘイズ、または約30ohms/sq~約45ohms/sqのシート抵抗および約0.7%~約1.2%のヘイズを有する薄く広がった金属導電性要素を含む透明導電性フィルムに関する。
【0009】
さらに、本発明は、金属イオンを有する堆積されただけの金属ナノワイヤーインクを焼結するための方法に関し、方法は、金属ナノワイヤーフィルムを約60℃~約99℃の温度で少なくとも約40%の相対湿度で少なくとも約1分間乾燥させる工程を含む。いくつかの実施形態において、金属ナノワイヤーフィルムは、約0.001重量%~約4重量%の金属ナノワイヤーと、約0.05重量%~約5重量%の親水性ポリマーバインダーと、約0.0002~約0.5重量%の金属イオンとを含む金属ナノワイヤーインクの堆積によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】単一経路を有する導電性パターンを形成する基材表面に沿う融着金属ネットワークを示す略図である。
図2】複数の電気導電経路を有する導電性パターンを形成する基材表面に沿う融着金属ナノ構造フィルムを示す略図である。
図3】矢印3に沿って取られた図2の基材および融着フィルムの側面図であり、ポリマーオーバーコートが電気導電性フィルムの上に置かれている。
図4】基材および融着フィルムの代替実施形態の側面図であり、電気導電性金属リードがオーバーコート下でパターン化される。
図5】タッチスクリーンまたは他のセンサーデバイスに組み込むように構成された金属トレースを有するパターン化フィルムおよびポリマーオーバーコートの上面図である。
図6】パターン化フィルムと接触させて導電性金属トレースを配置する工程と金属トレースおよびパターン化フィルムの上にポリマーオーバーコートを堆積させる工程のためのプロセスの流れを示す略図である。
図7】キャパシタンスに基づいたタッチセンサーを示す略図である。
図8】抵抗に基づいたタッチセンサーを示す略図である。
図9】混合せずに2週間貯蔵された後の9つの異なったインク系の写真である。
図10】オーバーコートを適用する前に異なった条件下で乾燥された4つの試料のシート抵抗のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
安定な金属ナノワイヤーインクによってすぐれた光学的性質および低いシート抵抗を有する透明導電性フィルムが形成され、そこで薄く広がった金属導電層は一般的に、制御条件下で形成される、ポリマーバインダーによる融着ナノ構造金属ネットワークを含む。インクは一般的に、金属ナノワイヤーと、融剤としての金属イオンと、ポリマーバインダーとの水系の分散体を含む。いくつかの実施形態において、インクがアルコールを含み、それがインクにおよび/またはフィルムへの加工に望ましい性質を与えることができる。いくつかの実施形態において、安定なインクは、さらに以下に説明されるように、中性近くのpHを有するが、それは加工のために便利であり、そして有効な安定な融着用金属ナノワイヤーインクは、付加的な酸を使用せずに形成され得る。インクは、かなりの時間の間沈降を避けることに対して安定しており、商業的に適正な環境下で便利な加工を提供することができる。得られた透明導電性フィルムは、良い光学的性質、例えば、高い光学透明性および低いヘイズと共に低いシート抵抗を有することができ、ヘイズの非常に低い値がシート抵抗のかなり低い値と共に達成されている。透明導電性フィルムは、所望のパターンに印刷することによっておよび/またはフィルムをエッチングすることによってパターン化され、所望のパターンを形成することができる。透明導電性フィルムをタッチセンサーまたは光電池デバイスなどの様々な製品に組み込むことができる。
【0012】
銀ナノワイヤーベースのフィルムは、透明導電性電極等の形成のために商業使用に用いられている。ナノワイヤー中の金属は本質的に電気導電性であるが、金属ナノワイヤーによって形成される構造物において、より長い距離の電気伝導を提供するためには不十分なワイヤー間の接触から電気抵抗が生じ得る。金属ナノワイヤーフィルムの導電率を改良するのは、隣接した金属ナノワイヤー間の接合部の接触を改良すると共にナノワイヤーの性質を改良することよって達成され得る。隣接した金属ナノワイヤーを融着して融着ナノ構造金属ネットワークを形成することは、望ましい性質を有する透明導電性フィルムを形成するフレキシブルで有効な方法であり得ることが発見されている。
【0013】
上記のとおり、薄く広がった金属導電層を金属ナノワイヤーから有効に形成することができる。特に興味深い実施形態において、金属ナノ構造ネットワークを融着金属ナノワイヤーから形成することができ、透明導電性フィルムの形成に関して望ましい結果が得られる。具体的には、すぐれた電気的および光学的特性を有するように融着金属ナノ構造ネットワークを形成することができ、それらを都合よくパターン化することができ、そしてポリマーバインダーと組み合わせて、初期に安定化される電気導電性フィルムを形成することができる。融着金属ナノワイヤーから形成される金属ナノ構造ネットワークは、他のナノワイヤーベースの透明導電性フィルム構造物に代わる望ましい別の選択肢を提供する。
【0014】
金属ナノワイヤーを様々な金属から形成することができ、金属ナノワイヤーは商業的に入手可能である。金属ナノワイヤーは本質的に導電性であるが、金属ナノワイヤーベースのフィルムの抵抗の大部分はナノワイヤー間の不完全な接合によると考えられる。加工条件およびナノワイヤーの性質に応じて、融着をせずに堆積されただけの、比較的透明なナノワイヤーフィルムのシート抵抗は、例えばギガオーム/sqの範囲であるかまたはさらに高いなど、非常に大きいことがあり得るが、類似した融着されていないフィルムは必ずしも大きくない場合がある。光学透明性を損なわずにナノワイヤーフィルムの電気抵抗を低減する様々な方法が提案されている。金属ナノ構造ネットワークを形成する低温化学融着は、光学透明性を維持しながら電気抵抗を低下させるのに非常に有効であることが判明している。融着金属ナノワイヤーフィルムの使用は、導電性フィルムの著しい安定化をもたらし、とりわけ金属ナノワイヤーの性質にそれほど依存せずに極めて望ましい性能を提供する。
【0015】
特に、金属ナノワイヤーベースの電気導電性フィルムの達成に関する著しい前進は、金属ナノワイヤーの隣接した部分が融着する融着金属ネットワークを形成するための十分に制御可能な方法の発見であった。特に、ハロゲン化物イオンが金属ナノワイヤーの融着を引き起こして融着金属ナノ構造物を形成できることが先行研究において発見された。ハロゲン化物アニオンを含む融剤を様々な方法で導入して融着を良好に達成し、電気抵抗の相応する著しい低下があった。具体的には、ハロゲン化物アニオンを使用する金属ナノワイヤーの融着が酸ハロゲン化物の蒸気および/または溶液ならびにハロゲン化物塩の溶液を使用して達成されている。ハロゲン化物供給源を使用する金属ナノワイヤーの融着はさらに、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2013/0341074号明細書および“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2013/0342221号明細書(出願公開第2013/0342221号)に記載されており、共に本願明細書に参照によって組み込まれる。出願公開第2013/0342221号には、室内照明下で通常の観察者には事実上目に見えない導電率高コントラストパターンを形成するためのHCl蒸気の選択的な供給に基づいた有効なパターン化が記載されている。
【0016】
金属ナノワイヤーの表面に沿って形成される金属ハロゲン化物は、金属イオンの移動度/拡散率を増加し、その結果ナノワイヤー間の接触点または接触付近の融着をもたらして融着ネットワークを形成すると考えられる。ハロゲン化物融剤が使用されるとき、得られた融着ナノワイヤーネットワーク上に金属ハロゲン化物シェルができることを証拠が示している。理論によって制限されたくはないが、金属ナノワイヤー上の金属ハロゲン化物コーティングがナノワイヤーからの金属原子/イオンの可動化をもたらし、その結果、可動化されたイオンが濃縮して、付近のナノワイヤー間に接合部を形成し、ナノ構造ネットワークを形成すると共に、ナノ構造内の金属原子の正味移動によって融着ネットワークを形成する時におそらく自由エネルギーを低下させると考えられる。
【0017】
融着金属ナノワイヤーネットワークを形成するための方法を発展させたものは還元/酸化(レドックス)反応に基づいていたが、それが提供された結果、得られたフィルムの光学的性質を損なわずに融着ナノワイヤーをもたらすことができる。理論によって制限されることを望まないが、推進力はまた、金属が接合部に移動して融着ナノ構造ネットワークを形成することによる自由エネルギーの低下であると思われる。接合部に堆積するための金属を、溶解された金属塩として有効に加えることができるかまたは金属ナノワイヤー自体から溶解することができる。金属ナノワイヤーを融着してナノ構造ネットワークを形成するためのレドックス化学の有効な使用は、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions With Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2014-0238833号明細書(出願公開第2014-0238833号)(本願明細書に参照によって組み込まれる)にさらに説明されている。また、出願公開第2014-0238833号には、融着金属ナノ構造ネットワークの形成のための単一溶液方法が記載されており、すぐれた性能を有する融着金属ナノ構造ネットワークを形成するための単一溶液堆積のための安定なインクがここに記載されている。
【0018】
ナノワイヤーの融着のための更なる方法は、高いpH、すなわち、アルカリ性の融着溶液を金属ナノワイヤーフィルムに与えることに基づいて説明されている。“Transparent Conductive Coatings Based on Metal Nanowires and Polymer Binders,Solution Processing Thereof,and Patterning Approaches”(本願明細書に参照によって組み込まれる)と題された、Yangらに対する米国特許出願公開第2015-0144380号明細書(出願公開第2015-0144380号)を参照のこと。一般的に、有効な融着を達成するために、pHは約9.5pH単位よりも大きくなり得る。アルカリ性条件が、金属ナノワイヤーの表面に沿って金属イオンを有効に可動化すると考えられる。次に金属は隣接した金属ナノワイヤー間の接触点または接触付近に選択的に移動してワイヤーを融着する。このように、アルカリによる融着は、ハロゲン化物ベースの融着またはレドックスベースの融着に代わる別の選択肢を提供する。
【0019】
いくつかの用途のために、フィルムの電気導電性部分をパターン化して所望の機能性(例えば、タッチセンサーの異なった領域など)を導入することが望ましい。もちろん、パターン化を単に基材表面上の金属添加量を変えることによって実施するには、金属ナノワイヤーを選択された位置に印刷し、他の位置は金属を効果的に有さないようにするか、または選択された位置から金属をエッチするかあるいは他の方法でアブレートして、エッチされた/アブレートされた位置の金属の少なくとも一部を除去するかどちらでも可能である。様々なマスキング、集束放射、フォトリソグラフィ技術、それらの組合せ等を使用してパターン化プロセスを支援することができる。
【0020】
単一溶液または一インク系において、溶解された金属イオンを金属供給源として提供することができ、その金属イオンを有さない相応するインクは一般的に、金属ナノワイヤーの融着をもたらさないのが観察される。一インク系については、pHを約1.5pH単位~8pH単位の間またはより狭い範囲に維持することが、インクの金属移動度を制限すると共に安定性を改良するために望ましい可能性があることが見出された。これらのpH価において中程度のpH価はワイヤーからの金属をあまり可動化しないが、インクに加えられる金属イオンに基づいてインクを適切に調合することで融着は依然として観察される。いくつかの実施形態において、適した融着用金属ナノワイヤーインクは、付加的な酸を使用せずに形成され得るが、若干量の酸をまだ有効に使用して透明導電性フィルムを形成することができる。いくつかの加工の文脈では、酸は或る加工装置には腐蝕性であり得るので低pHインクを避けることも望ましい場合があるため、それほど酸性ではないインクもまた加工の観点から望ましい場合がある。堆積されただけのナノワイヤーフィルムに異なった融着溶液が加えられる上述の二インク系について、バインダーの選択は良い融着および相応する望ましいフィルム特性を提供しながら多様であったが、安定な一インク系については、親水性ポリマーが融着を促進して、得られたフィルムの所望の低いシート抵抗を得ることがわかった。融着は、溶媒が除去される時に様々な成分の濃度が増加する乾燥プロセスの間に起こると考えられる。以下にさらに説明されるように、いくつかの実施形態において、湿潤状態下でのより漸進的な乾燥プロセスを使用して改良された融着を達成することができる。
【0021】
融着ナノ構造金属ネットワークに硬化する有効な単一堆積インクを達成する望ましいインクは、得られたフィルム中の金属の適切な添加量を達成する金属ナノワイヤーの所望の量を含む。適切な溶液中で、インクはインクの堆積および乾燥前に安定している。インクは、さらなる加工のために安定な導電性フィルムの形成に寄与する適度な量のポリマーバインダーを含むことができる。良い融着の結果を得るために、例えばセルロースまたはキトサン系ポリマーなどの親水性ポリマーが有効であることが見出されている。融着プロセスのための金属の供給源としての金属イオンは、可溶性金属塩として供給される。
【0022】
実施例において示されるように、低シート抵抗フィルムはアルコール溶媒を使用せずインクの適切な他の成分を使用して形成され得る。特に、いくつかの適したポリマーバインダーは、融着プロセスを引き起こす金属イオンを低減させることができる官能基を有し得る。しかしながら、インクのための溶媒が水性アルコール溶液であるのが望ましいことがあり得る。いくつかの実施形態において、溶液は全液体に対して約5重量%~約80重量%のアルコールを含むことができる。一般的に、液体の残部の大部分は水であるが、若干量の他の有機溶媒を使用することができる。さらに別のまたは代替実施形態において、アルコールのブレンドが有効に使用されている。特に、イソプロピルアルコールとエタノールとのブレンドは良い安定性および融着性質を有するインクをもたらすことが見出されている。安定性は以下にさらに考察されるが、一般的に安定なインクは、撹拌せずに1時間の沈降後に固形分の沈降がなく、撹拌せずに2週間の沈降後に可視的な分離を限度内にとどめた。
【0023】
1つのインク加工によって、金属ナノワイヤーの良い融着をさらに提供しながらインクの著しい酸性化を行うことなく改良された安定性を有する融着用金属ナノワイヤーインクが概ね達成されている。また、加工装置の腐蝕を低減するために、インクのpHが高い酸性ではないのが望ましいことがあり得る。いくつかの実施形態において、若干の緩やかな酸性化を行ない、ポリマーバインダーの可溶化を改良しおよび/または融着プロセスをさらに或る程度促進することができる。約1.5pH単位より低いおよびいくつかの実施形態において約3pH単位より低いpHまでの酸性化は一般的に、望ましくない酸度を有するインクをもたらす。良い金属ナノワイヤーの融着は強い酸性化をすることなく達成可能であることが発見されている。このように、融着ナノ構造金属ネットワークの直接加工のためのインクの形成は驚くべきことに、インクの酸性化を全く行うことなくまたは強い酸性化を行うことなく金属供給源として金属イオンを使用して有効に達成され得る。しかしながら、より大きな酸性化が許容され得ると共に望ましい導電性フィルムをもたらす場合がある特定の用途が存在する場合がある。
【0024】
別個の融着溶液を使用する二溶液法の使用は、同等の金属添加量を有する融着された領域と融着されていない領域とを有するパターンを形成するのにより大きな自由度を与えている。ポリマーバインダーを使用して形成されただけの融着されていないフィルムは、高いシート抵抗値を有するように形成され得る。単一溶液を使用して融着金属ナノ構造金属ネットワークを形成することは、金属添加量に基づいてパターン化する方法を意味する。特に、パターン化する方法には、例えば、インクを印刷して、インクを含まずに形成された領域があるパターンを直接に形成すること、および/または堆積されたインク部分を除去してそれらの導電率を低下させることが含まれる。以下にさらに説明されるように、基材の領域からの金属添加量の除去は一般的に、融着を終える前または後に行なうことができ、および/または選択された領域に位置している金属の一部または実質的に全てを含むことができる。
【0025】
1つのインク加工によって、金属ナノワイヤーが融着して融着ナノ構造金属ネットワークを形成する。光学的性質は薄く広がった金属層の光学的性質と一致し、それは低いヘイズを有する良い光学透明性を示すことができる。得られたフィルムは、隣接した金属ナノワイヤー融着するというコンセプトと明らかに矛盾しない異なった性質を示すことができる。最初の問題として、単一インク融着法を必要とする先行作業が電子顕微鏡法によって検査されたが、そこで画像は隣接したワイヤー間の融着接続を示した。例えば、上に引用した出願公開第2013/0342221号明細書を参照のこと。金属ナノワイヤーを融着して融着ネットワークを形成することを示す同様な顕微鏡写真が検討中のフィルムについて得られた。さらに、金属イオンを有さない対照溶液は、融着された系に対して観察された達成された非常に低いシート抵抗を示さない。硬化/乾燥プロセスが湿り大気中で行なわれるデータにおいてさらに別の証拠が見出されている。特定の銀ナノワイヤーについては、融着プロセスはより緩慢に進むと思われ、融着を長時間にわたって行うことができる。乾燥を湿り大気中で行ってフィルムをよりゆっくりと乾燥させ、金属構造のさらなる融着をもたらすことができ、シート抵抗の相応する低下が観察される。さらに、重要なことには融着ナノ構造金属ネットワークは得られた透明導電性フィルムに安定性を与え、それは従来の融着されていない金属ナノワイヤーフィルムでは達成可能でなかったと本出願人が考える、このフィルムを組み込む構造物の形成を可能にする。このように、融着ナノ構造金属ネットワークを有するフィルムは、可能性としては、融着されていないナノワイヤーフィルムよりも、伸縮性かつ折り曲げ可能な透明導電性フィルムを有するデバイスにおいての用途により適している。成形透明導電性フィルムが“Formable Transparent Conductive Films With Metal Nanowires”(本願明細書に参照によって組み込まれる)と題された、Kambeらに対する係属中の米国仮特許出願第61/978,607号明細書に記載されている。
【0026】
特に興味深いいくつかの実施形態において、金属ナノワイヤーインクは、撹拌せずに1時間後に、またはおそらくもっと長く固形分の沈降が観察されないという点において安定している。もちろん、使用するために、インクを使用の少し前に撹拌して所望のレベルの均一性および性能を確実にしてもよい。それにもかかわらず、インクの安定性は、貯蔵寿命および加工方法に関して望ましい商業的な利点を提供することができる。安定なインクの形成と両立して、インクのレオロジーを適度な範囲にわたって調節して、商業的な堆積方法を提供することができる。
【0027】
様々な印刷方法を使用して基材上にパターンにインクを印刷することができる。例えば、リソグラフィを使用して、パターン化を行うことができる。例えば、フォトレジスト、例えば市販の組成物を使用して基材の部分を遮断することができ、後でレジストを除去することにより相応して、露光した基材に相関させられていない金属添加量を除去する。あるいは、スクリーン印刷、噴霧コーティング、グラビア印刷等を使用して、基材の部分上に金属ナノワイヤーインクを選択的に堆積することができる。代わりにまたはさらに、金属添加量は、基材上に堆積後に、例えばエッチング等によって部分的に除去され得る。金属添加量の部分的な除去は、選択された位置の金属の部分的または完全な除去を含むことができる。適したエッチング方法には、例えば、放射線によるエッチングおよび/または化学エッチングが含まれる。集束放射を使用してまたはマスキングを使用して放射線によるエッチングを行い、放射線への露光を制御することができる。例えば、レーザーまたは集束電子ビームを集束放射エッチングのために使用することができる。また、放射線を集束するマスキングを有効に使用することができる。化学エッチングに対して、マスキングを使用して化学エッチングを制御することができる。例えば、リソグラフィを使用してパターンを形成し、化学エッチングを誘導することができる。
【0028】
製品に組み込むために、保護層を一般的に透明導電性フィルムの上に置き、次いで製品に組み込むことができる構造物となるように積層体構造物を形成する。様々な構造物を形成して特定の製造仕様に適合させることができるが、一般的な構造物は、基材としての1つまたは複数の層と、基材上のパターン化を有するかまたは有しない電気導電性フィルムと、1つまたは複数のトップコートとを含むことができる。厚めのラミネートトップコートを有効に使用して電気導電性フィルムを保護することができる。
【0029】
単一インク融着プロセスによって形成される電気導電性フィルムは、望ましい低いレベルのシート抵抗、例えば、約75ohms/sq以下を達成することができる。もちろん、シート抵抗を例えば金属添加量などの様々なパラメーターによって調節することができ、より低コストの成分のために非常に低いレベルのシート抵抗は指定されなくてもよい。低いシート抵抗を有すると同時に、フィルムは、非常に良い光学透明性および低いヘイズを有することができる。したがって、得られた構造物は透明導電性電極のための様々な用途によく適している。
【0030】
インク組成物と性質
単一インク調合物は、所望の添加量の金属をフィルムとして基材表面上に堆積させると共に同時に、インクが適切な条件下で乾燥される時に融着プロセスを引き起こすインク中の成分を提供する。これらのインクは便宜的に融着用金属ナノワイヤーインクと称することができ、乾燥するまで融着は一般的に行なわれないと理解されている。インクは一般的に水性溶媒を含み、それはいくつかの実施形態においてアルコールおよび/または他の有機溶媒をさらに含むことができる。インクは、融着プロセスのための金属供給源として、溶解された金属塩をさらに含むことができる。理論によって制限されることを望まないが、インクの成分、例えば、アルコールが溶液から金属イオンを還元して融着プロセスを引き起こすと考えられる。これらのシステムにおいての融着プロセスに関するこれまでの経験が示唆するのは、隣接した金属ナノワイヤー間の接合部に金属が優先的に堆積するということである。ポリマーバインダーを提供することによってフィルムを安定化し、インク性質に影響を及ぼすことができる。インクの特定の調合物を調節して、特定の堆積方法に適していて望ましい特定のコーティング性を有するインク性質を選択することができる。融着金属ナノ構造ネットワークを形成する1つのインク系に関して、例えばセルロース系ポリマーまたはキトサン系ポリマーなどの親水性ポリマーを使用してシート抵抗の望ましい値を達成できることが見出された。以下にさらに説明されるように、融着プロセスを有効に行なうように乾燥条件を選択することができる。
【0031】
このように、本明細書に記載される改良された実施形態について、融着用金属ナノワイヤーインクは一般的に、金属ナノワイヤー、水性溶媒、溶解された金属塩、任意選択の親水性ポリマーバインダー、および任意選択により他の添加剤を含むことができる。金属ナノワイヤーの濃度は、インクの流体性質と基材上に堆積される金属の添加量の両方に影響を与える。金属ナノワイヤーインクは一般的に、約0.001~約4重量パーセントの金属ナノワイヤー、さらなる実施形態において約0.005~約2重量パーセントの金属ナノワイヤーおよびさらに別の実施形態において約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤーを含むことができる。上記の明示範囲内の金属ナノワイヤー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0032】
一般的には、ナノワイヤーは、高い導電率のために望ましいことがあり得る様々な金属、例えば銀、金、インジウム、スズ、鉄、コバルト、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅およびそれらの合金から形成され得る。商用金属ナノワイヤーは、Sigma-Aldrich(Missouri,U.S.A.),Cangzhou Nano-Channel Material Co.,Ltd.(China),Blue Nano(North Carolina,U.S.A.),EMFUTUR(Spain),Seashell Technologies(California,U.S.A.),Aiden(Korea),Nanocomposix(U.S.A.),K&B (Korea),ACS Materials(China),KeChuang Advanced Materials(China),and Nanotrons(U.S.A.)から入手可能である。あるいは、銀ナノワイヤーはまた、様々な公知の合成経路またはそれらの別形態を使用して合成され得る。特に銀はすぐれた導電率を提供し、商用の銀ナノワイヤーが入手可能である。良い透明性および低いヘイズを有するために、ナノワイヤーが様々な小さな直径を有することが望ましい。特に、金属ナノワイヤーが約250nm以下、さらなる実施形態において約150nm以下、他の実施形態において約10nm~約120nmの平均直径を有することが望ましい。平均長さに対して、より長い長さのナノワイヤーは、ネットワーク内のより良い導電率をもたらすことが予想される。一般的には、金属ナノワイヤーは、少なくとも1ミクロン、さらなる実施形態において、少なくとも2.5ミクロンおよび他の実施形態において約5ミクロン~約100ミクロンの平均長さを有することができるが、将来開発される改良された合成技術は、より長いナノワイヤーを可能にするかもしれない。アスペクト比は、平均長さを平均直径で割った比として規定することができ、いくつかの実施形態において、ナノワイヤーは、少なくとも約25、さらなる実施形態において約50~約10,000およびさらに別の実施形態において約100~約2000のアスペクト比を有することができる。上記の明示範囲内のナノワイヤーの寸法のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0033】
インクのための溶媒は一般的に、任意選択によりアルコールをも含む水性溶媒を含む。アルコールは、ナノワイヤーの融着を引き起こす還元能力を提供することができると共に例えば改良されたコーティング品質などの望ましいインク特性を提供することができる。アルコールを含む実施形態のために、溶媒は、水と約5重量パーセント~約80重量%のアルコール、さらなる実施形態において約10重量%~約70重量%、さらに別の実施形態において約15重量%~約65重量%および他の実施形態において約20重量%~約60重量%のアルコールとを含むことができる。適したアルコールは一般的に、適切な濃度範囲で水に可溶性または混和性であり、例えば、短鎖アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、7個までの炭素原子を有する直鎖または枝分れ鎖を有する他のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール、エチルラクテート、メトキシエタノール、メトキシプロパノール、他のグリコールエーテル、例えばアルキルセロソルブおよびアルキルカルビトール等またはそれらのブレンドが含まれる。水性溶媒中のイソプロピルアルコールとエタノールとのブレンドを含む溶媒が以下の実施例において説明される。いくつかの実施形態において、溶媒は任意選択により少量の他の可溶性有機液体、例えば、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカン等およびそれらの混合物、例えばメチルエチルケトン、グリコールエーテル、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、またはそれらの混合物などを含むことができる。任意選択の有機溶媒が存在している場合、ナノワイヤーインクは一般的に、約10重量パーセント以下の非アルコール有機溶媒、さらなる実施形態において約0.5重量%~約8重量%およびさらに別の実施形態において約1重量%~約6重量%の非アルコール有機溶媒を含む。上記の明示範囲内の溶媒濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0034】
金属イオンは、金属ナノワイヤーを融着するための金属の供給源を提供し、インクは、適切な濃度の金属イオンを含む。金属イオンは、溶媒中の溶解された塩として供給される。一般的に、金属ナノワイヤーインクは、約0.0001重量%~約0.5重量%の金属イオン、さらなる実施形態において約0.00025重量%~約0.075重量%、他の実施形態において約0.0003重量%~約0.06重量%、さらに別の実施形態において約0.0005重量%~約0.05重量%金属イオンおよびいくつかの実施形態において約0.00075重量%~約0.025重量%を含む。上記の金属イオン濃度の明示範囲内のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。また、金属塩は対イオンを含み、それは一般的にフィルム形成プロセスにおいて不活性であると考えられるが、特定の塩の選択は、溶媒中へインクの完全かつ急速な溶解性をもたらすのがよい。一般的に、適したアニオンには、例えば、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が含まれる。特定のアニオンの選択は、溶液中のイオンとの或る錯化のためにあるていど金属イオン活性に影響を与える場合があり、本明細書の教示に基づいて経験的な調整を行なうことができる。金属イオンは一般的に、ナノワイヤーの金属元素に相応し、銀ナノワイヤーに関してもそうであり、一般的に銀塩を使用して、ナノワイヤーを融着するための金属イオンを供給する。しかしながら、金属イオンに相応する金属元素が、酸化電位がナノワイヤーの金属とほぼ同等かまたはそれを超える、すなわち、酸化するのがより難しい金属元素に相応する場合、他の金属イオンまたはそれらの組合せを使用することが可能である。銀ナノワイヤーについてもそうであり、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン等を銀イオンの他にまたは別の選択肢として使用することができ、本明細書の教示に基づいて他のナノワイヤーのための適切なイオンを同様に選択することができる。
【0035】
融着用金属ナノワイヤーインクのpHは、酸を添加して調節されてもされなくてもよい。酸を添加せずに安定な金属ナノワイヤーインクを形成することができ、それは比較的中性のpH、例えば、約5.5pH単位~約8pH単位を有するインクをもたらすことがいくつかの実施形態において見出された。酸が添加されない場合、pHは成分の溶媒の純度、溶解されたCO、添加剤、例えば、ポリマーバインダーの性質等によって影響される。酸を添加してポリマーバインダーの溶解を促進し、透明導電性フィルムの性質に影響を与え、インクの他の性質または他の起因に影響を与えることが望ましい場合がある。加工の観点から、あまり酸性でないインクが、プロセス装置の腐蝕を低減するために望ましいことがある。このように、いくつかの実施形態において、インクのpHを約3pH単位~約8pH単位、さらなる実施形態において約3.4pH単位~約7.6pH単位およびさらに別の実施形態において、約3.8pH単位~約7.3pH単位にするのが望ましい。代替実施形態において、より酸性のインクを使用することができるが、十分に高い酸度において一般的にインクの安定性は維持するのが難しくなる場合がある。より酸性の安定なインクについて、pHは一般的に、約1.5pH単位以上、さらなる実施形態において約1.75以上およびさらに別の実施形態において約2pH単位~約3pH単位の値に維持される。pHのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。一般的には、任意の適当な酸を使用して、例えば硝酸、硫酸、過塩素酸、塩酸、スルホン酸等の強酸、またはより高いpH価のために例えば酢酸、クエン酸、他のカルボン酸等の弱酸を使用して、pHを調節することができる。特定の酸およびpH価は一般的に、ポリマーバインダーおよびその他のインク成分を損なわないように選択される。
【0036】
インクは任意選択により、溶媒中に溶解される親水性ポリマー成分を含むことができる。インクは一般的に、約0.01重量%~約5重量%の親水性ポリマー、さらに別の実施形態において約0.02重量%~約4重量%および他の実施形態において約0.05重量%~約2重量%の親水性ポリマーを含む。上記の明示範囲内の親水性ポリマー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。本明細書中で用いられるとき、ポリマーという用語は少なくとも約1000g/モルの平均分子量を有する分子を指すために使用され、生の形態の特に興味深いポリマーは固形分であるが、いくつかの実施形態において堆積後に架橋を導入してポリマーの性質を変えることができる。いくつかのポリマーは、分子量に関して測定するのが難しいことがあり得るが、セルロース系ポリマーはこのクラスであり得る。しかしながら、分子量に関して測定するのが難しいポリマーは一般的に、少なくとも中程度の分子量であると理解されており、組成物の巨大分子の性質のためにより明確な値を組成物のために決めるのが難しくても500g/モル超の分子量を有すると認められるであろう。親水性ポリマーは一般的に、極性官能基、例えばヒドロキシル基、アミド基、アミン基、酸基等の他、ポリマーポリオールと称され得る、複数のヒドロキシル基を有する適切なポリマーを含む。多糖類は、インクの形成のための望ましい性質を有することができるポリマーポリオールのタイプである。多糖類は、多数のヒドロキシル基を有する糖ポリマーまたはそれらの誘導体である。多糖類には、例えば、セルロース系ポリマーおよびキトサン系ポリマーが含まれ、これらのバインダーに基づいた望ましいインクは、以下の実施例において説明される。セルロース系ポリマーには、天然セルロースの部分的熟成およびセルロース中のヒドロキシル基の一部分の反応によって形成されるセルロースエステルおよびセルロースエーテルが含まれる。特定のセルロース系ポリマーには、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が含まれる。一般的には、商用のセルロース系ポリマーは分子量によって特性決定されないが、これらのポリマーは、本明細書に規定された通りのポリマーの範囲の平均分子量を有すると仮定され得る。同様に、キトサンは、甲殻類の殻および菌類に見出される天然生成物である、キチンの反応から製造される多糖である。キトサンは、天然キチンの脱アセチル度によっておよび分子量によって特性決定することができ、それは一般的に約3500~約220,000g/モルの範囲である。キトサンは、希酸水溶液に可溶性であり、例えば弱カルボン酸を使用してそれをナノワイヤーインク中に混和することができる。
【0037】
バインダーがインク中に使用される場合にインク中の親水性ポリマーの存在が重要であることが発見されているが、親水性ポリマーと共に付加的なポリマーバインダーを有効に含有することができる。適したバインダーには、コーティング用途のために開発されたポリマーが含まれる。ハードコートポリマーまたは樹脂と称され得る、架橋性耐引っ掻き性保護コーティング、例えば、放射線硬化性コーティングは例えば、水性または非水性溶媒に溶解するために選択され得る、様々な用途のための硬化性、例えば、架橋性の材料として市販されている。放射線硬化性ポリマーの適したクラスには例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ含有ポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。本明細書中で用いられるとき、ポリマーポリオールはハードコートポリマーであると考えられない。商用のポリマーバインダーの例には、例えば、NEOCRYL(登録商標)商標アクリル樹脂(DMS NeoResins),JONCRYL(登録商標)商標アクリルコポリマー(BASF Resins),ELVACITE(登録商標)商標アクリル樹脂(Lucite International),SANCURE(登録商標)商標ウレタン(Lubrizol Advanced Materials)、BAYHYDROL(商標)商標ポリウレタン分散体(Bayer Material Science)、UCECOAT(登録商標)商標ポリウレタン分散体(Cytec Industries,Inc.)、MONWITOL(登録商標)商標ポリビニルブチラール(Kuraray America,Inc.)、ポリ酢酸ビニル、それらの混合物等が含まれる。ポリマーバインダーは放射線に露光時に自己架橋性であり得る、および/またはそれらは光開始剤または他の架橋剤で架橋され得る。いくつかの実施形態において、光架橋剤は放射線に露光時にラジカルを形成する場合があり、その場合にはラジカルはラジカル重合機構に基づいた架橋反応を引き起こす。適した光架橋剤には、例えば、市販の製品、例えばIRGACURE(登録商標)商標(BASF)、GENOCURE(商標)商標(Rahn USA Corp.)、およびDOUBLECURE(登録商標)商標(Double Bond Chemical Ind.,Co,Ltd.)、それらの組合せ等が含まれる。
【0038】
紫外線硬化性樹脂結合剤が親水性バインダー、例えば、ポリマーポリオールと共に使用される場合、インクは一般的に、約0.01重量%~約2.5重量%の硬化性バインダー、さらなる実施形態において約0.025重量%~約2重量%およびさらに別の実施形態において約0.05重量%~約1.5重量%の硬化性バインダーを含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤーインクは、約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤、例えば、光開始剤、さらなる実施形態において約0.002重量%~約0.5重量%およびさらに別の実施形態において約0.005~約0.25重量%を含むことができる。上記の明示範囲内の硬化性バインダーおよび架橋剤のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。親水性バインダーと硬化性樹脂との組合せ、例えば、ハードコートバインダーは、有利な性質を透明導電性フィルムに与えることができることを少なくともいくつかの実施形態において出願人は見出した。特に、親水性ポリマーは一インク方式で融着プロセスを促進して望ましくは低いシート抵抗値を達成することができるようにするが、他方、硬化性樹脂は、生成物に導入した後の環境劣化からのフィルムの保護を提供すると考えられる。
【0039】
ナノワイヤーインクは任意選択により、レオロジー改質剤またはその組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、インクは、表面張力を低下させるための湿潤剤または界面活性剤を含むことができ、湿潤剤は、コーティング性を改良するために有用であり得る。湿潤剤は一般的に溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクは、約0.01重量パーセント~約1重量パーセントの湿潤剤、さらなる実施形態において約0.02~約0.75重量パーセントおよび他の実施形態において約0.03~約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。増粘剤を任意選択によりレオロジー改質剤として使用して分散体を安定化すると共に沈降を低減するかまたは除くことができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクが任意選択により約0.05~約5重量パーセントの増粘剤、さらなる実施形態において約0.075~約4重量パーセントおよび他の実施形態において約0.1~約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。上記の明示範囲内の湿潤剤および増粘剤濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0040】
湿潤剤を使用して金属ナノワイヤーインクの被覆性ならびに金属ナノワイヤー分散体の特質を改良することができる。特に、湿潤剤は、コーティングの後にインクが表面上に十分に広がるようにインクの表面エネルギーを低下させることができる。湿潤剤は界面活性剤および/または分散剤であり得る。界面活性剤は、表面エネルギーを低下させるように機能する材料のクラスであり、界面活性剤は、材料の溶解性を改良することができる。界面活性剤は一般的に、その性質に寄与する分子の親水性部分と分子の疎水性部分とを有する。広範囲の界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤が市販されている。いくつかの実施形態において、界面活性剤に伴う性質が問題ではない場合、非界面活性剤湿潤剤、例えば、分散剤もまた本技術分野に公知であり、インクの湿潤能力を改良するために有効であり得る。適した商用の湿潤剤には、例えば、COATOSIL(商標)商標エポキシ官能化シランオリゴマー(Momentum Performance Materials)、SILWET(商標)商標オルガノシリコーン界面活性剤(Momentum Performance Materials)、THETAWET(商標)商標短鎖非イオン性フッ素系界面活性剤(ICT Industries,Inc.)、ZETASPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Air Products Inc.)、SOLSPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Lubrizol)、XOANONS WE-D545界面活性剤(Anhui Xoanons Chemical Co.,Ltd.)、EFKA(商標)PU 4009ポリマー分散剤(BASF)、MASURFFP-815 CP、MASURF FS-910(Mason Chemicals)、NOVEC(商標)FC-4430フッ素化界面活性剤(3M)、それらの混合物等が含まれる。
【0041】
増粘剤を使用して、金属ナノワイヤーインクからの固形分の沈降を低減または取り除くことによって分散体の安定性を改良することができる。増粘剤は、インクの粘度または他の流体性質をかなり変化させる場合も変化させない場合もある。適した増粘剤は市販されており、例えば、変性尿素のCRAYVALLAC(商標)商標、例えばLA-100(Cray Valley Acrylics,USA)、ポリアクリルアミド、THIXOL(商標)53L商標アクリル増粘剤、COAPUR(商標)2025、COAPUR(商標)830W、COAPUR(商標)6050、COAPUR(商標)XS71(Coatex,Inc.)、変性尿素のBYK(登録商標)商標(BYK Additives)、アクリゾール DR73、アクリゾール RM-995、アクリゾール RM-8W(Dow Coating Materials)、Aquaflow NHS-300、Aquaflow XLS-530疎水性変性ポリエーテル増粘剤(Ashland Inc.),Borchi Gel L 75N、Borchi Gel PW25(OMG Borchers)等が含まれる。
【0042】
付加的な添加剤を一般的にそれぞれ約5重量パーセント以下、さらなる実施形態において約2重量パーセント以下およびさらなる実施形態において約1重量パーセント以下の量で金属ナノワイヤーインクに添加することができる。他の添加剤には、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、脱泡剤または消泡剤、沈降防止剤、粘度改質剤等が含まれ得る。
【0043】
一般的には、任意の適当な順で成分を組み合わせてインクを形成することができるが、いくつかの実施形態において十分に分散された金属ナノワイヤーから始めるのが便利である場合がある。金属ナノワイヤーは一般的に、水、アルコール、またはそれらのブレンド中に分散される。適した混合方法を使用して、成分を添加してインクをブレンドすることができる。
【0044】
十分にブレンドされたインクは、継続的な撹拌をせずに沈降に対して安定性であり得る。例えば、安定なインクは、全く撹拌せずに1時間後に可視的な沈降を示さないことがあり得る。可視的な沈降は、容器の底部の固形分としておよび/または容器の頂部から底部までのインクによる可視的な不均質性として評価することができる。いくつかの実施形態において、融着用金属ナノワイヤーインクは、少なくとも1日間、さらなる実施形態において少なくとも3日間、さらに別の実施形態において少なくとも1週間固形分の沈降を示さないことがあり得るが、インクが大幅にもっと長い期間にわたって分散体からの固形分の沈降を示さない場合がある。いくつかの実施形態において、融着用金属ナノワイヤーインクは、少なくとも4時間後、さらに別の実施形態において少なくとも1日間およびさらなる実施形態において少なくとも4日間撹拌せずに可視的な不均質性を示さないことがあり得るが、インクが大幅にもっと長い時間にわたって可視的な不均質性に対して安定している場合がある。上記の明示範囲内の沈降安定性の時間のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。もちろん商業的な調整において、インクは使用する少し前に撹拌され、堆積のために非常によく撹拌された溶液を確保するが、堆積のために十分に混合され十分に特性解析された良いインクを若干の沈降が損なうべきでない。それにもかかわらず、安定なインクは、望ましくない程度の沈降が生じるまで完成インクの改良された貯蔵寿命を提供し、混合に対して配慮すべきことを減らして、インクを使用する間インクの適切な再現可能な堆積を維持する。したがって、融着用金属ナノワイヤーインクは、透明導電性フィルムを形成するための商業用途によく適している。
【0045】
インクの加工および透明導電性フィルムを組み込む構造物
特に興味深い実施形態において、融着用金属ナノワイヤーインクを使用して薄く広がったナノワイヤーコーティングを最初に形成し、後続の加工によって金属ナノワイヤーを融着し、導電性である、金属ナノ構造ネットワークに形成する方法が使用される。融着プロセスは、フィルムの乾燥中に一般的に行なわれると考えられる。融着ナノ構造金属フィルムは一般的に、乾燥した後に選択された基材表面上に形成される。一般的には、乾燥フィルムは、例えば、透明性および低いヘイズなどの良い光学的性質を有する。加工をさらに以下に説明されるようにフィルムのパターン化のために適合させることができる。1つまたは複数のポリマーオーバーコートを、パターン化されるか否かにかかわらず、導電性フィルムの上に適用して保護覆いを提供することができ、ポリマーは光学透明性を維持するように選択され得る。
【0046】
一般的には、適した基材は、特定の用途に基づいて要望通りに選択され得る。基材表面は、例えば、ポリマー、ガラス、無機半導体材料、無機誘電体材料、ポリマーガラス積層体、それらの複合物等のシートを含むことができる。適したポリマーには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリカーボネート、それらのコポリマーまたはそれらのブレンド等が含まれる。さらに、材料は、融着金属ナノワイヤーネットワーク上に置かれたポリマーオーバーコートを有することができ、オーバーコートポリマーは、基材のために上に記載したポリマーおよび/またはインク中の含有物として上に説明された、硬化性樹脂、例えば、紫外線硬化性ハードコートポリマーを含むことができる。さらに、他の層を上部にまたは導電性フィルムと基材との中間に付加して反射損失を低減させ、積層体の総透過性を改良することができる。
【0047】
融着用金属ナノワイヤーインクの堆積のために、任意の適当な堆積方法、例えば浸漬コーティング、噴霧コーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイ、グラビア印刷、スピンコーティング等を使用することができる。インクは、所望の堆積方法のために添加剤で適切に調節された、粘度などの性質を有することができる。同様に、堆積方法が堆積される液体の量を管理し、インクの濃度を調節して所望の添加量の金属ナノワイヤーを表面上に提供することができる。
【0048】
分散体でコーティングを形成した後、ナノワイヤーネットワークを乾燥させて液体を除去することができる。融着は、液体の乾燥中に行なわれると考えられる。フィルムは、例えば、ヒートガン、炉、サーマルランプ等で乾燥され得るが、いくつかの実施形態においては空気乾燥され得るフィルムが望ましいことがある。一般的には、融着は低温プロセスであると考えられ、乾燥を促進する任意の熱適用が融着と共に行われる。いくつかの実施形態において、フィルムは、乾燥中に約50℃~約150℃、さらなる実施形態において約60℃~約145℃およびさらに別の実施形態において約65℃~約135℃の温度に加熱され得る。乾燥を引き起こす加熱は、少なくとも約30秒、さらなる実施形態において約45秒~約2時間および他の実施形態において約1分~約45分間実施され得る。いくつかの実施形態において、ネットワーク内の融着の増加におそらく関連した改良された導電率は、乾燥プロセス中に湿度を加える乾燥によって得られた。例えば、相対湿度は約15%~約75%、さらなる実施形態において約20%~約70%およびさらに別の実施形態において約25%~約65%に設定することができる。湿度を加えて乾燥させる時の相当する温度は、例えば、約50℃~約99℃、さらなる実施形態において約60℃~約95℃および他の実施形態において約65℃~約90℃であり得る。湿度は当然、湿度を加えない同等のシステムに対して乾燥時間を遅らせるが、湿度は融着プロセスを改良し、おそらくそれを速めると思われる。上記の明示範囲内の温度、乾燥時間および湿度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。より低い温度でより湿潤な条件下での乾燥による融着の改良は化学的に駆動される融着プロセスと両立する。乾燥させて融着プロセスを促した後、フィルムを1回もしくは複数回、例えば、エタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールまたは他の溶媒もしくは溶媒ブレンドで洗浄して、過剰な固形分を除去してヘイズを低下させることができる。
【0049】
金属ナノワイヤーを融着してネットワークを形成した後、単独ナノワイヤーは一般的にもう存在していないが、ネットワークを形成するために使用されるナノワイヤーの物理的性質を融着金属ナノ構造ネットワークの性質に反映させることができる。金属融着は、観察される導電率強化および低いレベルの電気抵抗で達成可能な良い光学的性質に寄与すると考えられる。融着は、加工中に隣接したナノワイヤーの至近接触点に起こると考えられる。このように、融着は端部-端部間融着、側壁-側壁間融着および端部-側壁間融着を含むことができる。融着の程度は、湿度に関連して上に記載された通りの加工条件に関係がある場合がある。加工条件を調節して、融着ナノワイヤーネットワークの劣化を伴わない良い融着を達成することができ、望ましいフィルム特性を達成することができるようにする。
【0050】
基材上に供給されるナノワイヤーの量は、所望の量の透明性および導電率を達成するための要因のバランスを必要とし得る。ナノワイヤーネットワークの厚さは基本的には走査型電子顕微鏡法を使用して測定することができるが、ネットワークは、光学透明性をもたらすために比較的薄く広がる可能性があり、それが測定を複雑にすることもあり得る。一般的には、融着金属ナノワイヤーネットワークは、約5ミクロン以下、さらなる実施形態において約2ミクロン以下および他の実施形態において約10nm~約500nmの平均厚さを有する。しかしながら、融着ナノワイヤーネットワークは一般的に、サブミクロンスケールの著しい表面組織を有する比較的開放構造体であり、厚さを推定するために一般的に間接的な方法しか使用できない。ナノワイヤーの添加量レベルは、容易に評価することができるネットワークの有用なパラメーターを提供することができ、添加量の値が厚さに関連した代替パラメーターを提供する。したがって、本明細書中で用いられるとき、基材上へのナノワイヤーの添加量レベルは一般的に、基材の1平方メートルに対してナノワイヤーのミリグラムとして示される。一般的には、ナノワイヤーネットワークは、約0.1ミリグラム(mg)/m~約300mg/m、さらなる実施形態において約0.5mg/m~約200mg/m、そして他の実施形態において約1mg/m~約150mg/mの添加量を有することができる。上記の明示範囲内の厚さおよび添加量のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0051】
ポリマーオーバーコートまたは層を金属層の上に置くのが望ましいことがあり得るが、それはパターン化されてもされなくてもよい。一般的には、前節に記載されたポリマーハードコートバインダーをポリマーオーバーコートとして使用するようにできるが、さらに別のポリマーを使用することもできる。また、加工に関して、溶液コーティング技術、または他の加工方法、例えば押出、積層、カレンダリング、溶融コーティング技術等を使用してポリマーオーバーコートを適用することができる。複数のポリマーオーバーコートが存在する場合、それらは、同様な方法を使用して適用されてもされなくてもよい。溶液加工されたオーバーコートのために、上述の様々なコーティング方法をこれらの層に等しく適用することができる。しかしながら、ポリマーオーバーコートの溶液加工は、金属ナノワイヤーの良い分散体を形成することと必ずしも両立しない溶媒に関係することがあり得る。
【0052】
一般的には、ポリマーオーバーコートは、約50ナノメートル(nm)~約25ミクロン、さらなる実施形態において、約75nm~約15ミクロンおよびさらに別の実施形態において約100nm~約10ミクロンの平均厚さを有し得る。上記の明示範囲内のオーバーコートの厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態において、屈折率と厚さを選択することによってオーバーコートを選択して、オーバーコートの適用後に導電性領域と絶縁領域とのパターンがそれほど可視的でないようにすることが可能である場合がある。オーバーコートが導電性粒子を含有してもよく、それらは約3nm~20ミクロンの範囲の平均粒径を有することができる。粒子、すなわち、導電性要素は、約0.1~80重量%の間の固形分を一般的に有するコーティング溶液の0.0001~1.0重量%の範囲であり得る。これらの粒子は、金属または金属コーティング、金属酸化物、導電性有機材料、および炭素の導電性同素体(カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維、カーボンブラック等)および前述の材料の混合物から構成され得る。オーバーコートは高いレベルの導電率に達しないのがよいが、これらの導電性粒子は、より厚いオーバーコートを堆積させることを可能にし、そしてさらにトレース電極への導電性を可能にすることができる。さらに、オーバーコート層は、トレース電極が堆積された後に導電性のまたはパターン化されたフィルム上に堆積され得る。これは、透明な導電層と銀(または他の)母線との間の導電性を維持することをなお可能にしながら、より厚いオーバーコートを相応する安定化の利点と共に使用することを可能にする。
【0053】
オーバーコートは、基材表面全体を覆っても覆わなくてもよい。一般的には、オーバーコートが良い光学透明性を有するようにポリマーを選択することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーオーバーコートを有するフィルムの光学的性質は、電気導電性フィルムについて上に説明した光学的性質と著しく異なっているとはいえない。
【0054】
フィルムの電気的および光学的性質
融着金属ナノ構造ネットワークは、良い光学的性質を提供しながら低い電気抵抗を提供することができる。したがって、フィルムは透明導電性電極等として有用であり得る。透明導電性電極は、太陽電池の受光表面に沿う電極などの様々な用途に適し得る。ディスプレイのためにおよび特にタッチスクリーンのために、フィルムをパターン化して、フィルムによって形成される電気導電性パターンを提供することができる。パターン化フィルムを有する基材は一般的に、パターンの各部分において良い光学的性質を有する。
【0055】
薄いフィルムの電気抵抗はシート抵抗として表わすことができ、それをオーム/スクエア(Ω/□またはohms/sq)の単位で記録し、測定法に関連したパラメーターに従ってバルク電気抵抗値から値を識別する。フィルムのシート抵抗は一般的に、4点プローブ測定または同等の方法を使用して測定される。以下の実施例において、フィルムのシート抵抗は、4点プローブを使用して、または急速乾燥銀ペーストを使用して四角形を作り四角形を画定することによって測定された。融着金属ナノワイヤーネットワークは、約300ohms/sq以下、さらなる実施形態において約200ohms/sq以下、さらに別の実施形態において約100ohms/sq以下および他の実施形態において約60ohms/sq以下のシート抵抗を有することができる。上記の明示範囲内のシート抵抗のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。特定の用途に応じて、デバイスにおいて使用するためのシート抵抗の商用規格は、さらなるコストが必要とされる場合がある時など、シート抵抗のより低い値を必ずしも目的としていない場合があり、現在商業的に重要な値は、異なった品質および/またはサイズのタッチスクリーンの目標値として例えば、270ohm/sqか、150ohms/sqか、100ohms/sqか、50ohms/sqか、40ohms/sqか、30ohms/sq以下であってもよく、これらの値のそれぞれが範囲の端点として特定の値の間の範囲を画定し、例えば270ohms/sq~150ohms/sq、270ohms/sq~100ohms/sq、150ohms/sq~100ohms/sq等となり、15の特定の範囲が画定される。このように、より低コストのフィルムが、適度に高めのシート抵抗値と引き換えに特定の用途のために適している場合がある。一般的には、ナノワイヤーの添加量を増加させることによってシート抵抗を低下させることができるが、増加した添加量は、他の観点から望ましくない場合があり、金属添加量はシート抵抗の低い値を達成するための、多くのなかの一つの要因にすぎない。
【0056】
透明導電性フィルムとしての用途のために、融着金属ナノワイヤーネットワークが良い光学透明性を維持することが望ましい。基本的には、光学透明性は添加量と反比例しており、より高い添加量は透明性の低下をもたらすが、ネットワークの加工もまた、透明性にかなり影響を与え得る。また、ポリマーバインダーおよびその他の添加剤は、良い光学透明性を維持するように選択され得る。光学透明性は、基材を通る透過光に対して評価することができる。例えば、本明細書に説明された導電性フィルムの透明性は、紫外可視分光光度計を使用しておよび導電性フィルムおよび支持体基材を通る全透過を測定することによって測定することができる。透過率は、透過光の強度(I)の、入射光の強度(I)に対する比である。フィルムを通る透過率(Tfilm)は、測定された全透過率(T)を支持体基材を通る透過率(Tsub)によって割ることによって推定され得る。(T=I/IおよびT/Tsub=(I/I)/(Isub/I)=I/Isub=Tfilm)したがって、記録された全透過を補正して基材を通る透過を除去し、フィルムだけの透過を得ることができる。可視スペクトルにわたって良い光学透明性を有することが一般的に望ましいが、便宜上、550nmの波長の光で光の透過を記録することができる。代わりにまたはさらに、400nm~700nmの波長の光の全透過率として透過を記録することができ、このような結果は以下の実施例において報告される。一般的には、融着金属ナノワイヤーフィルムについて、550nmの透過率および400nm~700nmの全透過率(または便宜上、単に「全透過率」)の測定は、定性的に異なっていない。いくつかの実施形態において、融着ネットワークによって形成されるフィルムは、少なくとも80%、さらなる実施形態において少なくとも約85%、さらに別の実施形態において、少なくとも約90%、他の実施形態において少なくとも約94%およびいくつかの実施形態において約95%~約99%の全透過率(全透過率%)を有する。透明なポリマー基材上のフィルムの透明性は、標準ASTM D1003(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)を使用して評価することができる。上記の明示範囲内の透過率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であること当業者は認識するであろう。基材のために以下の実施例においてフィルムの測定された光学的性質を調節するとき、フィルムは非常に良い透過およびヘイズ値を有し、それらは観察される低いシート抵抗と共に達成される。
【0057】
また、融着金属ネットワークは、望ましくは低いシート抵抗を有しながら可視光線の高い透過と共に低いヘイズを有することができる。ヘイズは、上に参照されたASTM D1003に基づいてヘイズメーターを使用して測定することができ、基材のヘイズ寄与を除去して透明導電性フィルムのヘイズ値を提供することができる。いくつかの実施形態において、焼結ネットワークフィルムは、約1.2%以下、さらなる実施形態において約1.1%以下、さらに別の実施形態において約1.0%以下および他の実施形態において約0.9%~約0.2%のヘイズ値を有することができる。実施例において説明されるように、適切に選択された銀ナノワイヤーによってヘイズおよびシート抵抗の非常に低い値が同時に達成された。添加量を調節して、可能な限り非常に低いヘイズ値とまだ良いシート抵抗値を有するようにシート抵抗とヘイズ値とのバランスをとることができる。具体的には、0.8%以下、そしてさらなる実施形態において約0.4%~約0.7%のヘイズ値を少なくとも約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。また、0.7%~約1.2%、そしていくつかの実施形態において約0.75%~約1.05%のヘイズ値を約30ohms/sq~約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。これらのフィルムの全てが良い光学透明性を維持した。上記の明示範囲内のヘイズのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0058】
パターン化
デバイスにはパターン化透明導電性電極を必要とするものがあり、本明細書に説明された透明導電性フィルムを相応してパターン化することができる。基材表面に沿う融着導電性金属ナノ構造ネットワークの特定のパターンは一般的に、所望の製品によって方向づけられる。言い換えれば、タッチスクリーンのための領域など、電気導電性パターンは一般的に機能性を導入する。もちろん、或る製品については、全表面が電気導電性である場合があり、これらの用途についてパターンは一般的に行われない。パターン化を必要とする実施形態について、電気導電性融着金属ナノ構造ネットワークを含む表面の比率は一般的に、選択された設計に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態において、融着ネットワークが表面の約0.25パーセント~約99パーセントを占め、さらなる実施形態において基材表面の約5パーセント~約85パーセントおよびさらに別の実施形態において約10パーセント~約70パーセントを占める。上記の明示範囲内の表面被覆率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0059】
概略的な例として、融着金属ナノ構造ネットワークが、図1に示されるように単一導電経路102が電気抵抗領域104、106によって囲まれる、基材表面100に沿う導電性パターンを形成することができ、または図2に示されるように複数の電気導電経路122、124、および126が電気抵抗領域128、130、132、134によって囲まれる、基材表面120に沿うパターンを形成することができる。図2に示されるように、融着領域は、電気導電経路122、124、および126に相当する3つの異なった電気導電性領域に相応する。図2のパターン化フィルムをポリマー基材140上にポリマーオーバーコート142と共に有する構造物の側面図が図3に示される。単一の接続された導電性領域と3つの独立に接続された導電性領域とが図1~3に示されたが、2つ、4つ、または4つを超える導電性の独立した導電経路または領域を有するパターンを要望通りに形成することができることは理解されたい。多くの商業用途のために、多数の要素を有するようにかなり複雑なパターンを形成することができる。特に、本明細書に記載されるフィルムのパターン化に適している利用可能なパターン化技術によって、高解像度の特徴を有するように非常に微細なパターンを形成することができる。同様に、特定の導電性領域の造形を要望通りに選択することができる。
【0060】
金属電極を電気導電性融着金属ネットワークと接触させてオーバーコート下に配置する代替実施形態が図4に示される。図4を参照して、融着金属ナノ構造ネットワーク150、152は、電気抵抗領域154、156、158によって隔てられている。ネットワーク150、152によって代表されるフィルムが基材160上に支持される。金属電極162、164が、適切な回路への導電性ネットワーク150、152の電気接続を提供する。ポリマーオーバーコート166が導電性ネットワーク150、152ならびに金属電極162、164を覆って保護する。金属電極162、164がオーバーコートの下にあるので、オーバーコートの電気絶縁効果のために性能を悪い方向に変えることなく必要ならばより厚いオーバーコートを使用することができる。センサー設計に統合される薄い導電性フィルムの上部の略図が図5に示される。センサー170は、融着されていない金属ナノワイヤーを含んでも含まなくてもよい、絶縁領域174によって隔てられた導電性金属ナノ構造フィルム部分172(それらは回転された四角形として示される)を含む。金属トレース176、178、180、182が各々、導電性フィルム172の列を接続する。金属トレース176、178、180、182が、隣接した導電性フィルム部分172の間の結合セグメント184ならびにそこで金属トレースを電気回路に接続することができるセンサーの端縁の接続域186に誘導される導電性部分を含む。ポリマーオーバーコート190が導電性フィルムの上に置かれる。
【0061】
金属添加量に基づいたパターン化は、基材表面の選択された部分の上の金属ナノワイヤーインクの選択的な堆積および/または堆積された金属ナノワイヤーまたはナノ構造フィルムの選択的な除去を必要とし得る。堆積する間のパターン化は、金属ナノワイヤーインクを堆積させることの関連で上に説明されている。金属ナノワイヤーインクが基材表面の上に堆積される場合、選択された領域を現像して、融着の前または後に、ならびにポリマーバインダーの硬化の前または後に領域から金属を除去することができる。金属は、適切なエッチングまたは洗浄または他の適した方法によって除去され得る。例えば、金属ナノワイヤーのレーザー融蝕が、“Method of Manufacturing Conductive Pattern-Covered Body,and Conductive Pattern Covered Body”(本願明細書に参照によって組み込まれる)と題された、日本写真印刷株式会社に対する日本特許第5289859B号公報に記載されている。酸エッチング剤または他の適した湿潤エッチング剤を使用することができる。また、乾式エッチングを行うこともできる。エッチング/現像のパターン化を、レジスト組成物等を使用して行うことができる。フォトレジストなどの広範囲のレジストがパターン化のために使用可能であり、商業的に入手可能である。光、例えば、紫外線、または電子ビームを使用するフォトリソグラフィを使用して高解像度パターンを形成することができ、金属ナノワイヤーまたはナノ構造フィルムのパターン化は、レジストを形成する窓を通してエッチングすることによって行なうことができる。ポジ型トーンおよびネガ型トーンフォトレジストの両方を使用することができる。一般的なポジ型トーンフォトレジスト、例えば富士フィルム OCG825、TOK THMR-i-P5680等、およびネガ型トーンフォトレジストMicro Resist Technology MR-N415等を使用することができる。放射線露光および現像を実施してレジストをパターン化するフォトリソグラフィを使用して、レジストを使用するパターン化を実施することができる。代わりにまたはさらに、レジストをスクリーン印刷またはグラビア印刷などで印刷してレジストをパターン化し、本明細書に説明されたように処理されたパターン化を行うことができる。一般的に、電気絶縁領域が電気導電性領域よりも少ない金属添加量を有する実施形態のために、電気絶縁領域は、電気導電性領域に対して少なくとも1/1.5に減少した金属添加量、いくつかの実施形態において少なくとも1/5に減少した金属添加量、さらなる実施形態において少なくとも1/10に減少した金属添加量および他の実施形態において少なくとも1/20に減少した金属添加量を有することができる。いくつかの実施形態において、電気絶縁領域が金属をほとんど有さないことがあり得る。上記の明示範囲内の減少した金属添加量のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0062】
いくつかの実施形態において、酸化インジウムスズなどの導電性金属酸化物の薄いフィルムなど、金属ナノ構造フィルムを他の材料の代用物として使用することができる。例えば、融着金属ナノ構造フィルムを有するポリマーのロールをプロセス図式に組み込むことができる。パターン化の前にポリマーオーバーコートを置くことができる。湿式または乾式エッチングによるレーザーエッチングまたはマスキングによるなど、パターン化を使用して、金属の少なくとも一部が除去される領域によって隔てられた電気導電性フィルムの所望のパターンを形成することができる。ポリマーオーバーコートをオーバーコートの付加的な層によって取り替えるかまたは仕上げることができる。金属トレースまたは集電体をオーバーコートの上に置くかまたはオーバーコートまたはその一部を貫通させることができる。或る導電性希釈剤をポリマーオーバーコートに添加することによって導電性パターンを短絡させずにオーバーコートの抵抗を減少させることができる。
【0063】
さらに別のまたは代替実施形態において、ポリマーオーバーコートの配置前にパターン化を行なうことができる。図6を参照して、プロセスの流れはプロセスの流れを示す流れ矢印で表わされ、それは一般的に時間の流れに相応するが、物理的移動に相応する場合もしない場合もある。最初の図において、基材250は、導電性領域252および非導電性領域254を有するパターン化フィルムと共に示される。図は特定の支持材料、すなわち、付加的なポリマーハードコート層を有する熱安定化されたPETポリマーを示すが、プロセスは一般的に、任意の適当な基材を使用して実施され得る。いくつかの実施形態において、導電性領域252が融着金属ナノ構造ネットワークを含み、非導電性領域254が、例えば、融着用金属ナノワイヤーインクのエッチングまたは選択的な印刷のためにより低い金属添加量を含む。図6の中央の図を参照して、金属集電体またはトレース256を導電性領域252と接触させて堆積させる。任意の適当な方法を使用して金属トレース256を堆積および/またはパターン化することができるが、いくつかの実施形態において、導電性銀または銅ペーストをスクリーン印刷して加熱し、金属トレースを形成することができる。いくつかの実施形態において、銀、銅または他の金属トレースをめっき、熱分解、蒸発、スパッタリング、または他の適当な薄いフィルム堆積技術によって堆積させることができる。図6の最後の図において、ポリマーオーバーコート260を、コートされた基材250の上に置いて金属トレース256を覆う。
【0064】
タッチセンサー
本明細書に説明された透明導電性フィルムを、多くの電子デバイスに使用されるタッチスクリーンに適合し得るタッチセンサーに有効に組み込むことができる。いくつかの代表的な実施形態が一般的にここで説明されるが、透明導電性フィルムを他の所望の設計に適合させることができる。タッチセンサーの一般的な特徴は一般的に、自然な状態で、すなわち、触られていないあるいは他の方法で外的に接触されない時に離隔された配置の2つの透明導電性電極構造物の存在である。キャパシタンスに基づいて作動するセンサーについては、誘電体層は一般的に2つの電極構造物の間にある。図7を参照して、代表的なキャパシタンスに基づいたタッチセンサー302が、ディスプレイ成分304と、任意選択の下部基材306と、第1の透明導電性電極構造物307と、誘電体層308、例えばポリマーまたはガラス板と、第2の透明導電性電極構造物310と、任意選択の上蓋312と、センサーに触れることと関連づけられたキャパシタンスの変化を測定する測定回路314とを含む。図8を参照して、代表的な抵抗に基づいたタッチセンサー340が、ディスプレイ成分342と、任意選択の下基材344と、第1の透明導電性電極構造物346と、第2の透明導電性電極構造物348と、それらの自然な構成において電極構造物の離隔された構成を支持する支持体構造物350、352と、上側覆い層354と抵抗測定回路356とを含む。
【0065】
ディスプレイ成分304、342は、例えば、LEDに基づいたディスプレイ、LCDディスプレイまたは他の所望のディスプレイ成分であり得る。基材306、344および覆い層312、354は、独立に透明なポリマーシートまたは他の透明シートであり得る。支持体構造物を誘電体材料から形成することができ、センサー構造物が、所望の安定なデバイスを提供するための付加的な支持体を含むことができる。測定回路314、356は本技術分野に公知である。
透明導電性電極307、310、346および348を融着金属ネットワークを使用して有効に形成することができ、それらを適切にパターン化して異なったセンサーを形成することができるが、いくつかの実施形態において、融着金属ネットワークが一部の透明な電極構造物を形成し、これに対してデバイス内の他の透明な電極構造物が酸化インジウムスズ、アルミニウムドープト酸化亜鉛等の材料を含むことができる。融着金属ネットワークを本明細書に説明されたように有効にパターン化することができ、そして透明導電性構造物内の複数の電極を使用して、触るプロセスに関連した位置情報を提供することができるように、電極構造物の1つまたは複数においてのパターン化フィルムがセンサーを形成するのが望ましいことがあり得る。パターン化タッチセンサーを形成するためのパターン化透明導電性電極の使用は、例えば、“Touch Sensor,Display With Touch Sensor,and Method for Generating Position Data”と題された、Miyamotoらに対する米国特許第8,031,180号明細書および“Narrow Frame Touch Input Sheet,Manufacturing Method of Same,and Conductive Sheet Used in Narrow Frame Touch Input Sheet”と題された、Sakataらに対する米国特許出願公開第2012/0073947号明細書(共に本願明細書に参照によって組み込まれる)に記載されている。
【実施例
【0066】
25~50nmの平均直径および10~30ミクロンの平均長さを有する商用銀ナノワイヤーを以下の実施例において使用した。以下の手順を使用して銀ナノワイヤー(AgNW)フィルムを形成した。市販の銀ナノワイヤー(AgNW)を供給元から水性分散体として得るかまたは溶媒中に分散させて水性銀ナノワイヤー分散体を形成した。銀ナノワイヤー分散体は典型的に0.05~1.0重量%の範囲であった。次いで、分散体は、必要に応じてアルコール溶媒中にある、金属ナノワイヤーインクの他の成分を含む1つまたは複数の溶液と組み合わせられた。次に、手作業による引き抜きロッド法を使用してまたはナイフ塗布によって、得られた分散体またはインクをポリエチレンテレフタレート(PET)シートの表面上に堆積させた。次に、以下の具体的な実施例に記載されたように銀ナノワイヤーフィルムを炉内で熱処理してフィルムを硬化した。
【0067】
使用されるとき親水性バインダーを最初に水に溶解して、透明な溶液を得た。次にそれを銀ナノワイヤーおよびインクのその他の成分と撹拌しながら混合して、ベースインクと称される、均質な懸濁液を形成した。ベースインクは典型的に、調製されただけのバインダー0.1重量%~1重量%を含有した。適切な融着溶液中に残りの成分(金属イオン)を配合して最終コーティング溶液を得た後、銀ナノワイヤーは典型的に0.1~1.0重量%の間のレベルで存在しており、バインダーは約0.01~1重量%で存在している。
【0068】
融着溶液は、適切な溶媒中に溶解された適切な金属塩から構成される。融着溶液は一般的に、0.05mg/mL(0.005重量%)~5.0mg/mL(0.5重量%)の間の金属イオンを含有した。
【0069】
銀ナノワイヤーフィルム試料の全透過(TT)およびヘイズはヘイズメーターを使用してポリマー基材上のフィルムで測定された。以下の試料のためのヘイズ測定を調整するために、基材のヘイズの値を測定値から差し引いて、透明導電性フィルムだけの近似的なヘイズ測定値を得ることができる。計測器は、ASTM D1003標準(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)に基づいて光学的性質を評価するように設計されている。これらのフィルムの全透過およびヘイズは、それぞれ約92.9%および0.15%~0.40%の基礎全透過およびヘイズを有するPET基材を含む。シート抵抗は、別記しない限り4点プローブ方法によって測定された。以下の実施例において、融着用金属ナノワイヤーインクのいくつかの異なった調合物を光学測定値およびシート抵抗の測定値と共に示す。
【0070】
シート抵抗は、4点プローブ方法、無接点抵抗計によってまたは次のように銀ペーストの四角形を使用して測定された。形成前に測定を行うために、銀ペーストの四角形をしばらく使用するため、ペーストを試料の表面上に塗装して四角形、または矩形形状を画定し、それらを次に、銀ペーストを硬化および乾燥させるためにほぼ120℃において20分間アニールした。鰐口クリップを銀ペーストに接続し、リードを商用の抵抗測定装置に接続した。フィルムの露出した端部部分への電気接続を形成する。
【0071】
実施例1 親水性バインダーと硝酸とを有する融着用ナノワイヤーインク
この実施例は、融着プロセスを妨げずにセルロース系ポリマー(CBP)が銀ナノワイヤーインクのためのバインダーおよび増粘剤として作用する能力を試験する。
【0072】
初期銀ナノワイヤー分散体が脱イオン水とイソプロピルアルコールとを含んだ。また、インクが上述のようなCBPのバインダーを含有した。この実施例において、ベースインクを使用して15の試料を調製した。銀ナノワイヤーインクの、融着溶液またはエタノールに対する体積比が3:1となるように融着溶液またはエタノールをいくつかの試料それぞれと組み合わせた。融着溶液が、上に明記した通りの硝酸銀と、エタノール中の15μL/mL~80μL/mLの間のHNOとを含有した。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0073】
フィルムを乾燥させるために、フィルムを100℃の周囲大気中の炉内で10分間加熱した。加熱後のフィルムの性質を表1において比較する。融着溶液を含有するインクで形成されたフィルムは、融着溶液を使用しないフィルムと比較して低下した抵抗を有したが、それは関連試料中の金属ナノワイヤーの融着を明らかに示す。試料の全てが、透明性およびヘイズに基づいて良い光学的性質を示した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例2 融着溶液組成物
この実施例は、銀ナノワイヤーインクのための融着溶液として作用する組成物の様々な調合物が望ましい透明導電性フィルムを形成する能力を試験する。
【0076】
初期銀ナノワイヤー分散体が、脱イオン水と少量のイソプロピルアルコールとの溶媒を含んだ。また、ベースインクが、上述のようなCBPのバインダーを含有した。銀ナノワイヤーインクの、融着溶液またはエタノールに対する体積比が3:1または4:1となるように融着溶液またはエタノールを12の異なった試料それぞれと組み合わせて、2つの付加的な試料をベースインクとして加工した。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5mg/mLの間の金属イオンと15μL/mL~80μL/mLの間のHNOとを含有するか(試料7~10)または成分の上記の濃度の半分を含有する(試料11~14)。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0077】
次に、フィルムを100℃の周囲大気中の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。加熱後のフィルムの性質を表2において比較する。融着溶液を含有するインクから形成されたフィルムは融着溶液を使用しないフィルムと比較して低下した抵抗を有したが、それは各フィルム中のナノワイヤーの融着を示す。試料の全てが良い光学的性質を示したが、より希釈された融着溶液を有する試料が、わずかにより高いシート抵抗およびより大きなヘイズを示した。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例3 異なった銀ナノワイヤー試料の効果
この実施例は、一インク系のための銀ナノワイヤー供給源として作用する様々な銀ナノワイヤー試料の適性を試験する。
【0080】
2つの異なった商用の供給源(AおよびB)からの銀ナノワイヤーを使用して脱イオン水中の銀ナノワイヤーインクを作った。インクは、上に記載されたようにバインダーとしてCBPを含有した。次に、銀ナノワイヤーインクの、融着溶液またはエタノールに対する体積比が3:1となるように融着溶液またはエタノールをいくつかの試料それぞれと組み合わせた。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の金属イオンならびに8μL/mL~80μL/mLの間のHNOから構成された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0081】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。加熱後のフィルムの性質を表3において比較する。供給源Aからの銀ナノワイヤーで形成されたフィルムは、供給源Bからの銀ナノワイヤーで製造されたフィルムと比較した時、融着溶液が使用されない時にはより高いシート抵抗を有しそして融着溶液が使用される時にはより低いシート抵抗を有した。しかしながら、供給源Bからの銀ナノワイヤーを有するインクから形成されたフィルムは、より大きな透明性およびより低いヘイズを有した。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4 一インク系中の様々な重金属イオンの効果
この実施例は、一インク銀ナノワイヤー系において異なった重金属イオンが得られたフィルムの抵抗、透過率およびヘイズに及ぼす効果を試験する。
【0084】
初期銀ナノワイヤー分散体がイソプロピルアルコールの溶媒を含んだ。原料インクは、水中にバインダーとしてのCBPと湿潤剤も含有した。銀ナノワイヤーインクの、融着溶液に対する体積比が1:1となるように融着溶液をインクと組み合わせた。融着溶液は、上に記載されたようにエタノール中の異なった金属イオンを含有した。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0085】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。加熱後のフィルムの性質を表4において比較する。一般的には、融着溶液中のNi(II)およびAg(I)のような特別な金属イオンを使用して作られたフィルムは、対照試料Eに対してより低いシート抵抗を有したが、他の金属イオン(Co(II)およびCu(II))は融着挙動を示さなかった。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例5 インク調合物および酸を使用しないインクの安定性
この実施例は、様々な調合物が一インク銀ナノワイヤー系においてインクの安定性および他の性質に及ぼす効果を試験する。
【0088】
3つの異なった商用の供給源(A、B、およびC)から脱イオン水中の原料銀ナノワイヤーインクを作り、上に記載されたようにベースインクを形成した。第4の供給源Dからの銀ナノワイヤーに基づいた結果を以下に要約する。3つの異なった溶液組成物を3つの原料インクの各々から形成し、18の異なった試料をもたらした。第1の溶液(#1)は、コーティングの直前に原料インクを融着溶液と混合することによって作られた。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の銀イオンを含有し、そして原料インクの、融着溶液に対する体積比が1:1となるように#1溶液に添加された。第2の溶液(#2)は、原料インクを金属イオン原液と混合することによって作られ、使用するまで貯蔵した。金属イオン原液は、脱イオン水中の50mg/mL~200mg/mLの間の金属イオンを含有する。原料インクと金属イオン原液とのブレンド中の金属イオンの量は第1の溶液(#1)中の量と同じであった。コーティングの直前に、溶液の、エタノールに対する体積比が1:1となるようにエタノールを#2溶液に添加した。第3の溶液(#3)は、原料インクを融着溶液と混合することによって形成され、使用するまで貯蔵した。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の金属イオンを含有し、原料インクの、融着溶液に対する体積比が1:1となるように#3溶液に添加された。#3溶液を貯蔵し、次に、さらなる混合を全くせずに直接にコートした。マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。インクの安定性を図9に示す。図9は、混合せずに2週間貯蔵された後の各々の溶液を図示する。
【0089】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。融着後のフィルムの性質を表5Aにおいて比較する。これらの結果は、銀ナノワイヤーの融着を示す低いシート抵抗がインク中の付加的な酸を全く使用せずに有効に生じ得ることを裏づける。高い全透過率%および低いヘイズに基づいたすぐれた光学的性質も観察された。供給源Cによって供給されるナノワイヤーは、若干大きめのヘイズを有するフィルムをもたらした。加工順序は、安定なインクを示唆する結果を著しく変えなかった。
【0090】
【表5】
【0091】
第4の供給源Dからの銀ナノワイヤーについて。溶液は、コーティングの直前に原料インクを融着溶液と混合することによって作られた。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の金属イオンを含有し、原料インクの、融着溶液に対する体積比が1:1となるように溶液に添加された。金属イオン濃度を増加させて(C1<C2<C3)混合することによって3つの異なった溶液が調製された。次に、融着溶液をナノワイヤー原液と混合した直後にフィルムをこれらの溶液から上に記載されたように形成した。結果を以下の表5Bに示す。これらのナノワイヤーを使用して形成された透明導電性フィルムは、シート抵抗の特定の値に対してヘイズの極度に低い値を有した。相応して、表5AにおいてナノワイヤーAまたはBを使用して形成された試料と同等の値のシート抵抗において、ヘイズの値は一般的に0.2%以上低い。
【0092】
【表6】
【0093】
実施例6 一インク調合物中のキトサンバインダーの効果
この実施例は、一インク銀ナノワイヤー系においてキトサンバインダーが抵抗、透過率、およびヘイズに及ぼす効果を試験する。
【0094】
初期銀ナノワイヤー分散体が脱イオン水と少量のイソプロピルアルコールとの溶媒を含んだ。原料銀ナノワイヤーインクが0.1重量%~0.3重量%の間の銀ナノワイヤー、共分散剤として0.01重量%~0.1重量%の間のLUVITEC(登録商標)(BASFから市販されている)、バインダーとして異なった銘柄の0.3重量%~0.5重量%の間のキトサン、および0.05重量%~0.1重量%の間の湿潤剤を含有した。インクは、インクの、融着溶液またはエタノールに対する体積比が1:1となるようにエタノール中の0.5mg/mL~5mg/mLの間の金属イオンを有する融着溶液またはエタノール溶媒と混合された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0095】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。融着後のフィルムの性質を表6において比較する。融着溶液を含有するインクで製造されたフィルムの全てがすぐれた性質を示した。
【0096】
【表7】
【0097】
実施例7 バインダーとしてのポリビニルピロリドンとCBPとのブレンドの効果
この実施例は、一インク銀ナノワイヤー系においてバインダーとしてのポリビニルピロリドンが抵抗、透過率、およびヘイズに及ぼす効果を試験する。
【0098】
2つの異なった商用の供給源(AおよびB)から脱イオン水中の銀ナノワイヤーインクを作った。原料銀ナノワイヤーインクが、0.1重量%~0.3重量%の間の銀ナノワイヤー、バインダーとして0.3重量%~0.75重量%の間のCBP、分散剤/バインダーとして0.01重量%~0.1重量%の間のポリビニルピロリドン(PVP)、および0.05重量%~0.1重量%の間の湿潤剤を含有する。インクが、エタノール中の0.5mg/mL~5mg/mLの間の金属イオンを含有する融着溶液と1:1の体積比で混合された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0099】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。融着後のフィルムの性質を表7において比較する。
【0100】
【表8】
【0101】
実施例8 湿気がフィルム性能に及ぼす効果
この実施例は、乾燥プロセスの間の湿気がフィルム性能に及ぼす効果を試験する。
【0102】
原料銀ナノワイヤーインクが、供給源Aからの、イソプロパノール中の0.1重量%~0.30重量%の間の銀ナノワイヤーを含有する。インクが、エタノール中の0.5mg/mL~5mg/mLの間の金属イオンを含有する融着溶液と1:1の体積比で混合された。コーティングの直前に、インクの、エタノールに対する比が1:1となるように1つの付加的なインクがエタノールと混合された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0103】
次に、フィルムを85℃の炉内で60%の相対湿度で20、15、または5分間、または130℃で乾燥炉内で5分間加熱してフィルムを乾燥させた。異なった条件下での乾燥後のフィルムのシート抵抗は図10において比較される。湿気の導入によって試料の少なくともいくつかについて同じレベルの融着(シート抵抗の低下)を達成するための時間および温度の両方の低減を可能にする。湿り大気の乾燥が、シート抵抗の低下によって示されるこれらのインクの改良された融着をもたらした。
【0104】
実施例9 紫外線硬化性ポリマーをインクに添加することによるフィルムの頑強性
この実施例は、紫外線硬化性ポリマーが銀ナノワイヤーフィルムの頑強性に及ぼす効果を試験する。
【0105】
銀ナノワイヤーベースインクは、インクの、紫外線硬化性ポリマーに対する体積比が4:1となるようにイソプロパノール中0.1重量%~0.3重量%の間の銀ナノワイヤー濃度を有する銀ナノワイヤーインクをプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)中2重量%~7.5重量%の間の紫外線硬化性ポリマーと混合することによって作られた。インクは、エタノール中の0.05mg/mL~0.5mg/mLの間の銀イオンの濃度C1またはC2=10×C1を含有する融着溶液と1:1の体積比で混合された。次に、10または20の設定のマイヤーロッドコーティングを使用してインクをPET基材上にコートした。
【0106】
次に、紫外線コンベヤーを使用してフィルムを硬化した。フィルムの性質を表8において比較する。紫外線硬化性樹脂の導入によってコーティングに高いヘイズを生じたが、紫外線硬化後の耐摩耗性は明らかにずっと改良された。融着溶液を使用せずに形成されたフィルムは非常に高いシート抵抗値を有した。このように、融着インクに紫外線硬化性組成物が混合されるこれらのフィルムは、融着溶液を使用して形成されたフィルムと融着溶液を使用せずに形成されたフィルムとの間の電気抵抗のより大きなコントラストを提供する。データはさらに、融着インクに紫外線硬化性組成物が混合されるフィルムが著しい熱安定性を示すことができることを示す。紫外線硬化後のベースコーティングは、150℃の炉内で30分の処理後に元の値(R)を超えるシート抵抗(R)の増加を示さなかった(試料4および6)。
【0107】
【表9】
【0108】
実施例10 アルコールを含有しない融着溶液の効果
この実施例は、アルコールを含有しない融着溶液の使用がフィルム性能に及ぼす効果を試験する。
【0109】
原料銀ナノワイヤーインクは、供給源Aからの、イソプロパノール中の銀ナノワイヤー、または供給源Bからの、水中の銀ナノワイヤーを含有した。インクは、0.05重量%~0.3重量%の間の銀ナノワイヤーを含有した。インクの、0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の金属イオンを含有する融着溶液に対する体積比が1:1となるようにインクは水中で融着溶液と混合された。比較用試料は、融着溶液の代わりに水を使用して同様に調製された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0110】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。加熱工程後のフィルムの性質を表9に示す。アルコールを含有しないが金属イオンを有する融着溶液の使用は、抵抗の低下のパーセントとして表わされる「改良」として表9に示されるように、それぞれの比較例に対して有効な導電率の改良をもたらす。
【0111】
【表10】
【0112】
実施例11 バインダーとしてのPolyoxが銀ナノワイヤーインクに及ぼす効果
この実施例は、一インク銀ナノワイヤー系中のPolyoxバインダーの効果を試験する。
【0113】
初期銀ナノワイヤー分散体が脱イオン水と少量のイソプロピルアルコールとの溶媒を含んだ。銀ナノワイヤーインクが0.05重量%~0.25重量%の間の銀ナノワイヤーを有する。また、インクが0.075重量%~0.10重量%の間の濃度のPolyox(ポリエチレンオキシド)のバインダーと、0.10重量%~0.15重量%の間の濃度の湿潤剤とを含有した。銀ナノワイヤーインクの、融着溶液に対する体積比が3:1となるように融着溶液を添加した。融着溶液は、エタノール中の0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の銀イオンおよび15μL/mL~80μL/mLの間のHNOを含有した。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0114】
次に、フィルムを80℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。加熱後のフィルムの性質が表10においてCBPを使用して形成されたフィルムおよび融着溶液を使用して形成されたフィルムまたは対照標準としてEtOHだけ使用して形成されたフィルムと比較される。一般的には、Polyoxバインダーを使用するインクは、融着溶液が使用される時に低い抵抗フィルムをもたらし、銀ナノワイヤーの融着を示した。Polyoxバインダーを有するインクを使用して、融着溶液を使用せずに形成されたフィルムは高いシート抵抗を有した。
【0115】
【表11】
【0116】
実施例12 一インク系中のナトリウム金属イオンの効果
この実施例は、一インク銀ナノワイヤー系中でナトリウム金属イオンが透過率およびヘイズに及ぼす効果を試験する。
【0117】
初期銀ナノワイヤー分散体が脱イオン水と少量のイソプロピルアルコールとの溶媒を含んだ。インクは、上に記載されたようにバインダーとしてCBPを含有した。次に、銀ナノワイヤーインクの、融着溶液またはエタノールに対する体積比が3:1となるように0.05mg/mL~5.0mg/mLの間の金属イオンまたはエタノールを含有する融着溶液をいくつかの試料それぞれと組み合わせた。融着溶液がエタノール中の金属イオン(NaまたはAg)ならびにHNOから構成された。融着溶液は2つの濃度、<1重量%の初期濃度、または初期濃度の10倍(10×)の濃度で添加された。次に、マイヤーロッドまたはナイフ塗布を使用してインクをPET基材上にコートした。
【0118】
次に、フィルムを100℃の炉内で10分間加熱してフィルムを乾燥させた。融着後のフィルムの性質を表11において比較する。結果は、融着溶液中にナトリウムイオンを使用して形成されたフィルムは融着を示さなかったが、銀イオンを使用して形成されたフィルムは融着されたことを示唆している。
【0119】
【表12】
【0120】
上記の実施形態は例示のためのものであり限定的でないことを意図している。さらなる実施形態が請求の範囲内である。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように上記の文献の参照による任意の組み込みは制限される。
図1
図2
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図10