(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】3D印刷用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20240827BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240827BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/124
(21)【出願番号】P 2022501365
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2020069481
(87)【国際公開番号】W WO2021005193
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170654
【氏名又は名称】クヴァルツヴェルケ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツィルヴァイト、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クルーバー、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ジレス、イェルク ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミューリング、オラフ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089943(JP,A)
【文献】国際公開第2019/074015(WO,A1)
【文献】特開2016-169355(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207366(WO,A1)
【文献】特開2005-060673(JP,A)
【文献】特開2019-019245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
C09D 11/00 - 13/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C08G 59/00 - 59/72
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0~30重量%の1又は複数のオリゴマーと、
15~80重量%の1又は複数のモノマーと、
10~80重量%のフィラー混合物と、
0.1~5重量%の1又は複数の光開始剤と、
を含む放射線硬化性樹脂組成物であって、
前記フィラー混合物が、
39.9~90重量%の、3~20μmの粒子サイズd50
volを有する第1の粒子と、
9.9~60重量%の、0.5~1μmの粒子サイズd50
volを有する第2の粒子と、
0.1~5重量%の、10~100m
2/gの範囲内のBET表面積を有するナノ粒子と、
を含む、
放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1の粒子及び/又は前記第2の粒子がシラン化されている、請求項1に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光学顕微鏡を用いて測定した場合、前記第1の粒子の形状が球状である、請求項1又は請求項2に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーがフリーラジカル重合性
基を含む、請求項1~請求項3のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記オリゴマーが(メタ)アクリレート基を含む、請求項1~請求項3のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記モノマーが少なくとも1つのフリーラジカル重合可能なエチレン性二重結
合を有する、請求項1~請求項
5のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記モノマーが(メタ)アクリレート基を有する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記フィラー混合物の前記第1の粒子及び前記第2の粒子が、独立して、非晶質二酸化ケイ素、結晶性二酸化ケイ素、長石、マイカ、無水物、及びそれらの混合物から選択されるフィラーである、請求項1~請求項
7のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記長石が、カリウム長石、ナトリウム長石、いわゆる準長石、及びそれらの混合物から選択される、請求項
8に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記光開始剤が、355~405nmの波長範囲内で活性のある物質か
ら選択される、請求項1~請求項
9のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記光開始剤が、ホスフィンオキシド類の物質から選択される、請求項1~請求項9のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び10s
-1のせん断速度で測定した場合、フィラー混合物を含まない樹脂組成物が10~1000mPa・sの範囲
内の粘度を有する、請求項1~請求項
11のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び10s
-1
のせん断速度で測定した場合、フィラー混合物を含まない樹脂組成物が10~100mPa・sの範囲内の粘度を有する、請求項1~請求項11のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び10s
-1のせん断速度で測定した場合、3000mPa・s以下の粘度を有し、且つ、プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び0.1s
-1のせん断速度で測定した場合、15,000mPa・s以下の粘度を有する、請求項1~請求項
13のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
25℃で3カ月以上保存した後、目視で評価した場合、前記フィラー混合物の沈殿がみられない、請求項1~請求項
14のいずれかに記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1~請求項
15のいずれかに記載の組成物を放射線硬化することにより得ることが可能な放射線硬化樹脂組成物。
【請求項17】
ISO 178に準拠した6,000~12,000MPaの範囲内の曲げ弾性率、及び/又は、ISO 75に準拠した100℃以上の熱たわみ温度HDT Aを有する、請求項
16に記載の放射線硬化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(additive manufacturing)としても知られるいわゆる3D印刷では、材料を層ごとに付与することで3Dモデルを製造することができる。モデルの構築は、選択する方法に応じて、熱可塑性プラスチック(thermoplastics)、粉末、又は放射線硬化性樹脂から行われる。層の厚みは一般に0.025~0.100mmの範囲内であるが、最大0.200mmの場合もある。
【0003】
3D印刷の1つの分野は、ステレオリソグラフィーであり、とりわけ放射線硬化性樹脂を用いる。この方法では、アクリル、エポキシ、又はビニルエステル系の放射線硬化性組成物が付与され、続いて、一般にはレーザーを使用して硬化される。
【0004】
最終製品の用途を考慮して当該製品の機械的特性を改善するために、放射線硬化性樹脂にフィラーを充填することが知られている。
【0005】
例えば、EP 2 868 692 B1には対応する方法のためのマトリックス充填放射線硬化性樹脂組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
数多の開発がなされているが、従来技術と比較してより良好な製品の特性、例えば高い熱たわみ温度及び高い硬度を示し得る、3D印刷に使用するための新しい放射線硬化性樹脂組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、
0~30重量%の1又は複数のオリゴマーと、
15~80重量%の1又は複数のモノマーと、
10~80重量%のフィラー混合物と、
0.1~5重量%の1又は複数の光開始剤と、
を含む放射線硬化性樹脂組成物であって、
前記フィラー混合物が、
39.9~90重量%の、3~20μmの粒子サイズd50volを有する第1の粒子と、
9.9~60重量%の、0.5~1μmの粒子サイズd50volを有する第2の粒子と、
0.1~5重量%の、10~100m2/gの範囲内のBET表面積を有するナノ粒子と、
を含む、
放射線硬化性樹脂組成物によって達成される。
【0008】
別の実施形態では、本目的は、
0~30重量%の1又は複数のオリゴマーと、
1~50重量%の1又は複数のモノマーと、
20~75重量%のフィラー混合物と、
0.1~5重量%の1又は複数の光開始剤と、
を含む放射線硬化性樹脂組成物であって、
前記フィラー混合物が、
40~80重量%の、3~20μmの粒子サイズd50volを有する第1の粒子と、
20~60重量%の、0.5~1μmの粒子サイズd50volを有する第2の粒子と、
0.5~3重量%の、10~100m2/gの範囲内のBET表面積を有するナノ粒子と、
を含む、
放射線硬化性樹脂組成物によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、幅X
Bと長さX
Lを有する粒子を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
更なる成分が含まれてもよいが、好ましくは10重量%以下である。
【0011】
更なる成分としては、分散剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、重合遅延剤(阻害剤)、熱重合開始剤、並びに、酸化防止剤及び光保護剤(UV吸収剤、HALS化合物)等の安定剤が挙げられる。
【0012】
本発明の範囲内では、接頭辞「Cx~Cy-」(x及びy=1、2、3等であり、y>xである)は関連するアルキル化合物、アルキル化合物クラス又はアルキル基がx~y個の炭素原子からなり得ることを意味する。「(メタ)アクリル」はアクリル化合物又はメタクリル化合物を表し、「(ヘテロ)芳香族」は芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、「(ヘテロ)環式」は環式化合物又はヘテロ環式化合物を表す。
【0013】
放射線硬化性樹脂組成物は、とりわけオリゴマーを含有する。
【0014】
オリゴマーは、いくつかの構造的に同一の又は類似のモノマー単位で構成される巨大分子である。モノマー単位の正確な数は定義されていないが、通常は10~100、特に10~30である。単位の数が多いとその物質は主にポリマーと呼ばれる。
【0015】
好ましくは、オリゴマーは、フリーラジカル重合性のエチレン性不飽和基、例えば(メタ)アクリレート基を含む。いくつかの実施形態では、オリゴマーは、(ポリ)ウレタン骨格を有してもよい。
【0016】
特に好適なオリゴマーは、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートのグループに分類することができる。
【0017】
好適なオリゴマーは、例えば、Ebecryl(Allnex社)の製品名、Sartomer(Arkema Group社)の製品名、及びGenomer(Rahn AG社)の製品名で市販されている。
【0018】
多くの市販のオリゴマーは、実際のオリゴマーに加えて、よく「反応性希釈剤(reactive thinner)」と呼ばれる更なる成分、大部分は低分子成分を含有する。
【0019】
オリゴマーの量は、放射線硬化性樹脂組成物に対して、0~30重量%であり、好ましくは0~10重量%の範囲内である。
【0020】
別の実施形態では、オリゴマーの量は、放射線硬化性樹脂組成物に対して、0~30重量%であり、好ましくは3~7重量%の範囲内である。
【0021】
放射線硬化性樹脂組成物は、更なる成分としてモノマーを含有する。
【0022】
一般に、モノマーは、互いに結合してオリゴマー又はポリマーを形成し得る低分子反応性化合物である。
【0023】
本発明によれば、少なくとも1つのフリーラジカル重合性のエチレン性二重結合を有するすべての化合物がモノマーとして使用できる。
【0024】
モノマーは、そのフリーラジカル重合性のエチレン性二重結合の数によって区別することができる。フリーラジカル重合性のエチレン性二重結合を1つ有するモノマーは単官能性(モノマーI)である。フリーラジカル重合性の非共役のエチレン性二重結合を数個有するモノマーは多官能性(モノマーII)である。モノマーIIは架橋効果を有する。
【0025】
モノマーIは、好ましくは、
Ia)α,β-エチレン性不飽和C3~C4カルボン酸のエステル、
Ib)ビニル(ヘテロ)芳香族、
Ic)α,β-エチレン性不飽和モノ及びジカルボン酸、カルボン酸無水物、及びカルボン酸アミド、
Id)α,β-エチレン性不飽和C4~C6ジカルボン酸のモノエステル及びジエステル、並びに
Ie)カルボン酸のアリルエステル及びビニルエステル
の群より選択される。
【0026】
より好ましくは、モノマーIは、グループIa)、グループIb)、及びグループIc)より選択される。
【0027】
グループIa)からの好適なモノマーIは、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、アルカノール残基に1~22個の炭素原子を有する非分岐、分岐、及び環状アルカノールの(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、9H-カルバゾール-9-エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル-2-([メタ]アクリロイルオキシ)エチルフタレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、及び1-ピレニルメチル(メタ)アクリレート等の、芳香族(メタ)アクリレート及びヘテロ芳香族(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、5-ヒドロキシブチル、ヒドロキシエチルカプロラクトン、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-ブトキシエチル、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル、ジ(エチレングリコール)-2-エチルヘキシルエーテル、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ブチルジグリコール、2-カルボキシエチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、2-(ジイソプロピルアミノ)エチル、2-(tert-ブチルアミノ)エチル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチル、グリシジル、2-(メチルチオ)エチル、3-(トリメトキシシリル)プロピル、2-(トリメチルシリルオキシ)エチル、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル、トリメチルシリル、2-クロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、テトラヒドロフルフリル及び2-N-モルフォリノエチル(メタ)アクリレート、及び4-(メタ)アクリロイルモルフォリン、モノ-2-([メタ]アクリロイルオキシ)エチルスクシネート、及びモノ-2-([メタ]アクリロイルオキシ)エチルマレエート等の、ヒドロキシ-、アルコキシ-、カルボキシ-、アミノ-、エポキシ-、スルホ-、シリル-及びハロ-置換アルキル(メタ)アクリレート並びにヘテロ環式(メタ)アクリレート、
を含む。
【0028】
グループIb)からの好適なモノマーIは、例えば、スチレン、4-アセトキシスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、4-tert-ブトキシスチレン、4-tert-ブチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、4-エトキシスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-ビニルアニソール、3-ビニルベンジルクロリド、4-ビニルベンジルクロリド、9-ビニルアントラセン、4-ビニルビフェニル、2-ビニルナフタレン、9-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及び1-ビニル-2-ピロリジノンを含む。
【0029】
グループIc)からの好適なモノマーIは、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロトン酸無水物、N-エチル-、N-イソプロピル-、N-tert-ブチル-、N,N-ジメチル-、N,N-ジエチル-、N-ヒドロキシメチル-、N-ヒドロキシエチル-、N-(3-メトキシプロピル)-、N-(ブトキシメチル)-、N-(イソブトキシメチル)-、N-フェニル-、N-ジフェニルメチル-、N-(トリフェニルメチル)-、及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミドを含む。
【0030】
グループId)からの好適なモノマーIは、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、及び2-エチルヘキサノールと、マレイン酸及びイタコン酸とのジエステルを含む。
【0031】
グループIe)からの好適なモノマーIは、例えば、ビニルアセテート及びアリルアセテート、及び対応するプロピオネート、ブチラート、バレラート、カプロナート、デカノエート、及びラウレートを含む。
【0032】
多官能性モノマーIIとしては、
IIa)多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、
IIb)多価アルコールのビニルエーテル及びアリルエーテル、並びに
IIc)2倍又は数倍のアリル-、ビニル-、又は(メタ)アクリル-置換(ヘテロ)環式化合物及び(ヘテロ)芳香族化合物
が使用されてもよい。
【0033】
グループIIa)からの好適な多官能性モノマーIIは、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリルオキシプロパン、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートメチルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート(EO度=3~20)、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロール)プロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタ(メタ)アクリレート、及びジ(ペンタエリスリトール)ヘキサ(メタ)アクリレートを含む。
【0034】
グループIIb)からの好適な多官能性モノマーIIは、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[ 4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]-1,6-ヘキサンジイルビスカルバメート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、アリルエーテル、及びトリメチロールプロパンジアリルエーテルを含む。
【0035】
グループIIc)からの好適な多官能性モノマーIIは、例えば、ジビニルベンゼン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、2,2’-ジアリルビスフェノール-A、2,2’-ジアリルビスフェノール-Aジアセテートエーテル、1,4-フェニレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aエトキシレートジ(メタ)アクリレート(EO度=2~30)、ビスフェノール-Aグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aプロポキシレートグリセロレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノール-Fエトキシレートジ(メタ)アクリレートを含む。
【0036】
モノマーの量は、放射線硬化性樹脂組成物に対して、15~80重量%、好ましくは15~50重量%である。
【0037】
別の実施形態では、モノマーの量は、放射線硬化性樹脂組成物に対して、1~50重量%、好ましくは15~40重量%である。
【0038】
モノマー及び任意のオリゴマーのフリーラジカル重合性組成物を、以下、樹脂ともいい、すなわち、フィラーを含まない。「放射線硬化性組成物」又は「放射線硬化性樹脂組成物」は樹脂とフィラーとの混合物に関連する。
【0039】
放射線硬化性樹脂組成物は、更なる成分としてフィラー混合物を含有する。フィラーは無機材料である。
【0040】
フィラー混合物は、少なくとも3つの粒子サイズ範囲の粒子を含有する。
【0041】
第1の粒子の粒子サイズ及び第2の粒子の粒子サイズは、サブマイクロメートルからマイクロメートルの範囲である。これらは、d50vol値によって特徴付けられる。これは、当該d50vol値に比べて、粒子の50体積%がそれより大きな粒子サイズを有し、粒子の50体積%がそれより小さな粒子サイズを有するときの粒子サイズである。
【0042】
そのような粒子サイズは、例えば、レーザー回折法によって測定することができる。粒子サイズの測定は、ISO 13320に準拠して行われた。この目的に適した装置は、Quantachrome社のCILAS 1064である。粒子サイズを測定するために次の方法が採用される:フィラーの個々の画分が超音波と攪拌を使用してイソプロパノール中に分散される。フィラーの重量(weighed amount)は、分散液の濁度によって決まる。これは減衰率(obscuration)(暗化)によって定義される。分散液の減衰率は15~20%でなければならない。減衰率によっては、重量(weighed amount)が数グラムから数ミリグラムになる場合がある。
【0043】
第1の粒子及び第2の粒子に特に好適な材料は、非晶質二酸化ケイ素、結晶性二酸化ケイ素、長石、マイカ、硬石膏(硫酸カルシウム)、及びそれらの混合物からなる群より選択されるフィラーを含む。
【0044】
上記長石として、特に、カリウム長石、ナトリウム長石、いわゆる準長石、及びそれらから得られる混合組成物が好適である。
【0045】
フィラー混合物は、第3の粒子としてナノ粒子を含有する。本発明の範囲内では、「ナノ粒子」とは1nm~100nmの平均一次粒子径を有する粒子を意味する。ナノ粒子の粒子サイズは、通常、レーザー回折法では信頼できる測定ができない。これには動的光散乱(DLS)等の他の方法がより適している。
【0046】
ナノ粒子についてはBET値がしばしば特定される。BET測定は、ガス吸着によって比表面積(m2/g)を測定するための分析方法である。略語BETは、考案者であるBrunauer、Emmett、及びTellerの名字を表している。BET表面積を決定するための測定は、DIN ISO 9277に準拠して実施される。
【0047】
特に、非晶質二酸化ケイ素からなり、10~100m2/gの範囲内のBET表面積を有する材料が第3の粒子(ナノ粒子)として好適である。
【0048】
フィラー混合物は、放射線硬化性樹脂組成物中に10~80重量%の割合で含有される。
【0049】
別の実施形態では、フィラー混合物は、放射線硬化性樹脂組成物の5~75重量%の割合を占める。
【0050】
好ましくは、フィラー混合物の含有量は、15重量%以上、より好ましくは25重量%以上、又は35重量%以上、又は50重量%以上である。55~70重量%又は55~75重量%の範囲内のフィラー含有量が特に好ましい。
【0051】
充填度が高いほど、機械的特性が良好になることが期待される、及び/又は、完全に硬化した樹脂組成物の硬度が大きくなる。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1の粒子はシラン化されている。
【0053】
第2の実施形態では、第2の粒子はシラン化されている。
【0054】
第3の実施形態では、第3の粒子はシラン化されている。
【0055】
第4の実施形態では、第1の粒子及び第2の粒子が両方ともシラン化されている。
【0056】
第5の実施形態では、第1の粒子及び第2の粒子及び第3の粒子がいずれもシラン化されている。
【0057】
「シラン化(silanization)」とは、粒子表面をシラン化合物でコーティングすることを意味する。使用されるシランの加水分解性基と粒子表面の化学基との間の縮合反応によって結合が行われる。
【0058】
シラン化は、例えば、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、又はメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを用いる処理によって行うことができる。当業者は、更に好適なシラン化剤を知っている。各粒子がそれぞれ異なる試薬(agent)又は試薬の混合物でシラン化されてもよい。
【0059】
第1の粒子は球形であることが好ましい。第1の粒子は比較的大きい(3~20μm)ため、球形の特徴が光学顕微鏡で簡単に観察できる。このような分析は、例えば、ドイツのクラウスタール-ツェラーフェルトのSympatec GmbH社からQICPIC(登録商標)の名称で販売されている装置によって自動化することもできる。
【0060】
球形度は、物体の形状がどれだけ球の形に近いかを示す尺度である。これは測定された粒子の幅と長さの比X
B/X
Lにより決定できる。球の場合、この比は1に等しい。小さい方の値が常に幅として定義される。これを
図1に模式的に示す。
【0061】
本出願の趣旨における「球形」とは、幅と長さの比が0.80以上、より好ましくは0.90以上の粒子である。
【0062】
また、放射線硬化性樹脂組成物は、光開始剤を含有する。
【0063】
光開始剤は、電磁放射線(多くの場合約250~400nmの波長範囲の(UV)光)を吸収すると、光分解反応で分解し反応種を形成する化合物であり、当該反応種は化学反応、主に重合を開始させることができる。反応種はフリーラジカル又はカチオンである。本発明では、フリーラジカル形成光開始剤が使用される。
【0064】
原理上、適切な放射線に曝されたときにフリーラジカルを形成する任意の化合物を光開始剤として使用することができる。好適な光開始剤のグループは、とりわけ、
1.α-ヒドロキシアリールケトン類、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
2.α-アミノアリールケトン類、例えば、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン
3.α-アルコキシアリールケトン類、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-n-ブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、
4.ホスフィンオキシド類、例えば、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
を含む。
【0065】
好ましい光開始剤は、ホスフィンオキシド類のグループに属する。これらは広く普及しており、工業スケールでも容易に入手可能である。その一般的な量は、0.1~5.0重量%である。355~405nmの波長範囲内の放射線で活性化することができる光開始剤が好ましい。
【0066】
その例としては、Omnirad TPO、CHIVACURE TPO、GENOCURE TPO、Omnirad TPO-L、CHIVACURE TPO-L、GENOCURE TPO-L、Lucirin BAPO、Irgacure 819の商品名としても販売されている物質が挙げられる。
【0067】
樹脂中へのフィラー混合物の取り込みは、ディソルバー、プラネタリーミキサー、パドルミキサー、ローターステーター分散機(例えば、Ultra-Turrax(登録商標))、又はデュアルアシンメトリック遠心分離機(DAC)の原理に従って機能するミキサー等の異なる混合及び分散システムによって行ってもよい。実験室スケールでは、DACミキサーは、同時に脱気されている高粘度マトリックス中であっても粒子の迅速かつ簡単な分散を提供する。
【0068】
硬化した樹脂組成物の曲げ弾性率及び熱たわみ温度は、多くの場合、樹脂組成物中のフィラーの割合を増やすことによって増加し得る。多くの市販の樹脂では、充填度(filling degree)の増加に伴う粘度の上昇によりそれ以上の処理ができなくなるため、充填度を高めることができない。50重量%超の充填度を設定可能とするためには、未充填の樹脂の粘度ができるだけ低くなければならない。
【0069】
フィラー混合物を含まない樹脂は好ましくは、プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び10s-1のせん断速度で測定した場合、10~1000mPa・sの範囲内、より好ましくは10~100mPa・sの範囲内の粘度を有する。
【0070】
本発明に係る放射線硬化性樹脂組成物は好ましくは、プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び10s-1のせん断速度で測定した場合、3000mPa・s以下の粘度を有し、且つ、プレート-プレートジオメトリを用いて25℃及び0.1s-1のせん断速度で測定した場合、15,000mPa・s以下の粘度を有する。
【0071】
本発明はまた、本発明に係る放射線硬化性樹脂組成物を放射線硬化することにより得ることが可能な放射線硬化(radiation-cured)樹脂組成物に関する。
【0072】
こうして得られる硬化樹脂組成物は、良好な機械的特性及び高い熱たわみ温度を特徴とする。
【0073】
したがって、硬化樹脂組成物のISO 178に準拠した曲げ弾性率は、好ましくは6,000~12,000MPaの範囲内であり、より好ましくは7,000MPa以上である。
【0074】
好ましくは、ISO 75に準拠した熱たわみ温度(HDT A)は100℃以上である。
【0075】
本発明を以下の実施例によって更に説明する:
実施例
【0076】
【0077】
樹脂の調製(例4~例7用)
光開始剤GENOCURE TPOを、室温で攪拌しながらモノマーSARTOMER SR 351に完全に溶解させる。続いて、樹脂の残りの成分(SARTOMER SR 306、GENOMER 4425、EPOXY METHACRYLATE 97-053)を加える。均一な混合物が得られるまで混合物を撹拌する。
【0078】
樹脂組成物の調製(例4~例7用)
Hauschild社のDACミキサー(Speedmixer DAC 400 FVZ)を用いて樹脂組成物を調製した。当該Speedmixerに適したプラスチックビーカー(750ml)に、60gの樹脂(樹脂の全量のうち50重量%)及び90gのフィラー混合物(フィラー混合物の全量のうち50重量%)を仕込み、2,200rpmで2分間分散させる。続いて、フィラー混合物の残分(全量のうち50重量%)を加え、2,200rpmで2分間再び分散させる。第3のステップで、樹脂の残分(全量のうち50重量%)を加えた後、2,200rpmでもう2分だけ分散させる。得られる樹脂組成物は60重量%のフィラー含有量を有する。
【0079】
粘度測定
樹脂及び樹脂組成物の粘度は、Anton Paar社のレオメーターMCR 102を用いて測定した。以下の設定を選択した:
ジオメトリ=50mmプレート-プレート、測定温度=25℃、せん断速度=0.1s-1及び10s-1。
【0080】
硬化(cured)樹脂組成物の3D印刷試験片
放射線硬化性樹脂組成物をWay2Production(W2P)社のタイプSolFlex 650のプリンターを用いて印刷し硬化樹脂組成物の試験片とする。
【0081】
硬化樹脂組成物の試験片の後硬化
印刷後、硬化樹脂組成物の試験片は、両側にUVランプ(Kulzer HiLite Power社、発光波長=390~540nm)を使用して180秒間後硬化される。
【0082】
硬化樹脂組成物の機械的特性
試験片は次の寸法を有する:長さl=(80±2)mm、幅b=(10±0.2)mm、厚みh=(4±0.2)mm。
曲げ特性は、ISO 178に準拠して測定される。
熱たわみ温度は、ISO 75、A法に準拠して測定される。
オイルバスの加熱速度は、50K/hである。
【0083】
例1(比較)
Way2Production社の市販の樹脂Prototype Clearに、上記の方法の原理に従って50重量%の非晶質二酸化ケイ素(d50=5μm)を充填した。樹脂組成物は、5,000mPa・s(せん断速度=0.1s-1)の粘度、又は、10,000mPa・s(せん断速度=10s-1)の粘度を有する。粘度が高いため、この樹脂組成物は3D印刷に適さない。
【0084】
例2(比較)
例1と同様であるが、シラン化されていないフィラーの代わりに、MSTでシラン化された非晶質二酸化ケイ素(d50=5μm)を用いた。
【0085】
樹脂組成物は良好な流動性を示す。粘度は4,000mPa・s(せん断速度=0.1s-1)、又は、5,700mPa・s(せん断速度=10s-1)である。50℃で6時間保存した後、樹脂組成物ははっきり見える沈殿を示す。したがって、この樹脂組成物は、保存した場合にいつまでも安定ではない。
【0086】
新たに調製した樹脂組成物のサンプルを、上述の方法に従って更に処理し、硬化樹脂組成物の試験片とした。機械的特性は表1から分かる。
【0087】
例3(比較)
例2と同様であるが、MSTシラン化フィラーの代わりに、異なる粒径分布を有する2種のMSTシラン化フィラーを用いた(5μmのd50を有する80重量%の非晶質二酸化ケイ素、1μmのd50を有する20重量%の非晶質二酸化ケイ素)。
【0088】
樹脂組成物は良好な流動性を示す。粘度は4,200mPa・s(せん断速度=0.1s-1)、又は、4,400mPa・s(せん断速度=10s-1)である。50℃で6時間保存した後、樹脂組成物ははっきり見える沈殿を示す。したがって、この樹脂組成物は、保存した場合にいつまでも安定ではない。
【0089】
新たに調製した樹脂組成物のサンプルを、上述の方法に従って更に処理し、硬化樹脂組成物の試験片とした。機械的特性は表1から分かる。
【0090】
【0091】
例2及び例3からの硬化樹脂組成物は、非常に良好な破壊応力と破壊ひずみを示す。しかし、曲げ弾性率は多くの用途にとってまだ低すぎる。熱たわみ温度についても同様である。
【0092】
例4~例7
例4~例7については、市販の樹脂ではなく、上記の方法で調製した100MPa・s(せん断速度=10s-1)未満の低粘度の自作の樹脂を用いた。前述の例1~例3と同様に、異なる組成のフィラー混合物を上記の方法によって樹脂に取り入れた。得られた放射線硬化性樹脂組成物をそれらの粘度に関して特性決定した。本発明に係る例7の樹脂組成物から、上記の3D印刷法により試験片を製造した。硬化樹脂組成物の試験片をそれらの曲げ特性及び熱たわみ温度に関して特性決定した。詳細は表2から分かる。
【0093】
例4及び例6の樹脂組成物は、長期間保存した場合に安定しているが(沈殿無し)、3D印刷の際の処理を考慮するとそれらの粘度はまだ少し高い。対照的に、例5の樹脂組成物は、良好な流動特性を示すが、いつまでも安定ではなく沈殿していく。本発明に係る例7の樹脂組成物は、処理し易く(良好な流動特性)、且つ、保存した場合に安定である(沈殿無し)。
【0094】
更に、本発明に係る例7の硬化樹脂組成物は、良好な曲げ特性と高い熱たわみ温度を示す。
【0095】