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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240827BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B60R16/02 645C
H02H7/20
H02J1/00 304E
H02J1/00 304H
H02J1/00 309Q
H02J7/00 S
H02J7/00 302B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022103613
(22)【出願日】2022-06-28
(65)【公開番号】P2024004125
(43)【公開日】2024-01-16
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
(72)【発明者】
【氏名】白澤 諒
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-238425(JP,A)
【文献】特開平10-097419(JP,A)
【文献】特開2002-171659(JP,A)
【文献】特開2002-278783(JP,A)
【文献】特開2004-086909(JP,A)
【文献】特開2016-066238(JP,A)
【文献】特開2018-069882(JP,A)
【文献】特開2019-047569(JP,A)
【文献】特開2019-097357(JP,A)
【文献】特開2019-209702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0181866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02H 3/02
H02H 7/20
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セントラルユニットと、
前記セントラルユニットと通信可能なゾーンユニットと、
前記ゾーンユニットに所定の下流ユニットを電気的に接続させる下流電線と、
を備え、
前記ゾーンユニットは、
1つまたは複数のゾーンプロセッサと、
前記ゾーンプロセッサに接続される1つまたは複数のゾーンメモリと、
電気的に書き込み可能な不揮発性のゾーン記憶装置と、
前記下流ユニットが接続された前記下流電線を電源に電気的に接続可能な半導体スイッチと、
前記半導体スイッチを通じて前記下流電線に流れる電流を検出する電流センサと、
を有し、
前記セントラルユニットは、
1つまたは複数のセントラルプロセッサと、
前記セントラルプロセッサに接続される1つまたは複数のセントラルメモリと、
前記下流電線の特性を示す電線特性データが予め記憶されているセントラル記憶装置と、
を有し、
前記セントラルプロセッサは、
所定のタイミングにおいて、前記セントラル記憶装置に記憶されている前記電線特性データを前記ゾーンユニットに送信すること、
を含む処理を実行し、
前記ゾーンプロセッサは、
前記セントラルユニットから送信される前記電線特性データの受信に応じて、受信した前記電線特性データを前記ゾーン記憶装置に書き込むことと、
前記ゾーン記憶装置に書き込まれた前記電線特性データと、前記電流センサにより検出された電流とに基づいて、前記下流電線の温度の推定値である温度推定値を導出することと、
前記温度推定値が所定温度閾値を超えた場合、前記半導体スイッチをオフ状態にさせることと、
前記温度推定値が所定温度閾値以下の場合であっても、前記半導体スイッチに対応する前記下流ユニットへの電力を遮断する指令である下流オフ指令を、前記セントラルユニットから受信した場合には、前記半導体スイッチをオフ状態にさせることと、
を含む処理を実行する、電源システム。
【請求項2】
前記セントラルプロセッサは、
特定の条件が成立した場合、前記ゾーンユニットと通信を行って、前記ゾーン記憶装置に書き込まれている前記電線特性データを取得することと、
前記ゾーンユニットから取得した前記電線特性データが、前記セントラル記憶装置に記憶されている前記電線特性データと一致するかを判定することと、
前記ゾーンユニットから取得した前記電線特性データが、前記セントラル記憶装置に記憶されている前記電線特性データと一致しなかった場合、前記電線特性データの書き込みエラーを報知させることと、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の電子制御ユニット(ECU)が、コントローラエリアネットワーク(CAN)により互いに通信可能な車両の診断システムが開示されている。かかる特許文献1では、特定の電子制御ユニットが、他の複数の電子制御ユニットの中から選択した電子制御ユニットを、コントローラエリアネットワークを通じてウェイクアップさせるセレクティブウェイクアップが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-107453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両には、セレクティブウェイクアップの選択の対象となる多くの電子制御ユニットが搭載される。例えば、電子制御ユニットに接続される電線の許容温度等が電子制御ユニットごとに異なることなどに起因して、多くの電子制御ユニットが、個別の専用の設計となってしまうことがある。複数の電子制御ユニットが別々に設計されると、例えば、いずれかの電子制御ユニットにおいて修正や更新などが生じた場合、他の電子制御ユニットとの動作の整合性を確認する必要があるなど、車両に搭載されるシステムの開発や管理が煩雑になってしまう。このため、複数の電子制御ユニットを共通の構成とすることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、複数の電子制御ユニットを共通の構成とすることが可能な電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る電源システムは、
セントラルユニットと、
前記セントラルユニットと通信可能なゾーンユニットと、
前記ゾーンユニットに所定の下流ユニットを電気的に接続させる下流電線と、
を備え、
前記ゾーンユニットは、
1つまたは複数のゾーンプロセッサと、
前記ゾーンプロセッサに接続される1つまたは複数のゾーンメモリと、
電気的に書き込み可能な不揮発性のゾーン記憶装置と、
前記下流ユニットが接続された前記下流電線を電源に電気的に接続可能な半導体スイッチと、
前記半導体スイッチを通じて前記下流電線に流れる電流を検出する電流センサと、
を有し、
前記セントラルユニットは、
1つまたは複数のセントラルプロセッサと、
前記セントラルプロセッサに接続される1つまたは複数のセントラルメモリと、
前記下流電線の特性を示す電線特性データが予め記憶されているセントラル記憶装置と、
を有し、
前記セントラルプロセッサは、
所定のタイミングにおいて、前記セントラル記憶装置に記憶されている前記電線特性データを前記ゾーンユニットに送信すること、
を含む処理を実行し、
前記ゾーンプロセッサは、
前記セントラルユニットから送信される前記電線特性データの受信に応じて、受信した前記電線特性データを前記ゾーン記憶装置に書き込むことと、
前記ゾーン記憶装置に書き込まれた前記電線特性データと、前記電流センサにより検出された電流とに基づいて、前記下流電線の温度の推定値である温度推定値を導出することと、
前記温度推定値が所定温度閾値を超えた場合、前記半導体スイッチをオフ状態にさせることと、
前記温度推定値が所定温度閾値以下の場合であっても、前記半導体スイッチに対応する前記下流ユニットへの電力を遮断する指令である下流オフ指令を、前記セントラルユニットから受信した場合には、前記半導体スイッチをオフ状態にさせることと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の電子制御ユニットを共通の構成とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態にかかる電源システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、電線特性データの一例を示す図である。
図3図3は、電線特性データをゾーン記憶装置に書き込む処理の流れを説明するシーケンス図である。
図4図4は、電線特性データの書き込みエラーが生じているかの検証に関する処理の流れを説明するシーケンス図である。
図5図5は、ゾーンユニットをウェイクアップさせる処理の流れを説明するシーケンス図である。
図6図6は、下流ユニットをウェイクアップさせる処理の流れを説明するシーケンスチャートである。
図7図7は、スイッチ制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる電源システム1の構成を示す概略図である。電源システム1は、例えば、車両2に適用される。車両2は、例えば、駆動源としてモータジェネレータを備える電気自動車である。なお、車両2は、駆動源としてモータジェネレータとエンジンとを備えるハイブリッド電気自動車であってもよいし、駆動源としてエンジンを備えるエンジン車であってもよい。
【0011】
電源システム1は、バッテリ10、ヒューズボックス12、セントラルユニット14、複数のゾーンユニット16a、16b、16c、複数の下流ユニット18a、18b、18c、複数の下流電線20a、20b、20c、および、報知装置22を備える。
【0012】
バッテリ10は、例えば、鉛蓄電池などであり、放電および充電が可能な2次電池である。バッテリ10は、車両2に搭載される各種の補機や電子機器等に電力を供給する電源として機能する。
【0013】
ヒューズボックス12には、複数のヒューズ30a、30b、30c、30dが収容されている。ヒューズ30aにおける2つの端子のうち第1端子は、バッテリ10に接続されている。ヒューズ30aにおける第2端子は、セントラルユニット14に接続されている。つまり、セントラルユニット14は、ヒューズ30aを通じてバッテリ10と電気的に接続される。
【0014】
セントラルユニット14は、例えば、車両2に搭載される各種の機器または電子制御ユニット(ECU)を統括して制御する最上位の電子制御ユニット(ECU)である。セントラルユニット14については後に詳述する。
【0015】
ヒューズ30bにおける2つの端子のうち第1端子は、バッテリ10に接続されている。ヒューズ30bにおける第2端子は、ゾーンユニット16aに接続されている。ヒューズ30cにおける2つの端子のうち第1端子は、バッテリ10に接続されている。ヒューズ30cにおける第2端子は、ゾーンユニット16bに接続されている。ヒューズ30dにおける2つの端子のうち第1端子は、バッテリ10に接続されている。ヒューズ30dにおける第2端子は、ゾーンユニット16cに接続されている。つまり、ゾーンユニット16a、16b、16cの各々は、ヒューズ30a、30b、30cを通じてバッテリ10と電気的に接続される。
【0016】
以後、複数のゾーンユニット16a、16b、16cを総称して、ゾーンユニット16という場合がある。図1では、3つのゾーンユニット16a、16b、16cを例示しているが、ゾーンユニット16の数は、3つに限らず、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0017】
また、本実施形態の電源システム1では、複数のゾーンユニット16の構成を共通とさせている。図1では、図の簡略化のため、複数のゾーンユニット16のうちゾーンユニット16aの構成を示し、その他のゾーンユニット16の構成を省略している。
【0018】
ゾーンユニット16は、例えば、ネットワークアーキテクチャにおいてセントラルユニット14よりも下位の電子制御ユニット(ECU)である。ゾーンユニット16については後に詳述する。
【0019】
以後、複数のヒューズ30a、30b、30c、30dを総称して、ヒューズ30という場合がある。図1では、4つのヒューズ30a、30b、30c、30dを例示しているが、ヒューズ30の数は、4つに限らず、セントラルユニット14およびゾーンユニット16の総数以上あればよい。
【0020】
ゾーンユニット16は、複数の電源出力ポート32a、32b、32cを有する。以後、電源出力ポート32a、32b、32cを総称して、電源出力ポート32という場合がある。図1では、3つの電源出力ポート32a、32b、32cを例示しているが、電源出力ポート32の数は、3つに限らず、1つであってもよいし、2つであってもよいし4つ以上であってもよい。
【0021】
下流ユニット18aは、下流電線20aを通じてゾーンユニット16aの電源出力ポート32aに電気的に接続されている。下流ユニット18bは、下流電線20bを通じてゾーンユニット16aの電源出力ポート32bに電気的に接続されている。下流ユニット18cは、下流電線20cを通じてゾーンユニット16aの電源出力ポート32cに電気的に接続されている。
【0022】
以後、複数の下流ユニット18a、18b、18cを総称して、下流ユニット18という場合がある。図1では、3つの下流ユニット18a、18b、18cを例示しているが、下流ユニット18の数は、3つに限らず、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0023】
また、複数の下流電線20a、20b、20cを総称して、下流電線20という場合がある。図1では、3つの下流電線20a、20b、20cを例示しているが、下流電線20の数は、3つに限らず、下流ユニット18の数と同じだけあればよく、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0024】
後述するが、ゾーンユニット16は、電源であるバッテリ10の電力を、電源出力ポート32を通じて、当該電源出力ポート32に接続されている下流ユニット18に供給可能となっている。なお、下流ユニット18および下流電線20における「下流」は、電源から供給される電力の供給経路におけるゾーンユニット16よりも電源とは反対側、すなわち、末端側であることを意味する。
【0025】
下流ユニット18は、例えば、アクチュエータなどの任意の電気機器であってもよい。また、下流ユニット18は、例えば、ネットワークアーキテクチャにおけるセントラルユニット14およびゾーンユニット16よりも下位の電子制御ユニット(ECU)などの任意の電子機器であってもよい。
【0026】
複数の下流ユニット18の各々は、同じ機器であってもよいし、異なる機器であってもよい。例えば、下流ユニット18a、18b、18cのすべてが電子制御ユニットであってもよい。また、例えば、下流ユニット18aが電子制御ユニットであり、下流ユニット18b、18cがアクチュエータであってもよい。
【0027】
なお、図示を省略しているが、ゾーンユニット16a以外の他のゾーンユニット16に、他の下流電線20を通じて他の下流ユニット18が接続されていてもよい。
【0028】
下流電線20は、ゾーンユニット16に所定の下流ユニット18を電気的に接続させる電線である。例えば、下流電線20は、耐熱温度が高い車両2の電装用の電線であってもよい。
【0029】
複数の下流電線20は、当該下流電線20に接続される下流ユニット18において必要とされる電流の大きさによって、電線の種類および断面積が異なっている。例えば、下流ユニット18が所定のアクチュエータであれば、当該アクチュエータを駆動させるために比較的大きな電流が必要であり、比較的断面積が大きい下流電線20によって当該アクチュエータがゾーンユニット16に接続されることになる。一方、例えば、下流ユニット18が電子制御ユニットであれば、アクチュエータと比べて電流が小さくてもよく、比較的断面積が小さい下流電線20によって当該電子制御ユニットがゾーンユニット16に接続されてもよい。
【0030】
複数の下流電線20では、電線の種類および断面積によって、許容電流が異なる。下流電線20に流す電流が多くなると、当該下流電線20の発熱量が多くなり、場合によっては、下流電線20の温度が許容温度を超えるおそれがある。そこで、後述するが、下流電線20の温度が許容温度を超える前に、下流電線20および下流ユニット18への電力の供給を遮断するヒューズ機能が、ゾーンユニット16内に設けられる。
【0031】
ここで、ゾーンユニット16に繋がる下流電線20の断面積がゾーンユニット16ごとに異なると、下流電線20ごとに許容電流が異なることになるため、ゾーンユニット16におけるヒューズ機能を、ゾーンユニット16ごとに設計する必要が生じる。複数のゾーンユニット16が個別の専用の設計となってしまうと、例えば、いずれかのゾーンユニット16において修正や更新などが生じた場合、他のゾーンユニット16との動作の整合性を確認する必要があるなど、車両2に搭載されるシステムの開発や管理が煩雑になってしまう。
【0032】
そこで、電源システム1では、それぞれのゾーンユニット16のヒューズ機能に関係する下流電線20の特性を示すデータを、セントラルユニット14で一括管理する。それにより、複数のゾーンユニット16を、共通の構成とさせることができ、システムの開発や管理の負担を抑えることができる。
【0033】
セントラルユニット14は、セントラル通信装置40、セントラル記憶装置42、1つまたは複数のセントラルプロセッサ44、および、セントラルプロセッサ44に接続される1つまたは複数のセントラルメモリ46を有する。
【0034】
セントラル通信装置40は、車両2に搭載される他の電子制御ユニットの通信装置と、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)などの通信ネットワークを構成している。セントラルユニット14は、セントラル通信装置40を通じて、後述するゾーンユニット16と通信可能となっている。
【0035】
セントラル記憶装置42は、不揮発性の記憶素子で構成される。なお、不揮発性の記憶素子は、フラッシュメモリなどの電気的に読み書き可能な不揮発性の記憶素子などを含んでもよい。
【0036】
セントラル記憶装置42には、複数の電線特性データ50が予め記憶されている。電線特性データ50は、ゾーンユニット16の数だけ記憶されている。
【0037】
図2は、電線特性データ50の一例を示す図である。電線特性データ50には、ゾーンユニット16に接続されている下流電線20に関する各種の指標の値が、電源出力ポート32ごとに設定されている。
【0038】
例えば、電線特性データ50では、電源出力ポート32、電線種類、電線抵抗r、電線の初期温度T0、電線の放熱抵抗R、電線の熱容量Cv、電線の発煙温度、および、遮断余裕度Kの各々の値が関連付けられている。
【0039】
電線種類は、電源出力ポート32に接続された下流電線20の型式などである。電線抵抗rは、電源出力ポート32に接続された下流電線20の電気的な抵抗値を示す。電線の初期温度T0は、例えば、80℃などの固定値であり、真夏に車両2が放置されたときの車両2の室内の温度を想定して設定される。電線の放熱抵抗Rは、電源出力ポート32に接続された下流電線20における放熱され難さを示す。電線の熱容量Cvは、電源出力ポート32に接続された下流電線20の温度を単位温度上昇させるために必要な熱量を示す。電線の発煙温度は、電源出力ポート32に接続された下流電線20の被覆から煙が発生する温度を示す。遮断余裕度Kは、電源出力ポート32を通じた電力の供給を遮断するか否かの判断基準をどの程度安全側に設定するかを示す指標である。
【0040】
電線特性データ50は、後述するが、ゾーンユニット16において、下流電線20を通じて接続される下流ユニット18への電力の供給を遮断するかの判定に利用される。
【0041】
図1に戻って、セントラルメモリ46は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。セントラルプロセッサ44は、セントラルメモリ46に含まれるプログラムと協働して、セントラルユニット14の各制御を実現する。セントラルプロセッサ44は、プログラムを実行することで、セントラル制御部52としても機能する。セントラル制御部52については後に詳述する。
【0042】
ゾーンユニット16は、複数の半導体スイッチ60a、60b、60cを有する。以後、複数の半導体スイッチ60a、60b、60cを総称して、半導体スイッチ60という場合がある。図1では、3つの半導体スイッチ60a、60b、60cを例示しているが、半導体スイッチ60の数は、3つに限らず、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。半導体スイッチ60は、電源出力ポート32の数と同じ数だけ設けられる。
【0043】
半導体スイッチ60は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などである。半導体スイッチ60は、第1端子、第2端子および制御端子を有する。
【0044】
半導体スイッチ60aの第1端子、半導体スイッチ60bの第1端子、および、半導体スイッチ60cの第1端子は、ヒューズボックス12のヒューズ30に接続されている。半導体スイッチ60aの第2端子は、電源出力ポート32aに接続されている。半導体スイッチ60bの第2端子は、電源出力ポート32bに接続されている。半導体スイッチ60cの第2端子は、電源出力ポート32cに接続されている。
【0045】
半導体スイッチ60は、制御端子に入力される電圧に基づいて、当該半導体スイッチ60の第1端子と第2端子との間のオンオフを切替可能となっている。つまり、半導体スイッチ60は、当該半導体スイッチ60に接続された電源出力ポート32、下流電線20および下流ユニット18を、電源に電気的に接続可能となっている。
【0046】
より詳細には、半導体スイッチ60aがオン状態のとき、バッテリ10の電力が、当該半導体スイッチ60aおよび下流電線20aを通じて下流ユニット18aに供給される。半導体スイッチ60aがオフ状態のとき、下流電線20aおよび下流ユニット18aは、バッテリ10から電気的に遮断される。同様に、半導体スイッチ60bがオン状態のとき、バッテリ10の電力が、当該半導体スイッチ60bおよび下流電線20bを通じて下流ユニット18bに供給される。半導体スイッチ60bがオフ状態のとき、下流電線20bおよび下流ユニット18bは、バッテリ10から電気的に遮断される。半導体スイッチ60cがオン状態のとき、バッテリ10の電力が、当該半導体スイッチ60cおよび下流電線20cを通じて下流ユニット18cに供給される。半導体スイッチ60cがオフ状態のとき、下流電線20cおよび下流ユニット18cは、バッテリ10から電気的に遮断される。
【0047】
ゾーンユニット16は、電流センサ62および素子温度センサ64を有する。電流センサ62および素子温度センサ64は、半導体スイッチ60ごとに設けられる。電流センサ62は、半導体スイッチ60および電源出力ポート32を通じて、当該電源出力ポート32に接続される下流電線20に流れる電流を検出する。素子温度センサ64は、半導体スイッチ60の温度を検出する。
【0048】
また、ゾーンユニット16は、ゾーン通信装置70、ゾーン記憶装置72、1つまたは複数のゾーンプロセッサ74、および、ゾーンプロセッサ74に接続される1つまたは複数のゾーンメモリ76を有する。
【0049】
ゾーン通信装置70は、車両2に搭載される他の電子制御ユニットの通信装置と、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)などの通信ネットワークを構成している。ゾーンユニット16は、ゾーン通信装置70を通じて、セントラルユニット14と通信可能となっている。
【0050】
また、ゾーン通信装置70は、ゾーン電源ドライバ78を有する。ゾーン電源ドライバ78は、ヒューズボックス12のヒューズ30に電気的に接続されている。
【0051】
ここで、セントラル制御部52のセントラル通信装置40は、コントローラエリアネットワークを通じて、ゾーンユニット16を識別する固有の識別子を、ゾーンユニット16のゾーン通信装置70に送信することができる。ゾーン通信装置70のゾーン電源ドライバ78は、セントラル通信装置40から送信される固有の識別子を受信することができる。
【0052】
ゾーン電源ドライバ78は、受信した固有の識別子が、自装置が属するゾーンユニット16を識別するものであれば、自装置が属するゾーンユニット16をウェイクアップさせる。具体的には、ゾーン電源ドライバ78は、ヒューズ30を通じてバッテリ10から供給される電力を、自装置が属するゾーンユニット16のゾーンプロセッサ74に供給することで、自装置が属するゾーンユニット16をウェイクアップさせる。
【0053】
セントラル制御部52は、複数のゾーンユニット16のうちから選択されたゾーンユニット16の固有の識別子を送信することで、当該選択されたゾーンユニット16を選択的にウェイクアップさせることができる。すなわち、セントラルユニット14およびゾーンユニット16は、CAN通信を利用したセレクティブウェイクアップ機能を有する。
【0054】
ゾーン記憶装置72は、電気的に書き込み可能な不揮発性の記憶素子で構成される。例えば、電源システム1が適用される車両2の製造が完了する前の初期状態では、ゾーン記憶装置72には、少なくとも電線特性データ50が記憶されていない。しかし、後述するが、所定のタイミングが経過すると、セントラル記憶装置42に記憶されている電線特性データ50のうちゾーンユニット16それぞれに対応する電線特性データ50がゾーン記憶装置72に書き込まれる。図1では、ゾーン記憶装置72の中の電線特性データ50を破線の四角で示すことで、電線特性データ50がゾーン記憶装置72に書き込まれることを示している。
【0055】
ゾーンメモリ76は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。ゾーンプロセッサ74は、ゾーンメモリ76に含まれるプログラムと協働して、ゾーンユニット16の各制御を実現する。ゾーンプロセッサ74は、プログラムを実行することで、ゾーン制御部80としても機能する。
【0056】
ゾーン制御部80は、それぞれの半導体スイッチ60を、リレーと同様にオンオフさせることができるとともに、半導体スイッチ60をヒューズとして機能させることもできるように構成されている。
【0057】
例えば、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60に接続される下流電線20に流れる電流が過電流となるような状況において、当該半導体スイッチ60をオフ状態にさせて、当該下流電線20の電流を遮断させる。ここで、下流電線20に流れる電流が過電流となるような状況では、下流電線20の温度が高くなる。このことから、ゾーン制御部80は、下流電線20に流れる電流の測定値から、下流電線20の温度の推定値である温度推定値を導出する。そして、ゾーン制御部80は、温度推定値が所定温度を超えた場合に、下流電線20の電流が過電流となったとみなして、当該下流電線20に接続される半導体スイッチ60をオフ状態にさせる。このような制御を行うことで、半導体スイッチ60をヒューズとして機能させることができる。
【0058】
上述のように、ゾーンユニット16に接続される下流電線20は、下流電線20に接続される下流ユニット18によって異なる。そうすると、半導体スイッチ60をヒューズとして制御するときの条件が、下流電線20ごとに異なることになる。
【0059】
そこで、電源システム1では、下流電線20の温度推定値を導出するために用いられるデータと、温度推定値を導出するための導出式に相当するプログラムとを分離させる。また、電源システム1では、半導体スイッチ60をオフ状態にさせる判定の基準となる所定温度を決定するために用いられるデータと、所定温度を決定するための決定式に相当するプログラムとを分離させる。
【0060】
以後、説明の便宜のため、温度推定値を導出するための導出式に相当するプログラムを、温度推定プログラムという場合がある。所定温度を決定するための決定式に相当するプログラムを、所定温度決定プログラムという場合がある。
【0061】
電源システム1では、温度推定プログラムおよび所定温度決定プログラムが、ゾーンメモリ76に予め記憶される。一方、電源システム1では、温度推定値の導出に用いられるデータ、および、所定温度の決定に用いられるデータを、電線特性データ50として、セントラル記憶装置42に予め記憶させておく。
【0062】
電線特性データ50は、所定のタイミングにおいて、セントラルユニット14からゾーンユニット16に送信されてゾーン記憶装置72に書き込まれる。所定のタイミングは、例えば、後述するように、ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が記憶されていないことを示す空状態情報を、セントラルユニット14がゾーンユニット16から受信したタイミングとする。なお、所定のタイミング、例示したタイミングに限らず、ゾーンユニット16において電線特性データ50が必要となるタイミングなどの任意のタイミングとしてもよい。
【0063】
温度推定プログラムおよび所定温度決定プログラムは、下流電線20の種類に拘わらず同じプログラムを利用することができる。このため、ゾーンメモリ76に温度推定プログラムおよび所定温度決定プログラムが予め記憶されていても、ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が書き込まれる前であれば、複数のゾーンユニット16を、全く同じ構成とすることが可能となる。つまり、複数のゾーンユニット16を、1つの仕様で量産することが可能となる。
【0064】
そして、ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が書き込まれることで、複数のゾーンユニット16を、ゾーンユニット16に接続される下流電線20に合わせて、別々のゾーンユニット16として機能させることが可能である。
【0065】
より詳細には、ゾーン制御部80は、ゾーン記憶装置72に書き込まれた電線特性データ50を用いて、ゾーンメモリ76に記憶されている温度推定プログラムを実行することで、下流電線20の温度推定値を導出することができる。また、ゾーン制御部80は、ゾーン記憶装置72に書き込まれた電線特性データ50を用いて、ゾーンメモリ76に記憶されている所定温度決定プログラムを実行することで、所定温度を決定することができる。ゾーン制御部80は、温度推定値と所定温度とに基づいて、半導体スイッチ60をオフ状態にするかを判定することができる。
【0066】
温度推定プログラムは、例えば、以下の式(1)で示す式を実現するプログラムであってもよい。なお、nは、所定周期で繰り返される一連の処理における繰り返し回数を示す。T[n]は、n回目の時点における温度推定値を示す。Iは、n回目の時点における電流の測定値を示す。rは、電線抵抗を示す。T[n-1]は、n-1回目の時点、すなわち、前回における温度推定値を示す。T0は、電線の初期抵抗を示す。Rは、電線の放熱抵抗を示す。Cvは、電線の熱容量を示す。Δtは、n-1回目の時点とn回目の時点との時間差、すなわち、所定周期を示す。
【数1】
【0067】
式(1)で示すように、温度推定プログラムでは、所定周期の間に変化した温度の変化量を、所定周期が訪れるごとに積算することで、現在の温度推定値が導出されるようになっている。
【0068】
また、所定温度決定プログラムでは、以下の式(2)で示す式を実現するプログラムであってもよい。なお、Tthは、所定温度を示す。Tsは、電線の発煙温度を示す。Kは、遮断余裕度を示す。式(2)で示すように、所定温度は、発煙温度よりも遮断余裕度だけ低い温度に決定される。
【数2】
【0069】
なお、発煙温度および遮断余裕度の2つの指標を用いて所定温度を決定する態様に限らない。例えば、所定温度そのものが指標として電線特性データ50に含まれてもよい。その場合、電線特性データ50に含まれる所定温度をそのまま利用すればよく、所定温度決定プログラムが省略されてもよい。
【0070】
図3は、電線特性データ50をゾーン記憶装置72に書き込む処理の流れを説明するシーケンス図である。ゾーン制御部80は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来すると、セントラルユニット14との通信が確立しているかを判定する(S10)。通信が確立していないと判定した場合(S10におけるNO)、ゾーン制御部80は、図3で示す一連の処理を終了する。
【0071】
セントラルユニット14との通信が確立していると判定した場合(S10におけるYES)、ゾーン制御部80は、ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が記憶されているかを判定する(S11)。ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が記憶されていると判定した場合(S11におけるYES)、ゾーン制御部80は、図3で示す一連の処理を終了する。
【0072】
ゾーン記憶装置72に電線特性データ50が記憶されていないと判定した場合(S11におけるNO)、ゾーン制御部80は、電線特性データ50が記憶されていないことを示す空状態情報を、ゾーン通信装置70を通じてセントラルユニット14に送信する(S12)。
【0073】
セントラル制御部52は、セントラル通信装置40を通じて空状態情報を受信すると、空状態情報の送信元のゾーンユニット16に対応する電線特性データ50をセントラル記憶装置42から読み出す(S13)。セントラル制御部52は、読み出した電線特性データ50を、セントラル通信装置40を通じて空状態情報の送信元のゾーンユニット16に送信する(S14)。
【0074】
ゾーン制御部80は、ゾーン通信装置70を通じて電線特性データ50を受信すると、受信した電線特性データ50をゾーン記憶装置72に書き込み(S15)、図3で示す一連の処理を終了する。なお、ゾーン制御部80は、電線特性データ50をゾーン記憶装置72に書き込んだとき、書き込みが完了したことを示す書き込みフラグをオンするようにしてもよい。
【0075】
このようにして電線特性データ50がゾーン記憶装置72に書き込まれることで、ゾーン制御部80は、以後、ゾーン記憶装置72に書き込まれた電線特性データ50を利用することができる。例えば、ゾーン制御部80は、ゾーン記憶装置72に書き込まれた電線特性データ50と、電流センサ62により検出された電流とに基づいて、下流電線20に接続される半導体スイッチ60をオフ状態にさせるか否かを判定することができる。
【0076】
また、セントラル制御部52は、特定の条件が成立した場合、ゾーンユニット16のゾーン記憶装置72に記憶されている電線特性データ50と、セントラル記憶装置42に記憶されている電線特性データ50とが一致するかを判定してもよい。すなわち、セントラル制御部52は、ゾーン記憶装置72において電線特性データ50の書き込みエラーが生じているかを検証してもよい。
【0077】
図4は、電線特性データ50の書き込みエラーが生じているかの検証に関する処理の流れを説明するシーケンス図である。セントラル制御部52は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来すると、特定の条件が成立したかを判定する(S20)。
【0078】
例えば、ディーラーなどにおいて車両2の修理が行われたとき、セントラル制御部52は、特定の条件が成立したと判定してもよい。また、車両2のイグニッションがオンされてドライビングサイクルが開始されたタイミングにおいて、セントラル制御部52は、特定の条件が成立したと判定してもよい。また、例えば、1日ごとなど、所定時間が経過するごとに、セントラル制御部52は、特定の条件が成立したと判定してもよい。
【0079】
特定の条件が成立していないと判定した場合(S20におけるNO)、セントラル制御部52は、図4で示す一連の処理を終了する。
【0080】
特定の条件が成立したと判定した場合(S20におけるYES)、セントラル制御部52は、ゾーン記憶装置72に書き込まれている電線特性データ50の送信を要求する送信要求情報を、セントラル通信装置40を通じてゾーンユニット16に送信する(S21)。
【0081】
ゾーン制御部80は、ゾーン通信装置70を通じて送信要求情報を受信すると、ゾーン記憶装置72に記憶されている電線特性データ50を読み出す(S22)。ゾーン制御部80は、読み出した電線特性データ50を、ゾーン通信装置70を通じてセントラルユニット14に送信する(S23)。
【0082】
セントラル制御部52は、セントラル通信装置40を通じてゾーンユニット16から電線特性データ50を受信することで、ゾーン記憶装置72に書き込まれている電線特性データ50を取得することができる。セントラル制御部52は、ゾーンユニット16から取得した電線特性データ50と、セントラル記憶装置42に記憶されている当該ゾーンユニット16に対応する電線特性データ50とが一致するかを判定する(S24)。
【0083】
ゾーンユニット16から取得した電線特性データ50と、セントラル記憶装置42に記憶されている当該ゾーンユニット16に対応する電線特性データ50とが一致した場合(S24におけるYES)、セントラル制御部52は、図4で示す一連の処理を終了する。
【0084】
ゾーンユニット16から取得した電線特性データ50と、セントラル記憶装置42に記憶されている当該ゾーンユニット16に対応する電線特性データ50とが一致しなかった場合(S24におけるNO)、セントラル制御部52は、電線特性データ50の書き込みエラーを報知装置22に報知させる(S25)。報知装置22は、例えば、インストルメントパネルの警告灯など、車両2の搭乗者に適切に報知可能な装置であればよい。
【0085】
このように、ゾーン記憶装置72における電線特性データ50の書き込みエラーを検証することで、電線特性データ50の書き込みエラーを早期に発見することができ、当該エラーに適切に対応することができる。その結果、電線特性データ50を利用して行われる半導体スイッチ60の制御の不具合を、早期に、かつ、適切に修正することが可能となる。
【0086】
ところで、ここまでは、ゾーンユニット16および下流ユニット18がウェイクアップしていることを前提として説明していた。しかし、ゾーンユニット16および下流ユニット18は、スリープさせることもできる。例えば、スリープしている電子制御ユニットに担当させる処理が発生した場合、当該電子制御ユニットをスリープの状態からウェイクアップさせる必要がある。
【0087】
電子制御ユニットをウェイクアップさせる方法として、特定の電子制御ユニットが、他の複数の電子制御ユニットの中から選択した電子制御ユニットを、コントローラエリアネットワークを通じてウェイクアップさせるセレクティブウェイクアップがある。セレクティブウェイクアップを実現するためには、通信に応じて電子制御ユニットをウェイクアップさせるための電源ドライバを、ウェイクアップされる電子制御ユニットに設ける必要がある。しかし、車両2には、多くの電子制御ユニットが搭載されるため、電子制御ユニットの全てに当該電源ドライバを設けようとすると、コストの増加につながる。
【0088】
そこで、電源システム1では、ゾーンユニット16については、セレクティブウェイクアップを適用し、下流ユニット18については、セレクティブウェイクアップを適用しないようにした。より詳細には、ゾーンユニット16には、通信に応じてゾーンユニット16自体をウェイクアップさせるためのゾーン電源ドライバ78が設けられている。これに対し、下流ユニット18には、通信に応じて下流ユニット18自体をウェイクアップさせるための電源ドライバが設けられていない。下流ユニットについては、ゾーンユニットの半導体スイッチがオン状態とされることで、ウェイクアップされるようにする。
【0089】
このように、電源システム1では、下流ユニット18において、セレクティブウェイクアップを実現する電源ドライバが省略されているため、当該電源ドライバを省略した分だけ、コストを抑制することが可能となる。
【0090】
図5は、ゾーンユニット16をウェイクアップさせる処理の流れを説明するシーケンス図である。セントラル制御部52は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来すると、ゾーンユニット16のウェイクアップ条件が成立したか否かを、全てのゾーンユニット16について判定する(S30)。例えば、ゾーンユニット16がスリープしている状態において、ゾーンユニット16が担当する処理が発生した場合、セントラル制御部52は、当該ゾーンユニット16のウェイクアップ条件が成立したと判定してもよい。
【0091】
全てのゾーンユニット16について、ゾーンユニット16のウェイクアップ条件が成立していないと判定した場合(S30におけるNO)、セントラル制御部52は、図5の一連の処理を終了する。
【0092】
少なくともいずれかのゾーンユニット16について、ゾーンユニット16のウェイクアップ条件が成立したと判定した場合(S30におけるYES)、セントラル制御部52は、ウェイクアップ条件が成立したゾーンユニット16の固有の識別子を、セントラル通信装置40を通じて当該ゾーンユニット16に送信する(S31)。
【0093】
ゾーン通信装置70のゾーン電源ドライバ78は、受信した固有の識別子が、自装置が属するゾーンユニット16を識別する固有の識別子であれば(S32におけるYES)、自装置が属するゾーンユニット16をウェイクアップさせる(S33)。
【0094】
ゾーン通信装置70のゾーン電源ドライバ78は、受信した固有の識別子が、自装置が属するゾーンユニット16を識別する固有の識別子でなければ(S32におけるNO)、自装置が属するゾーンユニット16のウェイクアップを行わず、図5で示す一連の処理を終了する。
【0095】
ここで、下流ユニット18は、ゾーンユニット16のようなセレクティブウェイクアップ機能を有していない。つまり、下流ユニット18は、通信に応じて下流ユニット18をウェイクアップさせることが可能な電源ドライバを有していない。
【0096】
このため、下流ユニット18は、セレクティブウェイクアップ機能を有する態様と比べ、下流ユニット18のコストを抑制することができる。
【0097】
電源システム1では、ゾーンユニット16の半導体スイッチ60がオン状態となることで、下流ユニット18に電力が供給されて、下流ユニット18をウェイクアップさせることができる。
【0098】
図6は、下流ユニット18をウェイクアップさせる処理の流れを説明するシーケンスチャートである。セントラル制御部52は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来すると、下流ユニット18のウェイクアップ条件が成立したか否かを、全ての下流ユニット18について判定する(S40)。例えば、下流ユニット18がスリープしている状態において、下流ユニット18が担当する処理が発生した場合、セントラル制御部52は、当該下流ユニット18のウェイクアップ条件が成立したと判定してもよい。
【0099】
全ての下流ユニット18について、下流ユニット18のウェイクアップ条件が成立していないと判定した場合(S40におけるNO)、セントラル制御部52は、図6の一連の処理を終了する。
【0100】
少なくともいずれかの下流ユニット18について、下流ユニット18のウェイクアップ条件が成立したと判定した場合(S40におけるYES)、セントラル制御部52は、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18が接続されているゾーンユニット16がウェイクアップしているかを判定する(S41)。
【0101】
ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18が接続されているゾーンユニット16がウェイクアップしていないと判定した場合(S41におけるNO)、セントラル制御部52は、当該ゾーンユニット16のウェイクアップを実行する(S42)。より詳細には、セントラル制御部52は、上述した図5の一連の処理を実行することで、当該ゾーンユニット16をウェイクアップさせる。なお、下流ユニット18のウェイクアップを行わず、ゾーンユニット16のみウェイクアップさせる場合には、図6の処理が行われず、図5の処理だけ行われてもよい。
【0102】
ゾーンユニット16をウェイクアップさせた後、セントラル制御部52は、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18に電力を供給する指令である下流オン指令を、セントラル通信装置40を通じてゾーンユニット16に送信する(S43)。下流オン指令は、下流ユニット18をウェイクアップさせる指令に相当する。下流オン指令には、ウェイクアップさせる下流ユニット18を特定する情報が含まれている。
【0103】
また、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18が接続されているゾーンユニット16がウェイクアップしている場合(S41におけるYES)、セントラル制御部52は、ゾーンユニット16をウェイクアップさせるステップS42を省略して、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18についての下流オン指令を、セントラル通信装置40を通じてゾーンユニット16に送信する(S43)。
【0104】
なお、ステップS40において、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18が複数ある場合、セントラル制御部52は、ウェイクアップ条件が成立した下流ユニット18の全てについて、ステップS41以降の処理を行う。
【0105】
ここで、ゾーン制御部80は、所定周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、半導体スイッチ60を制御する処理であるスイッチ制御処理(S50)を繰り返し実行する。スイッチ制御処理(S50)については後述する。
【0106】
ゾーン制御部80は、ゾーン通信装置70を通じて下流オン指令を受信すると、スイッチ制御処理(S50)における下流オン指令の受信判定で、下流オン指令を受信したと判定してスイッチ制御処理(S50)が進められる。
【0107】
また、下流ユニット18への電力を遮断する処理については、図6で説明した、下流ユニット18に電力を供給する処理と同様にして行うことができる。すなわち、セントラル制御部52は、下流ユニット18への電力を遮断する条件が成立した場合において、ゾーンユニット16がウェイクアップしていなければ、ゾーンユニット16のウェイクアップを実行する。そして、セントラル制御部52は、ゾーンユニット16がウェイクアップしている状態において、下流ユニット18への電力を遮断する指令である下流オフ指令を、セントラル通信装置40を通じてゾーンユニット16に送信する。下流オフ指令には、電力を遮断する下流ユニット18を特定する情報が含まれている。
【0108】
ゾーン制御部80は、ゾーン通信装置70を通じて下流オフ指令を受信すると、スイッチ制御処理(S50)における下流オフ指令の受信判定で、下流オフ指令を受信したと判定してスイッチ制御処理(S50)が進められる。
【0109】
図7は、スイッチ制御処理(S50)の流れを説明するフローチャートである。図7で示すスイッチ制御処理(S50)は、半導体スイッチ60ごとに並行して実行される。複数の半導体スイッチ60のそれぞれに対応する複数のスイッチ制御処理(S50)の内容は共通している。以後、説明の便宜のため、1つの半導体スイッチ60に対応するスイッチ制御処理(S50)について説明し、他の半導体スイッチ60に対応するスイッチ制御処理(S50)については説明を省略する。また、図7のスイッチ制御処理の説明における半導体スイッチ60は、原則として、当該スイッチ制御処理(S50)に対応する半導体スイッチ60を示すものとする。
【0110】
ここで、後述するが、半導体スイッチ60においてヒューズ機能が発動して半導体スイッチ60がオン状態からオフ状態になると、ヒューズ機能が発動したことを示す発動情報がゾーンメモリ76に記憶される。
【0111】
スイッチ制御処理(S50)が開始されると、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60のヒューズ機能が発動状態であるか否かを判定する(S60)。例えば、ゾーン制御部80は、ゾーンメモリ76に半導体スイッチ60の発動情報が記憶されていた場合、半導体スイッチ60のヒューズ機能が発動状態であると判定する。
【0112】
ヒューズ機能が発動状態であると判定した場合(S60におけるYES)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60をオフ状態で維持させ(S61)、今回のスイッチ制御処理(S50)を終了する。
【0113】
ヒューズ機能が発動状態ではないと判定した場合(S60におけるNO)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60に対応する電流センサ62により検出された電流を取得する(S70)。
【0114】
ゾーン制御部80は、取得した電流と、ゾーン記憶装置72に書き込まれている電線特性データ50とに基づいて、半導体スイッチ60に対応する下流電線20の温度の推定値である温度推定値を導出する(S71)。例えば、ゾーン制御部80は、取得した電流および電線特性データ50を用いて温度推定プログラムを実行することで、温度推定値を導出する。
【0115】
次に、ゾーン制御部80は、ゾーン記憶装置72に書き込まれている電線特性データ50に基づいて、ヒューズ機能を発動させるか否かの判定基準を示す所定温度を決定する(S72)。例えば、ゾーン制御部80は、電線特性データ50を用いて所定温度決定プログラムを実行することで、所定温度を決定する。
【0116】
次に、ゾーン制御部80は、温度推定値が所定温度より大きいかを判定する(S73)。温度推定値が所定温度以下である場合(S73におけるNO)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60に対応する素子温度センサ64により検出された素子温度を取得する(S74)。
【0117】
ゾーン制御部80は、取得した素子温度が、素子温度閾値より大きいかを判定する(S75)。素子温度閾値は、例えば、ゾーンメモリ76に予め記憶されている。
【0118】
温度推定値が所定温度より大きい(S73におけるYES)、または、素子温度が素子温度閾値より大きい場合(S75におけるYES)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60をオフ状態にさせる(S76)。この場合、半導体スイッチ60のヒューズ機能が発動して半導体スイッチ60がオフ状態となったことに相当する。このため、ゾーン制御部80は、ヒューズ機能の発動があったことを示す発動情報をゾーンメモリ76に記憶させる(S77)。そして、ゾーン制御部80は、当該発動情報を、ゾーン通信装置70を通じてセントラルユニット14に送信し(S78)、今回のスイッチ制御処理(S50)を終了する。
【0119】
また、ステップS75において、素子温度が素子温度閾値以下である場合(S75におけるNO)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オフ指令を受信したかを判定する(S80)。
【0120】
半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オフ指令を受信した場合(S80におけるYES)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60をオフ状態にさせ(S81)、今回のスイッチ制御処理(S50)を終了する。
【0121】
半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オフ指令を受信していない場合(S80におけるNO)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オン指令を受信したかを判定する(S82)。
【0122】
半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オン指令を受信した場合(S82におけるYES)、ゾーン制御部80は、半導体スイッチ60をオン状態にさせ(S83)、今回のスイッチ制御処理(S50)を終了する。
【0123】
半導体スイッチ60に対応する下流ユニット18についての下流オン指令を受信していない場合(S82におけるNO)、ゾーン制御部80は、今回のスイッチ制御処理(S50)を終了する。この場合、半導体スイッチ60の現在の状態が維持される。
【0124】
なお、半導体スイッチ60のヒューズ機能が発動している状態で下流オフ指令または下流オン指令を受信した場合、当該下流オフ指令または下流オン指令は、有効に処理されず、ステップS61で示すように、半導体スイッチ60はオフ状態で維持される。
【0125】
以上のように、本実施形態の電源システム1の下流ユニット18は、ゾーンユニット16の半導体スイッチ60がオン状態となることでウェイクアップされる。
【0126】
したがって、本実施形態の電源システム1では、通信に応じて下流ユニット18をウェイクアップさせることが可能な電源ドライバを下流ユニット18において省略することができ、当該電源ドライバを省略した分だけ、コストを抑制することが可能となる。
【0127】
また、本実施形態の電源システム1では、セントラル記憶装置42に記憶されている電線特性データ50がゾーンユニット16に送信されてゾーン記憶装置72に書き込まれる。これにより、本実施形態の電源システム1では、複数のゾーンユニット16において、半導体スイッチ60の制御の条件が異なっていたとしても、半導体スイッチ60の制御の条件に関わる電線特性データ50をセントラル記憶装置42にて一括管理することができる。
【0128】
したがって、本実施形態の電源システム1では、複数の電子制御ユニット、例えば、複数のゾーンユニット16を共通の構成とすることが可能となる。その結果、本実施形態では、電源システム1の開発や管理を行い易くすることができる。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0130】
1 電源システム
10 バッテリ
14 セントラルユニット
16、16a、16b、16c ゾーンユニット
18、18a、18b、18c 下流ユニット
20、20a、20b、20c 下流電線
42 セントラル記憶装置
44 セントラルプロセッサ
46 セントラルメモリ
60、60a、60b、60c 半導体スイッチ
62 電流センサ
72 ゾーン記憶装置
74 ゾーンプロセッサ
76 ゾーンメモリ
78 ゾーン電源ドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7