(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】再充電可能バッテリのためのハウジング
(51)【国際特許分類】
H01M 50/112 20210101AFI20240827BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240827BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240827BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/6595 20140101ALI20240827BHJP
H01M 50/116 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/122 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/509 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240827BHJP
【FI】
H01M50/112
H01M10/052
H01M10/058
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/658
H01M10/6595
H01M50/116
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/122
H01M50/342 101
H01M50/507
H01M50/509
H01M50/528
H01M50/531
(21)【出願番号】P 2021505287
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019043643
(87)【国際公開番号】W WO2020028168
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-28
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515097340
【氏名又は名称】カデンツァ・イノベーション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジャイ・ジエ
(72)【発明者】
【氏名】オンネル,トード・パー・ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン,リチャード・ブイ・ザ・セカンド
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】稲葉 崇
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524240(JP,A)
【文献】特開2006-185692(JP,A)
【文献】特開2017-162711(JP,A)
【文献】国際公開第2017/106524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/342
H01M 50/502-50/531
H01M 10/613-10/6595
H01M 10/052-10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアリチウムイオンバッテリであって、
中空空間および内部体積を画定する基部と複数の側壁とを含むハウジングであって、複数のキャビティが、ハウジングの内部体積の中に形成される、ハウジングと、
ハウジングの内部体積を封じるように、基部に実質的に揃った様態で、ハウジングに対してマウントされる第1のかぶせプレートと、
ハウジングの中に位置付けされる複数のリチウムイオンコア部材であって、複数のリチウムイオンコア部材の各々が、複数のキャビティのうちの1つの中に配置される、複数のリチウムイオンコア部材と、
リチウムイオンコア部材のうちの1つ以上に近接しているように、中空空間内に配置される、充填材材料と
を含み、
複数のキャビティが実質的にU字形であり、
中空空間が複数のU字形のキャビティとハウジングの基部との間に画定され、
中空空間の少なくとも一部分が、充填材材料によって充填され、
充填材材料が、吸熱特性を呈する1つ以上の構成成分を含む、マルチコアリチウムイオンバッテリ。
【請求項2】
複数のリチウムイオンコア部材の各々と連通している、共有される雰囲気領域を構成する領域が、ハウジングと第1のかぶせプレートとの間に画定される、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項3】
充填材材料が、液体、発泡体、中空媒体、高密度媒体、規則的な形の媒体、不規則な形の媒体、および、それらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項4】
ハウジングが筐体を画定し、
電気コネクタがハウジングに対してマウントされ、その中で、リチウムイオンコア部材を、筐体の外部の電気端子に電気的に接続し、
前記電気コネクタが、2つのバスバーを含み、第1のバスバーが、前記コア部材のアノードを、筐体の外部の端子の負端子部材に相互接続し、第2のバスバーが、前記リチウムイオンコア部材のカソードを、筐体の外部の端子の正端子部材に相互接続する、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項5】
リチウムイオンコア部材が、並列に接続される、請求項4に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項6】
リチウムイオンコア部材が、直列に接続される、請求項4に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項7】
リチウムイオンコア部材の第1のセットが、並列に接続され、リチウムイオンコア部材の第2のセットが、並列に接続され、リチウムイオンコア部材の第1のセットが、リチウムイオンコア部材の第2のセットと直列に接続される、請求項4に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項8】
ハウジングが筐体を画定し、筐体が気密封止される、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項9】
複数のキャビティの各々が、その内側表面上の表面めっきを含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項10】
充填材材料を、中空空間内へと注入するためのポートをさらに含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項11】
ハウジングが、熱および電気伝導性材料から製作される、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項12】
あらかじめ決定されたしきい値より上のハウジングの中の圧力増加を和らげるための圧力ベントをさらに含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項13】
めっき材料が、ニッケル、亜鉛、および、それらの組み合わせからなるグループから選択される、請求項9に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項14】
ハウジング、第1のかぶせプレート、および充填材材料のうちの少なくとも1つが、断熱鉱物材料から少なくとも部分的に製作される、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項15】
断熱鉱物材料が、アルカリアースシリケートウール、玄武岩繊維、アスベスト、火山ガラス繊維、繊維ガラス、気泡ガラス、および、それらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項14に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項16】
断熱鉱物材料が、ナイロン、PVC、PVA、アクリルポリマー、および、それらの任意の組み合わせからなるグループから選択される結合材料をさらに含む、請求項14に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項17】
ハウジングの中に位置付けされ、複数のキャビティを画定する、支持部材をさらに含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項18】
支持部材が、少なくとも部分的に中空である、請求項17に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項19】
中空支持部材の少なくとも一部分が、充填材材料によって充填される、請求項18に記載のリチウムイオンバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年7月30日に出願され、シリアル番号第62/711,791号を割り当てられた、「Housing for Rechargeable Batteries」と表題を付けられた米国仮出願に対する優先権利益を主張するものである。本出願人は、前述の仮特許出願の内容を引用により本明細書に組み込んでいる。
【0002】
本開示は、リチウムイオンバッテリに関し、より詳細には、改善された安全性と、低減された製造コストとを有するマルチコアリチウムイオンバッテリに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリなどの電気化学電力セル(electro-chemical power cell)に対する需要は、電動車両およびグリッド貯蔵システムなどの用途、ならびに、電動バイク、無停電電力バッテリシステム、および鉛酸交換バッテリなどの他のマルチセルバッテリ用途の発展に起因して、絶えず増大している。エネルギー密度および電力密度が高いということが、これらの用途に対する要件であるが、より多くではないにしても、まさに同じほど重要なのが、広範な商業的採用を可能にするための、低コスト製造、および、増大した安全性の要件である。これらのバッテリのエネルギー対電力比を、用途のその比に合わせて調整する(tailor)ことの必要性がさらに存する。
【0004】
大型形式用途であるグリッド貯蔵および電動車両に対して、直列および並列アレイの形で接続される多数のセルが要される。セルの供給業者は、各単一のセルに対して10Ah(アンペア時)より多いと本明細書において定義される大型セル、または、10Ahより少ないと本明細書において定義される小型セルのいずれかに焦点を合わせている。積層またはラミネート加工された電極を含む、角柱セルまたはポリマーセルなどの大型セルが、LG Chemical、AESC、ATL、および、他の販売業者により作製される。18650もしくは26650円筒形セル、または、183765もしくは103450セルなどの角柱セルなどの小型セル、および、他の同様のサイズのものが、Sanyo、Panasonic、EoneMoli、Boston-Power、Johnson Controls、Saft、BYD、Gold Peak、および、その他により作製される。これらの小型セルは、しばしば、長楕円形または円筒形の形状のジェリーロール構造を利用する。いくつかの小型セルは、大型セルと同様に、積層された電極を伴う、ただし、より少ない容量のポリマーセルである。
【0005】
既存の小型セルバッテリおよび大型セルバッテリは、いくつかの重大な欠点を有する。18650セルなどの小型セルに関しては、セルは、典型的には筐体または「缶」により閉じ込められるという不利な点を有し、そのことは、部分的には機械的応力または電解質枯渇に起因して、サイクル寿命およびカレンダー寿命に対する制限を引き起こす。リチウムイオンバッテリが充電される際、電極は膨張する。缶のために、電極のジェリーロール構造は閉じ込められ、機械的応力がジェリーロール構造内で発生し、そのことが、その寿命サイクルを制限する。ますます多くの貯蔵容量が所望されるにつれて、より多くの活性アノード材料およびカソード材料が、所与の体積の缶内へと挿入されており、そのことは、電極へのさらなる機械的応力を結果的に生じさせる。
【0006】
また、小型セル内の電解質の量を増大する能力が制限され、リチウムがインターカレートおよび脱インターカレート(de-intercalate)する際、電極の動きが、電解質をジェリーロールから絞り出す。このことは、電極が、電解質が枯渇されることを引き起こし、そのことは、電力排出(power drain)の間のリチウムイオンの濃度勾配、および、電極のドライアウトを結果的に生じさせ、それらのことは、副反応、および、イオン経路を塞ぐ乾いた領域を引き起こして、バッテリ寿命を悪化させる。これらの問題を克服するために、とりわけ、長寿命バッテリのために、ユーザは、充電の状態を低下させること、セルの利用可能な容量を制限すること、または、充電レートを低下させることにより、性能を落とさなければならない。
【0007】
機械的な面で、小型セルは、大型アレイへと組み立てるのは困難であり、コストがかかる。複雑な溶接パターンが、溶接失敗に対する潜在的可能性を最小化するために作られなければならない。溶接失敗は、低下された容量、および、失敗した溶接接続部においての潜在的発熱を結果的に生じさせる。アレイ内のセルがより多いほど、失敗リスクはより高くなり、製造歩留まりはより低くなる。このことは、より高い製品コストおよび保証コストに転換される。溶接および内部短絡においての失敗問題によるのみではなく、また、小型セルのパッケージングにおいての、関連付けられる潜在的安全性の問題がまた存する。小型セルの適切なパッケージングが、1つのセルの故障の結果としてのカスケーディング熱暴走を回避するために要される。そのようなパッケージングは、増大したコストを結果的に生じさせる。
【0008】
大型セルに対して、不利な点は、主として、安全性、低体積容量(volumetric capacity)および重量容量(gravimetric capacity)、ならびに、コストがかかる製造方法に関するものである。大面積電極を有する大型セルは、より小型のセルと比較して、低製造歩留まりの難点がある。大型セル電極上に欠陥が存するならば、より多くの材料が浪費され、総体的な歩留まりは、小型セルの製造と比較して低い。例えば、5Ahセルと比較して、50Ahセルを取り上げる。50Ahセル内の欠陥は、障害の間に作り出されるAhの見地において、生産の両方の方法に対する欠陥が同じレートで発生するとしても、5Ahセルと比較して、10x材料損失を結果的に生じさせる。
【0009】
ジェリーロールは、典型的には、カソード電流集電体(collector)およびアノード電流集電体それぞれに接続するタブの1つ以上の対を有する。これらのタブは、同じように、正端子および負端子に接続される。タブは、一般的には、特定の距離だけジェリーロールから外に延伸し、そのことは、セル内にいくらかの空隙空間を生成し、バッテリのエネルギー密度を低減する。さらにまた、ハイブリッド電動車両(HEV)などの、Liイオンバッテリの高電力用途に対して、高電流排出が要される。この場合、タブの1つの対は、高電流負荷を搬送するのに十分でないことがあり、なぜならば、その電流負荷は、タブにおいての過度に高い温度を結果的に生じさせ、安全性に対する懸念を引き起こすことになるからである。これらの問題に対処するための様々な解決策が、従来技術において提案された。
【0010】
米国特許第6,605,382号は、カソードおよびアノードに対する多数のタブを開示している。これらのタブは、正バスバーおよび負バスバーに接続される。タブは、一般的には、カソード電流集電体およびアノード電流集電体上に溶接されるので、多数のタブは、ジェリーロール製作、特に巻回プロセスを非常に込み入ったものにし、そのことは、バッテリコストを増大する。加えて、タブが電流集電体上へと溶接されるエリアは、活性材料コーティングを有さないので、多数のタブ構成は、バッテリのエネルギーを低減する。
【0011】
多数のタブにより引き起こされるこれらの問題を解決するために、Liイオンジェリーロール内にタブを伴わない解決策が、特許文献において提案されており、高電力Liイオンセルおよびウルトラキャパシタセルに対して現在使用されている。これらの解決策の核心部分は、ジェリーロールの両方の端部において、コーティングされない裸のカソード電流集電体エリアおよびアノード電流集電体エリアを伴うジェリーロールを作製し、電流を収集するために、これらの端部において遷移構造的構成要素を溶接することである。
【0012】
米国特許第8,568,916号は、Al円板およびCu円板の形態をとる遷移的な電流集電体構成要素を開示している。これらの円板は、金属ストリップ導線によって正端子および負端子に接続される。同様の概念が、米国特許第6,653,017号、米国特許第8,233,267号、米国特許出願公開第2010/0316897号、および米国特許出願公開第2011/0223455号において、開示および教示されている。これらの開示は、タブをジェリーロール内のカソードおよびアノードから無くし得るが、ジェリーロールの両方の端部において正電流集電体および負電流集電体を端子に接続するための追加的な手段が要され、そのことは、タブを有する従前のLiイオンセルにおいてよりは少ないが、依然として空隙空間をセル内に残す。このことは、セルエネルギー密度を落とす。さらにまた、これらの解決策は、単一ジェリーロールセルにおいて使用されるのみである。
【0013】
米国特許第6,605,382号は、アルミニウム円筒に溶接される円板上へと直接的に溶接される、多数のカソードタブが接続される正バスバーを開示している。このことは、缶底部に対する必要性を無くし、セル体積および重量を低減する。しかし、その開示は、多数タブシステムに対して使用されるのみである。
【0014】
いくつかの刊行物が、多数の小型セルを並列に接続することにより、大容量ユニットを作り上げるための手段を開示している。セルタブおよびバスバーを、適切に配置構成および構成するため、これらの解決策に対する課題が存し、それらは、低バッテリエネルギー密度、低電力密度、高コスト、および、低安全性の難点がある。米国特許第8,088,509号において、多数のジェリーロールが、個々の金属シェル内に位置付けされる。ジェリーロールからのタブは、正バスバーおよび負バスバーに接続される。米国特許第5,871,861号において、複数の単一ジェリーロールが、並列に接続される。それらの正タブおよび負タブは、正バスバーおよび負バスバーに接続される。WO2013/122448において、カソードプレートおよびアノードプレートを積層することにより形成される多数のジェリーロール積層体からなるLiイオンセルが開示されている。カソードタブおよびアノードタブは、正バスバーおよび負バスバーそれぞれに接続される。前述の従来技術開示において、巻回または電極積層により形成される多数のジェリーロールは、多数のタブおよびバスバーを有し、金属ケーシング内に収容される。
【0015】
PCT/US2013/064654において、新しいタイプのマルチコアLiイオン構造が開示されている。これらの構造のうちの1つにおいて、複数のジェリーロールが、個々のジェリーロールに対するライナを伴うハウジング内に位置付けされる。個々のジェリーロールからのタブは、正バスバーおよび負バスバーに接続される。
【0016】
大型セルに対する別の問題は安全性である。熱暴走へと進むセル内で放出されるエネルギーは、セルの内側に留まる、および、熱暴走シナリオの間に利用しやすい、電解質の量に比例する。セルがより大型なほど、より多くの自由空間が、電極構造を十二分に浸すために、電解質に対して利用可能である。大型セルに対するWhあたりの電解質の量は、典型的には、小型セルより大きいので、大型セルバッテリは、一般的には、熱暴走の間は、より強力なシステムであり、それゆえに、より安全でない。当然ながら、いかなる熱暴走も、特定のシナリオに依存することになるが、一般的には、燃料(電解質)がより多いほど、炎火は、破局的事象の場合において、より猛烈である。加えて、大型セルが熱暴走モードになると、セルにより作り出される熱は、隣接したセルにおいて熱暴走反応を誘導して、パックおよび周辺機器に対する大規模な破壊、ならびに、ユーザに対する安全でない状況を伴う、パック全体を発火させるカスケーディング効果を引き起こし得る。
【0017】
例えば、様々なタイプのセルが、熱暴走状況において600-900℃の領域内の温度を作り出すことを示されている[Andrey W.Golubkovら、Thermal-runaway experiments on consumer Li-ion batteries with metal-oxide and olivin-type cathodes RSC Adv.、2014、4、3633-3642]。そのような高温度は、隣接した燃焼性物質を発火させ、そのことにより、炎火災害を起こし得る。高まった温度は、また、いくつかの材料が、分解し(decompose)、ガスを生成し始めることを引き起こし得る。そのような事象の間に生成されるガスは、有毒および/または可燃性であり得るものであり、制御されない熱暴走事象と関連付けられる災害をさらに増大する。
【0018】
リチウムイオンセルは、高揮発性および可燃性を有する有機電解質を使用し得る。そのような電解質は、150℃から200℃の領域内で開始する温度において化学分解する(break down)ことを開始する傾向があり、いかなる事象においても、化学分解が開始する前でさえ、かなりの蒸気圧力を有する。化学分解が始まると、作り出されるガス混合物(典型的には、CO2、CH4、C2H4、C2H5F、および、他のものの混合物)は発火することがある。電解質の化学分解時のそのようなガスの生成は、圧力の増大に至り、ガスは、一般的には、雰囲気に対してベントされるものであり、しかしながら、このベンティングプロセスは危険であり、なぜならば、空気によるガスの希釈は、爆発性の燃料-空気混合物の形成に至ることがあり、その混合物は、発火するならば、当該のセル内へと戻るように炎上して、全配置構成を発火させることがあるからである。
【0019】
難燃性(flame retardant)添加剤を電解質内へと組み込むこと、または、本来的に不燃性の電解質を使用することが提案されているが、このことは、リチウムイオンセルの効率を落とすことがある[E.Peter Rothら、How Electrolytes Influence Battery Safety、The Electrochemical Society Interface、Summer 2012、45-49]。
【0020】
可燃性ガスに加えて、化学分解は、また、有毒ガスを放出し得るということが留意されるべきである。
【0021】
熱暴走の問題は、複数のセルを含むバッテリにおいて、度を増し、なぜならば、隣接したセルは、それらの設計された動作温度より上に上昇するのに充分なエネルギーを事象から吸収し、そのため、熱暴走へと入り込むことをトリガされ得るからである。このことは、貯蔵デバイスが、1つのセルが隣接したセルを発火させるので、熱暴走のカス―ディングシリーズへと入り込む、連鎖反応を結果的に生じさせることがある。
【0022】
そのようなカスケーディング熱暴走事象が発生することを防ぐために、貯蔵デバイスは、貯蔵されるエネルギーを十分に低く保つこと、または、セルの間に、それらを、隣接したセル内で発生し得る熱的事象から絶縁するのに充分な絶縁物を用いること、または、それらの組み合わせを行うように設計され得る。前者は、そのようなデバイス内に潜在的に貯蔵され得るエネルギーの量を厳しく制限する。後者は、どれだけ密接にセルが配設され得るかを制限し、そのことにより、実効エネルギー密度を制限する。
【0023】
現在、エネルギー密度を最大化し、一方で、カスケーディング熱暴走のないようにガードするための、設計者により用いられるいくつかの異なる方法論が存する。1つの方法は、冷却機構を用いることであり、その冷却機構により、熱的事象の間に放出されるエネルギーは、影響を及ぼされるエリアから能動的に除去され、別の場所において、典型的には貯蔵デバイスの外側で放出される。この手法は、能動的保護システムと考えられ、なぜならば、その成功は、有効であるために、別のシステムの機能に頼るからである。そのようなシステムは、それが別のシステムによる介入を必要とするので、フェールセーフではない。冷却システムは、また、重量を総合的なエネルギー貯蔵システムに追加し、そのことにより、貯蔵デバイス使用されて、運動をもたらす、貯蔵デバイスの用途(例えば、電動車両)に対する、貯蔵デバイスの有効性を低減する。冷却システムが貯蔵デバイスの中で押しのける空間は、また、達成され得るポテンシャルエネルギー密度を低減し得る。
【0024】
カスケーディング熱暴走を防ぐために用いられる第2の手法は、熱的事象の間の熱的熱伝達のレートが、熱が典型的には伝導によりセルの熱的質量全体を通して拡散されることを可能とするのに足りる程度に十分に低いように、十分な量の絶縁物を、セルまたはセルのクラスタの間に組み込むことである。この手法は、受動的方法と考えられ、一般的には、安全性観点から、より所望されると思われる。この手法において、要される絶縁物の質量と結び付けられる、熱を含む絶縁材料の能力が、達成され得るエネルギー密度の上限を定める。
【0025】
第3の手法は、相変化材料の使用によるものである。これらの材料は、特定の高まった温度に達したときに、吸熱相変化を経る。吸熱相変化は、生成されている熱の一部分を吸収し、そのことにより、局所的な領域を冷却する。この手法は、また、元来受動的であり、機能するために、外側の機械的システムに頼らない。典型的には、電気的貯蔵デバイスに対して、これらの相変化材料は、例えばワックスおよび脂肪酸などの炭化水素材料に頼る。これらのシステムは、冷却において有効であるが、それら自体が、燃焼性が高く、それゆえに、貯蔵デバイスの中での発火がひとたび発生すると、熱暴走を防ぐことにおいて有益ではない。
【0026】
カスケーディング熱暴走を防ぐための第4の方法は、膨張性材料の組み込みによるものである。これらの材料は、指定された温度より上で膨張して、軽量であるように、および、必要とされるときに断熱をもたらすように設計される炭化物を作り出す。これらの材料は、絶縁のためになることをもたらすことにおいて有効であり得るが、材料の膨張は、貯蔵デバイスの設計において対処しなければならない。
【0027】
加えて、リチウムイオンセルの熱暴走の間、またLiPF6塩を含む炭酸塩電解質は、一般的には、毒性の見地においてのみではなく、また可燃性の見地においても、危険なガス混合物を作るものであり、なぜならば、ガスは、H2、CH4、C2H6、CO、CO2、O2、その他を含むからである。そのような混合物は、雰囲気に対してセルをベントするときに、特に可燃性になる。実際、臨界的な酸素濃度が混合物において達されるとき、ガスは発火し、セル内へと戻るように炎上して、配置構成全体を発火させることがある。
【0028】
小型セルおよび大型セルの性能パラメータを互いに相対的に比較するとき、小型セルは、一般的には、大型セルと比較して、より高い重量容量(Wh/kg)および体積容量(Wh/L)を有するということが見いだされ得る。大型セルと比較して、容量およびインピーダンスに対するビニング技法を使用して、複数の小型セルをグループにし、そのことにより、生産操業時間の配分全体を、より効率的な方法で調和させることが、より容易である。このことは、バッテリパック大量生産の間の、より高い製造歩留まりを結果的に生じさせる。加えて、小型セルを体積的に効率的なアレイの形で配置構成することがより容易であり、アレイは、例えば1つのセル内の内部短絡により発火するバッテリパックのカスケーディング暴走反応(安全性問題に対する分野においての最もよくある問題のうちの1つ)を制限する。さらに、生産方法が、当業界により、高歩留まりにおいて良好に確立されており、故障率が低いので、小型セルを使用することのコスト上の利点が存する。機械類は、たやすく利用可能であり、コストは、製造システムから追い払われている。
【0029】
他方で、大型セルの利点は、バッテリパックOEMにとっての組立ての容易さであり、それらのOEMは、多数の問題に対処する必要なく、および、小型セルのアレイを組み立てるために要されるノウハウなしに、有効なパック製造を可能にする、使用するのにより容易である共通の電気機械コネクタ、および、明らかな、より少ないセルに対する空き場所をしばしば有する、より堅牢な大型形式構造を経験することができる。
【0030】
小型セルを使用することの利益の利点を活かして、より大型のサイズ、および、より高い電力/エネルギー能力の、ただし大型セルと比較してより良好な安全性およびより低い製造コストを伴う、バッテリを作るために、マルチコア(MC)セル構造での小型セルの組立体が開発されてきた。
【0031】
BYD Company Ltd.により開発された、1つのそのようなMCセル構造は、金属(アルミニウム、銅合金、またはニッケルクロム)から作製される1つの容器内へと統合されるMCのアレイを使用する。このアレイは、以下の文書:EP1952475A0、WO2007/053990、米国特許出願公開第2009/0142658A1号、CN1964126Aにおいて説明されている。BYD構造は、MCを包囲する金属性材料のみを有し、それゆえに、鋭利な物体にコア内へと貫入させ、局所的な短絡を引き起こさせるという機械的衝撃の間の、不利な点を有する。すべてのコアが、電解質がコアの間で共有される共通の容器内にある(個々の缶内にない)ので、製造欠陥または外部的誤用からの、何らかの個々の故障の他のコアへの伝搬、および、MC構造の破壊は、可能性が大きい。そのようなセルは、安全でない。
【0032】
多数の電気化学セルの組立体内の熱暴走を防ぐための方法が、米国特許出願公開第2012/0003508A1号において説明されている。この特許出願において説明されるMC構造内で、個々のセルは、並列または直列に接続され、各セルは、セル自体の缶の中に含まれるジェリーロール構造を有する。これらの個々のセルは、次いで、防火性(fire retardant)添加剤を含む硬質発泡体によって充填される容器内へと挿入される。これらの安全性対策は、緩和材料の過剰なコストに部分的に起因して、作り出すのにコストがかかり、エネルギー密度を制限する。
【0033】
別のMC構造が、米国特許出願公開第2010/0190081A1号およびWO2007/145441A1において説明されており、それらは、単一のバッテリにより2つ以上の電圧を提供する、複数のセルを伴う2つ以上の積層されたタイプの2次バッテリの使用を開示している。この配置構成において、単一のセルは、筐体の中で直列に、および、セパレータを使用した様態で接続される。直列の要素は、より高い電圧のセルを作るのみであるが、規則的に積層されたタイプの単一の電圧セルと比較して、何らの安全性問題またはコスト問題も解決しない。
【0034】
相転移材料ベースの熱的管理マトリックスが、米国特許第8,273,474号において開示されている。この特許において、複数のセルが、相転移材料を含む熱的管理マトリックス内に封じられる。温度が相転移温度に達するとき、システム内のいくらかの熱は、相転移に起因して吸収されることになる。
【0035】
米国特許出願公開第2011/0159341A1号が、成型体の外表面の温度増大を抑制するために、2次バッテリと成型体の内表面との間に、温度増大抑制層を含むという解決策を開示している。層は、熱分解によって熱を吸収する熱吸収剤を含む。
【0036】
これらのMCタイプバッテリは、大型セルバッテリにまさる特定の利点をもたらすが、それらは、依然として、安全性およびコストにおいての特定の短所を有する。加えて、Liイオンバッテリエネルギー密度を増大すること、コストを低減すること、および、安全性を改善することの点から、(i)タブおよびライナを無くし、(ii)正電流集電体および正バスバーの両方を一緒に統合し、(iii)負電流集電体および負バスバーの両方を一緒に統合し、(iv)正電流集電体およびバスバーにおいての迅速な熱減少を可能とすることが、低下させられるコスト、および、より高い性能のために望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【文献】米国特許第6,605,382号明細書
【文献】米国特許第8,568,916号明細書
【文献】米国特許第6,653,017号明細書
【文献】米国特許第8,233,267号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0316897号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0223455号明細書
【文献】米国特許第8,088,509号明細書
【文献】米国特許第5,871,861号明細書
【文献】国際公開第2013/122448号
【文献】米国特許出願公開第2013/064654号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1952475明細書
【文献】国際公開第2007/053990号
【文献】米国特許出願公開第2009/0142658号明細書
【文献】中国特許出願公開第1964126号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0003508号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0190081号明細書
【文献】国際公開第2007/145441号
【文献】米国特許第8,273,474号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0159341号明細書
【文献】国際公開第2017/106349号
【文献】米国特許第5,198,473号明細書
【文献】米国特許第7,358,009号明細書
【文献】韓国特許出願公開第2007/001729号明細書
【文献】国際公開第2012/011785号
【非特許文献】
【0038】
【文献】Andrey W.Golubkovら、Thermal-runaway experiments on consumer Li-ion batteries with metal-oxide and olivin-type cathodes RSC Adv.、2014、4、3633-3642
【文献】E.Peter Rothら、How Electrolytes Influence Battery Safety、The Electrochemical Society Interface、Summer 2012、45-49
【文献】Polyurethanes Handbook、Hanser Gardner Publications刊行
【文献】http://ecopro.co.kr/xe/?mid=emenu31、日付2010年10月1日現在
【文献】Y-K Sun、ElectrochimicaActa 第55巻、第28号、8621-8627頁
【文献】Nature Materials 8(2009) 320-324頁(YK Sunらによる論文)
【文献】J.Liuら、J.of Materials Chemistry 20(2010) 3961-3967
【文献】ST Myungら、Chemistry of Materials 17(2005) 3695-3704
【文献】S.T.Myungら J.of Physical Chemistry C 111(2007) 4061-4067
【文献】ST Myungら J.of Physical Chemistry C 1154(2010) 4710-4718
【文献】BC Parkら、J.of Power Sources 178(2008) 826-831
【文献】J.Choら、J of Electrochemical Society 151(2004) A1707-A1711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本開示は、低減された生産コストと、改善された安全性とを有し、一方で、エネルギー密度および電力密度を最大化する、有利なマルチコアリチウムイオンバッテリ構造を提供する。本明細書において開示される有利なシステムは、マルチコアセル構造およびマルチセルバッテリモジュールにおいての適用可能性を有する。下記で説明されるLiイオン構造は、また、大部分の場合において、ジェリーロールなどの活性コア、および電解質を使用する、他の電気化学ユニットに対して使用され得るということが、当業者により理解される。
【課題を解決するための手段】
【0040】
例示的な実施形態において、そのアノード電極およびカソード電極から来る正電流集電体および負電流集電体に接続される、多数のコアの組立体を含む、リチウムイオンバッテリが提供される。リチウムイオンバッテリは、複数のジェリーロールと、正電流集電体および負電流集電体と、ハウジングとを含む。ハウジングは、熱および電気伝導性である材料から製作され、または、熱および電気伝導性である材料によってコーティングされ得る。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、および、それらの任意の組み合わせである。いくつかの例において、アルミニウムは、プラスチックまたはセラミックス上にコーティングされ得る。他の例において、ニッケルは、金属、例えば、より低い熱および/または電気伝導率を伴う金属(例えば、鋼)上にコーティングされ得る。
【0041】
ハウジングは、複数のキャビティと、複数のキャビティのうちの対応する1つの中に配置される複数のリチウムイオンコア部材とを含み得る。ジェリーロールおよびリチウムイオンコア部材は、本開示の全体を通して互換的に使用されることがある。本明細書において使用される際のリチウムイオンコア部材/ジェリーロールは、カソードと、アノードと、セパレータとを含む、バッテリ内の最も小さい独立した電気化学エネルギー貯蔵ユニットの意味をもたされる。キャビティは、下記でより詳細に論考されるように、所望される向きによって分布させられ得る。1つの例において、各キャビティは、同様にサイズ設定されたジェリーロールを含むために、実質的に同様の直径を有する。別の例において、キャビティは、様々にサイズ設定されたジェリーロールを含むために、実質的に異なる直径を有する。ハウジングは、リチウムイオンバッテリの外壁をさらに画定し得る。
【0042】
1つの実施形態において、ジェリーロールは、多数のジェリーロールに電気的に接合している負バスバーまたは正バスバー上へと直接的に溶接される、少なくとも1つの裸の電流集電体エリアを有する。別の実施形態において、ジェリーロールの裸の電流集電体エリアのうちの少なくとも1つは、その接続のためのバスバーを使用することなく、包囲するケース構造上へと直接的に溶接される。この場合、ケースは、バスバーとして機能する。このことは、ケースすなわち金属缶に直線的にロールを溶接することによって、または、電流集電体を使用することによってのいずれかで遂行され得るものであり、電流集電体を使用する場合、ジェリーロールは、缶構造上へと溶接される電流集電体と接触している。Liイオンバッテリに対して、裸のアノード電流集電体は、一般的にはCu箔であり、裸のカソード電流集電体は、一般的にはAl箔である。裸の電極が上へと溶接される金属プレートは、負バスバー(またはNBB)と呼称され、ジェリーロール内の、バーカソードが接続されるバスバー端部は、正バスバー(またはPBB)と呼称される。
【0043】
1つの実施形態において、ハウジングは、対応するリチウムイオンコア部材に対する複数のキャビティを画定する。ハウジングと関連付けられるのが、リチウムイオンバッテリの外壁を画定するパネルである。パネルは、ハウジングの延伸部であり得るものであり、または、従前の取り付け手順(例えば、溶接、留め具、接着剤)を使用して取り付けられ得る。カバーが、ハウジングに直接的または間接的に関係し得る。ハウジングは、カバーと電気的に連通し得る。タブが、リチウムイオン部材カソードをハウジングに、具体的には、対応するキャビティの基部に接続し得る。リチウムイオンコア部材のアノードは、カバーの内側上に据えられるNBBに直接的または間接的に関係し得る。カバーをNBBから、および、ハウジングをNBBから絶縁するために電気伝導性でない材料が、NBBを包囲し得、それらのカバーおよびハウジングの両方は、正に帯電している。設置されるとき、ハウジングおよびカバーは、筐体の中に気密封止された雰囲気を作り得る。カバーは、そのカバーに対してマウントされる、正に帯電している端子を含み得るものであり、負端子は、カバーを通してアクセス可能であり得る。
【0044】
別の実施形態において、上記で例解された組立体は、複数のキャビティを包囲する充填材をさらに含み得る。具体的には、複数のキャビティは、熱吸収材料によって包囲され得る。熱吸収材料は、防火性能力をさらにもたらし得る。充填材は、発泡体もしくは液体の形態でハウジング内へと注入され得、または、カバーの設置より前に開口部を通して含められるペレットであり得る。
【0045】
なおも別の実施形態において、ハウジングは、対応するリチウムイオンコア部材に対する複数のキャビティを画定する。ハウジングは、側壁と、側壁に関係して垂直に延伸する基部とを含む。カバーが、ハウジングに直接的または間接的に関係し得る。タブが、リチウムイオン部材カソードをハウジングに、具体的には、対応するキャビティの基部に接続し得る。リチウムイオンコア部材のアノードは、NBBに直接的または間接的に関係し得る。設置されるとき、ハウジングおよびカバーは、筐体の中に気密封止された雰囲気を作り得る。NBBは、気密封止された筐体の外側に据えられ、カバー/ハウジングから絶縁され得る。カバーは、そのカバーに対してマウントされる、正に帯電している端子を含み得るものであり、NBBは、絶縁体により分離されて、カバーに密接に近接してマウントされ得る。
【0046】
なおも別の実施形態において、ハウジングは、対応するリチウムイオンコア部材に対する複数のキャビティを画定する。ハウジングは、側壁と、側壁に関係して垂直に取り付けられる基部とを含む。カバーが、ハウジングに直接的または間接的に関係し得る。ハウジングは、カバーと電気的に連通し得る。電流集電体が、リチウムイオンコア部材のカソードと、複数のキャビティの各々の基部との間に据えられ得る。リチウムイオンコア部材のアノードは、カバーの内側上に据えられるNBBに直接的または間接的に関係し得る。カバーをNBBから、および、ハウジングをNBBから絶縁するために、電気伝導性でない材料がNBBを包囲し得、それらのカバーおよびハウジングの両方は、正に帯電している。設置されるとき、ハウジングおよびカバーは、筐体の中に気密封止された雰囲気を作り得る。カバーは、そのカバーに対してマウントされる、正に帯電している端子を含み得るものであり、負端子は、カバーを通してアクセス可能であり得る。
【0047】
別の実施形態において、電解質充填のための開口部を可能とするための、NBBの各個々のジェリーロールの位置に対応するスリット開口部が存する。このことは、いくつかの場合に対して、電解質がジェリーロールそれ自体により含まれることを可能とし、金属ライナまたはプラスチックライナなどの追加的な電解質含有構成要素は必要とされない。ジェリーロールの各々の中に含まれる電解質がさらに含まれ、電解質は、難燃剤、ガス生成剤、およびレドックスシャトルのうちの少なくとも1つを含む。各リチウムイオンコア部材は、アノードと、カソードと、各アノードとカソードとの間に配置されるセパレータとを含む。コア部材を封止された筐体の外部の電気端子に電気的に接続する、前記筐体の中の電気コネクタがさらに含まれる。電気コネクタは、2つのバスバーを含み、第1のバスバーは、コア部材のアノードを、筐体の外部の端子の正端子部材に相互接続し、第2のバスバーは、コア部材のカソードを、筐体の外部の端子の負端子部材に相互接続する。
【0048】
本開示の別の態様において、コア部材は、並列に接続され、または、コア部材は、直列に接続される。代替的には、コア部材の第1のセットが、並列に接続され、コア部材の第2のセットが、並列に接続され、コア部材の第1のセットは、コア部材の第2のセットと直列に接続される。筐体は圧縮可能要素を有する壁を含み、圧縮可能要素は、その壁に衝撃を与える力に起因して圧縮されるときに、リチウムイオンバッテリの電気的短絡を作る。ハウジング内のキャビティ、および、それらの対応するコア部材は、形状において、円筒形、長楕円形、および角柱のうちの1つである。キャビティのうちの少なくとも1つ、および、その対応するコア部材は、他のキャビティ、および、それらの対応するコア部材とは異なる形状を有し得る。
【0049】
本開示の別の態様において、コア部材のうちの少なくとも1つは、高電力特性を有し、コア部材のうちの少なくとも1つは、高エネルギー特性を有する。コア部材のアノードは、同じ材料から形成され、コア部材のカソードは、同じ材料から形成される。各セパレータ部材は、セラミックコーティングを含み得、各アノード、および、各カソードは、セラミックコーティングを含み得る。コア部材のうちの少なくとも1つは、他のコア部材のアノードおよびカソードの厚さとは異なる厚さの、アノードおよびカソードのうちの1つを含む。少なくとも1つのカソードは、材料の化合物AからMグループのうちからの少なくとも2つを含む。各カソードは、表面改質剤(modifier)を含む。各アノードは、Li金属、または、炭素もしくはグラファイトのうちの1つを含む。各アノードは、Siを含む。各アノードは、チタン酸リチウム(Li2TiO3またはLi4Ti5O12など)をさらに含み得る。各コア部材は、ロールされたアノード、カソード、およびセパレータ構造を含み、または、各コア部材は、積層されたアノード、カソード、およびセパレータ構造を含む。
【0050】
本開示の別の態様において、コア部材は、実質的に同じ電気容量を有する。コア部材のうちの少なくとも1つは、他のコア部材と比較して、異なる電気容量を有する。コア部材のうちの少なくとも1つは、電力貯蔵に対して最適化され、コア部材のうちの少なくとも1つは、エネルギー貯蔵に対して最適化される。各アノードを第1のバスバーに電気的に接続するためのタブ、および、各カソードをハウジングに電気的に接続するためのタブがさらに含まれ、各タブは、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、各前記タブを通る電流の流れを中断するための手段を含む。第1のバスバーは、アノードから第1のバスバーの間の相互接続の各点に近接するヒューズ素子を、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、そのヒューズ素子を通る電流の流れを中断するために含み、ハウジングは、カソードからハウジングの間の相互接続の各点に近接するヒューズ素子を、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、そのヒューズ素子を通る電流の流れを中断するために含む。カソードは、バスバーにさらに接続され得るものであり、そのバスバーは、次いで、ハウジングに接続される。
【0051】
本開示のなおも別の態様において、検知ワイヤが、コア部材と電気的に相互接続され、コア部材の電気的監視および平衡化を可能にするように構成される。封止された筐体は、防火性部材を含み、防火性部材は、筐体の外側に付着させられる防火性メッシュ材料を含む。
【0052】
本開示の別の態様において、コアの各々の中に含まれる電解質が存し、電解質は、難燃剤、ガス生成剤、およびレドックスシャトルのうちの少なくとも1つを含む。各リチウムイオンコア部材は、アノードと、カソードと、各アノードとカソードとの間に配置されるセパレータとを含む。コア部材を、封止された筐体の外部の電気端子に電気的に接続する、筐体の中の電気コネクタがさらに含まれる。電気コネクタは、2つのバスバーを含み得、第1のバスバーは、コア部材のアノードを、筐体の外部の端子の正端子部材に相互接続し、第2のバスバーは、コア部材のカソードを、筐体の外部の端子の負端子部材に相互接続する。しかしながら、第2のバスバーは、無くされ得、コア部材のカソードは、直接的/間接的にハウジングに相互接続され得る。コア部材は、並列に接続され得る。コア部材は、直列に接続され得る。コア部材の第1のセットが、並列に接続され得、コア部材の第2のセットが、並列に接続され得、コア部材の第1のセットは、コア部材の第2のセットと直列に接続され得る。
【0053】
別の態様において、リチウム筐体は圧縮可能要素を有する壁を含み、圧縮可能要素は、その壁に衝撃を与える力に起因して圧縮されるときに、リチウムイオンバッテリの電気的短絡を作る。ハウジング内のキャビティ、および、それらの対応するコア部材は、形状において、円筒形、長楕円形、および角柱のうちの1つである。キャビティのうちの少なくとも1つ、および、その対応するコア部材は、他のキャビティ、および、それらの対応するコア部材と比較して、異なる形状を有し得る。コア部材のうちの少なくとも1つは、高電力特性を有し得、コア部材のうちの少なくとも1つは、高エネルギー特性を有し得る。コア部材のアノードは、同じ材料から形成され得、コア部材のカソードは、同じ材料から形成され得る。各セパレータ部材は、セラミックコーティングを含み得る。各アノード、および、各カソードは、セラミックコーティングを含み得る。コア部材のうちの少なくとも1つは、他のコア部材のアノードおよびカソードの厚さと比較して、異なる厚さの、アノードおよびカソードのうちの1つを含み得る。
【0054】
なおも別の態様において、少なくとも1つのカソードは、材料の化合物AからMグループのうちからの少なくとも2つを含む。各カソードは、表面改質剤を含み得る。各アノードは、Li金属、炭素、グラファイト、またはSiを含む。各アノードは、チタン酸リチウム(Li2TiO3またはLi4Ti5O12など)をさらに含み得る。各コア部材は、ロールされたアノード、カソード、およびセパレータ構造を含み得る。各コア部材は、積層されたアノード、カソード、およびセパレータ構造を含み得る。コア部材は、実質的に同じ電気容量を有することがある。コア部材のうちの少なくとも1つは、他のコア部材と比較して、異なる電気容量を有することがある。コア部材のうちの少なくとも1つは、電力貯蔵に対して最適化されることがあり、コア部材のうちの少なくとも1つは、エネルギー貯蔵に対して最適化されることがある。
【0055】
本開示の別の態様において、各アノードを第1のバスバーに電気的に接続するためのタブ、および、各カソードをハウジングに電気的に接続するためのタブがさらに含まれ、各タブは、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、各前記タブを通る電流の流れを中断するための手段/機構/構造を含む。第1のバスバーは、アノードから第1のバスバーおよびヒューズ素子の間の相互接続の各点に近接する、ならびに/または、カソードからハウジングの間の相互接続の各点に近接する、ヒューズ素子を、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、それらのヒューズ素子を通る電流の流れを中断するために含み得る。コア部材の各々を包囲する保護スリーブがさらに含まれ得、各保護スリーブは、その対応するコア部材を含むキャビティの外側に配置されることがある。
【0056】
本開示の別の実施形態において、検知ワイヤが、コア部材の電気的監視および平衡化を可能にするように構成されて、コア部材と電気的に相互接続される。封止された筐体は、防火性部材を含み得、防火性部材は、筐体の外側に付着させられる防火性メッシュ材料を含み得る。
【0057】
別の実施形態において、リチウムイオンバッテリが説明され、封止された筐体と、封止された筐体の中に配置される少なくとも1つのリチウムイオンコア部材とを含む。リチウムイオンコア部材は、アノードと、カソードとを含み、カソードは、化合物AからMのグループから選択される少なくとも2つの化合物を含む。1つのリチウムイオンコア部材のみが存し得る。封止された筐体は、ポリマーバッグであることがあり、または、封止された筐体は、金属キャニスタであり得る。各カソードは、化合物B、C、D、E、F、G、L、およびMのグループから選択される少なくとも2つの化合物を含み得、表面改質剤をさらに含み得る。各カソードは、化合物B、D、F、G、およびLのグループから選択される少なくとも2つの化合物を含み得る。バッテリは、4.2Vより高い電圧に充電され得る。各アノードは、炭素およびグラファイトのうちの1つを含み得る。各アノードは、Siを含み得る。
【0058】
なおも別の実施形態において、封止された筐体と、封止された筐体の中に配置される少なくとも1つのリチウムイオンコア部材とを有するリチウムイオンバッテリが説明される。リチウムイオンコア部材は、アノードと、カソードとを含む。筐体の中の電気コネクタが、少なくとも1つのコア部材を、封止された筐体の外部の電気端子に電気的に接続し、電気コネクタは、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、電気コネクタを通る電流の流れを中断するための手段/機構/構造を含む。電気コネクタは、2つのバスバーを含み、第1のバスバーは、コア部材のアノードを、筐体の外部の端子の正端子部材に相互接続し、第2のバスバーは、コア部材のカソードを、筐体の外部の端子の負端子部材に相互接続する。電気コネクタは、各アノードを第1のバスバータブに電気的に接続するための、および/または、各カソードを第2のバスバーに電気的に接続するためのタブをさらに含み得、各タブは、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、各タブを通る電流の流れを中断するための手段/機構/構造を含む。第1のバスバーは、アノードから第1のバスバーの間の相互接続の各点に近接するヒューズ素子を、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、ヒューズ素子を通る電流の流れを中断するために含み得、第2のバスバーは、カソードから第2のバスバーの間の相互接続の各点に近接するヒューズ素子を、あらかじめ決定された電流が超過されたときに、ヒューズ素子を通る電流の流れを中断するために含み得る。
【0059】
本開示は、なかんずく、例えば、熱/温度状況を管理し、潜在的熱暴走状況の可能性および/または大きさを低減することにより、バッテリの安全性および/または安定性に寄与する有利な吸熱機能性をもたらす材料を含むリチウムイオンバッテリをさらに提供する。本開示の例示的な実施形態において、吸熱材料/システムは、無機ガス生成吸熱材料を組み込むセラミックマトリックスを含む。開示される吸熱材料/システムは、下記でより詳細に説明されるように、様々な方法で、および、様々なレベルでリチウムバッテリ内へと組み込まれ得る。
【0060】
使用において、開示される吸熱材料/システムは、温度が、あらかじめ決定されたレベル、例えば、正常な動作と関連付けられる最大レベルより上に上昇するならば、吸熱材料/システムが、熱暴走を防ぐ、および/または、熱暴走に対する潜在的可能性を最小化するという目的のために、1つ以上の機能をもたらすように働くように動作する。例えば、開示される吸熱材料/システムは、有利には、以下の機能性のうちの1つ以上をもたらし得る:(i)断熱(特に、高温度においての)、(ii)エネルギー吸収、(iii)全部分において、もしくは部分的に、吸熱材料/システムと関連付けられる吸熱反応から作り出されるガスのベンティング、(iv)バッテリ構造の中の総圧力を上げること、(v)吸熱材料/システムと関連付けられる吸熱反応の間に作り出されるガスのベンティングによる、バッテリシステムからの吸収された熱の除去、ならびに/または、(vi)有毒ガス(存在するならば)の希釈、および、バッテリシステムからの有毒ガスの安全な駆逐(全部分においての、または部分的な)。吸熱反応と関連付けられるベントガスは、電解質ガスを希釈して、電解質ガスと関連付けられる発火点および/または可燃性を後ろに延ばすか、または無くす機会をもたらすということがさらに留意される。
【0061】
開示される吸熱材料/システムの断熱特性は、リチウムイオンバッテリシステムへのそれらの吸熱材料/システムの応用の異なる段階においての、特性に関するそれらの組み合わせにおいて有利である。作製された際の状態において、吸熱材料/システムは、小さい温度上昇の間、または、熱的事象の初期セグメントの間、断熱をもたらす。これらの相対的に低い温度において、絶縁機能性は、熱生成を含むように働き、一方で、制限される伝導が、熱的エネルギーを、熱的質量の全部分に徐々に拡散させることを可能とする。これらの低温度において、吸熱材料/システム材料は、いかなる吸熱ガス生成反応も経ないように選択および/または設計される。このことは、絶縁物、および/または、全部分としてのリチウムイオンバッテリに対するいかなる永続的な損傷も引き起こすことのない温度偏移を可能とするためのウィンドウをもたらす。リチウムイオンタイプ貯蔵デバイスに対して、偏移または低レベル上昇として関連付けられる一般的な範囲は、60℃から200℃の間である。記された温度範囲内で吸熱反応を控える無機吸熱材料/システムの選択によって、所望される高まった温度において第2の吸熱機能を始動させるリチウムイオンバッテリがもたらされ得る。かくして、本開示によれば、開示される吸熱材料/システムと関連付けられる吸熱反応は、60℃から、200℃よりかなり上までの温度範囲内で最初に始動させられるということが、一般的には所望される。本開示による使用のための例示的な吸熱材料/システムは、次のものを含み、ただし、それらに制限されない。
【0062】
【0063】
これらの吸熱材料は、典型的には、おそらくは他の炭酸塩または硫酸塩との組み合わせでの、ヒドロキシルまたは含水成分を含む。代替的な材料は、非含水炭酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩を含む。よくある例は、50℃より上で分解して、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、および水を与える、重炭酸ナトリウムである。リチウムイオンバッテリと関連付けられる熱的事象が、まさに、選択された吸熱ガス生成材料の吸熱反応に対する活性化温度より上の温度上昇を結果的に生じさせるならば、開示される吸熱材料/システム材料は、有利には、熱的エネルギーを吸収することを始め、そのことにより、リチウムイオンバッテリシステムに対する冷却および断熱の両方をもたらすことになる。可能なエネルギー吸収の量は、一般的には、配合物内へと組み込まれる吸熱ガス生成材料の量およびタイプ、ならびに、リチウムイオンバッテリの中のエネルギー生成の源に対する吸熱材料/システムの総体的な設計/位置付けに依存する。所与の用途に対する吸熱材料/システムの、追加の厳密な量、およびタイプは、絶縁材料が、残っている捕えられた熱をエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリの熱的質量の全部分に伝導することを吸収される熱が可能とするのに十分であるように、絶縁材料と共同して作用するように選択される。熱を全熱的質量に、制御された様式で分布させることにより、隣接したセルの温度は、臨界的な分解温度または発火温度より下に保たれ得る。しかしながら、絶縁材料を通る熱流れが大きすぎる、すなわち、エネルギー伝導がしきい値レベルを超過するならば、隣接したセルは、全部分としての質量が、貯蔵される熱を放散することができる前に、分解温度または発火温度に達することになる。
【0064】
これらのパラメータを念頭に置いて、900℃を超過する温度に達することがある、リチウムイオンバッテリシステムに対する典型的な熱的事象の温度範囲全体にわたって、本開示と関連付けられる絶縁材料は過剰な収縮に対して熱的に安定であるように設計および/または選択される。この絶縁に関係する要件は、広範囲で収縮し、300℃より上の温度において発火さえする、低融解ガラス繊維、炭素繊維、または充填材に基づく多くの絶縁材料と対照的である。この絶縁に関係する要件は、また、本明細書において開示される絶縁機能性を膨張性材料と区別するものであり、なぜならば、本発明で開示される材料は、膨張圧力に耐えるためのデバイス構成要素の設計を要さないからである。かくして、相変化材料を使用する他のエネルギー貯蔵絶縁システムとは違い、本開示の吸熱材料/システムは、有機でなく、ゆえに、高まった温度において酸素に暴露されるときに燃焼しない。その上、エネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリシステムからの熱を除去という、および、そのデバイス/システムからの何らかの有毒ガスを希釈するという、その二重の目的を伴う、開示される吸熱材料/システムによるガスの放出は、熱暴走状況を制御および/または回避することにおいて特に有利である。
【0065】
例示的な実施形態によれば、開示される吸熱材料/システムは、望ましくは、それらの吸熱材料/システムが内で使用されるエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリに対して、機械的強度および安定性をもたらす。開示される吸熱材料/システムは、高多孔性、すなわち、材料がわずかに圧縮可能であることを可能とする多孔性を有し得る。このことは、組立ての間は有益であり得、なぜならば、部品が一緒にプレス嵌合させられ得るものであり、そのことが、非常に緊密に保持されるパッケージを結果的に生じさせるからである。このことは、自動車の、航空宇宙の、および工業の環境に対して所望される、振動耐性およびショック耐性をもたらす。
【0066】
注目すべきは、開示される吸熱材料/システムの機械的特性は、一般的には、吸熱反応が始動させられる十分な大きさの熱的事象が発生するならば変化する。例えば、吸熱反応と関連付けられるガスの放出は、初期の組み立てられた際の圧力を維持する、吸熱材料/システムの機械的能力を低減し得る。しかしながら、この大きさの熱的事象を経るエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリは、一般的には、もはや役立たなくなり、それゆえに、機械的特性の変化は、大部分の用途に対して容認され得る。本開示の例示的な実施形態によれば、吸熱反応と関連付けられるガスの放出は、多孔質絶縁マトリックスを後に残す。
【0067】
開示される吸熱ガス生成吸熱材料/システムにより作り出されるガスは、CO2、H2O、および/または、それらの組み合わせを含む(ただし、それらに制限されない)。これらのガスの放出は、一連の後続の、および/または、関連付けられる機能をもたらす。第1に、上側正常動作温度と、より高いしきい値温度であって、それより上でエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリは、制御されない放電/熱暴走に陥りやすい、より高いしきい値温度との間でのガスの生成は、有利には、エネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリに対してベンティングシステムに開放することを強制する手段として機能することができる。
【0068】
ガスの生成は、熱的事象の間に生成される何らかの有毒蒸気および/または腐食性蒸気を部分的に希釈するように働き得る。ベンティングシステムがアクティブ化すると、放出されるガスが、また、それらのガスがベンティングシステムを通ってデバイスの外に抜け出る際に、熱エネルギーを外に搬送するように働く。開示される吸熱材料/システムによるガスの生成は、また、何らかの有毒ガスを、ベンティングシステムを通してエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリの外に追い出す助けとなる。加えて、熱暴走の間に形成される何らかのガスを希釈することにより、ガスの発火に対する潜在的可能性が低減される。
【0069】
吸熱材料/システムは、様々な方法で、および、様々なレベルで、エネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリシステムの部分として、組み込まれ得る、および/または、実現され得る。例えば、開示される吸熱材料/システムは、乾式プレス加工、真空成形、溶浸、および直接注入などのプロセスによって組み込まれ得る。その上、開示される吸熱材料/システムは、所望される温度/エネルギー制御機能をもたらすように、エネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリの中の1つ以上の場所において位置付けされ得る。
【0070】
開示されるエネルギー貯蔵システムおよび方法の、追加的な有利な特徴、機能、および実施形態は、特に、添付される図と併せて読まれるときに、下記で説明される例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【0071】
本開示のシステムおよび方法は、もっぱら非制限的な例として与えられる、および、図面を参照して為される、以下の説明を読んだときに、より良好に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】本開示によるマルチコアリチウムイオンバッテリの側面図である。
【
図2】本開示による充填材材料を伴うマルチコアリチウムイオンバッテリの側面図である。
【
図3】本開示によるマルチコアリチウムイオンバッテリの側面図である。
【
図4】本開示によるマルチコアリチウムイオンバッテリの側面図である。
【
図5】本開示による複数のキャビティ構成の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
今から図面を参照すると、類する部分は、それぞれ、同じ参照番号によって、本明細書および図面の全体を通して標識される。図面の図は、必ずしも一定の縮尺ではなく、特定の視図において、部分は、明確さの目的のために誇張されていることがある。
【0074】
図1および2は、ハウジング18(すなわち、ケース)と、カバー30とを伴うマルチコア(MC)筐体10を描写する。ハウジング18は、側壁20と、基部23とを含む。いくつかの実施形態において、側壁20および基部23は、1つの材料から一緒に製作される(例えば、成型)。別の実施形態において、側壁20および基部23は、別々に製作され、封止されたハウジング18を形成するために一緒に組み立てられる。どちらの例においても、側壁20は、四辺形の形状を画定し、第1の縁部(可視でない)と、第1の縁部の反対においての第2の縁部(可視でない)とをさらに含む。基部23は、第1の縁部に密接に近接してマウントされ、カバー30は、第2の縁部に密接に近接してマウントされる。基部23およびカバー30は、互いに実質的に揃った様態であり得る。MC筐体10は、気密封止される。ハウジング18は、同様にサイズ設定されたリチウムイオンコア部材12を格納する、いくつものキャビティ22を画定する。リチウムイオンコア部材12は、ジェリーロールコア構造と、円筒形の形状とを有し得る。様々な形状およびサイズのイオンコア部材12が、本開示に関連して使用され得るものであり、特定の例示的な形状およびサイズが、下記で説明される。キャビティ22は、レッジ21により、側壁20、および、隣接したキャビティ22に接続される。
【0075】
コア部材12の各々のカソードに接続される電気伝導性タブ14のセット、および、コア部材12の各々のアノードに接続される電気伝導性タブ16のセットが存する。タブ14は、また、ハウジング18に接続され、タブ16は、アノードバスバー26に接続される。より具体的には、タブ14は、レッジ21を介してハウジング18と電気的にも物理的にも両方で関連付けられる、キャビティ基部24に接続され得る。カソードタブ14およびアノードタブ16は、スポット溶接技法またはレーザ溶接技法を使用して、ハウジング18およびバスバー26それぞれに溶接される。ハウジング18およびバスバー26は、ハウジング18の外側上の、負端子28および正端子32それぞれに相互接続される。この構成において、イオンコア部材12のすべては、並列に接続されるが、それらのイオンコア部材12は、当業者に明らかになるように、直列に、または、他の構成で接続され得る。
【0076】
図3は、上記で説明されたような、ハウジング18と、カバー30とを伴うMC筐体10を描写する。
図3の筐体10は、カソードタブが電流集電体42によって置き換えられているということを除いて、
図1および2の筐体10と実質的に同様である。電流集電体42は、コア部材12と、キャビティ22の基部24との間に配置される。電流集電体42は、キャビティ22の基部24に溶接され得る。
図1および2と同様に、カソードは、ハウジング18と電気的に連通している。
【0077】
ハウジング18およびカバー30は、共有される雰囲気領域19を画定する/共インターフェイスする。共有される雰囲気領域19は、リチウムイオンコア部材12より上の、および、カバー30より下の空間により画定される、ハウジング18の一部分を占める。1つの実施形態において、共有される雰囲気領域19は、近似的に、カバー30とレッジ21との間の体積により画定され得る。バスバー26は、バスバー26とコア部材12との間の絶縁物36、および、バスバー26とカバー30との間の絶縁物38により絶縁されて、共有される雰囲気領域19の中に据えられ得る。
【0078】
別の例示的な実施形態において、
図4は、ハウジング102(すなわち、ケース)と、カバー104とを伴うマルチコア(MC)筐体100を描写する。ハウジング102は、側壁106と、基部107とを含む。いくつかの実施形態において、側壁106および基部107は、1つの材料から一緒に製作される(例えば、成型)。別の実施形態において、側壁106および基部107は、別々に製作され、封止されたハウジング102を形成するために一緒に組み立てられる。どちらの例においても、側壁106は、四辺形の形状を画定し、第1の縁部(可視でない)と、第1の縁部の反対においての第2の縁部(可視でない)とをさらに含む。基部107は、第1の縁部に密接に近接してマウントされ、カバー104は、第2の縁部に密接に近接してマウントされる。MC筐体100は、気密封止される。ハウジング102は、同様にサイズ設定されたリチウムイオンコア部材12を格納する、いくつものキャビティ108を含む。リチウムイオンコア部材12は、ジェリー役割コア構造と、円筒形の形状とを有し得る。様々な形状およびサイズのイオンコア部材12が、本開示に関連して使用され得るものであり、特定の例示的な形状およびサイズが、下記で説明される。キャビティ108は、カバー104により、側壁106、および、隣接したキャビティ108に接続される。
【0079】
コア部材12の各々のカソードに接続される電気伝導性タブ14のセット、および、コア部材12の各々のアノードに接続される電気伝導性タブ110のセットが存する。タブ14は、また、ハウジング102に接続され、タブ110は、アノードバスバー112に接続される。より具体的には、タブ14は、ハウジング102と電気的にも物理的にも両方で関連付けられる、キャビティ基部24に接続され得る。カソードタブ14およびアノードタブ110は、スポット溶接技法またはレーザ溶接技法を使用して、ハウジング102およびバスバー112それぞれに溶接される。ハウジング102およびバスバー112は、ハウジング102の外側上の、負端子114および正端子116それぞれに相互接続される。アノードバスバー112が筐体の共有される雰囲気の中で統合された、先の実施形態とは違い、この実施形態は、コア部材12を、個々の雰囲気を有する個々のキャビティ108の中にカプセル化することに重点を置く。この構成において、イオンコア部材12のすべては、並列に接続されるが、それらのイオンコア部材12は、当業者に明らかなるように、直列に、または、他の構成で接続され得る。
【0080】
1つの実施形態において、キャビティ22、108は、単一ケースを形成するために、ハウジング18、102とともに製作され得る。1つの例において、ハウジング18、102およびキャビティ22、108は、一緒に成型され得る。別の例において、ハウジング18、102およびキャビティ22、108は、3D印刷され得るものであり、そのことは、莫大なスタイリスティックな、および機能面の機会を供する。別の実施形態において、キャビティ22、108およびハウジング18、102は、統合されたケースを作るために互いに対して直接的/間接的にマウントされる、少なくとも2つの別個の構成要素である。例えば、キャビティ22、108は、溶接または留め具により、側壁20、106に密接に近接して取り付けられ得る。取り付けに関わらず、キャビティ22、108および筐体10、100は、電気的に連通しているままでなければならない。
【0081】
どちらの例においても、キャビティ22、108は、制限される膨張が、充電反応および放電反応の間に起き得、そのことにより、個々のイオンコア部材12の機械的相互作用を防ぐように、イオンコア部材12が、妥当な分離を伴って収容され得るように構築される。さらにまた、円筒形キャビティ22、108は、リチウムイオンコア部材12の直径よりわずかに大きい直径を伴う開口部を有し得る。ハウジング18、102およびカバー30、104は、熱および電気伝導性材料から製作され得る。中でも、アルミニウムコーティングされたプラスチック、アルミニウムコーティングされたセラミックス、ニッケルコーティングされた鋼などである。
【0082】
別の例において、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の少なくとも一部分は、断熱鉱物材料(例えば、AFB(R)材料、Cavityrock(R)材料、ComfortBatt(R)材料、およびFabrock(TM)材料(Rockwool Group、デンマーク国ヘデフセン);Promafour(R)材料、Microtherm(R)材料(Promat Inc.、ベルギー国ティッセルト);ならびに/または、Morgan Thermal Ceramics(英国バーケンヘッド)製のケイ酸カルシウムマグネシウムウール製品から製作され得る。断熱鉱物材料は、複合物として使用され得るものであり、繊維マトリックスおよび/または粉末マトリックスを含み得る。鉱物マトリックス材料は、アルカリアースシリケートウール、玄武岩繊維、アスベスト、火山ガラス繊維、繊維ガラス、気泡ガラス、および、それらの任意の組み合わせを含むグループから選択され得る。鉱物材料は、結合材料を含み得るが、そのことは要されるものではない。開示される作り上げる材料は、ポリマー材料であり得る、ナイロン、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、アクリルポリマー、および、それらの任意の組み合わせを含むグループから選択され得る。鉱物材料は、難燃性添加剤をさらに含み得るが、そのことは要されるものではなく、そのようなものの例は、アルミナ三水和物(「ATH」)を含む。鉱物材料は、ロール、シート、およびボードなどの種々の媒体の形で生産され得るものであり、硬質または可撓性であり得る。例えば、材料は、プレス加工された、およびコンパクトなブロック/ボードであり得るものであり、または、海綿状および圧縮可能である複数の織り合わされた繊維であり得る。鉱物材料は、また、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の内部に絶縁体を提供するように、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の内壁と少なくとも部分的に関連付けられ得る。
【0083】
いくつかの筐体実施形態において、
図1-3を参照すると、開口部が、筐体10の中の共有される雰囲気領域19に暴露される。個々のより小さい筐体(活性コア部材の間の封止を気密にもたらす、缶またはポリマーバッグなど)を有することなく、コア部材のアノード/カソードが、また、共有される環境領域19に直接的に暴露される。缶に詰められたコア部材を無くすことが、製造コストをまさに低減するのみではなく、そのことは、また、安全性を増大し得る。コア部材の故障、および、結果的に生じる炎火の事象において、吐出されるガスは、典型的な個々に「缶に詰められた」コア部材において利用可能であるよりもかなり多い体積をもたらす、共有される環境領域19を占めることができる。缶に詰められたコア部材の圧力増加によって、爆発が、本発明によるよりも可能性が大きく、本発明は、ガスが占めるための、より大きい体積、および、それゆえに、低減される圧力増加をもたらす。加えて、缶は、典型的には、本発明による、より穏やかな故障モードを結果的に生じさせる、本発明の構造よりもはるかに高い圧力において破裂する。
【0084】
共有される雰囲気を伴う、または伴わない筐体において、あらかじめ決定された圧力しきい値において圧力増加に応答するように設計される、圧力遮断デバイス(PDD:pressure disconnect device)および/またはベントが利用され得る。具体的には、共有される雰囲気を伴わない筐体に対して、ベントが、各キャビティと関連付けられ得る。ここに引用により組み込まれている、刊行物WO2017/106349を確認されたい。上記のPDD/ベントに対する代替案として、または、そのPDD/ベントに加えて、側壁20、106は、(下記で論考される、充填材40または支持構造からの)熱吸収材料により生成されるガスが外にベントすることを可能とするための穴を含み得る。そのようなガスは、中でも、アルミニウム三水和物(ATH)および重炭酸ナトリウムの吸熱分解により生成され得る。
【0085】
例示的な実施形態において、ハウジング18、102は、1つ以上の中空空間34を画定する、基部23、107と、複数の側壁20、106とを含む。1つ以上の中空空間34は、キャビティ22、108を、部分的に、または完全に包囲し得る。ハウジング18、102は、側壁20、106とキャビティ22、108との間に、各隣接したキャビティ22、108の間に、および/または、キャビティ22、108と基部23、107との間に、1つ以上の中空空間(すなわち、空隙)が存するように中空であり得る。開示される中空空間(すなわち、空隙)34は、所望されるならば、硬質支持部材に対する必要性を無くし、および/または最小化し、可撓性をもたらして、充填材によって空隙34を部分的に、または完全に充填する。充填材40は、下記でより詳細に論考される、コア部材12を保護するための強められた性能特性をもたらし得る。上記の実施形態のいずれも、充填材40を含み得る。中空ハウジング18、102は、成型プロセス、押出加工プロセス、機械加工プロセス、引抜加工プロセス、および、それらの組み合わせから製作され得る。ハウジング18、102は、伝導性材料によって製作され得るものであり、または、製作材料が十分に伝導性でないならば、伝導性材料によってコーティングされ得る。
【0086】
1つの実施形態において、充填材40は、注入プロセスによって筐体10、100内へと導入され得る。具体的には、充填材40は、ハウジング18、102およびカバー30、104の組立ての後に、1つ以上の中空空間(すなわち、空隙)34内へと導入され得る。そのような例において、充填材40の導入は、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の中のインターフェイス機能によって行われ得る。そのようなインターフェイス機能は、充填材40が筐体10、100内へと流れることを可能とするが、充填材40脱出を制限する(または、低減する)、一方向ポートを含み得る。
【0087】
別の実施形態において、充填材40は、組立てより前に筐体10、100内へと導入され得る。具体的には、ハウジング18、102の空隙34が、カバー30、104の設置より前に充填され得る。そのような例において、充填材40は、必要ならば、カバー30、104の設置より前に取り付けることを可能とされ得るものであり、または、カバー30、104の設置の、ある期間の時間の後に取り付け得る。ハウジング18、102は、クラムシェル設計としてさらに組み立てられ得る。充填材40は、クラムシェルのいずれかの側に追加され、組立てより前に硬化することを可能とされ得る。代替的には、クラムシェル半分が、硬化より前に組み立てられ得る。別の例において、上記で説明されたように、充填材は、クラムシェルの設置の後の注入プロセスによって導入され得る。
【0088】
充填材40は、吸熱特性を呈する1つ以上の構成成分を含み得る。充填材40は、1つのコアが誤用の間に熱暴走を経ることがあれば、熱を急速にハウジングの全体を通して伝達し、熱をバッテリの全体を通して均一に分布させ、または、コアの間の熱暴露を制限するように最適化され得る。具体的には、熱伝導率が、熱をバッテリの充電および放電の間に分散し、一様な温度分布を作ることにより、ならびに、1つのコア部材の熱暴走を引き起こす、内部短絡などの破局的故障の間に熱を発散させることにより、用途に合わせて調整されることが所望される。適切な熱分散特性が、コアの間のカスケーディング暴走のきっかけを制限することになる。より大きな安全性の他に、このことは、最大動作温度を制限することによりバッテリ寿命を増大し、バッテリが、熱的管理を有さない、または、受動的熱的管理を有することを可能にすることになる。最も重要なことには、充填材40の熱的特性は、材料の最適化された熱伝達特性、および、火炎伝搬を途絶する能力に起因して、故障したコア部材から他のコア部材への故障伝搬を防ぐ助けとなる。材料は、また吸収性があるので、材料は、漏出する電解質を材料内へと吸収することができ、そのことは、破局的故障の重大度を低減する助けとなることができる。熱吸収剤材料40は、防火性特性をさらに含み得る。
【0089】
別の例において、充填材40は、筐体への衝撃の事象においてのエネルギー吸収特性を含み得る。エネルギー吸収体は、一般的には、広範囲の距離にわたって相対的に一定の応力で圧縮すること、または、たわむこと、および、反発しないことにより、運動機械的エネルギーを吸収する、材料の部類である。ばねが幾分同様の機能を実行するが、それらは反発し、ゆえに、それらはエネルギー貯蔵デバイスであり、エネルギー吸収体ではない。エネルギー吸収体の例は、中空または高密度であることがある、不規則な、または規則的な形の媒体である。中空媒体の例は、様々な圧力の力で圧縮可能にされ得る、および、衝突保護のためのエネルギー吸収体として機能するという目的を伴う、金属球、セラミック球、またはプラスチック球である。具体的な例は、アルミニウム中空球、アルミナまたはジルコニアのセラミック粉砕(grinding)媒体、および、ポリマー中空球である。運動エネルギー吸収材料の例は、アルミニウム発泡体、プラスチック発泡体などの発泡体、多孔質セラミック構造、ハニカム構造、または他の開放構造、繊維で充填された樹脂、および、フェノール材料である。プラスチック材料および樹脂材料に対する繊維充填材の例は、ガラス繊維または炭素繊維であることがある。アルミニウム含有エネルギー吸収体の例は、開気孔または閉気孔を有するアルミニウム発泡体、アルミニウムハニカム構造、ならびに、Altucore(TM)材料およびCrashLite(TM)材料などのエンジニアリングされた材料である。支持部材は、衝撃、衝突、または、他の機械的誤用の間に潰れるので、コアが、可能な限り、内部の機械的に誘導される短絡を回避するように、貫入から保護されるということが重要である。このことは、より安全な構造を作る。
【0090】
空隙34は、また、発泡体、または他の構造などのショック吸収材料によって充填され得、コア部材に対するより少ない衝撃を可能とし、そのことにより内部短絡のリスクをさらに低減する。この高耐久化は、また、増大した、ショックおよび振動に対する耐用性、ならびに機械的寿命をもたらす、筐体に対する内部内容物の自己振動周波数をシフトさせる手段をもたらすことができる。充填材材料40は、好ましくは、セルの熱暴走の間に生起することがある何らかの炎火、または、同じ熱暴走の間の融解の消失を可能とし、そのことにより、過剰熱に立ち向かい、セルの発熱を制限することになる、防火性材料を含むべきである。このことは、破局的事象の場合においての増大した安全性をもたらす。防火剤の例は、Hanser Gardner Publicationsにより刊行されたPolyurethanes Handbookなどのオープンな工学文献およびハンドブックにおいて、または、米国特許第5,198,473号において説明されるように見いだされ得る。ポリウレタン発泡体の他に、また、エポキシ発泡体またはガラス繊維ウール、および、同様の非化学または電気化学活性材料が、筐体の内側の空いた空間内の充填材材料として使用され得る。特に、プラスチック、金属、またはセラミックから作製される、中空または高密度の、球、または、不規則な形の微粒子が、低コスト充填材として使用され得る。中空球の場合において、中空球は、マルチコアセルの衝突シナリオの間のエネルギー吸収のための追加的な手段をもたらすことになる。特殊な場合において、支持部材はアルミニウム発泡体である。別の特殊な場合において、支持部材は、アルミニウム密度の10-25%の間の高密度のアルミニウム発泡体である。なおも別の特殊な場合において、アルミニウム発泡体内の気孔は、1mm未満である平均直径を有する。さらなる例示的な実施形態において、吸熱材料/システムは、下記でより詳細に説明されるように、有利には、筐体の内側の空いた空間内へと組み込まれ、または他の形で、その空いた空間と関連付けられ得る。
【0091】
別の実施形態において、充填材40は、断熱鉱物材料を含み得る。断熱鉱物材料は、複合物として使用され得るものであり、繊維マトリックスおよび/または粉末マトリックスを含み得る。鉱物マトリックス材料は、アルカリアースシリケートウール、玄武岩繊維、アスベスト、火山ガラス繊維、繊維ガラス、気泡ガラス、および、それらの任意の組み合わせを含むグループから選択され得る。鉱物材料は、結合材料を含み得るが、そのことは要されるものではない。開示される作り上げる材料は、ポリマー材料であり得るものであり、ナイロン、PVC、PVA、アクリルポリマー、および、それらの任意の組み合わせを含むグループから選択され得る。鉱物材料は、難燃性添加剤をさらに含み得るが、そのことは要されるものではなく、そのようなものの例は、ATHを含む。鉱物材料は、ロール、シート、およびボードなどの種々の媒体の形で生産され得るものであり、硬質または可撓性であり得る。例えば、材料は、プレス加工された、およびコンパクトなブロック/ボードであり得るものであり、または、海綿状および圧縮可能である複数の織り合わされた繊維であり得る。鉱物材料は、また、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の内部に絶縁体を提供するように、ハウジング18、102および/またはカバー30、104の内壁と少なくとも部分的に関連付けられ得る。鉱物材料は、空隙34の中のキャビティ22、108の周囲に少なくとも部分的に据えられ得る。媒体に依存して、鉱物材料は、空隙34の寸法にカットされ得るものであり、または、キャビティ22、108の周囲に高密度に、もしくは緩くパッキングされ得る。上記で論考されたように、充填材40は、媒体および導入方法に依存して、組立てより前に、または、組立て後に導入され得る。
【0092】
充填材40を伴うハウジング18、102は、a)安全性および高エネルギー密度の両方に対してバッテリを最適化するためのイオンコア部材12の分布を可能とすること、b)急速な熱的伝搬イオンコア部材12を防止し、一方で同時に冷却を可能とすること、c)イオンコア部材12に対する保護的な衝突および衝撃吸収構造と、反応性化学物質とを提供すること、ならびに、d)火炎防止のための広く認識された耐火材料の使用により、MCバッテリの総体的な安全性を増大する。任意のパーセンテージでの上記の充填材40の任意の組み合わせが、空隙34の中に追加され得るということが留意される。例えば、熱吸収充填材およびエネルギー吸収充填材の組み合わせが利用され得る。
【0093】
いくつかの例において、例えば、ハウジング18が、電気伝導性である材料から製作されるとき、薄いキャビティライナ(示されない)が、各キャビティ22、108の中に配設され得る。具体的には、キャビティライナ(示されない)は、ハウジング18、102とリチウムイオンコア部材12との間に位置付けされる。ライナは、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、電解質に対して化学的に不活性である任意の他のプラスチックから作製される。ライナは、また、セラミック材料または金属材料から作製され得るが、これらの材料は、より高いコストのものであり、好まれない。しかしながら、ハウジング18、102が電気伝導性である場合において、ライナは、コア部材12をハウジング18、102から電気的に隔離するように電気絶縁でなければならない。キャビティライナは、多数の理由のために重要である。第1に、キャビティライナは、水分および電解質不透過性である。第2に、キャビティライナは、炎火を消し止めることができる難燃加工剤を含み得るものであり、第3に、キャビティライナは、たやすく封止可能なプラスチック材料が、気密封止の中に電解質を含むことを可能とする。
【0094】
製造の間、キャビティ22、108は、電解質によって同時に充填され、次いで、継続される製造プロセスの間、同時に形成され、容量に対してグレード付けされ得る。形成プロセスは、セルを一定電圧、典型的には4.2Vに充電し、次いで、セルに、12-48時間の間、この電位において休止させることからなる。容量グレード付けは、充電/放電プロセスの間に行われ、セルは、2.5Vなどのより低い電圧に満放電させられ、次いで、典型的には4.2-4.5Vの範囲内での最も高い電圧に充電され、引き続いて、再び放電させられ、そのときに容量が記録される。多数の充電/放電サイクルが、充電/放電プロセスにおいての非効率性に起因して、正確な容量グレード付けを得るために必要とされ得る。
【0095】
キャビティライナは、コアとの電解質のぴったりのフィットに起因して、精密な、および、一貫性がある量の電解質が各コア部材に導入されることを可能にする。充填を遂行するための1つの方法は、筐体10、100(ハウジングおよび/またはカバー)内の貫通穴によるものであり、その筐体は、次いで、充填され、電解質がキャビティに導入され処理された後に封止され得る。約3Ah容量を有するジェリーロールタイプコア部材は、密度および包囲する多孔質材料に依存して、約4-8gの電解質を必要とすることになる。電解質充填は、ジェリーロール全体が、乾いたエリアが可能とされない様態で、ロールの全体を通して等しく濡らされるように行われる。各コア部材が、0.5g以内の、および、より一層好ましくは0.1g以内の、および、なおもより一層好ましくは0.05g以内の変動を伴う、コアごとの同等の量の電解質を有するということが好ましい。変動は、総量電解質とともに調整され、典型的には、コアあたりの電解質の総量の5%未満、または、より一層好ましくは<1%である。組立体を真空内に置くことが、この充填プロセスの助けとなり、電極の、完全なおよび等しい濡れに対して肝要である。
【0096】
上記で説明されたキャビティライナと同様に有益な、別の例において、キャビティ22、108の内側は、コア部材12をハウジング18、102から隔離するようにめっきされ得る。めっきは、電気伝導性ハウジング18、102をコア部材12から絶縁するために使用され得る。キャビティ22、108は、当業界の知られている技法のうちの1つを使用してめっきされ得る。具体的なめっき材料は、ニッケルめっき、亜鉛-ニッケルめっきを含み得る。キャビティのめっきは、多数の理由のために重要である。第1に、めっきは、水分および電解質不透過性障壁をもたらす。第2に、めっきは、所与のキャビティに対する炎火を食い止め得るものであり、第3に、めっきは、気密封止の中の電解質の封じ込めを可能とする。めっき材料に依存して、めっきは、熱除去を支援し、熱暴走の可能性を低減するために、コア部材12から離れるように、および、キャビティを包囲する空隙エリア内へと、熱をさらに取り出し得る。空隙エリアは、上記で論考されたように、熱吸収能力、エネルギー吸収能力、および/またはショック吸収能力を伴う充填材材料(例えば、液体、発泡体、固体、部分的な固体)を、部分的に、または完全に含み得る。
【0097】
代替的には、筐体は、上記で述べられた熱吸収方法の組み合わせを含み得る。例えば、キャビティは、支持部材の中に含まれ得る。しかしながら、上記の支持部材とは対照的に、本支持部材は、ハウジング空間に対してサイズ設定されるのではなく、むしろ、上記からの充填材材料のうちの1つ以上の追加を可能とするために、より小さい。なおも別の実施形態において、支持部材は、ハウジング全体の中でフィットし得るが、支持部材は、支持部材がキャビティ内のコア部材を捕捉するが、支持部材は何らの性能特性も含まないように、中空である。代替的には、充填材は、上記で説明されたように、支持部材に、支持部材の性能特性を強めるために追加される。上記の代替案は、上記の説明された図の各々に対して容認可能である。
【0098】
別の例示的な実施形態において、MC筐体は気密封止される。筐体の部分、または、別々の構成要素であることがある支持構造は、個々のイオンコア部材の機械的相互作用を防ぐように、イオンコア部材が妥当な分離を伴って収容され得るように構築されて、制限される膨張が充電反応および放電反応の間に行われ得る。筐体は、プラスチック材料、セラミック材料、または金属材料から製作され得る。金属が使用されるならば、暴露される鋼は好ましくなく、いかなる鋼容器も、ニッケルなどの不活性金属によってコーティングされることを必要とすることになる。好ましい金属は、アルミニウム、ニッケル、または、使用される化学物質に対する他の不活性金属である。化学環境および電気化学環境に対して不活性である限り、多くのタイプのプラスチックおよびセラミック。プラスチックおよびセラミックスの例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、アルミナ、ジルコニアである。筐体は、炎火が筐体の内側に達することを防ぐという目的のために、筐体の外側に付着させられる防火性メッシュを含むことができる。
【0099】
筐体の中で、リチウムイオンコア領域内にあるのが、セラミック、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック、または、アルミニウム発泡体などの他の材料から作製され得る、電気的に絶縁された支持部材である。支持部材は、衝撃が発生するならば/発生するとき、コア部材を損傷から保護するように十分に変形可能/圧縮可能であり得る。上記で論考されたエネルギー吸収詳細が、この実施形態にさらに適用される。加えて、熱伝導率が、熱をバッテリの充電および放電の間に分散させ、一様な温度分布を作ることにより、ならびに、1つのコア部材の熱暴走を引き起こす内部短絡などの破局的故障の間に熱を発散させることにより、用途に合わせて調整するということが所望される。適切な熱分散特性が、コアの間のカスケーディング暴走のきっかけを制限することになる。支持部材は、また、電解質に対して吸収性があることがあり、その電解質は、それがコア部材の誤用の間に吐出されることがあれば、支持部材内に閉じ込められ得る。
【0100】
円筒形キャビティが、リチウムイオンコア部材を、キャビティあたり1つのコアを受けるために、支持部材内に形成される。この構成において、円筒形キャビティは、リチウムイオンコア部材の直径よりわずかに大きい直径を伴う開口部を有する。開口部は、筐体の中の共有される雰囲気領域に面し、暴露される。個々のより小さい筐体(活性コア部材の間の封止を気密にもたらす、缶またはポリマーバッグなど)を有することなく、コア部材のアノード/カソードが、また、共有される環境領域に直接的に暴露される。缶に詰められたコア部材を無くすことが、製造コストをまさに低減するのみではなく、そのことは、また、安全性を増大する。コア部材の故障、および、結果的に生じる炎火の事象において、吐出されるガスは、典型的な個々に「缶に詰められた」コア部材において利用可能であることになるよりもかなり多い体積をもたらす、共有される環境領域を占めることができる。缶に詰められたコア部材の圧力増加によって、爆発が本発明によるよりも可能性が大きく、本発明は、ガスが占めるための、より大きい体積、および、それゆえに、低減される圧力増加をもたらす。加えて、缶は、典型的には、本発明の構造よりもはるかに高い圧力において破裂して、本発明によるより穏やかな故障モードを結果的に生じさせる。
【0101】
キャビティは、コア部材をカプセル化するための強められた性能特性をもたらすための材料によってめっきされ得る。特に、支持部材とリチウムイオンコア部材との間に位置付けされる、キャビティの内部エリアをめっきする。具体的なめっき材料は、ニッケルめっき、亜鉛-ニッケルめっきを含み得る。めっきは、電気伝導性ハウジングをコア部材から絶縁するために使用され得る。キャビティは、知られている技法のうちの1つを使用してめっきされ得る。キャビティのめっきは、多数の理由のために重要である。第1に、めっきは、水分および電解質不透過性障壁をもたらす。第2に、めっきは、欠陥のあるキャビティに対する炎火を食い止め得るものであり、第3に、めっきは、気密封止の中の電解質の封じ込めを可能とする。めっき材料に依存して、めっきは、コア部材12から離れるように、熱吸収能力を有する支持部材の方に、熱をさらに取り出し得る。
【0102】
製造の間、キャビティ22は、電解質によって同時に充填され、次いで、継続される製造プロセスの間、同時に形成され、容量に対してグレード付けされ得る。形成プロセスは、セルを一定電圧、典型的には4.2Vに充電し、次いで、セルに、12-48時間の間、この電位において休止させることからなる。容量グレード付けは、充電/放電プロセスの間に行われ、セルは、2.5Vなどのより低い電圧に満放電させられ、次いで、典型的には4.2-4.5Vの範囲内での最も高い電圧に充電され、引き続いて、再び放電させられ、そのときに容量が記録される。多数の充電/放電サイクルが、充電/放電プロセスにおいての非効率性に起因して、正確な容量グレード付けを得るために必要とされ得る。
【0103】
キャビティめっきは、コアとの電解質の密接な近接性に起因して、精密なおよび一貫性がある量の電解質が各コア部材に導入されることが行われることを可能にする。充填を遂行するための1つの方法は、筐体内の貫通穴によるものであり、その筐体は、次いで、充填され、電解質がキャビティに導入され処理された後に封止され得る。約3Ah容量を有するジェリーロールタイプコア部材は、密度および包囲する多孔質材料に依存して、約4-8gの電解質を必要とすることになる。電解質充填は、ジェリーロール全体が、乾いたエリアが可能とされない様態で、ロールの全体を通して等しく濡らされるように行われる。各コア部材が、0.5g以内の、および、より一層好ましくは0.1g以内の、および、なおもより一層好ましくは0.05g以内の変動を伴う、コアごとの同等の量の電解質を有するということが好ましい。変動は、総量電解質とともに調整され、典型的には、コアあたりの電解質の総量の5%未満、または、より一層好ましくは<1%である。組立体を真空内に置くことが、この充填プロセスの助けとなり、電極の、完全なおよび等しい濡れに対して肝要である。
【0104】
ハウジング内のキャビティのサイズ、間隔、形状、および数は調整および最適化され得るて、バッテリに対する所望される動作特性を達成し、一方で、それでもなお、コア部材の間/中での故障伝搬を減ずることなど、上記で説明された安全性特徴を達成する。そのような最適化は、統合されたキャビティを伴うハウジングに対して、および/または、補助的な支持部材を伴うハウジングに対して利用され得る。
【0105】
図5において示されるように、キャビティレイアウト220a-hは、好ましくは7から11の範囲に及ぶ異なる数のキャビティを有し、キャビティレイアウト220dおよび220hの場合においてのような異なるサイズキャビティを含む、異なる構成を有し得る。キャビティの数は、常に3以上であり、ハウジング/支持部材の幾何構造、およびジェリーロールサイズによる以外は、上限に関して特に制限されない。キャビティの実用的な数は、典型的には2から30の間である。キャビティは、キャビティレイアウト220fにおいてのように一様に分布させられることがあり、または、キャビティは、キャビティレイアウト220gの場合においてのようにジグザグにずらされることがある。また、
図5においてまた示されるのは、描写されるキャビティレイアウト220a-hの各々に対する、キャビティ直径、および、キャビティ内へと挿入され得るコア部材の直径である。加えて、各構成に対するアンペア時(Ah)単位での容量が示される。
【0106】
いくつかの実施形態において、筐体は、超音波溶接によって気密封止される、プラスチック蓋と、ハウジングとからなり得る。蓋の側と反対の筐体の端部にあるのが、フィードスルー検知接点である。蓋から延伸するのが、負バッテリ端子コネクタおよび正バッテリ端子コネクタである。コネクタ検知接点の位置に関する様々な配置構成が、当業者により達成され得るということ、およびまた、異なる直列または並列の配置構成セルが、本発明の目的のために使用され得るということが理解され得る。
【0107】
金属蓋の場合において、金属蓋は、レーザ溶接などの溶接方法によって閉じられ、プラスチックの場合においては、接着剤(糊)が使用され得るものであり、または、熱的溶接方法もしくは超音波溶接方法が使用され得るものであり、または、それらの任意の組み合わせである。このことは、適切に封止されたMCバッテリをもたらす。ジェリーロールは、筐体の内側で並列に、直列に、または両方で接続される。
【0108】
すべてのフィードスルー、検知、電力、圧力、その他が、気密封止されることを必要とする。気密封止は、約1気圧以上の内部圧力、およびまた、好ましくは1.2気圧より多い真空に耐えるべきである。ベントが、また、封止が可能とするよりも低い内部圧力において取り付けられて、容器上で収容され得る。
【0109】
平衡化および検知能力をもたらす別の方法は、容器の外部のコネクタが個々のコア部材の各々と接続することを可能とする、個々のコア部材の正端子および負端子の各々からの外部導線をもたらす、個々のコネクタを有することである。平衡化回路は、直列セルの電圧、または、充電の状態においての平衡異常を検出し、当業者に知られている能動的平衡化の受動的なものの手段をもたらすことになる。接続導線は、バッテリからの電力を提供するという目的のためにセルからの電流を導く手段をもたらす端子とは分離しており、典型的には、セルが1つの容器の中で直列に接続されるときに使用されるのみである。検知導線は、任意選択で、検知回路による個々のジェリーロールを通る暴走する電力電流の回避のために、容器の外側でヒューズを付けられ得る。
【0110】
個々のコア部材は、上記で説明されたような内部バスバーにより接続され得る。時にはバスバー共通コネクタは、ワイヤ、または、プラスチックコーティングされたワイヤであり得る。コネクタは、また、銅、アルミニウム、またはニッケルなどの固体金属であり得る(例えば、電流集電体)。バスバーは、多数のコア部材を直列または並列に接続し、コネクタにマルチコア部材構造内の電流を伝達する能力を有し、マルチコアアレイへの外部接続を可能とする。外部バスバーの場合において、筐体の中のコネクタを通る各ジェリーロールからの個々のフィードが必要とされる。
【0111】
内部バスバーが使用されるのであれ、外部バスバーが使用されるのであれ、それらは、コア部材の間のヒューズをもたらすように構築され得る。このことは、バスバーの断面が特定の電流を搬送するのみであるように制限される、エリアを作ることを含む、または、コア部材をバスバーに接続するタブサイズを制限することによる、種々の方法で遂行され得る。バスバーまたはタブは、1つの打抜加工された部分品の形で、または、他の金属成形技法において、または、バスバーの分割部分をヒューズ配置構成によって接続する第2の部品を使用することにより構築され得る。例えば、2つの矩形断面エリアの銅バスバーが使用され、10個のコア部材のアノードタブおよびカソードタブがかたわらでバスバーの各々に接続され、各バスバーが10mm2の断面表面積を有する場合、バスバー上の少なくとも1つのエリアは、バスバーの残り部分と比較して、低減された表面積を有するように製作され得る。このことは、溶融が発生し、電流搬送能力が制限される位置をもたらす。このヒューズエリアは、バスバーの1つ以上の点に、好ましくは各コア部材の間に、ただし、多くのセルの場合において最も有効には、中間点にあり得る。外部短絡が発生することになるならば、このヒューズは、コア部材の発熱を制限し、潜在的には熱暴走を回避することになる。また、製造欠陥に起因して、または、コア部材内へと貫入してセルに対する内部短絡を引き起こす釘などの誤用事象の間の外部貫入に起因してのいずれかでの、コア部材内の内部短絡の場合において、このヒューズ配置構成は、他の並列コアに対する機能不全コアを閉鎖することにより、内部短絡に伝達される電流の量を制限することができる。
【0112】
MCバッテリが、並列に配置構成されるコア部材のみを有するときの場合に対して、コア部材は、電力に対して最適化される1つ以上のコア部材と、エネルギーに対して最適化される1つ以上のコア部材とを含み得る。別の特殊な場合において、MCバッテリは、特定の材料を使用するアノードまたはカソードを伴ういくつかのコア部材と、異なる材料を使用するアノードおよびカソードを利用する他のコア部材とを有し得る。なおも別の特殊な場合において、アノードまたはカソードは、異なる厚さの電極を有し得る。様々な、電極厚さ、カソード活性材料もしくはアノード活性材料、または、電極配合組成を有することの任意の組み合わせが、バッテリのエネルギー対電力比を調整するという目的で、並列ストリングにおいて組み合わされ得る。いくつかのコア部材は、急速な電力パルスに耐えるように構成され得るものであり、一方で、他のコア部材は、高エネルギー貯蔵に対して最適化され得るものであり、かくして、そのことは、高電力パルスを処理し、一方で、高エネルギー内容物を有することができるバッテリをもたらす。しかしながら、コア部材が、選定される化学的性質に対する電圧ウィンドウ内の化学安定性をもたらすように、電気化学的に調和させられる化学的性質を有するということが重要である。
【0113】
例えば、LiCoO2カソードは、4.2Vの上側電位が使用され、約2Vから2.5Vの下側電位が使用される限り、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2カソードと調和させられ得るものであり、しかしながら、電位が、4.2Vより上に、例えば4.3Vに行く際、例えば、マグネシウムがドープされたLiCoO2材料は、NCA材料と調和させられないはずであり、なぜならば、NCA材料は、より高い電圧において劣化するからである。しかしながら、後者の例において、2つの材料は、上側電位が4.2Vに制限される限り、混合され得る。混和(blend)されたカソード材料を正しい電圧範囲内で使用することが、本発明の目的であり、本発明者は、本説明において後で詳述される、高エネルギーまたは高電力に対して特に有用である特定の組み合わせを見いだしている。
【0114】
電力およびエネルギー最適化が、増大した電気伝導率のためにより高い程度の伝導性添加剤を使用することなどの、電極の配合組成を調整することによって、または、異なる厚さの電極を使用することによってのいずれかで行われ得る。加うるに、エネルギーコアは、活性材料(カソードおよびアノード)の1つのセットを有することができ、電力コアは、別のタイプの材料を有することができる。この方法を使用するとき、材料が、分解を回避するように、2.5-4.2V、または、高電圧組み合わせの場合において2.5V-4.5Vなどの、調和された電圧範囲を有するということが好ましい。上側電圧は、Liイオンマルチコアバッテリ内の隔離されたコア部材あたり4.2Vより上と特徴づけられ、典型的には5Vより下である。
【0115】
以下のものは、本発明に関連して使用され得るアノード、カソード、セパレータ、および電解質の説明である。
【0116】
アノード
これらのコア部材のアノードは、一般的には、グラファイト、ドープされた炭素、ハードカーボン、非晶質炭素、ケイ素(ケイ素ナノ粒子、または、Siピラー、または、炭素を伴う分散されたケイ素など)、スズ、スズ合金、Cu6Sn5、Li、金属箔基板上へ堆積されたLi、グラファイト内のLi金属粉末内に混合された、Liを伴うSi、チタン酸リチウム(Li2TiO3またはLi4Ti5O12など)、および、それらの任意の混合物などの、LiイオンバッテリまたはLiポリマーバッテリにおいてよく見いだされる、および、文献において説明されるものである。アノード供給業者は、例えば、Morgan Carbon、Hitachi Chemical、Nippon Carbon、BTR Energy、JFE Chemical、Shanshan、Taiwan Steel、Osaka Gas、Conoco、FMC Lithium、Mitsubishi Chemicalを含む。本発明は、いかなる個別のアノード化合物にも制限されない。
【0117】
カソード
ジェリーロールに対して使用されるカソードは、一般的には、当業界にとって標準的であるもの、およびまた、下記でより詳細に説明される、いくらかの新しい高電圧混合物である。これらの新しいカソードは、MC構造内で、または、単一セルバッテリ内で使用され得るものであり、アノード/カソード構造は、封止された金属キャニスタ、または、封止されたポリマーバッグ内に含まれる。当業界に対して利用可能なカソード材料の豊富さに起因して、本明細書においての各材料グループに関する材料の部類は、「化合物」と呼称され、各化合物は、ある範囲の組成を有し得るものであり、結晶構造、化学組成、電圧範囲適性、または、材料組成変化および勾配変化においての類似性に起因して、グループにされる。適した個々の材料の例は、LiXCoO2(化合物Aと呼称される)、LiXMZCoWO2(化合物B、ここでMは、Mg、Ti、およびAlから選択され、結晶格子内のCoまたはLiを部分的に置換しており、範囲Z=0-5%内で追加され、典型的にはWは、4.2Vより上の充電に適するように、1に近い)、LixNiaMnbCocO2(特に、約a=1/3、b=1/3、c=1/3(化合物C)、および、a=0.5、b=0.3、c=0.2(化合物D)、および、それらの化合物のMg置換化合物(両方とも化合物Eのグループに入れられる)の組み合わせ)である。
【0118】
別の例は、LixNidCoeAlfO2(化合物F)、および、その化合物のMg置換誘導体LixMgyNidCoeAlfO2(化合物G)であり、特殊な場合において、d=0.8、e=0.15、f=0.05であり、ただし、d、e、およびfは、数パーセントではあるが変動し得るものであり、yは、0から0.05の間の範囲に及ぶ。個々のカソード材料のなおも別の例は、LixFePO4(化合物H)、LixCoPO4(化合物I)、LiMnPO4(化合物J)、およびLixMn2O4(化合物K)である。これらの化合物のすべてにおいて、リチウムの過剰が典型的には見いだされるが(x>1)、Xは、約0.9から1.1まで変動し得る。4.2Vより上に充電されるときに高容量をもつ、高電圧に対して特に適している材料の部類が、例えば米国特許第7,358,009号においてThackerayらにより説明されている、ならびに、BASFおよびTODAから市販で入手可能な、いわゆる層状-層状(layered-layered)材料である(化合物L)。
【0119】
Thackerayにより最初に説明された化合物は、4.2Vより上の電圧において安定にされ得る。これらのカソードのうちのいくつかは、4.2V(グラファイトをアノードとして使用する標準的な最も高い電圧)より上の高電圧において安定であり、それらの材料は、好ましくは混合され得る。上記の材料のうちの1つが本発明において使用されることがあるが、B、C、D、E、F、G、I、J、およびLから選択される材料化合物のうちの2つ以上を混合することが好ましい。特に、化合物B、D、F、G、およびLのうちの2つ以上の成分混合物が好ましい。非常に高いエネルギー密度構成に対して、(BおよびL)または(BおよびG)または(GおよびL)の混合物が最も有益であり、これらの混合物が薄い電極として作製されるとき、また、高電力が達成され得る。薄い(電力)電極、および、厚い(エネルギー)電極は、エネルギー対電力比の調整のためにコア部材内へと入り、一方で、同じ適した電圧範囲および化学的性質を有し得る。
【0120】
個別の新しいカソード、いわゆるコアシェル勾配(CSG:core shell gradient)材料(化合物Mと呼称される)は、その材料のシェルと比較して、異なる組成をその材料のコアにおいて有する。例えば、Ecopro(ウェブサイトwww.ecopro.co.kr、または、(日付2010年10月1日現在の、http://ecopro.co.kr/xe/?mid=emenu31)、または、特許公開公報番号PCT/KR2007/001729、これは、「CSG材料」(コアシェル勾配)として、xLi[Ni0.8Co0.1Mn0.1]O2(1-x)Li[Ni0.46Co0.23Mn0.31]O2のような化合物M材料を製品文献において説明しているが、また、別のMタイプ化合物が、Y-K Sunにより、ElectrochimicaActa 第55巻、第28号、8621-8627頁において説明されており、Mタイプ化合物の第3の説明が、Nature Materials 8(2009) 320-324頁(YK Sunらによる論文)において見いだされ得、これは、同様の組成のCSG材料を説明しているが、式バルク=Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1O2、勾配濃度=Li(Ni0.8-xCo0.1+yMn0.1+z、ここで0≦x≦0.34、0≦y≦0.13、および0≦z≦0.21;ならびに、表面層=Li(Ni0.46Co0.23Mn0.31)O2である。さらなる説明がWO2012/011785A2において見いだされ得、これは、Lix1[Ni1-y1-z1-wCoy1Mnz1Mw1]O2として説明される化合物Mの異形体(variant)(ここで、上記の式において、0.9≦x1≦1.3、0.1≦y1≦0.3、0.0≦z1≦0.3、0≦w1≦0.1であり、Mは、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnから選択される少なくとも1つの金属である)、および、Lix2[Ni1-y2-z2-w2Coy2Mnz2MW2]O2の化合物を含む外側部分(ここで、外側の式において、0.9≦x2≦1+z2、0≦y2≦0.33、0≦z2≦0.5、0≦w2≦0.1であり、Mは、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnから選択される少なくとも1つの金属である)の製造を説明する。化合物Mの異形体のすべての4つの範囲が、化合物Mが本開示の様々な態様において使用されるために、引用により本明細書に組み込まれている。
【0121】
M化合物が、約1であり得るが数パーセント以内で変動し得るLi含有量をさらに有し得るということ、ならびに、LiまたはNi/Mn/Co化合物が、最適化により、Mg、Al、および第1列遷移金属によって置換され得るということ、ならびに、上記で説明されたようなこれらのM化合物のうちの1つ以上を、Liイオンバッテリ内での使用のために、化合物B、C、D、E、F、G、Lと混和することが好ましいということが好ましい。コア化合物M材料が、最高で90%のニッケルと、5%と同じだけ低いコバルトと、最高で40%のMnとを含むことができ、勾配が、したがって、これらの境界組成のうちの1つから、10%と同じだけ低いNi、90%コバルト、および50%Mnまで移ることになるということが、可能性が大きい。
【0122】
一般的には、高電力は、アノードおよびカソードに対して、本発明の中で説明される化合物または混和物の薄い電極を使用することにより達成され得る。厚い電極は、典型的には、アルミニウム箔から電極コーティング層厚さを測定するとき、最高で約200μmの、60μmより上の厚さであると考えられ、一方で、より薄い電極(すなわち、60μm未満)が、高電力Liイオンバッテリ構成に対して、より良好である。典型的には、高電力のために、より多くのカーボンブラック添加剤が、電極配合組成物内で、電極配合組成物をより電気伝導性にするために使用される。カソード化合物は、Umicore、BASF、TODA Kogyo、Ecopro、Nichia、MGL、Shanshan、およびMitsubishi Chemicalなどの、いくつかの材料供給業者から購入され得る。化合物Mは、Ecoproから入手可能であり、(また、Y-K Sunにより、ElectrochimicaActa、第55巻、第28号、8621-8627頁において説明されているような、xLi[Ni0.8Co0.1Mn0.1]O2(1-x)Li[Ni0.46Co0.23Mn0.31]O2]、および、別のMタイプ化合物などのCSG材料として、それらの製品文献において説明されており、それらの化合物のすべては、好ましくは、上記で説明されたような化合物と混和され得る。
【0123】
2つ以上の化合物として高電圧カソード内へと混和される化合物A-Mは、好ましくは、表面改質剤によってコーティングされ得る。表面改質剤が使用されるとき、各化合物が同じ表面改質剤によってコーティングされるということが、必要ではないが好ましい。表面改質剤は、カソード混合物の最初のサイクル効率、および、レート能力を増大する助けとなる。また、有用寿命が、表面改質材料を付与することによって改善される。表面改質剤の例は、Al2O3、Nb2O5、ZrO2、ZnO、MgO、TiO2、AlF3などの金属フッ化物、金属リン酸塩AlPO4およびCoPO4である。そのような表面改質化合物は、より早期の文献[J.Liuら、J.of Materials Chemistry 20(2010) 3961-3967;ST Myungら、Chemistry of Materials 17(2005) 3695-3704;S.T.Myungら J.of Physical Chemistry C 111(2007) 4061-4067;ST Myungら J.of Physical Chemistry C 1154(2010) 4710-4718;BC Parkら、J.of Power Sources 178(2008) 826-831;J.Choら、J of Electrochemical Society 151(2004) A1707-A1711]において説明されているが、4.2Vより上の電圧においての混和されたカソードと併せて報告されたことは一度もない。特に、4.2Vより上の動作に対して、表面改質された化合物B、C、D、E、F、G、L、およびMを混和することが有益である。
【0124】
カソード材料は、結合剤、および、ketjen blackなどのカーボンブラック、または、他の伝導性添加剤と混合される。N-メチルピロリドン(NMP)が、典型的には、結合剤を溶解するために使用され、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が、Liイオンに対する好ましい結合剤であり、一方で、Liポリマータイプは、他の結合剤を有することができる。カソードスラリーが、安定した粘性のために混合され、当技術分野においてよく知られている。上記で説明された化合物A-M、および、それらの混和物は、本明細書において、時には一括して「カソード活性材料」と呼称される。同様に、アノード化合物は、アノード活性材料と呼称される。
【0125】
カソード電極は、例えば、約94%カソード活性材料、および、約2%カーボンブラック、および、3%PVDF結合剤で、上記の化合物A-Mの、混和物、または、個々の化合物などのカソード化合物を混合することにより製作され得る。カーボンブラックは、AkzoNobel、Timcal、およびCabotを含む複数の供給業者から入手可能な、Ketjen black、Super P、アセチレンブラック、および、他の伝導性添加剤であり得る。スラリーは、これらの構成要素をNMP溶媒と混合することにより作られ、スラリーは、次いで、約20マイクロメートル厚さのアルミニウム箔の両方の側へとコーティングされ、所望される厚さおよび面積重量において、約100-130℃において乾燥させられる。この電極は、次いで、所望される厚さおよび密度へと、ロールによりカレンダー加工される。
【0126】
アノードは、同様に準備されるが、グラファイトの場合において、約94-96%アノード活性材料が、典型的には使用され、一方で、PVDF結合剤は4%でのものである。時にはスチレンブタジエンゴム(SBR)結合剤が、CMCと混合されるカソードに対して使用され、そのタイプの結合剤に対して、約98%での、より高い相対的な量のアノード活性材料が、典型的には使用され得る。アノードに対して、カーボンブラックが、レート能力を増大するために時には使用され得る。アノードは、約10マイクロメートルの銅箔上にコーティングされ得る。
【0127】
当業者は、機能的電極に対して上記で説明されたような組成物を容易に混合することができることになる。
【0128】
充電および放電の間の電極膨張を制限するために、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、および炭素の繊維材料が、任意選択で、電極配合組成物に追加され得る。他の膨張技法は、電極配合組成物内で、SiO2、TiO2、ΖrO2、またはAl2O3などの不活性セラミック微粒子を使用する。一般的には、カソードの密度は、3g/cm3と4g/cm3の間、好ましくは、3.6g/cm3と3.8g/cm3の間であり、グラファイトアノードの密度は、1.4g/cm3と1.9g/cm3の間、好ましくは、1.6-1.8g/cm3であり、そのことは、プレス加工により達成される。
【0129】
セパレータ
セパレータは、一般的には、アノード電極とカソード電極との間に挿入される電気絶縁膜の形態をとり、Liイオンに対する高透過性、ならびに、引張りおよび横方向においての高強度と、高貫入強度とを有するべきである。気孔サイズは、典型的には、0.01マイクロメートルと1マイクロメートルの間であり、厚さは、5マイクロメートルと50マイクロメートルの間である。ポリエチレン(PE)構造、ポリプロピレン(PP)構造、またはPP/PE/PP構造などの不織ポリオレフィンのシートが、典型的には使用される。典型的にはAl2O3からなるセラミックが、発熱時の収縮を改善し、内部短絡に対する保護を改善するために、膜上へと付与され得る。また、カソードまたはアノードが、セラミックによって同様にコーティングされ得る。セパレータは、Celgard、SK、Ube、Asahi Kasei、Tonen/Exxon、およびWScopeを含む、当業界内の複数の供給業者から調達され得る。
【0130】
電解質
溶媒と塩とを含む電解質が、典型的には、当業界内で見いだされる。溶媒は、典型的には、DEC(炭酸ジエチル)、EC(炭酸エチレン)、EMC(炭酸エチルメチル)、PC(炭酸プロピレン)、DMC(炭酸ジメチル)、1,3ジオキソラン、EA(酢酸エチル)、テトラヒドロフラン(THF)の間で選択される。塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4の間で選択され、電解質内で使用される、硫黄またはイミド含有化合物は、LiCFSO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、または、SO2を気泡にしてEC/EMC/DMC(1:1:1比)および1M LiPF6などのあらかじめ混合された電解質を通すことによる平易なスルホン化を含む。他の塩は、LiBOB(リチウムビスオキサレートボレート)、TEATFB(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート)、TEMABF4(トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート)である。BP(ビフェニル)、FEC、ピリジン、亜リン酸トリエチル、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサリン酸トリアミド、硫黄、PS(プロピレンサルファイト)、ES(エチレンサルファイト)、TPP(リン酸トリフェニル)、アンモニウム塩、四塩化炭素または三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒、および加うるに、高温度貯蔵特性を改善するためのCO2ガスを含む、有効なSEI形成、ガス生成、難燃性特性、またはレドックスシャトリング能力のための添加剤が、また使用され得る。固体/ゲル電解質またはポリマー電解質に対して、PVDF、PVDF-HFP、EMITFSI、LiTFSI、PEO、PAN、PMMA、PVC、これらのポリマーの任意の混和物が、ゲル電解質をもたらすために、他の電解質構成要素とともに使用され得る。電解質供給業者は、Cheil、Ube、Mitsubishi Chemical、BASF、Tomiyama、Guotsa-Huasong、およびNovolyteを含む。
【0131】
スーパーキャパシタ(電気化学二重層を有するもの)、および、標準的なLiイオンバッテリの両方に対して作用する電解質が存する。それらの電解質に対して、スーパーキャパシタ構成要素が電力因子(agent)として作用し、Liイオンコア部材がエネルギー収穫因子として作用するように、1つ以上のスーパーキャパシタコアが、筐体内で1つ以上の定型的なLiイオンコア部材と混合され得る。
【0132】
乳白剤は、温度が放射熱のレベルへと上昇する熱的混乱状況の間に、絶縁材料の性能を強化し得る構成要素である。乳白剤に対する必要性は、一般的には、微多孔質構成要素に対する上記の説明に似て、エネルギー貯蔵デバイス/バッテリの熱放出特性に依存的である。熱的事象の間の温度が、放射熱温度に達するのに十分に高いならば、乳白剤は、生成される何らかの放射熱の送出を遅らせる助けとなる。この用途において、微多孔質材料も、繊維マトリックスも、それらの組み合わせも、それら自体による放射熱伝達に対して有効でない。よくある乳白剤材料は、TiO2、ケイ素、アルミナ、粘土(乳白剤および結合剤の両方として機能し得る)、SiC、および重金属酸化物を含む。これらの乳白剤は、正常な動作温度において、または、熱的事象の間のより低い温度においてでさえ、本開示による何らの機能ももたらさない。乳白剤は、コストにおいて高く、非常に高密度であり、それゆえに、重量を貯蔵デバイス/バッテリに追加する傾向がある。エネルギー貯蔵ユニット/バッテリの設計、および、熱的事象の間の熱放出の性質に依存して、乳白剤追加に対する範囲は、一般的には、0パーセントから30パーセントの範囲に及ぶ。
【0133】
吸熱材料構成成分は、本開示の例示的な実施形態によれば、かなりの利益を供する。大部分のエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリは、60℃以下において良好に機能するということが知られている。本開示の開示される吸熱材料/システムは、一般的には、この温度より上で、ただし好ましくは、吸熱材料/システムが、影響を及ぼされるセルおよび隣接したセル内の温度上昇を最小化するために、熱的事象の間に生成される熱エネルギーをそのような事象の初期の時期において吸収し始めることができるのに足りる程度低い温度において、それらのそれぞれの吸熱反応を始めるように設計および/または選択される。正常な動作温度より上の設定されたレベルを超過したとき、吸熱材料は、熱を吸収し、ガスを放出する。ガスを放出することは、熱を別のところに搬送し、希釈し、中和するように働く。また、熱の突然の生成が、エネルギー貯蔵デバイス内のベントがベンティングを始めることを、シグナルする、または引き起こすために使用されることがある。必要とされる、または所望される、吸熱材料の量は、一般的には、絶縁材料構成要素の残部の、デバイス構成、エネルギー密度、および熱伝導率に依存する。76以上の重量%の吸熱ガス生成材料を伴う吸熱材料/システムが企図されるが、異なる比および/または範囲が、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく用いられ得る。
【0134】
吸熱ガス生成材料の量は、また、ガス生成の所望される体積を達成するように調節され得るものであり、タイプの選択が、吸熱ガス生成が発生すべきである温度を設定するために使用され得る。近隣のセル内の温度が臨界的な発火温度に達することを防ぐために、高度に絶縁するシステムにおいては、より高い温度が所望され得るものであり、しかるに、より絶縁しないシステムにおいては、より低い温度が必要とされ得る。これらの要件を満たすことになる典型的な無機吸熱材料は、以下の吸熱材料を含み、ただし、それらに制限されない。
【0135】
【0136】
上記で記されたように、これらの吸熱材料は、典型的には、場合により他の炭酸塩または硫酸塩との組み合わせでの、ヒドロキシルまたは含水成分を含む。代替的な材料は、非含水炭酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩を含む。よくある例は、50℃より上で分解して、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、および水を与える、重炭酸ナトリウムであることになる。
【0137】
本開示の例示的な実施形態において、複数の吸熱材料が、同じエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリ内へと組み込まれ、構成成分吸熱材料は、異なる温度において、それらのそれぞれの吸熱反応を始動させる。例えば、重炭酸ナトリウムが、本開示による二重応答吸熱材料/システムをもたらすために、Al(OH)3[また、ATH(アルミニウム三水和物)として知られている]と組み合わされ得る。そのような例示的な実施形態において、重炭酸ナトリウムは、50℃よりわずかに上でエネルギーを吸収し、ガスを放出し始めることを予期され得るものであり、しかるに、ATHは、システム温度がおおよそ180-200℃に達してしまうまで、エネルギーを吸収しガスを放出することを始めない。かくして、吸熱材料は、単一の材料、または、吸熱材料の混合物であり得るということが、具体的には、本開示によって企図される。
【0138】
いくつかの材料は、2つ以上の分解温度を有するということが留意されるべきである。例えば、範囲220-240℃内で開始する分解温度を有すると上記で言及されたハイドロマグネサイトは、以下のステップにおいて分解する:最初に、約220℃においての結晶体の水の放出による;次いで、約330℃においてのより多くの水を放出するための水酸化物イオンの化学分解による;次いで、約350℃においての二酸化炭素を放出するためのステップ。しかしながら、分解においてのこれらのステップは、固定され、どの温度において熱が吸収されるか、および、どの温度においてガスが生成されるかの制御を許さない。
【0139】
異なる分解温度を有する2つ以上の吸熱材料の混合物の使用により、冷却効果が、単独で1つの材料によってよりも広い温度範囲にわたって制御され得る。2つ以上の吸熱材料は、1つ以上のガス生成材料との組み合わせでの、1つ以上の非ガス生成吸熱材料を含み得る。
【0140】
異なる分解温度においてガスを放出する2つ以上の吸熱材料の混合物の使用により、ガスの生産が、単独で1つの材料によってよりも広い温度範囲にわたって制御され得る。使用される吸熱材料の数および性質は、ゆえに、調整された熱吸収プロファイルおよびガス放出プロファイルを与えるように調整され得る。異なる吸熱材料を混合することによる熱吸収プロファイルおよびガス放出プロファイルのそのような調整は、温度および圧力の放出の制御が、材料が内で使用される装置の設計要件を満たすことを可能とする。
【0141】
開示されるエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリと関連付けられるベンティング機能性が、圧力および/もしくは温度にセンシティブである単一のベント要素、または、圧力および/もしくは温度にセンシティブである多数のベント要素の形態をとり得るということが留意される。ベント要素は、3バールより上の圧力において、および、例示的な実施形態において、5-15バールの範囲内の圧力において、ベンティングを始動させるように動作し得るが、動作上の圧力放出パラメータの選択は、具体的なエネルギー貯蔵デバイス/リチウムバッテリの設計および動作により影響力を及ぼされ得る。より詳しくは、開示されるベントは、約15psiと200psiの間、好ましくは、約30psiと170psiの間、および、より好ましくは、約60psiと140psiの間に収まる、あらかじめ決定されたしきい値圧力レベルにおいて、ベンティングを始動させるように動作し得る。
【0142】
本開示のさらなる例示的な実施形態において、ベンティング要素は、全部分において、または部分的に、セル内への逆火を防ぐように設計される火炎防止器を含み得る。例えば、ワイヤメッシュの形状での火炎防止器が用いられ得るが、当業者にたやすく明らかになるように、代替的な設計および/または幾何構造が用いられ得る。
【0143】
多数のベント要素を含む実施形態の場合において、ベント要素の動作は、全部分において、または部分的に、総体的なデバイス/バッテリの中の他のベント要素の応答的作用によりトリガされ得るということがさらに企図される。例えば、第1のベント要素のベンティング機能性の発動が、デバイス/バッテリと関連付けられる他のベント要素のうちの1つ以上のベンティング機能性を自動的にトリガし得る。その上にさらに、異なるベンティングしきい値により特徴づけられる多数のベント要素が提供され得るものであり、そのことによって、第1のベント要素は、第1の温度および/または圧力において発動させられ得るものであり、しかるに、第2のベント要素は、第1の温度/圧力より高い第2の温度および/または圧力において発動させられ得る。
【0144】
吸熱反応と関連付けられるベントガスは、電解質ガスを希釈して、電解質ガスと関連付けられる発火点および/または可燃性を後ろに延ばすか、または無くすということがさらに留意される。電解質ガスの希釈は、高度に有利であり、本開示のシステムおよび方法と関連付けられるさらなる利点を表す。[E.P.RothおよびC.J.Orendorff、「How Electrolytes Influence Battery Safety」、The Electrochemical Society Interface、Summer 2012、45-49頁を比較参照のこと。]
【0145】
開示される吸熱材料/システムを実現することにおいて、異なる配合組成および/または数量が、マルチコアセル構造内の異なるセルと関連付けられ得るということが企図される。例えば、中央に配置されるセルは、クラスタにされ得るものであり、内方セルは外方セルと比較してより早期の誤用温度を経験し得るということの可能性に基づいて、外方セルと比較してより低い温度において吸熱反応を始動させる吸熱材料/システムを提供され得る。
【0146】
開示される吸熱材料/システムが、例えば部分蒸気圧力による電解質への暴露を伴ってセルの内側に含まれるとき、吸熱材料/システムからジェリーロールへの水の移転は、制限され、および/または実在せず、なぜならば、吸熱材料/システムと関連付けられる水は化学結合されているからであるということが留意される。吸熱材料/システムが、全部分において、または部分的に、これらのセルの内側に位置付け/配置される実施形態において、電解質への水の暴露を制限することは重要である。吸熱材料/システムが水を含むならば、吸熱材料/システムと関連付けられる水の蒸気圧力は、電解質機能性との潜在的干渉を制限するために低くあるべきである。実際、電解質への水の非移転は、基礎となるセルの機能性が、開示される吸熱材料/システムの存在により落とされないということを確実にすることにおいて重要である。この特徴は、コアが、別法であれば気密封止されるセルの内側で全体的な雰囲気に開放であるそれらの構成に対して、とりわけ重要である。
【0147】
注目すべきは、開示される吸熱材料/システムと関連付けられる吸熱材料が消費された、すなわち、そのような吸熱材料と関連付けられる吸熱反応が、すべての利用可能な吸熱材料を消費した後でさえ、開示される吸熱材料/システムは、吸熱材料/システムと関連付けられる他の絶縁性構成成分の理由により、有利な絶縁機能性をエネルギー貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリにもたらすことを継続する。
【0148】
当業者にたやすく明らかになるように、本開示は、本開示の趣旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施され得る。本発明の実施形態は、それゆえに、すべての事項において、例解的であり、制限的ではないと考えられるべきである。