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特許7544746ノイズキャンセレーション付き低ノイズ増幅器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ノイズキャンセレーション付き低ノイズ増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/26 20060101AFI20240827BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20240827BHJP
   H03F 3/30 20060101ALI20240827BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H03F1/26
H03F3/189
H03F3/30
H03F3/68
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021564679
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020021355
(87)【国際公開番号】W WO2020222912
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】16/399,599
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガネヴァティ、マヌーチェフル
(72)【発明者】
【氏名】ラロッカ、ティモシー、アール.
(72)【発明者】
【氏名】トリペット、ジョン エム.
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102394571(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0271223(US,A1)
【文献】国際公開第2017/069776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のSOI基板上に収容されたCMOSトランジスタを有し、ノイズキャンセル機能を有する回路を備え、40GHzから60GHzの周波数範囲にわたって動作するように構成された低ノイズ増幅器であって、
前記低ノイズ増幅器は、
1つまたは複数の前記CMOSトランジスタを使用する増幅器と、
1つまたは複数の前記CMOSトランジスタを使用する補助増幅器と、
加算回路と、
前記補助増幅器の1つまたは複数のトランジスタからの出力と前記加算回路との間、及び前記補助増幅器の1つまたは複数のトランジスタへの入力とグランドとの間の少なくとも一方において、前記補助増幅器の1つまたは複数のトランジスタと直列に接続された少なくとも1つのインダクタを有し、
前記増幅器は、入力された第1の信号および第1の雑音信号を増幅し、対応する増幅された第2の信号および第2の雑音信号をそれぞれ生成して出力し、
前記増幅された第2の信号は前記第1の信号の位相に対して180度位相がずれており、増幅された前記第2の雑音信号は前記第1の雑音信号と同じ位相を有し、前記第1の信号は、40GHzから60GHzの範囲の周波数を有し、
前記補助増幅器は、前記第1の信号および前記第1の雑音信号を補助入力で受信し、前記第1の信号および前記第1の雑音信号が増幅された信号である第3の信号および第4の信号をそれぞれ補助出力で生成し、
前記第3の信号および前記第4の信号はそれぞれ、前記第1の信号および前記第1の雑音信号の位相に対して180度の位相を有し、前記補助増幅器によって提供される増幅の量は、前記増幅器によって提供される増幅の量に等しく、
前記加算回路は、前記第2の信号、前記第2の雑音信号、前記第3の信号、および前記第4の信号を受信し、加算出力において結果信号を生成し、
前記結果信号は、同じ位相を有する前記第2の信号および前記第3の信号の加算と、逆位相を有する前記第2の雑音信号および前記第4の信号の加算と、を含み、
前記逆位相を有する前記第2の雑音信号および前記第4の信号の加算は、前記第2の雑音信号および前記第4の信号の振幅が等しいが180度の逆位相を有することにより、前記第2の雑音信号および前記第4の信号を積分により相殺することにより、前記ノイズキャンセル機能を実現し、
前記少なくとも1つのインダクタは、前記補助増幅器の1つまたは複数のトランジスタに関連する内部静電容量による影響を補償し、周波数範囲にわたって容量性のインピーダンスを低下させるインダクタンスを提供するように構成され、
前記増幅器と前記補助増幅器の前記CMOSトランジスタおよび加算回路は、単一のSOI基板上に配置され、
前記増幅器は、前記増幅器の出力として一緒に接続されたそれぞれのドレインと共にカスコード動作で構成された少なくとも2つのCMOSトランジスタを含み、
前記加算回路は、少なくとも1つのCMOSトランジスタを含み、
前記補助増幅器は、互いにカスコード接続され、前記加算回路の少なくとも1つのCMOSトランジスタと接続された少なくとも2つのCMOSトランジスタを含み、
前記補助増幅器のカスコード接続されたトランジスタの1つに電流を注入するように接続され、カスコード接続された少なくとも2つのCMOSトランジスタに前記注入した電流を流し、前記加算回路の前記少なくとも1つのCMOSトランジスタに前記注入した電流を流さないように構成された、高出力インピーダンスのカスコード電流源をさらに備えた、
低ノイズ増幅器。
【請求項2】
前記結果信号が、40GHzから60GHzの周波数範囲にわたって3デシベル未満の関連する雑音指数を有する、請求項1に記載の低ノイズ増幅器。
【請求項3】
前記増幅器によって提供される増幅の量を制御する、前記増幅器に接続されたフィードバック抵抗器と、
前記第2の雑音信号のために前記増幅器によって与えられる利得と同じ無負荷時の利得を有する補助増幅器と、
をさらに備える、請求項1に記載の低ノイズ増幅器。
【請求項4】
前記増幅器の入力に接続され、前記周波数範囲の全体にわたってインピーダンス整合を提供するように構成された少なくとも1つのコンデンサおよび1つのインダクタを含む、周波数整合ネットワークをさらに備える、請求項1に記載の低ノイズ増幅器。
【請求項5】
一端が定電圧源に接続されかつ他端が前記加算回路に接続されるハイパスフィルタであって、前記加算回路が前記第2の信号及び前記第2の雑音信号を受信する前に前記第2の信号及び前記第2の雑音信号をフィルタリングするハイパスフィルタをさらに備える、請求項1に記載の低ノイズ増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はノイズキャンセレーションを有する低ノイズ増幅器に関し、ミリ波周波数での信号の増幅および広帯域CMOS用途のための半導体デバイスとしての実装に適しているが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
不要な信号の存在を最小限に抑えるために、特に低周波電子装置において、消去技術が採用されてきた。例えば、望ましくない信号の大きさを最小限に抑えるために、不要な信号と180°位相がずれている不要な信号のレプリカを、不要な信号に結合または追加することができる。レプリカ信号が正確に180°位相がずれており、不要な信号と等しい大きさを有する「完全である」条件下では、これらの信号を一緒に加算すると、実質的に全相殺となる。
【0003】
上述の技術を用いた不要な信号の除去は、例えばミリ波周波数のような、より高い周波数ではるかに困難になる。相殺される信号と等しい大きさだけでなく、完全な180°の位相関係を維持する上での課題のために、「完全である」レプリカ信号をより高い周波数で生成することはますます困難になる。キャンセルされる信号が増幅器と関連している場合、特に増幅器が高周波の実質的な範囲にわたって動作する場合には、さらに多くの課題が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態の目的はノイズキャンセレーションを備えた低ノイズ増幅器、特にこれに限定されないが、低ノイズ指数を提供しながら、実質的な範囲のミリ波周波数にわたって動作する増幅器の必要性を満足することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
低ノイズ増幅器の例示的な実施形態は40GHzから60GHzの周波数範囲にわたって低雑音指数および動作を提供するために、積分による雑音相殺を有する。半導体増幅器は、対応する入力と異なる位相の増幅された信号を表す入力信号と、対応する入力と同じ位相の増幅されたノイズを表すノイズとを、それぞれ増幅する。補助半導体増幅器は同じ入力を増幅し、共に入力に対して位相がずれている、増幅された信号および増幅されたノイズを生成する。加算回路は補助増幅器が増幅器と同じ量の増幅を提供し、加算される増幅された雑音信号が互いに180度位相がずれているので、これらの増幅された信号の全てをノイズ成分が打ち消されるように組み合わせる。好ましくは増幅器、補助増幅器、および加算装置は周波数範囲にわたるインピーダンス安定化を備えたSOI基板上に配置されたCMOSトランジスタを利用する。
【0006】
本発明の例示的な実施形態の特徴は、説明、特許請求の範囲、および添付の図面から明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態によるノイズ除去を備えた低ノイズ増幅器の概念を示す簡略概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるノイズ除去を備えた低ノイズ増幅器の一実施形態の概略図である。
図3】45nmの12SIO(絶縁体上のシリコン)を使用する72μmのCMOS半導体デバイスについて予想される雑音指数および利得を示すグラフである。
図4】ミリ波周波数での動作に適した、本発明の一実施形態によるノイズ除去を備えた低ノイズ増幅器のより詳細な概略図である。
図5】デバイス抽出前の図5に示す実施形態を表すノイズのグラフである。
図6】デバイス抽出後に図5に示す実施形態を表すノイズのグラフである。
図7図5に示される実施形態について、40から60GHzのミリメートル周波数範囲にわたる利得および入出力リターンロスを示すグラフである。
図8図5に示す実施形態に関連する3次歪みを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の1つの態様は、ノイズ相殺を達成するために二次増幅段と信号加算を利用することで、LNAの第1増幅段に付随するノイズに対するノイズ相殺を提供することにより、LNA回路の出力におけるノイズは主に、二次増幅段と加算段に付随するノイズのみによって決定されるという認識に属する。二次段および加算段は、ミリ波動作周波数においても非常に低い雑音指数を達成するように選択および構成することができる。
【0009】
図1は、本発明の実施形態100によるノイズキャンセレーションを備えた低ノイズ増幅器の概念を示す簡略化された概略図を示す。共通ソーストランジスタ105は、その出力Yが加算段110の1つの入力に結合された増幅段を提供する。また、トランジスタ105への入力Xは、その出力が加算段110の他方の入力に接続されている反転増幅器115への入力を提供する。抵抗Rは入力信号源の抵抗を表し、抵抗Rは帰還抵抗であり、その結果、増幅段によって与えられる増幅は、Y=X*(1m*R)となる。
【0010】
ノードXからノードYまでの雑音増幅率は、1+R/Rsである。
【0011】
*Rが1より大きい場合、Xにおける入力シグナル電圧Vrfは、増幅され、そしてVrf電圧と180°位相がずれているYにおける電圧を提供するために増幅される。電圧Vnは、トランジスタ105の入出力において同じ位相を有するノイズ電圧を表す。増幅器115によって提供される180°の位相反転は、Yにおける信号Vrfと同じ位相を有する増幅器115によって反転された信号Vrfをもたらす。したがって、信号は同相となり、加算器110の出力において大きさが加算される。しかしながら、増幅器115によって提供される180°位相反転は、XからのノイズVnが増幅され、増幅器115の出力におけるYでのノイズと180°位相がずれる結果となる。したがって、加算回路110で結合される雑音信号は、加算回路110の出力で減算される、すなわち逆の大きさで位相がずれる。雑音キャンセルを最大にするために、増幅器115によって提供される増幅は増幅器115の出力で提供される雑音の大きさがYでの雑音と同じ大きさであるが逆位相であるように、-(1+R/R)であるべきである。入力増幅段105のノイズがキャンセルされると、次いで、全体回路のノイズは、二次段、増幅器115、および加算回路110のノイズによってのみ実質的に決定される。加算回路110は3つの抵抗器の「Y」接続であってもよく、または、2つの信号経路を組み合わせるために、例えばトランジスタのような能動デバイスを使用してもよい。
【0012】
図2は、本発明によるノイズ除去を備えた低ノイズ増幅器の実施形態200のより詳細な概略図を示す。実施形態200では、実施形態100について説明したのと同じ雑音消去の基本原理が利用される。整合増幅器Q1Bは、増幅段を形成するために増幅器Q1Aと連動して動作する抵抗性帰還インバータとして実装される。アンプ段の全トランスコンダクタンスゲインはg=gm,nmos+gm,pmos、すなわちQ1AとQ1Bのゲインの合計である。物理的に実現される装置のサイズが増大することにつれて、ドレイン-ソース間抵抗Rdsが減少し、これにより雑音信号がチャンネル内に漏れて戻り、相殺されないことに注意すべきである。さらに、両方の能動入力増幅デバイスは入力寄生容量を示し、その結果、周波数依存性の雑音信号漏洩が生じる。
【0013】
結合された二次段および加算器205は、カスコード共通ソース増幅器Q2AおよびQ2Bの上部にソースフォロワQ3として実装される。雑音電圧ゲインA(=-(1+R/Rs))は、-gm2A/gm3に等しい。したがって、Q2Bのドレインから来る雑音信号の大きさがQ3のソースから来る雑音信号の大きさと同じになるように、Q2A装置は正しいゲインを達成するためにQ3のA倍の物理的なサイズにする必要がある。これは、増幅器Q1Aのドレインからの出力のゲインが「A」であることを意味している。Q2AのサイズがQ1AおよびQ1Bのゲートでの入力容量よりも大きすぎると、Cgs2(Q2Aのゲート・ソース間容量)が入力整合に影響するため、サイジングを考慮する必要がある。ソースフォロワQ3よりもはるかに大きいので、カスコード共通ソース増幅器Q2AおよびQ2Bからの電流を操縦するのを助けるために、別個の電流源215を使用することができる。ハイパスフィルタ、コンデンサCおよび抵抗Rは、Q3の入力ゲートに結合された増幅された信号をフィルタリングする。バイアス電圧は示されていないが、後述する実施形態を考慮すると当業者には明らかであろう。
【0014】
図3は、示されるような周波数に対して0.8vおよび10mAで動作する45nm12SIO(絶縁体上シリコン)技術を使用する72μmCMOS半導体デバイスについて予想される、両方ともデシベルでの雑音指数305および利得310を示すグラフを示す。雑音指数は60GHzで3db未満、40GHzで約2db未満であり、より低い周波数ではこれよりも低いことに留意されたい。40GHzでの最大利得は約11dbであり、60GHzでほぼ10db以下に実質的に直線的に降下する。これは、本発明の実施形態における使用のための適合性を実証する。
【0015】
図4は、ミリ波周波数の範囲、すなわち40GHzから60GHzにわたる動作に適したノイズキャンセレーションを備えた低ノイズ増幅器の実施形態400のより詳細な概略図を示す。実施形態400は実施形態200と実質的に同様であり、同じ原理を使用して動作する。したがって、これらの実施形態間の相違のみが主に議論される。実施形態200における5つの能動デバイスは、それぞれのトランジスタが対応する機能を実行する、実施形態400における類似の回路位置において、それぞれの5つのデバイスT1~T5に対応する。
【0016】
整合ネットワーク405はコンデンサC1とともに、信号源407とトランジスタT4およびT5によって提供される一次増幅段のゲートとの間のインピーダンス整合を提供するために入力整合ネットワークを形成する。同様に、コンデンサC2とともにマッチング・ネットワーク410は増幅された出力、すなわちトランジスタT3のソースと、抵抗Rloadによって表されるような増幅された信号を受信するための次のステージとの間のインピーダンス整合を提供するために、出力整合ネットワークを形成する。例示的実施形態400では、増幅器が40GHzから60GHzのミリメートル波動作に適している。DC供給電圧源415はアクティブデバイスに電力を供給するために、図に示したように提供される。理解されるように、トランジスタT2のゲートに付随するDCバイアス電圧源420は、トランジスタT2を動作の活性線形領域にバイアスするために適切なDC電圧に設定されるのであろう。
【0017】
実施形態400は、電流源425と、ミリメートル波長(MMW)周波数での広帯域動作を強化する入出力整合ネットワーク405および410との実装を提供する。20GHz範囲の動作を持つMMW応用のための成功した雑音消去(NC)LNAは挑戦的である。補助増幅器T1/T3の利得選択は、入力段T4/T5における雑音信号の電圧増幅比に基づくことが好ましい。重大な段間インピーダンス不整合またはノイズ電流漏れが存在する場合、入力段からのノイズの効果的な相殺は出力において生じない。しかしながら、ギガヘルツ周波数での整合ネットワークの実施は、寄生を加えるなどの複雑さを提供する。例えば、インダクタは一般に、CMOS技術で実装されるインダクタと同様に、インダクタ自体のインダクタンスおよび寄生容量の値に基づく自己共振周波数(SRF)を示す。また、インダクタに関連する抵抗損失もある。これらの要因は、動作の帯域幅(BW)に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの考慮から、入力増幅段の利得は、補助増幅器の無負荷利得よりも、例えば5倍高いことが好ましい。これは、補助増幅器のゲイン(つまり、|1+R/R|>gm2/gm3)よりも実質的に大きいR/Rレシオ(例えば、5倍以上)を選択することで実現できる。T1とT2は同じ大きさであるため、ゲイン(gm1/gm3)=(gm2/gm3)となる。入力段ゲインを高くすると、ノイズが入力段ゲインによって小さくなるため、帰還抵抗Rのノイズ寄与も小さくなる。
【0018】
入力段とフィードバック抵抗のノイズ寄与が今度は最小化されるので、出力段(補助増幅器プラス加算器)に関連するノイズが全体のLNAノイズを支配することになる。gm1およびgm2を増加させることは、より高い出力段ゲインをもたらし、それによって雑音を減少させることができる。これを達成する1つの方法は、外部電流源からの電流をステアリングすることである。トランジスタT1およびT2はトランジスタT3よりも高いgm値を有するので、トランジスタT1およびT2はトランジスタT3を通る電流に干渉することなく、より多くのDC電流を運ぶことができる。したがって、外部電流源を使用して、トランジスタT1およびT2のみに電流を供給することができる。補助増幅器から十分な絶縁を提供しない単純な電流源は、MMW周波数での雑音性能と周波数応答を劣化させる結果となる。これを克服するために、トランジスタT6からT9およびバイパスコンデンサC5を有するカスコード電流源425が、補助増幅器への望ましくない負荷効果を低減するために使用される。
【0019】
追加の拡張は、拡張された帯域幅にわたるMMW周波数でのより効果的な動作を支援する。具体的には、雑音低減を強化するためにインダクティブディジェネレーションを出力段に組み込む。例えば、T1のソースと直列のインダクタL3および増幅段内部入力容量Cgsと直列のインダクタL1を使用すると、周波数帯域幅の大部分にわたって所望の実入力インピーダンスが得られる。L3によるインダクティブディジェネレーションの使用は、広い周波数範囲にわたって改善された性能をもたらす。L3の適切な選択は、片手での入力インピーダンスと広帯域整合と雑音係数(NF)性能の間のバランスである。共通ゲートトランジスタT2のT3のソースとドレインの間にインダクタL4を挿入することにより、寄生低減技術を補助増幅器に適用することができる。これは、T3については全体の直列コンデンサCgsを、T2についてはCdsを相殺/低減する効果を有する。デバイスのサイズおよびL4の寄生容量に基づいて選択された値を有するインダクタL4はT2とT3との間の整合を実現するのに役立ち、その結果、最適な電流が流れ、システム内の利得が増加する。事実上、インダクタL4は、容量性の高い出力インピーダンス(T2のドレインを見ると)を、2つのトランジスタ間により効果的に電流が流れる、より低いインピーダンス値に変換する。この補正は、より高いゲインの結果として周波数の安定性が損なわれず、出力リターン・ロスも損なわれないように最適化されることが好ましい。例えば、45nmの12SOI技術の場合、デバイスサイズT1/T2に応じて、L4は、低電力用途の場合、80から150pHの範囲とすることができる。副段負荷効果の結果として雑音指数をさらに低減するために、数キロオームのゲート抵抗Rが使用される。T4/T5のドレインとT3のCgsの間の直列容量とゲート抵抗Rの組合せは、ハイパスフィルタを形成する。ハイパスフィルタは、希望する動作周波数範囲の低周波数を設定する。MMW応用のために、1ピコファラッドの少量の低損失コンデンサ値を使用することができる。
【0020】
インダクタは特にMMW周波数でのインピーダンス整合において重要であり、それらのインダクタンス値、Qファクタ、およびSRFに対して特性化されることが好ましい。すべてのインダクタは好ましくは40GHzから60GHzの範囲でアンプを動作させるために、100GHzを超えるSRFを示す必要がある。さらに、SOI技術におけるインダクタは、バルクシリコンで実装されるインダクタと比較して、より少ないオーム損失を被ることが期待される。
【0021】
動作周波数およびBWをさらに高めるために、広帯域入力整合ネットワーク405が使用されるべきである。入力及び出力DC阻止コンデンサC1、C2は、好ましくは入力及び出力整合回路の一部として組み込まれる。これはこれらのコンデンサがMMW周波数では典型的に小さく、例えば1pF未満であり、寄生及び損失がより小さくなるので好ましい。分路インダクタ(L2=106pH)、直列インダクタ(L1=100pH)、および分路コンデンサ(C4=26.5x10-15ファラッド)の組合せは電源インピーダンスへの広帯域インピーダンス変換を提供する。
【0022】
図5及び図6は、デバイス抽出の前後における図5に示す実施形態を表すノイズのグラフである。デバイス抽出は、デバイスの集積回路レイアウトに続いて、デバイスの種々のノードにおける抵抗、静電容量、およびインダクタンスを決定する。それは、装置の実際に実現可能な挙動をより良く予測する。
【0023】
図6に示すように、抽出を行い、すべての有意なノードにおけるデバイス容量および抵抗を計算した。図示のように、40GHzから60GHzまでの20GHz以上の3dBのNFまたはそれ以下が達成される。
【0024】
図7は、図5に示される実施形態についての、40~60GHzのミリメートル周波数範囲にわたる利得705、入力リターンロス710、および出力リターンロス715を示すグラフ700である。
【0025】
図8は、図5に示された実施形態に関連する3次歪みについてのシミュレートされた2階調試験の結果を表示するグラフ800である。グラフ800は、典型的な2階調テストのプロットである。増幅器の入力として二つの周波数信号f1とf2(周波数間隔0.5GHzのもの)が注入される。信号f1、f2のパワーを増加させ、増幅器の出力でf1信号、f2信号、2f1-f2、2f2-f1における歪積のパワーを測定する。出力三次相互変調積(OIP3)は、外挿された電力線傾斜805と810の交差から達成される。805および810の直線勾配は、それぞれ1および3である。OIP3に対する15dBmの予測値は、MMW周波数での低電力応用に対して非常に良好である。
【0026】
付加的線形化技術は、NFと入力整合、例えばDS(Derivative Superposition)に悪影響を及ぼすことなく、NCLNA回路に適用できる。DSは、入力増幅段におけるT4/T5の相補的性質を利用する。PMOS(T5)およびNMOS(T4)のゲートに異なるバイアスをかけること、およびT4対T5の個々の物理的サイズを調整することのうち少なくとも一方を行うことによって、両方のデバイスT4/T5が共通のドレイン電流を共有するので、位相がずれた非線形相互コンダクタンス係数(Id対Vgsの3次導関数)が生成され、加算後に相殺される。これは、ドレイン電流内の三次非線形性係数の低減の結果として、更なる入力三次相互変調積(IIP3)の改善をもたらす。5dBmをはるかに超えるIIP3が、上記の線形化技術を用いて達成可能である。トランジスタT4、T5およびT1は図4に示されるように共通のゲート電圧を共有するが、T1トランジスタのT4/T5へのACのみの結合を提供すること(例えば、直列コンデンサを使用すること)はDS線形化を強化することができる。これは、もちろん、独立したゲートバイアス電圧をT1ゲートに与えるためにバイアス抵抗/回路の追加を必要とするのであろう。
【0027】
本発明の例示的な実施態様を本明細書に示し、詳細に説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正、追加、置換などを行うことができることが当業者には明らかであろう。例えば、例示的実施形態のすべての構成要素はCMOSのSOI基板内に組み込まれるものとして想定されるが、同様または異なる動作周波数に対処する実装のために、他の半導体技術を使用することができるのであろう。
【0028】
本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲において定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8