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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/017 20060101AFI20240827BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A01K89/017
A01K89/015 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021137784
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023031971
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-138066(JP,U)
【文献】特開2003-102187(JP,A)
【文献】特開2014-082938(JP,A)
【文献】特開2003-199463(JP,A)
【文献】特開平06-335340(JP,A)
【文献】特開2017-035041(JP,A)
【文献】特開平10-248455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00-89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を付与する制動部と、該制動部の制動力を調節する制動力調整部と、該制動力調整部を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、
前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるものであり、
前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる通常操作時の少なくともいずれかのタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
釣糸を巻回可能なスプールを回転させるモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、
前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるものであり、
前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる通常操作時の少なくともいずれかのタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールへの動力伝達の接続・解放を行うためのクラッチ機構と、該クラッチ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、
前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるものであり、
前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる通常操作時の少なくともいずれかのタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項4】
釣糸を巻回可能なスプールと、所定値以上のトルクが働いた際に該スプールを滑らせることで釣糸の破断を防止するドラグ機構と、該ドラグ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、
前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるものであり、
前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる通常操作時の少なくともいずれかのタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザへの報知音を発生することが可能な魚釣用リールに関するに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動リール等では糸長が所定値になった際など、特定のタイミングで報知音を発生させることで、リールの状態を伝えることが行われている。
【0003】
このような報知を行う発信器を備えるリールとして、リールから放出されたラインを巻き取ることでルアー等の被動体を動かして行う釣りにおいて使用される釣り用リズム発信器であって、被動体が所望の動きをするときの推奨リトリーブスピードとリールのハンドル一回転あたりの巻き取り長さに基づいてリールの巻き取りリズムを算出する制御部と、該制御部が算出した巻き取りリズムに基づいて報知信号を発信する発信部とを備えていることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-100295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような発振器を備えるリールでは、ユーザへの報知のために、スピーカを別途設ける必要があり、装置全体の大型化やコスト増加が不可避となってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スプールの巻取り用やキャストブレーキの制動力調整用、クラッチ切り替え用、ドラグ力調整用等の用途に用いられるモータを活用してユーザへの報知を行うことが可能な魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を付与する制動部と、該制動部の制動力を調節する制動力調整部と、該制動力調整部を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールを回転させるモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールへの動力伝達の接続・解放を行うためのクラッチ機構と、該クラッチ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、所定値以上のトルクが働いた際に該スプールを滑らせることで釣糸の破断を防止するドラグ機構と、該ドラグ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記制御部は、所定のタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うに構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記所定のタイミングとは、前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる操作時の少なくともいずれかである。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、エラー検出モードへ切替え可能であり、前記所定のタイミングは、エラー検出モードへの切替え時である。
【発明の効果】
【0014】
上記実施形態によれば、スプールの巻取り用やキャストブレーキの制動力調整用、クラッチ切り替え用、ドラグ力調整用等の用途に用いられるモータを活用してユーザへの報知を行うようにすることで、装置全体の大型化やコスト増加を回避できる魚釣用リールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールを説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおける制動装置の制御方法を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおけるモータを用いてユーザ報知のための報知音を発生させる方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る制動力制御装置及びこれを備える魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0017】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールについて説明する。図1は、魚釣用リール1の断面図を示すものであり、後述の減速ギヤ列の中心軸を通る様子が示されている。なお、簡略化のために、魚釣用リール1の公知の機能の一部は図示および説明を省略する。また、図1に示す魚釣用リール1では、キャスティングブレーキの制動トルク調整のためにモータを用いている。
【0018】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、フレーム(リール本体)2と、スプール3と、被制動部材(インダクトロータ)4と、軸受け5と、回転磁石6と、固定磁石7と、セットプレート8と、中蓋9と、モータ10と、減速ギヤ列(第1のギヤ12、第2のギヤ13、第3のギヤ14)11と、電池15と、制御基板16と、外蓋17とで構成される。
【0019】
フレーム(リール本体)2は、釣竿に取り付け可能にされ、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、従来の魚釣用リールと同様、図示しない操作手段(ハンドル)を有し、ユーザの操作によってスプールを正方向回転させ、釣糸を巻き取ることができる。ハンドルの回転は、図示しないギヤ等の伝達手段によってスプールに伝達される。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣り用リール1は、図示しないクラッチ機構(クラッチ部又はクラッチ手段)を有し、ユーザはクラッチ機構を操作することで、スプール3への動力伝達の接続状態・解放状態を選択することができる。接続状態では操作手段による巻き取りが可能である。開放状態ではスプール3を正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸は放出可能となる。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、所定値以上のトルクが働いた際にスプール3を空転させることで釣糸の破断を防止するドラグ機構(ドラグ部又はドラグ手段)や、ハンドルの逆転を防止する逆転防止手段を備えるようにしてもよい。さらに、スプール3の回転に応じて釣糸を案内する案内部の位置を往復運動させることで、釣糸を均等に巻き取るオシレータ装置を設けてもよい。
【0022】
スプール3は、リール本体2に対して回転可能に支持され、正方向回転により外周に釣糸を巻き取ることができる。また、ルアー等を投擲する際は、逆方向に回転し、巻回された釣糸を放出する。この時に釣糸の放出量がルアー等の移動量よりも多すぎると、余分な糸によりバックラッシュと呼ばれる糸絡みが発生し、魚釣用リール1の正常な使用を妨げる。このため、スプール3には制動装置20によって適切な制動力を付与することにより、バックラッシュを防止する。
【0023】
被制動部(インダクトロータ)4は、スプール3に対して同軸かつ回転不能に固定されることで、スプール3に制動トルクを付与することができる。被制動部4は、アルミや銅、鉄などの導電体からなり、概略円筒状に形成される。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、被制動部4に発生する渦電流により制動力を付与する、いわゆる渦電流ブレーキを用いている。すなわち、被制動部4に対して外部から磁場を加えると、運動中の被制動部4には渦電流が発生する。この渦電流と磁場との相互作用により、スプールの角速度と磁場の強さに比例した制動トルクが発生する。
【0024】
セットプレート8は、フレーム2に固定可能である。セットプレート8をフレーム2に
固定することで、スプール3は回転可能に軸支される。また、セットプレート8に固定磁
石7および回転磁石6を保持することで、後述の制動装置20を構成する。また、セット
プレート8と中蓋9および外蓋17と一体とすることで、サイドプレートユニットを構成
する。中蓋9と外蓋17によって水密室を構成し、内部に基板、電池、モータ、センサ等
の電気部品を収納することができる。
【0025】
続いて、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における制動装置20の構成について詳細に説明する。当該制動装置20では、少なくとも一つの永久磁石を有する磁気回路により、被制動部4に磁場を加える。本発明の一実施形態では、2つの永久磁石により磁気回路を構成しており、永久磁石同士を相対移動させることで、被制動部4に与える磁場を調整させることができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、図2に示すように、被制動部材4の内周側に固定磁石7を配置し、被制動部材4の外周側に回転磁石6を配置している。回転磁石6および固定磁石7は、それぞれ周方向にN等分(図2の例では四等分)され、N極およびS極が交互に着磁される。これにより、被制動部4を貫く磁場を形成する。
【0027】
回転磁石6は、最大制動状態と最小制動状態の間で回転移動可能となっている。具体的には、回転磁石6はギヤを有する樹脂等からなる磁石保持ギヤ(磁石ギヤ)18に固定され、磁石ギヤ18はセットプレートに対して角度0°から90°の範囲で回転可能に軸支される。磁石ギヤ18は、減速ギヤ列11を介してモータ10から回転伝達を受ける。これにより、モータ10によって回転磁石6を固定磁石7に対して相対回転させることができる。減速ギヤ列11は公知の減速手段であり、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、第一のギヤ12、第二のギヤ13、第三のギヤ14の3個の2段ギヤにより構成される。この減速ギヤ列による減速比をrとする。
【0028】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における制動装置20の制御方法について説明する。上述のように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、クラッチセンサ(投擲準備検知手段)24により投擲状態を検出後、モータ10によって回転磁石6を固定磁石7に対して相対回転させることで、スプール3への制動トルクを所定の量に調整することができる。必要に応じて、スプール回転センサ23により、スプール3の回転移動量や回転速度を検知することで、それぞれの状況に応じた制動トルクに設定する。
【0029】
図示しない制御基板内には、モータ10へ電流を通電するモータドライバや、モータ10への駆動量を決定するプログラムが搭載されたマイコン等の電気部品によって構成される制御部21が配置される。モータの位置決めは、ステッピングモータを利用したフィードフォワード制御や、位置センサ22を利用したフィードバック制御などの公知の方法を用いることができる。これにより、回転磁石を所定の位置に移動させ、スプールに所定の制動力を付与することができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を付与する制動部と、該制動部の制動力を調節する制動力調整部と、該制動力調整部を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0031】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、スプールのキャストブレーキの制動力調整用の用途に用いられるモータ10を活用してユーザへの報知を行うようにすることで、装置全体の大型化やコスト増加を回避できる魚釣用リールを提供することが可能となる。より具体的には、このようなモータから直接出る報知音でリールの状況を伝えることができるため、液晶画面その他周辺機器も不要(例えば、携帯端末に表示部がある場合、携帯端末を操作してモータ10の様々な設定を行い、設定したときにモータ10から応答の音が発生するようにし、これによりユーザが設定した通りにモータ10に設定がなされたことが判るようにすることができる)となるため、さらなる低コスト化等を図ることができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールを回転させるモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0033】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、スプールの巻取り用の用途に用いられるモータ10を活用してユーザへの報知を行うようにすることで、装置全体の大型化やコスト増加を回避できる魚釣用リール1を提供することが可能となる。より具体的には、記述の通り、このようなモータ10から直接出る報知音で魚釣用リール1の状況を伝えることができるため、液晶画面その他周辺機器も不要(例えば、携帯端末に表示部がある場合、携帯端末を操作してモータ10の様々な設定を行い、設定したときにモータ10から応答の音が発生するようにし、これによりユーザが設定した通りにモータ10に設定がなされたことが判るようにすることができる)となるため、さらなる低コスト化等を図ることができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールへの動力伝達の接続・解放を行うためのクラッチ機構と、該クラッチ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0035】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、クラッチ切り替え用の用途に用いられるモータ10を活用してユーザへの報知を行うようにすることで、装置全体の大型化やコスト増加を回避できる魚釣用リール1を提供することが可能となる。より具体的には、記述の通り、このようなモータから直接出る報知音で魚釣用リール1の状況を伝えることができるため、液晶画面その他周辺機器も不要(例えば、携帯端末に表示部がある場合、携帯端末を操作してモータ10の様々な設定を行い、設定したときにモータ10から応答の音が発生するようにし、これによりユーザが設定した通りにモータ10に設定がなされたことが判るようにすることができる)となるため、さらなる低コスト化等を図ることができる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、所定値以上のトルクが働いた際に該スプールを滑らせることで釣糸の破断を防止するドラグ機構と、該ドラグ機構を駆動するモータと、該モータを制御する制御部と、を備える魚釣用リールであって、前記制御部は、前記モータに可聴範囲の周波数で正逆駆動を繰り返すよう制御を行うことにより、該モータに報知音を発生させるように構成される。
【0037】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによれば、ドラグ力調整用の用途に用いられるモータを活用してユーザへの報知を行うようにすることで、装置全体の大型化やコスト増加を回避できる魚釣用リールを提供することが可能となる。より具体的には、記述の通り、このようなモータから直接出る報知音でリールの状況を伝えることができるため、液晶画面その他周辺機器も不要(例えば、携帯端末に表示部がある場合、携帯端末を操作してモータ10の様々な設定を行い、設定したときにモータ10から応答の音が発生するようにし、これによりユーザが設定した通りにモータ10に設定がなされたことが判るようにすることができる)となるため、さらなる低コスト化等を図ることができる。
【0038】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記制御部は、所定のタイミングで、前記モータに報知音を発生させるように制御を行うに構成される。このようにして、モータの本来の使用用途を妨げることなく、モータによってユーザに報知することが可能となる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記所定のタイミングとは、前記制御部の起動時、前記制御部の終了時又は前記制御部に対するユーザによる操作時の少なくともいずれかである。このようにして、モータの本来の使用用途を妨げることなく、起動時、終了時、ユーザ操作時等のタイミングをユーザに報知することが可能となる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、エラー検出モードへ切替え可能であり、前記所定のタイミングは、エラー検出モードへの切替え時である。このようにして、装置の不具合発生の有無が容易に検出可能になる。また、不具合発生時の故障原因解析の効率化が可能となる。
【0041】
次に、図3を参照して、モータ10を用いてユーザ報知のための報知音を発生させる方法について詳細を述べる。制御部21により、モータ10に一定時間正方向駆動、または逆方向駆動を行うよう制御することにより、固定磁石を所定位置に移動させることができる。一方、このモータ10に所定の正方向駆動と逆方向駆動を所定の周波数で繰り返し切り替えることで、モータ10のロータ位置はほとんど動かないまま、ユーザへの報知音を発生させることができる。図3は、いずれもユーザへの報知音を発生させる際のモータ10への通電波形であり、(A)は高周波で、(B)は低周波で駆動させたときである。
【0042】
ユーザの可聴範囲でモータ10に正逆方向への駆動を切り替えることで、モータ10のロータがその場で振動し、その振動がユーザに伝わることで報知音となる。したがって、モータ10の駆動周波数は20Hzから10000Hzが望ましい。また、この時モータ自身の共振周波数や、モータを保持する構造部材の共振周波数でモータを駆動することで、振幅を大きくすることで音量を大きくでき、ユーザへの報知が行ない易くなる。
【0043】
このようにして、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1によれば、スピーカやブザー等の専用の部品を用いることなく、キャスティングブレーキの制動トルク調整用のモータ10によってユーザへの報知音を発生させることができる。これにより、装置全体の大型化や高コスト化を避けた魚釣用リール1とすることができる。
【0044】
ユーザへの報知は、一例として制御部21の起動時に行う。これにより、ユーザに制御部21が起動したことを伝えるようにすることができる。また、その他の方法として、制御部21の終了時にユーザへの報知を行う。これにより、ユーザに制御部が終了したことを伝えるようにすることができる。さらに、その他の方法として、ユーザが制御部21の操作のための操作ボタンを操作した際にユーザへの報知を行うことができる。これにより、操作性を向上させることができる。また、その他の方法として、キャスティング準備終了時や、キャスティング終了検知時にユーザへの報知を行うようにすることができる。これにより、操作性を向上させることができる。
【0045】
ユーザへの報知を行う間、モータは本来の使用用途であるキャスティングブレーキの制動トルク調整を行うことができない。しかしながら、キャスティングブレーキの制動トルクを調整する必要が生じるのは、ルアー等を投擲している間であり、その間に制御部の起動や終了、ユーザのボタン操作が行われることはほとんどない。したがって、上記のタイミングでユーザへの報知を行なっても、モータの本来の使用用途を妨げることはないため、モータをより有効に活用することが可能となる。
【0046】
また、その他の方法として、制御部21にエラー検出モードを設定可能とし、そのモードにおいてボタン操作をする等の特定のイベント発生時にユーザへの報知を行うようにしてもよい。このエラー検出モードは、例えばサービス部門における故障リール解析時など、リールに不具合が生じたときの故障原因解析時に使用することが考えられる。
【0047】
モータが動かなくなる故障では、原因として断線や電池切れ等の電気的要因と、ギヤ等への異物混入や部品破壊等の機械的要因の2つが大きな割合を占める。電気的要因によってモータが動かなくなった場合は、モータによってユーザへの報知音を発生させることができなくなる。しかし、機械的要因によってモータが動かなくなった場合でも、殆どの場合ロータはその場で微小回転をすることは可能であるため、ユーザへの報知音を発生させることはできる。このことを利用し、モータが動かなくなった魚釣用リールに報知音を発生させる操作を行うことで、機械的要因による故障か、電気的要因による故障かを、装置を分解することなく切り分けることができる。これにより、故障原因の解析を効率化することができる。
【0048】
ユーザへの報知音を発生させるためのモータは、上述のようなキャスティングブレーキの制動トルク調整用モータに限らない。その他、魚釣用リールに用いられる各種用途のモータによってユーザへの報知音を発生させることができる。
【0049】
例えば、図示しないが、スプール巻き上げ用モータを用いて、その駆動を正逆方向に切り替えることで、上述した方法と同様、ユーザへの報知音を発生させることができる。報知音を発生する際は、モータ10のロータはその場で振動し、ほとんど移動しないため、スプールを巻き取ることはない。したがって、モータへの駆動方法を切り替えることで、スプールの巻取りと、ユーザへの報知をそれぞれ行うことができる。
【0050】
また、図示しないが、モータを正方向に駆動するとスプールの巻取りができ、モータを逆方向に駆動すると、クラッチの接続状態/切断状態が間歇的に切り替わる場合において、当該モータを可聴周波数で正逆方向に微小振動させると、ユーザへの報知音を発生することができる。ユーザへの報知音を発生する際は、ロータはその場で振動し、ほとんど移動しないため、スプールの巻き取りやクラッチ状態の切り替えを行うことはない。したがって、モータへの駆動方法を切り替えることで、クラッチ状態の切り替えと、ユーザへの報知をそれぞれ行なうことができる。この例では、クラッチ状態の切り替えが終了したタイミング等でユーザへの報知を行うとよい。これにより、クラッチの切り替え作業とユーザへの報知を同時に行なうことを避けながら、ユーザの操作性を向上させることができる。
【0051】
また、その他の方法として、ドラグ設定値の調整のためのモータを用いることもできる。図示しないが、このようなモータは、これを正方向に駆動するとドラグ設定値が増加し、これを逆方向に駆動すると、ドラグ設定値が減少する。本モータを可聴周波数で正逆方向に微小振動させると、ユーザへの報知音を発生することができる。ユーザへの報知音を発生する際は、ロータはその場で振動し、ほとんど移動しないため、ドラグ設定値が変わることはない。したがって、モータへの駆動方法を切り替えることで、ドラッグ設定値の調整と、ユーザへの報知をそれぞれ行うことができる。
【0052】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 魚釣用リール
2 フレーム(リール本体)
3 スプール
4 被制動部材(インダクトロータ)
5 軸受け
6 回転磁石
7 固定磁石
8 セットプレート
9 中蓋
10 モータ
11 減速ギヤ列
12 第1のギヤ
13 第2のギヤ
14 第3のギヤ
15 電池
16 制御基板
17 外蓋
18 磁石ギヤ
20 制動装置
21 制御部
22 位置センサ
23 スプール回転センサ
24 クラッチセンサ(投擲準備検知手段)
図1
図2
図3