(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】酸性水溶液の酸度を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20240827BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/80 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N31/00 A
G01N31/22
G01N21/80
(21)【出願番号】P 2022538850
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2020052406
(87)【国際公開番号】W WO2021130423
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-24
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】522120004
【氏名又は名称】オラノ・リサイクレイジ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・ブルッサール
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・コストノーブル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ラングラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン・シノ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-49188(JP,A)
【文献】米国特許第3122420(US,A)
【文献】Jose Neri-Quiroz,Miniaturizing and automation of free acidity measurements for uranium(VI)-HNO3 solutions: Development of a new sequential injection analysis for a sustainable radio-analytical chemistry,Talanta,2016年06月21日,Vol.159,Page.330-335
【文献】T.G.Srinivasan,Free acidity measurement - A review,Talanta,2013年10月17日,Vol.118,Page.162-171
【文献】9 Forsterzyklus - UV/Vis-Absorptionsspektroskopie,Teil 1: Chemische Thermodynamik (Forsterzyklus),Universitat Jena,2019年12月01日,Page.71-77,https://www.ipc.uni-jena.de/ipcmedia/2410/foersterzyklus.pdf,https://www.ipc.uni-jena.de/60/prak-i
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 31/22
G01N 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強酸又は強酸の混合物を含む水溶液A1の全酸度を決定するための方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)-溶液A1の体積V1、
-弱酸、弱塩基、弱酸の塩又は弱塩基の塩から選択される化合物を含む、pHA2で示されるpHの水溶液A2の体積V2、及び
-酸形態及び塩基形態を有し、第1のpHと第2のpHの間の転移範囲を有し、第2のpHは第1のpHより高いがpHA2より低い、pH感受性色素を含む、溶液A4の体積V4
を混合することによって水溶液A5を提供するステップ;
b)溶液A2を測定ブランクとして使用することで、溶液A5中に存在する色素の紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
c)ステップb)で得られた吸光スペクトルから、溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定するステップ;
d)ステップc)で決定された濃度から、溶液A5のpHA5で示されるpHを決定するステップ;及び
e)ステップd)で決定されたpHA5から、溶液A1の全酸度を決定するステップ;
を含み、
ここで、pHA2は、体積V1とV2の混合物が、色素の転移範囲内にあるpHを有するようなものである、方法。
【請求項2】
ステップb)は:
-溶液A2の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;
-溶液A5の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A5のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A2のスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算すること;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度は、ランベルト・ベールの法則を適用することによって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
pHA5は、以下の式(1)を用いて決定される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法:
【数1】
式(1)において、
K
HCは、溶液A5中の色素の酸形態の解離定数であり;
[HC]は、溶液A5中の色素の酸形態の濃度(mol/L)であり;そして
[C
-]は、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度(mol/L)である。
【請求項5】
pHA5は、以下の式(2)を用いて決定される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法:
【数2】
式(2)において、
K
HCは、溶液A5中の色素の酸形態の解離定数であり;そして
Rは、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度と、
溶液A5中の色素の濃度との比である。
【請求項6】
[H
+]で示される、H
+プロトンのモル濃度で表される溶液A1の全酸度は、以下の式(3)を用いて決定される、請求項1から5の何れか一項に記載の方法:
【数3】
式(3)において、
V1及びV2はLで表され;そして
Yは以下の式(4)を用いて決定される:
【数4】
式(4)において、
溶液A2が弱酸又は弱酸の塩を含む場合:
K
HAは、溶液A5中の弱
酸の酸性解離定数であり;
[A
-]は、溶液A2中の弱酸の共役塩
基の濃度(mol/L)であり;
[HA]は、溶液A2中の弱
酸の濃度(mol/L)であり;
溶液A2が弱塩基又は弱塩基の塩を含む場合:
K
HA
は、溶液A5中の弱塩基の共役酸の酸性解離定数であり;
[A
-
]は、溶液A5中の弱塩基の濃度(mol/L)であり;
[HA]は、溶液A5中の弱塩基の共役酸の濃度(mol/L)であり;
V2はLで表される。
【請求項7】
強酸又は強酸と1つ以上の加水分解性カチオンとの混合物を含む水溶液A1の遊離酸度を決定するための方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)溶液A1の体積V1と、弱酸、弱塩基、弱酸の塩又は弱塩基の塩から選択される化合物と、濃度C2の加水分解性カチオンを錯化する薬剤とを含む、pHA2で示されるpHの水溶液A2の体積V2とを混合することによって、水溶液A3を提供するステップ;
b)溶液A2を測定ブランクとして使用することで、溶液A3中に存在する加水分解性カチオンの紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
c)ステップb)で得られた吸光スペクトルから、溶液A3中の加水分解性カチオンの濃度C3を決定するステップ;
d)溶液A3と、酸形態及び塩基形態を有し、第1のpHと第2のpHの間の転移範囲を有し、第2のpHは第1のpHより高いがpHA2より低い、pH感受性色素を含む溶液A4の体積V4とを混合することによって、水溶液A5を提供するステップ;
e)溶液A2又は溶液A3を測定ブランクとして使用することで、溶液A5中に存在する色素の紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
f)ステップe)で得られた吸光スペクトルから、溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定するステップ;
g)ステップf)で決定された濃度から、溶液A5のpHA5で示されるpHを決定するステップ;次いで
h)ステップc)で決定された濃度C3から、またステップe)で決定されたpHA5から、溶液A1の遊離酸度を決定するステップ;
を含み、ここで、
pHA2、及び体積V1及びV2は、溶液A3が色素の転移範囲内にあるpHA3と示されるpHを有するようなものであり;
濃度C2、及び体積V1及びV2は、錯化剤が溶液A3中の加水分解性カチオンに対して過剰であるようなものである、方法。
【請求項8】
水溶液A2中に存在する化合物もまた、錯化剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)は:
-溶液A2の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;
-溶液A3の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A3のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A2のスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算すること;
を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
加水分解性カチオンの濃度C3は、ランベルト・ベールの法則を適用することによって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップe)は:
-溶液A5の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A5のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A3のスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算すること;
を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度は、ランベルト・ベールの法則を適用することによって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
pHA5は、以下の式(1)を用いて決定される、請求項7から12の何れか一項に記載の方法:
【数5】
式(1)において、
K
HCは、溶液A5中の色素の酸形態の解離定数であり;
[HC]は、溶液A5中の色素の酸形態の濃度(mol/L)であり;そして
[C
-]は、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度(mol/L)である。
【請求項14】
pHA5は、以下の式(2)を用いて決定される、請求項7から12の何れか一項に記載の方法:
【数6】
式(2)において、
K
HCは、溶液A5中の色素の酸形態の解離定数であり;そして
Rは、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度と、
溶液A5中の色素の濃度との比である。
【請求項15】
[H
+]で示される、H
+プロトンのモル濃度で表される溶液A1の遊離酸度は、以下の式(3)を用いて決定される、請求項7から13の何れか一項に記載の方法:
【数7】
式(3)において、
V1及びV2はLで表され;そして
Yは以下の式(7)を用いて決定される:
【数8】
式(7)において、
mは、錯化剤による
加水分解性カチオンの錯化反応における加水分解性カチオンの化学量論的係数であり;
nは、
錯化剤による加水分解性カチオンの錯化反応における錯化剤の化学量論的係数であり;
溶液A2が弱酸又は弱酸の塩を含む場合:
K
HAは、溶液A5中の弱
酸の酸性解離定数であり;
[A
-]は、溶液A2中の弱酸の共役塩
基の濃度(mol/L)であり;
[HA]は、溶液A2中の弱
酸の濃度(mol/L)であり;
溶液A2が弱塩基又は弱塩基の塩を含む場合:
K
HA
は、溶液A5中の弱塩基の共役酸の酸性解離定数であり;
[A
-
]は、溶液A5中の弱塩基の濃度(mol/L)であり;
[HA]は、溶液A5中の弱塩基の共役酸の濃度(mol/L)であり;
V1及びV2はLで表され、C3はmol/Lで表される。
【請求項16】
溶液A2は、弱酸又は弱酸の塩を含む、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶液A2は、シュウ酸又はその
塩を含む、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
溶液A2は、0.27mol/Lのシュウ酸ナトリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
色素は、ブロモクレゾールグリーンである、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
溶液A1は、硝酸の水溶液である、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析化学の分野に関するものである。
【0002】
より具体的には、酸性水溶液の酸度を決定するための方法に関するものである。
【0003】
これらの方法により、強酸又は強酸の混合物を含む水溶液の全酸度を測定することができ、この溶液が1つ以上の加水分解性カチオン、すなわちOH-水酸化物イオンとH+プロトンに解離することによって水と反応することができる1つ以上のカチオンを含む場合、その遊離酸度も測定することができる。
【0004】
本発明は、強酸の水溶液の全酸度又は遊離酸度を測定することが望ましいことがある全ての産業及び科学研究分野で使用することができる。
【0005】
しかしながら、それは、
-一方では、強酸又は強酸の混合物を、pH測定のような全酸度の測定に従来用いられてきた方法の使用が不適当であるほど高い濃度で含む水溶液の全酸性を測定するために、また、
-他方では、1つ以上の加水分解性カチオンを含み、また遊離酸度が重要なパラメータとなる工業プロセスで使用される強酸の水溶液の遊離酸度を、実験室又は工業ラインで監視するために、
特に興味深い。
【0006】
このような方法の例は、特に鉱石から目的の金属元素を処理又は抽出するための湿式冶金方法、及び酸性化学酸洗による金属表面の処理方法を含む。
【背景技術】
【0007】
ブレンステッド-ローリー理論によると、酸とは、以下の式に従って1つ以上のH+プロトンを放棄することができる化学種(イオン又は分子)である:
HA ⇔ A- + H+
酸 塩基 プロトン
【0008】
従って、水溶液の酸度は、この溶液中に存在するH+プロトンの量によって特徴付けられる。
【0009】
水溶液が、酸に加えて、水との反応によってH+プロトンを放棄する加水分解性カチオンを含む場合、この溶液の全酸度と遊離酸度を区別することが可能である。
【0010】
従って、全酸度は水溶液中に存在するH+プロトンの総量で与えられ、一方、遊離酸度はこの溶液中に存在する酸によってのみ供給されるH+プロトンの量によって与えられる。換言すれば、遊離酸度は加水分解性カチオンによって供給されるH+プロトンを考慮に入れない。
【0011】
遊離酸度は、加水分解性カチオンで帯電しているか、又は帯電している可能性のある酸性水溶液に関わる多くの工業的手法にとって重要なパラメータである。
【0012】
加水分解性カチオンを含む酸性水溶液の遊離酸度を測定することができる多くの方法が文献に記載されている。これらの方法は、まず、加水分解性カチオンの加水分解反応を、例えば、沈殿、錯化、又は固体樹脂状担体への固定などにより消滅させ、その後、遊離酸度を決定する点で共通する。これらの方法に関連する先行技術文書は、最近、非特許文献1により公開された。
【0013】
最近、J.Neri-Quirozらによって、逐次注入分析(SIA)による硝酸水溶液の遊離酸度測定法が提案された(非特許文献2)。
【0014】
この方法は、10μLのサンプルについてインラインで遊離酸度測定を行うことを可能にし、分析したサンプルあたりわずか1.5mLの廃液を生成するものであり、シュウ酸カリウムによる加水分解性カチオンの錯化と、後続のNaOHによる滴定に基づき、滴定に続いて、この場合コンゴレッドによる測色が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】T.G.Srinivasan及びP.R.Rao,Talanta 2014,118,162-171
【文献】J.Neri-Quirozら,Talanta 2016,159,330-335
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
業務の一環として、本発明者らは、酸性水溶液の全酸度及び遊離酸度を、測定する酸度の種類に応じて高精度に測定することができる方法を開発することに成功した。
【0017】
遊離酸度の測定に関しては、本発明は、非特許文献2の方法と同様の利点(分析サンプル量の削減、廃液発生量の削減、自動化の可能性)を有するだけでなく、酸塩基滴定反応を必要とせず、従ってNaOHなどのアルカリ滴定剤を用いないので、実施がより簡単で試薬の観点でもより経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の主題は、(加水分解性カチオンを有する又は有さない)強酸又は強酸の混合物を含む水溶液A1の全酸度を決定する目的を有し、少なくとも以下のステップ:
a)-溶液A1の体積V1、
-弱酸、弱塩基、弱酸の塩又は弱塩基の塩から選択される化合物を含む、pHA2で示されるpHの水溶液A2の体積V2、及び
-酸形態及び塩基形態を有し、第1のpHと第2のpHの間の転移範囲を有し、第2のpHは第1のpHより高いがpHA2より低い、pH感受性色素を含む、溶液A4の体積V4
を混合することによって水溶液A5を提供するステップ;
b)溶液A2を測定ブランクとして使用することで、溶液A5中に存在する色素の紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
c)ステップb)で得られた吸光スペクトルから、溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定するステップ;
d)ステップc)で決定された濃度から、溶液A5のpHA5で示されるpHを決定するステップ;次いで
e)ステップd)で決定されたpHA5から、溶液A1の全酸度を決定するステップ;
を含み、
ここで、pHA2は、体積V1とV2の混合物が、色素の転移範囲内にあるpHを有するようなものである、第1の方法である。
【0019】
従って、この第1の方法は、pHカラーインジケータ又は酸塩基インジケータとも呼ばれるpH感受性色素の転移範囲を使用することに基づいている。
【0020】
しかしながら、本発明によれば、pH感受性色素の転移範囲は、酸性水溶液のpHが存在する値の範囲を決定するためにも、酸塩基滴定の化学当量を特定するためにも使用されず、pH感受性色素による光の吸収から酸性水溶液のH+プロトン濃度を決定するために使用されるので、この使用法は先行技術に見られるものとは異なっている。
【0021】
上記及び以下において、酸又は塩基に適用される「強い」及び「弱い」との用語は、ブレンステッド-ローリーによってそれらに与えられた意味、すなわち、水中で完全に解離する酸又は塩基は強いとみなされ、水中で完全に解離しない酸又は塩基は弱いとみなされるとの意味を有する。
【0022】
本発明によれば、溶液A2中に存在する化合物(弱酸、弱塩基、弱酸の塩、又は弱塩基の塩)の選択、並びに色素の選択は、特に限定されることはない。
【0023】
従って、溶液A2中に存在する化合物は、弱酸(特にカルボン酸及びポリカルボン酸)又は弱塩基(特にアンモニア、アミン及びポリアミン)として知られている多数の化合物、並びにそれらの塩から選択することができる。
【0024】
同様に、色素は、ブロモクレゾールグリーン、コンゴレッド、ブロモフェノールブルー、メチルイエロー、メチルレッドなどのpHカラーインジケータとして従来から用いられている多数の化合物から選択することができる。
【0025】
しかしながら、上述のように、溶液A2のpHに対応するpHA2は、体積V1とV2の混合物のpHが色素の転移範囲に位置するようなものでなければならず、これは、この混合物を準備し、pH紙、pHストリップ、pHプローブ、あるいは溶液A1の全酸度の大きさの順序が分かっていれば計算によってそのpHを決定することによって、事前に容易に検証することができた。
【0026】
従って、溶液A2中に存在する化合物、この溶液中のその濃度及び色素は適宜選択されるが、必要に応じて、溶液A2に強酸又は強塩基を加えることによってpHA2を調整することができ、又はそれらの混合物のpHが色素の転移範囲内に入るように、体積V1及びV2の一方及び/又は他方を変更できることが理解される。
【0027】
本発明によれば、溶液A5中に存在する色素の紫外可視吸光スペクトルの決定-又はステップb)-は、好ましくは:
-溶液A2の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;
-溶液A5の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A5のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A2のスペクトルの光強度値との比の十進対数(decimal logarithm)を計算すること;
を含み、
溶液A2及びA5の光強度スペクトルは、有利には、CCDカメラ(電荷結合素子(Charge-Coupled Device))としてより良く知られている電荷移動カメラを用いて取得される。
【0028】
このようにして得られた吸光スペクトルは、2つの異なる波長に位置する2つの吸光ピーク(又は最大値)を示し、そのうちの1つは色素の酸形態に特徴的であり、他方はその塩基形態に特徴的であり、溶液A5のpH、pHA5の関数として等辺点(isobestic point)の両側で変化している。
【0029】
ステップc)では、溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を、有利には、溶液中の溶質について所定の波長で測定される吸光度が溶液中のこの溶質の濃度に比例するというランベルト・ベール(Beer-Lambert)の法則を適用することによって、すなわち実際には、ステップb)で得られた吸光スペクトルがこの形態について示す最大吸光度を、可変濃度及び可変pHの色素を含む水溶液から予め確立された標準曲線の吸光値と比較することによって、決定する。
【0030】
ステップd)において、pHA5は、例えば、以下の式(1)を用いて決定することができる。
【0031】
【0032】
式(1)において、
KHCは、溶液A5中の色素の酸形態の解離定数であり;
[HC]は、溶液A5中の色素の酸形態の濃度(mol/L)であり;そして
[C-]は、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度(mol/L)である。
【0033】
一変形例では、pHA5は、以下の式(2)を用いて決定することもできる。
【0034】
【0035】
式(2)において、
KHCは先に定義した通りであり;そして
Rは、溶液A5中の色素の塩基形態の濃度と、この溶液中の色素(酸形態+塩基形態)の濃度との比である。
【0036】
ステップe)において、[H+]で示される、H+プロトンのモル濃度として表される溶液A1の全酸度は、例えば、以下の式(3)を用いて決定することができる。
【0037】
【0038】
式(3)において、
V1及びV2、pHA2及びpHA5は先に定義した通りであり、V1及びV2はLで表され;そして
Yは以下の式(4)を用いて決定される。
【0039】
【0040】
式(4)において、
KHAは、溶液A5中の弱酸(溶液A2が弱酸又は弱酸の塩を含む場合)又は溶液A5中の弱塩基の共役酸(溶液A2が弱塩基又は弱塩基の塩を含む場合)の酸性解離定数であり;
[A-]は、溶液A2中の弱酸の共役塩基又は溶液A5中の弱塩基の濃度(mol/L)であり;
[HA]は、溶液A2中の弱酸又は溶液A5中の弱塩基の共役酸の濃度(mol/L)であり;
V2及びpHA5は、上記で定義された通りであり、V2はLで表される。
【0041】
溶液A5中の弱酸又は弱塩基の共役酸の酸性解離定数KHAは、文献データから、又は好ましくは実験によって、予め決定できることに留意されたい。
【0042】
この後者の場合、溶液A2の体積V2に、市販の標準溶液などの既知の濃度C1を有する強酸の水溶液の体積V1を加え、次に、得られた混合物MのpHをpHプローブを用いて測定し、以下の式(5)を用いてKHAを決定する。
【0043】
【0044】
式(5)において、
pHは、混合物MのpHに対応し;
C1及びC2は、上記で定義された通りであり、mol/Lで表され;
V1及びV2は、上記で定義された通りであり、Lで表され;そして
nは、溶液A2のpHを調整するために使用された、酸又は塩基のモル数である(該当する場合)。
【0045】
溶液A5中の色素の酸形態の解離定数KHCは、文献データから、又は好ましくは実験によって決定することもできる。
【0046】
この後者の場合、溶液A2を測定ブランクとして使用することで、先に定義した混合物Mの紫外可視吸光スペクトルを決定し、次に、混合物Mに溶液A4の体積V4を添加することによって生じる混合物M’の吸光スペクトルを、混合物Mを測定ブランクとして使用することで決定する。
【0047】
そして、予め確立された検量線を参照して、混合物M’について得られた吸光スペクトル上に見える色素の酸及び塩基形態のピークから、混合物M’中の色素の酸及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定し、以下の式(6)を用いて解離定数KHCを決定することができる。
【0048】
【0049】
式(6)において、
pHは、混合物MのpHであり;そして
Rは、混合物M’中の色素の塩基形態の濃度と、この混合物中の色素(酸形態+塩基形態)の濃度との比である。
【0050】
本発明の主題はまた、強酸又は強酸と1つ以上の加水分解性カチオンとの混合物を含む水溶液A1の遊離酸度を決定する目的を有し、少なくとも以下のステップ:
a)水溶液A1の体積V1と、弱酸、弱塩基、弱酸の塩又は弱塩基の塩から選択される化合物と、濃度C2の加水分解性カチオンを錯化する薬剤とを含む、pHA2で示されるpHの水溶液A2の体積V2とを混合することによって、水溶液A3を提供するステップ;
b)溶液A2を測定ブランクとして使用することで、溶液A3中に存在する加水分解性カチオンの紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
c)ステップb)で得られた吸光スペクトルから、溶液A3中の加水分解性カチオンの濃度C3を決定するステップ;
d)溶液A3と、酸形態及び塩基形態を有し、第1のpHと第2のpHの間の転移範囲を有し、第2のpHは第1のpHより高いがpHA2より低い、pH感受性色素を含む溶液A4の体積V4とを混合することによって、水溶液A5を提供するステップ;
e)溶液A2又は溶液A3を測定ブランクとして使用することで、溶液A5中に存在する色素の紫外可視吸光スペクトルを決定するステップ;
f)ステップe)で得られた吸光スペクトルから、溶液A5中の色素の酸形態及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定するステップ;
g)ステップf)で決定された濃度から、溶液A5のpHA5で示されるpHを決定するステップ;次いで
h)ステップc)で決定された濃度C3から、またステップe)で決定されたpHA5から、溶液A1の遊離酸度を決定するステップ;
を含み、ここで、
pHA2、及び体積V1及びV2は、溶液A3が色素の転移範囲内にあるpHA3と示されるpHを有するようなものであり;
濃度C2、及び体積V1及びV2は、錯化剤が溶液A3中の加水分解性カチオンに対して過剰であるようなものである、第2の方法でもある。
【0051】
この第2の方法は、第1の方法と同じ原理に基づくが、一方では、溶液A2が、遊離酸度を決定すべき溶液A1中に存在する加水分解性カチオンを錯化する薬剤を含み、他方では、この第2の方法は分光分析によって加水分解性カチオンの濃度を決定することを含み、この濃度は、溶液A1中の酸によってのみ供給されるH+プロトン濃度の決定に考慮されている点で後者と相違している。
【0052】
本発明によれば、錯化剤の選択は、この錯化剤が、溶液A1中に存在することが知られている、又は存在すると推定される加水分解性カチオンと安定かつ水溶性の錯体を形成することを可能にする限り、特に限定されるものではない。
【0053】
従って、錯化剤は、特にグリシン、クエン酸、酒石酸、シュウ酸又はコハク酸タイプのポリカルボン酸、グルコン酸、イドン酸又はガラクトン酸タイプのヒドロキシカルボン酸、グルカル酸、ムチン酸又はマンナル酸タイプのヒドロキシジカルボン酸、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)タイプのアミノポリカルボン酸、又はそれらの塩、例えばナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属の塩、カルシウム又はマグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩、あるいは遷移金属の塩であり得る。
【0054】
好ましくは、溶液A2中に存在する化合物は錯化剤としても使用され、これは、溶液A2中に存在する化合物が前述の錯化酸及びそれらの塩から選択される場合、特に、溶液A2がシュウ酸溶液又はその塩の場合に、特に可能である。
【0055】
本発明によれば、ステップb)は、好ましくは:
-溶液A2の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;
-溶液A3の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A3のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A2のスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算すること;
を含み、
溶液A2及びA3の光強度スペクトルは、有利には、CCDカメラを用いて取得される。
【0056】
このようにして得られた吸光スペクトルは、溶液A3、従って溶液A1中に存在する加水分解性カチオンの特徴を示すものである。
【0057】
ステップd)では、溶液A3中の加水分解性カチオンの濃度C3を、有利には、溶液A3についてステップc)で得られた吸光スペクトル上に見える吸光ピークから、やはりランベルト・ベールの法則を適用して、すなわち実際には、ステップc)で得られた吸光スペクトルが示す最大吸光度を、溶液A1中に可変濃度で存在することが知られている、又は存在すると推定されている加水分解性カチオンを含む水溶液から予め確立された標準曲線の吸光値と比較することによって、決定する。
【0058】
本発明によれば、ステップe)は、好ましくは:
-溶液A5の紫外可視領域の光強度スペクトルを取得すること;及び
-取得した溶液A5のスペクトルの光強度値と、取得した溶液A3のスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算すること;
を含み、
溶液A5の光強度スペクトルもまた、有利には、CCDカメラを用いて取得される。
【0059】
ステップf)は、ステップe)で得られた吸光スペクトルから溶液A5中の色素の酸及び塩基形態の少なくとも1つの濃度を決定するためのものであり、有利には、第1の方法のステップc)と同様に実施される。
【0060】
同様にして、ステップg)において、pHA5は、有利には、第1の方法のステップd)について上記で定義した式(1)及び(2)のうちの1つを用いて決定される。
【0061】
ステップh)において、[H+]で示される、H+プロトンのモル濃度として表される溶液A1の遊離酸度は、ステップc)において決定された濃度C3を考慮して、例えば第1の方法のステップe)について上記で定義した式(3)を用いて決定され、しかしここで、Yは以下の式(7)を適用することにより決定される。
【0062】
【0063】
式(7)において、
mは、錯化剤によるカチオンの錯化反応における加水分解性カチオンの化学量論的係数であり;
nは、この薬剤による加水分解性カチオンの錯化反応における錯化剤の化学量論的係数であり;そして
V1、V2、KHA、[A-]、[HA]及びC3は上記で定義した通りであり、V1及びV2はLで表され、[A-]、[HA]及びC3はmol/Lで表される。
【0064】
第1の方法又は第2の方法の何れかにおいて、溶液A2は、好ましくは、弱酸又は弱酸の塩を含む。
【0065】
好ましくは、溶液A2は、シュウ酸又はその塩、好ましくはシュウ酸ナトリウムを含む。
【0066】
さらに、色素は好ましくはブロモクレゾールグリーンであり、その転移範囲はpH3.8とpH5.4の間である。
【0067】
この場合、溶液A2は、0.27mol/Lのシュウ酸ナトリウムを含み、最初は8であるそのpHを、強酸、例えば硫酸の添加により、8未満でありながら5.4よりも高く、例えば5.5と6の間となるように調整した溶液であることが、特に好ましい。
【0068】
溶液A1としては、加水分解性カチオンを含む、又は含まない硝酸の水溶液であることが好ましい。
【0069】
しかしながら、溶液A1はまた、加水分解性カチオンを有する又は有さない、塩酸、硫酸、フッ酸などを含む水溶液、又はそれらの混合物など、硝酸以外の水溶液であってもよい。
【0070】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明を検証する試験に関するものであり、添付の図を参照して与えられる以下の更なる説明から明らかである。
【0071】
しかしながら、この更なる説明は、本発明の例示としてのみ与えられており、この主題を限定するものとしていかなる形でも解釈されるべきではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】0.27mol/Lのシュウ酸ナトリウムを含む溶液A2(pH5.7)についてCCDカメラを用いて取得された、400nmと750nmの間の波長範囲の光強度スペクトル(Iで示され、カウントで表わされる)を例として示す図である。
【
図2】そのスペクトルが
図1に示されている溶液A2を1000μLと、2mol/Lの硝酸と0.56mol/Lのウラン(VI)を含む水溶液A1のサンプル50μLと、を混合して得られた溶液A3について、CCDカメラを用いて取得された、400nmと750nmの間の波長範囲の光強度スペクトル(Iで示され、カウントで表わされる)を例として示す図である。
【
図3】その光強度スペクトルが
図2に示されている水溶液A3と、0.02質量%のブロモクレゾールグリーンの水溶液A4を150μLと、を混合して得られた水溶液A5について、CCDカメラを用いて取得された、400nmと750nmの間の波長範囲の光強度スペクトル(Iで示され、カウントで表わされる)を例として示す図である。
【
図4】溶液A3中に存在するウラニルカチオンの吸光スペクトル(Aで示され、任意単位で表わされる)を例として示す図であり、このスペクトルは、
図2に示す光強度スペクトルを測定値として、
図1に示す光強度スペクトルを測定ブランクとして使用することで得られたものである。
【
図5】溶液A5中に存在するブロモクレゾールグリーンの吸光スペクトル(Aで示され、任意単位で表わされる)を例として示す図であり、このスペクトルは、
図3に示す光強度スペクトルを測定値として、
図2に示す光強度スペクトルを測定ブランクとして使用することで得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の方法は、この方法が、既知の濃度の硝酸に加えて、ウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)も既知の濃度で含む水溶液の遊離酸度、すなわち硝酸の存在のみに関連する酸度を許容可能な偏り(理想的には5%未満)で求めることを可能にするかどうかを検証することを目的とした試験によって検証されている。
【0074】
これらの試験は、一方では手動で、他方では自動で実施された。
【0075】
実施例I-手動試験:
手動試験は、原子力グローブボックス内において周囲温度(20~25℃)で、以下を使用して実施された:
-溶液A2として:シュウ酸ナトリウムで飽和した水溶液であって、0.27mol/LのNa2C2O4を含み、硫酸の添加によりpHが5.7に調整されている、水溶液;
-分析されるA1溶液として:以下を含む一連の水溶液:
*1.0mol/Lから4.99mol/Lの範囲の濃度の硝酸、及び
*33g/L、66g/L又は133g/Lの濃度のウラン(VI)、又は20g/Lの濃度のプルトニウム(IV)の何れか;
-溶液A4として:0.02%のブロモクレゾールグリーンの水溶液;及び
-分光光度計として:10mmに等しい光路を有するセルを備えた、SpectraPro SP500i紫外可視分光光度計(Roper Scientific社製)。
【0076】
各試験は、1000μL体積の溶液A2、50μL体積の溶液A1、及び150μL体積の溶液A4を使用して実施された。
【0077】
試験条件におけるシュウ酸の酸解離定数KHA及びブロモクレゾールグリーンの酸形態の解離定数KHCは、予め実験によって決定された。
【0078】
試験条件では、KHAは3.8に等しく、一方で、KHCは4.55に等しい。
【0079】
試験は、以下の操作手順で行った:
1.分光光度計セルに溶液A2の体積を投入し、紫外可視領域(ここでは400nm-750nm)における光強度スペクトルを取得する;
【0080】
2.分光光度計セルに溶液A1の体積を加え、この体積を、このセル内に既に存在する溶液A2と混合し、前述と同じ波長における光強度スペクトルを取得する;
【0081】
3.分光光度計のセルに溶液A4の体積を加え、この体積を、このセルに既に存在する溶液A2/溶液A1の混合物と混合し、前述と同じ波長における光強度スペクトルを取得する;
【0082】
4.加水分解性カチオン、すなわちウラン(VI)の場合はUO2
2+、プルトニウム(IV)の場合はPu4+の上記と同じ波長における吸光スペクトルを、上記ポイント2で取得したスペクトルの光強度値と上記ポイント1で取得したスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算することにより決定する;
【0083】
5.色素の上記と同じ波長における吸光度スペクトルを、上記ポイント3で取得したスペクトルの光強度値と上記ポイント2で取得したスペクトルの光強度値との比の十進対数を計算することにより決定する;
【0084】
6.上記ポイント5で得られた吸光スペクトル上の色素の塩基形態について観察された最大吸光度から、及び予め確立された標準曲線を参照して、溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物中に存在する色素の塩基形態の濃度と、この混合物中の色素の全濃度との比Rを決定する;
【0085】
7.溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物のpHを、上記で定義した式(2)を用いて決定することであって、この場合、次のようになる:
【0086】
【0087】
8.上記で定義した式(3)を用いて、[H+]で示される、H+プロトンのモル濃度として表される溶液A1の遊離酸度を決定することであって、本実施例では、次のようになる:
【0088】
【0089】
上記式において、
pHA5は、上記ポイント7で決定された溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物のpHであり、そして
Yは、上記で定義された式(7)を用いて決定され、本実施例では、次のようになる:
【0090】
【0091】
上記式において、
mは1に等しく、nは、強シュウ酸過剰でUO2
2+とPu4+カチオンの錯化反応が次のように書かれるように、3に等しい:
UO2
2+ + 3C2O4
2- ⇔ UO2(C2O4)3
4-
Pu4+ + 3C2O4
2- ⇔ Pu(C2O4)3
4-
【0092】
C3は、溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物中のUO2
2+又はPu4+カチオンの濃度をmol/Lで表したものである。
【0093】
本試験では、濃度C3は実験的に得られたものではなく、分析溶液A1中のウラン(VI)又はプルトニウム(IV)の濃度をとることで式(7)に導入したものである。
【0094】
以下の表Iは、各分析液A1について、以下のことを規定している:
-ウラン(VI)又はプルトニウム(IV)の、g/Lで表される濃度、
-硝酸の、mol/Lで表される濃度、
-上記ポイント3で得られた溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物によって理論的に提示されるpH(「理論的pH」と称される)、
-上記ポイント7で決定されたこの混合物のpH(表Iでは「測定pH」と称される)、
-上記ポイント8で決定された、mol/Lで表される溶液A1の遊離酸度(表Iでは「測定遊離酸度」と称される)、並びに
-溶液A1中の硝酸の濃度とこの溶液の遊離酸度との間の、%で表される相対差。
【0095】
【0096】
この表は、本発明の方法によって、加水分解性カチオンを含む酸性水溶液の遊離酸度を、この酸度の真の値に対して最大でも4%の偏りで、しかも、これらの溶液の酸及び加水分解性カチオンの濃度に関係なく決定することが可能であることを示すものである。
【0097】
実施例II-自動化試験:
自動化試験は、以下を含む装置を用いて、周囲温度(20~25℃)で実施された;
-上記の実施例Iに記載された手動試験で使用されたものと同じ分光光度計;
-分光光度計のセル内に、マイクロピペットを用いて、試験の実施に必要な溶液A2、A1及びA4の体積を分配することが可能な装置;及び
-分配装置を制御するためのソフトウェア、並びに、分光光度計で取得した紫外可視スペクトルによって提供されるデータを処理及び分析するためのソフトウェア。
【0098】
これらの試験はまた、以下を用いて実施された:
-上記の実施例Iに記載された手動試験で使用したものと同じ溶液A2及び同じ溶液A4;及び
-分析用の溶液A1として:以下で溶液1、2、3、及び4と称される、以下を含む水溶液:
*1.08mol/Lから10.02mol/Lの範囲の濃度の硝酸、
*45g/Lから75g/Lの範囲の濃度のウラン(VI)、及びは4g/Lから 7g/Lの範囲の濃度のプルトニウム(IV)。
【0099】
これらの溶液の組成は、以下の表IIに規定されている。
【0100】
この表はまた、分析される各溶液A1について、この溶液の使用体積、並びに溶液A2及びA4の使用体積も規定している。
【0101】
【0102】
溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物のそれぞれにおけるウラニルUO2
2+及びPu4+カチオンの濃度を、この手順のポイント4で得られた吸光スペクトルから、予め確立された標準曲線を参照して決定した以外は、上記の実施例Iに記載したのと同じ手順に従って、溶液A1をすべて二重に分析した。
【0103】
上記のように、[H+]で示される、H+プロトンのモル濃度として表される溶液A1の遊離酸度を、上記で定義した式(3)を用いて決定した。
【0104】
以下の表IIIは、分析される各溶液A1及びこの溶液の各複製物について、以下のことを示している:
-操作手順のポイント4で得られた吸光スペクトルから決定された、g/Lで表される、溶液A1中のウラン(VI)の濃度及びプルトニウム(IV)の濃度、
-操作手順のポイント3で得られた溶液A2/溶液A1/溶液A4の混合物によって理論的に提示されるpH(「理論的pH」と称される)、
-操作手順のポイント7で決定されたこの混合物のpH(表IIIでは「測定pH」と称される)、
-操作手順のポイント8で決定された、mol/Lで表される溶液A1の遊離酸度(表IIIでは「測定遊離酸度」と称される)、並びに
-溶液A1中の硝酸濃度とこの溶液の遊離酸度との間に存在する、%で表される相対差。
【0105】
【0106】
この表は、本発明の方法を自動化して実施した場合、加水分解性カチオンを含む酸性水溶液の遊離酸度を、この酸度の真の値に対して2%未満の偏りで、しかも、これらの溶液中の酸及び加水分解性カチオンの濃度に関係なく決定することが可能であることを示すものである。