(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ステータコア、ステータユニット及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
H02K1/18 A
(21)【出願番号】P 2021552310
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037470
(87)【国際公開番号】W WO2021075275
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019189689
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 洋平
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172376(JP,A)
【文献】特開2011-214086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアプレートが積層されて構成され、モータのケース内に収容されるステータコアであって、
前記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びて軸方向
の一方側に曲がった複数の弾性突起が周方向に並んで設けられた弾性突起付きコアプレートが含まれており、
前記複数の弾性突起が前記ケースの内周面に接触して弾性的に撓んだ状態で前記ケースに支持される
と共に、
前記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びる複数の平突起が周方向に並んで設けられた平突起付きコアプレートが含まれており、
前記複数の平突起の先端部が前記ケースの内周面に対して間隙を隔てて対向して配置されており、
前記平突起付きコアプレートは、前記弾性突起付きコアプレートに対して軸方向の他方側に積層されており、
前記複数の弾性突起と前記複数の平突起とが軸方向に並んで配置されているステータコア。
【請求項2】
前記複数の弾性突起には、先端部が前記弾性突起付きコアプレートの径方向内側を向くように曲がった内向き弾性突起が含まれている請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
前記複数の弾性突起には、焼入れが施されている請求項1又は請求項2に記載のステータコア。
【請求項4】
モータのケースと、
前記ケース内に収容された請求項1~請求項3の何れか1項に記載のステータコアと、
を有するステータユニット。
【請求項5】
前記ケースの内周面には、前記複数の弾性突起が挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、前記ケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間には隙間が設けられている請求項4に記載のステータユニット。
【請求項6】
モータのケースと、
複数のコアプレートが積層されて構成され、前記ケース内に収容されたステータコアと、
を有し、
前記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びて軸方向に曲がった複数の弾性突起が周方向に並んで設けられた弾性突起付きコアプレートが含まれており、
前記複数の弾性突起が前記ケースの内周面に接触して弾性的に撓んだ状態で前記ケースに支持されており、
前記ケースの内周面には、前記複数の弾性突起が挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、
前記ケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間には隙間が設けられてい
るステータユニット。
【請求項7】
前記ステータコアが前記ケースに対して径方向に変位した場合、前記複数の弾性突起が弾性変形する範囲内で、前記ステータコアの外周面の一部が前記ケースの内周面の一部に接触する
請求項5又は請求項6に記載のステータユニット。
【請求項8】
請求項
4~請求項7の何れか1項に記載のステータユニットと、
前記ステータユニットが有するステータコアの内側に収容されたロータコアと、
を備えたモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコア、該ステータコアを有するステータユニット、及び該ステータユニットを有するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5181994号公報には、周方向に延在するヨーク部と、該ヨーク部から径方向に延在するティース部とを夫々が備える複数の固定子片が周方向に組み合わされて形成される分割型固定子が記載されている。この分割型固定子では、ヨーク部の周方向における両端面から上記周方向に延在する2つのスリットが、複数の固定子片のヨーク部の夫々に形成されている。これにより、複数の固定子片がケースに収められる際に生じる応力を上記2つのスリットの間の領域に集中させることにより、電動機の効率低下の原因となる鉄損を低減させるようにしている。
【0003】
特許2006-333657号公報には、複数のコアプレートが積層されることによって構成されるステータコアをケースに収容させたステータユニットと、該ステータユニットに対して回転自在なロータとを有するモータが開示されている。このモータでは、ステータコアを、第一の部分と、軸線方向で第一の部分の両端部に重なるように固定される第二の部分とから構成している。第一の部分は、ケースの内径よりも小さい外径を有するコアプレートが積層されて構成されている。第二の部分を構成するコアプレートは、第一の部分を構成するコアプレートと同じ外径を有する基部と、該基部の外周部から延設された複数の突起部を有している。そして、これら複数の突起部のみでステータコアとケースとを接触させることにより、ステータコアにおいて応力が作用する領域を小さくするようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第5181994号公報に記載された先行技術は、複数の固定子片に分割されていない一体型の固定子鉄心に対しては適用することができない。また、ケースとステータコアの寸法精度次第では、隣り合う固定子片の内径側において各固定子片の周方向端面が互いに強く接することにより、円周方向に圧縮応力が発生するおそれがあり、これを防ぐためには厳しい寸法精度管理が必要となる。しかしながら、そのような寸法精度管理を量産で行うのは非常に困難であり、可能であっても製造コストが増加する原因となる。
【0005】
特許2006-333657号公報に記載された先行技術では、第二の部分を構成するコアプレートの基部の外周部から延設された複数の突起部は、基部に接続された部分において、上記コアプレートの径方向の剛性が高くなっている。このため、ケース及び各突起部の寸法精度次第では、各突起部がケースから受ける径方向の荷重がコアプレートの基部に伝わり、コアプレートの基部(ヨーク部)に高い圧縮応力が発生して、鉄損が増加するおそれがある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、従来よりも鉄損を低減可能で且つ寸法精度管理が容易なステータコア、該ステータコアを有するステータユニット、及び該ステータユニットを有するモータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様のステータコアは、複数のコアプレートが積層されて構成され、モータのケース内に収容されるステータコアであって、前記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びて軸方向に曲がった複数の弾性突起が周方向に並んで設けられた弾性突起付きコアプレートが含まれており、前記複数の弾性突起が前記ケースの内周面に接触して弾性的に撓んだ状態で前記ケースに支持される。
【0008】
第1の態様のステータコアは、複数のコアプレートが積層されて構成され、モータのケース内に収容される。上記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びて軸方向に曲がった複数の弾性突起が周方向に並んで設けられた弾性突起付きコアプレートが含まれている。このステータコアは、上記複数の弾性突起がケースの内周面に接触して弾性的に撓んだ状態でケースに支持される。これにより、ステータコアのヨーク部に圧縮応力が発生することを防止又は効果的に抑制できるので、従来よりも鉄損を低減可能となる。また、上記の複数の弾性突起の弾性的な撓みにより、ケース及びステータコアの寸法ばらつきを吸収することができるので、寸法精度管理が容易になる。
【0009】
第2の態様のステータコアは、第1の態様において、前記複数の弾性突起には、先端部が前記弾性突起付きコアプレートの径方向内側を向くように曲がった内向き弾性突起が含まれている。
【0010】
第2の態様のステータコアによれば、弾性突起付きコアプレートの外周部に設けられた複数の弾性突起には、先端部が弾性突起付きコアプレートの径方向内側を向くように曲がった内向き弾性突起が含まれている。このため、このステータコアがケースに対して径方向に変位すると、内向き弾性突起の先端部がステータコアの外周面に接触し、内向き弾性突起のばね定数が増加する。これにより、上記の変位を抑制することができ、内向き弾性突起を含む複数の弾性突起が塑性変形することを防止できる。
【0011】
第3の態様のステータコアは、第1の態様又は第2の態様において、前記複数の弾性突起には、焼入れが施されている。
【0012】
第3の態様のステータコアによれば、複数の弾性突起には、焼入れが施されているので、各弾性突起のへたりを抑制することができ、各弾性突起の耐久性を向上させることができる。
【0013】
第4の態様のステータコアは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様において、前記複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びる複数の平突起が周方向に並んで設けられた平突起付きコアプレートが含まれており、前記複数の平突起の先端部が前記ケースの内周面に対して間隙を隔てて対向して配置される。
【0014】
第4の態様のステータコアによれば、複数のコアプレートには、外周部から径方向外側へ延びる複数の平突起が周方向に並んで設けられた平突起付きコアプレートが含まれている。複数の平突起の先端部は、ケースの内周面に対して間隙を隔てて対向して配置される。このため、このステータコアがケースに対して径方向に変位すると、平突起の先端部がケースの内周面に接触し、上記の変位すなわち複数の弾性突起の変形を規制することができる。その結果、複数の弾性突起が塑性変形することを防止可能となる。
【0015】
第5の態様のステータユニットは、モータのケースと、前記ケース内に収容された第1の態様1~第4の態様の何れか1つの態様のステータコアと、を有している。
【0016】
第5の態様のステータユニットでは、モータのケース内にステータコアが収容されている。このステータコアは、第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様のステータコアであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【0017】
第6の態様のテータユニットは、第5の態様において、前記ケースの内周面には、前記複数の弾性突起が挿入される複数の溝が周方向に並んで形成されており、前記ケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間には隙間が設けられている。
【0018】
第6の態様のステータユニットでは、ステータコアが有する弾性突起付きコアプレートの外周部に設けられた複数の弾性突起が、ケースの内周面に形成された複数の溝に挿入されている。これにより、ケースに対するステータコアの周方向の相対回転を規制することができるので、キーなどの回り止め部品が不要となる。また、ケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間には隙間が設けられるので、寸法精度の管理が容易になる。
【0019】
第7の態様のステータユニットは、第6の態様において、前記ステータコアが前記ケースに対して径方向に変位した場合、前記複数の弾性突起が弾性変形する範囲内で、前記ステータコアの外周面の一部が前記ケースの内周面の一部に接触する。
【0020】
第7の態様のステータユニットでは、上記のようにステータコアの外周面の一部がケースの内周面の一部に接触することで、ステータコアの上記変位が規制される。この状態は、複数の弾性突起が弾性変形する範囲内とされているので、複数の弾性突起が塑性変形することを防止できる。
【0021】
第8の態様のモータは、第5の態様~第7の態様の何れか1つの態様のステータユニットと、前記ステータユニットが有するステータコアの内側に収容されたロータコアと、を備えている。
【0022】
第8の態様のモータでは、ステータユニットが有するステータコアの内側にロータコアが収容されている。上記のステータユニットは、第5の態様~第7の態様の何れか1つの態様のステータユニットであるため、前述した作用及び効果が得られる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るステータコア、ステータユニット及びモータでは、従来よりも鉄損を低減可能で且つ寸法精度管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの断面図である。
【
図2】
図1のF2-F2線に沿った切断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】
図2において符号Aを付した領域を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】ステータコアの偏心について説明するための
図1に対応した断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るモータの部分的な構成を示す
図3に対応した断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るモータの部分的な構成を示す
図1の一部に対応した断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係るモータの部分的な構成を示す
図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の第1実施形態に係るモータ10について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るモータ10は、ステータユニット12内にロータコア18が設けられたインナーロータ型とされている。ステータユニット12は、有底筒状に形成されたケース14と、該ケース14内に収容されたステータコア16とを有している。
【0026】
ロータコア18は、ロータの鉄心を構成するものであり、円筒状に形成されている。このロータコア18は、複数のコアプレートが積層されて構成されている。なお、
図2では、ロータコア18を概略的に記載している。このロータコア18の軸心部には、図示しない回転軸が同軸的に固定されている。この回転軸は、図示しない軸受を介してケース14に回転可能に支持されている。ロータコアの外周側には、複数の磁石孔20が周方向に並んで形成されている。これらの磁石孔20には、図示しない永久磁石が挿入されている。
【0027】
ステータコア16は、ステータの鉄心を構成するものであり、略円筒状に形成されている。このステータコア16は、複数のコアプレート24が積層されて構成されている。なお、
図2及び
図3では、各コアプレート24の断面のハッチングを省略している。複数のコアプレート24は、電磁鋼板が環状に打ち抜かれたものであり、軸線方向に積層されている。ステータコア16の外周側には、ヨーク部16Aが設けられており、ステータコア16の内周側には、複数のティース部16Bが設けられている。複数のティース部16Bは、ステータコア16の周方向に並んで等間隔に配置されている。これらのティース部16Bには、図示しない巻線が巻き回されてコイルが形成されている。
【0028】
複数のコアプレート24には、積層方向に並ぶ所定枚数毎(例えば10枚毎)に弾性突起付きコアプレート24Aが含まれており、積層方向に隣り合う弾性突起付きコアプレート24Aの間には、所定枚数(例えば9枚)の突起無しコアプレート24Bが配置されている。つまり、複数のコアプレート24は、複数の弾性突起付きコアプレート24Aと、複数の突起無しコアプレート24Bとによって構成されている。複数の突起無しコアプレート24Bと複数の弾性突起付きコアプレート24Aとは、例えばかしめ積層によって互いに結合されている。
【0029】
突起無しコアプレート24Bは、内周部及び外周部に突起を有しない環状に形成されている。弾性突起付きコアプレート24Aは、突起無しコアプレート24Bと同様の構成とされたプレート本体26と、プレート本体26の外周部から延出された複数の弾性突起28とを有している。複数の弾性突起28は、プレート本体26の径方向の外側へ延びると共に、各コアプレート24の軸方向の一方側へ曲がっている。複数の弾性突起28は、各コアプレート24の周方向に等間隔(ここでは90度間隔)に並んで配置されている。各弾性突起28は、弾性突起付きコアプレート24Aを構成する電磁鋼板の一部が曲げ加工されたものであり、
図2及び
図3に示されるように、各コアプレート24の周方向から見て円弧状に曲がっている。これらの複数の弾性突起28は、ばね性を有している。また、これら複数の弾性突起28には、浸炭焼入れ等の焼入れ(熱処理)が施されている。
【0030】
本実施形態では、前述したように、複数のコアプレート24には、積層方向に並ぶ所定枚数毎に弾性突起付きコアプレート24Aが含まれている。そして、所定枚数の突起無しコアプレート24Bを間に挟んで積層方向に隣り合う弾性突起付きコアプレート24Aが、周方向に位相を所定角度(ここでは45度)ずらされて配置されている。なお、弾性突起28の数や配置は適宜変更可能である。
【0031】
上記構成のステータコア16は、ケース14の内側に収容されており、複数の弾性突起28がケース14の内周面に接触して弾性的に撓んだ状態でケース14に支持(保持)されている。つまり、ステータコア16は、上記のように撓んだ複数の弾性突起28が発生させるばね荷重によってケース14に対して支持されており、ケース14に対して同軸的に配置されている。各弾性突起28をステータコア16の径方向内側へ変形させる際の剛性は、プレート本体26をステータコア16の径方向内側へ変形させる際の剛性よりも低く設定されている。これら複数の弾性突起28のばね荷重は、ケース14の内径寸法及びステータコア16の外径寸法のばらつきによって大きく変化することがないように設定されている。
【0032】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
本実施形態では、ステータコア16は、複数のコアプレート24が積層されて構成されており、モータ10のケース14内に収容されている。複数のコアプレート24には、外周部から径方向外側へ延びて軸方向に曲がった複数の弾性突起28が周方向に並んで設けられた弾性突起付きコアプレート24Aが含まれている。このステータコア16は、複数の弾性突起28がケース14の内周面に接触して弾性的に撓んだ状態でケース14に支持されている。これにより、ステータコア16のヨーク部16Aに圧縮応力が発生することを防止又は効果的に抑制できるので、従来よりも鉄損を低減可能となる。また、複数の弾性突起28の弾性的な撓みにより、ケース14及びステータコア16の寸法ばらつきを吸収することができるので、寸法精度管理が容易になる。
【0034】
上記の効果について補足すると、例えば外周部が平滑な円筒状のステータコアをモータのケースに固定する場合、一般的にはしまりばめで固定される。この場合、ステータコア外周面に径方向内側への荷重が加わることによって、ステータコアのヨーク部に周方向の圧縮応力が発生して鉄損が増加する。上記の圧縮応力を極力低減する為には寸法精度を厳しく管理する必要があるが、現実的には一定量の寸法ばらつきが生じる。また、ステータコア及びケースの剛性が高いため、僅かな寸法ばらつきによって固定力が大きく変化する。したがって、場合によっては必要な固定力が得られないおそれがあるが、これを防止するためには確実に必要な固定力が発生するしまりばめになるような寸法公差で設計される。そうすると、ばらつき範囲内で最大のしまりばめ代となる場合は、必要以上のしまりばめ代によって過度な固定力が発生し、ステータコアのヨーク部に作用する圧縮応力が増加することにより、鉄損が増加してしまう。
【0035】
この点、本実施形態では、ステータコア16は、弾性突起付きコアプレート24Aの外周部に設けられた複数の弾性突起28のばね荷重によってケース14に支持される。各弾性突起28をステータコア16の径方向内側へ変形させる際の剛性は、プレート本体26をステータコア16の径方向内側へ変形させる際の剛性よりも低く設定されている。これにより、ステータコア16及びケース14に寸法誤差があっても、ステータコア16のヨーク部16Aに加わる径方向の荷重が大きく変化することなく、ステータコア16の保持力を適正な範囲内に保つことが可能である。その結果、従来に比して鉄損を低減することができ、モータ10の効率を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、モータ10の駆動時に発生するステータコア16の熱を、複数の弾性突起28を介してケース14に伝達し、ケース14からモータ10の外部に放熱することができる。つまり、複数の弾性突起28が熱伝導部材として機能する。しかも、弾性突起付きコアプレート24Aの外周部に複数の弾性突起28が一体に設けられているので、コアプレート24とは別体の熱伝導部材を設ける場合と比較して、部品点数を少なくすることができ、製造コストの低減に寄与する。
【0037】
また、本実施形態では、複数の弾性突起28には、浸炭焼入れ等の焼入れが施されているので、各弾性突起28のへたりを抑制することができ、各弾性突起28の耐久性を向上させることができる。その結果、モータ10の磁気吸引力が大きい場合、ステータコアの振動が大きい場合、或いはステータコア16の振動周波数が高い場合でも、複数の弾性突起28がへたることを抑制できる。これにより、
図4に示される比較例10’のように、ステータコア16がケース14に対して不可逆的に偏芯してしまうことを防止できる(
図4において、G1<G2)。
【0038】
つまり、ロータコア18とステータコア16との間に弾性突起28が塑性変形するような磁気吸引力が発生すると、ステータコア16とケース14が不可逆的な偏芯をしてしまう。上記の磁気吸引力は、ロータコア18とステータコア16との偏芯によって発生するが、ロータコア18とステータコア16の隙間が小さいほど、磁気吸引力が増大するため、偏芯によって更に偏芯が促進されことになる。このような偏心により、各弾性突起28のへたりが問題となるが、本実施形態では上記の焼入れにより、各弾性突起28のへたりを抑制することができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明済みの実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、説明済みの実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0040】
<第2の実施形態>
図5には、本発明の第2実施形態に係るモータの部分的な構成が
図3に対応した断面図にて示されている。この実施形態は、第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、弾性突起付きコアプレート24Aの外周部には、複数の内向き弾性突起28Aが周方向に並んで設けられている。これらの内向き弾性突起28Aは、第1実施形態に係る弾性突起28と同様に、プレート本体26の径方向の外側へ延びると共に、各コアプレート24の軸方向の一方側へ曲がっているが、二段階に曲げられた構成になっている。具体的には、各内向き弾性突起28Aの先端部側には、各内向き弾性突起28Aの基端部側よりも曲げ半径が小さい曲部29が形成されており、各内向き弾性突起28Aは、先端部が弾性突起付きコアプレート24Aの径方向内側を向くように曲がっている。各内向き弾性突起28Aの先端部は、ステータコア16の外周面に対して離間して配置されている。また、ケース14及びステータコア16に生じる寸法ばらつきの範囲内では、各内向き弾性突起28Aの先端部がステータコア16の外周面に接触しないように構成されている。
【0041】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。したがって、この実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果が得られる。しかも、この実施形態では、ステータコア16がケース14に対して径方向に変位すると、当該変位方向に位置する内向き弾性突起28Aの撓み量が増加する。その結果、内向き弾性突起28Aの先端部がステータコア16の外周面に接触し、内向き弾性突起28Aのばね定数が増加(変化)する。これにより、ステータコア16の変位を抑制することができ、内向き弾性突起28Aが塑性変形することを防止できる。その結果、
図4に示されるようなステータコア16の不可逆的な偏芯を防ぐことができる。
【0042】
また、内向き弾性突起28Aの撓み量が少ないとき、すなわち各内向き弾性突起28Aの先端部がステータコア16の外周面に接触していないときには、ステータコア16は、複数の弾性突起28のばね荷重によってケース14に支持される。これにより、ステータコア16のヨーク部16Aに圧縮応力が発生することを防止又は効果的に抑制できるので、従来よりも鉄損を低減可能となる。また、複数の弾性突起28の弾性的な撓みにより、ケース14及びステータコア16の寸法ばらつきを吸収することができるので、寸法精度管理が容易になる。
【0043】
<第3の実施形態>
図6には、本発明の第3実施形態に係るモータの部分的な構成が
図1の一部に対応した断面図にて示されている。この実施形態は、第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、ケース14の内周面には、複数の弾性突起28が挿入(嵌入)される複数の溝30(
図6では一つのみ図示)が周方向に並んで形成されている。これら複数の溝30は、ケース14の軸線方向に延在している。これら複数の溝30の深さは、ケース14の内周面とステータコア16の外周面との間に環状の隙間32が形成されるように設定されている。また、各溝30の幅は、各弾性突起28の幅と同等に設定されている。この実施形態において、ステータコア16がケース14に対して径方向に変位した場合、複数の弾性突起28が弾性変形する範囲内で、ステータコア16の外周面の一部がケース14の内周面の一部に接触するように構成されている。
【0044】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。したがって、この実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果が得られる。しかも、ステータコア16の複数の弾性突起28が、ケース14の複数の溝30に挿入されている。これにより、モータ10の駆動時に発生する回転トルクを、複数の弾性突起28と複数の溝30との係合部分で支えることが可能となる。その結果、ケース14に対するステータコア16の周方向の相対回転を、キーなどの回り止め部品を用いずに規制することができる。また、ケース14の外周面とステータコア16の外周面との間には隙間32が設けられるので、ケース14及びステータコア16の寸法ばらつきを吸収することができる。また、この実施形態では、ステータコア16がケース14に対して径方向に変位した場合、ステータコア16の外周面の一部がケース14の内周面の一部に接触することで、ステータコア16の上記変位が規制される。この状態は、複数の弾性突起28が弾性変形する範囲内とされているので、複数の弾性突起28が塑性変形することを防止できる。その結果、
図4に示されるようなステータコア16の不可逆的な偏芯を防ぐことができる。
【0045】
<第4の実施形態>
図7には、本発明の第4実施形態に係るモータの部分的な構成が
図3に対応した断面図にて示されている。この実施形態は、第1実施形態と基本的に同様の構成とされているが、複数のコアプレート24には、外周部から径方向外側へ延びる複数の平突起34が周方向に並んで設けられた複数の平突起付きコアプレート24Cが含まれている。平突起付きコアプレート24Cは、突起無しコアプレート24Bと同様の構成とされたプレート本体26と、プレート本体26の外周部から延出された複数の平突起34とを有している。複数の平突起34の先端部は、ケース14の内周面に対して間隙を隔てて対向して配置されている。
【0046】
この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。したがって、この実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果が得られる。しかも、この実施形態において、ステータコア16がケース14に対して径方向に変位すると、平突起34の先端部がケース14の内周面に接触し、ステータコア16の変位すなわち複数の弾性突起28の変形を規制することができる。その結果、複数の弾性突起28が塑性変形することを防止可能となる。
【0047】
以上、幾つかの実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【0048】
なお、2019年10月16日に出願された日本国特許出願2019-189689号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。