IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)の特許一覧

特許7544810アフィニティセンサー、特にQCMセンサー
<>
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図1
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図2
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図3
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図4
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図5
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図6
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図7
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図8
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図9
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図10
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図11
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図12
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図13
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図14
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図15
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図16
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図17
  • 特許-アフィニティセンサー、特にQCMセンサー 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アフィニティセンサー、特にQCMセンサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/543 593
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022511073
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2020073106
(87)【国際公開番号】W WO2021032745
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】LU101353
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】516296566
【氏名又は名称】ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シヴァシャンカール・クリシュナムルティ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・ベッジャート
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528257(JP,A)
【文献】特表2005-530176(JP,A)
【文献】特表2005-504294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184584(US,A1)
【文献】特表2015-514225(JP,A)
【文献】特表2005-530983(JP,A)
【文献】特表2009-503548(JP,A)
【文献】特開2008-197108(JP,A)
【文献】S Krishnamoorthy,Tunable, high aspect ratio pillars on diverse substrates using copolymer micelle lithography: an interesting platform for applications,Nanotechnology,2008年,Vol.19,Page.285301
【文献】A. Valsesia,Protein Nanopatterns for Improved Immunodetection Sensitivity,Anal. Chem.,2008年,Vol.80,Page.7336-7340
【文献】Sivashankar Krishnamoorthy,Confinement-Induced Enhancement of Antigen-Antibody Interactions within Binary Nanopatterns to Achieve Higher Efficiency of On-Chip Immunosensors,Adv. Mater.,2008年,Vol.20,Page.2782-2788
【文献】Jennifer N. Cha,Biomimetic Approaches for Fabricating High-Density Nanopatterned Arrays,Chem. Mater.,2007年,Vol.19,Page.839-843
【文献】Brigitte Stadler,Nanopatterning of gold colloids for label-free biosensing,Nanotechnlogy,2007年,Vol.18,Page.155306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の被分析物を感知するためのアフィニティバイオセンサーとして実装される水晶振動子マイクロバランスチップであって、圧電効果を通じて剪断変形を中に誘発するための電極が接触する基板と、前記流体と接触し前記被分析物を吸着するための界面を備え、前記界面は、前記被分析物に対する親和性を有するナノスケール領域の二元パターンを備え、前記ナノスケール領域は前記界面上の前記被分析物の吸着が前記ナノスケール領域に閉じ込められるように不動態化領域によって互いにから隔離され、前記ナノスケール領域は5から200nmの範囲に含まれる直径を有し、前記ナノスケール領域は合わせて前記界面の表面積の少なくとも15%に相当する表面積を有し、前記ナノスケール領域は、前記不動態化領域から突起しているナノドームを備え、前記ナノドームは、シリカコアを含む水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項2】
前記ナノスケール領域は、前記被分析物に対して選択的である表面官能基化を有する、請求項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項3】
前記ナノスケール領域は、40から170nmの範囲に含まれる平均直径を有する、請求項1または2に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項4】
前記ナノスケール領域は、六角格子に配置構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項5】
最近傍ナノスケール領域間の平均中心間距離は、前記ナノスケール領域の平均直径の1.5から5倍に相当する、請求項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項6】
前記被分析物は、生体分子を含み、前記アフィニティバイオセンサーは前記ナノスケール領域内に前記被分析物が結合することができる抗体または受容体を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項7】
前記不動態化領域は、アンチファウリング層を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項8】
前記不動態化領域は、タンパク質耐性ポリエチレン部分の層を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項9】
前記ナノスケール領域は、合わせて、前記界面の前記表面積の少なくとも20%に相当する表面積を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ
【請求項10】
前記ナノスケール領域は、前記被分析物に対して選択的である表面官能基化を有し、
前記ナノスケール領域は、40から170nmの範囲に含まれる平均直径を有し、
前記ナノスケール領域は、六角格子に配置構成され、
最近傍ナノスケール領域間の平均中心間距離は、前記ナノスケール領域の平均直径の1.5から5倍に相当し、
前記被分析物は、生体分子を含み、前記アフィニティバイオセンサーは前記ナノスケール領域内に前記被分析物が結合することができる抗体または受容体を含み、
前記不動態化領域は、アンチファウリング層を備える、請求項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップ。
【請求項11】
分析されるべき流体内の被分析物を感知する方法であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載の水晶振動子マイクロバランスチップを提供するステップと、
前記界面を分析されるべき前記流体と接触させ、それによって前記界面上の前記被分析物の吸着を可能にし、前記吸着は前記ナノスケール領域に閉じ込められる、ステップと、
吸着された被分析物の量(質量、モル数)を決定するステップとを含む方法。
【請求項12】
前記界面を、前記界面が分析されるべき前記流体と接触した後にすすぐステップを含み、吸着された被分析物の前記量は、前記すすぎの後に決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノスケール領域の平均直径のサイズと前記被分析物のサイズとの比は、3から20の範囲内にある、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、アフィニティセンサー、特に、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーに関する。本発明のさらなる態様は、そのようなセンサーを使用して流体中の被分析物を感知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着質の数倍程度の非常に小さな空間への吸着プロセスの閉じ込めは、ナノスケールのコンポーネントを採用するセンシングデバイス内で生じる。
【0003】
吸着事象の空間的閉じ込めは、デバイスのフットプリントの微小化の結果である。吸着事象の結果は、ナノセンサー、細胞-基質相互作用、抗菌表面、微細孔内吸着などを含む、広範な用途に関して注目されている。
【0004】
生物学的受容体(biological receptor)のナノパターン形成には、コロイドリソグラフィー、ブロック共重合体由来ナノ粒子アレイ、多孔質アルミナ、電子ビームまたはナノインプリントリソグラフィー、およびAFM(原子間力顕微鏡)ベースの方法を含む、異なる技術が使用されてきた。しかしながら、吸着の結果、すなわち吸着質の密度または吸着の反応速度論に対するナノスケールにおける吸着領域の影響は、調査されたことがない。
【0005】
コロイドリソグラフィーは、二元ナノパターンを生成し生体分子を表面のサブミクロンパッチに選択的に吸着させるために以前から使用されている。Krishnamoorthy,S.、Himmelhaus,M.による論文、「Confinement-Induced Enhancement of Antigen-Antibody Interactions within Binary Nanopatterns to Achieve Higher Efficiency of on-Chip Immunosensors」、Adv. Mater. 2008年、20(14)、2782~2788頁には、このようなパターンがイムノアッセイの感度を高めるそのようなパターンを記載しており、これはナノパターン上の捕捉抗体の高められた配向に起因するとしている。しかしながら、この調査は、受容体の表面濃度またはアッセイの応答時間に対するこのような閉じ込めの影響を取り扱わない。
【0006】
同様に、Agheli,H.、Malmstrom,J.、Larsson,E. M.、Textor,M.、Sutherland,D. S.による論文、「Large Area Protein Nanopatterning for Biological Applications」、Nano Lett. 2006年、6(6)、1165~1171頁では、100nm範囲のコロイドリソグラフィーを使用するナノパッチのアレイの実現を開示している。その論文の著者らは、タンパク質に結合したモノクローナル抗体に対するナノパターンの影響を定量化することができ、タンパク質上の結合部位が、均質な表面に比べてナノパターン上でより利用できるようになる可能性を開いている。
【0007】
Valsesia,A.、Mannelli,I.、Colpo,P.、Bretagnol,F.、Rossi,F.、「Protein Nanopatterns for Improved Immunodetection Sensitivity」、Anal. Chem. 2008年、80(19)、7336~7340頁では、異なるテンプレート周期性およびスポット径を有するPEOマトリックス中のCOOHスポットの二元パターンの生成を報告している。著者らは、表面を異なる濃度のAb-IgGと比較することによって、ナノパターンが使用されたときに検出限界が効果的に低濃度側にシフトされることを証明した。しかしながら、すべての実験について変数が一度に変化したので、格子定数およびスポット径の変化の影響は、決定され得なかった。彼らの研究により、彼らは抗IgGを用いてチェックすることによってIgGの活性が増大すること、およびナノパターンの存在に起因して認識能力が高まることを証明した。
【0008】
Kim,P.、Kim,D. H.、Kim,B.、Choi,S. K.、Lee,S. H.、Khademhosseini,A.、Langer,R.、Suh,K. Y.による論文、「Fabrication of Nanostructures of Polyethylene Glycol for Applications to Protein Adsorption and Cell Adhesion」、Nanotechnology 2005年、16(10)、2420~2426頁において、蛍光分析は、均一なPEG表面と比較したときに、試験タンパク質吸着に対するナノパターン形成PEG表面の影響をマップするために使用された。しかしながら、これは、また、増大した表面領域に対する蛍光の増大を、表面エネルギーに関係する他の効果の可能性を排除することなく、取り扱った。
【0009】
タンパク質吸着研究を通じてより低い炎症反応に到達するようにゲルマニウムナノピラミッド上の細胞行動を改善することを目指しているが、Riedel,M.、Muller,B.、Wintermantel,E.、「Protein Adsorption and Monocyte Activation on Germanium Nanopyramids」、Biomaterials 2001年、22(16)、2307~2316頁では、ナノピラミッドの密度がタンパク質それ自体に対する利用可能な活性部位に直接影響を及ぼすというところまで行き着いた。それらの結果は、表面積増大と比較された。2.5~3倍の増大は、表面積の7%の増大をかなり超えていた。さらに、密度は増大しているが、ウシガンマグロブリンの活性は、利用可能な最大密度で完全に不活性化するまで減少した。Riedelらの研究は、他の研究では通常示されない背景とパターンとの間の材料コントラストを利用しており、ゲルマニウムおよびシリコンはタンパク質に曝されたときに異なる質量取り込みまたは吸着反応速度論を有することもあり得るのでより高い吸着範囲を説明する可能性があるか、または論文で示唆されているように、吸着は背景に比べてピラミッドの上でより大量に生じている可能性もある。
【0010】
Dolatshahi-Pirouz,A.、Rechendorff,K.、Hovgaard,M.B.、Foss,M.、Chevallier,J.Bsenbacher、F.による論文「Bovine Serum Albumin Adsorption on Nano-Rough Platinum Surfaces Studied by QCM-D」、Colloids Surfaces B Biointerfaces 2008年、66(1)、53~59頁は、平坦な表面と比較してときに、ウシ血清アルブミン吸着に対する確率的ナノラフ白金表面の影響を研究したものである。正規化された質量取り込みを比較することによって、著者らは、表面積の増大だけを示し得ない増分に気づいた。この増分は、表面上の吸着質のより良い立体構造配置構成に起因するとされ、その結果、質量取り込みの増大は30~35%程度であった。
【0011】
上述した研究の大部分において、タンパク質吸着が起こっているときに、表面積の増大だけでは追跡できない第3者の影響が作用し始めていることを識別することができた。いくつかのシナリオは、ファウリングバックグラウンド上のファウリングナノパターンと考えることができるが、それは、バックグラウンドの寄与が、全体の溶質吸着さらには利用可能な表面にも依然として明確に寄与していたからである。一方、ValsesiaらおよびKrishnamoorthyらの研究は、表面上の特定の領域への溶質の吸着を提案している(アンチファウリングバックグラウンドアプローチ(anti-fouling background approach)におけるファウリングパッチ(fouling patch))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Krishnamoorthy,S.、Himmelhaus,M.による論文、「Confinement-Induced Enhancement of Antigen-Antibody Interactions within Binary Nanopatterns to Achieve Higher Efficiency of on-Chip Immunosensors」、Adv. Mater. 2008年、20(14)、2782~2788頁
【文献】Agheli,H.、,J.、Larsson,E. M.、Textor,M.、Sutherland,D. S.による論文、「Large Area Protein Nanopatterning for Biological Applications」、Nano Lett. 2006年、6(6)、1165~1171頁
【文献】Valsesia,A.、Mannelli,I.、Colpo,P.、Bretagnol,F.、Rossi,F.、「Protein Nanopatterns for Improved Immunodetection Sensitivity」、Anal. Chem. 2008年、80(19)、7336~7340頁
【文献】Kim,P.、Kim,D. H.、Kim,B.、Choi,S. K.、Lee,S. H.、Khademhosseini,A.、Langer,R.、Suh,K. Y.による論文、「Fabrication of Nanostructures of Polyethylene Glycol for Applications to Protein Adsorption and Cell Adhesion」、Nanotechnology 2005年、16(10)、2420~2426頁
【文献】Riedel,M.、Muller,B.、Wintermantel,E.、「Protein Adsorption and Monocyte Activation on Germanium Nanopyramids」、Biomaterials 2001年、22(16)、2307~2316頁
【文献】Dolatshahi-Pirouz,A.、Rechendorff,K.、Hovgaard,M.B.、Foss,M.、Chevallier,J.Bsenbacher、F.による論文「Bovine Serum Albumin Adsorption on Nano-Rough Platinum Surfaces Studied by QCM-D」、Colloids Surfaces B Biointerfaces 2008年、66(1)、53~59頁
【文献】Yap,F. L.、Thoniyot,P.、Krishnan,S.、Krishnamoorthy,S.による論文「Nanoparticle, Cluster Arrays for High-Performance SERS through Directed Self-Assembly on Flat Substrates and on Optical Fibers」、ACS Nano 2012年、6(3)
【文献】Nurmawati,M. H.、Ajikumar,P. K.、Renu,R.、Valiyaveettil,S.、「Hierarchical Self-Organization of Nanomaterials into Two-Dimensional Arrays Using Functional Polymer Scaffold」、Adv. Funct. Mater. 2008年、18(20)、3213~3218頁
【文献】Meiners,J. C.、Quintel-Ritzi,A.、Mlynek,J.、Elbs,H.、Krausch,G.による論文「Adsorption of Block-Copolymer Micelles from a Selective Solvent」、Macromolecules 1997年、30(17)、4945~4951頁
【文献】Cha,J. N.、Zhang,Y.、Philip Wong,H. S.、Raoux,S.、Rettner,C.、Krupp,L.、Deline,V.、「Biomimetic Approaches for Fabricating High-Density Nanopatterned Arrays」、Chem. Mater. 2007年、19(4)、839~843頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
先行技術では、ナノパターンが溶質の吸着にどのように影響するかに関してははっきりしていない。表面積により予想を超えるナノパターン上での溶質吸着の促進を証明した著者もいるが、吸着質種よりも数桁大きい部位のみが吸着に利用可能であったという状況は報告されていない。
【0014】
この文脈での1つの重要な課題は、吸着事象を分子次元に至るまで予め決められた領域内に閉じ込めることである。それに加えて、これらの領域は、高い信号対雑音比での分析を可能にするため、および/またはQCM、SPR(表面プラズモン共鳴)および偏光解析法などの、大きな測定フットプリントを有する技術に対応するために、比較的大きな表面(たとえば、数平方ミリメートル)上で十分に高い密度で利用可能であることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、流体(液体または気体)中の被分析物を感知するためのアフィニティセンサー、特にアフィニティバイオセンサーに関連しており、流体と接触し被分析物を吸着するための界面を含む。界面は、被分析物に親和性を有するナノスケール領域と不動態化領域の二元パターンを含む。ナノスケール領域は、界面上の被分析物の吸着がナノスケール領域に閉じ込められるように不動態化領域によって互いにから隔離される。ナノスケール領域は、5から200nmの範囲に含まれる直径を有する。さらに、ナノスケール領域は、合わせて界面の表面積の少なくとも15%に相当する表面積を有する。
【0016】
本明細書において使用されているように、「アフィニティセンサー」という用語は、しかしながら化学反応において被分析物を消費することなく、選択的な成分への被分析物(定性的にまたは好ましくは定量的に検出されるべき種)の結合に依存するセンサーを指す。本開示の文脈において、アフィニティセンサーは、バイオセンサー(アフィニティバイオセンサー)でもあり、選択的成分は、感受性生物学的要素、たとえば、被分析物が結合する抗体または受容体を含む。被分析物は、好ましくは、生体分子、たとえば、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸を含む。そのような生体分子は、何らかの他の実体(別の分子または生体分子、ナノ粒子、または同様のもの)に付着している可能性もある。
【0017】
本発明の第1の態様によるアフィニティセンサーを使用することで、本発明者は、表面上のナノスケール領域上の吸着質の閉じ込めが、受容体密度および吸着の反応速度論に著しく影響を及ぼし得ることを実証することができた。さらに、これは、生体分子、または匹敵する寸法の合成ナノスケール物体についても定性的に類似する効果であることを指摘した。
【0018】
本明細書の文脈において、「直径」という用語は、考察対象の物体の凸包に接する2つの対向する平行平面の間に形成され得る最小の距離を意味する。直径の測定は、SEMおよび/またはAFMによって、直接および/または間接的な測定を使用して行われ得る。SEMによる直接直径測定が、考察対象の物体の境界がきれいでないという理由から困難であることが判明した場合(高帯電表面の場合)、測定は、AFMまたはSEMによる間接測定を使用して行われ得る。AFMは、方位分解能に影響を与えるチップコンボリューション効果に悩まされることが知られている。それにもかかわらず、これらの効果は、チップ仕様を考慮することによって程度補正できる。特徴直径は、SEMによって間接的に測定することもできる。この技術によれば、知られている直径の導電性(金属など)ナノ粒子は、考察中の物体上に吸着され、導電性および分解能を改善する。次いで、考察中の物体の直径は、二倍のナノ粒子直径を可能な最大偏位として使用して決定され得る。
【0019】
センサー界面は平坦であるか、または三次元(3D)表面を有することができることに、注目すべきである。同じことが、ナノスケール領域にも当てはまる。したがって、Ananoを一緒に取られたナノスケール領域の表面積とし、Ainterfaceを界面の全表面積(ナノスケール領域および不動態化領域を含む)として、比Anano/Ainterface(充填率)を計算するために、表面の3D形状は考慮されなければならない。好ましくは、ナノスケール領域は、合わせて、界面の表面積の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも30%に相当する表面積を有する。本発明者らの知る限りにおいて、15%という高い充填率を有するナノパターン形成アフィニティセンサーは、文献では報告されていない。このような高い充填率は、ナノスケール領域内の吸着の増強が、結果として、吸着に利用可能な表面積が小さいにもかかわらず、パターン形成されていないセンサーで得られるものに匹敵するかまたはそれ以上の高い総吸着質量をもたらし得ることを意味することは理解されるであろう。
【0020】
ナノスケール領域は、不動態化領域から突起したナノドーム(ナノスケールのドームまたはピラー)を含み得る。代替的に、またはそれに加えて、ナノスケール領域は、不動態化領域から陥凹しているナノ微細孔(ナノスケール微細孔)および/または不動態化領域と同一平面上にあるナノスケール領域を含むことが可能である。実験は、60%を超える充填率までの比較的平坦なナノドームで、吸着密度の増大が観察され得ることを示した。より高い充填率(たとえば、95%)は、ナノスケールピラーを形成するように、ナノスケール領域の高さを大きくすることによって達成することができる。
【0021】
アフィニティセンサーがナノドームを有する場合、これらは、好ましくは、シリカコアを含む。それにもかかわらず、シリカの代替物も存在し、除外されない。可能な代替物は、金属(特に、金)およびポリマーである。
【0022】
ナノスケール領域は、好ましくは、被分析物に対して選択的である表面官能基化を有する。この文脈において、「選択的官能基化」とは、溶液中の種と、特定の受容体(たとえば、ビオチン/アビジン相互作用または抗原/抗体相互作用)によって媒介される表面との間の相互作用を意味する。
【0023】
ナノスケール領域は、好ましくは、40から170nmの範囲に含まれる平均直径を有する。
【0024】
ナノスケール領域は、好ましくは六角格子(「三角格子」とも呼ばれる)に配置構成され、各格子点は、約60°の角度で離間され、考察中の格子点からほぼ同じ距離に配置される6つの最近傍を有する。六角形格子は、実際には、不規則要素または欠陥を有し得ることに留意されたい。孤立欠陥とは別に、それらの欠陥は、格子構造を粒子に分割してもよく、粒子それ自体は、実質的に規則的形状を有する。好ましくは、格子は、格子のピッチの少なくとも5、好ましくは少なくとも6、7、8、9、または10倍に相当する平均粒径を有する。
【0025】
好ましくは、ナノスケール領域が六角格子を形成する場合、最近傍ナノスケール領域間の平均中心間距離は、ナノスケール領域の平均直径の1.3から5倍(より好ましくは、1.4から4.7倍)に相当する。好ましくは、中心間距離は、平均中心間距離の20%未満(より好ましくは、15%未満)の標準偏差を示す。
【0026】
不動態化領域は、アンチファウリング層を含み得る。たとえば、不動態化領域は、タンパク質耐性ポリエチレングリコール部分の層を含むことが可能である。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、本明細書で説明されているようなアフィニティセンサーとして実装される水晶振動子マイクロバランスチップに関するものであり、界面は、質量を取り込むためのQCM表面に相当する。QCMチップは、圧電効果を通じてそこに剪断変形を誘発するための電極が接触する基板を含む。好ましくは、QCMチップは、散逸モニタリング(QCM-D)を有するQCMで実装される。
【0028】
好ましい実施形態によれば、QCMチップはアフィニティバイオセンサーとして実装され、
・ナノスケール領域は、前記不動態化領域から突起したナノドームを含み、
・ナノスケール領域は、被分析物に対して選択的な表面官能基化を有するが、不動態化領域は、アンチファウリング層、たとえば、タンパク質耐性ポリエチレン部分の層を含み、
・ナノスケール領域は、40から170nmの範囲に含まれる平均直径を有し、
・ナノスケール領域は、六角格子に配置構成され、
最近傍ナノスケール領域間の平均中心間距離は、ナノスケール領域の平均直径の1.5から5倍に相当する。
【0029】
なおもさらなる態様によれば、本発明は、分析されるべき流体中の被分析物を感知する方法に関する。この方法は、
・説明されているようなアフィニティバイオセンサーとして実装されるQCMチップを提供することと、
・界面を分析されるべき流体と接触させ、それによって界面上の被分析物の吸着を可能にし、吸着はナノスケール領域に閉じ込められることと、
・吸着された被分析物の量(たとえば、質量、モル数)を決定することとを含む。
【0030】
好ましくは、界面は、界面が分析されるべき流体と接触した後にすすがれ、吸着された被分析物の量は、すすぎの後に決定される。吸着された被分析物の量の決定はまた、すすぎの前および/またはすすぎの間に実施され得ることに留意されたい。好ましくは、吸着された被分析物の量は、吸着質の(見かけの)量を時間の経過とともに監視するように、吸着プロセスおよびすすぎの間に連続的または繰り返し決定される。
【0031】
好ましくは、閉じ込め効果を完全に活かすために、ナノスケール領域の平均直径と被分析物のサイズとの比は、3から50の範囲、好ましくは3から30の範囲、より好ましくは3から20の範囲、さらに好ましくは5から15の範囲、なおもさらに好ましくは5から12の範囲内にある。この文脈では、被分析物のサイズは、その最大の寸法(直径)に対応すると考えられる。被分析物がより大きな化合物の一部である場合、たとえば、より大きな粒子または分子に付着している場合、それは上記の比の計算の価値がある化合物の最大の寸法である。
【0032】
センシングは、静的条件(本質的に流体の流れがない)または動的条件(流体が流れている)で実施され得る。感度は、静的な条件下で高められ得る。
【0033】
次に、例として、本発明の好ましい非限定的な実施形態は、添付図面を参照しつつ詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】Auナノ粒子の堆積前(a)、c))および堆積後(b)、d))の非パターン形成およびパターン形成QCMチップ表面のAFM画像、さらにはそれぞれb)およびd)と同じ表面のSEM顕微鏡写真(e)、f))を示す図である。
図2図1のa)、b)、c)、d)にそれぞれ示されている線に沿った高さプロファイルを表した図である。
図3】金ナノ粒子吸着前後のナノドットの高さの分布を示す説明図である。
図4図4(a)は、QCMによって測定されるような、パターン形成センサー表面と非パターン形成センサー表面上の0.85mM濃度の懸濁液からの金ナノ粒子の吸着の密度の比較を示す図である。図4(b)は、QCMによって測定されるような、パターン形成センサー表面と非パターン形成センサー表面上の0.85mM濃度の懸濁液からの金ナノ粒子の反応速度論の比較を示す図である。図4(c)は、QCMで観察したナノ粒子密度がSEMで得られたものに対応していることを示す図である。
図5】懸濁液濃度の関数としての吸着密度を表すグラフである。
図6】X軸に均等目盛りを付けた図5のグラフである。
図7】SEMで得られた金コーティング基板上のシリカナノドームのパターン(左側)、AFMラインスキャンで得られたナノドームの高さプロファイル(右下)、およびパターンの高解像度詳細(右上)を示す図である。
図8】(A)SiND間の金領域がPEGで不動態化されたナノパターン形成センサー表面、(B)非パターン形成対照表面(Siから作られている)、および(C)SiND間のシリコン領域の不動態化なしのSi上にSiNDを伴うナノパターン形成比較表面に対するQCM-Dによって測定されたBSA吸着曲線を示す図である。
図9】ナノパターン形成界面(上の曲線)および均一なSi界面(下の曲線)におけるBcl-2抗体の吸着質量(QCM-Dで測定)の漸進的変化を示す図である。
図10】濃度の関数としての飽和状態における吸着について利用可能な表面積によって正規化された流動下の堆積したAuナノ粒子の質量密度を示す図である。
図11】吸着および対応する表面被覆について利用可能な表面によって正規化された図10の吸着されたAuナノ粒子の密度を示す図である(ジャミング限界のパーセンテージとして)。
図12】異なる非パターン形成界面および異なる充填率を有する2つのナノパターン形成界面に対する飽和におけるAuナノ粒子の吸着質量を示す図である(利用可能な表面積による正規化なし)。
図13】利用可能な表面積による正規化の後の、図12の吸着質量を示す図である。
図14】ナノパターン形成QCMセンサー界面の概略斜視部分断面図である。
図15】生体分子に特異的な捕捉抗体を担持するナノドームの二元パターンを含むアフィニティバイオセンサーの概略図である。
図16】非パターン形成金表面と比較した、ナノドームでパターン形成された表面上のヤギ抗マウスIgG抗体(PBS中24μg/mL)の吸着を示すグラフである。
図17】非パターン形成参照試料と比較した、図15のアフィニティバイオセンサー上の標的生体分子の吸着を示すグラフである。
図18図15のアフィニティバイオセンサーの捕捉抗体に結合した標的生体分子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図14は、流体中の被分析物を感知するためのQCMセンサーの詳細を示している。QCMセンサーは、流体と接触し、被分析物を吸着するための界面12を有する。界面は、被分析物が吸着され得るナノスケール領域14と、不動態化領域16とから構成される。ナノスケール領域14は、海の中の島のように不動態化領域16によって互いに隔離されている。不動態化のおかげで、界面上の被分析物の吸着は、ナノスケール領域14に閉じ込められる。ナノスケール領域は、5から200nmの直径を有する。好ましくは、直径は、被分析物のサイズの数倍(たとえば、最大20倍)にしか相当しない。ナノスケール領域のサイズおよび密度は、ナノスケール領域が一緒になって、界面12全体の表面積の少なくとも10%に相当する表面積を有するように選択される。
【0036】
(実施例)
(実施例1)
QCMセンサー表面上の金ナノ粒子の吸着
ナノスケール領域上の選択的吸着を可能にする二元ナノパターンは、QCMチップ表面上の自己組織化共重合体コロイドテンプレートを使用して調製され得る。大面積にまたがるナノスケール特徴の高密度パターンを作成することを可能にするこのアプローチの詳細は、たとえば、Yap,F. L.、Thoniyot,P.、Krishnan,S.、Krishnamoorthy,S.による論文「Nanoparticle, Cluster Arrays for High-Performance SERS through Directed Self-Assembly on Flat Substrates and on Optical Fibers」、ACS Nano 2012年、6(3)、およびNurmawati,M. H.、Ajikumar,P. K.、Renu,R.、Valiyaveettil,S.、「Hierarchical Self-Organization of Nanomaterials into Two-Dimensional Arrays Using Functional Polymer Scaffold」、Adv. Funct. Mater. 2008年、18(20)、3213~3218頁に記載されている。
【0037】
表面上の有機共重合体テンプレートは、表面上の明確なナノスケール特徴への閉じ込められた選択的吸着を可能にするパターンに変換され得る。サイズ(高さ、直径、およびピッチ)の標準偏差が低いテンプレートを選択することによって、特徴(ナノスケール領域)の寸法および特徴密度(単位面積当たりの特徴の数)は、比較的均一になる。実用的な実験では、異なる幾何学的変数(高さ、直径、およびピッチ)に対する標準偏差が5~15%下がることの実証が可能であった。これは、ナノスケール領域の表面積が容易に計算され、これをQCM測定と相関することを可能にする。
【0038】
具体的には、表面上のポリスチレン-ブロック-ポリビニルピリジン(PS-b-PVP)逆ミセルのアレイは中性pHの水に浸され、逆ミセルのコア内に存在する塩基性ピリジル基により、正電荷のアレイを生成した。このプロセスの詳細は、Meiners,J. C.、Quintel-Ritzi,A.、Mlynek,J.、Elbs,H.、Krausch,G.による論文「Adsorption of Block-Copolymer Micelles from a Selective Solvent」、Macromolecules 1997年、30(17)、4945~4951頁に記載されている。正に帯電した特徴は、静電気引力により、負に帯電したクエン酸安定化金ナノ粒子を特徴上に選択的に引き寄せることができる。
【0039】
このアプローチは、非パターン形成正帯電対照表面と比較したときに、結果として得られる特徴密度および反応速度論に対する金ナノ粒子(直径10.9±1.7nm)の吸着を閉じ込める影響を研究するために使用された。吸着密度および反応速度論は、QCM-Dを使用して測定された。金コーティングQCMチップは、PS-b-P2VP(Polymer Source Inc.(カナダ、モントリオール所在)から入手したポリ(スチレン-ブロック-2-ビニルピリジン)、248 KDa-b-195 KDa、mキシレン中0.5mg/mL)の逆ミセル膜でコーティングされた。アレイの周期性は、蒸発速度によって制御することができ、次いで、スピンコーティングの速度によって変化させることができる。次いで、コーティングされた表面は、Plasmatherm 790(米国フロリダ州セントピーターズバーグ所在)で20Wおよび15sccmのガス圧力を使用して、酸素プラズマ雰囲気中で20~30秒間、反応性イオンエッチング(RIE)に曝された。次いで、このようにして調製された界面上の金ナノ粒子の吸着が測定された。
【0040】
図1は、金ナノ粒子の堆積前(a)、c))および堆積後(b)、d))の非パターン形成(a)、b))およびパターン形成(c)、d))のQCMチップ表面のAFM画像を示している。図1e)および図1f)は、それぞれb)、d)と同じ表面のSEM顕微鏡写真である。ナノパターン形成表面上へのナノ粒子の吸着の終点は、SEMおよびAFMを使用して測定され、逆ミセルの特徴上への選択的吸着が起こることが確認された。
【0041】
図2は、図1のa)、b)、c)、d)にそれぞれ示されている線に沿った高さプロファイルを示している。図3は、金ナノ粒子吸着前後のドットの高さの分布を例示している。これを見ると、ドットの平均高さは、ナノ粒子のほぼ平均直径だけ増大することがわかる。
【0042】
図4は、QCMによって測定されているように、パターン形成センサー表面と非パターン形成センサー表面上の0.85mM濃度(1リットル当たり0.85ミリモルの金ナノ粒子)の懸濁液からの金ナノ粒子の吸着の密度(a)および反応速度論(b)の比較を示している。QCMセンサー周波数の減少は、Sauerbreyの式を使用して質量に変換された。図4(a)の曲線は、それぞれの活性表面積に対して正規化された。図4(b)の曲線は、吸着質量を、ナノ粒子の個数(NP)に達するようにナノ粒子1個あたりの(推定)質量で除算することによって、またそれぞれの飽和構成に正規化することによって得られた。
【0043】
図4(c)は、QCMによって観察されたナノ粒子密度が、SEMで得られた密度と妥当な範囲で一致していることを示している。これらの結果は、非パターン形成対照表面(均一な自己組織化4-アミノチオフェノール(4-ATP)単層または均一な自己組織化4-ビニルピリジン(4-VP)単層で覆われた金表面)上で得られた結果と比較された。
【0044】
パターン形成表面について得られた吸着曲線は、吸着に利用可能な活性表面領域(すなわち、ナノドームの表面積)に対して正規化された。正規化係数は、各ナノドームの表面積、およびAFMおよびSEM測定から得られるようなナノドームの密度(単位面積当たりのナノドーム数)から得られた。ナノドーム1個あたりの表面積は、ナノドームを半球としてモデル化し、高さをAFMから、直径をSEMから測定することによって得られた。
【0045】
ナノパターンは、ナノドーム1個あたり9800nmの表面積で、33ナノドーム/μmを提示した。したがって、ナノドームの表面積は、全表面積の約33%を占めた。
【0046】
Table 1(表1)は、パターン形成界面および非パターン形成(均一な)対照表面上の吸着Auナノ粒子について得られた結果をまとめたものである。QCM(吸着曲線)から導出された値は、「(QCM)」とマークされ、SEMによってクロスチェックされた。Table 1(表1)では、SEMに基づく対応する値は、「(SEM)」とマークされている。
【0047】
【表1】
【0048】
ナノパターン形成により、飽和状態でのナノ粒子の密度は188%増加することができた(SEM顕微鏡写真のカウントに基づく:188%=2350/1250)。さらに、95%(飽和値に関して)の被覆率が、パターン形成表面において85分で達成されたが、非パターン形成のカウンターパートでは130分かかっており、吸着の反応速度論の明らかな増大を確認した。
【0049】
さらに、ナノパターン形成センサー界面は、非パターン形成のものに比べて一桁低い濃度で感度があることが観察された(図5および図6参照)。線形領域における、表面密度対被分析物濃度の変化は、ナノパターン形成界面に対して11.2ng/(μM・cm)の傾きを有していたが、非パターン形成表面に対しては傾きはわずか2.8ng/(μM・cm)であった。これは、ナノパターンにより、感度が6倍向上したことを表す。ナノパターンは、そのより低い表面被覆率(例では、約33%)にもかかわらず、均一な表面と同等かそれ以上のナノ粒子密度に達する。
【0050】
センサー界面へのナノ粒子吸着がランダム逐次吸着(RSA)プロセスによってモデル化されると仮定した場合、最大表面被覆率(理論限界、「ジャミング限界」)は54.7%である。飽和状態でのナノ粒子被覆率は、ナノドームでは28%(ジャミング限界の51%に対応する)に近づいたが、非パターン形成界面の場合、ナノ粒子被覆率はわずか11%(ジャミング限界の19%に対応する)に相当した。
【0051】
(実施例1a)
流動下のQCMセンサー表面上の金ナノ粒子の吸着
実施例1の実験は、静的条件の下で行った。実験は、流動条件の下で繰り返された。実施例1で説明されているように、QCMチップ上に二元パターンが調製された。金ナノ粒子に対して親和性を有するナノスケール領域は、全界面表面積の33%に相当する表面積を有していた。金ナノ粒子は、85nMから0.85mMの濃度を有する懸濁液から析出された。懸濁液の流量は、10μL/分(マイクロリットル/分)に設定され、センサー表面より上にあるチャンバーは40μLの容積を有し、温度は室温で一定に保たれた。金ナノ粒子の析出は、QCM-Dによって監視された。図10は、濃度の関数としての飽和状態における吸着について利用可能な表面積によって正規化された析出質量密度を示している。非パターン形成表面に比べて著しく高い吸着密度も、流動の下で得られる可能性があることがわかる。この結果は、マイクロ流体デバイスが本発明の恩恵を受け得ることを示している。図11は、図10に基づいており、吸着および対応する表面被覆について利用可能な表面によって正規化された吸着ナノ粒子の密度を示している(ジャミング限界のパーセンテージとして)。
【0052】
(実施例1b)
ナノパターンの充填率の影響
金ナノ粒子の吸着のQCM-D測定は、異なる充填率を有するナノパターン形成センサー界面を使用して前の実施例と同様に行われた。第1の二元パターンは、実施例1および1aで使用されたものに対応しており、33%の充填率を有していた。第2のナノパターンは、61%の充填率を有していた、すなわち、金ナノ粒子に対して親和性を有するナノスケール領域は、第1の二元パターンのものと同じサイズであったが、領域の密度は増大した。充填率が増大したときに、全体的な吸着(センサー界面全体を考慮して)が増大することが観察された。親和性を有する領域内の吸着密度に対して充填率の影響があるかどうかを理解するために、吸着質量は、吸着に利用可能な表面積によって正規化された。有意な差異は認められず、これは各特徴内の吸着ナノ粒子の密度が試験された充填率について同じままであることを示している。吸着密度に対するナノパターンのプラスの影響は、充填率が61%まで増大したときも残っている。これは、ナノパターン上への優先的な吸着の効果を損なうことなく、「不活性」領域(吸着が起こらない領域)を減らすことを可能にするので、注目すべき結果である。
【0053】
図12は、利用可能な表面積による正規化なしの、異なる非パターン形成界面および2つのナノパターン形成界面に対する飽和における吸着質量を示している。33%の充填率を有するナノパターンは、「D0.5」のラベルを付けられ、61%の充填率を有するナノパターンは、「D1.4」のラベルを付けられる。D0.5ナノパターンのフットプリント(基板に関して親和性を有する領域の垂直投影)が16%に相当することに注目することは価値がある。61%の充填率を有するナノパターン形成界面上の吸着質量全体は、均一な界面上に吸着された質量をも上回ることがわかる。図13は、利用可能な表面積による正規化の後の、飽和状態の吸着質量を示している。
【0054】
(実施例2)
タンパク質吸着(BSA)
実施例1は、ナノ粒子の静電気付着に対するナノスケールの閉じ込めの効果を示しているが、そのような効果は、異なるタイプの吸着事象で得られ得ることが証明される必要があった。この例では、2つの異なる生体分子、ウシ血清アルブミン(BSA)および免疫グロブリン(IgG)の物理吸着に対するナノスケールの閉じ込めの影響が調査された。
【0055】
第1のステップにおいて、生体分子吸着をセンサー界面の事前画成された領域に閉じ込めることができるナノパターンが作製された。
【0056】
シリカおよび金の使用によって二元パターンが得られたが、この一連の経験に対する非パターン形成対照は、裸のシリカ表面であった。
【0057】
QCMチップの金表面上で、結果として逆ミセルの六角格子充填をもたらすPS-b-PVP自己組織化を利用することによって、硬質物質コントラストパターン、すなわち、金表面上のシリカナノ領域が生成された。PS-b-PVPコーティング金表面は、オルトけい酸テトラエチル(TEOS)雰囲気に6時間さらすと、ケイ酸塩が逆ミセル中に拡散し、逆ミセルパターンのイメージであるシリカナノ領域の六角格子が得られた。このメカニズムは、Cha,J. N.、Zhang,Y.、Philip Wong,H. S.、Raoux,S.、Rettner,C.、Krupp,L.、Deline,V.、「Biomimetic Approaches for Fabricating High-Density Nanopatterned Arrays」、Chem. Mater. 2007年、19(4)、839~843頁においてより詳細に説明されている。TEOSの加水分解は、ミセルの求核性コア(すなわちビニルピリジンドメイン)で起こり、本質的に外側のポリスチレンシェルを修飾せず、したがって後者は酸素プラズマで除去することができる。生成されたシリカナノドーム(以降、SiND)のトポグラフィーおよび上面図が図7に示されている。SiNDの高さは35±5nmに相当し、直径は40nm±4.3nmに相当することが分かった。
【0058】
BSAおよびIgGの物理吸着を防ぐために、SiND間の金領域は、チオール基によって金表面に結合したタンパク質耐性ポリエチレングリコール(PEG)部分で選択的官能基化される。タンパク耐性PEGコーティングの効率が試験され、80%に達することが判明した。効率は
【0059】
【数1】
【0060】
として測定され、
BSA on PEGは、タンパク質耐性分子(PEG)で官能基化された表面上の吸着BSA質量である。mBSA on Auは、規則正しい金表面(標準)上の吸着BSA質量である。不動態化の効率は、上で測定されているように好ましくは少なくとも80%である。金領域を不動態化することによって、生体分子の吸着は、この例では界面の約17%(その3D形状を考慮して)を占めるSiND上で(ほぼ排他的に)生じざるを得ない。
【0061】
図8は、次のものに対するQCM-Dによって測定されるBSA吸着曲線を示している。
A.SiND間の金領域がPEGで不動態化されているナノパターン形成センサー表面、
B.非パターン形成対照表面(Siから作られる)、および
C.SiND間のシリコン領域を不動態化しない、Si上のSiNDを有するナノパターン形成比較表面。
図8の吸着質量は、吸着にそれぞれ利用可能な表面積を考慮するように正規化されている。
【0062】
BSAによる吸着試験は、以下のように行った。BSAがPBS(リン酸緩衝生理食塩水)1mg/mLに溶解され、流速10μL/分で1時間流された(図8のフェーズIおよびフェーズII)。第2のステップにおいて、PBSが60分間流され、過剰のBSAを除去した。非パターン形成対照上のBSAの吸着(図8、曲線B)は、400ng/cmの吸着密度を与えているが、ナノパターン形成センサー表面上の吸着密度は、閉じ込め条件(図8、曲線A)で180ng/cmになる。SiNDがセンサー界面の約17%を占めていることを考慮すると、非パターン形成対照表面の値に基づき、また不動態化層の不完全性を考慮すると、測定された180ng/cmではなく、65ng/cmの吸着密度を予期していたであろう。したがって、二元ナノパターンは、吸着密度に関して190%の増分を引き起こした。図8の曲線Cは、不動態化なしのシリコン基板上のSiND上のBSAの吸着を示している。SiNDによる平坦な基板に関する表面積増大を考慮した場合、非パターン形成対照表面と非常によく似た吸着挙動であることが分かる。これは、被分析物に対する親和性を有するナノスケール領域、およびそれらを取り囲む不動態化領域を有する二元パターンを有することの重要性を示している。すすぎ段階(図8、フェーズIII)における吸着質量の見かけの減少は、フェーズIおよびIIにおいてBSAが緩く結合しているか、またはセンサー表面に対する短い距離のところに存在していることによって説明され得る。この「見かけの」質量は、流れが緩衝液に切り換えられると消失する(フェーズIII)。
【0063】
予想される質量は、パターンが考察され、
exp=munpattfeature
のように計算されたときに現れる。
【0064】
unpattは、非パターン形成対照上に吸着する質量であり、Sfeatureは、パターン形成対照上の吸着に利用可能な表面である。次いで、密度に関する増強のパーセンテージは、
【0065】
【数2】
【0066】
のように計算される。
【0067】
増強のパーセンテージは、上記のように表され、mpattは実験的に得られた質量であり、munspecは不動態化領域上に選択的でなく蓄積された質量であり、Sbckは不動態化された表面積であり、mexpは上で定義されているような予想された質量である。
【0068】
(実施例3)
Bcl-2捕捉抗体の物理吸着
実施例2と同様に、ナノパターン形成QCMセンサー界面が調製された(金コーティング基板上のシリカナノドーム、露出した金表面はアンチファウリング層で不動態化されている)。比較のために、裸のシリカ表面を有するQCMチップが、同じ実験を受けた。
【0069】
ヒト全Bcl-2捕捉抗体が、PBS中で再構成され、次いで、27μg/mLに希釈され使用された。Bcl-2捕捉抗体は、10μL/分で30分間流れによって試験表面へ移動され、次いで20分間に緩衝液に切り替えられた。図9は、ナノパターン形成界面(上の曲線)および均一なSi界面(下の曲線)における吸着質量(QCM-Dで測定)の漸進的変化を示している。抗体は、フェーズIIで注入された。フェーズIIIの間、システムは緩衝液ですすがれた。
【0070】
この例では、性能指標は、実施例2において上で報告されているのと同じであった。munpattは450ng/cmに等しかった。mpattは185ng/cmであった。タンパク質耐性層における同様の効率(85%の効率)を考慮した場合、予想される質量は125ng/cmに等しい。次いで、増強のパーセンテージは180%のところにある。タンパク質耐性層の効率は、munspecであり、
【0071】
【数3】
【0072】
のように計算され、
unpattは非パターン形成対照上の吸着質量であり、manti-foulingはアンチファウリング部分で特異的に官能基化され、Bcl-2に対して試験された対照上に吸着された質量である。
【0073】
(実施例4)
図15は、ナノドーム22の二元パターンを含むアフィニティバイオセンサー20の概略を示している。ナノドーム22の間の領域24は、不動態化層26、たとえば、メトキシポリエチレングリコールチオール(SH-PEG-CH)層で覆われている。ナノドーム22は、生体分子(たとえば、マウスIgG)に対する親和性を有する、捕捉抗体28(たとえば、ヤギ抗マウスIgG)を担持している。
【0074】
ナノドームは、PS-b-PVP自己組織化によって基板30(金コーティングを有するQCMセンサー)上に作製され、その結果、逆ミセルの六角格子充填をもたらした。次いで、表面は、酸素プラズマ雰囲気中で20~30秒間、反応性イオンエッチング(RIE)に曝された。次いで、得られた表面は、蒸着プロセスを使用して金の薄層32でコーティングされた。次いで、金層32は、不動態化層でコーティングされた。
【0075】
ナノドーム22上の不動態化層の除去は、最初に表面全体をPMMAでコーティングし、次いで酸素プラズマ雰囲気中でRIEの別のステップを行うことによってなされた。PMMA層の厚さはナノドーム間で最も大きいので、その領域内では、不動態化層は、その完全なエッチングまでPMMAによって保護されたままである。その結果、金コーティングは、ナノドーム上で露出されるが、ナノドーム22の間では不動態化層26で覆われたままである。
【0076】
この例では、33特徴数/μmの特徴密度が達成され、全界面表面の約21%の吸着に利用可能な表面が得られた。
【0077】
図16は、非パターン形成金表面と比較した、ナノドームでパターン形成された表面上のヤギ抗マウスIgG抗体(PBS中24μg/mL)の吸着を示している。その結果得られたバイオセンサー20は、図15に概略として示されているものである。
【0078】
図15のアフィニティバイオセンサーは、マウスIgG(PBS中25μg/mL)に対して試験された。対応する吸着プロットは、非パターン形成参照サンプルと比較して図17に示されている。図18は、捕捉抗体28に結合した標的分子34を例示している。
【0079】
実施例で使用された材料
金コーティング水晶振動子(公称周波数5MHz、ATカット)は、Quartzpro(スウェーデン、イェルフェッラ所在)から入手され、アセトンおよびエタノールで徹底的に洗浄し、その後Jelight Company Inc.(米国、カリフォルニア州アーバイン所在)から入手されたUV-オゾンクリーナーで30分洗浄した後に採用された。
【0080】
ポリ(スチレン-ブロック-2-ビニルピリジン)(PS-b-P2VP)(248KDa-b-195KDa)は、Polymer Source Inc(カナダ、モントリオール所在)から入手された。
【0081】
4-アミノチオフェノール(4-ATP)、4-チオールピリジン(4-TP)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、および四塩化金(III)酸(HAuCl・3HO)は、Sigma-Aldrichから購入された。
【0082】
分光学的グレードのm-キシレン、エタノール、およびアセトンもSigma-Aldrichから入手された。
【0083】
ウシ血清アルブミン(BSA)もまたSigma-Aldrichから購入された。
【0084】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ヒト全Bcl-2抗体は、R&D System(米国、ミネソタ州ミネアポリス所在)から購入された。
【0085】
異なる長さおよびサイズのポリエチレングリコールチオール(PEG-thiol)は、BroadPharm(米国カリフォルニア州サンディエゴ所在)から入手された。これは-OH官能基を有するPEG3(Mw=166.2)および-COOH官能基を有するPEG12(Mw=634.8)である。
【0086】
実施例で使用された方法
非パターン形成対照は、金コーティング水晶振動子を4-ATP溶液(エタノール中5mM)に典型的には16時間以上浸漬して調製され、次いで、洗浄され、送風で乾燥させられた。
【0087】
ミセルテンプレートは、Meiners,J. C.、Quintel-Ritzi,A.、Mlynek,J.、Elbs,H.、Krausch,G.による論文「Adsorption of Block-Copolymer Micelles from a Selective Solvent」、Macromolecules 1997年、30(17)、4945~4951頁で報告されているプロセスによって得られた。簡単に言うと、PS-b-P2VP (m-キシレン中0.5mg/mL)はQCMチップ上にコーディングされた。アレイの周期性は、蒸発速度によって制御され、次いで、スピンコーティングの速度によって変化させられた。次いで、表面は、Plasm atherm 790(米国フロリダ州セントピーターズバーグ所在)を使用し、20Wおよび15sccmのガス圧力を使用して、酸素プラズマ雰囲気中で20~30秒間、反応性イオンエッチング(RIE)に曝された。
【0088】
還元剤としてクエン酸ナトリウムを使用して、直径10nmの金ナノ粒子が形成された。
【0089】
金基板上のシリカ粒子:PS-b-P2VPパターンが、特定の表面上に形成され、次いで、TEOSおよび水(各1mL)の存在下、60℃のオーブンで、デシケーターに入れて異なる時間(1~24時間)放置される。試料がデシケーターから取り出された後、これらはOプラズマに3分間暴露され、シェルを構成するポリマーを完全に除去することを確実にし、元のテンプレートのものと一致する周期性を有するSiO粒子アレイを得る。
【0090】
タンパク質物理吸着のための表面処理:金基板上のシリカ粒子は、上で説明されているように得られた。次いで、表面は、ポリエチレングリコールチオール溶液(水中5mM)に、シリカ粒子によって占有されていない試料表面がPEG分子に取られてタンパク質耐性にされるまで4時間浸漬された。
【0091】
タンパク質物理吸着:生体分子を流れに導入する前に、システムは、良好なベースラインが達成されるまで可変時間で安定化させられた。ウシ血清アルブミン(BSA)が、PBS(1%)中に溶解され、1時間かけて表面に物理吸着させ、次いで、表面は、安定した信号が得られるまで緩衝液ですすがれた(最大60分間緩衝液が流れる)。典型的な流速は10μL/分であった。ヒト全Bcl-2捕捉抗体が、PBS中で再構成され、次いで、27μg/mLに希釈され使用された。Bcl-2捕捉抗体は、10μL/分で30分間動かされ、次いで、流れは20分間緩衝液に切り換えられた。
【0092】
パターンの特性評価:ナノパターンは、Innova、Bruker system(フランス、パリ所在)およびNanosensors(スイス、ヌーシャテル所在)からのアルミニウムコーティングシリコンプローブ(10~130N/m)を使用してタッピングモードで原子間力顕微鏡により調査された。走査電子顕微鏡法による顕微鏡写真は、典型的には加速電圧2~5kV、ビーム電流25pAで、Helios 650 FIB-SEM(米国オレゴン州ヒルズバロ所在)を使用することによって得られた。QCM測定は、Biolin Scientific AB(スウェーデン、ヨーテボリ所在)から入手された散逸モジュール付き水晶振動子マイクロバランス(QSense Explorer、QCM-D)を用いて行われ、被分析物と基板との間の相互作用のために40μLの容積を有するフローモジュールと組み合わせて使用された。表面被覆率に関する値は、Sauerbreyの式、Δm=-CΔf/nを使用することによって抽出され、Cはセンサー特性に関する定数(C=17.7ng/(Hz/cm))であり、nは奇倍振動数(提示されたすべてのデータに対してn=9が取られた)であり、Δfは振動数シフトである。吸着質量の計算の認容性は、上で説明されているように、センサーとその上にある層が剛体であるときにのみ可能である。数値の項において、要求条件は、ΔD/(Δf/i)<0.4・10-6Hz-1である。この要求条件は、本明細書に提示された実験全体を通して満たされた。
【0093】
特定の実施形態および実施例が本明細書において詳細に説明されているが、当業者であれば、それらの詳細に対する様々な修正形態および代替形態が本開示の全体的な教示に照らして開発されることが可能であることを理解するであろう。したがって、開示されている特定の配置構成は、例示することのみを意図しており、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲は付属の請求項の全範囲およびそのすべての等価物に対して与えられるものとする。
【符号の説明】
【0094】
12 界面
14 ナノスケール領域
16 不動態化領域
20 アフィニティバイオセンサー
22 ナノドーム
24 領域
26 不動態化層
28 捕捉抗体
30 基板
32 金の薄層、金層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18