(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】長鎖二塩基酸の抽出方法及システム
(51)【国際特許分類】
C07C 51/43 20060101AFI20240827BHJP
C07C 55/21 20060101ALI20240827BHJP
C07C 55/02 20060101ALI20240827BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20240827BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20240827BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240827BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240827BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240827BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240827BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C55/21
C07C55/02
B01D61/14 500
B01D61/16
B01D61/58
B01D69/00
B01D71/02
B01D71/26
B01D71/68
(21)【出願番号】P 2022164833
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020097793の分割
【原出願日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】201911320839.2
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517272909
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股分有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520198823
【氏名又は名称】▲凱▼▲賽▼(金▲郷▼)生物材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 晨
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 淑▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 玉峰
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 修才
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-098685(JP,A)
【文献】特許第7209668(JP,B2)
【文献】特開2013-079224(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102476987(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102329224(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1570124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104862348(CN,A)
【文献】特開2000-302724(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103570525(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102775292(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290961(US,A1)
【文献】特開2000-169426(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102976917(CN,A)
【文献】特開昭64-016743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00
C07C 55/00
B01D 61/00
B01D 69/00
B01D 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖二塩基酸を含む発酵液を1段目膜により濾過処理して第1濾液を得、前記第1濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第1固体を得るステップ(1)と、
前記第1固体とアルカリと水とを混合して溶液を作成し、前記溶液を2段目膜により濾過処理して第2濾液を得、前記第2濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第2固体を得るステップ(2)と、
前記第2固体と水とを混合して混合物を作成し、前記混合物を105~150℃で保温処理し、その後、降温により結晶化させ、固液分離処理を行うステップ(3)と、を含み、
前記第1濾液及び前記第2濾液の濃度を、長鎖二塩基酸としての表示で、2~
8wt%に制御し、
前記1段目膜による濾過処理は、精密濾過膜を用いる濾過であり、前記1段目膜による濾過処理の温度は、
60~100℃であり、前記精密濾過膜の孔径は、0.01~0.2ミクロンであり、
前記2段目膜による濾過処理の温度は、20~45℃であり、前記2段目膜による濾過処理は、限外濾過膜を用いる濾過であり、前記限外濾過膜の分画分子量は、2,000~20,000Daで
あり、
前記長鎖二塩基酸を含む発酵液を70~90℃まで加熱し、その後、前記1段目膜により濾過処理する、
長鎖二塩基酸の抽出方法。
【請求項2】
前記限外濾過膜は、セラミック膜、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保温処理の温度は、120~140℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保温処理の時間は、15~150分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1段目膜による濾過処理を行う前に、前記長鎖二塩基酸を含む発酵液のpH値は6.0~12である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1段目膜による濾過処理を行う前に、前記長鎖二塩基酸を含む発酵液のpH値は8~11である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記1段目膜による濾過処理のプロセスにおいて、膜の両側の圧力差は、0.05~0.6MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記2段目膜による濾過処理の温度は、30~40℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)において、前記脱色処理の温度は、50~100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記脱色処理の時間は、10~180分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脱色処理は、前記ステップ(1)又は(2)の濾液を脱色剤と接触させることにより行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記脱色処理は、前記ステップ(1)又は(2)の濾液を脱色剤に通過させ、流出液を収集して脱色された溶液を得るものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脱色剤の使用量は、前記濾液の質量に対して0.05~5wt%である、請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項14】
前記脱色剤の使用量は、前記濾液の質量に対して0.2~4wt%である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記脱色剤は、粉末状活性炭、粒状活性炭、活性炭繊維、活性白土、珪藻土から選ばれる、請求項
12又は
13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1濾液及び前記第2濾液を脱色処理した溶液のpH値をそれぞれ2~5.5に調整して酸性化して結晶化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(3)において、前記降温による結晶化の終点温度は、25~65℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記降温による結晶化の終点温度は、30~50℃である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記保温処理後、先ず97~115℃まで降温する第1段階の降温プロセスを行い、さらに85~95℃まで降温する第2段階の降温プロセスを行い、その後、終点の温度まで降温する第3段階の降温プロセスを行う、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、0.5~12℃/hであり、前記第2段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、2~15℃/hであり、前記第3段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、12~25℃/hである、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、0.5~8℃/hである、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、2~8℃/hである、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記第3段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、16~20℃/hである、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(2)において前記脱色処理の後且つ酸性化による結晶化の前に3段目膜による濾過を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記3段目膜による濾過は、限外濾過膜を用いる濾過であり、前記3段目膜による濾過の温度は、20~45℃である、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記ステップ(3)において、前記第2固体と溶媒である水との質量比は、1:(2~20)である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記質量比は、1:(3~15)である、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップ(1)、(2)で固液分離して得られた濾液に対して無機塩を回収して、二塩基酸の発酵プロセスにおける培地に使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記第1固体の水分の含有量は、3~10wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
長鎖二塩基酸を含む発酵液を1段目膜により濾過するための1段目膜濾過ユニットと、
前記1段目膜により濾過して得られた第1濾液を酸性化して結晶化させて第1固液混合物を得るための第1の酸性化による結晶化ユニットと、
前記第1固液混合物を固液分離するための第1分離ユニットと、
前記第1分離ユニットにより分離された固体を溶液とし、さらに2段目膜により濾過するための2段目膜濾過ユニットと、
前記2段目膜により濾過して得られた第2濾液を酸性化して結晶化させて第2固液混合物を得るための第2の酸性化による結晶化ユニットと、
前記第2固液混合物を固液分離するための第2分離ユニットと、
前記第2分離ユニットにより分離された固体と水とを混合して混合物を形成し、さらに前記混合物を保温し、降温により結晶化させて第3固液混合物を得るための結晶化ユニットと、
前記第3固液混合物を固液分離するための第3分離ユニットと、を含み、
前記第1濾液及び前記第2濾液の濃度を、長鎖二塩基酸としての表示で、2~
8wt%に制御し、
前記1段目膜濾過ユニットに、精密濾過膜が設置され、前記1段目膜による濾過処理の温度は、
60~100℃であり、前記精密濾過膜の孔径は、0.01~0.2ミクロンであり、
前記2段目膜による濾過処理の温度は、20~45℃であり、前記2段目膜濾過ユニットに、限外濾過膜が設置され、前記限外濾過膜の分画分子量は、2,000~20,000Daであ
り、
前記長鎖二塩基酸を含む発酵液を70~90℃まで加熱し、その後、前記1段目膜により濾過処理する、長鎖二塩基酸の抽出システム。
【請求項31】
前記限外濾過膜は、セラミック膜、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜から選ばれる、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項32】
前記1段目膜濾過ユニットは、膜濾過処理後の濾液を希釈又は濃縮する、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項33】
前記2段目膜濾過ユニットは、膜濾過処理後の濾液を希釈又は濃縮する、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項34】
前記1段目膜濾過ユニットと前記第1の酸性化による結晶化ユニットとの間に、前記第1濾液を脱色処理するための脱色ユニットが設置される、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項35】
前記2段目膜濾過ユニットに、溶解タンクが設置される、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項36】
前記2段目膜濾過ユニットと前記第2の酸性化による結晶化ユニットとの間に、前記第2濾液を脱色処理するための脱色ユニットが設置される、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項37】
前記脱色ユニットと前記第2の酸性化による結晶化ユニットとの間に、脱色後の液体を膜濾過するための3段目膜濾過ユニットが設置される、請求項
36に記載の抽出システム。
【請求項38】
前記3段目膜濾過ユニットに、限外濾過膜が設置される、請求項
37に記載の抽出システム。
【請求項39】
前記結晶化ユニットは、結晶化タンクを含み、結晶化タンクにより、前記第2分離ユニットにより分離された固体を水とを混合して混合物を作成し、さらに、得られた混合物を保温処理した後、降温して結晶化させて固液混合物を得る、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項40】
前記第1の酸性化による結晶化ユニットと前記第2の酸性化による結晶化ユニットは、いずれも酸性化タンクを含み、前記第1分離ユニット、前記第2分離ユニット及び前記第3分離ユニットは、いずれも濾過分離機又は遠心分離機を含み、前記結晶化ユニットは結晶化タンクを含む、請求項
30に記載の抽出システム。
【請求項41】
前記第3分離ユニットにより分離された固体を乾燥して長鎖二塩基酸製品を得るための乾燥ユニットを含む、請求項
30に記載の抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖二塩基酸に関し、特に、生物学的発酵法により生成される長鎖二塩基酸の抽出方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
長鎖二塩基酸(Long chain dicarboxylic acids、LCDA、単にDCnと称し、n=9~18)は、重要な有機中間体であり、化学産業、軽工業、農薬、医薬、新材料などの分野で広く使用されている。長鎖二塩基酸は、自然界に存在せず、一般的に化学的合成法や生物学的発酵法により調製されてなる。化学的合成法は、合成経路が長く、反応条件が厳しく、化学的合成法により合成される長鎖二塩基酸の種類が少なく、ドデカン二酸などの数種類しかない。現在、長鎖二塩基酸を調製する最も一般的な方法は、特定の菌株で長炭素鎖のアルカン、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸塩を生物学的に発酵させることにより得られるというものである。長鎖二塩基酸の抽出及び精製技術も、工業的に調製される二塩基酸の最終的な品質及びコストに影響を与える。
【0003】
中国特許公開番号CN102476987Aの特許出願には、発酵プロセスにおける発酵液を精密濾過膜により濾過して固体粒子を除去した後、先ず分子流束が3,000~50,000ダルトンの有機限外濾過膜により濾過し、濾液中のタンパク質と色素の一部を除去し、そして限外濾過液を抽出剤(1種又は複数種のC4~C12一価アルコール)と混合して加熱及び酸性化し、特定のpH値及び温度を制御しながら、抽出剤及び限外濾過液を一定時間混合攪拌した後、液液分離し、抽出相を冷却及び結晶化し、溶媒を除去して精製物を得るという限外濾過と液液抽出を組み合わせて長鎖二塩基酸を精製する方法が開示されている。
【0004】
上記の精製プロセスにおいて有機溶媒を使用するので、結晶性湿潤製品に溶媒が残留することになり、乾燥プロセスにおいて溶媒回収装置を追加する必要があり、それにしても乾燥プロセスにおいて製品中の溶媒を完全に除去できず、これにより製品の最終性能に影響を与える。また、有機溶媒が揮発しやすくて損失しやすいので、コストは、比較的高い。
【0005】
また、従来の発酵液から長鎖二塩基酸を精製するプロセスでは、一般的に、発酵基質であるアルカンは通常の濾過又は遠心により除去されることは困難である。これは、発酵液に残留したアルカンは、液体として存在し、その分子サイズが長鎖二塩基酸に近く、系内における複雑な成分と乳化液滴を形成したり、系内における固形物を吸着したりすることがあり、これにより、遠心などの通常の手段による除去が困難になるからである。
【0006】
長鎖二塩基酸製品中の灰分、窒素含有化合物、アルカン、有機溶媒、他の酸などの不純物の含有量が高い場合、上記の製品を原料としてポリアミドを調製するプロセスにおいて、これらの不純物は、二塩基酸とジアミンとの重合に影響を与え、さらに調製されたポリアミドの性能に影響を与える。例えば、他の酸(例えば一塩基酸)の含有量が高い場合、調製されたポリアミドの重合度は、理論値に達しなく、ポリアミド樹脂の分子量、粘度、流動性は、予測から外れる。さらに例えば、二塩基酸とジアミンとの重合プロセスが高温高圧条件下で行われるので、窒素含有化合物の存在によって、副反応の発生や着色基の生成を招きやすく、さらにポリアミド製品を変色させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の発酵液から長鎖二塩基酸を精製する方法は、プロセスが複雑であるという問題が存在する場合が多く、また、二塩基酸製品における不純物の含有量が高く、アルカンや溶媒が残留したので、二塩基酸から調製されたポリアミド製品の性能に影響を与えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長鎖二塩基酸の抽出方法を提供する。前記方法は、
長鎖二塩基酸の発酵液を1段目膜により濾過処理して第1濾液を得、前記第1濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第1固体を得るステップ(1)と、
前記第1固体とアルカリと水とを混合して溶液を作成し、前記溶液を2段目膜により濾過処理して第2濾液を得、前記第2濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第2固体を得るステップ(2)と、
前記第2固体と水とを混合して混合物を作成し、前記混合物を保温処理し、その後、降温により結晶化させ、固液分離処理を行うステップ(3)とを含む。
【0010】
前記保温処理の温度は、45~150℃であってもよく、例えば50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、95℃、98℃、100℃、105℃、110℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃が挙げられる。
【0011】
本発明は、長鎖二塩基酸の抽出方法を提供する。前記方法は、
長鎖二塩基酸の発酵液を1段目膜により濾過処理して第1濾液を得、前記第1濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第1固体を得るステップ(1)と、
前記第1固体とアルカリと水とを混合して溶液を作成し、前記溶液を2段目膜により濾過処理して第2濾液を得、前記第2濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第2固体を得るステップ(2)と、
前記第2固体と水とを混合して混合物を作成し、前記混合物を105~150℃で保温処理し、その後、降温により結晶化させ、固液分離処理を行うステップ(3)とを含む。
【0012】
本発明は、上記の方法により抽出して得られる長鎖二塩基酸をさらに提供する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸製品は、
総酸の含有量≧98%であり、またさらに≧99%であり、さらに≧99.5%であり、
純度≧97%であり、またさらに≧98%であり、またさらに≧99%であり、さらに≧99.5%であり、
灰分の含有量≦300ppmであり、さらに≦250ppmであり、例えば、220ppm、200ppm、180ppm、150ppm、120ppm、100ppm、80ppm、50ppm、35ppmが挙げられる。
【0014】
窒素の含有量≦100ppmであり、またさらに≦90ppmであり、またさらに≦80ppmであり、さらに≦60ppmであり、例えば、55ppm、50ppm、45ppm、40ppmが挙げられる。
【0015】
光透過率≧92%、またさらに≧93%、またさらに≧95%、またさらに≧97%、またさらに≧98%、またさらに≧98.5%、さらに≧99%である。
【0016】
本発明は、長鎖二塩基酸の抽出システムをさらに提供する。前記システムは、
長鎖二塩基酸の発酵液を第1膜により濾過するための1段目膜濾過ユニットと、
前記第1膜により濾過して得られた第1濾液を酸性化して結晶化させて第1固液混合物を得るための第1の酸性化による結晶化ユニットと、
前記第1固液混合物を固液分離するための第1分離ユニットと、
前記第1分離ユニットにより分離された固体を溶液とし、さらに第2膜により濾過するための2段目膜濾過ユニットと、
前記第2膜により濾過して得られた第2濾液を酸性化して結晶化させて第2固液混合物を得るための第2の酸性化による結晶化ユニットと、
前記第2固液混合物を固液分離するための第2分離ユニットと、
前記第2分離ユニットにより分離された固体を溶液とし、さらに保温し、降温により結晶化させて、第3固液混合物を得るための結晶化ユニットと、
前記第3固液混合物を固液分離するための第3分離ユニットと、を含む。
【0017】
本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の抽出方法によれば、得られた長鎖二塩基酸製品は純度が高く、アルカンの残留量が極めて低く、且つ有機溶媒が残留しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の抽出システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、本発明の特徴及び利点を具体化する代表的な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、異なる実施例において様々な変更を行うことができ、それらは、すべて本発明の範囲から逸脱するものではなく、且つ、その中の説明及び図は、本質的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。ここで、「1段目」、「2段目」、「3段目」、「第1」、「第2」、「第3」などは、同じ名称の複数のプロセス又は製品を区別するためのものであるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の一実施形態は、長鎖二塩基酸の発酵液から長鎖二塩基酸を抽出するための長鎖二塩基酸の抽出方法を提供する。前記方法は、
長鎖二塩基酸の発酵液を1段目膜により濾過処理して第1濾液を得、前記第1濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第1固体を得るステップ(1)と、
第1固体を水に加え、アルカリを加えて第1固体を溶解させて溶液を作成し、この溶液を2段目膜により濾過処理して第2濾液を得、第2濾液を脱色処理し、酸性化して結晶化させ、固液分離処理して第2固体を得るステップ(2)と、
第2固体と水とを混合して混合物を作成し、この混合物を105~150℃で保温処理し、その後、降温により結晶化させ、固液分離処理を行うステップ(3)とを含む。
【0021】
本発明において、長鎖二塩基酸の発酵液は、アルカン、脂肪酸及びそれらの誘導体を基質として微生物発酵の方法により得られる発酵液であってもよい。ここで、微生物は、酸化によりアルカン、脂肪酸及び脂肪酸誘導体の末端メチル基をカルボキシル基に変換して長鎖二塩基酸を生成するためのものである。
【0022】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、C9~C18のジカルボン酸である。
【0023】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、直鎖の飽和若しくは不飽和ジカルボン酸である。
【0024】
一実施形態において、長鎖二塩基酸は、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、9-エン-オクタデカン二酸のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0025】
一実施形態において、長鎖二塩基酸の発酵液を50~100℃まで加熱し、さらに70~90℃まで加熱し、その後、1段目膜で濾過することができる。
【0026】
一実施形態において、1段目膜による濾過を行う前に、長鎖二塩基酸の発酵液の温度は、65℃、68℃、72℃、74℃、75℃、76℃、78℃、80℃、82℃、84℃、85℃、86℃、88℃、90℃、92℃、95℃、96℃、98℃であってもよい。
【0027】
一実施形態において、長鎖二塩基酸を溶解するために長鎖二塩基酸の発酵液をpH6.0~12に調整し、さらにpH8~11に調整し、その後、1段目膜で濾過することができる。
【0028】
一実施形態において、1段目膜による濾過を行う前に、長鎖二塩基酸の発酵液のpH値は、8.2、8.4、8.5、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.5、9.8、10、10.2、10.4、10.5、10.6、10.8、11.0、11.2、11.5、11.6、11.8であってもよい。
【0029】
一実施形態において、アルカリを加えることにより発酵液のpH値を調整することができ、アルカリの種類は、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含むがこれらに限定されない。
【0030】
一実施形態において、1段目膜による濾過の温度は、50~100℃であり、さらに60~100℃、例えば50℃、52℃、55℃、58℃、60℃、62℃、64℃、65℃、66℃、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、82℃、85℃、88℃、90℃、92℃、95℃、98℃であってもよい。
【0031】
一実施形態において、1段目膜による濾過は、精密濾過膜又は限外濾過膜を用いるものであり、1段目膜により濾過して発酵液中のアルカン、発酵微生物の細胞組織、色素などの不純物の大部分を除去することができる。
【0032】
一実施形態において、1段目膜による濾過プロセスにおいて、膜の両側の圧力差は、0.05~0.6MPa、例えば0.06MPa、0.08MPa、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPa、0.4MPaである。
【0033】
一実施形態において、2段目膜による濾過は、限外濾過膜を用いるものである。酸性化による結晶化プロセスにより、二塩基酸の結晶構造又は溶解度と異なる不純物の一部を除去することができる。結晶化した長鎖二塩基酸固体が再溶解した後、長鎖二塩基酸溶液における不純物の分布及び種類が変化し、限外濾過膜による濾過と組み合わせることにより、単純な多段濾過プロセスで除去できない不純物を除去することができる。
【0034】
一実施形態において、2段目膜による濾過の温度は、20~100℃であり、さらに20~45℃であってもよく、さらに30~40℃であってもよく、例えば22℃、24℃、25℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、35℃、36℃、38℃、39℃、41℃、42℃、44℃が挙げられる。
【0035】
一実施形態において、1段目膜による濾過、2段目膜による濾過の後に行われる3段目膜による濾過をさらに含む。
【0036】
一実施形態において、3段目膜による濾過は、限外濾過膜を用いるものである。
【0037】
一実施形態において、3段目膜による濾過の温度は、20~45℃であり、さらに30~40℃であってもよく、例えば22℃、24℃、25℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、35℃、36℃、38℃、39℃、41℃、42℃、44℃が挙げられる。
【0038】
一実施形態において、精密濾過膜の孔径は、0.01~1ミクロンであり、さらに0.01~0.2ミクロンであってもよく、さらに0.05~0.1ミクロンであってもよい。
【0039】
一実施形態において、限外濾過膜の分画分子量は、1,000~200,000Daであり、またさらに2,000~100,000Daであってもよく、さらに2,000~20,000Daであってもよく、例えば3,000Da、5,000Da、10,000Da、50,000Daが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、限外濾過膜は、セラミック膜、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜などを含むがこれらに限定されない。
【0041】
一実施形態において、脱色処理は、脱色される液体(ステップ(1)又は(2)の濾液)を脱色剤と接触させることにより行なわれる。
【0042】
一実施形態において、脱色処理は、脱色される液体を固体脱色剤と固液混合して脱色するステップを含むことができる。さらに、固液混合物を攪拌することにより脱色効果を向上させることができる。濾液を脱色した後、プレート及びフレーム(Plate-and-frame)濾過のような濾過方式により脱色剤を除去することができる。脱色剤の使用量は、濾液の質量に対して0.05~5wt%、0.2~4wt%、例えば0.5wt%、3.0wt%、3.5wt%であってもよい。
【0043】
各段の膜濾過後の濾液の濃度を、長鎖二塩基酸としての表示で、2~10wt%、好ましくは2~8wt%、例えば3wt%、6wt%に制御する。希釈又は濃縮により濾液の濃度を制御することができる。
【0044】
他の実施形態において、脱色される液体を脱色剤に通過させ、流出液を収集して脱色された溶液を得る。
【0045】
一実施形態において、脱色剤は、粉末状活性炭、粒状活性炭、活性炭繊維、活性白土、珪藻土を含むがこれらに限定されない。
【0046】
一実施形態において、脱色処理の温度は、50~100℃であり、さらに60~80℃であってもよく、例えば65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃が挙げられる。
【0047】
一実施形態において、脱色処理の時間は、10~180分間であり、さらに15~120分間であってもよく、例えば20分間、25分間、30分間、40分間、50分間、60分間、80分間、100分間、150分間が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、ステップ(1)~(3)における固液分離は、遠心分離、濾過分離であってもよい。
【0049】
一実施形態において、ステップ(1)、(2)で固液分離して得られた濾液に対して無機塩を回収して、二塩基酸の発酵プロセスにおける培地に使用することができる。濾液には、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム又は硝酸カリウムなどの他に、色素、有機酸などの不純物が含まれる場合もある。不純物の除去及び精製により、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム又は硝酸カリウムなどの結晶を得て、そのまま化学産業用添加剤、農業用添加剤として使用することができる。得られた硫酸ナトリウム、硫酸カリウム又は硝酸カリウム塩をバイオポーラ膜により電気分解して対応する硫酸及びアルカリを得て、長鎖二塩基酸の調製プロセスに再利用することもできる。資源と循環経済の総合利用を実現し、排出量を削減する。
【0050】
一実施形態において、ステップ(1)、(2)における酸性化による結晶化は、濾液を脱色処理した後の溶液のpH値を2~5.5に調整し、さらに2.5~4に調整してもよく、例えば2.2、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、3.7、3.8、4.0、4.2、4.3、4.5、4.7、5.2に調整してもよく、その後、結晶化を行うステップを含む。
【0051】
一実施形態において、濾液に酸を加えることによりそのpH値を調整し、この酸は、無機酸及び/又は有機酸であってもよい。
【0052】
一実施形態において、無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸を含むがこれらに限定されない。有機酸は、酢酸を含むがこれに限定されない。
【0053】
一実施形態において、第1固体の水分の含有量は、3~10wt%、例えば5wt%、7wt%、8wt%である。
【0054】
一実施形態において、第1固体又は第2固体を水に分散する前に、第1固体又は第2固体に対して水洗を行うことができる。
【0055】
一実施形態のステップ(2)において、第1固体の溶解を促進するために水にアルカリを加え、加えるアルカリは、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含むがこれらに限定されない。
【0056】
一実施形態のステップ(2)において、アルカリを加えて第1固体を溶解させるプロセスにおいて、第1固体の溶解を促進するために加熱及び攪拌することができる。
【0057】
一実施形態のステップ(2)において、第1固体の溶解を促進するために、第1固体とアルカリの水溶液とを混合することができる。
【0058】
一実施形態において、ステップ(2)で濾液を脱色処理した後且つ酸性化して結晶化させる前に3段目膜による濾過を行うことができる。
【0059】
一実施形態のステップ(3)において、第2固体と溶媒である水との質量比は、1:(2~20)であってもよく、またさらに1:(3~15)であってもよく、さらに1:(3~10)であってもよい。
【0060】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理の温度は、120~140℃である。
【0061】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理の温度は、106℃、108℃、109℃、110℃、112℃、114℃、115℃、116℃、118℃、120℃、122℃、124℃、125℃、126℃、128℃、130℃、132℃、133℃、135℃、136℃、138℃、139℃、140℃、142℃、145℃、146℃、148℃であってもよい。
【0062】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理の時間は、15~150分間であり、さらに30~90分間であってもよく、例えば20分間、30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、100分間、120分間などが挙げられる。
【0063】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理後、降温終点の温度は、25~65℃であり、さらに30~50℃であってもよく、例えば28℃、32℃、34℃、35℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、45℃、46℃、48℃、50℃、52℃、55℃、58℃、60℃、62℃が挙げられる。
【0064】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理後、先ず85~115℃まで降温し、さらに終点の温度まで降温する。例えば、先ず88℃、90℃、92℃、95℃、98℃、100℃、105℃、108℃、110℃、112℃、114℃まで降温し、さらに終点の温度まで降温する。
【0065】
一実施形態のステップ(3)において、保温処理後、先ず97~115℃(第1段階の降温プロセス)、例えば98℃、99℃、100℃、105℃、108℃、110℃、112℃、114℃まで降温し、さらに85~95℃(第2段階の降温プロセス)、例えば88℃、90℃、91℃、93℃、94℃まで降温し、その後、終点の温度(第3段階の降温プロセス)まで降温する。さらに、第1段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、0.5~12℃/hであり、さらに0.5~8℃/hであってもよく、例えば3℃/h、5℃/h、6℃/h、10℃/h、12℃/h、14℃/hが挙げられる。第2段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、2~15℃/hであり、さらに2~8℃/hであってもよく、例えば3℃/h、5℃/h、6℃/h、10℃/h、12℃/h、14℃/hが挙げられる。第3段階の降温プロセスにおける平均降温速度は、12~25℃/hであり、さらに16~20℃/hであってもよく、例えば12.5℃/h、13℃/h、14℃/h、15℃/h、16℃/h、17℃/h、18℃/h、19℃/hが挙げられる。
【0066】
ステップ(3)の降温プロセスを制御することにより、不純物と二塩基酸結晶の性質の違いを利用する。不純物の高温での溶解が溶解度の違いなどの熱力学により制御されるので、不純物が水に残留する一方で、降温プロセスにより、不純物と二塩基酸の結晶成長速度に違いが生じ、つまり、その結晶化/沈殿の動力学的速度を制御することにより、二塩基酸結晶と不純物がさらに分離される。固液分離が終了するまで降温した後、二塩基酸製品の純度をさらに向上させることができる。
【0067】
一実施形態において、ステップ(3)で固液分離して得られた濾液をステップ(2)の第1固体の溶解に使用することができる。
【0068】
本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の抽出方法は、一部のステップにおける温度などのプロセスパラメータ及びステップを調整することにより、長鎖二塩基酸製品に残留するアルカンを検出することがなくなり、各不純物の含有量を低減し、長鎖二塩基酸製品及びその後に調製されるポリアミド製品の品質を向上させることができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の抽出方法は、有機溶媒を用いた結晶化による製品品質の低下や溶媒による環境汚染などの弊害を克服でき、生物学的発酵法により調製される長鎖二塩基酸の抽出及び精製に適している。
【0070】
本発明の一実施形態は、2段膜濾過、アルカリによる溶解-酸による沈殿及び高温結晶プロセスにより、得られた二塩基酸製品は、高純度、白色で、かつ低灰分、低金属イオン及び窒素含有量を有し、且つ有機溶媒を含有しなく、アルカンの残留量が極めて低くてさらに残留がなく、長鎖二塩基酸製品及びその後に調製されるポリアミド製品の品質を向上させることができる。
【0071】
本発明の一実施形態は、上記の抽出方法により得られる長鎖二塩基酸を提供する。
【0072】
本発明の一実施形態は、1段目膜濾過ユニット、第1の酸性化による結晶化ユニット、第1分離ユニット、2段目膜濾過ユニット、第2の酸性化による結晶化ユニット、第2分離ユニット、結晶化ユニット及び第3分離ユニットを含む、上記の抽出方法を実現するための長鎖二塩基酸の抽出システムを提供する。
【0073】
図1を参照すると、一実施形態において、1段目膜濾過ユニットは、長鎖二塩基酸の発酵液の第1膜による濾過に使用され、1段目膜濾過ユニットには、濾過膜、例えば精密濾過膜又は限外濾過膜が設置されてもよい。
【0074】
一実施形態において、1段目膜濾過ユニットは、膜濾過処理後の濾液を希釈又は濃縮することもできる。
【0075】
一実施形態において、抽出システムは、発酵液貯蔵タンクを含み、前記発酵液貯蔵タンクは、1段目膜濾過ユニットと接続することが可能であり、長鎖二塩基酸の発酵液を収容するためのものである。
【0076】
一実施形態において、抽出システムは、発酵液貯蔵タンクを加熱するための加熱装置を含み、これにより、長鎖二塩基酸の発酵液を一定の温度、例えば50~100℃において1段目膜で濾過する。
【0077】
一実施形態において、長鎖二塩基酸の発酵液を1段目膜濾過ユニットにより膜濾過処理した後、濾液(第1濾液)を得て、第1の酸性化による結晶化ユニットは、第1濾液を酸性化して結晶化させるためのものである。
【0078】
一実施形態において、第1の酸性化による結晶化ユニットは、酸性化タンクを含み、第1濾液を酸性化タンクで酸性化して結晶化させて固液混合物を得ることができる。
【0079】
一実施形態において、1段目膜濾過ユニットと第1の酸性化による結晶化ユニットとの間に、さらに第1脱色ユニットを設置し、第1濾液を脱色処理したうえ酸性化して結晶化させてもよい。
【0080】
一実施形態において、第1脱色ユニットは、脱色タンク及び濾過分離機を含むことができ、脱色タンクは、脱色される液体を固体脱色剤と固液混合して脱色するためのものであり、脱色終了後、濾過分離機により固体脱色剤を除去することができる。前記濾過分離機は、プレート及びフレームフィルター(Plate-and-frame filter)であってもよい。
【0081】
一実施形態において、第1脱色ユニットは、脱色タンクを加熱するための加熱装置を含み、これにより、脱色処理を一定の温度(例えば50~100℃)で行う。
【0082】
一実施形態において、第1分離ユニットは、第1の酸性化による結晶化ユニットにおける固液混合物を固液分離するためのものである。
【0083】
一実施形態において、第1分離ユニットは、濾過分離機又は遠心分離機を含むことができる。
【0084】
一実施形態において、第1分離ユニットにより分離された固体を2段目膜濾過ユニットに入れて更なる溶解及び膜濾過処理を行う。
【0085】
一実施形態において、2段目膜濾過ユニットは、膜濾過処理後の濾液を希釈又は濃縮することもできる。濾液の濃度を一定の範囲内に制御することにより、膜濾過流束を向上させ、濃度分極及び膜汚染を低減するとともに、脱色及び酸性化による結晶化ステップと合わせて二塩基酸の精製をより良く実現することができる。
【0086】
一実施形態において、2段目膜濾過ユニットは、溶解タンク及び限外濾過膜を含み、溶解タンクにより第1分離ユニットで得られた固体を溶解して溶液を新たに作成し、限外濾過膜により、作成された溶液に対して第2膜による濾過を行い、濾液(第2濾液)を得ることができる。
【0087】
一実施形態において、2段目膜濾過ユニットは、加熱装置を含み、これにより、溶解タンク中の溶液を一定の温度、例えば20~100℃において2段目膜により濾過する。
【0088】
一実施形態において、1段目膜濾過ユニットにおける精密濾過膜の孔径は、0.01~1ミクロンであってもよく、さらに0.01~0.2ミクロンであってもよく、またさらに0.05~0.1ミクロンであってもよい。
【0089】
一実施形態において、1段目膜濾過ユニット又は2段目膜濾過ユニットにおける限外濾過膜の分画分子量は、1,000~200,000Daであってもよく、さらに2,000~100,000Daであってもよく、またさらに2,000~20,000Daであってもよい。
【0090】
一実施形態において、限外濾過膜は、セラミック膜、ポリプロピレン膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜などを含むがこれらに限定されない。
【0091】
一実施形態において、第2の酸性化による結晶化ユニットは、第2濾液を酸性化して結晶化させるためのものである。
【0092】
一実施形態において、第2の酸性化による結晶化ユニットは、酸性化タンクを含み、第2濾液を酸性化タンクで酸性化して結晶化させて固液混合物を得ることができる。
【0093】
一実施形態において、2段目膜濾過ユニットと第2の酸性化による結晶化ユニットとの間には、第2濾液を脱色処理するための第2脱色ユニットがさらに設置されてもよい。
【0094】
一実施形態において、第2脱色ユニットの構成は、第1脱色ユニットと同一であってもよい。
【0095】
一実施形態において、第2脱色ユニットと第の2酸性化による結晶化ユニットとの間には、脱色後の液体を膜濾過するための3段目膜濾過ユニットが設置されてもよい。ここで、3段目膜濾過ユニットに限外濾過膜を設置することができる。
【0096】
一実施形態において、第2分離ユニットは、第2の酸性化による結晶化ユニットにおける固液混合物を固液分離するためのものである。
【0097】
一実施形態において、第2分離ユニットは、濾過分離機又は遠心分離機を含むことができる。
【0098】
一実施形態において、第2分離ユニットにより分離された固体を結晶化ユニットに入れて結晶処理を行う。
【0099】
一実施形態において、結晶化ユニットは、結晶化タンクを含み、結晶化タンクにより、第2分離ユニットにより分離された固体を水とを混合して混合物を作成し、さらに、得られた混合物を保温処理した後、降温して結晶化させて固液混合物を得る。
【0100】
一実施形態において、結晶化ユニットは、結晶化タンクを加熱するための加熱装置を含み、これにより、結晶化タンクにおける混合物を一定の温度、例えば105~150℃で保温処理する。
【0101】
一実施形態において、第3分離ユニットは、結晶化ユニットにおける固液混合物を固液分離するためのものである。
【0102】
一実施形態において、第3分離ユニットは、濾過分離機又は遠心分離機を含むことができる。
【0103】
一実施形態において、第3分離ユニットにより分離された固体を乾燥して長鎖二塩基酸製品を得るための乾燥ユニットをさらに含むことができる。
【0104】
一実施形態において、乾燥ユニットは、乾燥機を含む。
【0105】
本発明において、酸性化タンク、脱色タンク、溶解タンク、結晶化タンク、加熱装置などは、いずれも従来の装置であってもよい。
【0106】
以下、具体的な実施例により本発明の一実施形態に係る長鎖二塩基酸の抽出方法をさらに説明する。ここで、特に説明しない限り、使用された原料は、いずれも市販のものであり、使用されたテスト方法は、以下の通りである。
【0107】
1.長鎖二塩基酸のガスクロマトグラフ検出
標準的な長鎖二塩基酸サンプルを対照として使用し、GB5413.27-2010乳幼児用食品及び乳製品中の脂肪酸の測定を参照した。
【0108】
2.灰分の検出
テストサンプルを坩堝に入れて焼いてから、700~800℃のマッフル炉で2時間焼き、降温し、重量が変化しなくなった後、その重量を測定し、重量百分率を計算した。
【0109】
3.全窒素の測定
ケルダール法を使用した。
【0110】
4.アルカンの残留量の検出
4.1装置
GC-14Cガスクロマトグラフ、カラム:SPB-1701 30m×0.25mm×0.25μm。
【0111】
4.2検出プロセス
4.2.1メチルエステル化処理
サンプルを0.75g秤量し、反応チューブに入れ、5mlのメタノール及び1mlの6mol/L塩酸メタノール溶液を加え、密封し、100℃で30min加熱した後、室温まで冷却した。3gの固体炭酸水素ナトリウムを加え、溶液から気泡が出なくなるまで反応させ、静置して清澄液にし、その後、溶液からCO2ガスが発生しなくなるまで炭酸水素ナトリウムをゆっくりと加えて中和した。
【0112】
4.2.2アルカン残留の検出
メチルエステル化処理後のサンプル1mlを0.45μmのシリンジフィルターで取り、GC-14Cガスクロマトグラフに注入する。面積百分率法(Area normalization method)によりアルカンの残留量を計算した。
【0113】
5.光透過率テスト
物質の色調によって特定の波長における光透過率や吸収特性が違うことにより、二塩基酸製品の色調を25%の二塩基酸サンプルのジメチルスルホキシド溶液の440nmにおける光透過率で表す。
【0114】
6.ポリアミドのイエローインデックス(YI)テスト:
イエローインデックスは、国際照明委員会(CIE)が規定する標準C光源及び酸化マグネシウムに基づく黄色の値である。イエローインデックスYIの計算方法は、以下の通りである。
YI=(100(1.28X-1.06Z))/Y
ここで、X、Y、Zは、それぞれ測定される三刺激値である。
【0115】
イエローインデックス装置により検出し、検出温度を25±5℃とし、相対湿度を50±20%とする。
【0116】
検出方法:
透明な試料の場合、空気に対する光透過率を測定する(透過法)。不透明または半透明の試料の場合、基準白板又は作業用白板に対する光反射率を測定し(反射法)、背景を白い作業板とする。粉状や粒状の試料の場合、反射法によりガラス容器の底面から測定する必要があり、外界からの光線による影響を防ぐために、ガラス容器に黒いカバーを被せる。
【0117】
装置の自動積分により、標準光源Cに対する試料のスペクトル三刺激値X、Y、Zを求める。
【0118】
色度計及び色差計は、いずれもカラーフィルター型三刺激値測色計に属し、X、Y、Z値を直接に読み取ることができる。
【0119】
均一なプラスチックの場合、測定光穴の直径を≧12mmとすべきであり、非均一なプラスチックの場合、測定光穴の直径を≧10mmとすべきである。
【0120】
実施例1
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0121】
(1)ドデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を9.7に調整し、90℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を90℃で濾過し、ドデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.3MPaであった。
【0122】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度をドデカン二酸で5.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭によりドデカン二酸濾液を90℃で25分間保温脱色し、濾過し、ドデカン二酸の清澄液を得た。
【0123】
脱色処理したドデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0124】
(2)第1固体(水分の含有量3wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を3,000Daとした。
【0125】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度をドデカン二酸としての表示で、5.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0126】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0127】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、120℃で60分間保温した後、4時間をかけて100℃まで降温し、また2時間をかけて90℃まで降温し、さらに4時間をかけて40℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得て、固体を乾燥することにより、ドデカン二酸製品を得た。
【0128】
実施例2
特許文献CN1570124Aに記載の実施例6の発酵方法によりテトラデカン二酸の発酵液を得た。
【0129】
(1)テトラデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を9.0に調整し、90℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を90℃で濾過し、テトラデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.5MPaであった。
【0130】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、テトラデカン二酸としての表示で、4.5wt%に制御し、2.5wt%の活性炭によりテトラデカン二酸濾液を90℃で25分間保温脱色し、濾過し、テトラデカン二酸の清澄液を得た。
【0131】
脱色処理したテトラデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してテトラデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0132】
(2)第1固体(水分の含有量5wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を1,0000Daとした。
【0133】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、テトラデカン二酸としての表示で、4.5wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0134】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してテトラデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0135】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、130℃で30分間保温した後、5時間をかけて100℃まで降温し、また2時間をかけて90℃まで降温し、さらに4時間をかけて40℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、テトラデカン二酸製品を得た。
【0136】
実施例3
特許文献CN1570124Aに記載の実施例8の発酵方法によりヘキサデカン二酸の発酵液を得た。
【0137】
(1)ヘキサデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を8.3に調整し、80℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を80℃で濾過し、ヘキサデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.1μmであり、膜の両側の圧力差は0.2MPaであった。
【0138】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ヘキサデカン二酸としての表示で、3.7wt%に制御し、4wt%の活性炭によりヘキサデカン二酸濾液を80℃で25分間保温脱色し、プレート及びフレーム濾過によりヘキサデカン二酸の清澄液を得た。
【0139】
脱色処理したヘキサデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してヘキサデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0140】
(2)第1固体(水分の含有量8wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を5,000Daとした。
【0141】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ヘキサデカン二酸としての表示で、3.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0142】
脱色液を硫酸でpH3.5に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してヘキサデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0143】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、135℃で60分間保温した後、5時間をかけて100℃まで降温し、また1時間をかけて90℃まで降温し、さらに3時間をかけて50℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、ヘキサデカン二酸製品を得た。
【0144】
実施例4
特許文献CN1570124Aに記載の実施例5の発酵方法によりトリデカン二酸の発酵液を得た。
【0145】
(1)トリデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を10.0に調整し、90℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を90℃で濾過し、トリデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.5MPaであった。
【0146】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、トリデカン二酸としての表示で、5.0wt%に制御し、3wt%の活性炭によりトリデカン二酸濾液を90℃で60分間保温脱色し、濾過してトリデカン二酸の清澄液を得た。
【0147】
脱色処理したトリデカン二酸の清澄液を硫酸でpH2.5に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してトリデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0148】
(2)第1固体(水分の含有量5wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を2,000Daとした。
【0149】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、トリデカン二酸としての表示で、5.0wt%に制御し、3wt%の活性炭により濾液を90℃で40分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0150】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してトリデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0151】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:5とし、115℃で30分間保温した後、4時間をかけて100℃まで降温し、また2時間をかけて90℃まで降温し、さらに4時間をかけて40℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、トリデカン二酸製品を得た。
【0152】
実施例5
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0153】
(1)ドデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を8.0に調整し、65℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を65℃で濾過し、ドデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.3MPaであった。
【0154】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ドデカン二酸としての表示で、5.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭によりドデカン二酸濾液を90℃で25分間保温脱色し、濾過してドデカン二酸の清澄液を得た。
【0155】
脱色処理したドデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0156】
(2)第1固体(水分の含有量3wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を3,000Daとした。
【0157】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ドデカン二酸としての表示で、5.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0158】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0159】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、120℃で60分間保温した後、3時間をかけて40℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、ドデカン二酸製品を得た。
【0160】
実施例6
特許文献CN1570124Aに記載の実施例6の発酵方法によりテトラデカン二酸の発酵液を得た。
【0161】
(1)テトラデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を9.0に調整し、90℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を90℃で濾過し、テトラデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.5MPaであった。
【0162】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、テトラデカン二酸としての表示で、9.6wt%に制御し、2.5wt%の活性炭によりテトラデカン二酸濾液を90℃で25分間保温脱色し、濾過してテトラデカン二酸の清澄液を得た。
【0163】
脱色処理したテトラデカン二酸の清澄液を硫酸でpH4.7に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してテトラデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0164】
(2)第1固体(水分の含有量5wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を5,0000Daとした。
【0165】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、テトラデカン二酸としての表示で、9.6wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0166】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してテトラデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0167】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、130℃で30分間保温した後、5時間をかけて100℃まで降温し、また2時間をかけて90℃まで降温し、さらに4時間をかけて40℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、テトラデカン二酸製品を得た。
【0168】
実施例7
特許文献CN1570124Aに記載の実施例8の発酵方法によりヘキサデカン二酸の発酵液を得た。
【0169】
(1)ヘキサデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を8.3に調整し、80℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を80℃で濾過し、ヘキサデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.1μmであり、膜の両側の圧力差は0.2MPaである。
【0170】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ヘキサデカン二酸としての表示で、3.7wt%に制御し、4wt%の活性炭によりヘキサデカン二酸濾液を80℃で25分間保温脱色し、プレート及びフレーム濾過によりヘキサデカン二酸の清澄液を得た。
【0171】
脱色処理したヘキサデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してヘキサデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0172】
(2)第1固体(水分の含有量8wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を5,000Daとした。
【0173】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ヘキサデカン二酸としての表示で、3.7wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を55℃で40分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0174】
脱色液を硫酸でpH4.5に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してヘキサデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0175】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、108℃で60分間保温した後、4時間をかけて100℃まで降温し、また1時間をかけて90℃まで降温し、さらに2時間をかけて60℃まで降温し、晶析させ、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、ヘキサデカン二酸製品を得た。
【0176】
実施例8
特許文献CN1570124Aに記載の実施例5の発酵方法によりトリデカン二酸の発酵液を得た。
【0177】
(1)トリデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を10.0に調整し、65℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を65℃で濾過し、トリデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.5MPaであった。
【0178】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、トリデカン二酸としての表示で、5.0wt%に制御し、3wt%の活性炭によりトリデカン二酸濾液を90℃で60分間保温脱色し、濾過してトリデカン二酸の清澄液を得た。
【0179】
脱色処理したトリデカン二酸の清澄液を硫酸でpH4.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してトリデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0180】
(2)第1固体(水分の含有量5wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を2,000Daとした。
【0181】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、トリデカン二酸としての表示で、5.0wt%に制御し、3wt%の活性炭により濾液を90℃で40分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0182】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してトリデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0183】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:5とし、105℃で30分間保温した後、1時間をかけて90℃まで降温し、さらに2時間をかけて40℃まで降温し、濾過し、固体を得、固体を乾燥することにより、トリデカン二酸製品を得た。
【0184】
実施例9
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。
【0185】
(1)ドデカン二酸の発酵液にアルカリを加えてpH値を9.7に調整し、40℃まで加熱し、セラミック精密濾過膜により発酵液を40℃で濾過し、ドデカン二酸の濾液を得た。ここで、セラミック精密濾過膜の孔径は0.05μmであり、膜の両側の圧力差は0.3MPaであった。
【0186】
精密濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ドデカン二酸としての表示で、13.5wt%に制御し、2.5wt%の活性炭によりドデカン二酸濾液を90℃で25分間保温脱色し、濾過してドデカン二酸の清澄液を得た。
【0187】
脱色処理したドデカン二酸の清澄液を硫酸でpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第1固体を得た。
【0188】
(2)第1固体(水分の含有量3wt%)を水に加え、水酸化ナトリウムを加えて粗生成物を溶解させ、限外濾過膜により濾過し、濾過温度を35℃とし、限外濾過膜の分画分子量を3,000Daとした。
【0189】
限外濾過膜により濾過した後の濾液の濃度を、ドデカン二酸としての表示で、13.5wt%に制御し、2.5wt%の活性炭により濾液を90℃で25分間脱色し、プレート及びフレーム濾過により脱色液を得た。
【0190】
脱色液を硫酸でpH2.8に調整して酸性化して結晶化させ、濾過してドデカン二酸を含有する第2固体を得た。
【0191】
(3)第2固体を水に加え、第2固体と水との質量比を1:10とし、122℃で60分間保温した後、5時間をかけて15℃まで降温し、晶析させ、濾過して固体を得、固体を乾燥することにより、ドデカン二酸製品を得た。
【0192】
比較例
特許文献CN1570124Aに記載の実施例4の発酵方法によりドデカン二酸の発酵液を得た。ドデカン二酸の発酵液を90℃まで加熱し、アルカリを加えてpH8.5に調整し、90℃で遠心分離した。5wt%の活性炭により清澄液を90℃で30分間脱色し、プレート及びフレーム濾過によりドデカン二酸の清澄液を得、ドデカン二酸の清澄液をpH3.0に調整して酸性化して結晶化させ、濾過、洗浄し、ドデカン二酸製品を得た。
【0193】
上記の実施例及び比較例で得られた製品に対して関連性能テストを行い、具体的な結果を表1に示す。
【表1】
【0194】
応用例
調製された長鎖ドデカン二酸、長鎖トリデカン二酸を原料としてポリアミド512、ポリアミド513を調製し、具体的なプロセスは、以下の通りである。
【0195】
100リットルの重合釜(K/SY166-2007型)内の空気を窒素ガスで置換し、15kgの純水を反応釜に加え、その後、115.2molのペンタンジアミンを加え、攪拌後、115.2molのドデカン二酸又はトリデカン二酸を加え、pH値を7.23(30°Cの塩溶液を10%に希釈した検出結果)に調整し、ポリアミド塩水溶液を調製した。
【0196】
窒素ガス雰囲気下で、オイルバスの温度を288℃まで徐々に上昇させ、重合釜内の圧力が1.5MPaに達した後、排気を開始し、釜内の温度が262℃に達した場合、-0.07MPaまで真空引きし、当該真空度を35分間維持し、ポリアミド512又はポリアミド513を作成した。得られたポリアミドスライスのイエローインデックスを測定し、具体的な結果を表2、3に示す。
【0197】
【0198】
【0199】
特に限定されない限り、本発明に使用される用語は、いずれも当業者に一般的に理解される意味を有する。
【0200】
なお、本発明に記載されている実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の範囲内において各種の他の置換、変更、改良を行うことができ、このため、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲によってのみ限定される。