(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】教示装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20240827BHJP
G05B 19/409 20060101ALI20240827BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/409 C
G05B19/42 J
(21)【出願番号】P 2022534027
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024494
(87)【国際公開番号】W WO2022004705
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020115468
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇志
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豪
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028769(JP,A)
【文献】特開2017-049699(JP,A)
【文献】特開2018-022438(JP,A)
【文献】特開2012-066322(JP,A)
【文献】特開2019-058963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
19/42 - 19/46
G06F 3/01
3/048 - 3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械において入力インターフェースとなるタッチパネル式の表示画面を備えた教示装置であって、
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示部と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得部と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定部と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信部と、
前記回転式ダイヤルの1目盛りに対応する操作量を設定できる1目盛り操作量設定部と、
を備え
、
前記1目盛り操作量設定部は、前記回転式ダイヤルの1目盛りの回転操作量を、前記産業機械の動作範囲の上限の距離又は角度と前記動作量指定部が指定した動作量との差に応じて自動的に変更することができる教示装置。
【請求項2】
産業機械において入力インターフェースとなるタッチパネル式の表示画面を備えた教示装置であって、
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示部と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得部と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定部と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信部と、
を備え、
前記タッチパネル式の表示画面に、前記回転式ダイヤルが操作対象とする前記産業機械の動作座標系及び動作軸を選択する動作座標系及び動作軸の選択部を備え、
前記効果音又は振動の発信部は、前記動作座標系及び動作軸の選択部が選択した動作座標系及び動作軸に応じて、直交動作時と回動動作時で効果音又は振動のパターンを変えて提示する教示装置。
【請求項3】
産業機械において入力インターフェースとなるタッチパネル式の表示画面を備えた教示装置であって、
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示部と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得部と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定部と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信部と、
を備え、
前記産業機械が自動運転中または、異常状況が発生している状態で、前記産業機械を動作することができない場合には、
前記回転式ダイヤル表示部は、前記回転式ダイヤルの表示を変更し、
前記動作量指定部は、前記回転式ダイヤルの回転操作による前記産業機械への動作の指定を停止し、
効果音又は振動の発信部は、正常時とは異なる効果音又は振動を発する教示装置。
【請求項4】
前記タッチパネル式の表示画面には、前記回転式ダイヤルを含む操作画面に加えて、教示画面を同時に表示する請求項1に記載の教示装置。
【請求項5】
前記産業機械は、ロボットである請求項
1~4のいずれかに記載の教示装置。
【請求項6】
タッチパネル式の表示画面から入力された教示内容を産業機械に教示させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示処理と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得処理と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定処理と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信処理と、
前記回転式ダイヤルの1目盛りに対応する操作量を設定できる1目盛り操作量設定処理と、
を実行させ
、
前記1目盛り操作量設定処理は、前記回転式ダイヤルの1目盛りの回転操作量を、前記産業機械の動作範囲の上限の距離又は角度と前記動作量指定処理において指定された動作量の距離又は角度との差に応じて変更するコンピュータプログラム。
【請求項7】
タッチパネル式の表示画面から入力された教示内容を産業機械に教示させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示処理と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得処理と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定処理と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信処理と、
を実行させ、
前記タッチパネル式の表示画面に、前記回転式ダイヤルが操作対象とする前記産業機械の動作座標系及び動作軸を選択する選択処理を実行させ、
前記効果音又は振動の発信処理は、前記選択処理において選択された動作座標系及び動作軸に応じて、直交動作時と回動動作時で効果音又は振動のパターンを変えて提示するコンピュータプログラム。
【請求項8】
タッチパネル式の表示画面から入力された教示内容を産業機械に教示させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに
前記タッチパネル式の表示画面に、操作者が回転操作することができ、回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示処理と、
操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得処理と、
前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定処理と、
前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信処理と、
を実行させ、
前記産業機械が自動運転中である、あるいは、異常状況が発生し、前記産業機械を動作することができない場合には、
前記回転式ダイヤル表示処理は、前記回転式ダイヤルの表示を変更し、
前記動作量指定処理は、前記回転式ダイヤルの回転操作による前記産業機械への動作の指定を停止し、
効果音又は振動の発信処理は、正常時とは異なる効果音又は振動を発するコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記タッチパネル式の表示画面には、前記回転式ダイヤルを含む操作画面に加えて、教示画面を同時に表示する処理を実行させる請求項
6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記産業機械は、ロボットである請求項
6~9のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種操作処理装置における教示装置及びコンピュータプログラム、特にタッチパネル上で操作する教示装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを操作する場合、専用の教示操作盤を使用して手動操作することがなされてきた。一方で、工作機械においては、回転式のダイヤル装置(手動パルスジェネレータ)で手動操作を行う手段が使用されており、ロボットの操作方法においても、回転式ダイヤル装置が導入されるようになってきた。回転式ダイヤル装置は、1目盛り単位で機械の動作量を指定できるため、細かい位置決め操作が行いやすいといったメリットがある。また、タブレットなどをロボットの教示操作盤として使用し、表示画面に表示された情報を基にロボットを操作する方法も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状では、前記回転式のダイヤル装置は、ロボットの教示装置として、操作盤上に装備されていないことがほとんどであるため、別途用意する必要がある。また、タブレット等のタッチパネル付きの装置に回転式ダイヤルを表示してロボットを操作する手段も考えられる。しかしながら、そのようなタッチパネル付きの装置に回転式ダイヤルを表示しての操作は、画面上での操作となるため、回転式ダイヤル装置の操作感が得られず、操作量を誤って指定してしまう可能性が生じる。これはロボットの教示装置に限らず、工作機械などの他の産業機械の教示装置でも同様に生じる問題である。
【0005】
したがって、ロボットや工作機械を含めた産業機械の教示装置において、タッチパネル付きの装置に回転式ダイヤルを表示して機械を操作する際に、操作量を誤って操作することなく正確に操作量を指定するために、操作感を得て操作性を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本開示の教示装置は、産業機械において入力インターフェースとなるタッチパネル式の表示画面を備えた教示装置であって、前記表示画面に、操作者が回転操作することができ、前記回転操作量に対して目盛りが付されている回転式ダイヤルを表示する回転式ダイヤル表示部と、操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を取得する回転操作量取得部と、前記回転式ダイヤルの回転操作量によって前記産業機械の動作量を指定する動作量指定部と、前記回転式ダイヤルの1目盛り分の回転操作量を回転操作するごとに効果音又は振動を発する効果音又は振動の発信部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の教示装置によれば、回転式ダイヤルの1目盛り分の回転量を回転操作するごとに効果音又は振動が発されるので、操作者はどれだけの目盛り数の操作を行ったのかを操作感として得ることができる。したがって、操作感が得られないことによって生ずる操作量の誤認識を回避することができ、操作性が向上された教示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】1つの実施形態のロボット、制御装置、教示装置の関係を示す構成図である。
【
図2】別の実施形態のロボット、制御装置、教示装置の関係を示す構成図である。
【
図3】教示装置の表示画面についての1つの実施形態を示す図である。
【
図4】教示装置の表示画面についての別の実施形態を示す図である。
【
図5】本開示における教示装置によるロボット操作の手順を示すフロー図である。
【
図6】本開示における教示装置によるロボット操作の手順についての別の実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して、詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の1つの実施形態のロボット、制御装置、教示装置の関係を示す構成図である。
図1のロボット1は、多関節のアームを有する多関節ロボットで、直交動作と回転動作をすることができる。ロボットの機構部の制限により、動作軸ごとに直交動作における移動距離及び回転動作における回転角度に、それぞれ、上限値・下限値が決められており、各動作軸は一定の範囲内で作動される。
【0011】
制御装置2は、マイクロコンピュータなどからなる処理ユニット(CPU)21、ROM,RAMなどのメモリ部材を含む記憶ユニット22,及び、ロボット1及び教示装置3との間で信号の送受信を行う送受信ユニット23を構成要素とする。教示装置3は、タッチパネルを備えた教示操作盤で、タッチパネルからの操作者による入力に基づいて、制御装置2に、ロボット1の動作についての教示信号を送信する。教示装置3は、回転式ダイヤル表示部301、回転操作量取得部302、動作量指定部303、効果音又は振動の発信部304、動作座標系及び動作軸の選択部305、及び、1目盛り操作量設定部306を備える。
【0012】
図2は、本開示の別の実施形態のロボット、制御装置、教示装置の関係を示す構成図である。
図2の実施形態と
図1の実施形態との違いは、
図1においては、制御装置2に教示装置3が有線で接続されていたのが、
図2においては、制御装置2に教示装置3が無線で接続される点である。したがって、
図2の実施形態では、教示装置3は、タッチパネルを備えた教示操作盤に限らずタブレットであってもよい。制御装置2には、教示装置3と無線通信を行うためのWi-Fiルータが接続される。制御装置2と教示装置3を無線で接続することにより、操作者は、ロボット1や制御装置2から離れた位置で教示装置3を操作することができ、操作者の操作位置に関する自由度が高まる。
【0013】
図3に、教示装置3の表示画面についての1つの実施形態を示す。教示装置3の表示画面は、大きく分けると教示画面31と操作画面32からなる。教示画面31には、ロボット1の動作において選択された軸や、ロボット1の動作の結果、教示された位置の内容がテキストで表記されている。操作画面32は教示画面31の下に配置される。回転式ダイヤル表示部301が、操作画面32の中に、回転式ダイヤル321を表示する。操作画面32の中には、他に、軸選択ダイヤル322、座標系選択ボックス323が設定され表示される。
【0014】
回転式ダイヤル321は、表示画面上の画像の回転式ダイヤルを回転させることによって、動作座標系及び動作軸の選択部305によって選択された座標系で、選択された軸の方向にロボット1を動作させるための手段である。回転式ダイヤルの回転操作からロボットの動作までは、操作者が前記回転式ダイヤルを回転操作した回転操作量を回転操作量取得部302が取得し、取得された回転操作量によって動作量指定部303がロボット1の動作量を指定し、指定された動作量でロボット1が動作されるという処理手順となる。軸選択ダイヤル322は、動作座標系及び動作軸の選択部305によって選択される動作軸を、操作者が選択するものであり、
図3においては、XYZの直線移動軸とWPRの回動軸から軸を選択するダイヤル型の選択手段である。座標系選択ボックス323は、動作座標系及び動作軸の選択部305によって選択される動作座標系を、操作者が、プルダウンメニューの中から、選択するものである。実施例においては、直交座標系か回転座標系かが選択される。操作画面32で、ロボット1を操作する手順としては、まず、座標系選択ボックス323から直交座標系か回転座標系かを選択する。選択された座標系に応じて、軸選択ダイヤル322で表示される軸が変わる。次に、軸選択ダイヤル322により動作させたい軸を選択した上で、回転式ダイヤル321を回転操作させることで選択した軸の方向にロボット1を操作することができる。
【0015】
図4に、教示装置3の表示画面についての別の実施形態を示す。
図4の実施形態と
図3の実施形態の違いは、
図3では、軸を選択する手段が軸選択ダイヤル322であったのが、
図4では、軸選択ボタン332である点である。軸選択ボタン332は、軸選択ボタンのアイコンがクリックされたときに、選択され得る軸が表示されるものである。
図4においては、XYZの直線移動軸とWPRの回動軸が表示されている。
【0016】
回転式ダイヤル321の回転操作においては、効果音又は振動の発信部304により、回転操作量に応じて効果音又は振動を発する。具体的には、回転式ダイヤルに設定された1目盛り分の回転操作がなされるごとに効果音又は振動が発される。これは、操作者が操作回転量を聴覚又は触覚による操作感によって、回転操作が、回転式ダイヤルの1目盛り分進んだことを認識するためのものである。
【0017】
また、効果音又は振動の発信部304は、効果音又は振動を、直交動作時と回転動作時でパターンを変えて発する。これは、操作者が、現在、ロボットが直交動作で作動しているのか、又は回転動作で作動しているのかを聴覚又は触覚による操作感によって認識するためのものである。
【0018】
また、回転式ダイヤル321の1目盛りに対応する操作量を設定できる1目盛り操作量設定部306が備えられ、回転式ダイヤル321の1目盛りに対応する距離又は角度の操作量は、操作者によって又は自動的に設定される。上述のようにロボット1においては、動作軸ごとに特定の範囲内の動作量で作動されるものである。また、1目盛り操作量設定部306は、回転式ダイヤル321の1目盛り分の操作量を、動作範囲の上限の距離又は角度との差に応じて自動的に変更することもできる。動作範囲の上限の近くでは、1目盛り分の操作量を小さく設定することにより、動作範囲外にまでは到達しにくくなることが期待される。さらに、操作者による回転式ダイヤル321の操作方向によっても、1目盛り分の操作量を変更することもできる。操作方向が、ロボット1の動作軸の動作範囲の上限値に向かう方向では、1目盛り分の操作量を小さく設定し、動作範囲の上限値から初期の動作値へ戻る方向では、1目盛り分の操作量を大きく設定することもできる。
【0019】
ロボット1に異常状態が発生することなどによって、ロボット1を操作することができなくなった場合においては、回転式ダイヤル表示部301は、回転式ダイヤル321の表示を変更する。その際、回転式ダイヤル表示部301は回転式ダイヤル321が回転できないようにする。また、動作量指定部303は、回転式ダイヤル321の回転操作によるロボット1への指令を停止する。また、効果音又は振動の発信部304は、ロボット1の正常動作時とは異なる効果音又は振動を発する。効果音又は振動は、異常状態が発生した際に一度提示しても良いし、異常状態が発生中は常時提示ししても良い。また、回転式ダイヤル321を操作しようとした場合に、再度、効果音又は振動を提示することで、操作者に、異常状態で、ロボットの手動操作ができないことを再認識させることができる。
【0020】
ロボット1の自動運転中は、回転式ダイヤル321の回転操作によってロボット1を操作することはできない。回転式ダイヤル表示部301は、回転式ダイヤル321を通常とは異なる表示に変更し、操作者が操作しようとした場合も回転しないようにする。動作量指定部303は、回転式ダイヤル321の回転操作によるロボット1への指令を停止する。また、回転式ダイヤル321を操作しようとした場合、効果音又は振動の発信部304は、ロボット1の正常動作時とは異なる自動運転中用の効果音又は振動を発する。
【0021】
本開示の教示装置3においては、表示画面上に教示画面31と操作画面32が同時に表示されるようになっている。教示画面31と操作画面32を同時に表示することによって、回転式ダイヤル321によるロボット1の操作と、位置教示を、画面を切り替えずに行うことができる。
【0022】
次に、本開示における教示装置3によるロボット1の教示操作の手順を
図5のフロー図で示す。
図5に示すように、まず、操作者が、教示装置3の操作画面32において座標系選択ボックス323で操作するロボット1の座標系を選択し、動作座標系及び動作軸の選択部305によりロボット1の座標系が選択される(ステップSt1)。次に、操作者が軸選択ダイヤル322(又は軸選択ボタン332)で操作するロボット1の動作軸を選択し、動作座標系及び動作軸の選択部305によりロボット1の動作軸が選択される(ステップSt2)。
【0023】
次に、1目盛り操作量設定部306において、選択した軸の作動範囲に応じて回転式ダイヤルにおける1目盛り分の操作量を設定する(ステップSt3)。その際には、前述のように、作動範囲の上限値近くでは、1目盛り分の操作量を小さく設定する。それによって、動作範囲外にまでは到達しにくくなることが期待される。さらに、操作方向が、ロボット1の動作軸の動作範囲の上限値に向かう方向では、1目盛り分の操作量を小さく設定し、動作範囲の上限値から初期の動作値へ戻る方向では、1目盛り分の操作量を大きく設定することもできる。
【0024】
ステップSt1からステップSt3の設定が終わった後、回転式ダイヤル表示部301によって表示された回転式ダイヤル321を回転操作し、回転操作量取得部302によって回転操作量を取得する。この回転式ダイヤル321の回転操作においては、前記回転操作量が回転式ダイヤル321の1目盛り分に達するごとに、効果音又は振動の発信部304が効果音又は振動を発する。そして、前記回転操作量から動作量指定部303がロボットの動作量を指定し、指定された動作量によってロボット1を実際に動作させる。(ステップSt4)。この際に、ステップSt3で、動作範囲の上限値に向かう方向の移動量を小さく設定していると、動作範囲の上限値に向かう方向の移動において位置の微調整がし易くなる。
【0025】
ロボット1を教示点に移動させるためには、座標系・軸・移動量を変更しながら操作を行う必要がある。そのため、回転式ダイヤル321の回転操作によりロボット1を移動させている中で、座標系・軸・移動量を設定する必要があるか否かを判定する(ステップSt5)。ステップSt5の判定結果がYESの場合、すなわち、回転式ダイヤル321の回転操作中に座標系・軸・移動量のいずれかを変更する必要が生じた場合には、回転式ダイヤル321の回転操作を中止し、設定する必要が生じたものが、座標系か、軸か、移動量かに応じて、それぞれ、ステップSt1、ステップSt2、ステップSt3のいずれかに戻り、変更を行う。そして、ステップSt4に戻り、各ステップで新たに設定された座標系・軸・移動量で回転式ダイヤル321を操作してロボットを移動させる。
【0026】
次に、ロボット1が教示点に達した時点で回転式ダイヤル321を止めて、ロボット1を停止させる(ステップSt6)。そして、その時のロボット1の現在位置を教示点としてロボットプログラムに記憶する(ステップSt7)。ステップSt1からSt7を繰り返すことで、複数の教示点をロボットプログラムに記憶することができる。
【0027】
次に、ロボット1の動作による作業が完了したか否かを判定する(ステップSt8)。ステップSt8の判定結果がYESの場合、すなわち、ロボット1の動作による作業が完了した場合には、作業の全工程が終了となりこのフローは終了する。ステップSt8の判定結果がNOの場合すなわち、ロボット1の動作による作業が完了しておらず、継続される場合には、ステップSt4に戻り、回転式ダイヤル321を操作してロボットを移動させる。
【0028】
次に、本開示におけるロボット1の自動運転で異常が発生した際に、回転式ダイヤル321で復旧作業を行う手順を
図6のフロー図に示す。
図6に示すように、まず、自動運転の開始(ステップSt1’)から始まる。自動運転開始後は、回転式ダイヤル321は正常動作時と異なる色に変化し、回転式ダイヤル321を操作できなくなる。また、回転式ダイヤル321を操作しようとすると、正常動作時とは異なる効果音・振動を発する。そして、次に、ロボット1に異常が発生したか否かについて判定する(ステップSt2’)。判定結果がNOの場合、すなわち、異常が発生していない場合は、自動運転が進行し、ステップSt8’に移る。
【0029】
ステップSt2’の判定結果がYESの場合、すなわち、異常が発生した場合には、ロボット1の自動運転が中止され、ロボット1は停止する(ステップSt3’)。また、その際、回転式ダイヤル321は正常動作時と異なる色に変化し、回転式ダイヤル321を操作することができなくなる。また、異常発生中、または、回転式ダイヤル321を操作しようとすると、正常動作時とは異なる効果音・振動を発する。次に、操作者は、異常アラームの内容を確認し、異常の回復作業をして、異常の要因を排除する(ステップSt4’)。異常の要因が排除されると、回転式ダイヤル321の色、効果音、振動が通常時用に戻り、回転式ダイヤル321によるロボット1の操作を行えるようになる。
【0030】
次に、操作者は、ロボット1の自動運転を再開する際にロボット1がワークや周辺機器に干渉しないかを判定する(ステップSt5’)。判定結果がYESの場合、すなわち、ロボット1がワークや周辺機器に干渉する可能性がある場合には、回転式ダイヤル321を回して、ロボット1を退避させる(ステップSt6’)。その後、ロボット1の自動運転を再開する(ステップSt7’)。再開後は、St1’後と同様に、回転式ダイヤル321の色が変化し、回転式ダイヤル321の操作はできなくなり、操作しようとすると正常動作時とは異なる効果音・振動を発する。そして、ロボット1の自動運転を終了するか否かを判定する(ステップSt8’)。判定結果がYESの場合は、ロボット1の自動運転は終了し、このフローは終了する。判定結果がNOの場合は、ロボット1の自動運転が続行され、ステップSt2’に戻る。そして、ステップSt8’で自動運転が終了したと判定されるまで、ステップSt2’からステップSt8’のループが繰り返される。
【0031】
次に、本開示の発明の教示装置の効果について説明する。まず、本開示の教示装置の中心となる特徴を示す基本的な効果としては、前述のとおり、回転式ダイヤルの1目盛り分の回転量を回転操作するごとに効果音又は振動が発されるので、操作者はどれだけの目盛り数の操作を行ったのかを操作感として得ることができ、したがって、操作感が得られないことによって生ずる操作量の誤認識を回避することができるという点にある。
【0032】
また、本開示の教示装置のように、ロボットが直交動作及び回転動作の両方を、教示装置の回転操作によって行う場合、ロボットの直交動作から回転動作へ、また、回転動作から直交動作へ変更して両動作を繰り返して行うときに、現在、どちらの動作状態にあるのか認識しにくくなり、そのために誤動作をしてしまう可能性がある。本開示の教示装置においては、効果音又は振動は、直交動作時と回転動作時でパターンを変えて発するため、操作者が、現在、ロボットが直交動作で作動しているのか、又は回転動作で作動しているのかを聴覚又は触覚による操作感によって認識することができる。したがって、ロボットの動作状態についての誤認識による誤動作を回避でき、操作性を向上することができる。
【0033】
また、本開示の教示装置においては、回転式ダイヤルの1目盛り分の操作量を、動作範囲の上限の距離又は角度との差に応じて自動的に変更することもできる。したがって、操作方向が、動作軸の動作範囲の上限値に向かう方向では、1目盛り分の操作量を小さく設定し、動作範囲の上限値から初期の動作値へ戻る方向では、1目盛り分の操作量を大きく設定することもできる。このように設定することで、動作範囲外にまでは到達しにくくなり、動作範囲外に操作してしまう誤動作を避けることができるとともに、動作範囲外の近傍から逆方向へは通常どおりの速さで戻ることができるので、操作速度の観点からも操作性が高いものとすることができる。
【0034】
また、本開示の教示装置においては、ロボットに異常状態が発生した場合においては、回転式ダイヤルの表示を変更するとともに、回転式ダイヤルの回転操作によるロボットへの指令を停止し、また、異常状態の発生中、または、回転式ダイヤルを操作しようとした場合に、ロボットの正常動作時とは異なる効果音又は振動を発するので、操作者は、いち早く異常状態に気づき、異常状態のまま操作を続けることを避けることができる。これによって、無駄な操作を続けることを回避することができるとともに、異常状態のまま操作を続けることによってロボットが損傷を受けることを防ぐことができる。
【0035】
また、ロボットが自動運転中の場合においても、回転式ダイヤルの表示を変更するとともに、回転式ダイヤルの回転操作によるロボットへの指令を停止する。また、回転式ダイヤルを操作しようとした場合に、ロボットの正常動作時とは異なる効果音又は振動を発するので、操作者は、ロボットが自動運転中であることに気づき、自動運転中のまま操作を続けようとすることを避けることができる。
【0036】
また、本開示の教示装置においては、教示画面と操作画面を同時に表示することによって、回転式ダイヤルによるロボットの操作と、位置教示を、画面を切り替えずに行うことができるので、位置教示を認識しながら操作することができ、操作性が向上して、誤動作を防ぐことができる。
【0037】
以上、本発明の実施に関して、実施態様について説明したが、本発明はこうした実施態様に何ら限定されるものではなく、例えば、ロボットにおける実施態様で説明したが、各種の工作機械を含む他の産業機械における実施態様にも適用できるように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施できるものであることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボット
2 制御装置
21 処理ユニット
22 記憶ユニット
23 送受信ユニット
3 教示装置
301 回転式ダイヤル表示部
302 回転操作量取得部
303 動作量指定部
304 効果音又は振動の発信部
305 動作座標系及び動作軸の選択部
306 1目盛り操作量設定部
31 教示画面
32 操作画面
321 回転式ダイヤル
322 軸選択ダイヤル
323 座標系選択ボックス
332 軸選択ボタン