(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】温度調節装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20240827BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240827BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/643
(21)【出願番号】P 2022512742
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(86)【国際出願番号】 AT2020060296
(87)【国際公開番号】W WO2021035262
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】523044389
【氏名又は名称】ジョン・ディア・エレクトリク・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】メンツル・キリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドーブシュ・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトシュッツ・ゲルハルト
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-133225(JP,A)
【文献】特開2000-223099(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/617
H01M 10/613
H01M 10/6556
H01M 10/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのモジュールに統合された個々のバッテリセル(2)を有する温度調節装置であって、これらのバッテリセル(2)は、温度調節流体が主流方向(6)に貫流する流路(3)内に配置されている当該温度調節装置において、
前記バッテリセル(2)の被覆部(9)から離間した流れガイド面(8)が、一群の複数の前記バッテリセル(2)のそれぞれのバッテリセル(2)ごとに設けられていて、前記流れガイド面(8)は、前記被覆部(9)に対してほぼ平行なそれぞれ1つの流入口部(10)及び流出口部(11)を有すること、及び
前記被覆部(9)と前記拡散部(12)との間の間隔は、前記被覆部(9)と前記流入口部(10)又は前記流出口部(11)との間の間隔よりも5~30%だけ大きいように、前記被覆部(9)に対向し且つこの被覆部(9)に対して凹まされた拡散部(12)が、前記流入口部(10)と前記流出口部(11)との間に配置されていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
互いに隣接する複数の前記バッテリセル(2)の前記流れガイド面(8)は、分流器(7)を形成することを特徴とする請求項
1に記載の温度調節装置。
【請求項3】
一群の複数の分流器(13)が、前記流路(2)の内壁(14)に対してほぼ平行に延在する別の流れガイド面(15)を形成することを特徴とする請求項
2に記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記流路(2)は、主流方向(6)に互いに対向する2つの縁部にそれぞれ少なくとも2つの流体接続部(4,5)を有し、
少なくとも1つのバッテリセル(2)が、1つの縁部の前記少なくとも2つの流体接続部(4,5)間に配置されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の温度調節装置。
【請求項5】
1つの流れガイド要素(16)が、1つの流体接続部(4,5)とこの流体接続部(4,5)に隣接する2つのバッテリセル(2)との間に設けられていること、及び
前記流体接続部(4,5)に向かって凸状に形成された1つの流れガイド面(17)を有することを特徴とする請求項
4に記載の温度調節装置。
【請求項6】
前記流体接続部(4,5)は、主流方向(6)に扁円された楕円形の横断面を有する請求項
4又は
5に記載の温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのモジュールに統合された個々のバッテリセルを有する温度調節装置に関する。これらのバッテリセルは、温度調節流体が主流方向に貫流する流路内に配置されている。
【背景技術】
【0002】
様々な構成のバッテリモジュール用の温度調節装置が、従来の技術から公知である。当該温度調節装置の場合、個々のバッテリセルが、流路内に配置されている(独国特許出願公開第102015013377号明細書)。この場合、温度調節流体が、当該流路を主流方向に一群の複数の第1流体接続部から一群の第2流体接続部まで貫流する。しかしながら、特に円柱状のバッテリセルの場合に、複数の異なる流速が、当該流路内のこれらのバッテリセル間で発生することが欠点である。その結果、これらのバッテリセルと当該温度調節流体との間の均一な熱交換が阻止される。この問題は、これらのバッテリセルが非常に密に装填されている場合に増大する。何故なら、小さい無駄容積でさえも、これらのバッテリセルの周りの効率的な通流を不可能にするのに十分であるからであり、したがって同時に温度調節流体量を少なくしつつ、非常に動的な温度調節を実行することを不可能にするのに十分であるからである。しかしながら、出力揺動時、並びに充電時及び放電時でさえも、これらのバッテリセルの長い寿命にとっては、これらのバッテリセルを狭い温度範囲内で稼働させ、小さい温度差だけをバッテリモジュール内で許容することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102015013377号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、複数のバッテリセルの均一な装填密度の場合に、少ない温度調節流体量にもかかわらず、温度調節装置の温度調節を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、当該バッテリセルの被覆部から離間した流れガイド面が一群の複数の当該バッテリセルのそれぞれのバッテリセルごとに設けられていて、当該流れガイド面が当該被覆部に対してほぼ平行なそれぞれ1つの流入口部及び流出口部を有し、当該流入口部と当該流出口部と当該被覆部とに対して凹まされた拡散部が当該流入口部と当該流出口部との間に配置されていることによって解決される。本発明は、公知である複数のバッテリセルの周りを通流するという従来の技術の場合に、温度調節流体とこれらのバッテリセルとの間の完全な熱交換が実行され得ることなしに、選択的で且つ短期間の冷却作用だけが発生するという認識に基づく。それ故に、本発明によれば、当該バッテリセルの被覆部の周りが、均一に且つより長く通流されることによって、温度調節流体用のガイド路が、これらのバッテリセルから離間した1つの流れガイド面とこれらのバッテリセルの少なくとも1つの被覆部との間に形成される。この場合、当該拡散部は、淀み点が当該温度調節流体に対して発生しなく、当該ガイド路に沿った圧力損失が最小限にされることに寄与する。他方では、当該流れガイド面は、適切な配置の場合に当該流路内の無駄容積を減少させる。その結果、より動的な温度調節が可能になる。この場合、特に好適な実施の形態では、温度調節流体が、バッテリセルの被覆部に直接に当たるように通流する。これは、当該バッテリセルの被覆部が、流れガイド面と同様に当該温度調節流体に直接に接触することを意味する。
【0006】
被覆部と拡散部との間の間隔が、被覆部と流入口部又は流出口部との間の間隔よりも5~30%だけ大きい場合に、非常に効率的な冷却が達成され得ることを、流れのシミュレーションが実証している。淀み点と当該淀み点に伴う圧力損失との十分な減少は、特に、被覆部と拡散部との間の間隔が被覆部と流入口部又は流出口部との間の間隔よりも5~15%だけ大きい場合に達成され得る。さらに、1つの流路内の複数の間隔比が互いに違ってもよいことが実証されている。したがって、流路の縁領域内の被覆部と拡散部との間の間隔と、被覆部と流入口部又は流出口部との間の間隔との比が、当該流路の中央内の当該比よりも大きいことが提唱される。特に円柱状のバッテリセルを使用する場合、被覆部と拡散部との間の間隔は、1.25mm~2.25mmの範囲内にあり得て、特に約1.75mmであり得る一方で、被覆部と流入口部又は流出口部との間の間隔は、1mm~2mmの範囲内にあり得て、特に約1.6mmであり得る。
【0007】
可能な限り簡単な構造で、流体の流れを分岐させるだけではなくて、流体をバッテリセルに均一に当てるため、互いに隣接する複数のバッテリセルの複数の流れガイド面が、分流器を形成することが提唱される。当該分流器が、当該互いに隣接する複数のバッテリセル間に、これらの流れガイド面とこれらのバッテリセルとの間に形成されるガイド路を除いた中間空間を占有することを、当該提唱は意味する。その結果、さもなければ存在する無駄容積が減少され得る。したがって、複数の円柱状のバッテリセルの場合でさえも、当該個々のバッテリセルを高密度な円柱の集合体状に配置したときに、3つの辺から成るほぼ星形の横断面を有する複数の分流器が得られる。
【0008】
試験結果として、一群の複数の分流器が、流路の内壁に対してほぼ平行に延在する別の流れガイド面を形成することによって、当該流路の排気挙動が改良され得ることが実証されている。この場合、上記の分流器の作用に加えて、流路内に最初に存在する空気量が減少され、排気時により効率的に排気される。当該別の流れガイド面と当該内壁との間の間隔が、残りの流れガイド面の流入口部又は流出口部と隣接するそれぞれのバッテリセルの被覆部との間の間隔よりも大きい場合に、当該排気はさらに改善され得る。
【0009】
冷却流体が、全ての流路横断面にわたって均一な流速でガイド路内に流入され得るように、当該流路が、主流方向に互いに対向する2つの縁部にそれぞれ少なくとも2つの流体接続部を有することが提唱される。この場合、少なくとも1つのバッテリセルが、1つの縁部の当該少なくとも2つの流体接続部間に配置している。複数の流体接続部のこの配置によって、当該主流方向に対して直角方向の速度の違いが減少され得るだけではなくて(これにより、全てのバッテリセルの均一な熱交換がより良好に実現され得る)、当該温度調節流体の流入方向に対して法線方向の局所的に高い流速が、1つの縁部の当該少なくとも2つの流体接続部間に取り付けられた1つのバッテリセルを迅速に冷却するために使用され得る。この場合、1つのバッテリセルを少なくとも2つの流体接続部間に配置することは、このバッテリセルの主流方向に延在する横断面の少なくとも一部が、これらの流体接続部の高さにあることを意味する。温度調節装置の特に好適な実施の形態では、これらの流体接続部の流入方向が、当該主流方向に対して法線方向に、例えば円柱状のバッテリセルの長手方向に延在する。
【0010】
1つの流体接続部に向かって凸状に形成された流れガイド面を有する1つの流れガイド要素が、この流体接続部とこの流体接続部に隣接する2つのバッテリセルとの間に設けられていることによって、温度調節流体のより均一な分布が達成される。この場合、この流れガイド面は、当該流れガイド要素の後ろに流入する温度調節流体の量を制限する流れ抵抗を形成する。上記のように、2つの流体接続部が、1つのバッテリセルに隣接する場合、本発明の1つの流れガイド要素をそれぞれの流体接続部とこのバッテリセルとの間に設けることが望ましい。その結果、両流体接続部を通じて流入する温度調節流体の量が、1つの流体接続部だけを通じて当該温度調節流体を当てられるこれらのバッテリセルに応じて減少され得る。
【0011】
流入領域内で流れの乱れを回避するため、流体接続部は、楕円形の横断面、特に主流方向に扁円された楕円形の横断面を有し得る。これにより、バッテリセル用に提供されない、温度調節装置の使用可能な空間が、最適に使用されるだけではなくて、当該流体接続部に沿った主流方向の圧力低下も回避される。
【0012】
本発明の対象が、図面に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の温度調節装置は、バッテリセル2を流路3内に収容するために複数の開口部1を有する。この流路3は、2つの流入口側流体接続部4と2つの流出口側流体接続部5とを有する。主流方向6が、これらの流入口側流体接続部4とこれらの流出口側流体接続部5との間に発生する。複数の分流器7が、流路3内に配置されている。好適な実施の形態では、これらの分流器7は、流路3内の主流方向6に対して直角方向に一方の開口部1から流路3の対向する開口部1まで延在する。
【0015】
特に
図3から見て取れるように、少なくとも一群の分流器7が、バッテリセル2の被覆部9に対してほぼ平行に延在する複数の流れガイド面8を有する。これらの流れガイド面8は、流入口部10又は流出口部11を有する。流入口部10及び流出口部11は共に、被覆部9に対して同じ間隔で、すなわち同じ法線間隔で離間して配置されている。拡散部12が、流入口部10と流出口部11との間に存在する。被覆部9に対する拡散部12の間隔は、流入口部10又は流出口部11に対するこの被覆部9の間隔よりも5~30%だけ大きい。
【0016】
別の分流器13が、流路3の縁領域内に存在する。別の分流器13は、流路3の内壁14に対してほぼ平行に延在する別の流れガイド面15を形成し、流路2の通気挙動と、当該縁領域内の最適化された流れ条件とを保証する。
【0017】
図3に示されているように、別の流れガイド面15も、流入口部10と、流出口部11と、この流入口部10とこの流出口部11との間に存在し、内壁14に対して凹まされた拡散部12を有する。
【0018】
温度調節液が、流路3内に流入した時に、対向する縁部にある流体接続部4,5は、これらの配置によって均一な流れ挙動を保証する。これらの流体接続部4,5の横断面は、楕円形であり、主流方向6に扁円されて形成されている。したがって、一方では、利用可能な空間が最適に利用され、他方では、流入領域又は流出領域内の流れの乱れが最小限にされる。流体接続部4,5に直接に続く領域内で既に、均一な流れ挙動を保証するため、複数の流れガイド要素16が設けられている。これらの流れガイド要素16は、流体接続部4,5に向かって凸状に形成されたそれぞれ1つの流れガイド面17を流れ抵抗として有し、分流器として使用される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
1つのモジュールに統合された個々のバッテリセル(2)を有する温度調節装置であって、これらのバッテリセル(2)は、温度調節流体が主流方向(6)に貫流する流路(3)内に配置されている当該温度調節装置において、
前記バッテリセル(2)の被覆部(9)から離間した流れガイド面(8)が、一群の複数の前記バッテリセル(2)のそれぞれのバッテリセル(2)ごとに設けられていて、前記流れガイド面(8)は、前記被覆部(9)に対してほぼ平行なそれぞれ1つの流入口部(10)及び流出口部(11)を有すること、及び
前記流入口部(10)と前記流出口部(11)と前記被覆部(9)とに対して凹まされた拡散部(12)が、前記流入口部(10)と前記流出口部(11)との間に配置されている当該温度調節装置。
2.
前記被覆部(9)と前記拡散部(12)との間の間隔は、前記被覆部(9)と前記流入口部(10)又は前記流出口部(11)との間の間隔よりも5~30%だけ大きい上記1に記載の温度調節装置。
3.
互いに隣接する複数の前記バッテリセル(2)の前記流れガイド面(8)は、分流器(7)を形成する上記1又は2に記載の温度調節装置。
4.
一群の複数の分流器(13)が、前記流路(2)の内壁(14)に対してほぼ平行に延在する別の流れガイド面(15)を形成する上記3に記載の温度調節装置。
5.
前記流路(2)は、主流方向(6)に互いに対向する2つの縁部にそれぞれ少なくとも2つの流体接続部(4,5)を有し、
少なくとも1つのバッテリセル(2)が、1つの縁部の前記少なくとも2つの流体接続部(4,5)間に配置されている上記1~4のいずれか1つに記載の温度調節装置。
6.
1つの流れガイド要素(16)が、1つの流体接続部(4,5)とこの流体接続部(4,5)に隣接する2つのバッテリセル(2)との間に設けられていること、及び
前記流体接続部(4,5)に向かって凸状に形成された1つの流れガイド面(17)を有する上記5に記載の温度調節装置。
7.
前記流体接続部(4,5)は、主流方向(6)に扁円された楕円形の横断面を有する上記5又は6に記載の温度調節装置。
【符号の説明】
【0019】
1 開口部
2 バッテリセル
3 流路
4 流入口側流体接続部
5 流出口側流体接続部
6 主流方向
7 分流器
8 流れガイド面
9 被覆部
10 流入口部
11 流出口部
12 拡散部
13 別の分流器
14 内壁
15 別の流れガイド面
16 流れガイド要素
17 凸状に形成された流れガイド面