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特許7544852加速度依存ステアリングトルクフィードバックを有するステアバイワイヤーステアリングシステム
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  • 特許-加速度依存ステアリングトルクフィードバックを有するステアバイワイヤーステアリングシステム 図1
  • 特許-加速度依存ステアリングトルクフィードバックを有するステアバイワイヤーステアリングシステム 図2
  • 特許-加速度依存ステアリングトルクフィードバックを有するステアバイワイヤーステアリングシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】加速度依存ステアリングトルクフィードバックを有するステアバイワイヤーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B62D6/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022563372
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020061024
(87)【国際公開番号】W WO2021213622
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 芳信
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】デメテル, クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】スザンデル, ゾルターン
(72)【発明者】
【氏名】サーボ, アダム
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214988(JP,A)
【文献】特開平10-194152(JP,A)
【文献】特開2004-155283(JP,A)
【文献】特開2004-155282(JP,A)
【文献】特開2009-067375(JP,A)
【文献】特開2012-224249(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061567(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/108984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステム(1)であって、操舵可能なロードホイール(4)の回転のためのロードホイールアクチュエータ(5)、及びフィードバックトルクをハンドル(3)に付与するためのハンドルアクチュエータ(10)を含むステアバイワイヤーステアリングシステム(1)を制御するための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
- 車両のセンサーによって測定された縦方向及び横方向の加速度の関数としてベースステアリングトルクを修正することによってフィードバックトルクを計算すること、ただし、ベースステアリングトルクの修正は、絶対値での横方向の加速度に依存する横方向の重量移動トルクファクターをベースステアリングトルクに掛けること、及び縦方向の加速度に依存する縦方向の重量移動トルクファクターをベースステアリングトルクに掛けることを含む;
- 計算されたフィードバックトルクをハンドルアクチュエータ(10)に送り、フィードバックをハンドル(3)で運転者に与えること。
【請求項2】
縦方向もしくは横方向、又はそれら両方の重量移動トルクファクターが、車両スピードに依存することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
縦方向の重量移動トルクファクターの増加割合もしくは減少割合、又はそれら両方が、調整可能であり、かつフィードバックトルクの不快な突然の変化を避けるために横方向の加速度に依存することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法を実施するように設計された道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文に記載の道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステム、及び請求項12の前提文に記載の道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアバイワイヤーステアリングシステムは、従来の自動車の電気パワーステアリングシステムの後継である。ステアバイワイヤーステアリングシステムでは、ハンドルとステアリングラックと操舵可能なホイールの間に機械的接続はない。かかるシステムは、主に二つの要素、即ちロードホイール角度を設定するためのロードホイールアクチュエータ、及びステアリング効果を与えるためのハンドルアクチュエータ(フィードバックアクチュエータとも称される)からなる。
【0003】
車両の加速中、リアホイールの方への重量移動が起こる。逆に、ブレーキ下では、車の前方への重量移動が起こる。
【0004】
従来の電気機械式ステアリングシステムでは、重量移動は、ラックアンドピニオンステアリングギヤに対する負荷の変化をもたらす。従って、重量変化は、ステアリング感覚に影響し、運転者によって感じられる。
【0005】
ステアリングコラムの欠如、及びハンドルアクチュエータによって与えられるハンドルに対する間接的なフィードバックトルクは、縦方向の加速及び減速中、及び部分的には横方向の加速中、車両の重量移動による追加のフィードバックトルクがなくなることに導く。なぜならこれらの動きは、ロードホイールアクチュエータに影響するだけであるからである。従って、ステアバイワイヤーステアリングシステムでは、運転者は、電気パワーステアリングシステムと比較して運転感覚において顕著な望まない差を経験する。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の目的は、電気アシストパワーステアリングシステムのようなステアリング感覚を作る、道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法、及びステアバイワイヤーステアリングシステム自体を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法、及び請求項12の特徴を有する自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムによって達成される。
【0008】
従って、本発明によれば、道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法であって、ステアバイワイヤーステアリングシステムが、操舵可能なロードホイールの回転のためのロードホイールアクチュエータ、及びフィードバックトルクをハンドルに付与するためのハンドルアクチュエータを含む、方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法が提供される:
- 車両のセンサーによって測定された縦方向(longitudinal)及び/又は横方向(lateral)の加速度の関数としてベースステアリングトルクを修正することによってフィードバックトルクを計算すること;
- 計算されたフィードバックトルクをハンドルアクチュエータに送り、フィードバックをハンドルで運転者に与えること。
【0009】
このようにして車両の重量移動、及びそれによるロードホイールアクチュエータに対する負荷の変化が、フィードバックトルクにおいて再現される。これは、電気アシストパワーステアリングシステムのステアリング感覚の模倣を改良する。
【0010】
好ましくは、修正は、横方向の重量移動を考慮するために、横方向の重量移動トルクファクターをベースステアリングトルクに掛けることを含む。横方向の重量移動トルクファクターは、絶対値での横方向の加速度に依存するファクターである。
【0011】
もし横方向の重量移動ファクターが車両スピードに依存するなら有利である。
【0012】
修正はまた、縦方向の重量移動を考慮するために、縦方向の重量移動トルクファクターをベースステアリングトルクに掛けることを含むことができる。縦方向の重量移動トルクファクターは、縦方向の加速度に依存するファクターである。
【0013】
もし縦方向の重量移動ファクターが車両スピードに依存するなら有利である。
【0014】
好ましい実施形態では、ベースステアリングトルクが、基本フィードバック関数で計算され、基本フィードバック関数は、複数の入力(input)及び依存(dependency)を有する。
【0015】
ファクターベースの修正方法の代わりに、入力の一つは、フロントホイールアクスルに対する負荷を表現することができ、それは、車両状態及び/又はフィードバックアクチュエータ状態に基づいて計算又は測定された値であることができる。好ましくは、この負荷入力の表現は、縦方向加速度依存値によってオフセットされ、それは、縦方向負荷移動の効果を含む修正されたベースステアリングトルクをもたらす。
【0016】
もしファクターベースの修正方法が横方向加速度のために使用されないなら、負荷入力の表現は、絶対値での横方向加速度依存値によってオフセットされることができ、それは、横方向重量移動トルクをもたらす。
【0017】
好ましくは、オフセット値は、車両スピードに依存する。
【0018】
さらに、上述の方法を実施するように設計された道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
図1図1は、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。
図2図2は、時間に対してプロットされた縦方向車両加速度のダイヤグラムを示す。
図3図3は、時間に対してプロットされた縦方向重量移動ファクターのダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ハンドル3に接続されたステアリング軸2を有するステアバイワイヤーステアリングシステム1の概略図である。ハンドル3とロードホイール4の間に機械的接続は全くない。ロードホイールアクチュエータ5は、ラックアンドピニオンギヤ7によってギヤラック6を作動させ、ギヤラック6は、フロントホイールアクスル8の一部分である。フロントホイールアクスル8は、ロードホイール4のために二つのタイロッド9を有し、そのうち一つだけのロードホイール4が描かれている。
【0021】
運転者がハンドル3を操作するとき、ステアリング軸2が回転され、それは、軸センサー(図には示されず)によって検出される。制御ユニットは、軸センサーによって検出された信号からロードホイールアクチュエータ5のための作動信号を計算する。作動信号でギヤラック6を作動させることによって、フロントホイールアクスル8は、側方に動かされ、ロードホイール4は、回転される。同時に、ロードホイール4からホイールアクスル8に導入された力は、別のセンサー(図には示されず)によって認識され、フィードバック信号が計算され、それは、フィードバックアクチュエータとも称されるハンドルアクチュエータ10によってステアリング軸2に付与され、従って運転者は、ハンドル3においてフィードバックを認識することができる。
【0022】
ハンドルアクチュエータ10のフィードバックトルクは、電気パワーステアリングシステムの運転感覚を模倣するように修正される。修正は、車両のセンサーによって測定された車両の縦方向の加速度及び/又は横方向の加速度に依存する。
【0023】
ロードホイールアクチュエータ5がフロントアクスル8に位置される場合には、ロードホイールアクチュエータ5に対する負荷は、重量移動のため、一定スピードの場合と比較して、縦方向の加速中に減少されるだろう。逆に、縦方向の減速中、ロードホイールアクチュエータ5に対する負荷は、一定スピードの場合の負荷と比較して、より高いだろう。重量移動を考慮して、修正は、加速の場合には、ゼロの縦方向の減速/加速(一定の縦方向スピード)と比較して、フィードバックトルクを減少させ、減速の場合には、フィードバックトルクを増加させるだろう。
【0024】
車両の横方向の加速の場合には、フィードバックトルクは、ゼロの絶対値での横方向の加速の場合と比較して、方向から独立して高くなるだろう。
【0025】
フィードバックトルク修正の増加又は減少割合が、異なる状況に対して調整可能であることが好ましい。
【0026】
修正を達成するために、ベースステアリングトルクは、車両のセンサーによって測定された縦方向及び/又は横方向の加速度の関数として修正される。得られるフィードバックトルクは、ハンドルアクチュエータに送られ、フィードバックを運転者に与える。
【0027】
ベースステアリングトルクは、車両状態及び/又はフィードバックアクチュエータ状態の複数の入力信号に基づいて決定される。関数は、基本フィードバック関数と称される。従って、ベースステアリングトルクは、ベースステアリング感覚を発生する。
【0028】
第一実施形態では、縦方向重量移動ファクターは、縦方向加速度信号値に依存する。縦方向重量移動ファクターは、重量移動を考慮するために、ベースステアリングトルク掛けられる。縦方向重量移動ファクターは、さらに車両スピードに依存する。
【0029】
図2及び3は、縦方向重量移動ファクター修正の例を示す。図2では、縦方向加速度は、時間に対してプロットされている。まず縦方向加速度は、約3m/sまで上昇し、しばらく安定し、次いでゼロに減少する。その後、車両は、-5m/sまで減速する。応じて、図3に示された縦方向重量移動ファクターは、時間とともに変化する。まず縦方向重量移動ファクターは、1から0.7に減少する。示された例では、0.7の縦方向重量移動ファクターは、約3m/sの加速度を考慮している。縦方向重量移動ファクターは、次いで1まで増加し、さらに車両の減速につれて約1.4まで増加する。
【0030】
横方向重量移動ファクターは、横方向加速度信号値に依存する。横方向重量移動ファクターは、重量移動を考慮するために、ベースステアリングトルク掛けられる。横方向重量移動ファクターは、車両スピードに依存する。横方向加速度信号値は、車両の横方向加速度センサーの絶対値を表わす。換言すれば、横方向重量移動ファクターは、横方向加速/減速の方向から独立している。
【0031】
得られるフィードバックトルクは、ハンドルアクチュエータに送られる。
【0032】
第二実施形態では、修正は、オフセットである。
【0033】
基本フィードバック関数の入力の一つは、フロントホイールアクスルに対する負荷を表現することができ、それは、車両状態及び/又はフィードバックアクチュエータ状態に基づいて計算又は測定された値であることができる。入力は、いわゆる負荷入力の表現である。それは、縦方向加速度依存値によってオフセットされ、得られるフィードバックトルクを修正する。縦方向加速度依存値は、車両スピードに依存する。
【0034】
基本フィードバック関数の負荷入力の表現は、(絶対値での)横方向加速度依存値によってさらにオフセットされることができる。横方向加速度依存値は、車両スピードに依存する。
【0035】
縦方向重量移動ファクター及び縦方向加速度依存オフセット値の増加及び減少割合は、調整可能であり、例えばハードなブレーキ及びコーナリング状況の場合にフィードバックトルクの不快な突然の変化を避けるために、横方向の加速度に依存する。
図1
図2
図3