IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルベマール・コーポレーシヨンの特許一覧

特許7544725有機溶液からホウ素を抽出するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】有機溶液からホウ素を抽出するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/12 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C01B35/12 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021545715
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020016013
(87)【国際公開番号】W WO2020167495
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】62/806,206
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チァン,チィー・フン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05676916(US,A)
【文献】米国特許第04557913(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101484(US,A1)
【文献】特開平10-249330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 35/00 - 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)容器において、
(i)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせと、
(ii)水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約25重量%のアルカリ水酸化物を含む水溶液と、を組み合わせることであって、
(iii)前記アルカリ水酸化物対前記ホウ素のモル比が、約0.5~2.0であり、
(iv)前記(i)の組み合わせ対前記(ii)の水溶液の体積比が、約10:1~約25:1の範囲である、前記組み合わせることと、
(B)前記容器の内容物を、前記内容物が有機層及び水層を含み、前記水層が前記(i)の組み合わせからの前記ホウ素の約95%超を含むまで、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱することと、
(C)前記容器の前記内容物から前記水層を分離することと、を含む、方法。
【請求項2】
(D)前記ホウ素の約50%超を前記水層から分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(E)(D)後に残る前記水層を(A)における前記水溶液の全部または一部として使用することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(B)における前記温度が、約40℃~約80℃の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(B)における前記温度が、約50℃~約70℃の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホウ素が、ホウ酸ナトリウムとして前記水層から分離される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ水酸化物が、前記水溶液中に、前記水溶液の総重量に基づいて、約5重量%~約25重量%の範囲の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(A)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせを、アルカリ水酸化物を含む水溶液と、有機層及び水層を形成するために十分な条件で接触させることであって、
(i)前記アルカリ水酸化物が、前記水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約25重量%の範囲の量で存在し、
(ii)前記アルカリ水酸化物対前記ホウ素のモル比が、約0.5~2.0の範囲であり、
(iii)前記水層が、前記(A)の組み合わせからの前記ホウ素の約95%超を含み、
(iv)前記(A)の組み合わせ対前記(A)の水溶液の体積比が、約10:1~約25:1の範囲である、前記接触させることと、
(B)前記有機層から前記水層を分離することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記(A)の組み合わせ及び前記(A)の水溶液が、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(C)前記ホウ素の約50%超を前記水層から分離することをさらに含む、請求項9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(C)後に残る前記水層を(A)における前記水溶液の全部または一部として使用することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(A)における前記温度が、約40℃~約80℃の範囲である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ホウ素が、ホウ酸ナトリウムとして前記水層から分離される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月15日出願の米国仮出願第62/806,206号の利益を主張する。上記に特定される特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、有機溶液からホウ素を抽出するための1つ以上の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この項では、本明細書に記載され、及び/または以下に特許請求される技術のいくつかの態様に関連し得るか、もしくは文脈を提供し得る情報を紹介する。この情報は、本明細書に開示されるものをより良好に理解するための背景である。このような背景は、「関連」技術の考察を含み得る。このような技術が関連していることは、それがまた「先行」技術であることを意味するものではない。関連技術は、先行技術である場合があり、そうでない場合がある。この考察は、この観点から読み取られるべきであり、先行技術の認可として読み取られるべきではない。
【0004】
電子機器、特にリチウムベースの電池に適用される電池技術の進歩に伴い、商品としてのリチウムの価値は、近年、市場で大幅に上昇している。リチウム塩は、世界中の塩ブラインから抽出及び精製される。
【0005】
一般的に使用される商業的抽出方法では、天然に存在するリチウム含有ブラインは、一連の蒸発池で水の蒸発によって濃縮される。ブラインが濃縮されると、ハーライトまたはカリなどの様々な塩が沈殿する。濃縮されたブラインは、次いでタンクローリーによって輸送され、貯蔵タンクに積み降ろされる。典型的な濃縮ブラインは、様々な量のリチウム(Li)、ホウ素(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、カリウム(K)、塩素(Cl)、硫酸塩、及び硝酸塩を含むことができる。次いで、濃縮されたブラインから不純物が除去される。そのような不純物の除去のために様々な商業的方法が利用可能である。これに関連して、例えば、米国特許第3,855,292号、米国特許第5,219,550号、米国特許第5,676,916号、及びGarrett,D.E.(2004),Handbook of Lithium
and Natural Calcium Chloride,Amsterdam,Elsevier,pp.126-129を参照されたい。
【0006】
1つの商業的方法では、不純物は、炭酸リチウム及び塩化リチウムなどの高純度リチウム生成物への変換の前に、複数の精製工程を通して濃縮ブラインから除去される。精製工程のうちの1つ、すなわち溶媒抽出(SX)プロセスを使用して、ブラインからホウ素を除去し、その含有量を、例えば、公称8,000ppmから50ppm未満に低減する。SXプロセスは、(a)ホウ素種をホウ酸に変換するための塩酸によるブラインの酸性化、(b)多段階向流液液抽出操作においてアルコール-ケロシン有機溶液と接触させることによる酸性化ブラインからのホウ素の抽出、(c)多段階向流再抽出操作において水または希釈苛性によるホウ素負荷有機溶液からの約100ppm未満へのホウ素の再抽出を含むことができ、有機物を(b)に再利用することができる。全体として、SXプロセスは、約1.3:1より大きい水対濃縮ブラインの体積比を必要とし、ホウ素が豊富なテールウォーター廃水流、例えば、約6,000~8,000ppmのホウ素を生成する。次いで、テールウォーター廃水流は、蒸発池に輸送される。そのような方法の出力を拡大することを試みる際にしばしば遭遇する制限は、水の利用可能性の欠如及び蒸発池の事前に
確立された容量である。
【0007】
したがって、これら及び他の制限からの影響を最小化または低減する、リチウム含有ブラインを濃縮するための新しく改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
一般に、本開示は、有機溶液からホウ素を抽出するための1つ以上の方法を提供する。
【0009】
一態様では、(A)容器において、(i)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせと、(ii)水溶液の総重量に基づいて約3重量%~約25重量%のアルカリ水酸化物を含む水溶液と、を組み合わせる方法が提供される。アルカリ水酸化物対ホウ素のモル比は、約0.5~2.0であり、組み合わせ対水溶液の体積比は、約10:1~約25:1の範囲である。方法はまた、容器の内容物を、内容物が有機層及び水層を含み、水層が組み合わせからのホウ素の約95%超を含むまで、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱することを含む。方法はまた、容器の内容物から水層を分離することを含む。
【0010】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、方法はまた、(D)ホウ素の約50%超を水層から分離することを含む。
【0011】
1つ以上の態様は、前段落の方法を含み、方法はまた、(E)(D)後に残る水層を(A)における水溶液の全部または一部として使用することを含む。
【0012】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、(B)における温度は、約40℃~約80℃の範囲である。
【0013】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、(B)における温度は、約50℃~約70℃の範囲である。
【0014】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムである。
【0015】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、ホウ素は、ホウ酸ナトリウムとして水層から分離される。
【0016】
1つ以上の態様は、任意の前段階の方法を含み、アルカリ水酸化物は、水溶液中に、水溶液の総重量に基づいて、約5重量%~約25重量%の範囲の量で存在する。
【0017】
別の態様では、(A)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせを、アルカリ水酸化物を含む水溶液と、有機層及び水層を形成するために十分な条件で接触させることを含む方法が提供される。アルカリ水酸化物は、水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約25重量%の範囲の量で存在する。アルカリ水酸化物対ホウ素のモル比は、約0.5~2.0の範囲である。水層は、組み合わせからのホウ素の約95%超を含む。組み合わせ対水溶液の体積比は、約10:1~約25:1の範囲である。方法はまた、有機層から水層を分離することを含む。
【0018】
1つ以上の態様は、前段階の方法を含み、組み合わせ及び水溶液は、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱される。
【0019】
1つ以上の態様は、2つの前段落のいずれかの方法を含み、方法は、(C)ホウ素の約50%超を水層から分離することをさらに含む。
【0020】
1つ以上の態様は、前段落のいずれかの方法を含み、方法は、(C)後に残る水層を(A)における水溶液の全部または一部として使用することをさらに含む。
【0021】
1つ以上の態様は、4つの前段落のいずれかの方法を含み、(A)における温度は、約40℃~約80℃の範囲である。
【0022】
1つ以上の態様は、5つの前段落のいずれかの方法を含み、アルカリ水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される。
【0023】
1つ以上の態様は、任意の前段落の方法を含み、ホウ素は、ホウ酸ナトリウムとして水層から分離される。
【0024】
複数の実施形態が開示されているが、さらに他の実施形態が以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。明らかなように、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提示される特許請求の範囲の趣旨及び範囲から全て逸脱することなく、様々な明らかな態様で変更することができる。したがって、詳細な説明は、本質的に実例とみなされるべきであり、制限としてみなされるべきではない。
【0025】
定義
本開示において使用される用語を明確に定義するために、以下の定義が提供される。特に指示がない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。参照により本明細書に組み込まれる任意の文書によって提供される任意の定義または使用法が、本明細書に提供される定義または使用法と矛盾する限りにおいて、本開示で提供される定義または使用法が制御する。
【0026】
本開示において、特定の態様内で、異なる特徴の組み合わせが想定され得るように、主題の特徴が説明される。本明細書に開示されるありとあらゆる態様及びありとあらゆる特徴に関して、本明細書に記載の設計、組成物、プロセス、または方法に有害な影響を及ぼさない全ての組み合わせは、特定の組み合わせの明示的な説明を伴うか、あるいは伴わないことが企図される。加えて、特に明示的に記載されない限り、本明細書に開示される任意の態様または特徴を組み合わせて、本開示と一致する発明の設計、組成物、プロセス、または方法を説明することができる。
【0027】
本開示において、組成物及びプロセスは、多くの場合、様々な成分または工程を「含む」という観点で説明されるが、組成物及び方法は、特に指定のない限り、様々な成分または工程「から本質的になる」または「からなる」とすることもできる。例えば、本開示の主題の特定の態様と一致する方法は、組み合わせ工程、加熱工程、及び分離工程を含むことができるか、代替的に、組み合わせ工程、加熱工程、及び分離工程から本質的になることができるか、または代替的に、組み合わせ工程、加熱工程、及び分離工程からなることができる。
【0028】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、特に指定されない限り、複数の代替物、例えば、少なくとも1つ、1つ以上、及び1つまたは2つ以上を含むことが意図される。例えば、「溶媒」の開示では、特に指定されない限り、1つの溶媒、あるいは2つ以上の溶媒の混合物または組み合わせを含むことを意味する。
【0029】
「組み合わせる」という用語は、本明細書では、例えば、バッチ組み合わせまたは同時供給を含む、2つ以上の成分を組み合わせる任意の好適な形態を説明するために使用される。
【0030】
「組み合わせ」という用語は、2つ以上の成分の任意の組み合わせを意味し、混合物、溶液、懸濁液、及び他の形態を含むことができ、これらは全て当業者によく知られているであろう。
【0031】
「約」という用語は、量、大きさ、配合、パラメータ、及び他の量及び特色が正確ではない、ならびに正確である必要はないが、許容範囲、換算係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者には既知である他の係数を反映して、必要に応じて大きくなるか、または小さくなることを含む近似であってもよいことを意味する。一般に、量、大きさ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特色は、そのようであると明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約」あるいは「近似」である。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物についての異なる平衡条件に起因して異なる量も含む。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、その量の同等物を含む。
【0032】
本明細書では、様々な数値範囲が開示される。任意のタイプの範囲が本明細書に開示または特許請求されるとき(例えば、「...からの範囲(ranging from・・・)」、「...からの範囲内(in the range of from・・・)」、「...からの範囲内(in a range of from...)」)、その意図は、特に指定されない限り、そのような範囲の終点、ならびにその中に含まれる任意の部分範囲及び部分範囲の組み合わせを含め、このような範囲が合理的に含むことができる各可能な数を個別に開示または特許請求することにある。例えば、本開示は、特定の態様において容器の内容物を20℃~約100℃の範囲の温度に加熱することを挙げる。温度が約20℃~約100℃の範囲内とすることができるという開示により、その意図は、温度がその範囲内の任意の温度とすることができ、例えば、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、または約100℃に等しいとすることができることを記載することにある。加えて、温度は、約20℃~約100℃の任意の範囲内であり得(例えば、温度は、約40℃~約70℃の範囲であり得)、これはまた、約20℃~約100℃の範囲の任意の組み合わせを含む。同様に、本明細書に開示される全ての他の範囲は、この例と同様の方法で解釈されるべきである。
【0033】
本明細書に開示される実施形態では、「または」という用語によって区切られる実施形態の特定の特徴を満たすのに好適であるとして列挙される材料を提供することができる。例えば、本開示の主題の特定の特徴は、以下のように開示することができる:特徴Xは、A、B、またはCとすることができる。また、各特徴について、「特徴Xは、Aであるか、代替的にBであるか、または代替的にCである」という記載も、この記載が明示的に記載されているかどうかにかかわらずこの記載が本開示の実施形態であるように、代替的な列挙として表現することができることも企図される。
【0034】
本明細書に記載の任意の方法及び材料と同様または同等の任意の方法ならびに材料を、本明細書に記載される主題の実施または試験に使用することができるが、典型的な方法及び材料は、本明細書に記載される。
【0035】
本明細書に言及される全ての刊行物及び特許は、例えば、本明細書に記載される主題に関連して使用することができる刊行物に記載される構築物及び方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、以下に特許請求される主題の例示的な態様が開示される。明確にするために、実
際の実施態様の全ての特徴が本明細書に記載されるわけではない。いずれのこのような実際の実施形態の開発において、システム関連及び事業関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、実装態様によって異なることとなる実装態様固有の多数の決定が行われなければならないことが理解されるであろう。さらに、このような開発努力は、複雑で時間がかかるものであっても、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な作業であることが理解されるであろう。
【0037】
本開示は、一般に、有機溶液からホウ素を抽出するための1つ以上の方法に関する。
【0038】
A.組み合わせ.
一態様では、方法は、組み合わせを、アルカリ水酸化物を含む水溶液と組み合わせることを含む。組み合わせは、アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含み、これらは、約3重量%~約25重量%のアルカリ水酸化物を含む水溶液と組み合わせることができ、アルカリ水酸化物対ホウ素のモル比は、約0.5~約2.0である。非限定的な例として、組み合わせは、背景セクションにおいて前述したように、アルコール-ケロシン有機溶液で酸性化ブラインから抽出されたホウ素を含むことができる。別の非限定的な例として、組み合わせは、ホウ素を含む有機溶液と、アルカリ水酸化物を含む水溶液とを含むことができる。例えば、有機溶液は、約2000~約4000ppmのホウ素、10~40体積%のイソオクチルアルコール(例えば、ExxonMobilから市販されているEXXAL(商標)-8)、及び60~90体積%のケロシンを含み得る。
【0039】
組み合わせ工程は、当業者によく知られているように、例えば、バッチプロセス、セミバッチプロセス、連続撹拌槽型反応器、及び他のタイプのプロセスを含む、任意の好適なタイプのプロセスで実施することができる。
【0040】
一態様では、水溶液は、アルカリ水酸化物を、水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約25重量%の範囲の量で含む。水溶液は、アルカリ水酸化物を、水溶液の総重量に基づいて、約5重量%~約25重量%の範囲の量で含み得る。水溶液は、アルカリ水酸化物を、水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約15重量%の範囲の量で含み得る。水溶液は、アルカリ水酸化物を、水溶液の総重量に基づいて、約5重量%~約10重量%の量で含み得る。
【0041】
特定の理論に拘束されることなく、アルカリまたは他の好適な水酸化物の濃度が増加するにつれて、本開示による方法における水の必要性は、現在利用可能な市販の方法と比較して実質的に低減する。さらに、これは、多段階再抽出ミキサー/セトラーの任意の必要性を排除することができる。またさらに、これは、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)が沈殿し、副産物として販売することができるように、水性廃棄物流の体積の低減、及びホウ素値の回復を助けることができる。
【0042】
好適なアルカリ水酸化物の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムが含まれるが、これらに限定されない。本明細書の教示を前提として、ホウ素負荷アルコール-ケロシン有機溶液などの組み合わせの組成に応じて、当業者は、本開示に従って使用され得る他の好適なアルカリ水酸化物を特定し得る。
【0043】
一態様では、組み合わされた組み合わせ及び水溶液は、約0.5~約2.0のアルカリ水酸化物対ホウ素のモル比を有する。組み合わされた組み合わせ及び水溶液は、約0.55~約1.0のアルカリ水酸化物対ホウ素のモル比を有し得る。組み合わされた組み合わせ及び水溶液は、約0.55~約0.80のアルカリ水酸化物対ホウ素のモル比を有し得る。
【0044】
好適なアルコールの例には、脂肪族アルコール、ジオール、及びポリオール、例えば、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、4-t-ブチルカテコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、及びEXXAL(商標)-8のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書の教示を前提として、本発明での使用に適した他のアルコールを選択することができる。
【0045】
好適な有機溶媒の例には、ケロシン、6~12個の炭素を有する脂肪族アルカン、例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ならびに芳香族化合物、例えば、トルエン、キシレン、及び石油エーテルが含まれるが、これらに限定されない。ExxonMobilから市販されているESCAID(商標)-110は、本開示に従って使用され得る好適な有機溶媒の別の例である。当業者は、本明細書の教示を前提として、本発明での使用に適した他の有機溶媒を選択することができる。本発明の一態様では、有機溶媒は、希釈剤である。
【0046】
一態様では、組み合わされる組み合わせ対水溶液の体積比は、約10:1~約25:1の範囲である。組み合わせ対水溶液の体積比は、少なくとも約10:1であり得る。組み合わせ対水溶液の体積比は、少なくとも約13:1であり得る。組み合わせ対水溶液の体積比は、少なくとも約22:1であり得る。
【0047】
B.加熱.
一態様では、アルカリ水酸化物を含む水溶液、ならびにアルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせは、有機層及び水層を形成するような温度に加熱することができる。例えば、水溶液と、アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせとの組み合わせから生じる容器の内容物は、約20℃~約100℃の温度に加熱することができる。加熱中、内容物は、有機層及び水層へと形成し、ホウ素は、組み合わせから水層へと抽出される。温度は、約20℃~約100℃の範囲であり得る。温度は、約40℃~約80℃の範囲であり得る。温度は、約50℃~約70℃の範囲であり得る。
【0048】
加熱は、水層が組み合わせからのホウ素の約95%超を含むまで継続される。加熱の持続時間は、容器の内容物の組成に応じて、本開示の教示を前提として、当業者によって決定することができる。
【0049】
C.分離.
一態様では、方法は、水層を有機層から分離することを含む。例えば、次いで、水層は、当業者によく知られている手段によって、容器の内容物から分離することができる。そのような方法は、水層からホウ素の約50%超、または95%超を分離することをさらに含むことができる。ホウ素は、当業者によく知られているように任意の好適な形態で、例えば、ホウ酸ナトリウム塩として、及び当業者によく知られているように任意の好適な手段によって、例えば、冷却または蒸発による濃縮後の結晶化によって分離することができる。さらに、ホウ素の分離後、残る水層は、アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせと組み合わされる水溶液の全部または一部として使用することができる。
【0050】
一態様では、容器の内容物からの水層の分離は、当業者に知られている手段によって、例えば、限定されないが、デカンテーション、相分離器の使用、または遠心分離器の使用によって行うことができ、水層からホウ素を回収することは、ホウ素をホウ酸ナトリウムとして、当業者に知られている手段によって、例えば、限定されないが、沈殿によって、回収することを含むことができる。
【0051】
本明細書に開示される方法は、そのような方法における水の必要性が、現在利用可能な
商業的方法と比較して実質的に低減されるという点で有利である。例えば、本発明の方法の使用は、現在の方法の使用と比較して、水の消費量を、約1.3から約0.4まで、ブラインの単位体積あたり0.15単位体積低減することができる。さらに、本発明の方法は、多段階再抽出ミキサー/セトラーの任意の必要性を排除する。また、本発明の方法の使用は、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)が沈殿し、副産物として販売することができるように、水性廃棄物流の体積の低減、及びホウ素値の回復を助ける。
【実施例
【0052】
本開示のより良好な理解を容易にするために、以下の実施形態の実施例が提供される。以下の実施例は、添付の特許請求の範囲を限定するか、または定義するために断じて読まれるべきものではない。
【0053】
実施例1.バッチ型反応器で実施
250mlのPYREX(商標)フラスコに、7,970ppmのホウ素を含有する66.3gの酸性化濃縮ブラインと、15体積%のEXXAL(商標)-8及び85 体積%のESCAID(商標)-110を含有する161.6gの有機溶液とを入れた。ボトルを手で3分間激しく振盪した後、混合物を相分離のために分液漏斗に移した。分離された有機層におけるホウ素濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)によって3,160ppmであると決定された。ICP決定に使用される機器は、PerkinElmer,Inc.から入手可能なModel 5300 Dual Viewである。
【0054】
次いで、撹拌棒を備えた250mlのPYREX(商標)丸底フラスコに、分離された有機層の142.8g部分(41.7mmolのB)及び9.0gの13重量%水酸化ナトリウム溶液(29.3mmolのNaOH)を入れた。混合物を、撹拌しながら加熱マントルを介して60℃に加熱した。相を沈降させた後、上部の有機層の試料を、15、30、及び60分の混合後に採取した。スラリー混合物である底部の水層を、0.45μ濾紙を使用して濾過した。有機層及び水性濾液の組成を表1に示す。
【0055】
上記の実施例1において、分離された有機層対水酸化ナトリウム溶液の体積比は、約22:1である。
【表1】
【0056】
実施例2.バッチ型反応器で実施
機械式オーバーヘッドスターラーを備えた500mlのPYREX(商標)丸底フラスコに、3,430ppmのホウ素(67.9mmolのB)、15 体積%のEXXAL(商標)-8、及び85 体積%のESCAID(体積)-110を含有する214gの有機溶液と、7重量%のNaOH(37.9mmolのNaOH)を含有する21.7gの水性苛性溶液とを入れた。混合物を500rpmの撹拌器速度で60℃に加熱した。60℃で30分の混合後、撹拌を停止して相を安定させた。上部の有機層及び底部の水層の組成を表2に示す。分離された有機層におけるホウ素濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)によって決定された。ICP決定に使用される機器は、PerkinElmer,Inc.から入手可能なModel 5300 Dual Viewである。
【0057】
上記の実施例2において、有機溶液対水性苛性溶液の体積比は、約13:1である。
【表2】
【0058】
実施例3.連続撹拌槽型反応器(CSTR)で実施
反応器は、内径2.5インチのジャケット付きガラス容器であった。混合は、速度制御器に接続された、デュアル2インチ直径TEFLON(商標)ピッチブレードを備えたインペラーによって提供された。4,350ppmのホウ素、20 体積%のEXXAL(商標)-8、及び80 体積%のESCAID(商標)-110を含有する有機溶液、ならびに7.0%NaOHを含有する水性苛性溶液を、700rpmの撹拌器速度で反応温度を69℃に維持しながら、それぞれ、4.06g/分及び0.53g/分の一定流量で反応器に同時供給した。反応塊は、約350mlの反応器体積に位置するオーバーフローポートを介して、2リットルのレシーバーに向かって反応器を出た。試料は、各ターンオーバー体積で反応器から直接取り出した。有機層試料の組成を表3に示す。分離された有機層におけるホウ素濃度は、誘導結合プラズマ(ICP)によって決定された。ICP決定に使用される機器は、PerkinElmer,Inc.から入手可能なModel 5300 Dual Viewである。
【0059】
上記の実施例3において、有機溶液対水性苛性溶液の体積比は、約10:1である。
【表3】
【0060】
主題は、多数の態様及び特定の実施例を参照して上述される。上記の詳細な説明を踏まえると、多くの変形例が当業者に示唆されるであろう。そのような明らかな変形は全て、添付の特許請求の完全な意図される範囲内にある。本明細書に開示される主題の他の態様は、以下を含むことができるが、これらに限定されない(態様は、「含む」として記載されるが、代替的に、「から本質的になる」、または「からなる」とすることができる)。
【0061】
態様1.(A)容器において、(i)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせと、(ii)水溶液の総重量に基づいて約3重量%~約25重量%のアルカリ水酸化物を含む水溶液とを組み合わせることであって、(iii)前記アルカリ水酸化物対前記ホウ素のモル比が、約0.5~2.0であり、(iv)前記組み合わせ対前記水溶液の体積比が、約10:1~約25:1の範囲である、前記組み合わせることと、(B)前記容器の内容物を、前記内容物が有機層及び水層を含み、前記水層が前記組み合わせからの前記ホウ素の約95%超を含むまで、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱することと、(C)前記容器の前記内容物から前記水層を分離することと、を含む、方法。
【0062】
態様2.前記方法がさらに(D)前記ホウ素の約50%超を前記水層から分離すること
をさらに含む、態様1に定義される方法。
【0063】
態様3.前記方法がさらに(E)(D)後に残る前記水層を(A)における前記水溶液の全部または一部として使用することをさらに含む、態様2に定義される方法。
【0064】
態様4.(B)における前記温度が、約40℃~約80℃の範囲である、態様1~3のいずれか1つに定義される方法。
【0065】
態様5.(B)における前記温度が、約50℃~約70℃の範囲である、態様1~3のいずれか1つに定義される方法。
【0066】
態様6.前記アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムである、態様1~3のいずれか1つに定義される方法。
【0067】
態様7.前記ホウ素が、ホウ酸ナトリウムとして前記水層から分離される、態様2~6のいずれかに定義される方法。
【0068】
態様8.前記アルカリ水酸化物が、前記水溶液中に、前記水溶液の総重量に基づいて、約5重量%~約25重量%の範囲の量で存在する、態様1~7のいずれかに定義される方法。
【0069】
態様9.(A)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み合わせを、アルカリ水酸化物を含む水溶液と、有機層及び水層を形成するために十分な条件で接触させることであって、(i)前記アルカリ水酸化物が、前記水溶液の総重量に基づいて、約3重量%~約25重量%の範囲の量で存在し、(ii)前記アルカリ水酸化物対前記ホウ素のモル比が、約0.5~2.0の範囲であり、(iii)前記水層が、前記組み合わせからの前記ホウ素の約95%超を含み、(iv)前記組み合わせ対前記水溶液の体積比が、約10:1~約25:1の範囲である、前記接触させることと、(B)前記有機層から前記水層を分離することと、を含む、方法。
【0070】
態様10.前記組み合わせ及び水溶液が、約20℃~約100℃の範囲の温度に加熱される、態様9及び15に定義される方法。
【0071】
態様11.(C)前記ホウ素の約50%超を前記水層から分離することをさらに含む、態様9~10及び15のいずれか1つに定義される方法。
【0072】
態様12.(C)後に残る前記水層を(A)における前記水溶液の全部または一部として使用することをさらに含む、態様11及び15に定義される方法。
【0073】
態様13.(A)における前記温度が、約40℃~約80℃の範囲である、態様9~12及び15のいずれか1つに定義される方法。
【0074】
態様14.前記アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、態様9~13及び15のいずれか1つに定義される方法。
【0075】
態様15.前記ホウ素が、ホウ酸ナトリウムとして前記水層から分離される、態様11に定義される方法。
【0076】
態様16.(a)容器において、(i)アルコール、有機溶媒、及びホウ素を含む組み
合わせと、(ii)約1重量%~約25重量%のアルカリ水酸化物を含む水溶液と、を組み合わせることであって、前記アルカリ水酸化物対前記ホウ素のモル比が、約0.5~2.0である、前記組み合わせることと、(b)前記容器の内容物を、前記内容物が有機層及び水層を含み、前記水層が前記組み合わせからの前記ホウ素の約95%超を含むまで、約20℃~約100℃の温度に加熱することと、(c)前記容器の前記内容物から前記水層を分離することと、を含む、方法。
【0077】
態様17.(d)前記ホウ素の約50%超を前記水層から分離することと、(e)(d)後に残る前記水層を(a)における前記水溶液の全部または一部として使用することと、をさらに含み、(b)における前記温度が、約40℃~約80℃であり、(b)における前記温度が、約50℃~約70℃であり、前記アルカリ水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムであり、前記ホウ素が、ホウ酸ナトリウムとして前記水層から分離される、態様16によって定義される方法。