(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】完全無線ステレオヘッドセット用の適応型イヤーチップ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H04R1/10 104B
(21)【出願番号】P 2022547137
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020052598
(87)【国際公開番号】W WO2021155900
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヴァールガマー
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・ラクソネン
(72)【発明者】
【氏名】ピルッカ・ミュッルコスキ
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-042593(JP,Y1)
【文献】特開2015-056782(JP,A)
【文献】特開2015-005790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホンデバイス(1)を外耳道(4)に嵌め込むための装置であって、
解剖学的に形作られ、外耳道(4)に嵌め込まれるように適合された、圧縮性のクッション部材(5)であって、第1の側面(5A)から第2の側面(5B)へ延びる前記クッション部材(5)と、
前記クッション部材(5)内に配置されたチャネル(6)であって、前記チャネル(6)は、少なくとも2つの対向する側壁(7A、7B)を含む、チャネル(6)と、
前記側壁のうちの少なくとも1つ(7B)から対向する側壁(7A)に向かって延びるが、前記対向する側壁(7A)に結合はされない、少なくとも1つのスペーサ部材(8)と、を備え、
前記クッション部材(5)および前記チャネル(6)は楕円形に形作られ、前記チャネル(6)は、小さい湾曲で画定された対向する側壁の第1の対(71)と、大きい湾曲で画定された対向する側壁の第2の対(72)とを含み、
前記少なくとも1つのスペーサ部材(8)は、前記クッション部材(5)が非圧縮状態であっても圧縮状態であっても、音響波が前記チャネル(6)を通過できるように、前記対向する側壁(7A、7B)同士の間に最小限の隙間Cを設けるように構成され、さらに前記対向する側壁の第1の対(71)のうちの一方から突出するバンプ(9)を含み、前記バンプ(9)は前記クッション部材(5)と等質である、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスペーサ部材(8)は、2つのバンプ(9A、9B)を含み、各バンプ(9A/9B)は、前記対向する側壁の第1の対(71)のうちの一方からそれぞれ突出する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記クッション部材(5)は
、柔軟性および弾性のある材料で作られ、前記少なくとも1つのスペーサ部材(8)は、前記対向する側壁の第2の対(72)のうちの少なくとも1つに取り付けられた強化フランジ(10)を含み、前記強化フランジ(10)は、前記クッション部材(5)より柔軟性の低い材料で作られる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記クッション部材(5)は、シリコーンで作られる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスペーサ部材(8)は、2つの強化フランジ(10A、10B)を含み、前記各強化フランジ(10A/10B)は、前記対向する側壁の第2の対(72)のうちの1つにそれぞれ取り付けられる、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記スペーサ部材(8)は、前記チャネル(6)内で、部分的にのみ延びるように配置され、
前記クッション部材(5)は、前記チャネル(6)の前記側壁内に配置された連続溝(11)をさらに含み、前記スペーサ部材(8)が延びていない前記チャネル(6)の部分で、湾曲した外耳道(4)に前記クッション部材(5)を柔軟に適合させることを可能にする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記クッション部材(5)は、前記チャネル(6)を取り囲んでいる、囲まれた本体キャビティ(13)を有する、細長い中空体(12)を含み、これによってさらに曲げ柔軟性と圧縮性とを与える、請求項1から
6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記本体キャビティ(13)は、イヤホンハウジング(3)に結合するための結合溝(14)を設けるために、前記クッション部材(5)の片側(5A/5B)に向かって開いている、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記クッション部材(5)および前記スペーサ部材(8)は、
前記対向する側壁(7A、7B)同士の間の前記最小限の隙間Cが、圧縮状態で1~1.5mmの範囲になり、
前記圧縮状態で測定された前記クッション部材(5)の全幅が最小で3.5mmになり、
前記圧縮状態で測定された前記チャネル(6)の断面積が最小で5mm2になる、ように構成される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1から
9までのいずれか一項に記載の装置と、
前記第1の側面(5A)で、前記装置の前記クッション部材(5)に取り外し可能に結合されるように適合された、ハウジング(3)と、
前記ハウジング(3)内に配置され、音響信号に応答して、前記チャネル(6)を通して前記外耳道(4)に送達する音波(16)を生成するように構成された、スピーカ(15)と、を備える、イヤホンデバイス(1)。
【請求項11】
前記ハウジング(3)と前記クッション部材(5)との前記取り外し可能な結合は、前記クッション部材(5)の前記第1の側面(5A)に配置された結合溝(14)と、前記ハウジング(3)に配置された、対応する形状の結合リム(17)とのスナップ嵌め結合である、請求項
10に記載のイヤホンデバイス(1)。
【請求項12】
前記クッション部材(5)は、外耳道(4)に嵌め込まれたときに、前記外耳道(4)の断面をほぼ塞ぐように構成され、
前記クッション部材(5)と前記ハウジング(3)とは、結合されたときに、鼓膜に向かう前記外耳道(4)の第1の部分(4A)と、外部環境に向かう前記外耳道(4)の第2の部分(4B)との間に遮音性を与えるように配置される、
請求項
10または
11に記載のイヤホンデバイス(1)。
【請求項13】
請求項
10から
12のいずれか一項に記載の、少なくとも1つのイヤホンデバイス(1)と、
前記少なくとも1つのイヤホンデバイス(1)とデータ接続して配置され、前記データ接続を介して前記スピーカ(15)に送達する前記音響信号を生成するように構成された、ホストデバイス(2)とを含む、
システム。
【請求項14】
前記イヤホンデバイス(1)は、完全無線ステレオ(TWS)ヘッドセットであり、
前記ホストデバイス(2)は、モバイルスマートフォンであり、
前記データ接続は、ブルートゥースプロトコルを使用して確立される、
請求項
13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にイヤホン、ヘッドホン、およびヘッドセットなどのパーソナルリスニング音響デバイスの技術分野に関し、特に、完全無線ステレオ(TWS)インイヤー型ヘッドセット用の圧縮性のイヤーチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブルメディアプレーヤおよび携帯電話がますます普及するにつれて、ヘッドホンの使用が一般的になりつつある。以下の開示において、「ヘッドホン」という用語は、耳当て型ヘッドホンとともに、インイヤー型のヘッドホンやイヤホンを指すのに使用される。
【0003】
完全無線ステレオ(TWS)ヘッドセットなどのヘッドセットは、1つまたは複数のマイクを含むヘッドホンの一種であり、したがってハンズフリーで操作できる電話のハンドセットと等価の機能を提供することができる。このようなヘッドセットは、シングルイヤーピース(モノラル)、またはダブルイヤーピース(両方ともモノラル、またはステレオ)のいずれかで作られる。(TWS)ヘッドセットの多くの用途の中には、音楽を楽しんだり通信したりするための個人使用に加えて、航空機、劇場、またはテレビスタジオのインターコムシステム、およびコンソールまたはPCゲームがある。
【0004】
インイヤー型ヘッドホンは、端部に圧縮性のイヤーチップが付いたポータブルヘッドホンであり、外部環境からの雑音に対して少なくとも部分的な遮音性を与えるために、外耳道に挿入される。このようなインイヤー型ヘッドホンは小型であり、そして特に、公共交通機関での通勤や、その他飛行機などの騒音環境で、携帯して使用するのによく適しているため、人気がますます高まっている。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、このようなインイヤー型ヘッドホンの現行のイヤーチップは、大部分のユーザに最適な着け心地を提供していない。人間の耳の物理的な特性により、外耳道の形状および角度は人によって違っている(かつ1人の人の両耳の間でも違っている場合がある)。既存のイヤーチップ設計は、様々な耳の形状に部分的にしか適合せず、耳が細い場合や傾斜がある場合は特に困難になる。特に、既存のイヤーチップの多くは、快適性と、様々な耳への適合と、柔らかいイヤーチップが潰れるのを防ぐ手段との間で妥協を迫られており、外耳道に押し込まれている間は、ヘッドセットから耳へ音響信号を伝送するための音声ポートの開放を妨げていることが多い。ほとんどの外耳道は円形ではなく、解剖学的には楕円形であるが、実際には円形のイヤーチップが最も製造が容易である。しかしながら、最適な楕円形は、あらゆる状況で音響信号の伝送を行うように製造するのが困難である。
【0006】
一部のイヤーチップ製造者は、ヘッドホンに円形および楕円形の両方のイヤーチップを提供することによって、上述した問題に対する部分的な解決策を提案しているが、狭い形状または不規則な形状の外耳道に挿入するときに圧縮されることによって、しばしば音声ポートが容易に閉鎖され得る。他の専門業者の一部は、イヤーチップの本体を非常に硬くしているため、圧縮力を印加しても閉じられることはないが、このようなイヤーチップは様々な外耳道に適合せず、したがって着け心地がよくない。別の既存の解決策では、音声ポートの閉鎖を防止できる、中央に十字型の支持体を有するイヤーチップを提案しているが、この設計は外耳道が細いと柔軟性に欠けて着け心地もよくなく、構造として硬すぎる。
【0007】
したがって、長時間にわたって着け心地がよく、それと同時に、あらゆる状況で充分な音響信号を外耳道に伝え、容易かつ廉価で製造できるヘッドホンまたはヘッドセットのイヤーチップに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、イヤホンデバイスを外耳道に嵌め込むための改善した装置およびシステムを提供して、上述した問題を克服する、または少なくとも低減することである。
【0009】
上記およびその他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実装形態が、従属項、本明細書の説明、および図面で明らかになる。
第1の態様によれば、イヤホンデバイスを外耳道に嵌め込む装置が提供され、
解剖学的に形作られ、外耳道に嵌め込むように適合された、圧縮性のクッション部材と、
第1の側面から第2の側面へ延びる、クッション部材内に配置されたチャネルであって、チャネルは、少なくとも2つの対向する側壁を含む、チャネルと、
側壁のうちの少なくとも1つから対向する側壁に向かって延びるが、対向する側壁に結合はされない、少なくとも1つのスペーサ部材と、を備え、
少なくとも1つのスペーサ部材は、クッション部材が非圧縮状態であっても圧縮状態であっても、音響波が第1の側面から第2の側面へとチャネルを通過できるように、対向する側壁同士の間に最小限の隙間Cを設けるように構成される。
【0010】
(音響)チャネルの側壁から対向する側壁に向かって延びる一方で、側壁と結合はされないスペーサ部材をイヤーチップ(クッション部材)内に配置することによって、あらゆる外耳道の形状に一致する圧縮性と、(狭い外耳道内で圧縮されているときでも)あらゆる状況でチャネルを通して外耳道へ充分な音響信号を伝えることとをともに保証する。イヤーチップの構造が単純なことにより、イヤーチップは、長時間にわたって着け心地をよくすることができる柔軟な材料で、容易かつ廉価で設計および製造されることがさらに可能になる。
【0011】
一実施形態では、解剖学的に形作られたクッション部材は楕円形である。
【0012】
第1の態様の可能な一実装形態において、クッション部材およびチャネルは楕円形に形作られ、チャネルは、小さい湾曲で画定された対向する側壁の第1の対と、大きい湾曲で画定された対向する側壁の第2の対とを含む。
【0013】
第1の態様の別の可能な実装形態において、少なくとも1つのスペーサ部材は、対向する側壁の第1の対のうちの一方から突出するバンプを含み、バンプはクッション部材と等質である。
【0014】
第1の態様の別の可能な実装形態において、少なくとも1つのスペーサ部材は2つのバンプを含み、各バンプは対向する側壁の第1の対のうちの一方からそれぞれ突出する。
【0015】
第1の態様の別の可能な実装形態において、クッション部材は、柔軟性および弾性のある材料で作られ、少なくとも1つのスペーサ部材は、対向する側壁の第2の対のうちの少なくとも1つに取り付けられた強化フランジを含み、強化フランジは、クッション部材より柔軟性の低い材料で作られる。
【0016】
一実施形態では、クッション部材はシリコーンで作られる。別の可能な一実施形態では、クッション部材はショア硬さ25のシリコン材料で作られ、強化フランジは、好ましくはショア硬さ40~60の範囲の、より硬いシリコン材料で作られる。
【0017】
第1の態様の別の可能な実装形態において、少なくとも1つのスペーサ部材は2つの強化フランジを含み、各強化フランジは対向する側壁の第2の対のうちの一方にそれぞれ取り付けられる。
【0018】
第1の態様の別の可能な実装形態において、スペーサ部材は、チャネル内で、第1の側面と第2の側面との間に部分的にのみ延びるように配置され、クッション部材は、チャネルの側壁内に配置された連続溝をさらに含み、スペーサ部材が延びていないチャネルの部分で、湾曲した外耳道にクッション部材を柔軟に適合させることを可能にする。
【0019】
第1の態様の別の可能な実装形態において、クッション部材は、チャネルを取り囲んでいる、囲まれた本体キャビティを有する、細長い中空体を含み、これによってさらに曲げ柔軟性と圧縮性とを与える。
【0020】
第1の態様の別の可能な実装形態において、本体キャビティは、イヤホンハウジングに結合するための結合溝を設けるために、クッション部材の片側に向かって開いている。
【0021】
第1の態様の別の可能な実装形態において、クッション部材およびスペーサ部材は、対向する側壁同士の間の最小限の隙間Cが、圧縮状態で1~1.5 mmの範囲になり、圧縮状態で測定されたクッション部材の全幅が最小で3.5 mmになり、圧縮状態で測定されたチャネルの断面積が最小で5 mm2になるように構成される。
【0022】
第2の態様によれば、イヤホンデバイスが提供され、
第1の態様の可能な実装形態のいずれか1つにおける装置と、
第1の側面で、装置のクッション部材に取り外し可能に結合されるように適合された、ハウジングと、ハウジング内に配置され、音響信号に応答して、チャネルを通して外耳道に送達する音波を生成するように構成された、スピーカと、を備える。
【0023】
第1の態様の可能な一実装形態における、スペーサ部材を備える圧縮性のイヤーチップと、取り外し可能に結合される、スピーカを含むイヤホンハウジングとを組み合わせることによって、長時間にわたって着け心地がよいことと、あらゆる状況で充分な音響信号を外耳道に伝えることとがともに保証されたイヤホン設計が可能になる。
【0024】
第2の態様の可能な一実装形態において、ハウジングとクッション部材との取り外し可能な結合は、クッション部材の第1の側面に配置された結合溝と、ハウジングに配置された、対応する形状の結合リムとのスナップ嵌め結合である。
【0025】
第2の態様の別の可能な実装形態において、クッション部材は、外耳道に嵌め込まれたときは、外耳道の断面をほぼ塞ぐように適合され、その結果、クッション部材とハウジングとは、結合されると、鼓膜に向かう外耳道の第1の部分と、外部環境に向かう外耳道の第2の部分との間に、遮音性を与えることが可能になる。
【0026】
第3の態様によれば、
第1の態様の可能な実装形態のいずれか1つによる、少なくとも1つのイヤホンデバイスと、
少なくとも1つのイヤホンデバイスとデータ接続して配置され、データ接続を介してスピーカに送達する、音響信号を生成するように構成された、ホストデバイスとを含む、システムが提供される。
【0027】
データ接続するイヤホンデバイスをホストデバイスと組み合わせることにより、イヤホンデバイスは、それ自体は記憶装置を持たず、かつ限られた処理手段を含んで実装でき、小型化および軽量化が可能な簡素な構造になり、このことはTWSヘッドセットの場合は重要性が高い。
【0028】
第3の態様の可能な一実装形態において、イヤホンデバイスは、完全無線ステレオ(TWS)ヘッドセットであり、ホストデバイスはモバイルスマートフォンであり、データ接続はブルートゥースプロトコルを使用して確立される。
【0029】
これらおよび他の態様は、以下で説明される実施形態から明らかになる。
【0030】
本開示の以下の詳細な部分において、態様、実施形態、および実装形態が、図面に示されている例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の態様の一実施形態による、非圧縮状態および圧縮状態のクッション部材の3D前面図を示す。
【
図2】第1の態様の一実施形態による、スペーサ部材を示す断面図である。
【
図3】第1の態様の別の実施形態による、スペーサ部材を示す断面図である。
【
図4】第1の態様の別の実施形態による、クッション部材の半分を示す3D図である。
【
図5】第2の態様の一実施形態による、外耳道内に配置されたイヤホンデバイスの断面図を示す。
【
図6】第3の態様の一実施形態による、ホストデバイスとデータ接続するイヤホンデバイスを含むシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は本開示による装置を示し、解剖学的に形作られた、第1の側面5A(前面)と、第2の側面5B(背面)とを有する圧縮性のクッション部材5と、以下で
図5を参照して説明するスピーカ15などによって生成された音響信号を、クッション部材5を通して伝送することが可能になるように、第1の側面5Aから第2の側面5Bへ延びる、クッション部材5内に配置されたチャネル6とを備える。
【0033】
ここで「解剖学的に形作られた」とは、人体の部分、特に人体の耳介および外耳道の構造に基づいた、またはこれに適合するように設計された、考えられる形状をすべて網羅することを意味する。
【0034】
チャネル6は、少なくとも2つの対向する側壁7A、7Bと、スペーサ部材8とを含み、スペーサ部材8は、一方の側壁7Bから対向する側壁7Aに向かって、対向する側壁7Aに到達したり結合されたりすることなく延びる。
【0035】
左側の図は、非圧縮状態のクッション部材5の形状を示し、右側の図は、クッション部材5の圧縮状態を示す。図からわかるように、スペーサ部材8は、クッション部材5が非圧縮状態であっても圧縮状態であっても、音響波が第1の側面5Aから第2の側面5Bへとチャネル6を通過できるように、対向する側壁7Aと7Bとの間に最小限の隙間Cを設けるように構成される。
【0036】
可能な実施形態では、クッション部材5は楕円形である。別の可能な実施形態では、クッション部材5およびチャネル6はともに楕円形である。
【0037】
図2に示す一実施形態では、クッション部材5のチャネル6は、小さい湾曲で画定された、対向する側壁の第1の対71と、大きい湾曲で画定された、対向する側壁の第2の対72とを含む。スペーサ部材8は、対向する側壁の第1の対71のうちの一方から突出するバンプ9として実装されてもよく、バンプ9は
図1に示すように、クッション部材5と等質であるか、あるいは
図2に示すように、2つのバンプ9A、9Bとして実装されてもよく、各バンプ9Aまたは9Bは、対向する側壁の第1の対71の一方からそれぞれ突出している。これらの実施形態の等質の構造により、ヘッドホンに使用されるイヤーチップの製造を容易で安価にすることが可能になる。
【0038】
図3に示す別の実施形態では、クッション部材5は、シリコーンなどの柔軟性および弾性のある材料で作られ、少なくとも1つのスペーサ部材8が、対向する側壁の第2の対72のうちの少なくとも1つに取り付けられる強化フランジ10として実装される。図示されている実施形態では、クッション部材5は、2つの強化フランジ10Aおよび10Bを含み、各強化フランジ10Aまたは10Bは、対向する側壁の第2の対72のうちの一方にそれぞれ取り付けられる。この実施形態の重要な一態様は、(1つまたは複数の)強化フランジ10が、クッション部材5より柔軟性の低い材料で作られることである。可能な一実施形態において、クッション部材はショア硬さ25のシリコン材料で作られ、強化フランジは、好ましくはショア硬さ40~60の範囲の、より硬いシリコン材料で作られる。
【0039】
図4に示す別の可能な一実施形態において、スペーサ部材8は、チャネル6内で、第1の側面5Aと第2の側面5Bとの間に部分的にのみ延びるように配置され、これにより、側壁7Aと7Bとの間に充分な間隔を空けたまま、使用する材料を少なくして、製造コストの節約とともに構造の軽量化を達成することが可能になる。
【0040】
可能な一実施形態において、クッション部材5は、チャネル6の側壁内に配置された連続溝11をさらに含み、スペーサ部材8が延びていないチャネル6の部分で、湾曲した外耳道4にクッション部材5を柔軟に適合させることを可能にする。
【0041】
可能な一実施形態において、クッション部材5は、チャネル6を取り囲んでいる、囲まれた本体キャビティ13を有する、細長い中空体12を含み、これによってさらに曲げ柔軟性と圧縮性とを与えるとともに、製造コストをさらに節約する。可能な一実施態様において、本体キャビティ13は、
図5に示されているようなイヤホンハウジング3に結合するための結合溝14を設けるために、クッション部材5の片側5Aまたは5Bに向かって開いている。
【0042】
可能な一実施形態において、クッション部材5およびスペーサ部材8は、対向する側壁7Aと7Bとの間の最小限の隙間Cが圧縮状態で1~1.5 mmの範囲になるように構成される。
【0043】
可能な一実施形態において、クッション部材5およびスペーサ部材8は、圧縮状態で測定したクッション部材5の全幅が、最小で3.5 mmになるように構成される。
【0044】
可能な一実施形態において、クッション部材5およびスペーサ部材8は、圧縮状態で測定したチャネル6の断面積が最小で5 mm2になるように構成される。
【0045】
図5は、本開示によるイヤホンデバイス1を示し、本明細書で先に述べた、または図示した対応する特徴と同じまたは類似の特徴は、簡潔にするために、以前に使用したものと同じ参照符号で示されている。この図示されている実施形態では、イヤホンデバイス1は、装置のクッション部材5に、第1の側面5Aで取り外し可能に結合されるハウジング3を含む。
【0046】
一実施形態では、ハウジング3とクッション部材5との取り外し可能な結合は、クッション部材5の第1の側面5Aに配置された結合溝14と、ハウジング3に配置された、対応する形状の結合リム17とのスナップ嵌め結合である。
【0047】
ここで「スナップ嵌め結合」とは、最終製品を形成するために、通常はプラスチックである柔軟な部品を、部品の連結する構成要素を互いに押し付けて取り付けるのに使用される組み立て方法を指す。
【0048】
図5に示すように、クッション部材5は、外耳道4に嵌め込まれたときは、外耳道4の断面をほぼ塞ぐように適合されてもよく、その結果、クッション部材5とハウジング3とは、結合されると、鼓膜に向かう外耳道4の第1の部分4Aと、外部環境に向かう外耳道4の第2の部分4Bとの間に、遮音性を与えることが可能になる。
【0049】
スピーカ15がハウジング3内にさらに配置されて、音響信号に応答して、チャネル6を通して外耳道4に送達する音波16を生成するように構成されてもよい。スピーカ7は、最適な音波を生成するために、前方キャビティと、前方キャビティから分離された後方キャビティとを含み得る。
【0050】
可能な実施形態において、スピーカ15の全体的な出力レベル、または入力音響信号の信号成分間のバランスのうちの少なくとも1つを調節するために、音量つまみなどのダイヤルが、外部環境に向かって、ハウジング3にさらに配置されてもよい。
【0051】
可能な実施形態(図示せず)において、イヤホンデバイス1は、ハウジング3内に配置されたマイクをさらに備え、外部環境の方向から音波を捕捉するように構成されてもよい。一実施形態(これも図示せず)において、イヤホンデバイス1は、音響ビーム形成を可能にするように、イヤホンデバイス1のユーザの口元へ向けられるように構成された、少なくとも2つのマイクを備えてもよい。
【0052】
別の一実施形態において(これも図示せず)、イヤホンデバイス1は、イヤホンデバイス1のユーザの声の存在を振動を通じて検出するように構成された、音声加速度センサをさらに備えてもよい。
【0053】
このような追加入力は、スピーカ15用の入力音響信号に混合される、あるいはイヤホンデバイス1の他の機能(閉塞感除去など)を制御する、別の成分として使用できる別の入力信号を生成することができる。
【0054】
図6は、ハウジング3および結合されたクッション部材5を含む上述した任意の実施形態による少なくとも1つのイヤホンデバイス1と、少なくとも1つのイヤホンデバイス1とデータ接続するように構成されたホストデバイス2とを含む、本開示によるシステムを示す。
図6では、システムは1つのイヤホンデバイス1を含むものとして図示されているが、ほとんどの実施形態では、システムはイヤホンデバイス1を2つ含み、TWSイヤホンシステムに対応し、イヤホンデバイス1と有線接続することなく、ユーザの左耳と右耳とでそれぞれ使用されるように構成される。
【0055】
ホストデバイス2は、モバイルスマートフォンであってよく、データ接続は、例えば、ブルートゥースまたはブルートゥース低エネルギー(BLE)プロトコルを使用して確立されてもよい。
【0056】
様々な態様および実施態様が、本明細書の様々な実施形態に関連して説明された。しかしながら、開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された主題を実施する当業者によって理解および達成され得る。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、請求項に列挙されたいくつかの項目の機能を果たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒にまたは他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体または固体媒体のような適切な媒体上に格納/分配され得るが、インターネットまたは他の有線または無線電気通信システムを介してなど、他の形態でも分配され得る。
【0057】
特許請求の範囲で使用されている参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0058】
1 イヤホンデバイス
2 ホストデバイス
3 イヤホンハウジング
4 外耳道
4A 第1の部分
4B 第2の部分
5 クッション部材
5A 第1の側面、片側
5B 第2の側面、片側
6 チャネル
7A、7B 対向する側壁
8 スペーサ部材
9、9A、9B バンプ
10、10A、10B 強化フランジ
11 連続溝
12 中空体
13 本体キャビティ
14 結合溝
15 スピーカ
16 音波
17 結合リム
71 対向する側壁の第1の対
72 対向する側壁の第2の対
C 隙間