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特許7544845注入された結晶性および多孔性固体による気相抗菌剤の送達
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】注入された結晶性および多孔性固体による気相抗菌剤の送達
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3409 20060101AFI20240827BHJP
   A23B 4/16 20060101ALI20240827BHJP
   A23B 9/18 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
A23L3/3409
A23B4/16
A23B9/18
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2022556576
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 US2021023305
(87)【国際公開番号】W WO2021188989
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】62/992,133
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522369131
【氏名又は名称】オンザ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ONZA CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】メンデル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,エリック
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0190404(US,A1)
【文献】米国特許第02643941(US,A)
【文献】特開平07-102240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相抗菌剤が注入された固体の結晶を生成するための方法であって:
溶媒中の固体の溶液を提供すること;
気相抗菌剤を溶液に導入すること;および
固体を結晶化すること;を含む、方法。
【請求項2】
固体が、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気相抗菌剤が、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
気相抗菌剤が、オゾンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が、本質的に水から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
導入ステップが、気体を含む容積に溶液を噴霧することを含み、容積に含まれる気体が、気相抗菌剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結晶化ステップが、容積から残留溶媒を除去し、固体が容積の内部表面で結晶化することを可能にするために容積を通してキャリアガスを流すことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
キャリアガスが、気相抗菌剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
注入された結晶性固体であって:
固体格子構造;ならびに
格子構造の結晶、格子構造の穴、格子構造の結晶-結晶粒界、および格子構造の結晶の流体包有物の少なくとも1つの中に存在する気相抗菌剤の少なくとも1つの分子を含む、固体。
【請求項10】
固体が、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項9に記載の固体。
【請求項11】
気相抗菌剤が、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の固体。
【請求項12】
気相抗菌剤が、オゾンである、請求項11に記載の固体。
【請求項13】
請求項9に記載の注入された結晶性固体を含む、吸収性抗菌物品。
【請求項14】
注入された結晶性固体で含浸されたシート材料をさらに含む、請求項13に記載の吸収性抗菌物品。
【請求項15】
シート材料が、紙およびプラスチックからなる群から選択される、請求項14に記載の吸収性抗菌物品。
【請求項16】
請求項13に記載の吸収性抗菌物品を含む、肉または生の農産物のための容器。
【請求項17】
オゾン化された結晶性固体を製造する方法であって:
(a)オゾンを含むガス流を生成し、ガス流を密閉可能なチャンバに流し込むか、または密閉可能なチャンバを通過させること;
(b)溶媒中の結晶性固体の溶液を密閉可能なチャンバに噴霧すること;
(c)密閉可能なチャンバに第1のキャリアガスを流してオゾン化された結晶性固体を密閉可能なチャンバの内部表面上で結晶化させることにより、残留溶媒を密閉可能なチャンバから除去すること;および
(d)密閉可能なチャンバから残留オゾンを除去すること;を含む、方法。
【請求項18】
結晶性固体が、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
溶媒が、本質的に水から構成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
気相抗菌剤が、オゾンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(a)が、
(i)周囲空気から窒素を選択的に除去することによって酸素富化ガス流を生成するサブステップ;および
(ii)酸素富化ガス流中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換するサブステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)が実行される場合、オゾンは、密閉可能なチャンバの総ガス含有量の少なくとも約6.0重量%を構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
溶液の温度が、約170°Fである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
溶液が、密閉可能なチャンバ内に噴霧される前に、少なくとも約35psiまで加圧される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)が、少なくとも2回実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(d)が、密閉可能なチャンバから残留オゾンを排出するために、密閉可能なチャンバに負圧を適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(d)が、密閉可能なチャンバを通して第2のキャリアガスを流して、密閉可能なチャンバから残留オゾンおよび残留溶媒の少なくとも1つを同伴し、除去することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
第2のキャリアガスは、窒素を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(e)密閉可能なチャンバの内部表面からオゾン化された結晶性固体を収集すること;をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
オゾン化された結晶性固体を生成するためのシステムであって:
酸素富化ガス流を受け取り、酸素富化ガス流中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換して、オゾン含有ガス流を形成するように構成された少なくとも1つのオゾン発生器;
少なくとも1つのオゾン発生器からオゾン含有ガス流を受け取るように構成された密閉可能なチャンバ;
溶媒中の結晶性固体の溶液を受け取って加熱するように構成された熱源;溶液を事前に加圧するように構成された圧力容器;
圧力容器から予め加圧された溶液を受け取り、溶液をさらに加圧し、ノズルを介して密閉可能なチャンバ内に霧状の形態で溶液を分配するように構成されたアトマイザー;
密閉可能なチャンバへの溶液の分配の前に、アトマイザーのマニホールドおよび高圧ラインを加熱するように構成されたヒートトレース;および
密閉可能なチャンバから残留オゾンを除去するために、密封可能なチャンバに溶液を分配した後、密閉可能なチャンバを通して窒素を流すように構成された窒素源;を含む、システム。
【請求項31】
周囲空気から窒素を選択的に除去することによって酸素富化ガス流を生成するように構成された酸素濃縮器をさらに含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
結晶性固体が、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
溶媒が、本質的に水から構成される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
対象物の抗菌処理方法であって:
(a)気相抗菌剤を注入された結晶性固体の結晶を提供すること;および
(b)結晶性固体の結晶を、対象物の内部または表面上、または対象物を取り囲む環境に配置すこと;を含む、方法。
【請求項35】
結晶性固体が、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
気相抗菌剤が、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
気相抗菌剤が、オゾンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a)が、請求項1に記載の方法によって結晶性固体の結晶を作製することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(b)が、請求項17に記載の方法によって結晶性固体の結晶を作製することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(b)において、結晶性固体の結晶が、吸収性抗菌物品に含まれる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
吸収性抗菌物品が、結晶性固体の結晶で含浸されたシート材料を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
シート材料が、紙およびプラスチックからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
気相抗菌剤が、環境内に存在する液体に結晶が溶解すると、対象物体を取り囲む環境内に放出される、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
(c)結晶の少なくとも一部を溶解または非晶質にするステップをさらに含み、これにより、気相抗菌剤の少なくとも一部を対象物体の中または上に、または対象物体を取り囲む環境内に、放出するステップを含むことができる、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(c)が、対象物体の温度、対象物体を取り囲む環境の温度、対象物体の含水量、または対象物体を取り囲む環境の湿度のうちの少なくとも1つを変更することを含む、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月19日出願の米国仮出願第62/992,133号に対する優先権の利益を主張し、該出願の全体は、参照することにより本出願に組み込まれる。
技術分野
本開示は、一般に、抗菌剤を送達するための物品、方法、およびシステムに関し、具体的には、結晶性固体の格子構造、粒界および流体包有物への、および/または多孔性固体の細孔への気相抗菌剤の分子の注入に関する。
【背景技術】
【0002】
食卓塩(塩化ナトリウム)、砂糖(スクロース)、重曹(炭酸水素ナトリウム)の、3つの結晶性または潜在的に結晶性食品を合わせた世界の消費量は、年間3億トンを超えている。これらのうち、食卓塩と重曹は通常、結晶の形態で消費される;結晶形態の食卓糖の送達はそれほど頻繁ではないが、それでも一般的に知られ、遭遇する。
【0003】
結晶性固体の結晶には、多くの場合、液体の含有物、すなわち、格子構造の結晶内に含まれる、および/または格子構造の「ギャップ」または「穴」を占める液体および/または気体の分子が含まれる。流体もまた、結晶-結晶境界内に閉じ込められる。結晶性固体に含まれる流体は、一般に、結晶性固体の結晶化時に環境に存在する液体および/または気体を代表するものである。特に結晶が水および/または空気の存在下で形成される場合は、そのような流体は、一般に大気ガス、水素分子、およびヘリウム分子を含むが、格子構造またはその穴の中、または結晶-結晶境界間および/または流体包有物内に含まれるのに十分小さい他の分子も包含しうる。
【0004】
所望の液体および/または気体が、結晶化後に流体包有物として結晶性固体中に存在するように、結晶化前に所望の液体および/または気体を固体の環境に意図的に導入することによる方法を提供する可能性が、これまで深く調査されるか、または追求されたことはない。気相抗菌剤などの所望の流体を室温およびさまざまな圧力で捕捉することは、消費者への所望の流体の送達をより簡単、容易、時間がかからず、安価にするという点で非常に有利である。
【0005】
同様の考慮事項は、結晶性ではなく、多孔性である固体に付随する。非限定的な例として、細孔形成前または細孔形成中に固体と組み合わせて所望の流体を提供することにより、たとえば、マシュマロまたは別の多孔質固体の細孔内に所望の流体の分子を捕捉することが有利であろう。
【0006】
したがって、当技術分野では、特に室温条件下で、結晶性固体の格子構造、粒界、および/または流体包有物、および/または多孔性固体の細孔に、所望の流体を導入するための方法およびシステム、およびそれによって得られる結晶性および/または多孔性固体が必要とされている。非限定的な例として、付随する非結晶性および/または非多孔性食品の特性(たとえば、貯蔵寿命)を向上させるために使用され得る、そのような固体を含む製造品がさらに必要とされている。
【0007】
オゾンは酸素の3原子形態(O3)であり、標準的な状態では気体であり、比較的低い濃度(ppm)でも酸化抗菌効果があることが少なくとも75年前から知られている。水に可溶化されたオゾン(たとえば、リンス、ミスト、スプレー、またはバスとして)は、主に、通常数分程度の短時間で通常の二原子酸素(O2)に有利に分解されるという理由で、抗菌剤および消毒剤として長い間使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オゾンを使用した抗菌処理の多くの方法とシステムが知られているが、これらは通常、処置されるべきアイテム、体積、空間、環境などを取り巻く空気の強い紫外線またはイオン化を伴うため、かなりのエネルギー入力を必要とする。したがって、オゾン抗菌処理の、より簡単で安価な方法も当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概略
本発明の1つの態様では、気相抗菌剤が注入された固体の結晶を生成するための方法は、溶媒中の固体の溶液を提供すること;気相抗菌剤を溶液に導入すること;および固体を結晶化すること;を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、固体は、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0012】
いくつかの実施形態では、溶媒は、本質的に水から構成され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、導入ステップは、気体を含む容積に溶液を噴霧することを含むことができ、容積に含まれる気体は気相抗菌剤を含む。結晶化ステップは、容積から残留溶媒を除去し、固体が容積の内部表面で結晶化することを可能にするために容積を通してキャリアガスを流すことを含むことができるが、必ずしもそうである必要はない。キャリアガスは気相抗菌剤を含んでもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0014】
本発明の別の態様では、注入された結晶性固体は、固体格子構造;ならびに格子構造の結晶、格子構造の穴、格子構造の結晶-結晶粒界、および格子構造の結晶の流体包有物の少なくとも1つの中に存在する気相抗菌剤の少なくとも1つの分子を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、固体は、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0017】
いくつかの実施形態では、固体は、本明細書に開示される方法によって作製され得る。
【0018】
本発明の別の態様では、吸収性抗菌物品は、本明細書に開示される注入された結晶性固体を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、吸収性抗菌物品は、注入された結晶性固体で含浸されたシート材料をさらに含んでもよい。シート材料は、紙およびプラスチックからなる群から選択されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0020】
本発明の別の態様では、肉または生の農産物のための容器は、本明細書に開示される吸収性抗菌物品を含む。
【0021】
本発明の別の態様では、オゾン化された結晶性固体を製造する方法は、(a)オゾンを含むガス流を生成し、ガス流を密閉可能なチャンバに流し込むか、または密閉可能なチャンバを通過させること;(b)溶媒中の結晶性固体の溶液を密閉可能なチャンバに噴霧すること;(c)密閉可能なチャンバに第1のキャリアガスを流してオゾン化された結晶性固体を密閉可能なチャンバの内部表面上で結晶化させることにより、残留溶媒を密閉可能なチャンバから除去すること;および(d)密閉可能なチャンバから残留オゾンを除去すること;を含む。
【0022】
実施形態において、結晶性固体は、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、溶媒は、本質的に水から構成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のキャリアガスはオゾンを含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、(i)周囲空気から窒素を選択的に除去することによって酸素富化ガス流を生成するサブステップ;および(ii)酸素富化ガス流中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換するサブステップを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)が実行される場合、オゾンは、密閉可能なチャンバの総ガス含有量の少なくとも約6.0重量%を構成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、溶液の温度は、約170°Fであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、溶液は、密閉可能なチャンバ内に噴霧される前に、少なくとも約35psiまで加圧され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、少なくとも2回実施され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、ステップ(d)は、密閉可能なチャンバから残留オゾンを排出するために、密閉可能なチャンバに負圧を適用することを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、ステップ(d)は、密閉可能なチャンバを通して第2のキャリアガスを流して、密閉可能なチャンバから残留オゾンおよび残留溶媒の少なくとも1つを同伴し、除去することを含み得る。第2のキャリアガスは、窒素を含んでもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、(e)密閉可能なチャンバの内部表面からオゾン化された結晶性固体を収集することをさらに含んでもよい。
【0033】
本発明の別の態様では、オゾン化された結晶性固体を生成するためのシステムは、酸素富化ガス流を受け取り、酸素富化ガス流中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換して、オゾン含有ガス流を形成するように構成された少なくとも1つのオゾン発生器;少なくとも1つのオゾン発生器からオゾン含有ガス流を受け取るように構成された密閉可能なチャンバ;溶媒中の結晶性固体の溶液を受け取って加熱するように構成された熱源;溶液を事前に加圧するように構成された圧力容器;圧力容器から予め加圧された溶液を受け取り、溶液をさらに加圧し、ノズルを介して密閉可能なチャンバ内に霧状の形態で溶液を分配するように構成されたアトマイザー;密閉可能なチャンバへの溶液の分配の前に、アトマイザーのマニホールドおよび高圧ラインを加熱するように構成されたヒートトレース;および密閉可能なチャンバから残留オゾンを除去するために、密封可能なチャンバに溶液を分配した後、密閉可能なチャンバを通して窒素を流すように構成された窒素源;を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、システムは、周囲空気から窒素を選択的に除去することによって酸素富化ガス流を生成するように構成された酸素濃縮器をさらに含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、溶媒は、本質的に水から構成され得る。
【0037】
本発明の別の態様では、対象物の抗菌処理方法は、(a)気相抗菌剤を注入された結晶性固体の結晶を提供すること;および(b)結晶性固体の結晶を、対象物の内部または表面上、または対象物を取り囲む環境に配置すること;を含む。
【0038】
実施形態において、結晶性固体は、エリスリトール、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0040】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、本明細書に開示される方法によって結晶性固体の結晶を作製することを含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)において、結晶性固体の結晶は、吸収性抗菌物品に含まれ得る。吸収性抗菌物品は、結晶性固体の結晶で含浸されたシート材料を含んでもよいが、必ずしもそうである必要はない。シート材料は、紙およびプラスチックからなる群から選択されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0042】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、環境内に存在する液体に結晶が溶解すると、対象物体を取り囲む環境内に放出され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明方法は、(c)結晶の少なくとも一部を溶解または非晶質にするステップをさらに含み、これにより、気相抗菌剤の少なくとも一部を対象物体の中または上に、または対象物体を取り囲む環境内に、放出するステップを含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、対象物体の温度、対象物体を取り囲む環境の温度、対象物体の含水量、または対象物体を取り囲む環境の湿度のうちの少なくとも1つを変更することを含んでもよい。
【0045】
本開示の態様では、食品の結晶に気相抗菌剤を注入する方法は、食品グレードの溶媒中の食品の溶液を提供すること;気相抗菌剤を溶液に導入すること;および食品を結晶化すること;を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、食品は、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0048】
いくつかの実施形態では、食品グレードの溶媒は、本質的に水から構成され得る。
【0049】
本開示の態様では、食品の細孔に気相抗菌剤を注入する方法は、食品の液体前駆体を提供すること;気相抗菌剤を液体前駆体に導入すること;および液体前駆体を通気して食品を形成すること;を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、以下のうちの少なくとも1つが真実であり得る:(i)液体前駆体は、糖、水、およびタンパク質源を含む;および(ii)食品は、マシュマロである。タンパク質源は、卵白およびゼラチンからなる群から選択されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0051】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンである。
【0052】
本開示の態様では、注入された結晶性食品は、食品格子構造;ならびに格子構造の結晶、格子構造の穴、格子構造の結晶-結晶粒界、および格子構造の結晶の流体包有物の少なくとも1つの中に存在する気相抗菌剤の少なくとも1つの分子を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、食品は、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、スクロース、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、糖アルコール、酢酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンである。
【0055】
本開示の態様では、注入された多孔性食品は、複数の孔を有する食品;および複数の孔の少なくとも1つの中に存在する気相抗菌剤の少なくとも1つの分子を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、食品は、マシュマロであってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、気相抗菌剤は、殺菌剤および殺ウイルス剤のうちの少なくとも1つであり得る。気相抗菌剤はオゾンであってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0058】
本開示の態様では、吸収性抗菌物品は、本明細書に開示される注入された結晶性食品を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、吸収性抗菌物品は、注入された結晶性食品で含浸されたシート材料をさらに含んでもよい。シート材料は、紙およびプラスチックからなる群から選択されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0060】
本開示の態様では、吸収性抗菌物品は、本願明細書に開示される注入された多孔性食品を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、吸収性抗菌物品は、本質的に注入された多孔性食品からなり得る。
【0062】
本開示の態様では、肉製品用の容器は、本明細書に開示される吸収性抗菌物品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0064】
発明の詳細な記載
本明細書で使用する「結晶性」という用語は、特に明記しない限り、大気圧および室温で、高度に秩序化された微視的構造の原子の配列から構成され、全方向に広がる結晶格子を形成する固体であってもよい任意の材料を示す。
【0065】
本明細書で使用される「肉」という用語は、特に明記しない限り、人間または家畜によって消費されることを意図した動物の体の任意の部分を示す。
【0066】
本明細書で使用する「病原性」という用語は、特に明記しない限り、生物による感染によるか、または生物によって生成された毒素の消費によるかにかかわらず、ヒトまたは家畜に病気を引き起こす任意の生物を示す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「生の農産物」という用語は、人間または家畜によって消費されることを意図した未調理の植物を示す。
【0068】
本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、「約」、「およそ」などの用語は、数値の制限または範囲に関連して使用される場合、列挙された制限または範囲が最大10%まで変化する可能性があることを意味する。非限定的な例として、「約750」とは、675程度または825程度、またはそれらの間の任意の値を意味しうる。2つ以上の数値制限または範囲の間の比率または関係に関して使用される場合、「約」、「およそ」などの用語は、制限または範囲のそれぞれが最大約10%まで変化する可能性があることを意味する;非限定的な例として、2つの量が「およそ等しい」という記述は、2つの量の比率が0.9:1.1程度、または1.1:0.9程度(またはその間の任意の値)であることを意味し、また、4方向の比率が「約5:3:1:1」であるという記述は、比率の最初の数値が4.5から5.5の間の任意の値であり、比率の2番目の数値が2.7と3.3の間の任意の値であることなどを意味する。
【0069】
本明細書で使用される「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」、ならびに「および/または」は、動作において接続詞および選言の両方である開放式の表現である。たとえば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」、「A、B、およびCの1つ以上」、「A、B、またはCの1つ以上」および「A、B、および/またはC」の各表現は、A単独、B単独、C単独、AとBの併用、AとCの併用、BとCの併用、またはA、BおよびCの併用を意味する。
【0070】
「1つ(a)」または「1つ(an)」の実体という用語は、その実態の1つまたは複数を示すことに注意すべきである。そのため、用語「1つ」(またはan)、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用することができる。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、互換的に使用できることにも注意すべきである。
【0071】
本明細書に記載された実施形態および構成は、完全でも網羅的でもない。理解されるように、本発明の他の実施形態は、上記または以下で詳細に説明される特徴の1つまたは複数を単独でまたは組み合わせて利用することが可能である。
【0072】
本開示は、結晶性固体の結晶および/または多孔性固体の細孔に気相抗菌剤を注入するための方法およびシステム、ならびにそのような方法およびシステムに従って製造された気相抗菌剤を含有する結晶性および/または多孔性固体を提供する。本開示はさらに、気相抗菌剤が所望の方法および/または所望の速度で送達または放出され得るように、そのような結晶性および/または多孔性固体を含む製品を提供する。
【0073】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、方法は、溶媒中の潜在的に結晶性の固体の溶液を提供することによって開始する;溶液は、結晶形態の固体源を提供すること、および固体を溶媒に溶解させることを含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって提供され得る。多くの結晶性固体の溶液とその製造方法は、特に溶媒が水である場合、(たとえば、ブライン(水中の食卓塩)と単純なシロップ(水中の食卓糖))よく知られている。
【0074】
溶液を提供した後、気相抗菌剤は、任意の適切な手段によって溶液に導入される。非限定的な例として、たとえば、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの気泡として、気相抗菌剤をバブリングすることによって、および/または溶液のスプレー、ミスト、霧化バーストなどを、気相抗菌剤を含むガスの容量に分散させることによって、気相抗菌剤を溶液に導入することができる。
【0075】
最後に、気相抗菌剤が溶液に導入された後、注入された固体の結晶が形成され、必要に応じて、溶媒から分離および/または除去される。結晶は、溶媒の蒸発、沈殿(たとえば、温度誘発性沈殿、沈殿剤の導入など)、または化学的脱水(溶媒が水である場合)を含むがこれらに限定されない、任意の適切な結晶化方法によって形成され得る。流体包有の程度、結晶-オン-結晶ダイナミクス、および粒子形態、したがって結晶化後の結晶性固体内に含まれる気相抗菌剤の量は、結晶化の動力学および容器の設計に依存する。したがって、注入された結晶性固体の抗菌剤含有量および効果は、溶液が保持または導入される混合容器内の温度および圧力などの結晶化パラメータを制御することによって制御または調整することができる。溶媒から分離および/または除去された結晶は、バルクシップメント(bulk shipment)を含むがこれに限定されない、さらなる処理を受ける場合があるが、必須ではない。
【0076】
さらに、および/または、あるいは、注入された固体の結晶は、ガスヘッドスペースの下で溶解および蒸発プロセスによって形成されてもよく、ここで、ガスヘッドスペースは気相抗菌剤を含む。このような蒸発および再結晶化は、望ましくない副生成物を生成する反応に影響を及ぼさないか、または触媒しないように、室温で起こり得る。
【0077】
結晶性固体は、結晶形態で送達され得る任意の1つまたは複数の物質を含み得る。非限定的な例として、本開示に従って気相抗菌剤を注入することができる固体には、テーブルシュガー、重曹、食卓塩および任意の他の化学塩(たとえば、塩化カリウム)、エリスリトールなどが含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、糖であってもよい。本発明の実施において使用され得る糖の非限定的な例には、スクロース、ラクトース、フルクトース、グルコース、リキソース、キシロース、アラビノース、リボース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イオドース(iodose)、タロース、マルトース、ガラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ラクツロース、ツラノース、マルトトリオース、メレジトース、ラフィノース、スタキオース、フラクトオリゴ糖が含まれる。
【0079】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、糖アルコールであってもよい。本発明の実施において使用され得る糖アルコールの非限定的な例には、エリスリトール、グリセロール、エチレングリコール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール、マルトテトラトール、ポリグリシトール、アセスルファムカリウム、およびイソマルツロースが含まれる。
【0080】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、糖酸であってもよい。本発明の実施において使用され得る糖酸の非限定的な例には、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、およびスベリン酸が含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、非糖炭水化物であってもよい。本発明の実施において使用され得る非糖炭水化物の非限定的な例には、微結晶性セルロース、ベータグルカン、イヌリン、難消化性デンプン、ペクチン、ヘミセルロース、ガラクタン、アラビノキシラン、キサンタンガム、寒天、デキストラン、アガロース、アガロペクチン、ゼラチン、イソマルトオリゴ糖、マルトデキストリン、β-グルカン、キトサン、デキストリン、α-シクロデキストラン、β-シクロデキストラン、セファデックスLH-20、セファデックスG-10、セファデックスG-15、セファデックスG-25、およびセファデックスG-100が含まれる。
【0082】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、およびカラギーナンからなる群から選択されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、結晶性固体は、塩であってもよい。本発明の実施において使用され得る塩の非限定的な例には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸塩、重酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム四水和物、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウム、フッ化リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カリウムが含まれる。
【0084】
本開示の方法のさらなる実施形態において、方法は、溶媒中の潜在的に多孔性の固体の液体前駆体を提供することによって開始する。多孔性固体の液体前駆体、およびその製造方法はよく知られている;そのような液体前駆体の非限定的な例は、砂糖、水、およびタンパク質源(たとえば、卵白またはゼラチン)の混合物または溶液であり、マシュマロの前駆体である。
【0085】
液体前駆体を提供した後、気相抗菌剤を、任意の適切な手段によって液体前駆体に導入する。非限定的な例として、たとえば、マイクロスケールおよび/またはナノスケールの気泡として、気相抗菌剤をバブリングすることによって、および/または溶液のスプレー、ミスト、霧化バーストなどを、気相抗菌剤を含むガスの容量に分散させることによって、気相抗菌剤を溶液に導入することができる。
【0086】
最後に、気相抗菌剤が液体前駆体に導入された後、一般に(必ずというわけではないが)、エアレーションによって多孔性固体が形成される。エアレーションは、任意の適切な手段によって実行され得る。流体包有度と細孔の形態、したがって、細孔形成後の多孔性固体内に含まれる気相抗菌剤の量は、エアレーションおよび/または細孔形成の動力学ならびに容器の設計に依存する。したがって、注入された多孔性固体の抗菌剤含有量および効果は、液体前駆体が保持される混合容器内の温度および圧力などのエアレーションおよび/または細孔形成のパラメータを制御することによって制御または調整することができる。
【0087】
注入された多孔性固体の抗菌剤含有量および効果を制御または調整するために制御され得る別のパラメータは、多孔性固体の多孔度である。非限定的な例として、多孔性固体は、約5%まで、約10%まで、約15%まで、約20%まで、約25%まで、約30%まで、約35%まで、約40%まで、約45%まで、約50%まで、約55%まで、約60%まで、約65%まで、約70%まで、約75%まで、約80%まで、約85%まで、約90%、または約95%までの多孔度を有してもよい。多孔性固体の多孔度は、抗菌剤が存在する細孔の割合、細孔からの抗菌剤の放出速度および/または拡散速度などに影響を与え得る。
【0088】
さらに、および/または、あるいは、注入された多孔性固体は、ガスヘッドスペースの下で液体前駆体を泡立てることによって、および/または、溶液のスプレー、ミスト、霧化バーストなどを、気相抗菌剤を含むガスヘッドスペースに分散させることによって、形成されてもよく、ここで、ガスヘッドスペースは気相抗菌剤を含む。このような細孔形成の様式は、望ましくない副生成物を生成する反応に影響を及ぼさないか、または触媒しないように、室温で起こり得る。
【0089】
多孔性固体は、多孔性形態で送達され得る任意の1つまたは複数の物質を含み得る。非限定的な例として、本開示による気相抗菌剤を注入することができる固体には、マシュマロが含まれる。
【0090】
本開示の結晶性および/または多孔性固体は、一緒に包装される食品の貯蔵寿命を延ばすために利用され得る。特に、本開示の注入された固体(および/またはそれから製造された、紙またはプラスチックライナーなどの物品)は、肉または生の農産物、たとえば、牛肉製品、豚肉製品、家禽製品、魚製品、袋入りサラダ製品および同様の生の青果物製品などの包装内で、またはその一部として提供され得る。いくつかの実施形態では、注入された固体(またはそれを含む物品)は、肉または生の農産物からの血液、凝結液、または他の液体を吸収または受け取るように適合させることができ、その後、固体は溶解し、抗菌剤を包装内に放出することができる。このように、肉または生の農産物は、包装および出荷後(たとえば、購入を待って食料品店の冷蔵庫のケースに保管されている間)でも抗菌処理を受けることができ、それにより、肉または生の農産物を損傷することなく貯蔵寿命を大幅に延ばすことができ、いくつかの実施形態では、消費に対するその適合性(味、安全性、栄養成分など)を高めさえする。
【0091】
本発明の抗菌剤注入固体は、広範囲の病原性微生物に対して有効であり得る。第1の非限定的な例として、固体は、殺菌効果を有し得る、すなわち、エロモナス・キャビエ、エロモナス・ハイドロフィラ、エロモナス・ソブリア、バチルス・セレウス、ブルセラ属、カンピロバクター・ジェジュニ、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、コリネバクテリウム・ウルセランス、コクシエラ・バーネッティ、腸管出血性大腸菌、リステリア菌、プレシオモナス・シゲロイデス、シュードアルテロモナス・テトラオドニス、シュードモナス属、サルモネラ菌、シゲラ属、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ、ビブリオ・バルニフィカス、エルシニア・エンテロコリチカ、およびエルシニア偽結核菌などの病原菌に効果的であり得る。第2の非限定的な例として、固体は殺菌効果を有し得る、すなわち、アルテルナリア種、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・パラシチカス、セファロスポリウム属、フザリウム属、マイロセシウム属スタキボトリス属、およびトリコデルマ種などの病原性真菌に対して効果的であり得る。第3の非限定的な例として、固体は、殺ウイルス効果があり得る、すなわち、エンテロウイルス属、ヘパトウイルスA、ノロウイルス属、オルソヘペウイルスA、ロタウイルス属、ならびにコロナウイルス(たとえば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2))などの病原性ウイルスに対して効果的であり得る。第4の非限定的な例として、固体は、抗寄生虫効果を有しうる、すなわち、扁形動物(たとえば、ジフィロボトリウム属、ウシ肝蛭、吸虫、無鉤条虫、および有鉤条虫)、線虫(アニサキス属、アスカリス・ルンブリコイデス、ユーストロングリデス属、旋毛虫、および鞭虫)、および原生動物(たとえば、アカントアメーバ属およびその他の自由生活性アメーバ、クリプトスポリジウム・パルバム、サイクロスポーラ、赤痢アメーバ、ジアルディア・ランブリア、サルコシスティス・ホミニス、サルコシスティス・スイホミニス、トキソプラズマ原虫)などの病原性寄生虫に対して効果的であり得る。
【0092】
本開示の実施形態には、たとえば、食品のパッケージに組み込まれているオゾン分子を含むマシュマロなどの注入された固体が含まれる。包装された食品の輸送および保管中に、注入された固体からオゾンが徐々に放出され、それによって包装された食品に抗菌または殺菌効果が発揮される。これらの実施形態の1つの利点は、包装された食品を抗菌オゾン処理に付すために高価な装置または機械が必要とされず、注入された固体が、包装された食品の通常の製造過程で包装内に迅速かつ安価に配置され得ることである。
【0093】
本開示のいくつかの実施形態はまた、オゾンをカプセル化し、食品の包装に配置することができる袋、ライナー、パッドなどの製品を含む。いくつかの実施形態では、物品の材料、たとえば、紙、プラスチックなどは、オゾンを注入された結晶性固体(塩または砂糖など)を含浸させることができ、これにより、製品が液体(血液、凝結液など)を吸収するときにオゾンがパッケージ内に放出されることが可能であり、結晶性固体が溶解する。さらに、および/または、あるいは、水分および食物流体は、徐々に、または1回以上の個別の回数で、オゾンを含むカプセル化媒体を物理的に分解することができる。さらに別の実施形態では、物品は、空隙を含むキルティングまたは型打ちされた材料を含むことができ、空隙は、周囲環境よりも高い圧力でオゾンを含み、それによりオゾンは浸出によって食品包装内に放出され得る;これらの実施形態では、制御された、および/または、所望の浸出速度を提供するために、異なる材料および包装媒体を選択することができる。これらの実施形態の1つの利点は、既存の生産ラインまたは設備を一新または改造する必要がないように、食品包装に既に使用されている他の材料を有利に利用できることである。
【0094】
本開示の実施形態はまた、抗菌剤が注入された結晶性固体の結晶を使用して対象品目を抗菌処理する方法を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抗菌剤が注入された結晶を対象品目(たとえば、肉または生の農産物の一部)の表面に直接適用するステップを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抗菌剤が注入された結晶を「ルーズ」または「バルク」の形態で対象品目(たとえば、生肉用の容器、生農産物の袋など)の包装に加えるステップ、および/または対象品目が出荷または輸送される輸送用コンテナ(たとえば、冷蔵トラック)に加えるステップを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、抗菌剤が注入された結晶を含む製造品(たとえば、袋、ライナー、パッドなど)を、対象品目の包装内および/または対象品目が出荷または輸送される輸送用コンテナ内に配置するステップを含む。これらの方法の実施において、抗菌剤が注入された結晶が抗菌剤を放出して、対象品目の抗菌処理を可能にするメカニズムは、本開示全体にわたって記載される。
【0095】
本発明による抗菌処理は、一般に、抗菌剤が注入された結晶性固体の固体媒体またはマトリックスから周囲の雰囲気または環境への気相抗菌剤の浸出または他の物理的放出によってもたらされることが明確に理解されるべきである。したがって、抗菌処理の適切な対象品目は、そのような雰囲気または環境内の任意の表面、品目、または物質、あるいは実際には雰囲気または環境自体であり得る。第1の非限定的な例として、本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体が、食品の包装に配置される場合、抗菌処理の対象品目は食品(たとえば、肉または生の農産物)および/または包装の内部表面または内部容積であり得る。第2の非限定的な例として、本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体が、一定量の液体に入れられる場合、抗菌処理の対象品目は、一定量の液体自体のいずれか1つ以上(たとえば、一定量の廃水または潜在的に汚染された飲料水)、一定量の液体を保持するコンテナまたは容器、あるいは一定量の液体を取り囲むか、または隣接するガスのヘッドスペースであり得る。第3の非限定的な例として、本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体が、部屋または他の密閉された空間内の表面上に配置される場合、抗菌処理の対象品目は、固体が配置される表面(たとえば、バスルーム、キッチン、もしくは病院の手術室などの、カウンターまたはテーブル)および/または密閉された空間の空気であり得る。したがって、本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体は、食品媒介性、表面媒介性、水媒介性(または他の液体媒介性)、および/または空気媒介性(または他のガス媒介性)の微生物に対して有効であり得る。
【0096】
本明細書で開示されるように、気相抗菌剤の分子は、結晶性固体の格子構造の結晶、結晶性固体の格子構造の穴、結晶性固体の格子構造の結晶-結晶粒界、および/または結晶性固体の格子構造の結晶の流体包有物のいずれか1つ以上の内部に存在し得る。したがって、気相抗菌剤は、格子構造から放出され、格子構造の破壊時に周囲環境に対して抗菌効果を発揮するために利用可能になり得る。このような破壊は、非限定的な例として、結晶性固体が接触する液体(たとえば、肉製品から吸収された血液、湿った空気中に存在する水分など)に結晶性固体を溶解すること、または結晶状態から非晶質状態への結晶性固体の相変化(たとえば、温度の上昇による)によって達成され得る。結果として、本発明の方法によれば、第2の条件(たとえば、高温または高湿度など)にさらされるまで、数日、数週間、または数ヶ月にわたって非常に安定したまま(すなわち、格子構造からの気相抗菌剤の拡散または浸出がほとんどまたはまったくない)であり得る1つの条件(たとえば、低温または低湿度など)下で抗菌剤が注入された結晶性固体を製造することが可能である。このようにして、抗菌剤が注入された結晶性固体の固体媒体またはマトリックスからの気相抗菌剤の放出機構を選択または制御して、対象品目、雰囲気、または環境の性質に応じて抗菌処理レジメンを適応させることができる。さらに、抗菌剤が注入された結晶性固体を製造し、使用前に長期間保存することができる。
【0097】
本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体は、広範囲の湿度/周囲水分条件下で気相抗菌剤を効果的に放出するように構成され得ることが明確に理解されるべきである。より具体的には、いくつかの実施形態では、気相抗菌剤の放出は、溶媒(たとえば、水)などの液体を結晶に適用することによって、および/または結晶が配置される環境の湿度を上げることによって、誘発または加速され得るが、それにもかかわらず、気相抗菌剤は、たとえば、比較的高い周囲温度および/または周囲温度の上昇の結果として、「乾燥」条件下(すなわち、比較的乾燥した雰囲気で、水分または他の液体の添加なし)でも効果的に放出され得る。
【0098】
本発明の組成物および方法の別の関連する利点および利益は、気相抗菌剤の制御放出および/または持続放出を提供できることである。具体的には、当業者は、さまざまな結晶性固体が、温度と湿度の特定の条件下で、融解、溶解などを行い、所望の濃度の気相抗菌剤を有する抗菌剤が注入された結晶性固体の所望の質量を選択して、特定の予想される温度および/または湿度条件下で、選択された時間にわたって、選択された質量、体積などを有する対象に対して抗菌効果を発揮することができる速度を理解している。したがって、本発明の組成物は、特定の用途のために有利に調整または設計され得る。
【0099】
ここで図1を参照すると、オゾン化された結晶性固体を生成するためのシステム100が示される。システム100は、酸素濃縮器101、1つまたは複数のオゾン発生器102、密閉可能なチャンバ103、熱源104、圧力容器105、アトマイザー106、ノズル107、空気圧縮機108、ヒートトレース109、および窒素源110。
【0100】
システム100の動作中、酸素濃縮器101は、周囲空気から酸素富化ガス流111を生成し(たとえば、圧力スイング吸着および/または膜分離によって)、この酸素富化ガス流111をオゾン発生器102に提供し、発生器は、酸素富化ガス流111中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換する(たとえば、コロナ放電法、紫外線法、コールドプラズマ法、および/または電解法など)。このオゾン含有流112の生成は、連続、半連続、またはバッチであり得る。酸素濃縮器101は、本発明の範囲内のシステム100の実施形態において、酸素富化ガス流111(たとえば、少なくとも約40重量%の酸素含有量を有するガス流)をオゾン発生器112に提供する任意の適切な手段によって置換または補足されてもよいことが明確に理解されるべきである。
【0101】
いったん発生すると、オゾン含有流112は、オゾン発生器102から密閉可能なチャンバ103に流れ込んで、典型的には約0.001psiと約2.500psiの間、より典型的には約0.625psiと約1.875の間、および最も典型的には約1.25psiの正圧を密閉可能なチャンバ103内に生成する。密閉可能なチャンバ103内に所望のオゾン濃度を達成するのに十分な時間、オゾンを密閉可能なチャンバ103に流した後、さらなる材料を密閉可能なチャンバ103に導入する;典型的には、所望のオゾン濃度は、密閉可能なチャンバ103内の総ガスの少なくとも約3.0wt%、少なくとも約3.5wt%、少なくとも約4.0wt%、少なくとも約4.5wt%、少なくとも約5.0wt%、少なくとも約5.5wt%、少なくとも約6.0wt%、少なくとも約6.5wt%、少なくとも約7.0wt%、少なくとも約7.5wt%、少なくとも約8.0wt%、少なくとも約8.5wt%、少なくとも約9.0wt%、少なくとも約9.5wt%、または少なくとも約10.0wt%であり得る。以下でより詳細に説明するように、結晶性固体の霧状溶液が密閉可能なチャンバ103に導入される場合を除いて、製造プロセス全体を通して、オゾンは密閉可能なチャンバ103を通って流れ続ける。当業者は、密閉可能なチャンバ103の容積およびオゾン化された結晶性固体の所望の生成速度に応じて、適切な流速および時間を選択する方法を理解するであろう;非限定的な例として、密閉可能なチャンバ103の容積が約2立方フィートである場合、オゾン含有流112は、毎分約10リットルの速度で約2時間、密閉可能なチャンバ103を通って流れることができる。
【0102】
これとは別に、熱源104を使用して、溶媒(典型的には常に水であるとは限らない)中の結晶性固体を所望の程度に溶解する、および/または結晶性固体に所望の非晶質度を誘導するのに十分な温度まで溶媒を加熱する。非限定的な例として、結晶性固体がエリスリトールであり、2重量部のエリスリトールと1重量部の水である溶液を形成することが望ましい場合、熱源104を使用して水を約170°Fの温度まで加熱することができる;当業者は、選択された結晶性固体および溶媒、ならびに得られる溶液中の結晶性固体の所望の濃度に基づいて適切な温度を選択する方法を理解するであろう。熱源104は、溶媒への結晶性固体の添加前、添加中、および/または添加後に溶媒を加熱することができる。溶媒が適切な温度に達し、結晶性固体がその中に所望の程度まで溶解すると、ヒートトレース109が起動されて、アトマイザー106のマニホルドおよびアトマイザー106から密閉可能なチャンバ103への高圧ラインを加熱して、溶液がアトマイザー106を通過して密閉可能なチャンバ103に入る際に溶液が冷却する程度を減少させる。この時点で、圧力容器105およびアトマイザー106をプライミングし、フラッシュし(たとえば、熱水または同様のもので)、残留溶媒または汚染物質を取り除くことができる。
【0103】
溶媒中の結晶性固体の溶液が調製されると、酸素濃縮器101およびオゾン発生器102が停止され、密閉可能なチャンバ103が密閉される(すなわち、入力および/または出力バルブが閉じられる)。次に、加熱された結晶性固溶体114は、熱源104から圧力容器105に移され、圧力容器105は、溶液の過度の冷却を防ぐために予熱されることが好ましく、空気圧縮機108を使用して適切な程度、約25psiから約55psiの間の圧力、より典型的には約30psiから約50psiの間の圧力、さらにより典型的には約35psiから約45psiの間の圧力、そして最も典型的には約40psiの圧力に加圧される。次いで、アトマイザー106は、充填される前に、加熱された溶液の一部でプライミングされ得る。
【0104】
次いで、アトマイザー106に結晶性固体114の加熱溶液を充填し、結晶性固溶体114を(たとえば、約1,000psiまで)大きく加圧し、結晶性固溶体の噴霧バースト113を、ノズル107を通して密閉可能なチャンバ103内に分配する。適切なノズル107を選択して、適切な流速および圧力で結晶性固溶体を密閉可能なチャンバ103に送達することができる;非限定的な例として、密閉可能なチャンバの容積が約2立方フィートである場合、ノズル107は、毎分約0.06リットルの流速および約1,000psiの圧力で溶液を送達するように選択され得る。その後、アトマイザー106は、密閉可能なチャンバ103から切断または分離され得る。アトマイザー106内に残っている溶液はすべて洗い流され、アトマイザー106は(たとえば、温水などを使用して)清浄化され、ヒートトレース109は停止される。次いで、酸素濃縮器101およびオゾン発生器102が再起動され、密閉可能なチャンバ103の入口弁および出口弁が再び開かれ、オゾンが再び密閉可能なチャンバ103を通って流れることが可能になる。このように、オゾンの流れは密閉可能なチャンバ103から水分を除去し、オゾン化された結晶性固体を、乾燥させ、オゾンに富む環境で密閉可能なチャンバ103の内部表面上に形成させることができる。次に、上記で詳述した任意の1つまたは複数の手順を繰り返して、密閉可能なチャンバ103の内部表面上にオゾン化された結晶性固体をさらに生成および形成できるようにすることができる。
【0105】
オゾン化された結晶性固体の所望の塊が生成され、密閉可能なチャンバ103の内面に堆積されると、残留水分を除去し、乾燥させ、密閉可能なチャンバ103内にオゾン化された結晶性固体の最後の「バッチ」を形成させるために、追加の時間(実施形態では約4時間であるが、当業者によって選択可能である)、オゾンを密閉可能なチャンバ103に流してもよい。次いで、酸素濃縮器101およびオゾン発生器102は、最終的に停止されてもよく、その後、密閉可能なチャンバ103が再び密閉され、適切な期間放置される(実施形態では約12時間であるが、当業者によって選択可能である)。次いで、窒素源110を活性化することができ、窒素流115を密閉可能なチャンバ103に流して、密閉可能なチャンバ103内に残っている残留「遊離」オゾン(すなわち、オゾン化された結晶性固体の結晶内に捕捉されなかったオゾン)を除去することができる。最後に、密閉可能なチャンバ103を開け、オゾン化された結晶性固体が収集することができる。オゾン化された結晶性固体の総質量は、ガス流量の規模、密閉可能なチャンバ103に導入される溶液の量などに依存するが、2回のバースト113後、25~30グラムの総収量は、約2立方フィートの容積を有する密閉可能なチャンバ103に典型的である。
【0106】
ここで図2を参照すると、オゾン化された結晶性固体を製造するための方法200が示されている。方法200は、オゾン発生ステップ201、溶液分配ステップ202、乾燥ステップ203、およびオゾン排気ステップ204を含む。
【0107】
方法200のオゾン発生ステップ201では、オゾンを含むガス流が生成され、密閉可能なチャンバに導入される。オゾン含有流は、任意の適切な既知の方法によって生成することができるが、特定の実施形態では、最初に周囲空気から酸素富化ガス流を生成し(たとえば、圧力スイング吸着および/または膜分離によって)、次いで、酸素富化ガス流中の二原子酸素の少なくとも一部をオゾンに変換する(たとえば、コロナ放電法、紫外光法、低温プラズマ法、および/または電解法による)。オゾン発生ステップ201は、連続プロセス、半連続プロセス、またはバッチプロセスとして実施することができ、最も一般的には、密閉可能なチャンバを約0.001psiから約2.500psiの間、より典型的には約0.625psiから約1.87psiの間、最も典型的には約1.25psiの正圧に加圧することになる。オゾン発生ステップ201の一部として、オゾン含有流は、密閉可能なチャンバ内に所望のオゾン濃度を達成するのに十分な時間、密閉可能なチャンバを通って流れることができ、その後、さらなる材料が密閉可能なチャンバに導入される;典型的には、所望のオゾン濃度は、密閉可能なチャンバ内の層ガスの少なくとも約3.0wt%、少なくとも約3.5wt%、少なくとも約4.0wt%、少なくとも約4.5wt%、少なくとも約5.0wt%、少なくとも約5.5wt%、少なくとも約6.0wt%、少なくとも約6.5wt%、少なくとも約7.0wt%、少なくとも約7.5wt%、少なくとも約8.0wt%、少なくとも約8.5wt%、少なくとも約9.0wt%、少なくとも約9.5wt%、または少なくとも約10.0wt%であり得る。当業者は、密閉可能なチャンバの容積およびオゾン化された結晶性固体の所望の生産速度に応じて、適切な流速および時間を選択する方法を理解するであろう;非限定的な例として、密閉可能なチャンバの容積が約2立方フィートである場合、オゾン含有流は、密閉可能なチャンバを通して毎分約10リットルの速度で約2時間流され得る。
【0108】
方法200の溶液分配ステップ202では、溶媒中の結晶性固体の加熱溶液が霧化され、オゾンを含む密閉可能なチャンバに分配される。特に、溶媒は、溶媒中の結晶性固体を所望の程度に溶解するのに十分な温度まで加熱することができ、および/または溶媒への結晶性固体の添加前、添加中、および/または添加後に、結晶性固体に所望の非晶質度を誘導することができる;当業者は、選択された結晶性固体および溶媒、ならびに得られる溶液中の結晶性固体の所望の濃度に基づいて適切な温度を選択する方法を理解するであろう。溶媒中の結晶性固体の溶液が調製されると、密閉可能なチャンバを密閉することができ(すなわち、入力バルブおよび/または出力バルブを閉じる)、結晶性固体の溶液を適切な程度に加圧してからノズルを介した噴霧バーストにより密閉可能なチャンバに分配することができる。その後、密閉可能なチャンバの入力および出力バルブを再び開けて(そして、適切であれば、オゾン発生ステップ201で使用される装置を再作動させてさらなるオゾンを生成することができる)、オゾンが再び密閉封可能なチャンバを通って流れるようにすることができ、これにより、密閉可能なチャンバから水分が除去され、オゾン化された結晶性固体が乾燥され、オゾンに富む環境で密閉可能なチャンバの内面に形成される。
【0109】
溶液分配ステップ202は、1回だけ実行されてもよいし、所望の質量のオゾン化された結晶性固体を生成するのに必要なだけ繰り返されてもよいことが明確に理解されるべきである。
【0110】
方法200の乾燥ステップ203では、残留水分を除去し、最終的な乾燥および密閉可能なチャンバ内でのオゾン化された結晶固体を引き起こすために、オゾンを追加の時間(実施形態では約4時間であり得るが、当業者によって選択可能である)密閉可能なチャンバに流した。密閉可能なチャンバを通るオゾンの最終的な流れの後、密閉可能なチャンバは再び密閉され、適切な期間(実施形態では約12時間であり得るが、当業者によって選択され得る)放置され得る。
【0111】
方法200のオゾン排出ステップ204において、任意の残留オゾンが任意の適切な手段によって密閉可能なチャンバから除去される。特に、窒素(および/または別の非反応性/不活性キャリアガス)を密閉可能なチャンバに流してもよく、および/または陰圧/真空を密閉可能なチャンバに適用して、密閉可能なチャンバに残る残留「遊離」オゾン(すなわち、オゾン化された結晶性固体の結晶内に捕捉されなかったオゾン)を除去および/または排出してもよい。これにより、密閉可能なチャンバが開かれ、オゾン化された結晶性固体が任意の適切な手段によって収集される。
【0112】
ここで図3を参照すると、対象物体に抗菌処理を施す方法300が示されている。方法300は、注入された結晶性固体を提供するステップ301と、抗菌剤を適用するステップ302とを含む。
【0113】
方法300の注入された結晶性固体を提供するステップ301において、気相抗菌剤が注入された結晶性固体の結晶は、本明細書に記載の方法および/またはシステムのいずれか1つ以上を使用して提供され得る。
【0114】
方法300の抗菌剤適用ステップ302では、抗菌剤が注入された結晶性固体の結晶が、抗菌処理を受けることを意図された対象品目に適用される。抗菌剤を適用するステップ302は、いくつかの形態のうちの任意の1つまたは複数を取り得ることが明確に理解されるべきである。いくつかの実施形態では、抗菌剤を適用するステップ302は、注入された結晶を対象品目の表面(たとえば、肉または生の農産物の表面または一部)に直接適用することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗菌剤を適用するステップ302は、注入された結晶を「ルーズ」または「バルク」の形態で対象品目(たとえば、生肉用の容器、生農産物の袋など)の包装に、および/または、対象品目が出荷または輸送される輸送用コンテナ (冷蔵トラックなど)に加えることを含み得る。いくつかの実施形態では、抗菌剤を適用するステップ302は、注入された結晶を含む製造品(たとえば、袋、ライナー、パッドなど)を、対象品目の包装内および/または対象品目が出荷または輸送される輸送コンテナ内に配置することを含み得る。いくつかの実施形態では、対象品目が、一定量の液体自体のいずれか1つ以上(たとえば、一定量の廃水または潜在的に汚染された飲料水)である場合、抗菌剤を適用するステップ302は、注入された結晶を一定量の液体内またはその表面上に配置することを含み得る。いくつかの実施形態では、対象品目が、部屋または他の閉鎖空間、またはその中に配置された1つまたは複数の固体品目または表面である場合、抗菌剤を適用するステップ302は、注入された結晶(または注入された結晶を含む製品) 部屋またはその他の密閉された空間に配置することを含みうる;これらの実施形態のいくつかでは、抗菌剤を適用するステップ302は、閉鎖空間の温度または湿度を選択的に変更するステップ、結晶の温度を選択的に変更するステップ、および/または注入された結晶に液体を適用するステップをさらに含んでもよく、注入された結晶の一部が溶解または非晶質になり、それによって密閉空間に気相抗菌剤が放出される。これらの方法の実施において、注入された結晶がオゾンを放出して、対象品目の抗菌処理を可能にするメカニズムは、本開示全体にわたってさらに記載される。
【0115】
図3に示される方法300、および本発明の抗菌剤が注入された結晶性固体の貯蔵安定性の1つの特定の利点は、抗菌剤適用ステップ302が、注入された結晶性固体提供ステップ301がのかなり長い時間後に実行されることである。したがって、注入された結晶性固体は、製造された後、数日、数週間、または数か月にわたって保管または輸送された後、抗菌剤適用ステップ302において、気相抗菌剤が放出される。いくつかの実施形態では、注入された結晶性固体を提供するステップ301と抗菌剤を適用するステップ302との間の期間は、少なくとも約1日間、少なくとも約2日、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約5か月間、または少なくとも約6か月間であり得る。
【0116】
本発明の記載は、一般に、気相抗菌剤としてオゾンに焦点を当てているが、他の気相抗菌剤を適切に使用することができ、変更すべきところは変更して、本発明の範囲内にあることが明確に理解されるべきである。そのような気相抗菌剤の非限定的な例には、ヨウ素およびヨウ素化合物および二酸化塩素が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の注入された結晶性固体に組み込まれる気相材料は、非限定的な例として、ヘリウムまたはアルゴンなどの低分子、希ガス、および/または実質的に不活性なガスを含み得る。
【0117】
本発明は、以下の例示的で非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例1】
【0118】
この実施例は、本発明に従って製造されたオゾン化されたエプソム塩を生の農産物の抗菌剤として使用することを実証する。
【0119】
オゾン化エプソム塩(すなわち、オゾンが注入された複数の硫酸マグネシウム結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して製造された。
【0120】
それぞれ5.5オンスの生のホウレンソウが入った4袋を食料品店から入手した。この4袋のうち、1袋は実験対照として使用するために未開封のままにした;他の3つの袋を開封し、開封した各袋の生のホウレンソウに、2つの一般的な食中毒菌であるネズミチフス菌(ATCC 13311)と大腸菌(ATCC 10536)それぞれの100万コロニー形成単位(1.0・106 CFU)を植菌した。また、1.1mLの滅菌脱イオン水を3つの開封済み袋のそれぞれに加えた。オゾン化されたエプソム塩1.1グラムを、3つの開封した袋のうちの2つに加え、1.1グラムの従来の (オゾン化されていない)エプソム塩を3番目の開封された袋に追加した。開封した3つの袋をそれぞれ熱融着して密閉環境を作り、熱融着した袋の内容物を完全に混合して、植菌した細菌、塩、および水が各袋全体に実質的に均一に分布するようにした。
【0121】
ホウレンソウ4袋を冷蔵庫に入れ(0℃~10℃の温度に維持)、冷蔵庫で23時間放置した。23時間後、25±0.2グラムのホウレンソウのサンプルを各袋から取り出し、テスト用に Whirl-Pak(登録書評)袋に入れた。各サンプルを、ネズミチフス菌数(bioMerieux VIDAS テストによる)、大腸菌数(3Mペトリフィルムプレーティングによる)、および総プレート数(3Mペトリフィルムプレーティングによる)について評価した。結果を表1に示す。大腸菌の総プレート数と定量結果が報告され、ネズミチフス菌の結果は、ポジティブまたはネガティブのいずれかで示される。
【0122】
【表1】
*総大腸菌が増殖するため、これ以上の正確な定量はできない。
【0123】
表1が示すように、オゾン化された塩は、対照または非オゾン化塩と比較して、すべての細菌の総プレート数を大幅に抑制した (平均で、約44%)。この結果は、オゾン化されたエプソム塩が広域スペクトルの抗菌剤として有用であることを示す。
【0124】
4袋のホウレンソウを目視で観察したところ、塩を加えた袋のホウレンソウは未開封袋に入れたのホウレンソウよりもしおれが大きく、オゾン化された塩の袋に入ったホウレンソウは、オゾン化されていない塩の袋に入ったホウレンソウよりもしおれが少なかった。この結果は、オゾン化塩が生のホウレンソウなどの生の農産物の有用な貯蔵寿命を延ばす可能性があることを示す。
【実施例2】
【0125】
この実施例は、本発明に従って製造されたオゾン化エリスリトールの生の農産物に対する抗菌剤としての有効性を実証する。
【0126】
オゾン化エリスリトール(すなわち、オゾンが注入された複数のエリスリトール結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して作成された。
【0127】
7つのWhirl-Pak(登録商標)サンプル処理袋のそれぞれに25gのバルク生ホウレンソウを入れた。これらの7つの袋のうち、1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、未植菌対照として使用した;残りの6つの袋では、それぞれ生ホウレンソウに100万コロニー形成単位(1.0・106 CFU)の大腸菌(ATCC 10536)を植菌した。これらの6つの袋の1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、植菌対照として使用した。他の5つの植菌袋のうち、1つ(エリスリトール)には1.1mLの滅菌脱イオン水と1.1gの非オゾン化エリスリトールを入れ;2つ(OZ+H2O) には、1.1mLの滅菌脱イオン水と1.1gのオゾン化エリスリトールを入れ;2つ(OZ)には、1.1gのオゾン化エリスリトールのみを入れた。植菌され、処理された5つの袋のそれぞれを熱融着して閉鎖環境を作り、熱融着された袋の内容物を完全に混合して、植菌された細菌、エリスリトール、および水が各袋全体に実質的に均一に分布するようにした。OZ+H2Oの袋を目視で観察したところ、オゾン化エリスリトールは、脱イオン水と接触すると、最初は泡立ち、ややペースト状の塊を形成したが、このペースト状の塊は、さらに混合すると水に完全に溶解した。
【0128】
ホウレンソウ7袋をウォークインクーラーに入れ(0℃~10℃の温度に維持)、クーラー内で一晩放置した。続いて、7袋それぞれから葉を取り出し、水分活性を測定した。各袋のホウレンソウを、3Mペトリフィルムプレーティングを介して、大腸菌および総プレート数についても評価した。結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
*総大腸菌が増殖するため、これ以上の正確な定量はできない。
【0130】
表2が示すように、オゾン化エリスリトールは、未植菌対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、すべての細菌の総プレート数を大幅に抑制し(平均して、未植菌対照と比較して約97%、非オゾン化エリスリトール処理と比較して約98%まで)、植菌対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、大腸菌の増殖を大幅に抑制した(平均して、植菌対照と比較して約99.8%、非オゾン化エリスリトール処理と比較して約98%)。この結果は、オゾン化エリスリトールが広範囲の抗菌剤として、そして抗菌剤として、特に大腸菌に対する抗菌剤として有用であることを示す。

特に、抗菌効果は水を加えない場合にいくらか増強されるが、オゾン化エリスリトールは「ウェット」と「ドライ」の両方の条件下で有意な抗菌効果を保持した。
【0131】
7袋のホウレンソウの目視観察では、エリスリトールで処理されたホウレンソウの葉の構造にいくらかの損傷が見られたが、対照の袋のホウレンソウの葉の構造にはほとんどまたはまったく損傷がなかった。
【実施例3】
【0132】
この実施例は、本発明に従って製造されたオゾン化エリスリトールの生の農産物に対する抗菌剤としての有効性を実証する。
【0133】
オゾン化エリスリトール(すなわち、オゾンが注入された複数のエリスリトール結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して作成された。
【0134】
8つのWhirl-Pak(登録商標)サンプル処理袋のそれぞれに25gのバルク生ホウレンソウを入れた。これらの8つの袋のうち、1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、未植菌対照として使用した;残りの7つの袋では、それぞれ生ホウレンソウに100万コロニー形成単位(1.0・106 CFU)の大腸菌(ATCC 10536)を植菌した。これらの7つの袋の1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、植菌対照として使用した。他の6つの植菌袋のうち、1つ(エリスリトール)には1.1mLの滅菌脱イオン水と1.1gの非オゾン化エリスリトールを入れ;1つ(1/2エリスリトール)には0.5mLの滅菌脱イオン水と0.5gの非オゾン化エリスリトールを入れ;2つ(OZ+H2O) には、1.1 mLの滅菌脱イオン水と1.1gのオゾン化エリスリトールを入れ;2つ(OZ)には、1.1gのオゾン化エリスリトールのみを入れた。植菌され、処理された6つの袋のそれぞれを熱融着して閉鎖環境を作り、熱融着された袋の内容物を完全に混合して、植菌された細菌、エリスリトール、および水が各袋全体に実質的に均一に分布するようにした。OZ+H2Oの袋を目視で観察したところ、オゾン化エリスリトールは、脱イオン水と接触すると、最初は泡立ち、ややペースト状の塊を形成したが、このペースト状の塊は、さらに混合すると水に完全に溶解した。
【0135】
ホウレンソウ8袋をウォークインクーラーに入れ(0℃~10℃の温度に維持)、クーラー内で一晩放置した。続いて、各袋のホウレンソウを、3Mペトリフィルムプレーティングを介して、大腸菌および総プレート数について評価した。結果を表3に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
表3が示すように、オゾン化エリスリトールは、両対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、すべての細菌の総プレート数を大幅に抑制し(平均して、未植菌対照と比較して約99.8%、植菌対照と比較して約99.7%、非オゾン化エリスリトール処理と比較して約72%まで)、植菌対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、大腸菌の増殖を大幅に抑制した(平均して、両対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して約98%)。特に、オゾン化エリスリトールは「ウェット」と「ドライ」の両方の条件下で有意な抗菌効果を保持した。
【0138】
7袋のホウレンソウの目視観察では、エリスリトールで処理されたホウレンソウの葉の構造にいくらかの損傷が見られたが、対照の袋のホウレンソウの葉の構造にはほとんどまたはまったく損傷がなかった。オゾン化エリスリトールで処理された葉も、若干の褐色を示した。
【実施例4】
【0139】
この実施例は、本発明に従って製造されたオゾン化エリスリトールの生の農産物に対する抗菌剤としての有効性を実証する。
【0140】
オゾン化エリスリトール(すなわち、オゾンが注入された複数のエリスリトール結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して作成された。
【0141】
4つのWhirl-Pak(登録商標)サンプル処理袋のそれぞれに25gのバルク生ホウレンソウを入れた。これらの4つの袋のうち、1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、未植菌対照として使用した;残りの3つの袋では、それぞれ生ホウレンソウに100万コロニー形成単位(1.0・106 CFU)の大腸菌(ATCC 10536)を植菌した。これらの3つの袋の1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、植菌対照として使用した。他の2つの植菌袋のうち、1つ(エリスリトール)には1.1gの非オゾン化エリスリトールのみ(水なし)を入れ;1つ(OZ)には、1.1gのオゾン化エリスリトールのみ(水なし)を入れた。植菌され、処理された2つの袋のそれぞれを熱融着して閉鎖環境を作り、熱融着された袋の内容物を完全に混合して、植菌された細菌、エリスリトール、および水が各袋全体に実質的に均一に分布するようにした。
【0142】
ホウレンソウ4袋をウォークインクーラーに入れ(0℃~10℃の温度に維持)、クーラー内で一晩放置した。続いて、各袋のホウレンソウを、3Mペトリフィルムプレーティングを介して、大腸菌および総プレート数について評価した。結果を表4に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
表4が示すように、オゾン化エリスリトールは、両対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、すべての細菌の総プレート数を大幅に抑制し(平均して、未植菌対照と比較して約95%、植菌対照と比較して約97%、非オゾン化エリスリトール処理と比較して約90%まで)、植菌対照および非オゾン化エリスリトール処理と比較して、大腸菌の増殖を大幅に抑制した(植菌対照と比較して約99.4%および非オゾン化エリスリトール処理と比較して約99%)。
【0145】
7袋のホウレンソウの目視観察では、エリスリトールで処理されたホウレンソウの葉の構造にいくらかの損傷が見られたが、対照の袋のホウレンソウの葉の構造にはほとんどまたはまったく損傷がなかった。
【実施例5】
【0146】
この実施例は、本発明に従って製造されたオゾン化エリスリトールの生の農産物に対する抗菌剤としての有効性を実証する。
【0147】
オゾン化エリスリトール(すなわち、オゾンが注入された複数のエリスリトール結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して作成された。
【0148】
13個のWhirl-Pak(登録商標)サンプル処理袋のそれぞれに25gのバルク生ホウレンソウを入れた。これらの13個の袋のうち、1つをすぐに熱融着して閉鎖環境を作り、未植菌対照として使用し;4つの袋に、100万コロニー形成単位(1.0・106 CFU)の黄色ブドウ球菌を植菌し;4つの袋に、100万CFUの緑膿菌を植菌し;4つの袋に、100万CFUの大腸菌O157:H7を植菌した。所定の細菌種を植菌した4つの袋の各セットについて、1つの袋はそれ以上処理せずに熱融着して閉鎖環境を作り、植菌対照として使用し;2つの袋(OZ)には、それぞれ1.1gのオゾン化エリスリトールを入れ;1つの袋(エリスリトール)には1.1gの非オゾン化エリスリトールを入れた。植菌され、処理された9つの袋のそれぞれを熱融着して閉鎖環境を作り、熱融着された袋の内容物を完全に混合して、植菌された細菌およびエリスリトールが各袋全体に実質的に均一に分布するようにした。
【0149】
ホウレンソウ13袋をウォークインクーラーに入れ(0℃~10℃の温度に維持)、クーラー内で一晩放置した。続いて、各袋のホウレンソウを、3つの細菌種のそれぞれ、および好気性菌の総菌数について評価した。結果を表5に示す。
【0150】
【表5】
*ブドウ球菌属およびシュードモナス属の種で自然に汚染されている;すべてのプレートが過剰増殖した。
【0151】
表5が示すように、オゾン化エリスリトールは、すべての病原細菌の増殖を大幅に抑制した;大腸菌では約62% (対照に対して)または59%(非オゾン化エリスリトールに対して)まで、緑膿菌では対照に対して約92%まで、黄色ブドウ球菌では約96%(対照に対して)または91%(非オゾン化エリスリトールに対して)まで。
【0152】
7袋のホウレンソウの目視観察では、エリスリトールで処理されたホウレンソウの葉の構造にいくらかの損傷が見られたが、対照の袋のホウレンソウの葉の構造にはほとんどまたはまったく損傷がなかった。
【実施例6】
【0153】
オゾン化エリスリトール(すなわち、オゾンが注入された複数のエリスリトール結晶)は、図2に示される方法に従って、図1に示されるシステムを使用して作成され、-5°Fに保たれた冷凍庫に5日間保存された。続いて、オゾン化エリスリトール1gを15個の1オンスの広口瓶のそれぞれに入れ、密閉した;5つの広口瓶を冷凍庫に戻し、5つの広口瓶を35°Fの冷蔵庫に入れ、5つの広口瓶を67°F の部屋に入れた。広口瓶にエリスリトールを入れてから24時間後、およびその後48時間ごとに瓶内の空気中のオゾン濃度を測定した。結果を表6に示す;30秒間の測定期間中に検出された100万分の1(ppm) 単位のピークオゾン読み取り値が報告される。
【0154】
【表6】
【0155】
表6が示すように、オゾン化エリスリトールからのオゾンの放出プロファイルは、周囲環境の温度によって劇的に変化する。冷凍庫の温度(約-5°F)では、周囲環境へのオゾンの放出はない。冷蔵庫の温度(約35°F)では、少なくとも約9日間にわたってオゾンがゆっくりと放出される。常温では、最初の72時間以内に大量のオゾンが放出され、その後数日かけて濃度がゆっくりと低下する。したがって、この実施例は、抗菌剤が注入された結晶性固体からのオゾンの放出プロファイルが、抗菌剤が注入された結晶性固体が抗菌処理に使用されるために適合される環境の温度に基づいて調整または選択できることを実証する。
【0156】
本開示は、実質的に本明細書に示され、説明される構成要素、方法、プロセス、システム、および/または装置を含み、それらのさまざまな態様、実施形態、構成およびサブセットを含む。当業者は、本開示を理解した後、さまざまな態様、実施形態、および構成を作成および使用する方法を理解するであろう。本開示は、さまざまな態様、実施形態、および構成において、本明細書または本明細書のさまざまな態様、実施形態、および構成において図示および/または説明されていない項目がない場合に、デバイスおよびプロセスを提供することを含み、たとえば、パフォーマンスの向上、実装の容易さの達成、および/またはコストの削減のために、以前のデバイスまたはプロセスで使用されていた可能性のあるアイテムがない場合を含む。
【0157】
本開示の前述の議論は、例示および説明の目的で提示されたものである。前述は、開示を本明細書に開示された形態(単数または複数)に限定することを意図するものではない。たとえば、前述の詳細な説明では、本開示のさまざまな特徴は、本開示を簡素化する目的で、1つまたは複数の態様、実施形態、および構成にグループ化されている。本開示の態様、実施形態、および構成の特徴は、上述のもの以外の代替の態様、実施形態、および構成に組み合わせることができる。この開示方法は、請求された開示が各請求項で明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、単一の前述の開示された態様、実施形態、および構成のすべての特徴よりも少ないものの中に存在する。したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明の詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、本開示の別個の好ましい実施形態として独立している。
【0158】
さらに、本開示の説明は、1つまたは複数の態様、実施形態、または構成、ならびに特定の変形および修正の説明を含んでいるが、他の変形、組み合わせ、および修正は、たとえば、当業者の知識、本開示を理解した上で当業者の範囲内であり得るように、本開示の範囲内にある。そのような代替、交換可能、および/または同等の構造、機能、範囲、またはステップが本明細書に開示されているかどうかにかかわらず、そして、特許可能な主題を公に提供することを意図することなく、請求の範囲に記載されているものに対する代替的、交換可能および/または同等の構造、機能、範囲、またはステップを含む、許容される範囲で代替的な側面、実施形態、および構成を含む権利を取得することが意図される。
図1
図2
図3