(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】低抵抗吊下式ソナー
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20240827BHJP
H02G 11/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01S7/521 Z
H02G11/02
(21)【出願番号】P 2021573455
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020062986
(87)【国際公開番号】W WO2020249334
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トマ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ワルナン,フランソワ
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-177189(JP,A)
【文献】米国特許第06233202(US,B1)
【文献】国際公開第2015/092066(WO,A1)
【文献】米国特許第05014953(US,A)
【文献】特開平04-332894(JP,A)
【文献】特開平06-059027(JP,A)
【文献】実開昭50-147660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64,
G01S 15/00-15/96,
H02G 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響送信器(22)及び受信器(24)を備えたアンテナ(20;50;80)を含む吊下式ソナーであって、リール(32)、前記リール(32)を回転させるべく構成されたアクチュエータ(30)、及び前記リール(32)に巻かれたケーブル(14)を含むモーター駆動ウインチ(26)を更に含むこと、及び前記ウインチ(26)が前記アンテナ(20)に配置されていて、前記ケーブル(14)により前記アンテナ(20)を前記ケーブル(14)の自由端で母機(10,16)に係止でき
、
前記アンテナ(50;80)が、前記音響受信器(24)が配置された展開可能なアーム(52)であって、前記アンテナ(50)の筐体(29)にヒンジ結合された、展開可能なアーム(52)と、前記ケーブル(14)の主軸(28)に沿って前記筐体(29)に対して並進移動可能な本体(54;82,84)とを含み、前記アーム(52)が前記本体(54;82,84)にヒンジ結合されていること、前記筐体(29)に対して並進する前記本体(54;82,84)の第1の位置において、前記アーム(52)が前記筐体(29)に対して折り畳まれていること、及び前記筐体(29)に対して並進する前記本体(54;82,84)の第2の位置において、前記アーム(52)が展開されていることを特徴とする
、吊下式ソナー。
【請求項2】
音響送信器(22)及び受信器(24)を備えたアンテナ(20;50;80)を含む吊下式ソナーであって、リール(32)、前記リール(32)を回転させるべく構成されたアクチュエータ(30)、及び前記リール(32)に巻かれたケーブル(14)を含むモーター駆動ウインチ(26)を更に含むこと、及び前記ウインチ(26)が前記アンテナ(20)に配置されていて、前記ケーブル(14)により前記アンテナ(20)を前記ケーブル(14)の自由端で母機(10,16)に係止でき
、
前記アンテナ(80)が、各々が音響送信器(22)を搭載した複数のリング(90)、及び前記ケーブル(14)の主軸(28)に沿って、前記アンテナ(50)の筐体(29)に対して並進移動可能な本体(82,84)を含むこと、前記リング(90)と前記本体(82,84)が伸長可能な結合部(92)により互いに結合されていること、前記筐体(29)に対して並進する前記本体(82,84)の第1の位置において、前記リング(90)と前記本体(82,84)が互いに接触すること、及び前記筐体(29)に対して並進する前記本体(82,84)の第2の位置において、前記リング(90)と前記本体(82,84)が互いに離れていることを特徴とする
、吊下式ソナー。
【請求項3】
前記本体(54;82,84)が、前記ケーブル(14)を締め付けるべく構成されたクランプ(70)を備え、前記クランプ(70)の開放位置において、前記本体(54;82,84)が自身の第1の位置を占有できるようにし、前記クランプ(70)の閉止位置において、前記本体(54;82,84)が自身の第2の位置を占有できるようにすることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の吊下式ソナー。
【請求項4】
前記アンテナ(20;50;80)が、電池(40)、及び前記ケーブル(14)を介さずに前記電池を再充電する手段(118)を含み、前記電池(40)により前記音響送信器(22)及び前記アクチュエータ(30)に電力を供給できることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の吊下式ソナー。
【請求項5】
前記アンテナが、前記音響送信器(22)又は前記アクチュエータ(30)の一方に電力を供給できるようにする少なくとも1個のエネルギー変換器(122)を含むことを特徴とする、請求項
4に記載の吊下式ソナー。
【請求項6】
前記エネルギー変換器(122)が双方向であるため、前記電池(40)が前記アクチュエータ(30)に電力を供給できる、又は前記アクチュエータ(30)が前記電池(40)を再充電できることを特徴とする、請求項
5に記載の吊下式ソナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソナー検知の一般的分野に関し、特に対潜水艦戦で行われるソナー検知に関する。より具体的にはヘリコプター又はドローンから敷設される空中吊下式ソナーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
対潜水艦戦に関連して、所与の領域で潜航中の潜水艦を検知可能にすべく、ソナー、特に能動ソナーが一般に用いられる。この局面において、空中プラットフォーム(ヘリコプター又はドローン)からのソナーの敷設は、このようなプラットフォームが潜水艦に対して極めて可動性が高いため、特に効果的であることが分かっている。
【0003】
より正確には、ヘリコプターを用いて、プラットフォーム(すなわちヘリコプター)にケーブルで結合されソナー送信器及び受信器を敷設する。これらは従って「吊下式ソナー」と称される。本明細書の以降において、水面下でケーブル結合されたサブアセンブリはアンテナと呼ばれる。アンテナは、実際のソナー送信器及び受信器を含み、且つ送信器及び受信器に関連付けられた電子機器を潜在的に含んでいる。また、環境センサも含んでいてよい。
【0004】
公知のように、ヘリコプター内に配置されたウインチを用いてアンテナをプラットフォームから水中に投下し、水中でのアンテナの深度を制御してアンテナを回収する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウインチによりアンテナを昇降させる際にケーブルにより水中で顕著な抵抗が生じる。この抵抗は、巻き解かれたケーブルの長さに起因して、アンテナが到達した深度に伴い増大する。アンテナの昇降速度は従ってケーブルの移動により生じる抵抗により制約される。アンテナを降下させる力は自重から自身の抵抗及びケーブルの抵抗を差し引いた分だけであるため、深度が深いほどアンテナの下降速度を遅くする必要がある。アンテナを引き上げる際に、ウインチはケーブルに対し、アンテナの重量に全抵抗を加えた値に等しい力を加える必要がある。相当な抵抗を扱うことができるウインチを用いてよい。ケーブルは、ウインチが発する引張り力に耐える寸法を有している必要がある。この力が強いほどケーブルの断面積を大きくする必要があり、更に抵抗が増大しがちである。
【0006】
本発明は、ケーブルの抵抗に影響されない吊下式ソナーにより検知動作を行うことを目的とする。検知動作とは、アンテナを降ろす、実際の音響検知フェーズを実行する、及びアンテナを引き上げることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的のため、本発明の主題は、音響送信器及び受信器を備えたアンテナを含む吊下式ソナーである。吊下式ソナーは更に、リール、リールを回転させるべく構成されたアクチュエータ、及びリールに巻かれたケーブルを含むモーター駆動ウインチを含んでいる。ウインチはアンテナに配置されていて、ケーブルによりアンテナをケーブルの自由端で母機に係止することができる。
【0008】
アンテナは、音響受信器が配置された展開可能なアームであってアンテナの筐体にヒンジ結合された展開可能なアーム、及びケーブルの主軸方向に筐体に対して並進移動可能な本体を含んでいてよい。アームは次いで本体にヒンジ結合されている。筐体に対して並進する本体の第1の位置においてアームは筐体に対して折り畳まれ、筐体に対して並進する本体の第2の位置においてアームは展開されている。
【0009】
アンテナは、各々が音響送信器を搭載した複数のリング、及びケーブルの主軸方向に筐体に対して並進移動可能な本体を含んでいてよい。リングと本体は有利な特徴として伸長可能な結合部により互いに結合されている。筐体に対して並進する本体の第1の位置において、リングと本体は互いに接触し、筐体に対して並進する本体の第2の位置において、リングと本体は互いに離れている。
【0010】
本体は有利な特徴として、ケーブルを締め付けるべく構成されたクランプを備え、クランプの開放位置において、本体が自身の第1の位置を占有できるようにし、クランプの閉止位置において、本体が自身の第2の位置を占有できるようにする。
【0011】
アンテナは有利な特徴として、電池、及びケーブルを介さずに電池を再充電する手段を含み、電池により音響送信器及びアクチュエータに電力を供給することができる。
【0012】
アンテナは有利な特徴として、音響送信器又はアクチュエータの一方に電力を供給できるようにする少なくとも1個のエネルギー変換器を含んでいる。
【0013】
エネルギー変換器は有利な特徴として双方向であるため、電池がアクチュエータに電力を供給する、又はアクチュエータが電池を再充電することができる。
【0014】
例として与える実施形態の詳細な記述を精査することで本発明に対する理解が深まると共に更なる利点が明らかになると思われ、記述内容を添付の図面に示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】各々が1個の吊下式ソナーを備えた各種の母機を示す。
【
図1b】各々が1個の吊下式ソナーを備えた各種の母機を示す。
【
図2】
図1a、1bの吊下式ソナーのアンテナの第1の変型例の実施形態を示す。
【
図3a】
図1a、1bの吊下式ソナーのアンテナの第2の変型例の実施形態を示す。
【
図3b】
図1a、1bの吊下式ソナーのアンテナの第2の変型例の実施形態を示す。
【
図4a】
図1a、1bの吊下式ソナーのアンテナの第3の変型例の実施形態を示す。
【
図4b】
図1a、1bの吊下式ソナーのアンテナの第3の変型例の実施形態を示す。
【
図5】吊下式ソナーのアンテナの電気構造の一例をブロック図の形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
明快さのため、各種の図面にわたり同一要素は同一参照符号で示している。
【0017】
図1aに、水面を参照番号11で示す水上をホバリングしているドローン10を示す。ドローン10は、ケーブル14によりドローン10に係止されたアンテナ12を含む能動吊下式ソナーを備えている。この種のソナーは特に、水中の物体を検知及び分類できるようにする。
図1bに、ケーブル14によりヘリコプター16に係止されたアンテナ12を含む能動吊下式ソナーも備えたヘリコプター16を示す。一般に、本発明の範囲内で、水面上で自身の位置決めが可能な任意の種類の母機が能動吊下式ソナーを備えていてよい。母機は、水中の所望の深度までアンテナを降ろし、音響検知フェーズを実行して、任務を完了すべく、又は他の検知動作を実行すべくアンテナを引き上げることができる。
【0018】
図2に、本発明による能動吊下式ソナーのアンテナ20の第1の変型例の実施形態を示す。アンテナ20は、音響送信器22、音響受信器24及びモーター駆動ウインチ26を備えている。ウインチ26を用いてケーブル14を巻く、及び巻き解く。ケーブル14の自由端27により、アンテナ20をドローン10又はヘリコプター16等の母機に係止することができる。アンテナ20は、アンテナ20がケーブル14により吊り下げられて重力しか受けない場合に垂直な軸28に沿って伸長する。アンテナ20は、軸28の回りに実質的に回転する形状を有している。音響送信器22及び音響受信器24は軸28の回りに放射状に配置されている。
【0019】
音響送信器22及び音響受信器24は、アンテナ20の筐体29に固定されていてよい。音響送信器22及び音響受信器24はアンテナ20の別々の領域に配置されていてよく、領域は
図2に示すように互いに重なり合っている。代替的に、領域は、例えば本願出願人の名義で出願されて国際公開第2015/092066号パンフレットとして公開されている特許出願に記載されているように分散していてもよい。
【0020】
ウインチ26は、アクチュエータ30によりモーター駆動される。より正確には、アクチュエータ30により、ケーブル14が巻かれたリール32を回転させることができる。アクチュエータ30は、電気又は油圧モーター、或いはより一般に限られた空間内で換気無しに動作可能な任意の形態のエネルギーを用いるモーターであってよい。アクチュエータ30は有利な特徴として、アンテナ20内の空間を空けるべくリール32内に配置されている。ケーブル14の巻き解かれた部分が垂直軸28に沿って伸長する。アンテナ20は重力の影響下吊り下げられている。
図2において、リール32は水平軸34の回りを回転する。代替的に、ケーブル14は垂直軸を有するリールに巻かれていてよい。横巻き取り機構により、ケーブル14をリール32に整然と収納することができる。横巻き取り機構は、ケーブルガイドに、ケーブル14を連続する層としてリール32に整然と収納すべくリールの軸に沿った往復並進移動を実行させる。垂直軸リールの場合、リールは静止したままであってよく、横巻き取り機構が自身の並進移動を行うと共にリールの回りを回転する。このような機構は特に魚釣用のリールに存在する。代替的に、リールは自身の軸の回りを回転し、横巻き取り機構のガイドはアンテナ20の筐体29に対して並進的にしか移動しない。
【0021】
リール32及びアクチュエータ30から形成されたウインチ26はアンテナ20の内部、例えば音響受信器24間に配置された内部体積36に配置される。
【0022】
アンテナ20はまた、特に、送信器22により送信される音響信号の生成、受信器24により受信された音響信号の処理、及びアクチュエータ30の駆動を可能にする電子モジュール38を含む。
【0023】
アンテナ20の全ての構成要素の動作に必要な電力は、母機からケーブル14を介して送電することができる。しかしこの解決策は、必要な全電力を送電する場合、ケーブル14の断面積を増大させる必要がある。特に、音響送信器には数キロワットのオーダーの高い瞬間電力を供給する必要がある。ケーブル14の長さが数百メートルを超え得るため、ケーブルの断面積を、ケーブル14に沿ったオーム損失の影響を抑制するのに充分大きくする必要がある。これは、ケーブル14のほぼ全長を収容可能でなければならないリール32の寸法の増大をもたらす。また、音響伝達フェーズの間、ケーブル14を介した電力送電によるデータのいかなる劣化も防止すべくケーブルを介したデータの送信を中断しなければならない。
【0024】
ケーブル14による高電力送電の期間を抑制すべく、アンテナ20に電池40を備えることが有利であり、電池は有利な特徴として、特にケーブル14により吊り下げられたアンテナの降下中に、より良好な垂直方向の向きを保持できるようにアンテナ20の下部に、又は少なくともウインチ26を含む体積36に配置されている。電池40はケーブル14を介した電力送電の円滑化を意図されていてよく、これによりケーブル14の導体の断面積を減少させることが可能になる。この目的のため、電池40は、従来細切れの稼働時間中に高出力で送信する音響送信器22に電力を供給することができる。ケーブル14を介した電力送電を完全に省略することも有利である。電池40は次いで、アンテナの全ての電気的負荷、特にウインチ26、電子モジュール38、及び音響送信器22と受信器24等に電力を供給する。電池40を再充電すべく、アンテナはケーブル14から独立した再充電手段、例えば非接触且つ例えば誘導的な専用コネクタ又は再充電領域42を含んでいる。電池40は、専用コネクタを接続することにより、又は領域42を専用インダクタの近傍の配置することにより、母機10又は16で再充電することができる。
【0025】
アンテナ20はまた、アンテナ20から海底までの距離を判定可能にする音響器44、及びアンテナ20が到達した深度の関数として水温の変化を測定可能にする温度センサ46等の環境センサを含んでいてよい。具体的には、水中での音波の伝搬は水温の変化に依存する。これらのセンサもまた電池40により電力供給されてよい。
【0026】
図3a、3bに、本発明による能動吊下式ソナーのアンテナ50の第2の変型例の実施形態を示す。この変型例において、恐らくアームに配置された音響受信器24はソナーの受信中、アンテナ50の筐体29から離れて展開されている。対照的に、音響受信器24はウインチ26の動作中、アンテナ50が降ろされて水中で昇降されている間にアンテナ50の抵抗を抑制すべく筐体29に整然と収納される。この種の展開可能なアンテナは既に出願人により開発されている。この種のアンテナにおいて、音響受信器は、アンテナ内に配置された電気機械的機構により展開されている。この機構は、音響受信器を搭載したアームを動かす電気モーターを含んでいる。モーターは起動されてアームの展開及び収納の両方を行う。この機構は重く且つ嵩張る。
【0027】
本発明の一般的な範囲おいて、音響受信器24を搭載したアームを動かすこのような電気機械的機構をアンテナ内に保持することができる。代替的に、第2の変型例ではこの機構を省略することができる。
【0028】
アンテナ50は、音響受信器24が配置された展開可能なアーム52を含んでいる。アーム52は有利な特徴として、軸28の周囲での完全な音響検知を保証すべく軸28の周囲に等間隔に拡げられる。
図3aはアンテナ50を部分的に示しており、アーム52は筐体29に対して折り畳まれている。
図3bもまたアンテナ50を部分的に示しており、アーム52が筐体29から離れて展開されている。アーム52は、筐体29及び本体54にヒンジ結合されていて、軸28に沿って筐体29に対して並進移動可能な円環状のカバーを形成している。本体54は例えば軸28の回りに回転し、ケーブル14は環の穴を通って本体54を貫通する。
【0029】
これらの2個のヒンジによりアーム52は本体54が移動する間に筐体29から離れるか又は近づく。より正確には、
図3aに示す本体54の位置でアーム52は筐体29に対して折り畳まれており、
図3bに示す本体54の位置でアーム52は筐体29から離れて展開されている。
【0030】
アーム52は、ピボット結合により筐体29及び本体54に直接ヒンジ結合されていてよい。展開されたならば、アーム52は水平方向に伸びるか又は軸28に対して傾けられる。この種の機構の移動は極めて単純である。特に母機が水面を浮遊するソナーブイに用いられる。しかし、アームのこの向きは、母機がドローン又はヘリコプターである場合、音響検知を阻害し得る。具体的には、この向きで、音響受信器24は母機により生じたノイズの影響を受ける。従って、アーム52が展開した場合に垂直向きになる仕組みを設けることが好適であろう。換言すれば、本体54が並進する間はアームを軸28と平行に保つことが望ましい場合がある。これを行うため、アーム52は4本バー結合によりヒンジ結合されていてよい。より正確には、平行な区間を有する2個のバー56、58の一方が結合部60及び62により各々アーム52に、他方が結合部64及び66により筐体29にヒンジ結合されている。一方のバー、図示する例ではバー58が、結合部68により、バーがアーム52にヒンジ結合された箇所から離れた箇所、且つバーが筐体29にヒンジ結合された箇所から離れた箇所で本体54にヒンジ結合されている。従って、本体54が並進移動する場合、バー58は筐体29のヒンジの回りをピボット回転してアーム52を駆動させる。バー56はアーム52により駆動され、且つ筐体29に対してピボット回転する。この移動の間、筐体29に対するアーム52の向きは変化しない。図示する例においてアーム52は軸29と平行に保たれる。図示するように、複数の(図示する例では2本の)アーム52を、同じく2個のバー56、58にヒンジ結合することが可能である。より正確には、2本のアーム52の各々がバー58及びバー56にヒンジ結合されている。上で指定したように、アンテナ50は、軸28の周囲に分散された複数のアーム52を備えていてよい。これら各種のアーム52を搭載すべく、アンテナ50は、2本の軸28の回りに同様に放射状に配置された2個のバー56、58の並びを複数備えている。
【0031】
筐体29に対する本体54の並進移動は、この移動を直接保証する電気機械式アクチュエータにより実現することができる。アクチュエータは例えば線形油圧シリンダから形成されていて、シリンダの本体が筐体29に固定されていて、油圧シリンダの本体に対して並進移動するロッドが本体54に固定されている。逆の構成も可能である。
【0032】
有利な特徴として、筐体29及び本体54に作用する重力に起因する力を用いることにより、筐体29と本体54の間のアクチュエータを省略することが可能である。具体的には、筐体29は、アーム52の展開に利用できる重い要素を含んでいてよい。これを行うため、本体54は、ケーブル14を締め付けて本体54に対して動かないようにすべく構成されたクランプ70を備えている。クランプ70は電気機械式アクチュエータにより起動されてよい。このアクチュエータは本体54に結合されていて、筐体29に対する本体54の動きを直接保証するアクチュエータよりも消費電力が大幅に少ない。
【0033】
クランプ70の開放位置において、ケーブル14は本体54に対して自由であり、ヒンジ68を介してアーム52の重量に関連付けられたケーブルの重量が本体54を下方に、すなわち筐体29に向けて駆動する。この位置においてアーム52もまた下方に、すなわち筐体29に対して折り畳まれた位置まで駆動される。この位置(クランプ開)を
図3aに示す。
【0034】
クランプ70の閉止位置において、ケーブル14は本体54に固定されている。この位置において、ケーブルを巻き解くべくウインチ26を起動することが可能であり、従って固定された筐体29及び設備を重力の影響下で本体54よりも下に降ろすことが可能である。筐体29に対する本体54のこの相対移動によりアーム52を
図3bに示す位置に展開させる。これが可能なのはアーム52、及び適当ならばバー56、58が筐体29及び筐体29に固定された全ての要素より軽い場合である。この条件は一般に、重い要素、特に電池40及びウインチ26が筐体29内に存在するため容易に満たされる。クランプ70が閉じられた後でケーブル14を巻き解くべくウインチ26の起動が、筐体29に対する本体54の相対移動と協調された仕方で実行される。より正確には、巻き解かれたケーブルの長さは、筐体29に対する本体54の並進長にほぼ等しい。ケーブルをより長く巻き解くことは、リール32とクランプ70の間でケーブルが緩むリスクをもたらす。より短いケーブルを巻き解くとアーム52が完全に展開できなくなる。ウインチ26を起動することによりアーム52の展開を制御することができる。
【0035】
クランプ70は、本体54に確実に固定された固定部分、及び固定部分に対して移動可能であってケーブル14と接触する部分を含んでいる。クランプ70の固定部分は、本体54に確実に固定されていても、又は任意選択的に浮遊していてもよい。より正確には、クランプ70の開放位置において、固定部分は、本体54に対する軸28に沿った並進の少なくとも1個の自由度を維持することができる。この自由度は、アンテナ50の降下又上昇中にクランプ70の閉止を可能にする。この自由度により、クランプ70の閉止中に可動部分とケーブル14との間の摩擦を抑制することができる。
【0036】
図4a、4bは、本発明による能動吊下式ソナーのアンテナ80の第3の変型例の実施形態を表す。この変型例において、ウインチ26が配置された筐体29、及びバー56、58を介して筐体29にヒンジ結合されたアーム52が再び存在する。
図4aでアーム52を
図3aのケースと同様に筐体29に対して折り畳まれた位置に示す。同様に、
図4bでアーム52を
図3bと同様の展開位置に示す。
【0037】
第2の変型例と異なり、第3の変型例のアンテナ80は2個の部分、すなわち軸28の周囲に管82を形成し、軸28に沿って筐体29に対して並進移動可能な下部、及び本体54と同様の円環状カバー84を形成する上部を有する本体を含んでいる。ケーブル14は、再び環内の穴を介してカバー84を貫通する。バー58は、結合部68により、バーがアーム52にヒンジ結合された箇所から離れた、且つバーが筐体29にヒンジ結合された箇所から離れた箇所で管82にヒンジ結合されている。従って、管82が並進移動する際に、バー58は筐体29へのヒンジの回りをピボット回転してアーム52を動かす。
【0038】
カバー84は、軸28に沿って管82に対して並進移動可能である。カバー84は、伸長可能な結合部により管82に接続されている。アンテナ80もクランプ70を含んでいる。第2の変型例と同様に、アンテナ80のクランプ70は、ケーブル14を固定し、従ってクランプが閉じている場合はカバー84に対してケーブル14が動かないようにすべく構成されている。
図4aの位置において、クランプ70は開いていてカバー84は管82の上に位置し、管82は筐体29に位置している。カバー84及び管82は重力により駆動される。
図4bの位置において、クランプ70は閉じていて、重力により筐体29が下方へ駆動され、カバー84を管から離れた位置に、及び管82を筐体29から離れた位置に維持する。
【0039】
アンテナ20において、音響送信器22は筐体29に固定されている。送信器は軸28に沿って所定の高さを占有する。この高さを増大させて、特に垂直方向で複数の送信器を互いに分離することが有利な場合がある。しかし、このような分離もまた、アンテナ20の軸28に沿った高さを増大させる傾向がある。アンテナ80は代替方式であり、アンテナが昇降する間に複数の音響送信器間で所与の高さを維持することができ、検知フェーズの間はこの高さを増大させることができる。換言すれば、アンテナ80は、検知フェーズの間に送信器を軸28に沿って展開可能にすべく構成されている。
【0040】
この目的のため、アンテナ80は、各々がいくつかの音響送信器22を搭載した複数のリング90を含んでいる。リング90は、筐体29とカバー84の間で軸28に沿ってスライド可能である。リング90は、軸28に沿って伸長可能な結合部92により互いに結合されている。従って、
図4aの位置において、アンテナ80が母機に対して昇降する間、リング90は互いに接触し、管82に整然と収納される。また、アーム52は
図3aと同様に収納される。この位置において、アンテナ80は、アンテナ80の昇降時に生じる抵抗が最小になる小さい体積を占有する。
図4bの位置においてアーム52は
図3bと同様に展開され、リング90も展開されている。より正確には、リング90は互いに離れている。リング90はまた、カバー84及び管82から離れている。
【0041】
図4a、4bに示す例において、アンテナ80は4個のリング90を含んでいる。
図4a、4bにおいて、複数のリング90は区別されており、参照符号90a、90b、90c及び90dで示される。同様に、複数の伸長可能な結合部92は区別されており、参照符号92a、92b、92c、92d及び92eにより示される。無論、本発明は、伸長可能な結合部の個数が対応するリング90の個数に依らず実施可能である。より正確には、伸長可能な結合部92aがカバー84をリング90aに結合する。伸長可能な結合部92bがリング90aをリング90bに結合する。伸長可能な結合部92cがリング90bをリング90cに結合する。伸長可能な結合部92dがリング90cをリング90dに結合し、伸長可能な結合部92eがリング90dを管82に結合する。
図4aの構成において、伸長可能な結合部92a~92eが緩められて、リング90a~90dを互いに接触するように配置することができる。
図4bの構成において、伸長可能な結合部92a~92eは引っ張られて、リング90a~90dを互いに離し、且つカバー84及び管82から離すことができる。伸長可能な結合部92a~92eは例えば、引っ張られた位置でリング同士の、及びカバー84と管82の間隔を決定するストラップにより形成されている。
図4aの位置において、ストラップは単に弛められてリングに整然と収納されている。
【0042】
図5に、上述の全てのアンテナに実装可能な電気的アーキテクチャの一例をブロック図の形式で示す。本例では、電池40はアンテナの各種の電気的負荷が必要とする全電力を供給する。アンテナは本例では、例えば光ファイバにより情報伝達のみ行うケーブル14により母機に接続されている。アンテナにおいて、光ファイバは、光ファイバにより伝達された光信号を電気信号に変換可能にするインターフェースモジュール100に接続されている。インターフェースモジュール100自身が、後でインターフェースモジュール100に配信される内部アンテナ電気信号を整形するためのアップリンクインターフェースモジュール102に接続されている。インターフェースモジュール100はまた、インターフェースモジュール100から受信した電気信号を整形するためのダウンリンクインターフェースモジュール104に接続されている。2個のモジュール102、104はプロセッサ106により管理されている。印刷回路基板108が、インターフェースモジュール100、102及び104と、プロセッサ106を搭載していてよい。印刷回路基板108はまた、複数の環境センサ、又は少なくともセンサの制御及びセンサが配信する情報の収集を可能にするインターフェースモジュール110を搭載していてよい。
【0043】
各々がいくつかの音響受信器24を搭載した複数のアーム52が設けられている。各アーム52に関連付けられた受信モジュールRx112により、音響受信器24から受信した音響信号を整形することができる。受信モジュールRx112はプロセッサ106に整形された信号を送信すべく接続されている。プロセッサ106により制御されるアクチュエータ114によりアーム52を展開することができる。アクチュエータ114はアーム52を直接動作する、又はクランプ70を開閉することができる。
【0044】
電池40は、電気エネルギーを蓄積又は送電可能なセル116、及びセル100の帯電状態を監視する管理モジュール118を含んでいる。管理モジュール118はまた、ケーブル14から独立した再充電手段を含んでいてよく、手段はここでは電機子巻き線として示されており、ケーブル14が巻き上げられてアンテナが母機に収納されていればセル116を非接触的に再充電することが可能である。
【0045】
図5において、高電圧DCネットワーク120が電池40に接続されている。ネットワーク120は主に、変換器Tx122を介して音響送信器22に電力を供給可能にし、必要ならば整合部124を介して音響送信器22とのインピーダンス整合を可能にする。アンテナは例えば、複数のリング90と同数の変換器Txを含んでいる。他のネットワーク、特に低電圧ネットワークもまた、特に印刷回路基板108及び高電圧を必要としない他の電気的負荷に電力を供給する目的でアンテナ内に存在してよい。
図5を雑然とさせないよう、これら他のネットワークは図示していない。変換器Tx122は短期間しか使用されないため、他の負荷でも用いられることが有利である。より正確には、音響送信は、ウインチ26が静止している音響検知フェーズ中でのみ実行される。逆に、ウインチ26の動作の下でアンテナが昇降している場合、送信及び音響受信のいずれも行われない。従って、音響検知フェーズ以外で、特にウインチ26に、より正確にはその電気モーター30に電力を供給するために変換器Tx122を用いることが可能である。
【0046】
変換器Tx122は例えば、水中への送信が望まれる音波の周波数、又は電気モーター30の回転速度と整合する周波数でネットワーク120の直流電圧を交流電圧に変換するインバータである。インバータは特に、電気モーター30の速度を連続的に変化させることができる可変周波数の生成に良く適している。変換器は例えば、特に各種の変換器Tx122に属する電子スイッチを開閉するパルス幅変調器PWM126を介して制御される。パルス幅変調器PWM126は、ドライバモジュール128からコマンドを受信することができる。コマンドは例えば、電気モーター30又は音響受信器24のいずれかに配信されるAC信号の画像である。
【0047】
変換器Tx122は一方向型であってよい。換言すれば、変換器Tx122は、自身に割り当てられた負荷に対し単に電力を供給するだけである。更に、アンテナが降ろされている間、電気モーター30は電力を再生成し、電力は次いで、例えば電気抵抗内で消散するのに必要とされる。代替的に、再生的負荷、特に降下時には電気モーター30が接続されている場合、電池40を再充電可能にする双方向変換器Tx122を設けることができる。電気モーター30により電池40を再充電し、次いで発電機として動作する選択肢に加え、電池40の最大充電状態に達したならば、再生成された電力を消散できるようにする抵抗を設けることが有用である。