(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物、成形体および照明器具
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240827BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240827BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240827BHJP
F21V 15/01 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/22
C08K3/04
F21V15/01 530
(21)【出願番号】P 2022052439
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】濱島 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 哲
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075770(JP,A)
【文献】特開2010-138212(JP,A)
【文献】特開2004-155985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 3/22
C08K 3/04
F21V 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)酸化チタンを21~36質量部、(C)カーボンブラックを0.5~3.4質量ppm、及び(D)蛍光増白剤を0質量ppm超、655質量ppm以下を含有
し、光源D65、視野10度、SCI通常測定モードにて測定した、厚み1mm、波長500nmでの反射率が90%以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物により形成された成形体。
【請求項3】
前記成形体が、照明装置に用いるためのものである、請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
前記成形体が、前記照明装置の発光部の少なくとも1面を覆うように用いられる、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
前記成形体が、前記照明装置の発光部の反射鏡である、請求項3に記載の成形体。
【請求項6】
光を出射する発光部と、前記発光部を収容するケースとを備え、前記ケースの主成分が請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物で形成されている、照明器具。
【請求項7】
さらに、表示パネルを備え、前記発光部は、前記表示パネルの一側面に光を入射させ、前記ケースは、前記表示パネルをさらに収容する、請求項6に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ポリカーボネート樹脂組成物、成形体および照明器具に関し、詳しくは、遮光性と反射率、色調に優れ、さらに流動性と成形時の滞留熱安定性に優れるポリカーボネート樹脂組成物、その成形体、およびこれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば住宅材料、自動車材料、電気・電子機器材料、その他各種の部品製造用材料として幅広く利用されている。中でも、酸化チタン等の白色顔料を含むポリカーボネート樹脂組成物は、光反射性や遮光性が求められる照明器具等に好適に用いられる。
例えば、特許文献1では、芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、無機処理剤で表面処理された酸化チタンを配合したポリカーボネート樹脂組成物が良好な光反射性および遮光性を示すことが記載されている。
【0003】
照明器具として、例えば、非常時に建造物等の避難口の場所を示したり避難の方向を示したりする誘導灯がある。誘導灯は、緑色と白色との2色の領域からなり避難口の場所や避難の方向を示す図柄、ピクトグラムあるいは文字を表した表示面を、筐体の前面に有し、この表示面が光るように構成されている。誘導灯は、光透過性を有し前面を表示面とする矩形板状の表示パネルと、表示パネル後方に筐体内部に配置された発光部を備え、発光部からの光は表示パネルの背面から、反射鏡により有効光率を向上させながら、表示パネルに入射して透過することにより、表示面を照明するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような照明器具においては、照明器具(表示パネル)の輝度に優れること、照明器具の筐体の色調が良好で建築物の内装材とマッチングする良好な白色外観に優れること、照明器具の筐体は点灯時に光の透けがなく遮光性に優れることなどが求められる。
そして、このような照明器具用の成形体を、ポリカーボネート樹脂材料で成形する場合には、ポリカーボネート樹脂材料には、高度な遮光性と高い反射率と、色調(YI)に優れること、さらに成形性の点から流動性と成形時の滞留熱安定性に優れることが必要である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、上記課題を解決するポリカーボネート樹脂組成物、その成形体、及びそれを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に対し、酸化チタンを配合し、さらにカーボンブラック及び蛍光増白剤を特定の微少な量で含有するポリカーボネート樹脂組成物、およびこれからなる成形体を備えた照明器具が、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物、成形体および照明器具に関する。
【0008】
1.(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)酸化チタンを21~36質量部、(C)カーボンブラックを0.5~3.4質量ppm、及び(D)蛍光増白剤を0質量ppm超、655質量ppm以下を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2.上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物により形成された成形体。
3.前記成形体が、照明装置に用いるためのものである、上記2に記載の成形体。
4.前記成形体が、前記照明装置の発光部の少なくとも1面を覆うように用いられる、上記3に記載の成形体。
5.前記成形体が、前記照明装置の発光部の反射鏡である、上記3に記載の成形体。
6.光を出射する発光部と、前記発光部を収容するケースとを備え、前記ケースの主成分が上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物で形成されている、照明器具。
7.さらに、表示パネルを備え、前記発光部は、前記表示パネルの一側面に光を入射させ、前記ケースは、前記表示パネルをさらに収容する、上記6に記載の照明器具。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、高度な遮光性と高い反射率と、色調(YI)に優れること、さらに成形性の点から流動性と成形時の滞留熱安定性に優れるので、これを用いた成形体は、照明装置(照明器具)の部品として好適に使用できる。
そして、この成形体を部品として備えた照明装置(照明器具)は、表示パネルの輝度が優れ、また、照明器具の筐体として、色調が良好で住宅や施設建物の内装材とマッチングする白色外観に優れ、照明器具の光取り出し効率を最大化しながら、照明器具の点灯時に光の透けがなく遮光性に優れ外観品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の照明装置の実施態様の一例に係る誘導灯の斜視図である。
【
図2】
図1の誘導灯を構成する各部を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
【0012】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)酸化チタンを21~36質量部、(C)カーボンブラックを0.5~3.4質量ppm、及び(D)蛍光増白剤を0質量ppm超、655質量ppm以下を含有することを特徴とする。
【0013】
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明において使用する(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0014】
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
【0015】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)を出発原料とするものが特に好ましい。
また、上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10000~50000であり、より好ましくは11000~40000、中でも12000~35000、特には13000~30000である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0017】
本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を用いて、温度25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定して極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される粘度平均分子量(Mv)である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0018】
[(B)酸化チタン]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(B)酸化チタンを含有する。
(B)酸化チタンとしては、一般に市販されているものの中で白色度の点で、酸化チタンを80質量%以上含有するものを用いるのが好ましい。酸化チタンとしては、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化チタン(Ti2O3)、二酸化チタン(TiO2)などが挙げられ、これらのいずれを使用してもよいが、二酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンとしては、ルチル型の結晶構造を有するものが好ましく使用される。
【0019】
(B)酸化チタンの平均一次粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.001~0.5μmの範囲内であることがより好ましく、0.002~0.1μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0020】
(B)酸化チタンの含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、21~36質量部である。このような範囲で含有することで、樹脂組成物は良好な白色外観を有しながら、優れた遮光性と良好な成形性を可能とすることができる。(B)酸化チタンの含有量は、より好ましくは22質量部以上、より好ましくは34質量部以下、さらに好ましくは32質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
【0021】
[(C)カーボンブラック]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(C)カーボンブラックを、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.5~3.4質量ppm含有する。
カーボンブラックをこのような微小な量で含有することで、樹脂組成物及び成形体の反射率や色調(YI)を維持しつつ、優れた遮光性を得ることができる。(C)カーボンブラックの含有量は、好ましくは、0.7質量ppm以上、3.0質量ppm以下である。
【0022】
(C)カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒子径には特に制限はないが、5~60nmであることが好ましい。このように数平均粒子径が所定の範囲にあるカーボンブラックを用いることにより、高温下でブリスターが発生し難い樹脂組成物を得ることができる。
なお、数平均粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法-電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりアグリゲート拡大画像を取得し、このアグリゲート画像から単位構成粒子として3000個の粒子径を測定し、算術平均して求めることができる。
【0023】
(C)カーボンブラックの窒素吸着比表面積(単位:m2/g)は、通常1000m2/g未満が好ましく、中でも50~400m2/gであることが好ましい。窒素吸着比表面積を1000m2/g未満にすることで、樹脂組成物の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、窒素吸着比表面積はJIS K6217に準拠して測定することができる。
【0024】
また、(C)カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸収量は、300cm3/100g未満であることが好ましく、中でも30~200cm3/100gであることが好ましい。DBP吸収量を300cm3/100g未満にすることで、樹脂組成物の流動性や成形体の外観が向上する傾向にあり好ましい。
なお、DBP吸収量(単位:cm3/100g)はJIS K6217に準拠して測定することができる。また使用するカーボンブラックは、そのpHについても特に制限はないが、通常、2~10であり、3~9であることが好ましく、4~8であることがさらに好ましい。
【0025】
(C)カーボンブラックは、一種を単独で、また2種以上併用して使用することができる。更にカーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、他の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチでの使用も可能である。溶融混練したマスターバッチを使用することによって、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良が達成できる。上記樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
マスターバッチ中のカーボンブラックの含有量は10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。
【0026】
[(D)蛍光増白剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(D)蛍光増白剤を含有する。
(D)蛍光増白剤としては、ベンゾオキサゾール系、スチルベンゼン系、ベンズイミダゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系等の各種の蛍光増白剤を用いることができる。特に、熱安定性の点から分子量が300~1000の、ベンゾオキサゾール系化合物及びクマリン系化合物から選ばれる、白色系の蛍光増白剤が好ましい。また、例えば、ジスチリルビフェニル系青色蛍光発光材、アリールエチニルベンゼン系青色蛍光発光材、キンキピリジン系蛍光発光材、セキシフェニル系青色蛍光発光材、ジメシチルボリルアントラセン系蛍光発光材、キナクリドン系蛍光発光材などから選ばれる白色有機発光体や青色有機発光体も蛍光増白作用を示す化合物として使用できる。
【0027】
(D)蛍光増白剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0質量ppm超655質量ppm以下である。このような範囲で含有することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の色調を良好なものとすることができる。含有量が655質量ppmを超えると、成形時の熱滞留安定性が悪くなる。含有量は、好ましくは30質量ppm以上、さらに好ましくは50質量ppm以上であり、好ましくは600質量ppm以下、さらに好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは400質量ppm以下、さらに好ましくは350質量ppm以下である。
【0028】
蛍光増白剤としてのベンゾオキサゾール系化合物の具体例としては、4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)-4’-(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン、2,5-チオフェンジイル(5-tert-ブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)フラン等が挙げられる。これらの中では、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン等のスチルベンベンゾオキサゾール系化合物が好ましい。
【0029】
また、クマリン系化合物の具体例としては、3-フェニル-7-アミノクマリン、3-フェニル-7-(イミノ-1’,3’,5’-トリアジン-2’-ジエチルアミノ-4’-クロロ)-クマリン、3-フェニル-7-(イミノ-1’,3’,5’-トリアジン-2’-ジエチルアミノ-4’-メトキシ)-クマリン、3-フェニル-7-ナフトトリアゾールクマリン、4-メチル-7-ヒドロキシクマリン等が挙げられる。これらの中では、3-フェニル-7-ナフトトリアゾールクマリン等のフェニルアリルトリアゾリルクマリン系化合物が好ましい。
【0030】
[安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、特にリン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤を含有することにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相をさらに良好なものとし、熱安定性も高めることができる。
【0031】
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第10族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0032】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
【0033】
安定剤を含有する場合の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.0001質量部以上、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0034】
[難燃剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤を含有することも好ましい。
難燃剤としては、例えば、有機スルホン酸金属塩系難燃剤、ハロゲン含有化合物系難燃剤、燐含有化合物系難燃剤、珪素含有化合物系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、有機スルホン酸金属塩系難燃剤が好ましい。
【0035】
難燃剤を含有する場合の含有量は、通常、(A)芳香族ポリカーボネート100質量部に対し、0.01~1質量部であり、好ましくは、0.05~1質量部の範囲である。
【0036】
有機スルホン酸金属塩系難燃剤としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。これら金属塩の金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウムのマグネシウム類;カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。スルホン酸金属塩は、1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
有機スルホン酸金属塩としては、芳香族スルホン酸金属塩、パーフルオロアルカン-スルホン酸金属塩が好ましい。
【0037】
芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、例えば、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、4,4’-ジブロモジフェニル-スルホン-3-スルホン酸ナトリウム、4,4’-ジブロモジフェニル-スルホン-3-スルホン酸カリウム、4-クロロ-4’-ニトロジフェニルスルホン-3-スルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム等が挙げられる。
【0038】
パーフルオロアルカン-スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン-スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン-スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン-スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン-スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン-スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン-スルホン酸カリウム、パーフルオロブタン-スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0039】
ハロゲン含有化合物系難燃剤の具体例としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、トリブロモフェノール、臭素化芳香族トリアジン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAエポキシポリマー、デカブロモジフェニルオキサイド、トリブロモアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモシクロドデカン等が挙げられる。
【0040】
燐含有化合物系難燃剤としては、赤燐、被覆された赤燐、ポリリン酸塩系化合物、リン酸エステル系化合物、フォスファゼン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、リン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロロプロピルホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等が挙げられる。
【0041】
珪素含有化合物系難燃剤としては、例えば、シリコーンワニス、ケイ素原子と結合する置換基が芳香族炭化水素基と炭素数2以上の脂肪族炭化水素基とからなるシリコーン樹脂、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基中に芳香族基を持つシリコーン化合物、シリカ粉末の表面に官能基を有していてもよいポリジオルガノシロキサン重合体を担持させたシリコーン粉末、オルガノポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体等が挙げられる。
【0042】
[紫外線吸収剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オキザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましく、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0043】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、中でも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤を含有する場合の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性(耐光性)の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
【0045】
[離型剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0046】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0047】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0048】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0049】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0050】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがより好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
【0051】
離型剤を含有する場合の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0052】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
【0053】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0054】
[成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形して任意の形状に賦形され、成形体とされる。
成形体を製造する方法は、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
これらの中でも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法が好ましく、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は射出成形時の成形性(流動性)に特に優れる。
【0055】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形体は、特に照明装置の部品として、好適に使用することができる。照明装置としては、商業施設、店舗、工場、倉庫、若しくは事務所などの施設、又は戸建て住宅、若しくは集合住宅などの住戸等に使用する各種の照明装置が挙げられる。照明装置の部品や部材としては、上記各種照明装置に用いられる部品であり、任意形状の各種の部品が挙げられる。
【0056】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、上記したような各種施設等の建物に設置される防災用、非常時用、誘導用あるいは案内用の照明器具(以下、総称して「防災照明器具」ともいう。)の部品として、特に好適に使用することができる。
【0057】
以下、本発明の照明装置(機器)の一例である防災照明器具(一事例として誘導灯)について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する図および構成は本開示の一例に過ぎず、本発明は、以下の実施形態に限定されず種々の変更が可能である。
【0058】
防災照明器具(誘導灯)について、
図1、
図2を参照して説明する。
防災照明器具(誘導灯)は、
図1、
図2に示すように、合成樹脂製の本体1と光源ブロック2、表示体3を有している。本体1は、前面に開口部を有する四角形の箱状(筐体)に形成されている。筐体の内部には、電源装置、蓄電池ブロック、点灯回路ブロック等を収容できる。
【0059】
光源ブロック2は、LED等の光源を有し、光源から放射される光は、表示体3の方向に出射される。この際、光効率向上のため、LED光源を複数用いて表示体3に直接、光を入射させてもよく、またLED光源からの光をアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂などの透光性を有する合成樹脂材料によって形成された導光体を用いて表示体3に入射させてもよい。また、光源付近には表示体3に光を効率よく、かつロスなく誘導するための反射鏡を設けてもよい。この反射鏡には、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体が適用できる。また、光源ブロック2の本体にも、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体が適用できる。
【0060】
表示体3は、表示パネル30と、表示パネルを保持する保持体31から構成される。表示パネル30は透明なアクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂などの透光性を有する合成樹脂材料によって平板状に形成されている。表示パネル30の前面には、避難誘導のためのピクトグラムや文字の印刷またはシールが施されている。
保持体31は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなり、表示パネル30をスライド、保持できる構造となっている。
表示体3は、
図2にあるように、本体1の開口部の大部分、より詳細には、開口部における光源ブロック2より下側の部分を覆う位置に取り付けられる。光源ブロック2の導光体から出射される光は、表示パネル30の上端面から表示体3内に入射し、表示パネル30内を進行しながら保持体31の後面32で全反射されて表示パネルの前方へ出射する。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形体を部品として備えた照明装置(照明器具)は、表示パネルの輝度に優れ、照明器具のケース(筐体)は住宅や施設建物の内装材とマッチングする白色外観に優れ、色調にも優れる。そして、照明器具の光取り出し効率を最大化しながら、照明器具の点灯時に光源ブロックや本体からの光の透けがなく、遮光性に優れ、光の透けのない良好な外観品質を確保できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を示して本発明について、更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例および比較例に使用した各成分は、以下の表1の通りである。
【0063】
【0064】
(実施例1~7、比較例1~6)
[樹脂ペレットの製造]
表1に記載した各成分を、後記表2に記した割合(全て質量部で表示)となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して、混合物を得た。この混合物を、2軸押出機(東芝機械社製「TEM26SX」)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/時、バレル温度280℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押し出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0065】
[遮光性評価(全光線透過率、単位:%)]
得られた各樹脂組成物のペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度25mm/sの条件下にて、3段型プレート[90mm×50mm×厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)]を射出成形した。
得られた3段型プレートの厚み1mmの部分について、ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH-4000」)を用いて全光線透過率(単位:%)を測定した。
十分な遮光性のためには、全光線透過率は0.1%以下であることが好ましい。
【0066】
[光反射性評価(反射率、単位:%)]
得られた3段型プレートの厚み1mmの部分について、反射率を測定した。分光測色計(コニカミノルタ社製、CM3600d)を用い、光源をD65、視野を10度に設定し、SCI通常測定モードにて、波長500nmでの反射率(単位:%)を測定した。
反射率は、光源部からの反射効率の観点から、90%以上であることが好ましい。
【0067】
[色相評価(YI)]
得られた3段型プレートの厚み1mmの部分について、色差計(日本電色工業社製「SE6000」)を用いて、反射光でYIを測定した。
良好な色調のためには、YIは2.9以下であることが好ましい。
【0068】
[成形品の目視色調評価]
得られた3段型プレートにつき、ケンコー・トキナー社製照明ボックス内にて、D65光源下で目視色調評価を行い、以下の基準で評価判定した。
色調が明らかに黄味を帯びて良くないものを「×」、白または青味を帯びた白で良好なものを「〇」とした。
【0069】
[成形性評価(MVR、単位:cm3/10min]
得られたペレットを用いて、ISO1133に準拠し、ペレットを120℃にて約5時間乾燥させ、ペレット中の水分率を200ppm以下にしたものを、東洋精機社製セミオートメルトインデクサー2A型により、測定温度300℃、測定荷重1.20kgfでメルトボリュームレート(MVR)を測定した。
MVRが14以上であれば、各種照明器具の成形性に問題なく、逆に14未満であれば、流動性不足によるショートショットやフローマークなどの成形不良を発生させるため、成形性評価として、MVRが14cm3/10min以上のものを「〇」、14cm3/10min未満のものを「×」と判定した。
さらに、滞留安定性の評価として、MVR通常測定での待機時間をプラス10分した後の滞留MVRも測定した。
MVRと滞留MVRの差異が6以内であれば、各種照明器具の成形性に問題なく、逆に6を超えるのであれば、ショット毎の流動性のばらつきやバリなどの成形不良を発生させるため、滞留安定性評価として、MVRと滞留MVRの差異が6以下のものを「〇」、6を超えるものを「×」と判定した。
【0070】
[照明装置としての評価]
得られた各樹脂組成物のペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機を用い、シリンダー設定温度290℃、金型温度85℃にて、前記した誘導灯を構成する(i)光源ブロック2、(ii)表示体の保持体31、(iii)本体1を射出成形法により得た。
この得られた各部品を用いてLED誘導灯(FA20318 LE1、パナソニック社製)に組込み、LED光源を点灯、消灯させて各評価を行った。なお、表示パネルやLED電源など、その他構成部品は前記誘導灯の部品を流用した。
【0071】
[表示パネルの輝度評価]
上記で試作した誘導灯を暗室内に設けられた疑似天井(高さ2.0m)に設置し、点灯させ、LED光源点灯時の表示パネル部(中央付近)の輝度を、誘導灯正面(視野角0度)の3m離れた位置で、トプコンテクノハウス社製の2D分光放射計(SR-5000)を用い測定した。
輝度測定の結果、測定値の最低輝度[cd/m2]が500以上のものを○、最大輝度[cd/m2]が500未満のものを「×」、それ以外のものを「△」と、評価判定した。
【0072】
[誘導灯消灯時の外観品質:色調]
前記にして試作した誘導灯を、内装材として使用される白色天井材、壁材のカットサンプル(300×300mm)上に置き、天井の主照明が点灯された居室空間にて、5名による直上からの外観目視評価(特に光源ブロック部)を行った。
5人による目視での外観評価を行い、5人とも内装材カットサンプルとの色ズレが感じられないものを「○」、5人中1人または2人以上に色ズレが感じられたものを「×」、と、評価判定した。
【0073】
[誘導灯点灯時の外観品質:光の透け]
前記にて試作した誘導灯を暗室内に設けられた疑似天井(高さ2.0m)に設置し、点灯させ、LED光源点灯時の光源ブロック2の光の透け状態を、誘導灯正面(視野角0度)の1m離れた場所から、目視による視認性評価を行った。
目視による点灯評価を行い、光源ブロック2に光の透けが観察されるものを「×」、光の透けが観察されないものを「○」と、評価判定した。
【0074】
[総合評価]
以上の結果から、以下の基準で、総合評価をした。
○:成形性、滞留安定性、成形品目視色調評価、表示パネル輝度、照明器具(消灯時)外観品質、照明器具(点灯時)外観品質の評価が、すべて「○」となるもの。
×:成形性、滞留安定性、成形品目視色調評価、表示パネル輝度、照明器具(消灯時)外観品質、照明器具(点灯時)外観品質の評価項目のうち、ひとつでも「△」または「×」となるもの。
結果を以下の表2に示す。表中、「実n」は「実施例n」を、「比n」は「比較例n」を表す。
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は遮光性、反射率、色調に優れるので、これを用いた成形体は、照明装置(照明器具)の部品等に広く好適に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1:本体
2:光源ブロック
3:表示体(30と31で構成)
30:表示パネル
31:保持体
32:保持体後面