(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】タブリード及び非水電解質デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/197 20210101AFI20240827BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240827BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240827BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240827BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240827BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240827BHJP
【FI】
H01M50/197
H01G11/80
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0566
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/193
(21)【出願番号】P 2021158033
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020212168
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(73)【特許権者】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
(72)【発明者】
【氏名】小山田 洸介
(72)【発明者】
【氏名】和田 優子
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-128096(JP,A)
【文献】特開2017-016975(JP,A)
【文献】特開2014-107176(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057899(WO,A1)
【文献】特開2013-171738(JP,A)
【文献】特開2002-216741(JP,A)
【文献】特開2000-133218(JP,A)
【文献】特開2016-157516(JP,A)
【文献】特開平09-288998(JP,A)
【文献】特開2001-148234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-198
H01M 50/50-598
H01M 10/05-0587
H01G 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、
金属材料によって形成された端子本体と前記端子本体の表面を覆う被膜とを有するリード端子と、
前記リード端子に両側から密着されると共に前記ラミネート材に密着され前記ラミネート材を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部には前記リード端子側に酸変性されたポリオレフィンをベース樹脂とする密着層が設けられ、
前記被膜が前記密着層のベース樹脂と同じ成分を含み、
前記被膜は水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、
前記水溶性ジルコニウム塩がジルコニウムとして質量基準で1平方メートル当たり0.8から300mgにされ、
前記水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240
mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製され
、
前記被膜と前記密着層のベース樹脂とが同じ官能基を有する樹脂材料によって形成された
タブリード。
【請求項2】
前記密着層はアクリル酸変性されたポリプロピレン又はポリエチレンがベース樹脂とされた
請求項1に記載のタブリード。
【請求項3】
前記フィルム部には前記ラミネート材側に前記ラミネート材と同じ材料のベース樹脂が形成された第2の密着層が設けられた
請求項1又は請求項2に記載のタブリード。
【請求項4】
前記第2の密着層はポリプロピレン又はポリエチレンがベース樹脂とされた
請求項3に記載のタブリード。
【請求項5】
ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、
前記タブリードは、
金属材料によって形成された端子本体と前記端子本体の表面を覆う被膜とを有するリード端子と、
前記リード端子に両側から密着されると共に前記ラミネート材に密着され前記ラミネート材を封止する一対のフィルム部とを備え、
前記フィルム部には前記リード端子側に酸変性されたポリオレフィンをベース樹脂とする密着層が設けられ、
前記被膜が前記密着層のベース樹脂と同じ成分を含み、
前記被膜は水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、
前記水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240
mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製され
、
前記被膜と前記密着層のベース樹脂とが同じ官能基を有する樹脂材料によって形成された
非水電解質デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード端子にフィルム部が密着されたタブリード及びこれを備えた非水電解質デバイスについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質デバイスには、例えば、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタ等が存在する。リチウムイオン電池は正極と負極の間をリチウムイオンが移動することにより充電や放電を行う機能を有し、リチウムイオンキャパシタは電気二重層の正極とリチウムイオンの吸着が可能な炭素系の材料を使用する負極とが設けられた構造において充電や放電を行う機能を有する。
【0003】
このような非水電解質デバイスには、例えば、車載用の電池や蓄電池等として使用され、袋状にされたラミネート材の内部に電極と電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型がある。ラミネート型の非水電解質デバイスにおいてはタブリードによって電力の取り出しが行われ、タブリードは一端部がラミネート材の内部に配置された電極に接続され他端部がラミネート材の外部に露出されて外部機器の接続端子であるバスバー等に接続される。
【0004】
タブリードは、電力を取り出すためのリード端子と、リード端子とラミネート材に密着されラミネート材を封止すると共にリード端子とラミネート材を絶縁するためのフィルム部とを有し、リード端子には金属材料によって形成された端子本体の表面が被膜によって覆われることにより構成されているものがある。非水電解質デバイスにおいては、タブリードのフィルム部が熱圧着されることによりラミネート材が封止される。
【0005】
このようなタブリードには、非水電解質デバイスの良好な性能を確保するために、ラミネート材の高い封止性、リード端子とラミネート材の間の高い絶縁性、電解液等に対する長期の耐性、リード端子とフィルム部の密着性、リード端子の電極等に対する良好な溶接性等が要求される。また、タブリードのリード端子においては、被膜によって端子本体の防錆性を確保する必要があるため、被膜には高い耐食性が必要とされている。
【0006】
そこで、従来の非水電解質デバイスには、上記のようなリード端子に対する要求を満たすために、様々な提案が行われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1に記載されたタブリードにおいては、リード端子の被膜がポリアクリル酸を含む樹脂成分と金属塩とを含む処理液の塗布により複合被膜層として形成されることにより、環境汚染の問題を考慮してノンクロムで表面処理し、耐フッ化水素酸性に優れた被膜を形成して耐食性の向上を図るようにしている。
【0008】
特許文献2に記載されたタブリードにおいては、リード端子の被膜がポリアクリル酸及びポリアクリル酸アミドを含む樹脂成分と金属塩とを含む処理液を噴霧することにより複合被膜層として形成され、環境汚染の問題を考慮してノンクロムで表面処理し、耐フッ化水素酸性に優れた被膜を形成して耐食性の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-128096号公報
【文献】特開2011-81992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、タブリードのリード端子においては、上記のような被膜における高い耐食性を確保する必要があることに加え、リード端子とフィルム部の間の高い密着性が確保される必要もある。
【0011】
リード端子とフィルム部の間の高い密着性が確保されることにより、リード端子とフィルム部の間に隙間が生じずラミネート材の内部に封入された電解液等の液漏れが防止されて封止性が確保され非水電解質デバイスの良好な性能を確保することが可能になる。
【0012】
そこで、本発明は、リード端子とフィルム部の間の高い密着性を有し、電解液等に対する長期の耐性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1に、本発明に係るタブリードは、ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに用いられるタブリードであって、金属材料によって形成された端子本体と前記端子本体の表面を覆う被膜とを有するリード端子と、前記リード端子に両側から密着されると共に前記ラミネート材に密着され前記ラミネート材を封止する一対のフィルム部とを備え、前記フィルム部には前記リード端子側に酸変性されたポリオレフィンをベース樹脂とする密着層が設けられ、前記被膜が前記密着層のベース樹脂と同じ成分を含み、前記被膜は水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、前記水溶性ジルコニウム塩がジルコニウムとして質量基準で1平方メートル当たり0.8から300mgにされ、前記水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製されたものである。
【0014】
これにより、ベース樹脂であるポリオレフィンが酸変性された密着層が、密着層のベース樹脂の酸変性部と同じ成分を含むリード端子の被膜に両側から密着される。また、被膜の耐食性が高くなると共に被膜の密着層に対する親和性が高くなる。
【0015】
第2に、上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記密着層はアクリル酸変性されたポリプロピレン又はポリエチレンがベース樹脂とされることが望ましい。
【0016】
これにより、密着層が被膜と同じアクリル成分を有する。
【0017】
第3に、上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記フィルム部には前記ラミネート材側に前記ラミネート材と同じ材料のベース樹脂が形成された第2の密着層が設けられることが望ましい。
【0018】
これにより、第2の密着層とラミネート材の親和性が高くなる。
【0019】
第4に、上記した本発明に係るタブリードにおいては、前記第2の密着層はポリプロピレン又はポリエチレンがベース樹脂とされることが望ましい。
【0020】
これにより、ラミネート材との親和性が高い材料で形成される。加えて、ポリプロピレンとした場合は第2の密着層が水分を透過し難い材料によって形成される。
【0021】
第5に、本発明に係る非水電解質デバイスは、ラミネート材の内部に少なくとも電解液又は固体電解質が封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、前記タブリードは、金属材料によって形成された端子本体と前記端子本体の表面を覆う被膜とを有するリード端子と、前記リード端子に両側から密着されると共に前記ラミネート材に密着され前記ラミネート材を封止する一対のフィルム部とを備え、前記フィルム部には前記リード端子側に酸変性されたポリオレフィンをベース樹脂とする密着層が設けられ、前記被膜が前記密着層のベース樹脂と同じ成分を含み、前記被膜は水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、前記水溶性ジルコニウム塩がジルコニウムとして質量基準で1平方メートル当たり0.8から300mgにされ、前記水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製されたものである。
【0022】
これにより、タブリードにおいて、ベース樹脂であるポリオレフィンが酸変性された密着層が、密着層のベース樹脂の酸変性部と同じ成分を含むリード端子の被膜に両側から密着される。また、被膜の耐食性が高くなると共に被膜の密着層に対する親和性が高くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ベース樹脂であるポリオレフィンが酸変性された密着層が、密着層のベース樹脂の酸変性部と同じ成分を含むリード端子の被膜に両側から密着されるため、フィルム部の密着層とリード端子の被膜との親和性が高くなり、リード端子とフィルム部の間の高い密着性を有し、電解液等に対する長期の耐性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図2乃至
図4と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの正面図である。
【
図4】リード端子の被膜とフィルム部の第1の密着層との密着性に関する測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明のタブリード及び非水電解質デバイスを実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
<非水電解質デバイスの概略構成>
先ず、タブリードが用いられるラミネート型の非水電解質デバイスの例としてリチウムイオン電池の概略構成について説明する(
図1及び
図2参照)。
【0027】
尚、本発明の非水電解質デバイスの適用範囲はリチウムイオン電池に限られることはなく、本発明はラミネート型のリチウムイオンキャパシタ等の他の非水電解質デバイスにも適用することが可能である。
【0028】
非水電解質デバイスは内部に電解液等が封入されたラミネート材とラミネート材から一部が外部に突出されたタブリードとを有し、以下の説明にあっては、ラミネート材からタブリードが突出される方向を上方とし、前後上下左右の方向を示すものとする。
【0029】
但し、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0030】
非水電解質デバイス100は袋状にされたラミネート材101とラミネート材101の内部に封入された各部と一部がラミネート材101から突出されたタブリード1、1とを有している(
図1参照)。
【0031】
ラミネート材101は上端部が封止部102として形成された筒状にされている。ラミネート材101は、例えば、三層構造にされ、それぞれ樹脂材料によって形成された外面層101aと内面層101bが金属層101cの両側に積層されている(
図2参照)。外面層101aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが用いられ、内面層101bとしては、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンが用いられ、金属層101cとしては、例えば、アルミニウムが用いられている。
【0032】
ラミネート材101の内部には、電解液103が封入されると共に正極104と負極105とセパレータ106が配置されている。正極104と負極105は電解液103に浸されており、セパレータ106によって正極104が配置された空間と負極105が配置された空間とが仕切られている。正極104としては、例えば、アルミニウムが用いられ、負極105としては、例えば、ニッケル又は銅若しくはこれらの合金が用いられている。尚、電解液103に代えて固体電解質が用いられていてもよい。
【0033】
<タブリードの構成>
次に、タブリード1の構成について説明する(
図2及び
図3参照)。尚、タブリード1は一対設けられており、正極104に接続される一方のタブリード1が非水電解質デバイス100における正極として機能し、負極105に接続される他方のタブリード1が非水電解質デバイス100における負極として機能する。
【0034】
タブリード1は、薄板状のリード端子2と、リード端子2に両側から密着された一対のフィルム部3、3とから成る。タブリード1は、外周面の一部が封止部102に密着された状態にされ、上端側の部分がラミネート材101から上方に突出されている。
【0035】
リード端子2は、厚さが、例えば、50μmから1000μmにされた薄板状に形成されている。リード端子2の下端部は電極接続部2aとして設けられ、正極104又は負極105に、例えば、溶接等によって接続されている。リード端子2の上端部はラミネート材101から外部に露出された外部端子部2bとして設けられ、外部機器の図示しない接続端子(バスバー)に、例えば、溶接等によって接続される。
【0036】
リード端子2は金属材料によって形成された端子本体4の表面が被膜5に覆われて構成されている。端子本体4は、例えば、ニッケル又はアルミニウム又は銅又はステンレスによって形成されている。被膜5は、例えば、ベース樹脂としてアクリル酸共重合体が用いられ、アクリル酸共重合体とジルコニウム塩の複合被膜として形成されている。
【0037】
被膜5にジルコニウム塩が含有されることにより、良好な電気伝導性が確保され、電極接続部2aと正極104又は負極105との高い導通性及び高い溶接性が確保されると共に外部端子部2bと外部機器の接続端子との高い導通性及び高い溶接性が確保されている。
【0038】
被膜5は、具体的には、水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、水溶性ジルコニウム塩がジルコニウムとして質量基準で1平方メートル当たり0.8から300mgにされ、水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製されている。このように調整された被膜5が、端子となる金属材料(リード端子2)の表面に塗布され、加熱乾燥されて表面処理被膜として形成される。
【0039】
表面処理剤の塗布方法としては、形成される被膜5の各成分が上記の範囲となるように行えばよく、特に限定されない。例えば、ロールコート法、バーコート法、スプレー処理法、浸漬帆処理法等を用いることができる。
【0040】
表面処理剤の加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、オーブン乾燥、熱空気の強制的循環による方法等が挙げられる。加熱乾燥の条件は、例えば、40から200℃で2から60秒間とすることができる。
【0041】
フィルム部3、3はリード端子2に両側から密着されると共にラミネート材101の封止部102の内面にも密着されてラミネート材101を封止し、ラミネート材101の内部に封入された電解液103等の液漏れを防止する機能を有している。また、フィルム部3、3はリード端子2とラミネート材101の間に介在され、リード端子2とラミネート材101の間の絶縁性を確保する機能をも有している。
【0042】
フィルム部3、3はリード端子2に対して直交する方向に延びる形状に形成され、リード端子2の厚み方向における両面に両側から密着されている。従って、フィルム部3、3はリード端子2の被膜5に両側から密着されている。フィルム部3は厚さが、例えば、50μmから150μmにされ、長手方向における中央の部分がリード端子2に密着されている。
【0043】
フィルム部3は、例えば、三層構造にされ、第1の密着層6と第2の密着層7が中間層8の両側に積層されている。但し、フィルム部3は二層以上の構造にされていれば層数は任意である。
【0044】
第1の密着層6は厚さが、例えば、25μmから100μmにされている。第1の密着層6はリード端子2側に位置され、酸変性ポリオレフィンをベース樹脂として形成され、ベース樹脂は、例えば、アクリル酸変性にされている。また、第1の密着層6はポリオレフィンとして、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンが用いられている。従って、第1の密着層6はベース樹脂として、例えば、アクリル酸変性ポリプロピレン又はアクリル酸変性ポリエチレンが用いられている。
【0045】
このように第1の密着層6はベース樹脂としてアクリル酸変性ポリプロピレン又はアクリル酸変性ポリエチレンが用いられているため、被膜5のベース樹脂であるアクリル酸共重合体と同じ成分であるカルボン酸を含む構成にされている。尚、第1の密着層6はベース樹脂が、例えば、マレイン酸変性にされてマレイン酸変性ポリプロピレン又はマレイン酸変性ポリエチレンにされていてもよく、この場合には、被膜5のベース樹脂としてカルボン酸を含む樹脂が用いられ、第1の密着層6と被膜5に同じ成分が含まれることが望ましい。また、被膜5のベース樹脂としてはカルボン酸を含む樹脂の他、マレイン酸共重合体や無水マレイン酸変性ポリエチレン等が用いられてもよい。
【0046】
第2の密着層7は厚さが、例えば、25μmから100μmにされて、中間層8を挟んで第1の密着層6の反対側に位置されている。第2の密着層7は第1の密着層6と同じ材料によって形成され、ベース樹脂として、例えば、アクリル酸変性ポリプロピレン又はアクリル酸変性ポリエチレンが用いられている。また、第2の密着層7も第1の密着層6と同様に、ベース樹脂がマレイン酸変性にされてマレイン酸変性ポリプロピレン又はマレイン酸変性ポリエチレンにされていてもよい。
【0047】
このように第2の密着層7はベース樹脂としてポリプロピレン又はポリエチレンが用いられているため、ベース樹脂がラミネート材101の内面層101bと同じ材料にされている。
【0048】
中間層8は第1の密着層6と第2の密着層7の間に積層され、厚さが、例えば、50μmにされている。中間層8はベース樹脂が架橋され、ベース樹脂として、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンが用いられている。
【0049】
フィルム部3は熱圧着によりリード端子2とラミネート材101の封止部102に密着されるが、上記のようにフィルム部3の中間層8のベース樹脂が架橋ポリプロピレン又は架橋ポリエチレンにされることにより、フィルム部3の耐熱性が向上しフィルム部3の変形や潰れが抑制される。従って、フィルム部3のリード端子2と封止部102に対する安定した密着状態を確保することができると共にリード端子2とラミネート材101との間の高い絶縁性を確保することができる。
【0050】
また、フィルム部3のベース樹脂が水分を透過し難いポリオレフィン系の樹脂であるポリプロピレン又はポリエチレンにされることにより、フィルム部3における水分の透過が生じ難く、パッケージ内部でのフッ酸の発生が抑制される。これにより、フィルム部とリード端子の間で腐食による剥離が生じ難くなり、電解液103等の透過が生じ難く、非水電解質デバイス100の高い機能性を確保することができる。
【0051】
<密着性に関する試験結果>
以下に、被膜と第1の密着層との密着状態を測定した密着性に関する試験結果について説明する(
図4参照)。
【0052】
密着性に関する試験は、被膜の有無とフィルム部の酸変性の有無とにより4種類の材料について行い、被膜はアクリル樹脂とジルコニウム塩が含有された材料を用い、フィルム部はベース樹脂がアクリル酸変性ポリプロピレンにされた材料を用いた。また、試験は正極として機能するタブリードと負極として機能するタブリードの双方のタブリードにおいて、それぞれ上記した4種類の材料について行った。正極における端子本体としてはアルミニウムを用い、負極における端子本体としてはニッケルと銅の合金を用いた。
【0053】
試験においては、基準となる「基準試験」と基準試験に対する密着性を測定する「実測試験」とを行った。
【0054】
基準試験は、上記した4種類のタブリードについて、フィルム部を引っ張ってリード端子から剥離することにより行った。剥離角度は180度とし、剥離速度は分速5mmとした。
【0055】
一方、実測試験においては、加速試験としてリチウムイオン電池用の電解液に1000ppmの水を添加し、これを各タブリードの浸漬液として用意した。このように生成した浸漬液においては、電解液に水が添加されることによりフッ化水素酸が発生し被膜がフィルム部から剥がれ易い状態になる。
【0056】
実測試験は、浸漬液に上記した4種類のタブリードを一定時間浸漬し、浸漬後にフィルム部を引っ張ってリード端子から剥離することにより行った。剥離角度と剥離速度は基準試験と同じであり、浸漬液の温度を85度とし、各タブリードの浸漬液への浸漬時間を何れも336時間とした。
【0057】
上記のような方法により各試験を行い、基準試験におけるフィルム部の剥離強度と実測試験における剥離強度の結果の割合を密着残存率として算出した。
【0058】
図4に示す「○」、「△」、「×」は密着残存率の大きさを示し、「○」は密着残存率が70%以上であることを示し、「△」は密着残存率が60%以上70%未満であることを示し、「×」は密着残存率が60%未満であることを示す。
【0059】
図4に示すように、アクリル樹脂とジルコニウム塩が含有された被膜がリード端子に形成されていない場合には、フィルム部のベース樹脂が酸変性されているか否かに拘わらず密着残存率が60%未満の低率である結果が得られた。
【0060】
一方、アクリル樹脂とジルコニウム塩が含有された被膜がリード端子に形成されている場合には密着残存率が60%以上である結果が得られ、特に、被膜がリード端子に形成されフィルム部のベース樹脂がアクリル酸変性されている場合には密着残存率が70%以上の高率である結果が得られた。
【0061】
以上の測定結果により、アクリル樹脂とジルコニウム塩が含有された被膜がリード端子に形成されている場合には、リード端子の被膜とフィルム部の第1の密着層との間の高い密着性が確認された。また、アクリル樹脂とジルコニウム塩が含有された被膜がリード端子に形成されている上にフィルム部のベース樹脂がアクリル酸変性されている場合には、リード端子の被膜とフィルム部の第1の密着層との間の一層高い密着性が確保されることが確認された。
【0062】
<まとめ>
以上に記載した通り、タブリード1及びこれを備えた非水電解質デバイス100にあっては、フィルム部3にはリード端子2側に酸変性ポリオレフィンをベース樹脂とする第1の密着層6が設けられ、被膜5が第1の密着層6のベース樹脂と同じ成分を含むようにされている。
【0063】
従って、ベース樹脂であるポリオレフィンが酸変性された第1の密着層6が、第1の密着層6のベース樹脂の酸変性部と同じ成分を含むリード端子2の被膜5に両側から密着されるため、フィルム部3の第1の密着層6とリード端子2の被膜5との親和性が高くなり、リード端子2とフィルム部3の間の高い密着性を有し、電解液等に対する長期の耐性を確保することができる。これにより、リード端子2とフィルム部3の間に隙間が生じずラミネート材101の内部に封入された電解液103等の液漏れが防止されて封止性が確保され、非水電解質デバイス100の良好な性能を確保することができる。
【0064】
また、被膜5が水溶性ジルコニウム塩と水溶性又は水分散性アクリル樹脂とを含有する表面処理被膜であり、水溶性ジルコニウム塩がジルコニウムとして質量基準で1平方メートル当たり0.8から300mgにされ、水溶性又は水分散性アクリル樹脂が固形分酸価150から740mgKOH/g及び固形分水酸基価24から240mgKOH/gにされると共に固形分として質量基準で1平方メートル当たり1.0から600mgになるように調製されている。
【0065】
従って、被膜5の耐食性が高くなると共に被膜5の第1の密着層6に対する親和性が高くなり、被膜5の耐食性の向上による端子本体4の防錆性の向上を図ることができると共にリード端子2とフィルム部3の間の高い密着性を確保することができる。
【0066】
さらに、第1の密着層6のベース樹脂としてアクリル酸変性されたポリプロピレン又はポリエチレンが用いられることにより、第1の密着層6が被膜5と同じアクリル成分を有するため、フィルム部3を低コストで形成することができると共にリード端子2とフィルム部3の間の高い密着性を確保することができる。
【0067】
さらにまた、フィルム部3にはラミネート材101側にラミネート材101と同じ材料のベース樹脂が形成された第2の密着層7が設けられている。
【0068】
従って、第2の密着層7とラミネート材101の親和性が高くなり、フィルム部3とラミネート材101の間の高い密着性を確保することができる。
【0069】
加えて、第2の密着層7はポリプロピレン又はポリエチレンがベース樹脂とされているため、ラミネート材101との親和性が高い材料で形成され、非水電解質デバイス100の高い機能性を確保した上でフィルム部3とラミネート材101の間の高い密着性を確保することができる。また、第2の密着層7のベース樹脂がポリプロピレンにされた場合には、特に、第2の密着層7が水分を透過し難い材料によって形成されるため、フィルム部3とラミネート材101の間の一層高い密着性を確保することができる。
【0070】
<その他>
上記には、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1が何れもラミネート材101から同じ方向(上方)へ突出された例を示したが、非水電解質デバイス100においては、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1がラミネート材101から反対方向に突出されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 非水電解質デバイス
101 ラミネート材
103 電解液
1 タブリード
2 リード端子
3 フィルム部
4 端子本体
5 被膜
6 第1の密着層
7 第2の密着層