(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント、及びこれを含む管楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 9/02 20200101AFI20240827BHJP
【FI】
G10D9/02
(21)【出願番号】P 2022560464
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2021001253
(87)【国際公開番号】W WO2021201406
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0040187
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522389818
【氏名又は名称】コン ミョングク
【氏名又は名称原語表記】GONG, Myeong-Kook
(73)【特許権者】
【識別番号】522389829
【氏名又は名称】コン ダヨン
【氏名又は名称原語表記】GONG, Da-Young
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】コン ミョングク
(72)【発明者】
【氏名】コン ダヨン
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-120821(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104851417(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部の閉鎖した管状からなる管楽器のヘッドジョイントであって、
前記一端部から所定の距離を空けて、吹口とリード部とが相互離隔して形成されて、
前記吹口の中心とリード部の中心は、前記一端部から同じ距離に位置し、前記吹口とリード部は、前記ヘッドジョイントの円周方向に沿って相互離隔して位置することを特徴とする、
吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項2】
前記吹口で演奏する場合には、下唇と顎との間の顔の部位に前記リード部を密閉することができ、
前記リード部で演奏する場合には、上唇と鼻との間の顔の部位に前記吹口を密閉することができるように、
前記吹口とリード部が離隔して配置されたことを特徴とする、
請求項1に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項3】
一端部の閉鎖した管状からなる管楽器のヘッドジョイントであって、
前記一端部から所定の距離を空けて、吹口とリード部とが相互離隔して形成されて、
前記吹口とリード部は、前記ヘッドジョイントの長さ方向に沿って
前記ヘッドジョイントの前記一端部から異なる距離に離隔して配置
し、前記吹口とリード部は、前記ヘッドジョイントの円周方向に沿って相互離隔して位置することを特徴とする
、
吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項4】
前記ヘッドジョイントの外周面には、長さ方向又は円周方向にスライド可能に蓋が設けられて、
前記蓋は、吹口で演奏する場合にはリード部を塞ぎ、リード部で演奏する場合には吹口を塞ぐように構成されたことを特徴とする、
請求項1に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項5】
前記蓋には貫通孔が形成されて、前記貫通孔を介して吹口又はリード部が開放されることを特徴とする、
請求項4に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項6】
前記蓋には一以上の突出部が形成され、使用者は、前記突出部が顔と接触するようにして、前記蓋をスライドさせるように構成されたことを特徴とする、
請求項5に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項7】
前記リード部は、フリーリード(free reed)からなり、前記フリーリードは、固定された固定部の幅が反対側端段の幅よりも広く形成されたことを特徴とする、
請求項1に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項8】
前記リード部のリードの長さをl、管楽器の音響学的管の長さをLとすると、
0.04≦l
2/L<0.11の式を満たすことを特徴とする、
請求項1に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項9】
前記リード部は、フリーリード(free reed)からなり、前記フリーリードの上部には楕円形の環状からなる保護台が設置されて、
前記環状保護台の孔は、前記リード部と連通するように位置することを特徴とする、
請求項1に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項10】
前記保護台の孔において、前記リード部と触れ合う下側は、前記フリーリードよりも大きく形成されて、上側は、前記フリーリードよりも小さく形成されたことを特徴とする、
請求項9に記載の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント。
【請求項11】
請求項1~10のうちいずれか一項による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントを含む管楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント、及びこれを含む管楽器に関し、とりわけ、吹口のみを有する両方開放型管楽器の音域に、リード部で演奏する一方開放型管楽器の音域を合わせて、両方開放型管楽器の音域よりも1オクターブ低い音域、つまり、低音が拡張するようにした吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント、及びこれを含む管楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
管楽器は、両方開放型管楽器と一方開放型管楽器とに分けられる。
【0003】
両方開放型管楽器は、リコーダーや短簫のような縦笛、ファイフ(fife)やフルート、又は小▲きん▼や大▲きん▼等といった横笛がここに属する。
【0004】
一方開放型管楽器は、唇をつけて、震えるようにして吹く金管楽器や、シングルリードを有するクラリネットやサキソホン、ダブルリードを有するオーボエ、国楽器の笛等がある。
【0005】
これら管楽器は、相対的に管の直径よりも管の長さがもっと大きいが、これは共鳴周波数が、主に管の長さによって決定されて、管の太さによってはあまり影響されない構造を有するようにするためである。
【0006】
このように、主に管の長さによって共鳴周波数が決定される管楽器に対して、共鳴周波数を次のような式で表することができる。
【0007】
両方開放型管楽器の管の直径をa、管の長さをL、音波の位相速度をc、自然数をnとすると、共鳴周波数fnは、次の式のとおりに表される。
【0008】
【0009】
nが1である場合には基本周波数であり、nが2、3、…である場合には第2以上の高調波の場合である。
【0010】
図1は、両方開放型管楽器の管内部における波長の大きさを示したものであって、(a)は、第1高調波音である基本音の定常波を示したものであり、(b)は、第2高調波音である2倍音の定常波を示したものである。
【0011】
両方開放型管楽器の共鳴周波数は、基本周波数の1倍、2倍、3倍、…のように自然数の倍数となる。
【0012】
すなわち、両方開放型管楽器は、基本音の半波長が管の長さよりも若干大きい音が発生し、その倍音の波長が基本音の半波長の1/2、1/3、1/4等に小さくなって、周波数は、2倍、3倍、4倍等に音が発生する。
【0013】
よって、横笛において、第1オクターブ音である基本音を発生させて、吹口に吹き込む風の方向と速度等を上手に調節し、第2オクターブ音である2倍音、第3オクターブ音である4倍音等が演奏できるようになる。
【0014】
これに反して、管の一方が塞いでいる一方開放型管楽器の場合は、共鳴周波数fnは、次の式のとおりに表される。
【0015】
【0016】
nが1である場合には基本周波数であり、nが2、3、…である場合には第2以上の高調波の場合である。
【0017】
図2は、一方開放型管楽器の管内部における波長の大きさを示したものであって、(a)は、第1高調波音である基本音の定常波を示したものであり、(b)は、第2高調波音である3倍音の定常波を示したものである。
【0018】
すなわち、一方開放型管楽器の共鳴周波数は、基本周波数の1倍、3倍、5倍、…のように奇数の倍数となる。
【0019】
すなわち、一方開放型管楽器は、基本音の1/4波長が管の長さよりも若干大きい音が発生し、その倍音が基本音の1/4波長の1/3、1/5、1/7等に小さくなって、周波数は、3倍、5倍、7倍等に音に発生する。
【0020】
よって、リードで演奏する際には基本音を出し、リードに吹き込む風の速度や空気の圧力等を上手に調節しても、同じ管の長さでは、オクターブの高い音が発生せず、倍音を利用してオクターブ音を具現するためには、基本音が発生する長さよりも長い管と、さらなる孔とキーの運指を必要とする。
【0021】
管楽器では、指の数よりも多くの孔や孔の間隔が指の間隔よりも広くて、運指が難しい場合、キーを採用する。
【0022】
よって、同じ管の長さに対して、一方開放型管楽器の基本音は、両方開放型管楽器の基本音よりも1オクターブ低い音が出るようになる。
【0023】
既存の管楽器は、風を吹き込む吹口のみを有するか、リードのみ付着している。
【0024】
よって、吹口又はリードを介して風の量や強さ方向、圧力等を調整して、上述したように、基本音と倍音を発生させる構造を持っていた。
【0025】
よって、吹口で演奏する両方開放型管楽器の場合は、指だけで塞ぐ指孔のみを有する場合、基本音と2倍音程に2オクターブの音を具現することができ、3オクターブ以上を発生させるためには、さらに指の数よりも多くの孔が要求されるため、さらなる孔と、孔を指ではないパッドとバネ等を使用して塞ぐか開けるようにした構造物であるキーを使用して孔を塞ぐか開けるように製作されている。
【0026】
リードで演奏する一方開放型管楽器の場合は、指孔のみを有する場合、基本音である1オクターブ音のみを具現することができ、キーとさらなる孔を設置し、倍音を利用してオクターブを具現して、より複雑なキーを設置し、倍音を利用して3オクターブ以上を具現することができるように製作されている。
【0027】
また、両方開放型管楽器は、基本音である第1オクターブ音と2倍音である第2オクターブ音とが、ほぼ同じ運指で音を発生させることができ、4倍音である第3オクターブの場合、若干異なる運指で音を発生させるようになる。
【0028】
一方、一方開放型管楽器の場合は、倍音を使用した第2オクターブ音及び第3オクターブ音が基本音の運指と全体的に相違するようになる。
【0029】
他方、リードは、クラリネットやサキソホンで使用されるシングルリード、オーボエや国楽器の笛で使用されるダブルリード、ハーモニカで使用されるフリーリード等がある。
【0030】
シングルリードは、リードの大きさに合うマウスピースという構造物を作って、これに付着して使用し、ダブルリードは、半分に重ね合わせた二枚リードの端部を結んで、これに嵌る管に挟んで使用する。
【0031】
フリーリードは、リードの大きさよりも若干大きな孔を形成した支持台板にリードを固定して、孔の間へリードが振動できる構造物を作って使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
KR10-0961435B1(2010年6月9日、公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、吹口のみを有する両方開放型管楽器の音域に、リード部で演奏する一方開放型管楽器の音域を合わせて、両方開放型管楽器の音域よりも1オクターブ低い音域、つまり、低音が拡張するようにした吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント、及びこれを含む管楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記目的を達成するために、本発明の吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントは、一端部の閉鎖した管状からなる管楽器のヘッドジョイントであって、前記一端部から所定の距離を空けて、吹口とリード部とが相互離隔して形成されたことを特徴とする。
【0035】
また、前記吹口の中心とリード部の中心は、前記一端部から同じ距離に位置し、前記吹口とリード部は、前記ヘッドジョイントの円周方向に沿って相互離隔して位置してもよい。
【0036】
このとき、前記吹口で演奏する場合は、下唇と顎との間の顔の部位に前記リード部を密閉することができ、前記リード部で演奏する場合は、上唇と鼻との間の顔の部位に前記吹口を密閉することができるように、前記吹口とリード部とが離隔して配置される。
【0037】
その代わり、前記吹口とリード部は、前記ヘッドジョイントの長さ方向に沿って離隔して配置されてもよい。
【0038】
さらに、前記ヘッドジョイントの外周面には、長さ方向又は円周方向にスライド可能に蓋が設けられて、前記蓋は、吹口で演奏する場合にはリード部を塞ぎ、リード部で演奏する場合には吹口を塞ぐように構成されるのが好ましい。
【0039】
このとき、前記蓋には貫通孔が形成されて、前記貫通孔を介して吹口又はリード部が開放される。
【0040】
また、前記蓋には一以上の突出部が形成され、使用者は、前記突出部が顔と接触するようにして、前記蓋をスライドさせるように構成される。
【0041】
さらに、前記リード部は、フリーリード(free reed)からなり、前記フリーリードは、固定された固定部の幅が反対側端段の幅よりも広く形成されたことを特徴とする。
【0042】
これら前記リード部のリードの長さをl、管楽器の音響学的管の長さをLとすると、0.04≦l2/L<0.11の式を満たすことを特徴とする。
【0043】
さらに、前記リード部は、フリーリード(free reed)からなり、前記フリーリードの上部には楕円形の環状からなる保護台が設置されて、前記環状保護台の孔は、前記リード部と連通するように位置するのが好ましい。
【0044】
このとき、前記保護台の孔において、前記リード部と触れ合う下側は、前記フリーリードよりも大きく形成されて、上側は、前記フリーリードよりも小さく形成される。
【0045】
一方、上記目的を達成するために本発明の管楽器は、前述した吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントを含むことを特徴とする。
【0046】
その他実施例の具体的な事項は、「発明を実施するための形態」及び添付の「図面」に含まれている。
【0047】
本発明の利点及び/又は特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている各種実施例を参照すれば明確になる。
【0048】
しかし、本発明は、以下に開示の各実施例の構成だけに限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現することもできる。ただし、本明細書に開示の各々の実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求範囲の各請求項の範疇によって定義されるだけであると理解しなければならない。
【発明の効果】
【0049】
本発明による場合、吹口とリード部を同時に形成して、吹口で演奏する際にはリード部を塞いで、両方開放型管楽器で動作し、リード部で演奏する際には吹口を塞いで、一方開放型管楽器で動作させることにより、吹口で演奏する両方開放型管楽器の音域よりも1オクターブ低い低音を発生させて、低音の拡張した管楽器を具現し、両方開放型管楽器の既存のオクターブよりも1オクターブさらに拡張した音を発生させるようになる。
【0050】
これによって、既存の両方開放型管楽器よりも管の長さを半分に減らして、同じ音域を具現することができ、キーのない管楽器においても、3オクターブの音域を容易に具現することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】両方開放型管楽器の管内部における波長の大きさを示した図面であって、(a)は、第1高調波音である基本音の定常波を示した図面、(b)は、第2高調波音である2倍音の定常波を示した図面。
【
図2】一方開放型管楽器の管内部における波長の大きさを示した図面であって、(a)は、第1高調波音である基本音の定常波を示した図面、(b)は、第2高調波音である3倍音の定常波を示した図面。
【
図3】本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第1実施例を示した図面。
【
図4】(a)は、
図3におけるリード部を塞がなければならない領域を実線斜線で示した図面、(b)は、
図3における吹口を塞がなければならない領域を実線斜線で示した図面。
【
図5】本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第2実施例を示した図面であって、(a)は、蓋がリード部を覆っている状態を示した図面、(b)は、蓋が吹口を覆っている状態を示した図面。
【
図6】本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第3実施例を示した図面。
【
図7】本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントを含む管楽器を示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、添付の図面を参考して、本発明の好ましい実施例について詳説すれば、次のとおりである。
【0053】
本発明を詳説する前に、本明細書で使われた用語や単語は、通常的であるか辞書的な意味に無条件で限定して解釈されてはならず、本発明の発明者が自己の発明を最も最善の方法にて説明するために、各種用語の概念を適宜定義して使用すことができ、さらには、これら用語や単語は、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈すべきであると理解しなければならない。
【0054】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の好ましい実施例を説明するために使われるだけであり、本発明の内容を具体的に限定しようとする意図で使われたものではなく、これら用語は、本発明の多様な可能性を考慮して定義された用語であると理解しなければならない。
【0055】
また、本明細書において、単数の表現は、文脈上明確に他の意味に示さない限り、複数の表現を含んでいてもよく、同様、複数で表現されているとしても単数の意味を含んでいてもよいと理解しなければならない。
【0056】
本明細書の全体にわたってある構成要素が他の構成要素を「含む」と記載する場合には、別に逆に意味する記載がない限り、任意の他の構成要素を除くものではなく、任意の他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味し得る。
【0057】
さらには、ある構成要素が他の構成要素の「内部に存在するか、連結して設置される」と記載した場合は、この構成要素が他の構成要素と直接に連結されているか接触して設置されていてもよく、一定の距離を空けて離隔して設置されていてもよく、一定の距離を空けて離隔して設置されている場合については、当該構成要素を他の構成要素に固定乃至連結させるための第3の構成要素又は手段が存在し得、この第3の構成要素又は手段に対する説明は省略し得ると理解しなければならない。
【0058】
他方、ある構成要素が他の構成要素に「直接に連結」されているか、若しくは「直接に接続」されていると記載する場合には、第3の構成要素又は手段が存在しないと理解しなければならない。
【0059】
同様、各構成要素との関係を説明する他の表現、つまり、「~間に」と「すぐ~間に」、又は「~に隣合う」と「に直接隣合う」等も同様の趣旨を有すると解釈しなければならない。
【0060】
また、本明細書において、「一面」、「他面」、「一側」、「他側」、「第1」、「第2」等の用語が使われるのであれば、一構成要素に対して、この一構成要素が他の構成要素から明確に区別されるように使われて、これら用語によって当該構成要素の意味が制限的に使われるものではなないと理解しなければならない。
【0061】
また、本明細書における「上」、「下」、「左」、「右」等の位置に関する用語が使われるのであれば、当該構成要素に対して、当該図面における相対的な位置を示すと理解しなければならないし、これら位置に対して絶対的な位置を特定しない限り、これら位置に関連する用語が絶対的な位置を言及するものと理解してはならない。
【0062】
さらに、本発明の明細書では、「…部」、「機」、「モジュール」、「装置」等の用語が使われるのであれば、一以上の機能や動作が処理できる単位を意味し、これはハードウェア又はソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの結合で具現され得ると理解しなければならない。
【0063】
また、本明細書では、各図面の各構成要素について、その図面符号を明記することにおいて、同じ構成要素に対しては、この構成要素がたとえ他の図面に示されていても、同じ図面符号を有するように、つまり、明細書全体にわたって同じ参照符号は、同じ構成要素を称する。
【0064】
本明細書に添付の図面において、本発明を構成する各構成要素の大きさ、位置、結合関係等は、本発明の思想を十分明確に伝達できるようにするために、又は説明の便宜のために、一部誇張又は縮小するか、省略して記述されていてもよく、よって、その比例や縮尺は、厳密でなくてもよい。
【0065】
また、以下では、本発明を説明することにおいて、本発明の要旨を曖昧にすると判断される構成、例えば、従来の技術を含む公知の技術に対する詳説は省略し得る。
【0066】
図3は、本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第1実施例を示した図面である。
【0067】
本発明による吹口11とリード部13とが形成された管楽器のヘッドジョイント10は、一端部の閉鎖した管状からなるものであって、閉鎖した一端部から所定の距離を空けて、吹口11とリード部13とが相互離隔して形成される。
【0068】
このとき、吹口11の中心とリード部13の中心は、閉鎖した一端部から同じ距離に位置し、吹口11とリード部13は、ヘッドジョイント10の円周方向に沿って相互離隔して位置する。
【0069】
これらヘッドジョイント10を含む管楽器は、吹口11とリード部13を同時に形成して、吹口11で演奏する際にはリード部13を塞いで、両方開放型管楽器で動作し、リード部13で演奏する際には吹口11を塞いで、一方開放型管楽器で動作させることにより、吹口11で演奏する両方開放型管楽器の音域よりも1オクターブ低い低音を発生させて、低音の拡張した管楽器を具現し、既存の音域よりも1オクターブさらに拡張した音域を発生させるようになる。
【0070】
管の一方の端が塞いでおり、吹口を有する横笛において、吹口で風を吹いて音を出すと、両方開放型管楽器で動作して、基本音が管長さの反波長である音が発生する。
【0071】
吹口の代わりにリードを付着して、リード部を介して演奏すれば、一方開放型管楽器で動作して、基本音が管長さの1/4波長である音が発生する。
【0072】
このように、吹口11とリード部13をいずれも形成して、吹口11で演奏する際にはリード部13を塞ぎ、リード部13で演奏する際には吹口11を塞ぐ構造を形成することにより、吹口11で両方開放型管楽器の基本音と倍音を演奏し、リード部13で両方開放型管楽器の基本音よりも1オクターブ低い一方開放型管楽器の基本音を具現して、既存の吹口のみ形成した楽器よりも1オクターブ低い低音を具現し、低音の拡張した管楽器を具現することができるようになる。
【0073】
また、キーなしに指孔のみ備えて、2オクターブを若干超える音だけ具現される楽器における3オクターブを若干超える音を、3オクターブ以上の音が具現されるピッコロやフルートでは、ヘッドジョイント部分を、本発明による技術を適用したヘッドジョイント10を連結して使用すると、基本音よりも1オクターブ低い音が拡張して、4オクターブ以上の音が具現される管楽器になる。
【0074】
一方、リード部13は、フリーリード(free reed)からなり、フリーリードは、固定された固定部の幅が反対側端段の幅よりも広く形成されたのが好ましい。
【0075】
これらリード部13のリードの長さをl、管楽器の音響学的管の長さをLとすると、0.04≦l2/L<0.11の式を満たすことを特徴とする。
【0076】
図4の(a)は、
図3におけるリード部を塞がなければならない領域を実線斜線で示した図面であり、(b)は、
図3における吹口を塞がなければならない領域を実線斜線で示した図面である。
【0077】
吹口11で演奏する場合には、下唇と顎との間の顔の部位にリード部13を密閉することができ、リード部13で演奏する場合には、上唇と鼻との間の顔の部位に吹口11を密閉することができるように、ヘッドジョイント10の円周方向に沿って吹口11とリード部13とが離隔して配置される。
【0078】
図5は、本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第2実施例を示した図面であって、(a)は、蓋がリード部を覆っている状態を示したものであり、(b)は、蓋が吹口を覆っている状態を示したものである。
【0079】
吹口11とリード部13は、ヘッドジョイント10の長さ方向に沿って離隔して配置されてもよい。
【0080】
このとき、ヘッドジョイント10の外周面には、長さ方向にスライド可能に蓋15が設けられて、これら蓋15は、吹口11で演奏する場合にはリード部13を塞ぎ、リード部13で演奏する場合には吹口11を塞ぐように構成される。
【0081】
また、蓋は、ヘッドジョイントの円周方向に沿ってスライド可能に設けられてもよい。
【0082】
このように、ヘッドジョイント10の外周面上で蓋15がスライドするように具現する技術は、周知・慣用技術であるため、これに対する説明は省略する。
【0083】
一例として、スライド突起とスライド溝を形成して具現することができる。
【0084】
これら蓋15には貫通孔15aが形成されるが、これら貫通孔15aを介して吹口11又はリード部13が開放される。
【0085】
また、蓋15には一以上の突出部15bが形成されるが、貫通孔15aの両側に一対で形成されるのが好ましい。
【0086】
使用者は、これら突出部15bが顔と接触するようにして、蓋15をスライドさせて、貫通孔15aが吹口11又はリード部13に位置するようにすることで、吹口11又はリード部13が外部に開放されるようにする。
【0087】
図6は、本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントの第3実施例を示した図面である。
【0088】
リード部13は、フリーリード(free reed)からなるが、これらリード部13にはフリーリードを保護して、演奏を容易にするために、フリーリードの上部には、楕円形の環状からなる保護台17が設置される。
【0089】
このとき、環状保護台17の孔は、リード部13と連通するように位置するのが好ましい。
【0090】
これら保護台17の孔において、リード部13と触れ合う下側(17b:底面の内廓ライン、17c:底面の外郭ライン)は、フリーリードよりも大きく形成されて、上側17aは、フリーリードよりも小さく形成される。
【0091】
このように、保護台17を設置して、保護台17の上側及び下側の孔の大きさを調節する方式でフリーリードの長さや幅よりも小さいか大きい孔を形成し、使用者の唇の大きさに合わせることにより、リード部13を通じて容易に演奏することができ、吹口11で演奏する場合には、リード部13を容易に塞ぐこともできるようになる。
【0092】
一方、既存の管楽器であるフルートやピッコロに、管の太さに合わせて、前述したようなヘッドジョイント10を製作して連結すると、既存の音域において、第1オクターブ音よりも1オクターブ低い音が拡張した音を具現することができるようになる。
【0093】
図7は、本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイントを含む管楽器を示した図面である。
【0094】
本発明による管楽器1は、前述した吹口11とリード部13とが形成された管楽器のヘッドジョイント10を含むことを特徴とする。
【0095】
両方開放型管楽器の管の長さ(L)を31.1cm、内部管の直径(D)は、約18cmに製作して、吹口で演奏する際に容易に出ることのできる音域は、C5(523Hz)~E7(2637Hz)の2オクターブと2音までであったし、リード部で演奏する際には、C4(262Hz)~B4(494Hz)まで演奏が可能であった。
【0096】
すなわち、リード部がないとき、C5~E7まで2オクターブと2音が具現される楽器から、C4~E7まで3オクターブと2音が具現される楽器になった。
【0097】
すなわち、音響学的管の長さが約60cmであるソプラノフルートで具現される音域を、音響学的管の長さが約30cmである管楽器で具現可能であった。
【0098】
このとき、リードの基本周波数も重要であるが、管楽器におけるリード部で演奏する際に発生する最高音の周波数よりも高い基本周波数を有するフリーリードの場合、所望の管楽器における音域が良く発生した。
【0099】
すなわち、C5(523Hz)以上の音を基本周波数で発生させるフリーリードを形成して付着したとき、試演品の管長さにおいて、C4(263Hz)から高い音が容易に発生した。
【0100】
フリーリードは、一方が固定されたリードにおける振動が生じるものであって、共鳴周波数は、次のような式で表される。
【0101】
【0102】
κは、リードが撓めた際の曲率半径(radius of gyration)に相当する数であり、括弧中の数字は基本音、第2高調波音、第3高調波音、…である時に乗ずる定数を列挙したものである。
【0103】
すなわち、共鳴周波数は、リードの長さの二乗に反比例する。
【0104】
これら試演品の場合、リードの長さは、約14mmであった。
【0105】
本発明による吹口とリード部とが形成された管楽器のヘッドジョイント、及びこれを含む管楽器は、主に横笛のような管楽器について説明したが、縦笛のような管楽器にも適用できることは当然である。
【0106】
以上、一部の例を挙げて、本発明の好ましい様々な実施例について説明したが、本「発明を実施するための形態」の項目に記載の様々な実施例に関する説明は、例示的なものに過ぎないし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、以上の説明から本発明を様々に変形して実施するか、本発明と均等な実施を行えるという点が十分理解できる。
【0107】
また、本発明は、他の様々な形態に具現されるため、上述した説明によって限定されるものではなく、以上の説明は、本発明に開示の内容が完全になるようにするためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の範疇を完全に知らせるために提供されるだけであり、本発明は、請求範囲の各請求項によって定義されるだけであると理解しなければならない。
【符号の説明】
【0108】
1 管楽器
10 ヘッドジョイント
11 吹口
13 リード部
15 蓋
15a 貫通孔
15b 突出部
17 保護台
17a 孔の上側
17b 底面の内廓ライン
17c 底面の外郭ライン