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特許7544854香味吸引器具用フィルターセグメント及びその製造方法、並びに香味吸引器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】香味吸引器具用フィルターセグメント及びその製造方法、並びに香味吸引器具
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/04 20060101AFI20240827BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20240827BHJP
   A24D 3/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A24D3/04
A24D3/17
A24D3/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022564711
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043584
(87)【国際公開番号】W WO2022113156
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】野田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】四分一 弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 繁一
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-126571(JP,A)
【文献】国際公開第2020/152827(WO,A1)
【文献】特公昭44-018796(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/122291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04
A24D 3/17
A24D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙からなる筒状のラッパーと、
前記ラッパー内部に圧縮して充填された、天然繊維を含む不織布と、
を含む香味吸引器具用フィルターセグメントであって、
下記方法で算出される、前記ラッパー内部に充填された前記不織布の圧縮率(A)が20%以上80%以下であり、
シート状の前記不織布が複数枚重ねられ、S字状形状に折りたたまれた状態で圧縮して、そのまま前記ラッパー内表面と接触して前記ラッパー内部に充填されている香味吸引器具用フィルターセグメント。
〔圧縮率(A)の算出方法〕
断面積(A1):フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出して測定される、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積
断面積(A2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(A)(%)=(断面積(A2)/断面積(A1))×100
【請求項2】
紙からなる筒状のラッパーと、
前記ラッパー内部に圧縮して充填された、天然繊維を含む不織布と、
を含む香味吸引器具用フィルターセグメントであって、
下記方法で算出される、前記ラッパー内部に充填された前記不織布の圧縮率(A)が20%以上80%以下であり、
シート状の前記不織布が、アコーディオン状またはギャザー状の形状で圧縮して、そのまま前記ラッパー内表面と接触して前記ラッパー内部に充填されており、
前記ラッパー内部に充填された前記不織布の充填密度が50~150mg/cm である香味吸引器具用フィルターセグメント。
〔圧縮率(A)の算出方法〕
断面積(A1):フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出して測定される、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積
断面積(A2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(A)(%)=(断面積(A2)/断面積(A1))×100
【請求項3】
前記フィルターセグメントの軸方向端面において、前記不織布間に間隙が視認されない請求項1又は2に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項4】
前記天然繊維が、絹、毛、綿、麻、及び植物パルプからなる群から選択される少なくとも一種の繊維である請求項1から3のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項5】
前記天然繊維が植物パルプである請求項4に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項6】
前記植物パルプの粗度が0.15~0.25mg/mである請求項4又は5に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項7】
前記不織布が、さらに化学合成繊維を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項8】
前記化学合成繊維が、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、及びエチレン酢酸ビニルコポリマー繊維からなる群から選択される少なくとも一種の繊維である請求項7に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項9】
前記ラッパー内部に充填された前記不織布の充填密度が50~150mg/cmである請求項1から8のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項10】
前記フィルターセグメントの通気抵抗が、前記フィルターセグメントのサイズを軸方向長さ27.0mm、円周24.1mmに換算した値で30~250mmHOである請求項1から9のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントを備える香味吸引器具。
【請求項12】
前記香味吸引器具用フィルターセグメント以外の他のフィルターセグメントをさらに備える請求項11に記載の香味吸引器具。
【請求項13】
燃焼型香味吸引器具である請求項11又は12に記載の香味吸引器具。
【請求項14】
非燃焼加熱型香味吸引器具である請求項11又は12に記載の香味吸引器具。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法であって、
前記天然繊維を含む不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程を含む香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【請求項16】
下記方法で算出される、前記不織布を圧縮する際の圧縮率(B)が20%以上60%以下である請求項15に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
〔圧縮率(B)の算出方法〕
断面積(B1):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、圧縮直前の前記不織布の断面積
断面積(B2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(B)(%)=(断面積(B2)/断面積(B1))×100
【請求項17】
カーディング方式又はエアレイド方式の乾式法、湿式法、スパンボンド法、或いはメルドブロー法により不織布を形成する工程をさらに含む請求項15又は16に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【請求項18】
前記不織布を形成する工程において、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)、ステッチボンド法、又はスチームジェット法により、前記天然繊維を含む繊維を結合する請求項17に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【請求項19】
エアレイド方式の乾式法により不織布を形成する工程をさらに含み、
前記不織布を形成する工程において、ケミカルボンド法により前記天然繊維を含む繊維を結合する請求項18に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【請求項20】
前記ケミカルボンド法において使用するバインダーが、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルアクリルコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種のバインダーである請求項18又は19に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器具用フィルターセグメント及びその製造方法、並びに香味吸引器具に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ等の香味成分を含む香味吸引器具用のフィルターとしては、通常、濾過材としての酢酸セルロース繊維を筒状のラッパー内に充填したアセテートフィルターが用いられる。しかし、酢酸セルロース繊維は化学合成繊維であるため、例えば香味吸引器具が廃棄される際に分散性や分解性が低く、自然環境への負荷が大きい。そのため、環境負荷低減の観点から、天然繊維を使用したフィルターの開発が望まれている。
【0003】
天然繊維を使用したフィルターとしては、例えば植物パルプからなる紙を濾過材として含むフィルター、植物パルプからなる不織布を濾過材として含むフィルター等が挙げられる(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭45-10599号公報
【文献】特開昭48-85874号公報
【文献】特許第3260059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、紙を濾過材として使用すると、香味成分の吸引に適した通気抵抗を発現するために必要な紙の充填量においては、紙と紙との間に隙間が発生し、フィルターの軸方向端面における外観が良くない。一方、前記隙間をなくすために紙の充填量を増加させると、通気抵抗が高くなり香味成分の吸引が困難になる。また、不織布は紙と比較して密度は低いが、紙と同様の課題を有する。
【0006】
本発明は、自然環境に優しく、外観が良好であり、かつ香味成分の吸引に適した通気性能を有する香味吸引器具用フィルターセグメント及びその製造方法、並びに該フィルターセグメントを備える香味吸引器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施態様を含む。
【0008】
本実施形態に係る香味吸引器具用フィルターセグメントは、
筒状のラッパーと、
前記ラッパー内部に圧縮して充填された、天然繊維を含む不織布と、
を含む香味吸引器具用フィルターセグメントであって、
下記方法で算出される、前記ラッパー内部に充填された前記不織布の圧縮率(A)が20%以上100%未満である。
〔圧縮率(A)の算出方法〕
断面積(A1):フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出して測定される、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積
断面積(A2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(A)(%)=(断面積(A2)/断面積(A1))×100
【0009】
本実施形態に係る香味吸引器具は、本実施形態に係る香味吸引器具用フィルターセグメントを備える。
【0010】
本実施形態に係る香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法は、前記天然繊維を含む不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自然環境に優しく、外観が良好であり、かつ香味成分の吸引に適した通気性能を有する香味吸引器具用フィルターセグメント及びその製造方法、並びに該フィルターセグメントを備える香味吸引器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本実施形態に係るフィルターセグメントの一例の軸方向に平行な面における断面図、(b)該フィルターセグメントの軸方向端面を示す側面図である。
図2】本実施形態に係るフィルターセグメントの製造方法に使用できるフィルターセグメント製造装置の一例を示す模式図である。
図3】フィルターセグメント製造装置の不織布加工装置の一例を示す模式図である。
図4】不織布加工装置が備えるスリッターの一例を示す断面図である。
図5】不織布加工装置が備える垂直ローラーの一例を示す斜視図である。
図6】不織布加工装置が備えるS字形状ガイドの一例の(a)上流側、(b)下流側における断面図である。
図7】不織布加工装置が備えるローターチューブの一例を示す(a)斜視図、(b)断面図である。
図8】不織布加工装置が備えるフォーミング部材の鼓ロールの一例を示す断面図である。
図9】本実施形態に係るフィルターセグメントを含むマルチフィルター((a)2つのフィルターセグメント、(b)3つのフィルターセグメント)の一例を示す断面図である。
図10】本実施形態に係る燃焼型香味吸引器具の一例を示す断面図である。
図11】本実施形態に係る燃焼型香味吸引器具の他の一例を示す断面図である。
図12】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の一例を示す断面図である。
図13】本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例であって、(a)非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱装置に挿入して加熱する状態、を示す断面図である。
図14】フィルターセグメントYとDの端面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[香味吸引器具用フィルターセグメント]
本実施形態に係る香味吸引器具用フィルターセグメント(以下、フィルターセグメントともいう。)は、筒状のラッパーと、前記ラッパー内部に圧縮して充填された、天然繊維を含む不織布と、を含む。ここで、下記方法で算出される、前記ラッパー内部に充填された前記不織布の圧縮率(A)は、20%以上100%未満である。
〔圧縮率(A)の算出方法〕
断面積(A1):フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出して測定される、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積
断面積(A2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(A)(%)=(断面積(A2)/断面積(A1))×100
【0014】
本実施形態に係るフィルターセグメントは、ラッパー内部に濾過材として充填された不織布が天然繊維を含むため、自然環境において分散性や分解性が高く、環境に優しい。また、前記圧縮率(A)が100%未満であることにより、フィルターセグメントの軸方向端面において不織布間に間隙が視認されず、外観が良好となる。さらに、前記圧縮率(A)が20%以上であることにより、フィルターセグメントの通気抵抗の上昇を適度に抑えることができ、香味成分の吸引に適した通気性能を有することができる。以下、本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されない。
【0015】
本実施形態に係るフィルターセグメントの一例を図1に示す。図1(a)はフィルターセグメント1の軸方向4に平行な面における断面図、図1(b)はフィルターセグメント1の軸方向4の端面をそれぞれ示す。フィルターセグメント1は、図1(b)に示されるように、シート状の不織布3がその主面が軸方向4に対して略平行となるように複数枚重ねられ、S字状形状に折りたたまれた状態で圧縮して、円筒状のラッパー2の内部に充填されている。複数枚のシート状の不織布3は圧縮して充填されてるため、不織布3同士は互いに密接している。したがって、図1(b)に示されるように、フィルターセグメント1の軸方向4の端面において不織布3の間に間隙は視認されず、外観が良好である。なお、図1のフィルターセグメント1では、シート状の不織布3が複数枚重ねられて充填されているが、不織布の枚数は一枚であってもよい。しかし、不織布3の厚みにもよるが、外観の良好性及び適度な通気抵抗の観点から、不織布の枚数は1~7枚であることが好ましい。また、図1のフィルターセグメント1では、シート状の不織布3がS字状形状に折りたたまれた状態で圧縮して充填されているが、S字状形状以外の形状、例えば渦巻き状、アコーディオン状、ギャザー状等の形状で圧縮して充填されていてもよい。
【0016】
前記フィルターセグメントの通気抵抗は、香味成分の吸引に適する観点から、前記フィルターセグメントのサイズを軸方向長さ27.0mm、円周24.1mmに換算した値で、30~250mmHOであることが好ましく、35~230mmHOであることがより好ましく、40~210mmHOであることがさらに好ましい。なお、フィルターセグメントの通気抵抗は、フィルター品質測定器(SODIM社製 品名:SODIMAX)により測定される値である。フィルターセグメントの通気抵抗とは、フィルターセグメントをその側面から空気が流入しないように空気不透過性のゴムで覆い、その一端から17.5cm/秒の流量で吸引したときのフィルターセグメント両端面における差圧(mmHO)である。また、前記換算は、例えばフィルターセグメントが円筒状であって、換算前のフィルターセグメントの通気抵抗がAmmHO、フィルターセグメントの軸方向長さがBmm、円周がCmmである場合、以下の式により行われる。
通気抵抗(換算後)(mmHO)=A*(27.0/B)*((C/24.1)^6)
【0017】
前記フィルターセグメントの軸方向の長さは、5~40mmであることができる。また、前記フィルターセグメントの外周(円周)は、15~30mmであることができる。
【0018】
前記フィルターセグメントは、ラッパー内部に、不織布以外に例えばカプセル、吸着剤、香料、加香物品などの添加物を含んでもよい。また、前記フィルターセグメントの不織布充填部の一部には空洞が設けられていてもよい。また、前記フィルターセグメントには二種以上の不織布が充填されていてもよい。
【0019】
(ラッパー)
本実施形態に係るフィルターセグメントは、筒状のラッパーを備える。ラッパーの材料としては、紙等が挙げられ、坪量が20~120gsm、厚さが30~150μmのものを用いることができる。20gsm以上の坪量とすることで筒内部に充填された不織布からの反発力によって伸びて円周が変動してしまうことが生じにくい。ラッパーの通気特性としては特に限定はされないが、例えば、通気度100C.U.以上の高通気度紙や100C.U未満の低通気度紙を用いる態様を挙げることができる。坪量が20~100gsm、厚さが30~120μmのものを用いることもできる。特に限定されないが、日本製紙パピリア製のLPWS-OLL(通気度1300C.U.、坪量26.5gsm、厚さ48μm)、P-10000C(通気度10000C.U.、坪量24.0gsm、厚さ60μm)、S-52-7000(通気度7000C.U.、坪量52.0gsm、厚さ110μm)、もしくは、普通紙(通気度0C.U.、坪量24gsm、厚さ32μm)を例示することができる。ラッパーは複数枚重ねて巻装しても良い。
【0020】
(不織布)
本実施形態に係るフィルターセグメントは、天然繊維を含む不織布を備える。該不織布は、前記筒状のラッパー内部に圧縮して充填されている。不織布を構成する繊維は天然繊維からなってもよく、天然繊維以外の他の繊維(例えば化学合成繊維など)を含んでもよい。天然繊維としては、例えば絹、毛、綿、麻、植物パルプ等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも天然繊維としては、自然環境における分散性や分解性がより高く、かつ香味成分の吸引に適した通気抵抗により調整しやすい観点から、植物パルプが好ましい。
【0021】
前記植物パルプの粗度は、前述した香味成分の吸引に適した通気抵抗をより容易に達成できる観点から、0.15~0.25mg/mであることが好ましく、0.16~0.24mg/mであることがより好ましく、0.18~0.22mg/mであることがさらに好ましい。なお、前記粗度はJIS P 8120:1998に準拠して測定される値である。
【0022】
前記不織布は、前記天然繊維以外に他の繊維として化学合成繊維をさらに含んでもよい。化学合成繊維としては、例えばアセテート繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、エチレン酢酸ビニルコポリマー繊維等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記不織布が前記化学合成繊維を含む場合、前記不織布中の前記化学合成繊維の含有量は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0023】
充填前の不織布の厚みは特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであることができる。充填前の不織布の目付は特に限定されないが、例えば35~60g/mであることができる。該目付はJIS P 8124:2011に準拠して測定される値である。前記不織布の作製方法は特に限定されないが、例えば後述する方法により作製することができる。
【0024】
本実施形態に係るフィルターセグメントでは、不織布は筒状のラッパー内部に圧縮して充填されている。ここで、前記方法で算出される、ラッパー内部に充填された不織布の圧縮率(A)は20%以上100%未満であり、30~80%が好ましく、45~70%がより好ましい。なお、圧縮率(A)の算出において、断面積(A1)は以下の方法で測定する。まず、フィルターセグメントを22℃、相対湿度60%で24時間放置した後、該フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出す。次に、マイクロスコープで該不織布の断面を撮影し、操作モニター上で縦横の長さを評価することで、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積を算出する。なお、不織布の断面撮影は、フィルターセグメントを軸方向の任意の位置で切断した断面で行うことができる。また、断面積(A2)は、フィルター円周測定機(商品名:SODIMAX、SODIM製)でフィルターセグメントの外周(円周)を測定し、ラッパーの厚さを紙厚さ測定機で測定し、これらの測定値を用いて計算により求める。
【0025】
ラッパー内部に充填された不織布の充填密度は、前述した香味成分の吸引に適した通気抵抗をより容易に達成できる観点から、50~150mg/cmであることが好ましく、60~140mg/cmであることがより好ましく、70~130mg/cmであることがさらに好ましい。なお、不織布の充填密度は、例えばフィルターセグメントが円筒状であって、不織布の質量がAmg/本、フィルターセグメントの軸方向長さがBmm、円周がCmmである場合、以下の式によって算出される。
充填密度(mg/cm)=A/((B/10)*(((C/10/π/2)^2)*π))
【0026】
[香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法]
本実施形態に係る香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法は、天然繊維を含む不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程(以下、不織布充填工程ともいう。)を含むことができる。また、前記方法は、不織布充填工程の前に、カーディング方式又はエアレイド方式の乾式法、湿式法、スパンボンド法、或いはメルドブロー法により不織布を形成する工程(以下、不織布形成工程ともいう。)をさらに含むことが好ましい。前記方法によれば、本実施形態に係るフィルターセグメントを簡易にかつ効率よく製造することができる。以下、各工程について説明するが、本実施形態に係る方法はこれらの各工程に関する実施形態に限定されない。
【0027】
(不織布形成工程)
本工程では、カーディング方式又はエアレイド方式の乾式法、湿式法、スパンボンド法、或いはメルドブロー法により不織布を形成することができる。不織布の形成において、天然繊維を含む繊維の結合は、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)、ステッチボンド法、又はスチームジェット法により行うことができる。
【0028】
本工程では、特に、エアレイド方式の乾式法により不織布を形成し、ケミカルボンド法により天然繊維を含む繊維を結合することが好ましい。エアレイド方式の乾式法では、空気流により低密度な繊維の層を形成することができる。また、ケミカルボンド法ではバインダーを吹き付けて、低密度を維持しながら繊維を結合することができる。ケミカルボンド法において使用するバインダーとしては、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニルアクリルコポリマー等が挙げられる。これらのバインダーは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、スパンボンド法やメルドブロー法により不織布を形成する場合、またサーマルボンド法により天然繊維を含む繊維の結合を行う場合には、繊維は天然繊維以外に熱可塑性繊維をさらに含むことができる。
【0029】
(不織布充填工程)
本工程では、天然繊維を含む不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する。本工程は、シート状の不織布を複数枚重ねる工程と、重ねられた不織布をS字状形状に折りたたむ工程と、S字状形状に折りたたまれた不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程と、を含むことが好ましい。
【0030】
不織布を圧縮する際、下記方法で算出される圧縮率(B)は20%以上100%未満であることが好ましく、20~60%がより好ましく、25~40%がさらに好ましい。圧縮率(B)が20%以上100%未満であることにより、得られるフィルターセグメントにおける前述した圧縮率(A)が20%以上100%未満になりやすい傾向がある。
〔圧縮率(B)の算出方法〕
断面積(B1):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、圧縮直前の前記不織布の断面積
断面積(B2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(B)(%)=(断面積(B2)/断面積(B1))×100
【0031】
断面積(B1)は、マイクロスコープで圧縮直前の不織布の断面を撮影し、操作モニター上で縦横の長さを評価することで、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積を算出することで測定する。また、断面積(B2)は、フィルター円周測定機(商品名:SODIMAX、SODIM製)でフィルターセグメントの外周(円周)を測定し、ラッパーの厚さを紙厚さ測定機で測定し、これらの測定値を用いて計算により求める。
【0032】
本工程は、例えば図2に示されるフィルターセグメント製造装置を用いて実施することができる。図2に示されるフィルターセグメント製造装置は、不織布供給装置5と、不織布加工装置6と、フィルターセグメント形成装置7と、を備える。不織布供給装置5は、前述した不織布形成工程により製造された不織布を、不織布加工装置6へ連続的に供給する装置であることができる。
【0033】
不織布加工装置6の詳細を図3に示す。図3に示される不織布加工装置6は、スリッター8と、パスパート9と、レベル調節ローラー10と、垂直ローラー11と、S字形状ガイド12と、ローターチューブ13と、フォーミング部材14とを備える。不織布供給装置5から連続的に供給されるシート状の不織布16は、スリッター8により流れ方向に4枚にカットされる。具体的には、図4に示されるように、不織布16は3本のスリットナイフ15により流れ方向に4枚に均等にカットされる。なお、本装置では不織布は4枚にカットされるが、カットされる枚数は特に限定されない。
【0034】
次に、スリッター8により4枚にカットされた不織布16は、パスパート9により互いに位相がずらされる。次に、レベル調節ローラー10により各不織布16の高さが調整され、垂直ローラー11により各不織布16のシートの向きが変更される。具体的には、図5に示されるように、不織布16は垂直ローラー11を通過することで、シートの向きが変更された上で、各不織布16がそれぞれ僅かにずれて重なるように配置される。次に、不織布16はS字形状ガイド12を通過することでS字状形状に折りたたまれる。具体的には、図6(a)及び(b)に示されるように、S字形状ガイド12は上流側の図6(a)から下流側の図6(b)へその形状が変化することで、ずらして積層された4枚の不織布16は、最終的に図6(b)に示されるようにS字状形状に折りたたまれる。
【0035】
次に、S字状形状に折りたたまれた不織布16は、ローターチューブ13により円筒形状に圧縮成形される。具体的には、図7に示されるように、S字状形状に折りたたまれた不織布16は、回転するローターチューブ13内に挿入され(図7(b))、ローターチューブ13の回転によりS字状形状を維持しつつ圧縮されながらその外縁を円筒形状に成形される(図7(a))。次に、円筒形状に圧縮成形された不織布16は、フォーミング部材14により、S字状形状をより強固にしつつ、より圧縮を行う。図8に示されるように、フォーミング部材14に設けられた回転する複数の連続する鼓ロール17はフォーミングテープで駆動されている。連続する鼓ロール17は、不織布16の流れ方向にそって徐々に内径が小さくなるように配置されていても良い。フォーミング部の鼓ロール17を不織布16が通過することで、S字状形状をより強固にしつつ、不織布16を円筒形状により圧縮成形することができる。なお、前記圧縮率(B)は、ローターチューブ13の長さや回転速度、鼓ロール17の内径や個数、フォーミングテープの厚さ、幅を適宜設定することで、前述した範囲内に調節することができる。
【0036】
円筒形状により圧縮成形された不織布は、図2に示されるフィルターセグメント形成装置7に供給され、フィルターセグメント形成装置7においてその外周にラッパーが巻かれ、糊付けされた後、適当な長さに切断される。これにより、フィルターセグメントが製造される。
【0037】
[香味吸引器具]
本実施形態に係る香味吸引器具は、本実施形態に係るフィルターセグメントを備えることができる。該香味吸引器具は、本実施形態に係るフィルターセグメントを備えるため、自然環境に優しく、外観が良好であり、かつ香味成分の吸引に適した通気性能を有することができる。該香味吸引器具は、例えば燃焼型香味吸引器具(シガレット)、非燃焼加熱型香味吸引器具等であることができる。
【0038】
前記香味吸引器具は、本実施形態に係るフィルターセグメントを複数備えてもよい。また、前記香味吸引器具は、本実施形態に係るフィルターセグメント以外の他のフィルターセグメントをさらに備えてもよい。他のフィルターセグメントとしては、例えばアセテートやポリ乳酸等の化学合成繊維が充填されたフィルターセグメント、アセテートやポリ乳酸等のフィルムが充填されたセグメント、または、中空構造を有するセグメント等が挙げられる。また、フィルターセグメントの中に活性炭、シリカゲル、またはゼオライトのような吸着剤を含ませることもできるし、液体香料、固体香料または担持体に担持した香料を含ませることもできる。液体香料をゼラチン、多糖類または樹脂等のシェルで包みコアシェル構造とした香料カプセルをセグメントに含ませることもできる。該香味吸引器具がフィルターセグメントを複数備える場合、複数のフィルターセグメントは互いに隣接して配置されることができる。例えば、該香味吸引器具は、図9(a)に示される、本実施形態に係るフィルターセグメントである第一のフィルターセグメント18と、他のフィルターセグメントである第二のフィルターセグメント19とからなる第一のマルチフィルター20を備えることができる。また、例えば、該香味吸引器具は、図9(b)に示される、本実施形態に係るフィルターセグメントである第一のフィルターセグメント18と、他のフィルターセグメントである第二のフィルターセグメント19及び第三のフィルターセグメント21と、からなる第二のマルチフィルター22を備えることができる。複数のフィルターセグメントは、図9に示されるように、外周をフィルタープラグラッパー23により覆われることで互いに接続され、マルチフィルターを形成することができる。
【0039】
(燃焼型香味吸引器具)
本実施形態に係る燃焼型香味吸引器具の一例を図10に示す。図10に示されるように、燃焼型香味吸引器具24は、たばこ含有セグメント25と、たばこ含有セグメント25に隣接して設けられた本実施形態に係るフィルターセグメント1とを含む。たばこ含有セグメント25は、たばこ刻み26(刻み葉、煙草)と、たばこ刻み26の周囲を巻いた巻紙27とを含む。たばこ含有セグメント25とフィルターセグメント1とは、たばこ含有セグメント25及びフィルターセグメント1上に巻かれたチップペーパー部材28によって連結されている。チップペーパー部材28は、その外周の一部に通気孔(タール値調整用)を有していてもよい。通気孔の数は1つでも複数でもよく、例えば10~40個形成されていることができる。通気孔の数が複数の場合、通気孔は例えばチップペーパー部材28の外周部に一列に並んで環状に配置されることができる。複数の通気孔は、略一定の間隔で配置されることができる。通気孔を設けることによって、吸引時に通気孔からフィルターセグメント1内に空気が取り込まれる。主流煙を通気孔からの外気によって薄めることで、所望のタール値の製品設計を行うことができる。
【0040】
使用者は、たばこ含有セグメント25の先端に着火して、フィルターセグメント1の吸口端を口でくわえて吸引することで、たばこの香味を楽しむことができる。本実施形態に係る燃焼型香味吸引器具24では、フィルターセグメント1の吸口端における端面の外観は良好であり、また、適度な吸引力によりたばこの香味を適量吸引することができる。
【0041】
本実施形態に係る燃焼型香味吸引器具は、本実施形態に係るフィルターセグメントに加えて、少なくとも一つ以上の前記他のフィルターセグメントをさらに有してもよい。例えば、図11に示される燃焼型香味吸引器具24は、たばこ含有セグメント25と、本実施形態に係るフィルターセグメント1との間に、第二のフィルターセグメント19を有する。フィルターセグメント1と第二のフィルターセグメント19とはフィルタープラグラッパー29により接続されている。第二のフィルターセグメント19には本実施形態に係るフィルターセグメント1とは異なる機能を持たせることができるため、フィルターに対して複数の機能を付与することができる。
【0042】
(非燃焼加熱型香味吸引器具)
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の一例を図12に示す。図12に示される非燃焼加熱型香味吸引器具30は、たばこ含有セグメント31と、マウスピースセグメント32とを備える。マウスピースセグメント32は、冷却セグメント33と、センターホールセグメント34と、本実施形態に係るフィルターセグメント1とを備える。吸引時、たばこ含有セグメント31が加熱され、フィルターセグメント1の端部より吸引が行われる。
【0043】
たばこ含有セグメント31は、たばこと、エアロゾル生成基材と、を含むたばこ充填物35と、たばこ充填物35を覆う筒状のラッパー36とを有する。たばこ充填物35は、さらに揮発性香料成分、水を含んでもよい。充填物として用いるたばこの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ、5~20mm程度となる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ、5~20mm程度となる。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物として用いてもよい。また、円筒状に成型した複数のシートを同心円状に配置してもよい。乾燥したたばこ葉を刻んで使用する場合であっても、粉砕して均一化したシートとして用いる場合でも、たばこ充填物に含まれるたばこの種類は、様々なものを用いることができる。黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、および、その他のニコチアナ・タバカム系品種やニコチアナ・ルスチカ系品種を、目的とする味となるように適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0044】
たばこを粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つは抄紙プロセスを用いて作られる抄造シートであり、2つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したのちに金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させて作られるキャストシートであり、3つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型した圧延シートがある。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0045】
たばこ充填物35の充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱型香味吸引器具30の性能を担保し、良好な香味の付与の観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上であり、また、通常520mg/cm以下であり、好ましくは420mg/cm以下である。具体的には、たばこ含有セグメント31中のたばこ充填物35の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmのたばこ含有セグメント31の場合、たばこ含有セグメント31あたり200~450mgを挙げることができ、280~400mgが好ましい。
【0046】
エアロゾル生成基材は加熱によりエアロゾルを生成し得る材料であり、特に限定されないが、例えばグリセリン、プロピレングリコール(PG)、トリエチルシトレート(TEC)、トリアセチン、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0047】
揮発性香料成分の種類は、特に限定されず、良好な香味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、たばこ植物(たばこ葉、たばこ茎、たばこ花、たばこ根、およびたばこ種)の抽出物が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの揮発性香料成分は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0048】
たばこ充填物35中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な香味の付与の観点から、通常5~50質量%であり、好ましくは10~20質量%である。たばこ充填物35が揮発性香料成分を含む場合、たばこ充填物中の揮発性香料成分の含有量は、特に限定されず、良好な香味の付与の観点から、通常たばこ充填物質量に対して100ppm以上であり、好ましくは10000ppm以上であり、より好ましくは25000ppm以上であり、また、通常100000ppm以下であり、好ましくは50000ppm以下であり、より好ましくは33000ppm以下である。
【0049】
たばこ充填物35をラッパー36内に充填する方法は特に限定されないが、例えばたばこ充填物35をラッパー36で包んでもよく、筒状のラッパー36にたばこ充填物35を充填してもよい。たばこの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、たばこは該長手方向がラッパー36内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこ含有セグメント31の軸方向又は該軸方向に対して垂直な方向となるように整列させて充填されていてもよい。たばこ含有セグメント31が加熱されることにより、たばこ充填物35に含まれるたばこ成分、エアロゾル生成基材及び水が気化し、吸引によりこれらはマウスピースセグメント32へ移行する。
【0050】
冷却セグメント33は筒状部材37で構成される。筒状部材37は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であることができる。筒状部材37及び後述するマウスピースライニングペーパー42には、両者を貫通する穿孔38が設けられている。穿孔38の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント33内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント31が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。穿孔38の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであることができる。穿孔38の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔38は冷却セグメント33の周上に複数設けられていてもよい。
【0051】
センターホールセグメント34は、中空部を有する充填層39と、充填層39を覆うインナープラグラッパー40とで構成される。センターホールセグメント34は、マウスピースセグメント32の強度を高める機能を有する。充填層39は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填され、トリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロース質量に対して6~20質量%添加されて硬化された、内径φ5.0~φ1.0mmのロッドであることができる。充填層39は繊維の充填密度が高いため、吸引時は空気やエアロゾルは中空部のみを流れることになり、充填層39内はほとんど流れない。フィルターセグメント1でのエアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたいときに、フィルターセグメント1の長さを短くし、センターホールセグメント34で置き換えることは、エアロゾル成分のデリバリー量を増大させるために有効である。センターホールセグメント34内部の充填層39は繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は良好である。
【0052】
センターホールセグメント34と、フィルターセグメント1とはアウタープラグラッパー41で接続されている。アウタープラグラッパー41は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント31と、冷却セグメント33と、接続済みのセンターホールセグメント34及びフィルターセグメント1とは、マウスピースライニングペーパー42により接続されている。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー42の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。
【0053】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具の軸方向、すなわち図12における水平方向の長さは特に限定されないが、40~90mmであることが好ましく、50~75mmであることがより好ましく、50~60mmであることがさらに好ましい。また、非燃焼加熱型香味吸引器具の周の長さは16~25mmであることが好ましく、20~24mmであることがより好ましく、21~23mmであることがさらに好ましい。例えば、たばこ含有セグメント31の長さは20mm、冷却セグメント33の長さは20mm、センターホールセグメント34の長さは8mm、フィルターセグメント1の長さは7mmである態様を挙げることができる。これら個々のセグメント長さは、製造適性、要求品質等に応じて、適宜変更できる。さらに、センターホールセグメント34を用いずに、冷却セグメント33の下流側にフィルターセグメント1のみを配置してもよい。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具では、フィルターセグメントの吸口端における端面の外観は良好であり、また、適度な吸引力によりたばこの香味を適量吸引することができる。
【0054】
本実施形態のフィルターセグメントは天然繊維を主構成要素としているため、酢酸セルロースやポリ乳酸のような一般的な化学繊維と比べて耐熱性が高い傾向にある。冷却セグメントでの冷却作用が少ない際にも、本実施形態のフィルターセグメントであれば、熱で繊維が溶融する等の形状変更がないといった観点で優れている。
【0055】
[非燃焼加熱型香味吸引システム]
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具と、該非燃焼加熱型香味吸引器具を加熱する加熱装置と、を備えることが好ましい。本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具及び前記加熱装置以外の他の構成を有していてもよい。
【0056】
本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引システムの一例を図13に示す。図13に示される非燃焼加熱型香味吸引システムは、本実施形態に係る非燃焼加熱型香味吸引器具30と、非燃焼加熱型香味吸引器具30のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置43とを備える。図13(a)は非燃焼加熱型香味吸引器具30を加熱装置43に挿入する前の状態を示し、図13(b)は非燃焼加熱型香味吸引器具30を加熱装置43に挿入して加熱する状態を示す。図13に示される加熱装置43は、ボディ44と、ヒーター45と、金属管46と、電池ユニット47と、制御ユニット48とを備える。ボディ44は筒状の凹部49を有し、凹部49の内側側面であって、凹部49に挿入される非燃焼加熱型香味吸引器具30のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター45及び金属管46が配置されている。ヒーター45は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット48からの指示により電池ユニット47より電力が供給され、ヒーター45の加熱が行われる。ヒーター45から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管46を通じて非燃焼加熱型香味吸引器具30のたばこ含有セグメントへ伝えられる。
【0057】
図13(b)においては模式的に図示しているため、非燃焼加熱型香味吸引器具30の外周と金属管46の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する目的で非燃焼加熱型香味吸引器具30の外周と金属管46の内周との間に隙間は無い方が望ましい。また、加熱装置43は非燃焼加熱型香味吸引器具30のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。内側から加熱するものである場合、金属管46を用いずに、剛直性のある板状、ブレード状、柱状ヒーターを用いることが好ましい。係るヒーターとしては、例えばセラミック基材の上にモリブデンやタングステン等を付与したセラミックヒーターが挙げられる。
【0058】
加熱装置による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150℃以上400℃以下であることがより好ましく、200℃以上350℃以下であることがさらに好ましい。なお、加熱温度とは加熱装置のヒーターの温度を示す。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0060】
[実施例1](A~L)
(フィルターセグメントA~Lの作製)
(1)不織布の製造
エアレイド方式の乾式法により不織布の製造を行った。具体的には、まず原料となる木材パルプを粗砕機および解繊機で単繊維化した後、ウエブ形成装置からパルプを無端金網の吸収面上に落下させ、ウエブを形成ししつ移送した。このウエブにポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルアクリルコポリマーを含むバインダー溶液を噴霧し、乾燥し、さらに前記バインダー溶液を噴霧し乾燥して、幅240cmの不織布を得た(ケミカルボンド法)。得られた不織布を巻取装置で巻き取りジャンボロールとした。ジャンボロールから不織布を繰り出して幅13cmにスリット加工し、巻き取った。フィルターセグメントAからFについては、原料となる木材パルプは、粗度が0.22mg/mである木材パルプ(Weyerhaueser社製、品名:NB416)を用いた。フィルターセグメントGからLについては、原料となる木材パルプは、粗度が0.18mg/mである木材パルプ(UPM Raumacell社製、品名:バイオブライト)を用いた。フィルターセグメントAからLに使用された不織布の坪量は適宜調整した。
【0061】
(2)フィルターセグメントA~Lの製造
フィルターセグメントA~Lを、たばこ用フィルター製造装置を用いて製造した。すなわち、(1)に記載の方法で製造された不織布を、スリッターで4枚に切り裂き、4枚を重ねて切り口がS字状の円筒状に圧縮して成形した。次に、円筒状の不織布をラッパーで包み、ラップ部を糊付けした後に、所定の長さにカッターで切断して、フィルターセグメントA~Lを得た。不織布はスリット前の幅が13cmであり、これが等間隔で4枚にスリットされることで1枚の幅が32mmとなる。スリット時にわずかにロスが発生する。
【0062】
以上により、表1に示されるフィルターセグメントA~Lを作製した。なお、フィルターセグメントA~Lの軸方向の長さは27.0mm、円周は24.1mmである。フィルターセグメントに充填されている不織布はA~Lすべてにおいて、幅32mm×長さ27mmのものが4枚充填されている。
【0063】
【表1】
【0064】
(香味吸引器具A~Lの作製)
前記フィルターセグメントA~Lを用いて、図10に示される燃焼型香味吸引器具を作製した。たばこ含有セグメント25としては、軸方向長さが57.0mm、円周が24.5mm、たばこ含有量が675mgのたばこ含有セグメントを用いた。たばこ含有セグメント25と、フィルターセグメント1(フィルターセグメントA~L)とを、長さ32.0mmのチップペーパー部材28により接続し、香味吸引器具A~Lを作製した。チップペーパー部材28には前述のタール値調整用の通気孔は設けなかった。
【0065】
(評価)
前記香味吸引器具A~Lについて、吸引時におけるタール及びニコチンの濾過率を以下の方法により測定、評価した。
【0066】
(1)たばこ含有セグメントから生成されるタール量及びニコチン量の測定
RM20自動喫煙機(Borgwaldt KC Inc.製)を用いて、たばこ含有セグメントのみをISO4387(流量17.5mL/sec、吸煙時間2sec/回、吸煙頻度1回/分)に従い自動喫煙させた。ケンブリッジフィルターCM-133(Borgwaldt KC Inc.製)に粗タールを捕集した。ケンブリッジフィルターを10mLのメタノールでしん振、抽出した後、GC-FIDでニコチン量を、GC-TCDで水量を分析した。GCにはAgilent7890(Agilent Technologies Inc.)を用いた。得られた粗タール量から水量、ニコチン量を差し引いてタール量を求めた。たばこ含有セグメントは前記香味吸引器具A~L共通である。ここで、たばこ含有セグメントから生成されるタール量及びニコチン量は、フィルターセグメント付きの香味吸引器具においては、フィルターセグメント通過前のタール量及びニコチン量とも言い換えられる。結果を表2に示す。
【0067】
(2)香味吸引器具から生成されるタール量及びニコチン量の測定
たばこ含有セグメントの代わりに香味吸引器具A~Lを自動喫煙させた以外は、前記(1)と同一方法で香味吸引器具A~Lから生成されるタール量、ニコチン量を測定した。ここで香味吸引器具から生成されるタール量及びニコチン量は、フィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量と言い換えられる。結果を表2に示す。
【0068】
(3)タールおよびニコチンの濾過率の評価
たばこ含有セグメントから生成されるタール量、ニコチン量をそれぞれ、T_Tobacco(mg)、N_Tobacco(mg)とする。香味吸引器具から生成されるタール量、ニコチン量をそれぞれ、T_Whole Rod(mg)、N_Whole Rod(mg)とする。タール濾過率及びニコチン濾過率は以下の式で表される。結果を表2に示す。
タール濾過率(%)={1-(T_Whole Rod/T_Tobacco)}×100
ニコチン濾過率(%)={1-(N_Whole Rod/N_Tobacco)}×100
【0069】
【表2】
【0070】
香味吸引器具A~Lは、タールの濾過率が24.2~70.2%、ニコチンの濾過率が29.2~71.1%であり、香味成分の吸引において適切な濾過率であった。これは、フィルターセグメントA~Lが適切な通気抵抗を有し、吸引時にタール及びニコチンを適量濾過したためと考えられる。タール濾過率、ニコチン濾過率ともに、この範囲内とすることで、燃焼型香味吸引器具の生成タール量、生成ニコチン量のバリエーションを大きく変更することができる。また、香味吸引器具A~Lのフィルターセグメント端面は、不織布間の隙間が無く、きれいな外観を有していた。
【0071】
[実施例2](N、P及びR)
(1)フィルターセグメントN、P及びRの作製
圧縮率を変更した以外は、実施例1のフィルターセグメントA~Fと同様に、フィルターセグメントN、P及びRを作製した。
【0072】
(2)香味吸引器具N、P及びRの作製、評価
実施例1と同様に、フィルターセグメントN、P及びRを用いて香味吸引器具N、P及びRを作製した。なお、香味吸引器具N及びPについては、チップペーパー部材28には前述のタール値調整用の通気孔は設けなかった。一方、香味吸引器具Rについては、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は22.4%であった。香味吸引器具N、P及びRについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表3に示す。
【0073】
[比較例1](M、O及びQ)
(1)フィルターセグメントM、O及びQの作製
フィルターセグメントM、O及びQを、たばこ用フィルター製造装置を用いて製造した。濾過材料としてアセテート長繊維束(単繊維デニール:3.0g/9000m、総繊維デニール:36000g/9000m)を用い、可塑剤としてトリアセチンを繊維質量に対して6%スプレー添加した。前記アセテート長繊維束をラッパーで包み、ラップ部を糊付けした後に、所定の長さにカッターで切断して、フィルターセグメントM、O及びQを得た。
【0074】
(2)香味吸引器具M、O及びQの作製、評価
実施例1と同様に、フィルターセグメントM、O及びQを用いて香味吸引器具M、O及びQを作製した。なお、香味吸引器具M及びOについては、チップペーパー部材28には前述のタール値調整用の通気孔は設けなかった。一方、香味吸引器具Qについては、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は24.2%であった。香味吸引器具M、O及びQについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
本実施形態のフィルターセグメントN、P及びRを用いた場合にも、従来の香味吸引器具のフィルターセグメントとして用いられてるアセテート繊維充填フィルターセグメントM、O及びQと同様の通気抵抗を発現することができた。また、香味吸引器具N、P及びRから生成されるタール量及びニコチン量も、アセテート繊維充填フィルターセグメントM、O及びQを用いた香味吸引器具M、O及びQと同様に大きなバリエーションを実現できることがわかった。また、香味吸引器具N、P及びRのフィルターセグメント端面は、きれいな外観を有していた。
【0077】
[実施例3](T及びV)
(1)デュアルセグメントフィルターT及びVの作製
圧縮率を変更した以外は、実施例1のフィルターセグメントA~Fと同様に、植物パルプ不織布が充填されたフィルターセグメントを作製した。また、比較例1のフィルターセグメントM、O及びQと同様の方法により、アセテート繊維が充填されたフィルターセグメントを作製した。植物パルプ不織布が充填されたフィルターセグメントと、アセテート繊維が充填されたフィルターセグメントとを、フィルターセグメントコンバイナー(商品名:ND-5、三條機械製作所製)を用いて接続し、デュアルセグメントフィルターT及びVとした。デュアルセグメントフィルターT及びVにおいて、植物パルプ不織布が充填されたフィルターセグメントの長さは12mm、アセテート繊維が充填されたフィルターセグメントの長さは15mmであった。
【0078】
(2)香味吸引器具T及びVの作製、評価
前記デュアルセグメントフィルターT及びVを用いて、図11に示される燃焼型香味吸引器具を作製した。たばこ含有セグメント25としては、軸方向長さが57.0mm、円周が24.5mm、たばこ含有量が675mgのたばこ含有セグメントを用いた。たばこ含有セグメント25と、フィルターセグメント19及び1(デュアルセグメントフィルターT又はV)とを、長さ32.0mmのチップペーパー部材28により接続し、香味吸引器具T及びVを作製した。チップペーパー部材28には、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は、それぞれ53.7%、73.7%であった。香味吸引器具T及びVについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表4に示す。
【0079】
[比較例2](S及びU)
(1)デュアルセグメントフィルターS及びUの作製
比較例1のフィルターセグメントM、O及びQと同様の方法により、通気抵抗の異なる、アセテート繊維が充填された2つのフィルターセグメントを作製した。当該2つのフィルターセグメントを用いた以外は実施例3と同様にデュアルセグメントフィルターS及びUを作製した。
【0080】
(2)香味吸引器具S及びUの作製、評価
実施例3と同様に、デュアルセグメントフィルターS及びUを用いて香味吸引器具S及びUを作製した。なお、チップペーパー部材28には、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は、それぞれ55.4%、78.2%であった。香味吸引器具S及びUについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
本実施形態のデュアルセグメントフィルターT及びVを用いた場合にも、従来の香味吸引器具のフィルターセグメントとして用いられてるアセテート繊維充填デュアルセグメントフィルターS及びUと同様の通気抵抗を発現することができた。また、香味吸引器具T及びVから生成されるタール量及びニコチン量も、香味吸引器具S及びUと同様に大きなバリエーションを実現できることがわかった。従来使用されているアセテート繊維充填フィルターに対して、部分的にでも植物パルプ不織布充填フィルターセグメントを用いることで、分散性及び分解性が向上する。
【0083】
[実施例4](X)
(1)デュアルセグメントフィルターXの作製
圧縮率を変更した以外は、実施例1のフィルターセグメントA~Fと同様に、通気抵抗の異なる、植物パルプ不織布が充填された2つのフィルターセグメントを作製した。当該2つのフィルターセグメントを用いた以外は実施例3と同様にデュアルセグメントフィルターXを作製した。
【0084】
(2)香味吸引器具Xの作製、評価
前記デュアルセグメントフィルターXを用いて、図11に示される燃焼型香味吸引器具を作製した。たばこ含有セグメント25としては、軸方向長さが57.0mm、円周が24.5mm、たばこ含有量が675mgのたばこ含有セグメントを用いた。たばこ含有セグメント25と、フィルターセグメント19及び1(デュアルセグメントフィルターX)とを、長さ32.0mmのチップペーパー部材28により接続し、香味吸引器具Xを作製した。チップペーパー部材28には、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は46.3%であった。香味吸引器具Xについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表5に示す。
【0085】
[比較例3](W)
(1)デュアルセグメントフィルターWの作製
比較例1のフィルターセグメントM、O及びQと同様の方法により、通気抵抗の異なる、アセテート繊維が充填された2つのフィルターセグメントを作製した。当該2つのフィルターセグメントを用いた以外は実施例3と同様にデュアルセグメントフィルターWを作製した。
【0086】
(2)香味吸引器具Wの作製、評価
実施例4と同様に、デュアルセグメントフィルターWを用いて香味吸引器具Wを作製した。なお、チップペーパー部材28には、香味吸引器具吸口端面からの距離が12mmの位置に、タール値調整用の通気孔(穿孔)を設けた。該通気孔から導入される外気による希釈割合は47.4%であった。香味吸引器具Wについて、実施例1と同様の方法によりフィルターセグメント通過後のタール量及びニコチン量を測定した。結果を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
本実施形態のデュアルセグメントフィルターXを用いた場合にも、従来の香味吸引器具のフィルターセグメントとして用いられてるアセテート繊維充填デュアルセグメントフィルターWと同様の通気抵抗を発現することができた。また、香味吸引器具Xから生成されるタール量及びニコチン量も、香味吸引器具Wと同様に大きなバリエーションを実現できることがわかった。従来使用されているアセテート繊維充填フィルターに対して、部分的にでも植物パルプ不織布充填フィルターセグメントを用いることで、分散性及び分解性が向上する。また、香味吸引器具Xのフィルターセグメント端面は、きれいな外観を有していた。
【0089】
[比較例4](Y)
(1)フィルターセグメントYの製造
ペーパーフィルターセグメントであるフィルターセグメントYを、たばこフィルター製造機を用いて製造した。濾過材料となる紙(主原料木材パルプ、坪量30g/m、厚さ60μm、紙幅30cm)を、フィルターセグメント長手方向と平行な方向にピッチ1mm間隔でクレープ加工してひだ付けした後に、ランダムにギャザー加工して、ラッパーで筒状に包みラップ部を糊付けした。その後所定長さにカットしてフィルターセグメントYを得た。フィルターセグメントYの通気抵抗は70mmHO/27mm長さであった。
【0090】
(2)外観評価
フィルターセグメントYと、実施例1のフィルターセグメントDの端面の写真を図14に示す。フィルターセグメントYとDとは、通気抵抗は類似しているにもかかわらず、端面の隙間において大きな差異があり、フィルターセグメントDの方が隙間が無く、綺麗であった。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]筒状のラッパーと、
前記ラッパー内部に圧縮して充填された、天然繊維を含む不織布と、
を含む香味吸引器具用フィルターセグメントであって、
下記方法で算出される、前記ラッパー内部に充填された前記不織布の圧縮率(A)が20%以上100%未満である香味吸引器具用フィルターセグメント。
〔圧縮率(A)の算出方法〕
断面積(A1):フィルターセグメントのラッパーを取り外し、不織布を取り出して測定される、フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における該不織布の断面積
断面積(A2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(A)(%)=(断面積(A2)/断面積(A1))×100
[2]シート状の前記不織布が複数枚重ねられ、S字状形状に折りたたまれた状態で圧縮して前記ラッパー内部に充填されている[1]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[3]前記フィルターセグメントの軸方向端面において、前記不織布間に間隙が視認されない[1]又は[2]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[4]前記天然繊維が、絹、毛、綿、麻、及び植物パルプからなる群から選択される少なくとも一種の繊維である[1]から[3]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[5]前記天然繊維が植物パルプである[4]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[6]前記植物パルプの粗度が0.15~0.25mg/mである[4]又は[5]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[7]前記不織布が、さらに化学合成繊維を含む[1]から[6]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[8]前記化学合成繊維が、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、及びエチレン酢酸ビニルコポリマー繊維からなる群から選択される少なくとも一種の繊維である[7]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[9]前記ラッパー内部に充填された前記不織布の充填密度が50~150mg/cm である[1]から[8]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[10]前記フィルターセグメントの通気抵抗が、前記フィルターセグメントのサイズを軸方向長さ27.0mm、円周24.1mmに換算した値で30~250mmH Oである[1]から[9]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメント。
[11][1]から[10]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメントを備える香味吸引器具。
[12]前記香味吸引器具用フィルターセグメント以外の他のフィルターセグメントをさらに備える[11]に記載の香味吸引器具。
[13]燃焼型香味吸引器具である[11]又は[12]に記載の香味吸引器具。
[14]非燃焼加熱型香味吸引器具である[11]又は[12]に記載の香味吸引器具。
[15][1]から[10]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法であって、
前記天然繊維を含む不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程を含む香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
[16]前記不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程が、
シート状の前記不織布を複数枚重ねる工程と、
前記重ねられた不織布をS字状形状に折りたたむ工程と、
前記S字状形状に折りたたまれた不織布を圧縮し、ラッパー内に充填する工程と、
を含む[15]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
[17]下記方法で算出される、前記不織布を圧縮する際の圧縮率(B)が20%以上100%未満である[15]又は[16]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
〔圧縮率(B)の算出方法〕
断面積(B1):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、圧縮直前の前記不織布の断面積
断面積(B2):フィルターセグメントの軸方向に垂直な面における、フィルターセグメントの不織布部分の断面積
圧縮率(B)(%)=(断面積(B2)/断面積(B1))×100
[18]カーディング方式又はエアレイド方式の乾式法、湿式法、スパンボンド法、或いはメルドブロー法により不織布を形成する工程をさらに含む[15]から[17]のいずれかに記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
[19]前記不織布を形成する工程において、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)、ステッチボンド法、又はスチームジェット法により、前記天然繊維を含む繊維を結合する[18]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
[20]エアレイド方式の乾式法により不織布を形成する工程をさらに含み、
前記不織布を形成する工程において、ケミカルボンド法により前記天然繊維を含む繊維を結合する[19]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
[21]前記ケミカルボンド法において使用するバインダーが、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルアクリルコポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種のバインダーである[19]又は[20]に記載の香味吸引器具用フィルターセグメントの製造方法。
【符号の説明】
【0091】
1 フィルターセグメント
2 ラッパー
3 不織布
4 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14