(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】冷却器および電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20240827BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2023008197
(22)【出願日】2023-01-23
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】中村 安仁
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-210776(JP,A)
【文献】国際公開第2007/116894(WO,A1)
【文献】特開平05-190716(JP,A)
【文献】特開2021-027097(JP,A)
【文献】特開2007-281163(JP,A)
【文献】特開平3-106062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体の実装面と反対側の面である第1の発熱体外面に取り付けられる冷却器であって、
箱型に形成され、前記発熱体の熱により沸騰する冷媒の供給を受けるための冷媒供給口と、前記冷媒を排出するための冷媒排出口と、前記冷媒を前記第1の発熱体外面との間で密閉するように前記第1の発熱体外面に取り付けられる開口部と、を備えたカバーと、
前記第1の発熱体外面に向かって延出するように前記カバーの内部に設けられ、前記冷媒供給口から供給される前記冷媒を前記第1の発熱体外面に向けて供給する
複数のノズルと、
前記複数のノズルに前記冷媒を供給する分配流路と、
を備え、
前記複数のノズルは、前記分配流路が形成された方向に配置され、
前記分配流路は、前記冷媒供給口から前記冷媒排出口への方向とは垂直であり、かつ前記第1の発熱体外面とは平行な方向に形成され、
前記第1の発熱体外面の側の前記ノズルの端部と前記第1の発熱体外面との間の距離は、前記冷媒供給口から前記冷媒排出口に向かうにつれて大きくなるように、設定されている、
ことを特徴とする冷却器。
【請求項2】
前記ノズルの流路が管状である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記ノズルの流路がスリット状である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却器。
【請求項4】
前記開口部の端部に、弾性部材により形成されたパッキンを係止するための溝が設けられる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却器。
【請求項5】
前記パッキンを収容する溝が前記カバーの前記開口部に沿って形成されている、
請求項4に記載の冷却器。
【請求項6】
前記ノズルの端部が樹脂により形成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却器。
【請求項7】
前記発熱体と、
前記発熱体が実装されている基板と、
請求項
1に記載の冷却器と、
を備えた電子機器。
【請求項8】
前記冷却器を前記基板に対して固定する固定部材を、
さらに有することを特徴とする請求項
7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記発熱体と前記基板との距離を規制するスペーサを、
さらに有することを特徴とする請求項
8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記基板の前記発熱体と向き合う面と反対側の面に取り付けられ、前記基板を補強するための補強板を、
さらに有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器等に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセッサや画像処理IC(Integrated Circuit)などの半導体チップは、動作に伴って熱を発生する。近年、高性能化にともなって半導体チップの発熱量が増大している。この熱を放散するために、冷媒の蒸発潜熱を利用した冷却機構が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷却構造の技術が開示されている。この技術では、集積回路チップ(本発明の発熱体に相当)の上に、冷媒を噴出する円筒型のフィン(本発明の冷却器に相当)が取り付けられる。この冷却構造では、まず、熱伝導性の良い平板が、集積回路チップ上に固着される。そして、この平板の上に、円筒型のフィンが取り付けられる。フィンの側面には、複数の小径の孔が設けられている。また、フィンの上蓋には、フィンの上部を貫通するノズルが取り付けられている。このノズルから冷媒が鉛直下方の方向に向けて噴出され、平板の放熱面(集積回路チップに向かい合う面と反対側の面)に衝突する。そして、平板に衝突した冷媒が、鉛直上方の方向に向けて上昇し、フィン側面の小径の孔から流出される。このような、冷媒の流れによって、集積回路チップが冷却される。また特許文献1には、曲がり管二次ノズルを用いる構成が開示されている。この曲がり管二次ノズルの先端部が、円筒型フィンの内壁面に向いている。このため、冷媒が、円筒型フィンの内面に沿って旋回しながら平板の放熱面に衝突する。特許文献1では、これにより、冷媒の熱輸送の効率が高められ、冷却効率が高められるとされている。
【0004】
また、特許文献2にも関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平07-142651号公報
【文献】特開平05-136305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、冷媒の流れを作るために、曲がり管二次ノズルが使用されていた、このような曲がり管二次ノズルには、作製に手間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、より作製が容易で、冷媒の流れを形成できる冷却器等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の冷却器は、発熱体の実装面と反対側の面である第1の発熱体外面に取り付けられる冷却器であって、箱型に形成され、前記発熱体の熱により沸騰する冷媒の供給を受けるための冷媒供給口と、前記冷媒を排出するための冷媒排出口と、前記冷媒を前記第1の発熱体外面との間で密閉するように前記第1の発熱体外面に取り付けられる開口部と、を備えたカバーと、前記第1の発熱体外面に向かって延出するように前記カバーの内部に設けられ、前記冷媒供給口から供給される前記冷媒を前記第1の発熱体外面に向けて供給するノズルと、を備え、前記第1の発熱体外面側の前記ノズルの端部と前記第1の発熱体外面との間の距離は、前記冷媒供給口から前記冷媒排出口に向かうにつれて大きくなるように、設定されている。
【0009】
また、本発明の電子機器は、前記発熱体と、前記発熱体が実装されている基板と、上記の冷却器とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、より作製が容易で、冷媒の流れを形成できる冷却器等を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の冷却器を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の冷却器を用いた電子機器を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の冷却器を用いた冷却システムの一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の電子機器の具体例を示す平面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の冷却器の具体例を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例1を示す平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例1を示す側面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例1を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例2を示す平面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例2を示す側面図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態のノズルの変形例2を示す断面図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態の電子機器の変形例3を示す断面図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態の電子機器の変形例4を示す断面図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態の電子機器の変形例5を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の冷却器100を示す断面図である。冷却器100は、発熱体200の第1の発熱体外面202に取り付けられる。発熱体200の実装面201と反対側の面が、第1の発熱体外面202である。冷却器100は、カバー110と、ノズル120とを備える。なお、発熱体200の実装面201は、発熱体200の基板300への実装に用いられる面である。実装については後述する。
【0014】
カバー110は、一部が開口された箱型に形成される。カバー110は、冷媒供給口130と、冷媒排出口140と、開口部150を備える。カバー110は、冷媒供給口130を介して、冷却器100が冷媒の供給を受ける。冷媒には、発熱体200の熱により沸騰する冷媒が用いられる。発熱体200の熱を受熱した冷媒が、液体から気体に相変化して、冷媒排出口140から排出される。また、カバー110には、開口部150が設けられる。開口部150の外周部が、第1の発熱体外面202に取り付けられ、第1の発熱体外面202に固定される。この際、カバー110と、第1の発熱体外面202との間で冷媒が密閉される。
【0015】
なお、説明のために、
図1に記載された直交座標が用いられる。冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かう方向がx軸である。
図1では、紙面の左から右に向かう方向がx方向である。また、第1の発熱体外面202からカバー110に向かう方向がz軸である。
図1では、紙面の下から上に向かう方向がz方向である。そして、
図1の紙面の奥行方向がy方向である。
【0016】
ノズル120は、カバー110の内部に設けられる。そして、ノズル120が、第1の発熱体外面202に向かって延出される。また、冷媒供給口130にノズル120が接続される。これにより、ノズル120に冷媒が供給される。そして、ノズル120に供給された冷媒が、ノズル120から第1の発熱体外面202に向けて供給される。なお、ノズル120は、カバー110と一体に形成されてよい。あるいは、ノズルが、カバー110と別体で形成されてもよい。
【0017】
ここで、ノズル120の端部121と第1の発熱体外面202との間の距離が、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かうにつれて大きくなる。このように、ノズル120の端部121の形状が設定されている。つまり、ノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対して傾きを持つように形成されている。そして、ノズル120の開口部が冷媒排出口140の方を向くように、端部121が傾いている。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態の冷却器100を用いた電子機器1000を示す断面図である。電子機器1000は、発熱体200と、基板300と、冷却器100とを備える。
図2では、パッキン400を用いて、カバー110を第1の発熱体外面202に取り付ける例を示す。なお、パッキン400は、本発明の必須構成要件ではない。つまり、
図1に示されたように、パッキン400が省略されても良い。
【0019】
接続部310によって、発熱体200が、基板300に実装されている。
【0020】
パッキン400を介して、カバー110の開口部150が、発熱体200の第1の発熱体外面202に取り付けられる。パッキン400によって、開口部150と第1の発熱体外面202との接続部分が密閉される。例えば、接着によって、パッキン400が開口部150および第1の発熱体外面202に取り付けられる。なお、
図1では、パッキン400は設けられていない。この場合、接着によって、カバー110の開口部150が、発熱体200の第1の発熱体外面202に直接、取り付けられる。
【0021】
冷媒供給口130には、冷媒供給管510が接続される。例えば、シール継手511を用いて、冷媒供給管510が冷媒供給口130に取り付けられる。
【0022】
冷媒排出口140には、冷媒排出管520が接続される。例えば、シール継手521を用いて、冷媒排出管520が冷媒排出口140に取り付けられる。
【0023】
次に、発熱体200が冷却される仕組みについて説明する。まず、低温で液相の冷媒2000が、冷媒供給管510から冷媒供給口130に供給される。次に、冷媒供給口130に供給された冷媒2000が、ノズル120から第1の発熱体外面202に向けて供給される。そして、冷媒2000が発熱体200の熱を受熱する。この熱が冷媒2000を沸騰させる。これにより、冷媒2000の一部が、液相から気相に相変化する。そして、発熱体200が冷却される。
【0024】
なお、冷媒2000には、液相状態の冷媒と気相状態の冷媒の間で相変化する冷媒が用いられている。冷媒2000には、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC:Hydro Fluorocarbon)やハイドロフルオロエーテル(HFE:Hydro Fluoroether)などを用いることができる。
【0025】
カバー110と発熱体200との間の空間内に冷媒2000を充填する方法については、例えば、次の通りである。
【0026】
カバー110の上面(
図1にて紙面上側)または側面(
図1にて紙面右側または紙面左側)には、冷媒注入孔(不図示)が予め設けられている。この冷媒注入孔から、カバー110と発熱体200との間の空間内に冷媒2000が注入される。そして、冷媒注入孔が閉ざされる。また、カバー110の上面(
図1にて紙面上側)または側面(
図1にて紙面右側または紙面左側)には、空気排除用孔(不図示)が、予め設けられている。この空気排除用孔を介して、カバー110と発熱体200との間の空間内から、空気が排除される。空気の排除には、例えば、真空ポンプ(不図示)などが用いられる。そして、空気排除用孔が閉ざされる。このようにして、カバー110と発熱体200との間の空間内に冷媒2000が満たされる。これにより、カバー110と発熱体200との間の空間内の圧力は冷媒2000の飽和蒸気圧と等しくなり、カバー110と発熱体200との間の空間内に密閉された冷媒2000の沸点が室温近傍となる。なお、冷媒注入孔を空気排除用孔として共用してもよい。
【0027】
上記の構成において、ノズル120の端部121では、開口部が冷媒排出口140の方を向いている。ここで、ノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対向している。そして、端部121と第1の発熱体外面202との間の距離が、位置が冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かうにつれて大きくなっている。このように、ノズル120の端部121の形状が設定されている。このため、
図2に示されているように、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かう方向の冷媒2000の流れが形成される。この流れによって、第1の発熱体外面202上で、気相または液相の冷媒2000が冷媒排出口140に向かって移動する。そして、冷媒排出口140から冷媒排出管520に向かって、冷媒2000が排出される。なお、冷媒排出口140から排出しきれなかった気相の冷媒2000は、カバー110の内壁面との接触などによって、カバー110の内部で冷却される。この冷却により、冷媒2000が気相から液相に相変化する。そして、カバー110の内部において、液相の冷媒2000が、第1の発熱体外面202の上に貯留される。また、冷媒排出口140から排出しきれなかった液相の冷媒2000も、カバー110の内壁面に沿って鉛直下方(
図2のz方向)に下降する。そして、カバー110の内部にて、第1の発熱体外面202の上に冷媒2000が貯留される。なお、カバー110の内部にて第1の発熱体外面202の上に貯留される液体の冷媒2000は、発熱体200の熱によって、再び、液相から気相に変化される。そして、第1の発熱体外面202上で、気相または液相の冷媒2000が冷媒排出口140に向かって移動する。
【0028】
以上の構成では、ノズル120の端部121が第1の発熱体外面202に対向する。そして、端部121と第1の発熱体外面202との間の距離が、位置が冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かうにつれて大きくなる。このように、端部121の形状が設定されている。すなわち、ノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対して傾いている。そして、ノズル120の端部121の開口部が冷媒排出口140の方を向いている。これにより、ノズル120の開口部が、冷媒排出口140側に向いている。このため、ノズル120から第1の発熱体外面202に冷媒2000が供給される際に、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かう冷媒2000の流れが形成される。この流れによって、第1の発熱体外面202における冷媒2000の滞留が防止される。このため、発熱体200が均等に冷却されやすい。また、ノズル120の端部が斜めであれば良いので、曲がったノズル(曲がり管二次ノズル)が用いられる特許文献1の冷却構造よりも、冷却器100の作製が容易である。
【0029】
次に、電子機器1000を冷却する冷却システムについて説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態の冷却器100を用いた冷却システム3000の一例を示す模式図である。冷却システム3000は、冷媒供給管510と、冷媒排出管520と、放熱器530と、ポンプ540を備える。冷媒供給管510および冷媒排出管520が冷却器100に接続される。
【0030】
冷却の対象となる発熱体200は、基板300に実装されている。そして、発熱体200には、冷却器100が取り付けられる。
図3の例では、3つの発熱体200が基板300に実装されている。そして、それぞれの発熱体200に冷却器100が取り付けられている。一般的な冷却システムと同様に、冷却システム3000が閉ループ内で冷媒2000を循環させる。
【0031】
次に、ポンプ540を起点として、冷媒2000の動きについて説明する。まず、ポンプ540から冷媒供給管510に冷媒2000が供給される。次に、冷媒2000が分配される。そして、それぞれの冷却器100に冷媒2000が供給される。ここで冷媒2000が発熱体200の熱を受熱する。次に、それぞれの冷却器100から冷媒排出管520に冷媒2000が排出される。この冷媒2000が、放熱器530に供給される。ここで、冷媒2000が冷却される。そして、冷媒2000がポンプ540に戻る。
【0032】
(具体例)
次に、冷却器100および電子機器1000の具体例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態の冷却器100の具体例を示す平面図である。また、
図5は、本発明の第1の実施形態の電子機器1000の具体例を示す断面図である。
【0033】
図4に示されているように、本具体例では、冷却器100のカバー110が箱型に形成されている。そして
図4の左方向の側面には冷媒供給口130が設けられている。また、
図4の右側の側面には、冷媒排出口140が設けられている。
図4に示されているように、変形例1の冷却器100では、カバー110の内側の第1の発熱体外面202に対向する面(
図4のx-y平面)に、4×4=16のノズル120が設けられている。また、カバー110の開口部150には、パッキン400を取り付けるための溝160が形成されている。
【0034】
図5に示されているように、電子機器1000では、接続部310によって基板300に発熱体200が実装されている。そして、カバー110の溝160に、パッキン400が係止されている。パッキン400によって、開口部150と発熱体200の第1の発熱体外面202との間が密閉される。
【0035】
発熱体200は、例えば、半導体チップ等の電子部品である。接続部310は、例えば、はんだ等の導体で形成されたバンプやボールなどである。カバー110は、金属や樹脂などによって形成される。カバー110およびパッキン400は、冷媒2000に侵されない材料で形成される。ノズル120は、例えば、金属や樹脂によって形成される。電子機器1000において、例えば、温度上昇等によって発熱体200が反る場合がある。また、反りによって、ノズル120の端部121が発熱体200に接触する場合がある。ノズル120が樹脂で形成されていれば、このような接触があっても、発熱体200が傷つかない。また、基板300としては、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミック基板などが用いられる。
【0036】
また、
図5に示されているように、複数のノズル120が、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かって並んでいる。このように、冷媒2000の流れの上流から下流に向かって冷媒2000が分割供給されることで、発熱体200が均等に冷却されやすくなる。上流の1カ所から供給される構成では、下流に近いほど冷媒2000の温度が上昇する。これに対し、本具体例の構成では、下流側にも低温の冷媒2000が供給される。
【0037】
以上説明したように、本具体例の構成では、発熱体200の第1の発熱体外面202に低温の冷媒が供給される。このため、発熱体200が均等に冷却されやすい。また、特許文献1の構成よりも作製が容易である。
【0038】
(変形例1)
次に、ノズル120の変形例について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例1を示す平面図である。また、
図7は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例1を示す側面図である。また、
図8は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例1を示す断面図である。なお、
図8は、
図6のA-A´における断面図である。
【0039】
変形例1では、冷却器100が、中継部材122と、ノズルユニット123を備えている。
【0040】
中継部材122には、冷媒供給口130と中継流路122aが設けられている。冷媒供給口130からノズルユニット123への冷媒2000の供給を、中継流路122aが中継する。
【0041】
ノズルユニット123は、柱状である。ノズルユニット123には、中継流路122aに接続する分配流路123aが設けられる。さらに、分配流路123aから第1の発熱体外面202に向かう方向の流路が設けられる。この流路がノズル120として機能する。
【0042】
ノズルユニット123には、複数のノズル120が備えられている。そして、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かう方向に対して垂直な方向(y方向)に、複数のノズル120が並んでいる。この構成によって、y方向に幅広く冷媒2000が供給される。
【0043】
図8に示されているように、それぞれのノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対して傾いている。この傾きでは、位置が冷媒排出口140に近くなる(x座標が+になる)につれて、端部121と第1の発熱体外面202との距離が大きくなる。この構成により、第1の発熱体外面202に供給される冷媒2000には、+x方向の流れが形成される。このため、上述した具体例と同様に、発熱体200が均等に冷却されやすくなる。
【0044】
また、中継部材122には、複数のノズルユニット123が取り付けられている。そして、それぞれのノズルユニット123で、冷媒供給口130からの距離が異なっている。つまり、冷媒2000の流れの上流から下流に向かって、複数のノズルユニット123が並んでいる。このため、冷媒の流れの下流側の第1の発熱体外面202にも低温の冷媒が供給される。その結果、発熱体200が均等に冷却されやすくなる。
【0045】
(変形例2)
次に、ノズル120の別の変形例について説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例2を示す平面図である。また、
図10は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例2を示す側面図である。また、
図11は、本発明の第1の実施形態のノズル120の変形例2を示す断面図である。なお、
図11は、
図9のB-B´における断面図である。
【0046】
変形例2では、冷却器100が、中継部材122と、ノズルユニット123を備えている。中継部材122の構成は、変形例1と同様である。
【0047】
ノズルユニット123は、柱状である。ノズルユニット123には、中継流路122aに接続する分配流路123aが設けられる。そして、分配流路123aの先に、ノズルユニット123の長手方向(y方向)に長いスリット状の流路が設けられている。このスリット状の流路がノズル120として機能する。この構成によって、y方向に幅広く冷媒2000が供給される。
【0048】
図11に示されているように、それぞれのノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対して傾いている。そして、この傾きでは、位置が冷媒排出口140に近くなる(x座標が+になる)につれて、端部121と第1の発熱体外面202との距離が大きくなる。この構成により、第1の発熱体外面202に供給される冷媒2000には、+x方向の流れが形成される。このため、上述した具体例と同様に、発熱体200が均等に冷却されやすくなる。
【0049】
また、中継部材122には、複数のノズルユニット123が取り付けられている。そして、それぞれのノズルユニット123で、冷媒供給口130からの距離が異なっている。つまり、冷媒2000の流れの上流から下流に向かって、複数のノズルユニット123が並んでいる。このため、冷媒の流れの下流側の第1の発熱体外面202にも低温の冷媒が供給される。その結果、発熱体200が均等に冷却されやすくなる。また、ノズル120がスリット状である。このため、ノズル120が管状の構成に比べて小さな圧力で、同じ量の冷媒2000が供給される。また、ノズル120の構造が簡単であるため、ノズルユニット123の作製が容易である。
【0050】
(変形例3)
次に、電子機器1000の変形例について説明する。
図12は、本発明の第1の実施形態の電子機器1000の変形例3を示す断面図である。
【0051】
変形例3では、
図5の具体例の構成に加えて、固定部材600が設けられている。その他の構成は、具体例と同様である。固定部材600によって、冷却器100が基板300に対して固定される。固定部材600には、例えば、ネジが用いられる。この場合は、例えば、基板300にネジ穴が設けられ、そこにネジが締結される。
【0052】
このような構成とすることで、冷却器100の発熱体200への固定が強固になる。このため、冷却器100と発熱体200の間における冷媒2000の密閉の確実性が向上される。
【0053】
(変形例4)
次に、電子機器1000の別の変形例について説明する。
図13は、本発明の第1の実施形態の電子機器1000の変形例4を示す断面図である。
【0054】
変形例4では、変形例3の構成に加えて、スペーサ610が設けられている。発熱体200の実装面201の端部と基板300との間に、スペーサ610が取り付けられる。その他の構成は、変形例4と同様である。
【0055】
固定部材600が、例えば、ネジの場合、ネジの締結が強まると、冷媒2000の密閉の確実性が向上する。一方で、発熱体200と基板300との間に存在する接続部310に圧縮応力が加わる。そして、締結が過剰になると、接続部310が破損する恐れがある。そこで、発熱体200と基板300との距離を規制するスペーサ610が設けられる。スペーサ610の材料としては、例えば、セラミックや硬質樹脂などが用いられる。スペーサ610が設けられることで、接続部310の破損が防止される。
【0056】
(変形例5)
次に、電子機器1000の別の変形例について説明する。
図14は、本発明の第1の実施形態の電子機器1000の変形例5を示す断面図である。
【0057】
変形例5では、変形例3の構成に加えて、補強板700が設けられている。例えば、基板300が薄い構成では、固定部材600による冷却器100の固定によって、基板300に、湾曲などの変形が発生するおそれがある。補強板700によって、基板300の変形が防止される。基板300の発熱体200が実装されている面と反対の面に補強板700が取り付けられる。補強板700を取り付けることで、接続部310や発熱体200などの破損が防止される。なお、補強板700は、スチフナやスティフナとも呼ばれる。
【0058】
以上、本実施形態の冷却器100等について説明した。
【0059】
本実施形態の冷却器100は、発熱体200の実装面201と反対側の面である第1の発熱体外面202に取り付けられる。冷却器100は、カバー110とノズル120とを備える。カバー110が、箱型に形成される。カバー110には、冷媒供給口130と、冷媒排出口140と、開口部150が設けられる。冷媒供給口130が冷媒2000の供給を受ける。発熱体200の熱が、冷媒2000を沸騰させる。そして、冷媒2000が冷媒排出口140から排出される。第1の発熱体外面202に開口部150が取り付けられる。この際、冷媒2000が、第1の発熱体外面202と開口部150との間で密閉される。カバー110の内部にノズル120が設けられる。第1の発熱体外面202の側に向かって、ノズル120が延出する。冷媒供給口130から供給される冷媒2000を、ノズル120が第1の発熱体外面202に向けて供給する。そして、ノズル120の端部121と第1の発熱体外面202との間の距離が、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かうにつれて大きくなる。このように、ノズル120の端部121の形状が設定されている。
【0060】
以上の構成では、ノズル120の端部121が、第1の発熱体外面202に対して傾いている。これにより、ノズル120の開口部が、冷媒排出口140側に向いている。このため、ノズル120から第1の発熱体外面202に冷媒2000が供給される際に、冷媒供給口130から冷媒排出口140に向かう冷媒2000の流れが形成される。この流れによって、第1の発熱体外面202における冷媒2000の滞留が防止される。このため、発熱体200が均等に冷却されやすい。また、ノズル120の端部が斜めであれば良いので、曲がったノズル(曲がり管二次ノズル)が用いられる特許文献1の冷却構造よりも、冷却器100の作製が容易である。
【0061】
また、一態様によれば、冷却器100において、カバー110の内部に複数のノズル120が設けられる。
【0062】
この構成では、低温の冷媒2000が第1の発熱体外面202の複数個所に供給される。このため、発熱体200が均等に冷却されやすい。
【0063】
また、一態様によれば、冷却器100において、カバー110の内部に複数のノズル120が設けられる。そして、複数のノズル120のうちの少なくとも2つが、冷媒供給口130からの距離が互いに異なる位置に設けられている。
【0064】
この構成では、冷媒2000の流れの下流側にも、低温の冷媒2000が供給される。このため、上流の1個所から供給される構成よりも、下流側の発熱体200が冷却されやすい。
【0065】
また、一態様によれば、冷却器100において、ノズル120の流路が管状である。
【0066】
この構成により、第1の発熱体外面202に向かうように、冷媒2000の供給方向が制御される。
【0067】
また、一態様によれば、冷却器100において、ノズル120の流路がスリット状である。
【0068】
この構成とすることにより、一方向に広がった低温の冷媒2000が供給される。そして、複数の管状のノズル120を備える構成よりも低い圧力で、同量の冷媒2000が供給される。また、構造が簡単であるため、ノズル120の作製が容易である。
【0069】
また、一態様によれば、冷却器100において、開口部150の端部に、溝160が設けられる。溝160には、弾性部材により形成されたパッキン400が係止される。
【0070】
この構成では、パッキン400の位置と形が確実に固定される。
【0071】
また、一態様によれば、冷却器100において、ノズル120の端部121が樹脂により形成されている。
【0072】
冷却器100が取り付けられる電子機器1000では、基板300や発熱体200が反ることがある。そして、ノズル120と発熱体200が接触する恐れがある。ノズル120が樹脂だと、この際に、発熱体200が傷つくことが防止される。
【0073】
本実施形態の電子機器1000は、発熱体200と、基板300と、冷却器100とを備える。基板300には、発熱体200が実装されている。
【0074】
この電子機器1000では、本実施形態の冷却器100が用いられている。このため、冷却器100の特徴によって、発熱体200が均等に冷却されやすい。
【0075】
また、一態様によれば、電子機器1000が固定部材600を備える。固定部材600が、冷却器100を基板300に対して固定する。
【0076】
この構成では、固定部材600によって、冷却器100の発熱体200への固定が強固になる。このため、冷却器100と発熱体200の間における冷媒2000の密閉の確実性が向上される。
【0077】
また、一態様によれば、電子機器1000がスペーサ610を備える。スペーサ610が、発熱体200と基板300との距離を規制する。
【0078】
この構成により、発熱体200と基板300との間に設けられた接続部310の損傷が防止される。
【0079】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0080】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0081】
(付記1)
発熱体の実装面と反対側の面である第1の発熱体外面に取り付けられる冷却器であって、
箱型に形成され、前記発熱体の熱により沸騰する冷媒の供給を受けるための冷媒供給口と、前記冷媒を排出するための冷媒排出口と、前記冷媒を前記第1の発熱体外面との間で密閉するように前記第1の発熱体外面に取り付けられる開口部と、を備えたカバーと、
前記冷媒供給口に接続され、前記第1の発熱体外面に向かって延出するように前記カバーの内部に設けられ、前記冷媒供給口から供給される前記冷媒を前記第1の発熱体外面に向けて供給するノズルと、
を備え、
前記第1の発熱体外面側の前記ノズルの端部と前記第1の発熱体外面との間の距離は、前記冷媒供給口から前記冷媒排出口に向かうにつれて大きくなるように、設定されている、
ことを特徴とする冷却器。
【0082】
(付記2)
複数の前記ノズルが設けられている、
ことを特徴とする付記1に記載の冷却器。
【0083】
(付記3)
複数の前記ノズルのうちの少なくとも2つの前記ノズルが、
前記冷媒供給口からの距離が互いに異なる位置に設けられている、
ことを特徴とする付記1または2に記載の冷却器。
【0084】
(付記4)
前記ノズルの流路が管状である、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一付記に記載の冷却器。
【0085】
(付記5)
前記ノズルの流路がスリット状である、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一付記に記載の冷却器。
【0086】
(付記6)
前記開口部の端部に、弾性部材により形成されたパッキンを係止するための溝が設けられる、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか一付記に記載の冷却器。
【0087】
(付記7)
前記パッキンを収容する溝が前記カバーの前記開口部に沿って形成されている、
付記6に記載の冷却器。
【0088】
(付記8)
前記ノズルの端部が樹脂により形成されている、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか一付記に記載の冷却器。
【0089】
(付記9)
前記発熱体と、
前記発熱体が実装されている基板と、
付記1乃至8のいずれか一付記に記載の冷却器と、
を備えた電子機器。
【0090】
(付記10)
前記冷却器を前記基板に対して固定する固定部材を、
さらに有することを特徴とする付記8に記載の電子機器。
【0091】
(付記11)
前記発熱体と前記基板との距離を規制するスペーサを、
さらに有することを特徴とする付記9または10に記載の電子機器。
【0092】
(付記12)
前記基板の前記発熱体と向き合う面と反対側の面に取り付けられ、前記基板を補強するための補強板を、
さらに有することを特徴とする付記9乃至11のいずれか一付記に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0093】
100 冷却器
110 カバー
120 ノズル
121 端部
130 冷媒供給口
140 冷媒排出口
150 開口部
160 溝
200 発熱体
201 実装面
202 第1の発熱体外面
300 基板
310 接続部
400 パッキン
510 冷媒供給管
520 冷媒排出管
530 放熱器
540 ポンプ
600 固定部材
610 スペーサ
700 補強板
1000 電子機器
2000 冷媒