(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
(21)【出願番号】P 2022159904
(22)【出願日】2022-10-04
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔦川 友佑
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】小寺 広明
(72)【発明者】
【氏名】牛田 典宏
(72)【発明者】
【氏名】服部 宏之
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092281(JP,A)
【文献】特開2017-143024(JP,A)
【文献】特開2009-070855(JP,A)
【文献】特開2013-069438(JP,A)
【文献】特表2011-501045(JP,A)
【文献】特開2005-297387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するバスバーと、
導電性を有し、軸線方向に沿って前記バスバーが挿通される挿通孔を有する導電部材と、
前記バスバーを覆い前記バスバーと前記導電部材とを絶縁する樹脂部材と、
前記挿通孔の内部に充填されたポッティング材とを備え、
前記バスバーは、前記軸線方向の端部に位置し当該軸線方向と交差する端子屈曲方向に沿って屈曲した屈曲端子部、及び、前記挿通孔の内部に位置し前記軸線方向及び前記端子屈曲方向と交差するクランク方向に沿って延在するバスバークランク部を含み、
前記樹脂部材は、前記挿通孔の内部に位置し前記バスバークランク部を覆い絶縁する樹脂クランク部を含み、
前記ポッティング材は、前記挿通孔の内部に充填された状態で、前記樹脂クランク部の全周を覆う、
樹脂成形品。
【請求項2】
前記樹脂クランク部は、前記挿通孔の内壁面との間に前記クランク方向周りの全周に渡って隙間を有しており、
前記ポッティング材は、前記隙間に充填され、前記樹脂クランク部の全周を覆う、
請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記バスバーは、前記挿通孔の内部に位置し前記軸線方向に沿った軸線方向延在部の端部と前記バスバークランク部の端部とが交わったバスバー屈曲端部を含み、
前記樹脂部材は、前記挿通孔の内部に位置し前記バスバー屈曲端部を覆い絶縁する樹脂屈曲端部を含み、
前記ポッティング材は、前記挿通孔の内部に充填された状態で、当該挿通孔の外部と前記樹脂屈曲端部との間に介在する、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、金属部材を保持するインナー部をインサートとしてインサート成形されるケースを備えたインサート成形品が開示されている。インナー部は、ケースを成形するための金型に引掛け状態で係止される係止部を備え、この係止部によって金型内にて同金型の内壁面から浮いた状態で位置決め支持される。この係止部は、ケースの内面側に位置しており、ケースは、係止部を残してインナー部の周囲を樹脂部によって被覆して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のインサート成形品等の樹脂成形品は、例えば、成形後にいわゆるポッティング材を用いて防水・防油性能を確保する場合がある。この場合に、樹脂成形品は、例えば、量産性を確保しつつ、要求される防水・防油性能を満たすことが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正に防水・防油性能を確保することができる樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂成形品は、導電性を有するバスバーと、導電性を有し、軸線方向に沿って前記バスバーが挿通される挿通孔を有する導電部材と、前記バスバーを覆い前記バスバーと前記導電部材とを絶縁する樹脂部材と、前記挿通孔の内部に充填されたポッティング材とを備え、前記バスバーは、前記軸線方向の端部に位置し当該軸線方向と交差する端子屈曲方向に沿って屈曲した屈曲端子部、及び、前記挿通孔の内部に位置し前記軸線方向及び前記端子屈曲方向と交差するクランク方向に沿って延在するバスバークランク部を含み、前記樹脂部材は、前記挿通孔の内部に位置し前記バスバークランク部を覆い絶縁する樹脂クランク部を含み、前記ポッティング材は、前記挿通孔の内部に充填された状態で、前記樹脂クランク部の全周を覆う。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る樹脂成形品は、適正に防水・防油性能を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る樹脂成形品の概略構成を表す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る樹脂成形品の概略構成を表す模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る樹脂成形品の概略構成を表す模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る樹脂成形品の概略構成を表す模式的な分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、及び、第1樹脂部材を表す模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、第1樹脂部材、及び、第2樹脂部材を表す模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、導電部材、及び、第2樹脂部材を表す模式的な部分断面斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、導電部材、及び、第2樹脂部材を表す模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、第1樹脂部材、導電部材、及び、第2樹脂部材を表す模式的な部分断面斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、第1樹脂部材、第2樹脂部材、及び、ポッティング材を表す模式的な斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る樹脂成形品が備えるバスバー、第1樹脂部材、第2樹脂部材、及び、ポッティング材を表す模式的な側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る樹脂成形品の概略構成を表す模式的な部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
なお、以下で説明する各図は、樹脂成形品の形状を単純化し模式的に図示したものである。例えば、
図6は、導電部材、ポッティング材を2点鎖線によって簡略化して図示している。
図7、
図8、
図9は、ポッティング材の図示を省略していると共に、
図9は、導電部材の挿通孔の内部を分かり易く図示するため、導電部材の一部を破断させた図としている。
図10、
図11は、導電部材を2点鎖線によって簡略化して図示している。
【0011】
[実施形態]
本実施形態に係る樹脂成形品1は、
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、バスバー10と、第1樹脂部材20と、導電部材30と、第2樹脂部材40と、ポッティング材50とを備える。バスバー10は、導電性を有する導電体である。第1樹脂部材20及び第2樹脂部材40は、バスバー10を覆い絶縁する絶縁体である。言い換えれば、バスバー10と第1樹脂部材20と第2樹脂部材40とは、第1樹脂部材20、第2樹脂部材40でバスバー10を覆って絶縁した絶縁バスバーを構成する。導電部材30は、導電性を有し、軸線方向D1に沿ってバスバー10が挿通される挿通孔33を有する剛性部材(剛体)である。ポッティング材50は、挿通孔33の内部に充填された封止材である。
【0012】
本実施形態に係る樹脂成形品1は、バスバー10、第1樹脂部材20、導電部材30、第2樹脂部材40をインサート成形によって一体成形することで、バスバー10と導電部材30とを第1樹脂部材20及び第2樹脂部材40によって絶縁したインサート成形品である。
【0013】
そして、本実施形態に係る樹脂成形品1は、導電部材30における軸線方向D1の一方側の端面を境界B(
図3参照)として、一方側にある接続対象と他方側にある接続対象とをバスバー10を介して導通するものである。そして、樹脂成形品1は、境界Bの一方側の空間が液中・油中空間S1(
図3参照)、他方側の空間が気中空間S2(
図3参照)となる環境下に適用される。このような環境下において、樹脂成形品1は、導電部材30の挿通孔33をポッティング材50によって封止することで、防水・防油性能が確保されている。
【0014】
例えば、樹脂成形品1は、バスバー10に対してインサート成形によって第1樹脂部材20を1次成形した後、導電部材30を組み付けてインサート成形によって第2樹脂部材40を2次成形する。そして、樹脂成形品1は、第2樹脂部材40の成形後に、導電部材30の挿通孔33にポッティング材50が充填され、このポッティング材50によって第2樹脂部材40と導電部材30との間の防水・防油を行うことで、防水・防油性能が確保される。
【0015】
そして、本実施形態の樹脂成形品1は、このような構成にあって、バスバー10、及び、これを被覆する第2樹脂部材40に所定のクランク形状が付されている。この形状により、本実施形態の樹脂成形品1は、インサート成形における金型の成形成立性を確保し量産性を向上しつつ、適正な防水・防油性能を満たす構造を実現したものである。以下、各図を参照して樹脂成形品1の各構成について詳細に説明する。
【0016】
具体的には、バスバー10は、
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、軸線方向D1に沿って延在する導電体である。バスバー10は、軸線方向D1の一方側の接続対象と他方側の接続対象とを電気的に接続して導電する導電路を構成する。バスバー10は、複数部位で屈曲しており、ここでは、軸線方向D1の中腹部位にクランク形状が付されている。ここでは、バスバー10は、略同一形状のものが一対で設けられている。一対のバスバー10は、一方に対して他方を軸線方向D1周りに180°程度回転させた位置に配置され、軸線方向D1と交差す方向に対して対称形に向かい合うように配置される。
【0017】
より具体的には、バスバー10は、第1軸線方向延在部11、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13、及び、屈曲端子部14を含んで構成される。バスバー10は、これら第1軸線方向延在部11、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13、及び、屈曲端子部14が導電性を有する金属材料によって一体で形成される。なお、このバスバー10は、複数の部材に分割されて形成されたものを溶接等によって連結することで上記各部が形成されてもよい。バスバー10は、軸線方向D1に対して、気中空間S2側から液中・油中空間S1側に向かって第1軸線方向延在部11、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13、屈曲端子部14の順で並んで位置する。
【0018】
第1軸線方向延在部11、第2軸線方向延在部13は、共にバスバー10において軸線方向D1に沿って延在する部分である。第1軸線方向延在部11は、軸線方向D1の一方側の端部がバスバークランク部12に連結され、他方側に接続対象が接続される。ここでは、第1軸線方向延在部11は、軸線方向D1の中腹部位に段付部11aが形成されている。段付部11aは、軸線方向D1と交差する方向に沿って段差が形成されている部分であり、一対のバスバー10において相互に離間する側への段付形状となっている。第2軸線方向延在部13は、軸線方向D1に対してバスバークランク部12と屈曲端子部14との間に介在する。そして、第2軸線方向延在部13は、軸線方向D1の一方側の端部が屈曲端子部14に連結され、他方側の端部がバスバークランク部12に連結される。
【0019】
バスバークランク部12は、バスバー10においてクランク方向D3に沿って延在する部分である。クランク方向D3は、軸線方向D1及び後述する屈曲端子部14の端子屈曲方向D2と交差する方向であり、典型的には、軸線方向D1周り方向、あるいは、当該周り方向の接線方向である。バスバークランク部12は、クランク方向D3に対して第1軸線方向延在部11と第2軸線方向延在部13との間に介在する。そして、バスバークランク部12は、クランク方向D3の一方側の端部が第1軸線方向延在部11の軸線方向D1の一方側の端部に連結され、他方側の端部が第2軸線方向延在部13の軸線方向D1の他方側の端部に連結される。言い換えれば、バスバークランク部12は、第1軸線方向延在部11の軸線方向D1の一方側の端部と、第2軸線方向延在部13の軸線方向D1の他方側の端部とをクランク方向D3に沿って連結する。
【0020】
バスバー10は、第1軸線方向延在部11の端部とこのバスバークランク部12とが略直角に交わった部分がバスバー屈曲端部15を構成し、第2軸線方向延在部13の端部とこのバスバークランク部12とが略直角に交わった部分がバスバー屈曲端部16を構成する。バスバー10は、これらバスバー屈曲端部15、及び、バスバー屈曲端部16を含んで構成される。バスバー10は、この2つのバスバー屈曲端部15、バスバー屈曲端部16、及び、バスバークランク部12によって、2か所で略直角に屈曲したクランク形状をなす。そして、バスバークランク部12、及び、2つのバスバー屈曲端部15、バスバー屈曲端部16は、このバスバー10において導電部材30の挿通孔33の内部に位置する部分を構成する。
【0021】
屈曲端子部14は、バスバー10において軸線方向D1の一方側の端部に位置し当該軸線方向D1と交差する端子屈曲方向D2に沿って屈曲した部分である。端子屈曲方向D2は、軸線方向D1及び上述したバスバークランク部12のクランク方向D3と交差する方向であり、典型的には、軸線方向D1と直交する径方向である。屈曲端子部14は、第2軸線方向延在部13の軸線方向D1の一方側の端部が端子屈曲方向D2に沿って略直角に屈曲して形成され、先端側に接続対象が接続される。言い換えれば、屈曲端子部14は、端子屈曲方向D2の一方側の端部が第2軸線方向延在部13の軸線方向D1の一方側の端部に連結され、他方側に接続対象が接続される。ここでは、屈曲端子部14は、一対のバスバー10において端子屈曲方向D2に沿って相互に離間する側に略直角に屈曲して形成される。
【0022】
第1樹脂部材20は、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、一対のバスバー10の一部を覆い当該バスバー10の一部と導電部材30とを絶縁する絶縁体である。第1樹脂部材20は、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。ここでは、第1樹脂部材20は、バスバー10を構成する第1軸線方向延在部11の段付部11a近傍を覆うように成形された1次成形体である。本実施形態の第1樹脂部材20は、中心軸線が軸線方向D1に沿う略円筒状に形成され、バスバー10において段付部11aよりバスバークランク部12側とは反対側に位置する端部部分が内部に埋設され、当該部分を被覆し絶縁する。例えば、第1樹脂部材20は、インサート成形用の金型内に、一対のバスバー10を上記で説明した位置関係でセット(インサート)し、当該金型内に樹脂材料を充填し、固化した後に離型されることで形成される。このように成形された第1樹脂部材20は、バスバー10を被覆する絶縁体として機能すると共に、一対のバスバー10を上記で説明したように軸線方向D1と交差す方向に対して対称形に向かい合う位置関係で保持する位置決め保持部材としても機能する。一対のバスバー10は、共に第1軸線方向延在部11の段付部11aよりバスバークランク部12側とは反対側に位置する端部部分が第1樹脂部材20によって覆われる。そして、一対のバスバー10は、それ以外の第1軸線方向延在部11の他の一部、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13、屈曲端子部14が第1樹脂部材20から露出している。
【0023】
導電部材30は、
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、軸線方向D1に沿った軸部を構成する剛性部材(剛体)であり、バスバー10が挿通される挿通孔33を有する。導電部材30は、導電性を有し、かつ、相対的に高い剛性を有する金属材料によって形成されており、例えば、この樹脂成形品1と他の部材とを取り付けるための取り付け部位としても機能する。また、導電部材30は、第1樹脂部材20、第2樹脂部材40を介してバスバー10とは絶縁され、例えば、グランド(接地)部材として機能する場合もある。
【0024】
より具体的には、導電部材30は、軸部31、及び、基部32を含んで構成される。導電部材30は、これら軸部31、及び、基部32が導電性を有する金属材料によって一体で形成される。なお、この導電部材30は、複数の部材に分割されて形成されたものを溶接等によって連結することで上記各部が形成されてもよい。導電部材30は、軸線方向D1に対して、気中空間S2側から液中・油中空間S1側に向かって軸部31、基部32の順で並んで位置する。
【0025】
軸部31、基部32は、共に中心軸線が軸線方向D1に沿い、かつ、第1樹脂部材20と同軸上の略円筒状に形成される。軸部31は、導電部材30において相対的に小径に形成された部分であり、基部32は、導電部材30において相対的に大径に形成された部分である。
【0026】
軸部31は、第1樹脂部材20の内部において一対のバスバー10の第1軸線方向延在部11に挟まれて位置し、当該第1樹脂部材20を軸線方向D1に沿って貫通している。軸部31は、軸線方向D1の一方側の端部が基部32に連結され、他方の端部が第1樹脂部材20から露出している。
【0027】
基部32は、全体が第1樹脂部材20から露出している。基部32は、軸部31の軸線方向D1の一方側の端部を支持すると共に、樹脂成形品1と他の部材とを取り付けるための取り付け部位を構成する。例えば、基部32は、軸受等によって回転可能に支持されてもよい。そして、基部32は、軸線方向D1に沿ってバスバー10が貫通する挿通孔33が形成されている。
【0028】
挿通孔33は、基部32を軸線方向D1に沿って貫通する。挿通孔33は、基部32の外縁端部に略円弧スリット状に形成される。挿通孔33は、一対のバスバー10に対応して一対で設けられている。一対の挿通孔33は、一方に対して他方を軸線方向D1周りに180°程度回転させた位置に配置され、軸線方向D1と交差す方向に対して対称形に向かい合うように配置される。挿通孔33は、軸線方向D1に沿ってバスバー10が挿通された状態で、上述したように内部にバスバー10のバスバークランク部12、バスバー屈曲端部15、16が位置する。
【0029】
上記のように構成される導電部材30は、バスバー10に第1樹脂部材20が1次成形された後に、各挿通孔33に軸線方向D1に沿ってバスバー10を挿通するようにして当該バスバー10に組み付けられる。なおこの場合、バスバー10は、
図5に2点鎖線で図示したように、第1樹脂部材20と共にインサート成形される際には、屈曲端子部14を構成する部分がいまだ折り返されておらず、軸線方向D1に沿って直線状に延在した状態となっている。そして、バスバー10は、第1樹脂部材20を1次成形した後、第2軸線方向延在部13の先端側を軸線方向D1に沿って挿通孔33に挿通するようにして導電部材30が組み付けられる。その後、バスバー10は、第2樹脂部材40の2次成形前に、第2軸線方向延在部13の先端側が端子屈曲方向D2に沿って折り返され屈曲端子部14が形成される。樹脂成形品1は、この状態で後述する第2樹脂部材40が2次成形される。
【0030】
例えば、次に説明する第2樹脂部材40は、第1樹脂部材20が1次成形されたバスバー10に対して導電部材30が組み付けられ、屈曲端子部14が折り返された状態で、これらをインサート成形用の金型内にセット(インサート)し、当該金型内に樹脂材料を充填し、固化した後に離型されることで形成される。このとき、導電部材30に形成された挿通孔33は、第2樹脂部材40においてバスバークランク部12、バスバー屈曲端部15、16を被覆する部分(後述する樹脂クランク部46等)を成形するためのスライド金型M1、M2(後述する
図9参照)が挿入される金型挿入孔として機能する。そして、この挿通孔33は、第2樹脂部材40の2次成形後にはポッティング材50が充填されるポッティング充填孔として機能する。
【0031】
第2樹脂部材40は、
図1、
図2、
図3、
図4、
図6に示すように、第1樹脂部材20と同様に、一対のバスバー10の一部を覆い当該バスバー10の一部と導電部材30とを絶縁する絶縁体である。第2樹脂部材40、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。ここでは、第2樹脂部材40は、第1樹脂部材20が1次成形された後に、バスバー10を構成する第1軸線方向延在部11の段付部11a、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13等を覆うように成形された2次成形体である。
【0032】
より具体的には、第2樹脂部材40は、軸部41、基部42、及び、柱状部43を含んで構成される。第2樹脂部材40は、これら軸部41、基部42、及び、柱状部43が絶縁性を有するを有する樹脂材料によって一体で形成される。第2樹脂部材40は、軸線方向D1に対して、気中空間S2側から液中・油中空間S1側に向かって軸部41、基部42、柱状部43の順で並んで位置する。
【0033】
軸部41、基部42は、共に中心軸線が軸線方向D1に沿い、かつ、第1樹脂部材20や導電部材30と同軸上の略円筒状に形成される。軸部41は、導電部材30において相対的に小径に形成された部分であり、基部42は、第2樹脂部材40において相対的に大径に形成された部分である。ここでは、基部42は、外周面の一部に凹凸形状が付されている。
【0034】
軸部41は、第1樹脂部材20の内部において一対のバスバー10の第1軸線方向延在部11に挟まれて位置し、内部を導電部材30の軸部31が軸線方向D1に沿って貫通している。軸部41は、軸線方向D1の一方側の端部が基部42に連結され、他方の端部が第1樹脂部材20の端部と略揃っている。
【0035】
基部42は、全体が第1樹脂部材20と導電部材30の基部32との間から露出している。基部42は、軸部41の軸線方向D1の一方側の端部を支持すると共に、第1軸線方向延在部11の段付部11aが内部に埋設され、当該部分を被覆し絶縁する。そして、基部42は、軸線方向D1に沿って当該基部42を貫通する貫通孔44が形成されている。
【0036】
貫通孔44は、基部42の外縁端部に略円弧スリット状に形成される。貫通孔44は、基部42の内部に埋設されているバスバー10を避け、かつ、軸線方向D1に沿って導電部材30の挿通孔33と連続する位置に形成される。貫通孔44は、一対の挿通孔33に対応して一対で設けられている。一対の貫通孔44は、一方に対して他方を軸線方向D1周りに180°程度回転させた位置に配置され、軸線方向D1と交差す方向に対して対称形に向かい合うように配置される。貫通孔44は、第2樹脂部材40において後述する樹脂クランク部46等を成形するためのスライド金型M1、M2(後述する
図9参照)のうち、スライド金型M1を軸線方向D1に沿ってスライドさせて型抜きするための型抜き孔である。そして、この貫通孔44は、第2樹脂部材40の2次成形後にはポッティング材50が充填されるポッティング充填孔として機能する。
【0037】
柱状部43は、バスバー10の形状に応じて軸線方向D1に沿って延在する。柱状部43は、軸線方向D1の他方側の端部が基部42に連結され、当該基部42に支持される。柱状部43は、第1軸線方向延在部11において段付部11aよりバスバークランク部12側に位置する部分、バスバークランク部12、第2軸線方向延在部13が内部に埋設され、当該部分を被覆し絶縁する。柱状部43は、一対のバスバー10に対応して一対で設けられている。一対の柱状部43は、一方に対して他方を軸線方向D1周りに180°程度回転させた位置に配置され、軸線方向D1と交差す方向に対して対称形に向かい合うように配置される。
【0038】
ここでは、柱状部43は、第1軸線方向延在部45、樹脂クランク部46、及び、第2軸線方向延在部47を含んで構成される。柱状部43は、軸線方向D1に対して、気中空間S2側から液中・油中空間S1側に向かって第1軸線方向延在部45、樹脂クランク部46、第2軸線方向延在部47の順で並んで位置する。第1軸線方向延在部45は、第1軸線方向延在部11において段付部11aよりバスバークランク部12側に位置する部分を覆い絶縁する部分である。樹脂クランク部46は、バスバークランク部12を覆い絶縁する部分である。第2軸線方向延在部47は、第2軸線方向延在部13を覆い絶縁する部分である。
【0039】
具体的には、第1軸線方向延在部45、第2軸線方向延在部47は、それぞれ第1軸線方向延在部11、第2軸線方向延在部13の形状に対応しており、共に柱状部43において軸線方向D1に沿って延在する部分である。第2軸線方向延在部47は、軸線方向D1の一方側の端部が屈曲し屈曲端子部14が露出しており、他方側の端部が樹脂クランク部46に連結される。一対のバスバー10は、共に屈曲端子部14が第2樹脂部材40から露出している。
【0040】
樹脂クランク部46は、バスバークランク部12の形状に対応しており、柱状部43においてクランク方向D3に沿って延在する部分である。樹脂クランク部46は、クランク方向D3に対して第1軸線方向延在部45と第2軸線方向延在部47との間に介在する。そして、樹脂クランク部46は、クランク方向D3の一方側の端部が第1軸線方向延在部45の軸線方向D1の一方側の端部に連結され、他方側の端部が第2軸線方向延在部47の軸線方向D1の他方側の端部に連結される。言い換えれば、樹脂クランク部46は、第1軸線方向延在部45の軸線方向D1の一方側の端部と、第2軸線方向延在部47の軸線方向D1の他方側の端部とをクランク方向D3に沿って連結する。
【0041】
柱状部43は、第1軸線方向延在部45の端部とこの樹脂クランク部46とが略直角に交わった部分が樹脂屈曲端部48を構成し、第2軸線方向延在部47の端部とこの樹脂クランク部46とが略直角に交わった部分が樹脂屈曲端部49を構成する。柱状部43は、これら樹脂屈曲端部48、及び、バ樹脂屈曲端部49を含んで構成される。樹脂屈曲端部48、樹脂屈曲端部49は、それぞれバスバー屈曲端部15、バスバー屈曲端部16を覆い絶縁する。柱状部43は、この2つの樹脂屈曲端部48、樹脂屈曲端部49、及び、樹脂クランク部46によって、2か所で略直角に屈曲したクランク形状をなす。
【0042】
そして、樹脂クランク部46、及び、2つの樹脂屈曲端部48、樹脂屈曲端部49は、
図6、
図7、
図8、
図9に示すように、この柱状部43において導電部材30の挿通孔33の内部に位置する部分を構成する。そして、樹脂クランク部46は、挿通孔33の内部に収容された状態で、当該挿通孔33の内壁面33aとの間にクランク方向D3周りの全周に渡って隙間Gを有している(特に、
図7、
図8参照)。つまり、樹脂クランク部46は、挿通孔33の内部にポッティング材50が未だ充填されていない状態においては、当該挿通孔33の内部でクランク方向D3周りの全周が梁状に露出している。
【0043】
上記のように構成される第2樹脂部材40は、上述したように、第1樹脂部材20が1次成形されたバスバー10に対して導電部材30が組み付けられ、屈曲端子部14が折り返された状態で、これらをインサート成形用の金型内にセット(インサート)し、当該金型内に樹脂材料を充填し、固化した後に離型されることで形成される。このようにインサート成形によって各部が成形される第2樹脂部材40は、第1軸線方向延在部45と第2軸線方向延在部47との間に樹脂クランク部46が介在している。この構成により、第2樹脂部材40は、
図8に示すように軸線方向D1に沿って視て、樹脂クランク部46の成形位置と、バスバー10の屈曲端子部14の位置とが軸線方向D1周り方向に沿ってずれて位置することとなる。ここで、樹脂クランク部46の成形位置とは、言い換えれば、樹脂クランク部46が設けられる挿通孔33の位置に相当する。
【0044】
そして、この樹脂成形品1は、樹脂クランク部46の成形位置(挿通孔33の位置)と、屈曲端子部14の位置とがずれて位置することで、
図9に示すように、挿通孔33内に樹脂クランク部46等を成形するための金型としてスライド金型M2を用いることが可能となる。すなわち、この樹脂成形品1は、上記のようなずれがあることで、挿通孔33内に樹脂クランク部46、樹脂屈曲端部48、49を成形するためのスライド金型M1、M2のうち、挿通孔33側から挿入されるスライド金型M2を、屈曲端子部14を避けつつ軸線方向D1に沿ってスライドさせて型抜きすることが可能となる。
【0045】
そして、ポッティング材50は、
図1、
図2、
図4、
図10、
図11、
図12に示すように、上記のように第2樹脂部材40の2次成形後、スライド金型M1、M2を軸線方向D1に沿ってスライドさせて型抜きした後の挿通孔33の内部に充填される充填材である。ポッティング材50は、絶縁性を有し、かつ、高い密着性・追従性を有する樹脂材料によって形成される。ポッティング材50は、挿通孔33の内部に隙間なく密実に充填され、硬化することで、挿通孔33の内壁面33aや第2樹脂部材40に密着し当該挿通孔33を封止する。これにより、ポッティング材50は、挿通孔33を止水し、防水・防油性能を発揮する。
【0046】
具体的には、ポッティング材50は、挿通孔33の内部に充填された状態で、樹脂クランク部46の全周を覆う(特に
図12等参照)。すなわち、ポッティング材50は、樹脂クランク部46と挿通孔33の内壁面33aとの間にクランク方向D3周りの全周に渡って形成された隙間Gに充填され、樹脂クランク部46の全周を覆う。また、ポッティング材50は、挿通孔33の内部に充填された状態で、当該挿通孔33の外部と樹脂屈曲端部48、49との間に介在し、挿通孔33の内部への水・油の侵入を防ぐ。ここでは、ポッティング材50は、第2樹脂部材40に形成された貫通孔44の内部にも充填されている。
【0047】
つまり、概略して説明すると、本実施形態のポッティング材50は、大きく分けて、挿通孔33の軸線方向D1の一方側の開口を塞ぐ蓋状部分51、貫通孔44の軸線方向D1の他方側の開口を塞ぐ蓋状部分52、及び、樹脂クランク部46と挿通孔33の内壁面33aとの間の隙間Gに充填され樹脂クランク部46の全周を覆う覆い部分53を含んで構成される(特に
図10、
図11、
図12等参照)。
【0048】
これにより、樹脂成形品1は、導電部材30の挿通孔33の内壁面33a等とポッティング材50との密着面、及び、第2樹脂部材40の樹脂クランク部46、樹脂屈曲端部48、樹脂屈曲端部49等とポッティング材50との密着面によって防水・防油ラインL(特に
図10、
図11等参照)が形成される。この結果、樹脂成形品1は、当該防水・防油ラインLで挿通孔33の内部への水・油の侵入を防ぎ、防水・防油性能を確保することができる。
【0049】
以上で説明した樹脂成形品1は、導電路を構成するバスバー10を介して軸線方向D1の一方側の接続対象と他方側の接続対象とを接続することができる。この場合、樹脂成形品1は、第1樹脂部材20、第2樹脂部材40によってこのバスバー10を覆うことでバスバー10と導電部材30とを絶縁している。このような構成にあって、樹脂成形品1は、導電部材30の端面を境界Bとして、一方側の空間が液中・油中空間S1、他方側の空間が気中空間S2となる環境下に適用される場合がある。この場合に、樹脂成形品1は、導電部材30においてバスバー10が挿通されている挿通孔33に充填されたポッティング材50によって、液中・油中空間S1側から挿通孔33の内部への水・油の侵入を防ぎ、防水・防油性能を確保することができる。このとき、樹脂成形品1は、ポッティング材50が挿通孔33の内部に充填された状態で、樹脂クランク部46の全周を覆うように施されていることで、この樹脂クランク部46とポッティング材50との密着面で確実に防水・防油することができる。これにより、樹脂成形品1は、例えば、異質材料によって形成されている導電部材30と第2樹脂部材40との境界面に生じ得る微小な隙間を介して液中・油中空間S1側から気中空間S2側へ水・油が侵入することを防ぐことができる。
【0050】
そして、樹脂成形品1は、上記のように挿通孔33にポッティング材50を充填し防水・防油性能を確保する構造において、バスバー10、第2樹脂部材40において、バスバークランク部12、樹脂クランク部46が介在している。この構成により、樹脂成形品1は、軸線方向D1に沿って視て、樹脂クランク部46の成形位置である挿通孔33の位置と、バスバー10の屈曲端子部14の位置とを軸線方向D1周り方向に沿ってずれて位置させることができる。これにより、樹脂成形品1は、、挿通孔33内に樹脂クランク部46、樹脂屈曲端部48、49を成形するためのスライド金型M1、M2のうち、挿通孔33側から挿入されるスライド金型M2を、屈曲端子部14を避けつつ軸線方向D1に沿ってスライドさせて型抜きすることができる。すなわち、樹脂成形品1は、挿通孔33内に樹脂クランク部46等を成形するための金型としてスライド金型M2を用いて、当該樹脂クランク部46等を成形することができ、これにより、量産性を向上することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態の樹脂成形品1は、インサート成形における金型成形成立性を確保した構造と、かつ、ポッティング材50を用いて防水性能を満足させる構造との2つを両立させることができる。すなわち、樹脂成形品1は、インサート成形における金型の成形成立性を確保し量産性を向上しつつ、適正に防水・防油性能を確保することができる。
【0052】
ここでは、以上で説明した樹脂成形品1は、樹脂クランク部46と挿通孔33の内壁面33aとの間にクランク方向D3周りの全周に渡って隙間Gが形成されており、当該隙間Gにポッティング材50が充填されることで、樹脂クランク部46の全周を覆う。これにより、樹脂成形品1は、上述したように樹脂クランク部46とポッティング材50との密着面で確実に防水・防油することができ、上記のように適正に防水・防油性能を確保することができる。
【0053】
またここでは、以上で説明した樹脂成形品1は、ポッティング材50が挿通孔33の内部に充填された状態で、当該挿通孔33の外部と樹脂屈曲端部48、39との間に介在し、挿通孔33の内部への水・油の侵入を防ぐことができる。これにより、樹脂成形品1は、挿通孔33の内壁面33a、樹脂クランク部46、樹脂屈曲端部48、樹脂屈曲端部49等とポッティング材50と密着面によって形成される防水・防油ラインLで挿通孔33の内部への水・油の侵入を防ぎ、防水・防油性能を確保することができる。この結果、樹脂成形品1は、上記のように適正に防水・防油性能を確保することができる。
【0054】
なお、上述した本発明の実施形態に係る樹脂成形品は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
以上の説明では、バスバー10は、略同一形状のものが一対で設けられているものとて説明したがこれに限らない。バスバー10は、1つであっても良いし、3つ以上であってもよく、また、すべてが略同一形状でなくてもよい。
【0056】
以上の説明では、樹脂成形品1は、第1樹脂部材20を備えるものとして説明したがこれに限らない。樹脂成形品1は、第1樹脂部材20を備えなくてもよいし、第1樹脂部材20と第2樹脂部材40とが一体的に形成されるものであってもよい。
【0057】
本実施形態に係る樹脂成形品は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 樹脂成形品
10 バスバー
11 第1軸線方向延在部
11a 段付部
12 バスバークランク部
13 第2軸線方向延在部
14 屈曲端子部
15、16 バスバー屈曲端部
20 第1樹脂部材
30 導電部材
31 軸部
32 基部
33 挿通孔
33a 内壁面
40 第2樹脂部材(樹脂部材)
41 軸部
42 基部
43 柱状部
44 貫通孔
45 第1軸線方向延在部
46 樹脂クランク部
47 第2軸線方向延在部
48、49 樹脂屈曲端部
50 ポッティング材
51、52 蓋状部分
53 覆い部分
B 境界
D1 軸線方向
D2 端子屈曲方向
D3 クランク方向
G 隙間
L 防水・防油ライン
M1、M2 スライド金型
S1 液中・油中空間
S2 気中空間