IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図1
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図2
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図3
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図4
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図5
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図6
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図7
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図8
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図9
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図10
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図11
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図12
  • 特許-端板を備える回転子及び電動機 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】端板を備える回転子及び電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240827BHJP
【FI】
H02K1/278
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022576674
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2022001428
(87)【国際公開番号】W WO2022158426
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021008934
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰生
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107887995(CN,A)
【文献】特開2007-252079(JP,A)
【文献】特開2014-072971(JP,A)
【文献】特開2020-014300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/17
1/27-1/2798
15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転するロータコアと、
前記ロータコアの表面に取り付けられた複数の磁石と、
前記ロータコアの、前記回転軸の軸方向についての両側の端面を挟むように配置されるとともに、磁性を有する材料から形成された2つの端板と、を備え、
前記2つの端板の少なくとも一方の端板の外周部は、前記軸方向にみたときに、前記磁石の各々を部分的に覆う凹部と、前記ロータコアの径方向について前記凹部より大きい寸法を有するとともに、前記複数の磁石の間に位置する凸部とを有する、回転子。
【請求項2】
前記ロータコアは、前記複数の磁石の間に、該磁石の側面に係止するとともに前記磁石が取り付けられている部分よりも前記径方向に大きい寸法を有する係止部を有し、前記凸部は前記軸方向にみたときに前記係止部を少なくとも部分的に覆うように構成されている、請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記少なくとも一方の端板は、その厚さ方向について突出するとともに前記ロータコア又はその係止部の軸方向端部に当接する隆起部を有する、請求項1又は2に記載の回転子。
【請求項4】
前記少なくとも一方の端板は、その全面に亘って同一の厚さを有する、請求項1又は2に記載の回転子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転子と、
前記回転子が内部に配置される固定子と、を備える、電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアの端面に配置される端板を備える回転子、及び該回転子を備える電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、回転軸の周りに回転する回転子と、回転子の周りに配置された固定子とを備える。回転子は、回転軸に沿って延びるシャフトと、シャフトに固定されたロータコアと、ロータコアに固定された磁石とを含む。
【0003】
従来技術に係る回転子の構造として、ロータコアの回転軸の延びる方向の両側の端面を挟むように端板が配置されるものが知られている(例えば特許文献1-3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-027258号公報
【文献】国際公開第2011/040247号
【文献】特開2017-005871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータコアに固定されている複数の磁石は、例えば、外側の表面の磁極が交互にN極およびS極になるように配置される。電動機が効率良く回転するためには、1つの磁石の外側の表面のN極から出た磁束は、固定子のステータコアを通って、他の磁石のS極に向かうことが好ましい。すなわち、磁力線は、1つの磁石の外側の表面からステータコアを介して他の磁石の表面に向かうことが好ましい。
【0006】
ロータコアの軸方向両側に端板を配置する構造では、該端板はロータコアに固定されている磁石の端面に接触するか、或いは磁石に対して僅かな隙間を開けて配置される。ここで端板が磁性を有する材料にて形成されている場合は、1つの磁石のN極から延びる磁力線が端板を通って同一の磁石のS極に向かうため、該磁石のN極及びS極にて磁力線のループが形成され、磁束が漏れてしまうという問題がある。磁束が漏れると、電動機が発生するトルクに寄与する磁力が低減する。さらに、端板を通る磁力線のループが形成されるために、端板が発熱して鉄損が生じる場合もある。
【0007】
そこで従来技術においては、ロータコアを挟む端板を、ステンレスやアルミニウム等の磁性を有しない材料で作製することがある。しかしながら、ステンレスやアルミニウムは、鉄等の磁性材料よりも高価であり、その結果、回転子や該回転子を有する電動機も高価になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、回転軸の周りに回転するロータコアと、前記ロータコアの表面に取り付けられた複数の磁石と、前記ロータコアの、前記回転軸の軸方向についての両側の端面を挟むように配置されるとともに、磁性を有する材料から形成された2つの端板と、を備え、前記2つの端板の少なくとも一方の外周部は、前記軸方向にみたときに、前記磁石の各々を部分的に覆う凹部と、前記ロータコアの径方向について前記凹部より大きい寸法を有するとともに、前記複数の磁石の間に位置する凸部とを有する、回転子である。
【0009】
本開示の他の態様は、上記一態様に係る回転子と、前記回転子が内部に配置される固定子と、を備える、電動機である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、回転子の端板の外周部に凹凸を設けることにより、該端板が磁性を有するにも関わらず、端板における磁束の漏れを効果的に抑制することができるので、回転子及び電動機の低コスト化と、電動機の高性能化との双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る電動機の軸方向断面図である。
図2】第1実施例に係る回転子の斜視図である。
図3図2の回転子の分解斜視図である。
図4図2のロータコアの部分拡大図である。
図5図4において端板を配置した部分拡大図である。
図6図5の端板周りの磁束の向きを示す図である。
図7】ロータコアが電磁鋼板の積層体であることを示す概略図である。
図8図7のロータコアが破損する例を説明する図である。
図9】第2実施例に係る回転子の分解斜視図である。
図10図9の回転子の概略側面図である。
図11】第3実施例に係る回転子の端板の第1面を示す斜視図である。
図12図11の端板の第2面を示す斜視図である。
図13】第3実施例における端板とロータコアとの位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
図1は、好適な実施形態に係る回転子を備える電動機(回転電機)10の概略構成を示す軸方向断面図である。電動機10は、回転軸線12周りに回転する回転子14と、回転子14が内部に配置される固定子16とを備える。回転子14は、軸線12周りに回転する略円柱状のシャフト18を有し、シャフト18は軸受20、22によって回転可能に支持されている。固定子16は、例えば、シャフト18の軸方向に複数の電磁鋼板を積層して成るステータコアと、該ステータコアに支持され、周方向に沿って配置される複数のコイル(図示せず)とを含む。図示例では、固定子16はハウジング24に固定され、軸受20、22はハウジング24に支持されている。
【0013】
図2及び図3はそれぞれ、回転子14の斜視図及び分解斜視図である。回転子14は、シャフト18に固定された略円筒形状のロータコア26と、ロータコア26に支持された複数の磁石28と、ロータコア26の軸方向両側の端面を挟むように配置され、かつ鉄等の磁性を有する材料から形成された2つの端板30を有する。ロータコア26とシャフト18との結合形態としては、例えば焼き嵌めが挙げられる。端板30は例えば、端板30に形成された孔32とロータコア26に形成された孔34の双方を貫通するボルト等の締結具36によって、ロータコア26に結合可能である。
【0014】
ロータコア26は、磁性を有する単一の部材により形成され、例えば鉄を主成分とする部材を切削することにより形成可能である。しかしロータコアの構造はこれに限られず、例えば、複数の電磁鋼板を軸方向に積層してなる積層体として形成されてもよい(後述する図7参照)。
【0015】
複数の磁石28は、ロータコア26の外周面に配置され、図示例では板状に形成された永久磁石である。複数の磁石28は、周方向に沿って一定の間隔にて配置されており、磁石の個数は回転子14の極数に依存する。回転子14の極数に応じて、任意の個数の磁石28をロータコア26に接着剤等により固定することができる。図示のように回転子14は、ロータコア26の表面に複数の磁石28を配置してなる表面磁石型(SPMタイプ)の回転子である。
【0016】
磁石28の各々は、ロータコア26の軸方向についての一端から他端まで延び、その軸方向長さは、ロータコア26の長さ以下になるように形成されている。また複数の磁石28は、周方向に沿ってN極とS極とを繰り返すように配置されている。
【0017】
図4に示すように、ロータコア26は任意に、磁石28を位置決めするための係止部38を有してもよく、具体的には係止部38は、複数の磁石28の間に、該磁石の側面に係止するとともに磁石28が取り付けられている部分よりも径方向に大きい寸法を有する。図3の例では係止部38は、ロータコア26の外周面に形成され、ロータコア26の軸方向についての一端から他端まで延びる突条である。係止部38は、磁石28の側面に当接するように構成され、これにより各磁石28はロータコア26上に正確に位置決め・固定することが可能となる。
【0018】
図5は、端板30及び磁石28の位置関係を示す拡大図である。端板30の各々は、ロータコア26の径方向断面に対応する略円環形状を有し、端板30の外周部は、軸方向にみたときに、磁石28の各々を部分的に覆う凹部40と、複数の磁石28の間に位置するとともに、径方向について凹部40より大きい寸法を有する凸部42とを有する。
【0019】
図6は、端板30周りの主たる磁束の向きを説明する図である。上述のように、端板30のような磁性材料が磁石28の端面に当接又は近接していると、磁石28の磁束が漏れる場合がある。ここで矢印44で示すように、各磁石28の周方向中央部は磁束が比較的大きいので、磁束漏れによるモータ特性への悪影響が大きい。そこで本実施例では、軸方向にみたときに、磁石28の周方向中央部を含む領域に対しては端板30の凹部40を近接又は当接させることで、磁石28との接触面積を狭くして磁束の漏れ量を抑制している。
【0020】
一方、各磁石28の周方向端部における磁束は、矢印46で示すように本来的に隣の磁石とショートしやすく、電動機のトルクに対する寄与が少ない。そこで本実施例では、軸方向にみたときに、複数の磁石28の間、すなわち磁石28の周方向端部を含む領域に対しては端板30の凸部42を近接又は当接させることで、磁石28との接触面積を大きくして、磁束の漏れ量を抑制よりも、ロータコア26の破損等の防止を優先している。
【0021】
図7及び図8は、ロータコア26の破損の具体例として、ロータコア26が、複数の電磁鋼板50を軸線12の方向に積層してなる積層体である場合を説明する。ロータコア26を含む電動機10の運転中は、図8に示すようにロータコア26内を通る径方向内向きの磁束52が互いに反発して、コアが開く(電磁鋼板50同士が互いに剥離する)ような力が発生する。よって電動機10を長期に亘り稼働するような場合、ロータコア26が破損する虞がある。
【0022】
そこで本実施例では、図5に示したように、各磁石28の端部では端板30の凸部42でロータコア26を押さえることにより、図8のようなロータコア26の破損を防止している。なおロータコア26が係止部38(図4)を有する場合には、軸方向にみたときに係止部38を少なくとも部分的に(好ましくは全体を)端板30の凸部42で押さえる(図5)ことにより、図8に示したような破損をより効果的に防止することができる。
【0023】
このように本実施例では、磁束漏れによるモータ特性への影響が大きい磁石中央部については端板30の凹部40で部分的に覆うことで端板との接触面積を小さくして磁束漏れを抑え、逆に磁束漏れによるモータ特性への影響が小さい磁石の周方向端部については端板30の凸部42で覆うことで端板との接触面積を大きくして、ロータコアの破損等を確実に防止している。また端板30はその厚さ方向について同一寸法及び同一形状を有し得るので、容易に加工・製造することができ、回転子14及び電動機10の低コスト化につながる。
【0024】
(第2実施例)
図9及び図10はそれぞれ、第2実施例に係るロータ14aの分解斜視図及び軸方向断面図を示す。なお第2実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様でよい点については説明を省略する。
【0025】
第1実施例では、2つの端板30がいずれも凹部40及び凸部42を有するが、第2実施例では一方の端板のみが第1実施例の端板30と同一であり、他方の端板30aは凹部及び凸部を有さず、外周部が単純な円形形状を有する。よって端板30aは複雑な機械加工を用いずに低コストで製造可能であり、故に回転子14a及び回転子14aを含む電動機も低コストで製造可能であるが、第2実施例でも、凹部40及び凸部42を有する端板30によって、第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0026】
図10は、回転子14aとシャフト18との結合形態の一例を示す。第2実施例のように2つの端板の形状が異なる場合、シャフト18は端板30a側に取り付けられることが好ましい。具体的には、シャフト18と端板30aは、ボルト等の締結具48を、端板30aに形成されたネジ穴49に螺合させることによって互いに結合可能である。
【0027】
(第3実施例)
図11及び図12はそれぞれ、第3実施例に係る端板30bの表面及び裏面を示す。なお第3実施例では、第1実施例と異なる点のみを説明し、第1実施例と同様でよい点については説明を省略する。
【0028】
端板30bは、第1実施例に係る端板30が有するものと同様の凹部40及び凸部42に加え、ロータコア26に面する第1面54から隆起(突出)する隆起部56を有する。また隆起部56は、周方向について凸部42と同じ位置、すなわち複数の磁石28の間(ロータコア26が突条38を有する場合はその位置)に相当する位置に設けられる。
【0029】
隆起部56は種々の方法で形成され得るが、例えばプレス成形によって容易に形成可能である。プレス成形を利用した場合、隆起部56の裏側、すなわち端板30bの第1面54とは反対側の第2面58において隆起部56に対応する位置に窪み60が形成される。
【0030】
図13は、端板30bとロータコア26、磁石28との配置関係を示す。第1面54に隆起部56があることにより、第1面54が平面である場合に比べ、ロータコア26に対する隆起部56の面圧が大きくなり、ロータコア26の軸方向端部をより強固に押さえることができる。またロータコア26が突条38を有する場合は、隆起部56で突条38の軸方向端部を押さえることで、さらに強固にロータコア26を押さえることができる。なお隆起部56を設けた部分はその裏側が窪み60となっており、故に端板30bは部分的に波形形状にすることができるので、段ボールのフルート部と同様の原理により、端板30bの強度を高めることもできる。
【0031】
さらに、端板30bが隆起部56を有することによって、磁石28と端板30bの第1面54との間には空隙62が形成されるので、磁束漏れをより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 電動機
12 回転軸線
14、14a 回転子
16 固定子
18 シャフト
20、22 軸受
24 ハウジング
26 ロータコア
28 磁石
30、30a、30b 端板
32、34 孔
36 ボルト
38 係止部
40 凹部
42 凸部
50 電磁鋼板
56 隆起部
60 窪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13