(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電気的又は半電気的に駆動される車両のためのバッテリシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20240827BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240827BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240827BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240827BHJP
H01M 50/209 20210101ALN20240827BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M50/204 401H
H01M50/249
H01M50/204 101
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2023001438
(22)【出願日】2023-01-10
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】10 2022 100 745.6
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン パッセンベルク
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/50-50/598
H01M50/20-50/298
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的又は半電気的に駆動される車
両のためのバッテリシステム(1)であって、前記バッテリシステム(1)が、少なくとも2つのバッテリモジュール(2)を備え、各々が、モジュールハウジング(3)と、前記モジュールハウジング(3)
内に配置される複数のバッテリセル(4)と、を有し、前記バッテリシステム(1)が、前記バッテリセル(4)を冷却するための冷却システムを備え、前記バッテリシステム(1)が、
複数のバスバー(5)を備え、前記少なくとも2つのバッテリモジュール(2)が、前記バスバー(5)によって相互に接続されており、前記バッテリシステム(1)が、前記モジュールハウジング(3)の外側に構成されている、バスバーハウジング(6)を備え、
複数の前記バスバー(5)が、前記バスバーハウジング(6)
内に配置されており、かつ前記バスバーハウジング(6)に熱的に連結されており、前記バスバーハウジング(6)が、少なくとも部分的に
、前記少なくとも1つのバッテリモジュール(2)の前記モジュールハウジング(3)に、熱的に連結されて
おり、
それぞれの前記バスバー(5)と前記バスバーハウジング(6)との間の熱的な連結が、それぞれの前記バスバー(5)と前記バスバーハウジング(6)との間に配置されている変形可能な熱伝導要素(9)を介してもたらされる、バッテリシステム。
【請求項2】
バスバーハウジング(6)が、少なくとも部分的に、2つのバッテリモジュール(2
)の前記モジュールハウジング(3)に熱的に連結されている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項3】
前記バスバーハウジング(6)が、互いに解放可能に接続されている、下部シェル(8)及び上部シェル(7)を備える、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項4】
それぞれの
前記バスバー(5)が、前記バスバー(5)の少なくとも2つの
側で前記バスバーハウジング(6)に熱的に連結され
ている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項5】
前記バスバーハウジング(6)における前記バスバー(5)が、軸受構造(17)に機械的に保持されており、前記軸受構造(17)が、前記バスバーハウジング(6)に熱的に連結されている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項6】
前記モジュールハウジング(3)が、接続部分(13)を備え、前記接続部分(13)が、前記モジュールハウジング(3)のハウジング壁の外側上で外向きに突出しており、前記バスバーハウジング(6)が、前記接続部分(13)の領域において、前記モジュールハウジング(3)に機械的に接続されている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項7】
前記冷却システムが、前記バッテリセル(4)から離れて面する前記モジュールハウジング(3)の
外面に装着されているヒートシンク
(14)を備
える、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項8】
前記それぞれのモジュールハウジング(3)が、前記それぞれのバスバー(5)との電気的接続を確立するための端子開口部(16)を備え、端子要素(19)が、前記端子開口部(16)を通過し、前記モジュールハウジング(3)が、前記端子開口部(16)を円周方向に取り囲む封止部分を備え、前記バスバーハウジング(6)が、前記円周方向に取り囲む封止部分と封止的に協働する、請求項1に記載のバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的又は半電気的に駆動される車両、特に乗用車両のためのバッテリシステムに関する。先行技術において既知であるバッテリシステムは、一般的に、複数のバッテリモジュールを備え、特に、セルスタックとも称されるバッテリセルパックの形態の複数のバッテリセルが、それぞれのバッテリモジュールに配置されている。バッテリモジュールは、典型的に、バスバーによって相互接続されている。
【背景技術】
【0002】
先行技術によれば、電気車両におけるほとんどのバッテリセルは、冷却される。バスバーの冷却は、一般的に、提供されない。しかしながら、充電及び放電電流が大きい場合は、バスバーは、特に、急速充電中に、加熱され、バッテリセルに直接接続されており、それによって、バスバーからバッテリセルに熱が入力されるため、バスバーも冷却することが有利である。このような熱入力は、望ましくなく、熱入力によってストレスを受ける、バッテリセルのより速い劣化につながる可能性がある。更に、バスバーは、最高温度を超えない場合があり、そのため、典型的に、そのようなバスバーを取り囲む、電気絶縁体は、例えば、溶融によって損傷を受けない。
【0003】
典型的に、動作中、バッテリセルは、60℃を下回る温度に冷却され、典型的に、20℃~30℃の範囲に保持される。他方、バスバーは、典型的に、より高い動作温度を有し、確実に最大150℃の温度を有することができる。典型的に、バスバーの動作温度は、バスバーの電気絶縁体の材料によって制限される。典型的に、バスバーは、120℃を下回るが、バッテリセルの温度を十分に上回る温度で動作される。
【0004】
典型的に、提供されるバッテリセル冷却によるバスバーの直接冷却は、バスバーが必要以上に冷却されるという欠点を有するが、これは、このような冷却システムが、バッテリセルを20℃~40℃の温度に冷却するように設計されているためである。バッテリセル冷却回路への追加の熱入力は、バッテリセルをより不十分に冷却させるか、又はバッテリセルを冷却するための冷却システムの電力消費は、バスバーを冷却するために不必要に高い電力消費を有する。バスバー用の個別の冷却システム、又はバッテリセルのための冷却システムによって給電され、バスバーをセル冷却の温度レベルよりも高い温度レベルに保つように設計される、バスバーのための個別の冷却構成要素の提供は、高価であり、かつ実装にコストがかかる。
【0005】
ハイブリッド乗用車両のためのバスバーは、特許文献1から既知であり、このバスバーは、100~1,000アンペアの範囲の電流を伝送することができ、このバスバーは、ハウジングによって、バスバーを冷却するための装置を備え、ハウジングは、バスバーから熱エネルギーを受け取り、それを環境に送達する。
【0006】
バスバーを冷却するための冷却装置も、特許文献2から既知であり、バスバーは、アクティブな冷却デバイスに熱的に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】スイス国特許発明第702863号明細書
【文献】独国特許出願公開第102017129249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によって対処される問題は、特に単純な方法で、バッテリシステムのバスバーの十分な冷却を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題は、請求項1の特徴を有するバッテリシステムによって解決される。
【0010】
本発明によるバッテリシステムは、電気的又は半電気的に駆動される車両、特に電気的又は半電気的に駆動される乗用車両のためのバッテリシステムである。バッテリシステムは、少なくとも2つのバッテリモジュールを備え、各々が、モジュールハウジングと、モジュールハウジングに配置される複数のバッテリセルを有する。好ましくは、それぞれのバッテリモジュールのバッテリセルは、1つ以上のバッテリセルパックの中に集められる。バッテリセルパックは、好ましくは、セルスタックである。バッテリシステムは、バッテリモジュールのバッテリセルを冷却するための冷却システムを備える。バッテリシステムは、バスバーを備え、少なくとも2つのバッテリモジュールは、バスバーによって相互に接続される。バッテリシステムは、モジュールハウジングの外側に形成されたバスバーハウジングを備え、バスバーは、バスバーハウジング内に配置されており、かつバスバーハウジングに熱的に連結される。更に、バスバーハウジングは、バッテリモジュールの少なくとも1つに少なくとも部分的に熱的に連結される。
【0011】
バスバーをバスバーハウジングに熱的に連結し、かつバスバーハウジングをバッテリモジュール、好ましくはバッテリモジュールのモジュールハウジングに熱的に連結することにより、バスバーは、かなり長い冷却経路を介してバッテリセルを冷却するための冷却システムを介して冷却されるので、バスバーを低設計スペース、低重量要件、及び簡素な設計により、安価に冷却する。冷却は、バスバーを直接冷却するのではなく、代わりにバッテリモジュール、好ましくはモジュールハウジング、バスバーハウジング、及びバスバーへのバスバーハウジングの熱接続を介して、間接的に冷却が行われるため、バスバーは、バッテリセルが冷却される程度には冷却されないので、それによってバッテリセルを冷却するための冷却システムへの熱入力が少ない状態で、バスバーの妥当な温度レベルが達成される。バスバーハウジングとバッテリモジュール、例えばバッテリモジュールハウジング、同様にバスバーハウジングとバスバーの間の熱的な連結の質を変えることにより、好ましい温度範囲でバッテリセルを冷却するための冷却システムを介してバスバーを動作できるように調整することができるが、これは、バッテリセルの冷却の効率又は安全性に特に悪影響を与えることなく、バッテリセルの温度範囲を大幅に超え得るか、又は概してあり得る。好ましくは、熱的な連結の質は、バッテリシステムが動作しているときに、セルが20℃~60℃の温度範囲で動作し、バスバーが60℃~150℃の温度範囲で動作するようなものである。熱的な連結の質の調整は、構成要素の材料の対応する選択によって、例えばバスバーハウジングの材料によって行うことができる。熱的な連結の質は、連結表面積を拡大又は縮小することによっても増加又は減少できる。
【0012】
バスバーとバッテリモジュール、好ましくはモジュールハウジングとの間の熱的な連結は、例えば、対応する熱伝導要素、例えばギャップパッド又はギャップフィラーが、連結される要素間の隙間に導入されることで生じ得る。隙間を大きくすると、熱的な連結の質が低下する可能性があり、その逆も同様である。更に、熱的な連結の質は、熱伝導要素の材料の対応する選択によって影響を受ける可能性がある。バスバーハウジングとモジュールハウジングとの間の接触領域を減少又は増加させることによって、熱的な連結の質を変更又は調整することも全くもって考えられる。また、熱伝導要素とバスバー又は熱伝導要素とバスバーハウジングとの間の接触表面は、熱的な連結の所望の質が得られるように選択することができる。
【0013】
特に、バスバーハウジングは、バッテリモジュール、好ましくはモジュールハウジングに対して完全には当接せず、バッテリモジュール、好ましくはモジュールハウジングに対して部分的にのみ当接することが規定される。すなわち、バスバーに所望の冷却効果を達成するためには、接触面が小さくても十分であることが示されている。この状況において、それぞれのモジュールハウジングが、残りのモジュールハウジングから突出する接続部分を備える場合、特に有利であると考えられ、バスバーハウジングは、接続部分の領域でのみそれぞれのモジュールハウジングに隣接する。これらの接続部分は、好ましくは、バスバーハウジングをそれぞれのバッテリモジュールハウジングに固定するために機能させることができる。特に、それぞれの接続部分は、バスバーハウジングをモジュールハウジングに接続する接続手段のための対向構造を備えることが規定される。対向構造は好ましくはネジ筋であり、接続手段は好ましくはネジである。接続部分はまた、特にバスバーハウジングの固定に関して、残りのモジュールハウジングと比較して、接続部分がその突出のためにより大きい厚さを有するという利点を有するので、その結果、この領域でバスバーの機械的固定がスムーズに行われ、特にこれらの領域でネジ筋が導入される。したがって、残りのバッテリモジュールハウジングは、材料の厚さに関してより低く維持することができ、これは製造の重量及びコストに有利に影響する。
【0014】
好ましくは、バスバーハウジングは、接続部分の領域でのみモジュールハウジングに機械的及び熱的に接続される。
【0015】
好ましくは、接続部分は、環状であり、モジュールハウジングに形成された貫通開口部を取り囲む。この貫通開口部は、特にバスバーをバッテリセルに電気的に接続するのに機能する。バスバーが、貫通開口部を通過する電気接点に機械的及び電気的に接続されていることは十分に考えられる。
【0016】
接続部分は、好ましくは、別個の構成要素として構成され、モジュールハウジングは、好ましくは、押出プロファイルとして構成される。好ましい実施形態では、接続部分は、例えば、溶接により、モジュールハウジングに解放不能に接続されることが規定される。
【0017】
バスバーハウジングが全てのバッテリモジュールに、少なくとも部分的に熱的に連結されている場合、特に有利であると考えられる。
【0018】
好ましくは、バスバーハウジングは、この点で直線的なトレインハウジングとして構成される。
【0019】
好ましい実施形態では、複数のバスバー、好ましくは、全てのバスバーが、バスバーハウジング内に配置されることが規定される。この点で、複数のバスバーに対してバスバーハウジングが1つだけ必要とされ、特にバッテリシステム全体に対してバスバーハウジングが1つだけ必要とされる。
【0020】
バスバーハウジングの特に簡単な組み立てと製造に関して、バスバーハウジングが、互いに解放可能に接続された、例えば互いにボルト止めされた、下部シェル及び上部シェルを備える場合、有利であると考えられる。この状況において、バスバーハウジングをモジュールハウジングに固定するために、バスバーハウジングのボトムシェルが使用されるときに、特に有利であると考えられる。好ましくは、下部シェルは、モジュールハウジングにネジ止めされる。
【0021】
下部シェル及び/又は上部シェルがU字形又は実質的にU字形の断面を有する場合、特に有利であると考えられる。バスバーハウジングの封止に関しては、上部シェルと下部シェルとの間に封止要素を配置すると有利であると考えられる。上部シェルは、板金曲げ部品として構成されることが好ましく、下部シェルは、鋳造部品として構成されることが好ましい。上部シェルは、下部シェルに比べて安定性が低くなる可能性があるため、下部シェルのみを鋳造部品として形成すれば十分である。
【0022】
例えば、バスバーとそれぞれのシェルとの間に配置された熱伝導要素によって、それぞれのバスバーが上部シェルと下部シェルの両方に熱的に連結されると、特に有利であると考えられる。
【0023】
特に好ましい実施形態において、バスバーハウジングは、バスバーハウジングとそれぞれのモジュールハウジングとの間に局所的な熱的な連結のみが存在する限り、それぞれのバッテリモジュール、好ましくはそれぞれのモジュールハウジングに部分的にのみ熱的に連結されることが規定される。既に述べたように、これは突出した接続部分を介して起こり得る。
【0024】
それぞれのバスバーが、部分的にだけでなく、バスバーの長手方向延長部全体にわたってバスバーハウジングに熱的に連結されている場合、特に有利であると考えられる。この点で、バスバーが、それぞれのバスバーハウジングの全長又はほぼ全長にわたってバスバーハウジングに熱的に連結されている場合、特に有利であると考えられるが、バスバーハウジングは、その長手方向の延長部を介して、それぞれのモジュールハウジングに部分的にのみ熱的に連結される。その結果、バッテリセルの冷却システムに不必要な負担をかけることなく、バスバーの十分に強力で十分に均一な冷却を行うことができる。
【0025】
好ましい実施形態において、それぞれのバスバーとバスバーハウジングとの間の熱的な連結は、それぞれのバスバーの間に配置された1つ以上の変形可能な熱伝導要素を介してもたらされることが規定されている。製造公差は、熱伝導要素の変形性によって補償することができる。好ましくは、熱伝導要素は、弾性的に変形可能である。例えば、変形可能な熱伝導要素は、ギャップパッド又はギャップフィラーによって形成することができる。好ましくは、変形可能な熱伝導要素は、1.0mm~6mmの厚さを有する。好ましくは、熱伝導要素は、取り付けられた状態で圧縮される。これにより、良好な熱伝導とバスバーの機械的固定が保証される。この点で、変形可能な熱伝導要素の使用は、変形可能な熱伝導要素が更にバスバーを所望の位置に保持するために、バスバーとバスバーハウジングとの間の熱的な連結が特に安定しているという利点も有する。
【0026】
モジュールハウジングとバスバーハウジングとの間の熱的な連結のために、これらの構成要素の間に変形可能な熱伝導要素を配置することも考えられる。しかしながら、バスバーハウジングがそれぞれのモジュールハウジング、特に接続部分に直接隣接する場合、特に有利であると考えられる。この状況において、バスバーハウジングとモジュールハウジングの両方が良好な熱伝導率を有する材料、例えば金属又は金属合金で作られている場合に特に有利であると考えられる。
【0027】
それぞれのバスバーが、バスバーの少なくとも2つの側、好ましくはバスバーの両側部上のバスバーハウジングに熱的に連結されている場合、特に有利であると考えられる。
【0028】
好ましい実施形態において、バスバーハウジング内のバスバーは、1つ以上の軸受構造に機械的に保持されることが考えられ、例えば、保持クリップとして構成されたベアリング構造に事前に固定された状態で保持され、ここで、軸受構造は、例えばギャップパッドを介してバスバーハウジングに熱的に連結される。確実に組立前ブラケットとすることができる軸受構造は、好ましくは、熱伝導性プラスチック及び/又はアルミニウムで作られる。バッテリシステムの装着は、軸受構造によって容易にされる。軸受構造の領域では、熱的な連結が特に局所的に簡単に発生する可能性がある。したがって、好ましくは、軸受構造は、モジュールハウジングに熱的に連結されるバスバーハウジングの部分の領域に配置される。
【0029】
バスバーとバスバーハウジングの間に公差補償要素を配置することはかなり考えられ、例えば、バスバーハウジング内のバスバーの位置を確実に固定するために、機械的ばね要素の形態であり、例えば、バスバーハウジング内のバスバーの位置を確実に固定するために、機械的ばね要素の形態である。更に、公差補償要素は、公差補償要素がバスバーをバスバーハウジング又はバスバーハウジングとバスバーとの間に配置された熱伝導要素に押し付けることで、バスバーがバスバーハウジングに熱的に連結されることを保証する。このような公差補償要素は、好ましくは、モジュールハウジングから離れて面するバスバー側に装着される。公差補償要素は、例えば、発泡体であってもよい。
【0030】
特定の好ましい実施形態において、冷却システムは、バッテリセルから離れて面するモジュールハウジングの外側に装着された、特にヒートシンクプレートの形態のヒートシンクを備え、このヒートシンクは冷却剤によって灌流されることが規定される。このため、ヒートシンクは、例えば1つ以上の冷却剤ダクトを備える。この状況において、バスバーハウジングが、ヒートシンクを備えるモジュールハウジングのハウジング壁に熱的に接続されている場合、特に有利であると考えられる。好ましくは、バスバーハウジングは、バスバーハウジングとヒートシンクとの間に接触がないように外部壁上に配置される。したがって、バスバーハウジングとヒートシンクとが、ヒートシンクを備えるモジュールハウジングのハウジング壁を介して単に間接的に互いに熱的に連結されると有利であると考えられる。好ましくは、バスバーハウジングが接続部分に当接したときに、バスバーハウジングがヒートシンクから離間されるように、いずれの接続部分もヒートシンクとは反対側のバスバーハウジングの方向に突出する。
【0031】
好ましい実施形態において、それぞれのモジュールハウジングが、それぞれのバスバーとの電気接続を確立するための端子開口部を備え、端子要素が、端子開口部を通過し、モジュールハウジングが、端子開口部を円周方向に取り囲む封止部分を備え、バスバーハウジングが、円周方向に取り囲む封止部分と協働して封止することが、規定される。封止部分は、確かに接続部分の一部であり得る。
【0032】
特に好ましい実施形態では、接続部分は、3つの機能を有する。これは、バスバーハウジングをモジュールハウジングに機械的に接続し、バスバーハウジングの一部をモジュールハウジングに熱的に接続し、端子開口部を密に封止するように機能する。
【0033】
バスバーが、例えば、バスバーの電流導電性構成要素を囲むコーティング又はプラスチックハウジングの形態で、電気絶縁体を備える場合、特に有利であると考えられる。
【0034】
バスバーハウジングがそれぞれのモジュールハウジングに導電的に接続されている場合、特に有利であると考えられ、これにより、バスバーハウジングとバイパス用モジュールハウジングを介して追加の電磁シールドを実現する。
【0035】
本発明による解決策は、バスバーの冷却が、バッテリセルの既存の冷却システムを使用することによって特に簡単な方法で提供できるという利点を提供する。これにより相乗効果が得られ、熱的な連結の質により、バッテリセルの冷却システムに不必要な負担をかけることなく、バスバーの十分な冷却を特に簡単な方法で達成することができる。バスバーの冷却は、バスバーの温度を下げることにより、バスバーの電気抵抗による熱損失を減らすことができる。これは、特に急速充電に関連している。更に、バスバーの冷却により、バスバーの横断セクションを縮小することができる。それに応じて熱的な連結を設計すると、セル内の温度分布がより均一になるため、セルの寿命の向上を達成することができる。
【0036】
以下の図において、本発明は、限定されることなく、例示的な実施形態を参照して更に詳細に説明される。図は、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】バッテリシステムの第1の実施形態の断面図である。
【
図2】バッテリシステムの第2の実施形態の断面図である。
【
図3】バッテリシステムの第3の実施形態の断面図である。
【
図4】バッテリシステムの第4の実施形態の断面図である。
【
図5】バッテリシステムの更なる実施形態の上面図である。
【
図6】バスバーハウジングを除いた
図5による実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1~6は、本発明によるバッテリシステム1の実施形態を示しており、
図1~6の図示は単に概略を表現している。図示は、バッテリシステム1の必須構成要素を描写するために概略的かつ単純化されている。
【0039】
図に示されるX軸は車両の長手方向、すなわち進行方向を指し、Y軸は車両の横方向に対応し、Z軸は車両の垂直方向に対応する。
【0040】
図1は、電気的又は半電気的に駆動される車両、この場合は乗用車両のためのバッテリシステム1を簡略化した断面図で示している。バッテリシステム1は、長手方向Xに連続して配置された複数のバッテリモジュール2を備える。それぞれのバッテリモジュール2は、断面が長方形のモジュールハウジング3と、モジュールハウジング3内に配置された複数のバッテリセル4とを備える。バッテリセル4は、バッテリセルスタックを形成するために集められる。
図1に示すバッテリモジュール2は、車両の横方向Yに互いに隣接して配置された2つのバッテリセルパックを備える。バッテリシステム1は、バッテリセル4を冷却するための冷却システムを備える。そのような冷却システムは、先行技術から既知であるため、本発明に関連するそのような冷却システムの構成要素のみを以下で更に詳細に説明する。冷却システムは、冷却剤によって灌流される冷却回路を含み、冷却剤は、バッテリセル3から熱を吸収し、取得した熱を冷却システムのヒートシンクに放散するように機能する。バッテリセル4は、このように冷却システムによって冷却される。典型的に、動作中、バッテリセルは60℃を下回る温度に冷却され、典型的には20℃~30℃の範囲に保持される。
【0041】
バッテリモジュール2は、長手方向Xに延在する複数のバスバー5によって互いに電気的に接続されている。バッテリシステム1は、バスバーハウジング6を含み、バスバー5は、バスバーハウジング6内に配置される。この場合、バスバーハウジング6は、直線状に構成され、車両の長手方向Xに延在し、
図5に例として示されるように、車両の長手方向Xに連続して配置された複数のバッテリモジュール2にまたがる。バスバーハウジング6は、別個のハウジングとして構成されているため、モジュールハウジング3の一部ではない。更に、別個のバッテリハウジングは、提供されない。バスバーハウジング6は、モジュールハウジング3の外側に延在し、車両垂直方向Zにおいてモジュールハウジング3の上方に配置される。
【0042】
バスバー5を冷却する目的で、バスバー5は、バスバーハウジング6に熱的に連結され、バスバーハウジング6は、モジュールハウジング3に熱的に連結される。バスバー5は、モジュールハウジング3が冷却システムを介して直接的又は間接的に冷却されるので、バスバーハウジング6とバスバー5との間の熱的な連結及びバスバーハウジング6とモジュールハウジング3との間の熱的な連結によって、バッテリセル4の冷却システムを介して間接的に冷却される。ハウジング3、6を横切る冷却経路がかなり長いため、バスバー5は、バッテリセルほど強くは冷却されず、バッテリセル3の温度レベルよりかなり高い、バスバー5の妥当な温度レベルは、同じ冷却システムの使用にもかかわらず達成される。
【0043】
この場合、バスバーハウジング6は、それぞれのバッテリモジュール2のモジュールハウジング3に接続された下部シェル8と、下部シェル8に解放可能に接続された上部シェル7とを備える。この場合、下部シェル8は、接続ネジ10を介して上部シェル7にネジ止めされる。下部シェル8は、好ましくは鋳造部品として構成され、この場合、板金曲げ部品として構成された、上部シェル7よりも大きな材料厚さを有する。
図1による実施形態では、下部シェル8は、モジュールハウジング3の長方形の押出プロファイルに直接かつ完全に隣接する。
【0044】
バスバー5をバスバーハウジング6に熱的に連結する目的のために、熱伝導性熱伝導要素9が、バスバー5と上部シェル7及び下部シェル8との間にギャップパッドの形態で導入される。ギャップパッド9は、バスバー5に直接接触するのではなく、実際のバスバー5を取り囲む電気絶縁体11に接触する。
【0045】
この場合、下部シェル8は、モジュールハウジング3の上部壁に直接接触し、下部シェル8とモジュールハウジング3の両方が良好な熱伝導率を有する材料で作られているので、対応する熱的な連結が達成される。
【0046】
図2に示される実施形態は、
図1に示される実施形態とは異なる。
図1による実施形態とは対照的に、下部シェル8は、それぞれのバッテリモジュール2のモジュールハウジング3に局所的にのみ熱的に接続されており、このように、ハウジングの全長手方向の延長にわたってではない。より具体的には、それぞれのバッテリモジュールハウジング3は、バスバーハウジング6に面するモジュールハウジング3の側に、この場合はZ方向に、突出する接続部分13を備える。好ましくは、接続部分13は、バスバーハウジング6をモジュールハウジング3に機械的に固定するためにも使用される。したがって、接続部分13は、バスバーハウジング6のモジュールハウジング3への機械的及び熱的な接続の両方のために機能する。この目的のために、接続部分13は、下部シェル8を通過する接続ネジをねじ込むための1つ以上のネジ筋を備えることができる。
【0047】
図2による実施形態において、モジュールハウジング3は、それぞれのバスバー5への電気的な接続を確立するための端子開口部16(
図2には更に詳細には示されていない)を備えており、端子要素17は、端子開口部16を通過し、接続部分13は、端子開口部16を円周方向に取り囲み、バスバーハウジング6は接続部分13と封止的に協働する。このような実施形態において、接続部分13は、好ましくは環状の形状である。このような実施形態は、
図5及び6に概略的に示されており、バスバーハウジング6は、明確にするために
図6には示されていない。
【0048】
更に、
図2による実施形態では、バスバーハウジング6におけるバスバー5が軸受構造17内に機械的に保持されることが規定されており、軸受構造17は、組み立てを容易にするためにバスバー5を予め固定するために機能する。軸受構造17は、熱伝導性プラスチックからなり、バスバーハウジング6の下部シェル8に熱的に連結され、この場合の熱的な連結は、ギャップパッド9を介して行われる。軸受構造17は、各バスバー5のための別個の保持部分を含み、この場合、その保持部分は、それぞれのバスバー5を円周方向に取り囲む熱伝導要素9で充填される。
【0049】
図2による実施形態において、ばね要素12は、バスバー5の上に配置され、ばね要素12がバスバー5を下部シェル8の方向に押すということで、ばね要素12は、製造公差を補償し、バスバー5とギャップパッド9との間、更にはギャップパッド9とバスバーハウジング6の下部シェル8との間にエアギャップが生じないように保証する。
【0050】
図3に示される実施形態では、ヒートシンクプレートの形態のヒートシンク14が、バッテリセル4から離れて面するモジュールハウジング3の外側に取り付けられることが規定されており、このヒートシンクプレートは、冷却回路の冷却剤で灌流可能な複数の冷却ダクトを備える。バスバーハウジング6は、ヒートシンクプレートを備えるバッテリモジュールハウジング3のこの外側に装着され、バスバーハウジング6の下部シェル8は、モジュールハウジング3に直接接触し、例えばヒートシンクプレート14には接触しない。したがって、バスバーハウジング6と冷却システムのヒートシンク14とが、モジュールハウジング3のハウジング壁を介して単に間接的に互いに熱的に連結される。
【0051】
図4に示す実施形態では、バッテリセル4の冷却は、モジュールハウジング3に装着されたヒートシンク14を介しては行われず、むしろ、バッテリセル4を受容するモジュールハウジング3によって包囲されたバッテリモジュール2の内部空間は、冷却回路の誘電性冷却流体18で直接満たされる。端子開口部16は、封止体15で密に封止され、それぞれのバスバー5に接続可能な接続要素19が封止体15を通過する。
【符号の説明】
【0052】
1 バッテリシステム
2 バッテリモジュール
3 モジュールハウジング
4 バッテリセル
5 バスバー
6 バスバーハウジング
7 上部シェル
8 下部シェル
9 熱伝導要素
10 ネジ
11 電気絶縁体
12 ばね要素
13 接続部分
14 ヒートシンクプレート
15 封止体
16 端子開口部
17 軸受構造
18 誘電性冷却流体
19 端末要素