(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】変性ポリウレタン及びその製造方法並び応用
(51)【国際特許分類】
C08G 79/00 20060101AFI20240827BHJP
C08G 12/06 20060101ALI20240827BHJP
C08G 12/20 20060101ALI20240827BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240827BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240827BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240827BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08G79/00
C08G12/06
C08G12/20
C08G18/10
C08G18/32 050
C08G18/44
C08G18/73
(21)【出願番号】P 2023043823
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】202210436151.6
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】592112352
【氏名又は名称】中国科学院蘭州化学物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】張 新瑞
(72)【発明者】
【氏名】王 暁月
(72)【発明者】
【氏名】徐 静
(72)【発明者】
【氏名】楊 増輝
(72)【発明者】
【氏名】張 耀明
(72)【発明者】
【氏名】王 斉華
(72)【発明者】
【氏名】王 廷梅
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241618(JP,A)
【文献】特開昭49-048791(JP,A)
【文献】特表2015-504957(JP,A)
【文献】Wang, X., Xu, J., Zhang, Y. et al.,"A stretchable, mechanically robust polymer exhibiting shape-memory-assisted selfhealing and clustering-triggered emission",Nat Commun,14, 4712(2023),2023年08月05日,https://doi.org/10.1038/s41467-023-40340-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 79/00
C08G 12/06
C08G 12/20
C08G 18/10
C08G 18/32
C08G 18/44
C08G 18/73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリウレタンであり、前記変性ポリウレタンは配位ポリマーであり、前記配位ポリマーの中心イオンはZn
2+であり、
前記配位ポリマーの配位子は、式I:
【化1】
に示す構造を有し、
前記Zn
2+と配位子の配位構造は式Iー1:
【化2】
に示す構造を有し、
前記配位ポリマーの外側はCF
3SO
3
ー1であり、前記Zn
2+と外側とのモル比は1:2であり、
nは6~12の整数、mは14~30の整数である
ことを特徴とする変性ポリウレタン。
【請求項2】
nが7~10の整数である
請求項1に記載の変性ポリウレタン。
【請求項3】
請求項1に記載の変性ポリウレタンの製造方法であって、
以下のステップ:
ポリカーボネートグリコール、有機金属触媒、ヘキサメチレンジイソシアネート及び第1の有機溶媒を混合し、第1の求核付加反応を行い、式IIで示す構造を有するプレポリマーを得、
【化3】
ここで、nは6~12の整数であり、
前記式IIで表される構造を有するプレポリマー、こはく酸ジヒドラジド及び第2の有機溶媒を混合し、第2の求核付加反応を行い、式IIIで表される構造を有するポリマーを得、
【化4】
前記式IIIで表される構造を有するポリマー、2,2′ービピリジンー5,5′ー
ジカルボアルデヒド及び第3の有機溶媒を混合し、重縮合反応を行い、式IVで表される構造を有するポリマーを得、
【化5】
ここで、mは14~30の整数であり、
前記式IVで表される構造を有するポリマー、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛及び第4の有機溶媒を混合し、配位反応を行い、前記変性ポリウレタンを得る
ことを特徴とする変性ポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネートグリコールの質量とヘキサメチレンジイソシアネートの体積の比が5g:0.8~1mLであり、
前記ポリカーボネート
グリコールとこはく酸ジヒドラジドの質量比は5:0.7~0.75であり、
前記ポリカーボネートグリコールと2,2′ービピリジンー5,5′ー
ジカルボアルデヒドの質量比が5:0.5~0.6であり、
前記ポリカーボネートグリコールとトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の質量比は5:0.076~0.26である
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリカーボネートグリコールの分子量が1000~3000である
請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1の求核付加反応の温度は60~80℃であり、前記第1の求核付加反応の時間は1.5~3
時間である
請求項3ないし5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の求核付加反応の温度は60~80℃であり、前記第2の求核付加反応の時間は0.5~2
時間である
請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記重縮合反応の温度は60~80℃であり、前記重縮合反応の時間は20~40
分である
請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記配位反応の温度は60~80℃、前記配位反応の時間は0.5~1
時間である
請求項3又は4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン技術分野に属し、具体的には変性ポリウレタン及びその製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは合成原料が多く、設計性が強く、化学的安定性がよく、リバウンドがよいなどの特徴があり、各業界で広く応用されている。人々の材料性能に対する要求が段々に厳しくなることにつれて、伝統的なポリウレタンは使用需要を満たすことができなくなってきて、研究者たちもさまざまな方法でポリウレタンの性能を絶えず最適化し、そして絶えずポリウレタンに新しい特性を賦与し、ポリウレタンの応用範囲を広げる。例えば、充填剤を添加したり、剛性ユニットを導入したりすることにより、ポリウレタン材料の強度を高めることができる。さらに、水素結合や配位結合などの非共有結合による相互作用を利用してポリウレタン材料の靭性を高める。
【0003】
しかし、ポリウレタン材料の高強度は、ポリウレタン分子セグメントが運動しにくいことが必要であり、ポリウレタン材料の高靭性は分子セグメントが良好な延伸性を持つことが必要であり、既存のポリウレタン材料の強度と靭性の性能はトレードオフの状態にあり、ポリウレタン材料が高い強度と靭性を両立するという要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上を鑑みて、本発明は変性ポリウレタン及びその製造方法並び応用を提供し、本発明により提供する変性ポリウレタンは高い強度と良好な靭性を両立している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術問題を解決するために、本発明は変性ポリウレタンを提供し、前記変性ポリウレタンは配位ポリマーであり、前記配位ポリマーの中心イオンはZn2+であり、前記配位ポリマーの配位子は式Iに示す構造を有し、前記Zn2+と配位子の配位構造は式Iー1に示し、前記配位ポリマーの外側はCF3SO3
ー1であり、前記Zn2+と外側とのモル比は1:2である。
【0006】
【0007】
nは6~12の整数、mは14~30の整数である。
【0008】
好ましくは、nは7~10の整数である。
【0009】
本発明は上述の技術方案に記載の変性ポリウレタンの製造方法を提供し、以下のステップを含む:
ポリカーボネートグリコール、有機金属触媒、ヘキサメチレンジイソシアネート及び第1有機溶媒を混合し、第1求核付加反応を行い、式IIで示す構造を有するプレポリマーを得、
前記式IIで表される構造を有するプレポリマー、こはく酸ジヒドラジド及び第二有機溶媒を混合し、第2求核付加反応を行い、式IIIで表される構造を有するポリマーを得、
前記式IIIで表される構造を有するポリマー、2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒド及び第3有機溶媒を混合し、重縮合反応を行い、式IVで表される構造を有するポリマーを得、
前記式IVで表される構造を有するポリマー、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛及び第4有機溶媒を混合し、配位反応を行い、前記変性ポリウレタンを得た。
【0010】
【0011】
ここで、nは6~12の整数である。
【0012】
【0013】
【0014】
ここで、mは14~30の整数である。
【0015】
好ましくは、前記ポリカーボネートグリコールの質量とヘキサメチレンジイソシアネートの体積の比は5g:0.8~1mLであり、
前記ポリカーボネートジオールとこはく酸ジヒドラジドの質量比は5:0.7~0.75であり、
前記ポリカーボネートグリコールと2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒドの質量比が5:0.5~0.6であり、
前記ポリカーボネートグリコールとトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の質量比は5:0.076~0.26である。
【0016】
好ましくは、ポリカーボネートグリコールの分子量は1000~3000である。
【0017】
好ましくは、前記第1の求核付加反応の温度は60~80℃であり、前記第1の求核付加反応の時間は1.5~3hである。
【0018】
好ましくは、前記第2の求核付加反応の温度は60~80℃であり、前記第2の求核付加反応の時間は0.5~2hである。
【0019】
好ましくは、前記重縮合反応の温度は60~80℃であり、前記重縮合反応の時間は20~40minである。
【0020】
好ましくは、前記配位反応の温度は60~80℃であり、前記配位反応の時間は0.5~1hである。
【0021】
本発明はまた上述の技術方案の前記変性ポリウレタンまたは上記の技術方案の前記製造方法により製造された変性ポリウレタンの密封分野における応用を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は変性ポリウレタンを提供し、前記変性ポリウレタンは配位ポリマーであり、前記配位ポリマーの中心イオンはZn2+であり、前記配位ポリマーの配位子は式Iに示す構造を有し、前記Zn2+と配位子の配位構造は式Iー1に示し、前記配位ポリマーの外側はCF3SO3
ー1であり、前記Zn2+と外側とのモル比は1:2である。
【0023】
【0024】
【0025】
nは6~12の整数、mは14~30の整数である。本発明が提供する変性ポリウレタンは亜鉛イオンを中心にポリウレタン分子鎖中のピリジンと配位結合を形成し、変性ポリウレタン分子鎖に物理架橋を実現させ、3次元ネットワーク構造を形成し、変性ポリウレタンの強度を高めた。本発明が提供する変性ポリウレタン中のウレア基のNHまたはウレタン中のNHはカルボニル中のOと水素結合を形成し、変性ポリウレタンの延伸中に、前記水素結合は絶えずに解離と再結合し、水素結合の解離と再結合はエネルギーを消費し、変性ポリウレタンの靭性を高める。本発明が提供する変性ポリウレタンは高い強度と良好な靭性を両立する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1~2及び比較例1~2で製造したポリウレタンの赤外線スペクトル図である。
【
図2】実施例1~2及び比較例1~2で製造したポリウレタンの引張強度及び破断伸び曲線図である。
【
図3】実施例1~2及び比較例1~2で調製した変性ポリウレタンの蛍光スペクトル図である。
【
図4】実施例1の製造により得られた変性ポリウレタン形状記憶機能過程を検出する実物図であり、ここで、a1は初期形状、a2は折り曲げ後の一時形状、a3~a4は徐々に元の形状に戻る過程である。
【
図5】比較例1で製造されたポリウレタン形状記憶機能過程を検出する実物図であり、ここで、a1は初期形状であり、a2は折り曲げ後の一時形状であり、a3~a4は徐々に元の形状に戻る過程である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は変性ポリウレタンを提供し、前記変性ポリウレタンは配位ポリマーであり前記配位ポリマーの中心イオンはZn2+であり、前記配位ポリマーの配位子は式Iに示す構造を有し、前記Zn2+と配位子の配位構造は式Iー1に示し、前記配位ポリマーの外側はCF3SO3
ー1であり、前記Zn2+と外側とのモル比は1:2である。
【0028】
【0029】
【0030】
nは6~12の整数、好ましくは7~10の整数、mは14~30の整数であり、好ましくは15~26である。
【0031】
本発明において、前記配位ポリマーは亜鉛イオンを中心イオンとし、式Iで表される構造を有するポリマーを配位子とする。
【0032】
本発明は上述の技術方案に記載の変性ポリウレタンの製造方法を提供し、ポリカーボネートグリコール、有機金属触媒、ヘキサメチレンジイソシアネート及び第1の有機溶媒を混合し、第1の求核付加反応を行い、式IIで示す構造を有するプレポリマーを得、
前記式IIで表される構造を有するプレポリマー、こはく酸ジヒドラジド及び第2の有機溶媒を混合し、第2の求核付加反応を行い、式IIIで表される構造を有するポリマーを得、前記式IIIで表される構造を有するポリマー、2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒドと第3の有機溶媒とを混合し、重縮合反応を行い、式IVで表される構造を有するポリマーを得、前記式IVで表される構造を有するポリマー、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛及び第4の有機溶媒を混合し、配位反応を行い、前記変性ポリウレタンを得た以下のステップを含む。
【0033】
【0034】
ここで、nは6~12の整数である。
【0035】
【0036】
【0037】
ここで、mは14~30の整数である。
【0038】
本発明はポリカーボネートグリコール、有機金属触媒、ヘキサメチレンジイソシアネートと第1の有機溶媒を混合し、第1の求核付加反応を行い、式IIに示す構造を有するプレポリマーを得た。本発明において、前記第1の求核付加反応の前に、前記ポリカーボネートグリコール(PCDL)を乾燥することをさらに含むことが好ましい。本発明において、前記乾燥の温度は、好ましくは110~130℃、より好ましくは112~120℃、前記乾燥の時間は、好ましくは3~6h、より好ましくは4~5hである。本発明において、前記乾燥は真空乾燥であることが好ましい。本発明は乾燥によりポリカーボネートグリコール中の水分を除去し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とポリカーボネートグリコールに含まれる水分との反応を回避することができる。
【0039】
本発明において、前記混合は、好ましくは、ポリカーボネートグリコールを第1有機溶媒に溶解し、ポリカーボネートグリコール溶液を得、有機金属触媒をポリカーボネートグリコール溶液に滴下した後、ヘキサメチレンジイソシアネートと第1の混合したステップを含む。
【0040】
本発明において、前記ポリカーボネートグリコールの分子量は、好ましくは1000~3000、より好ましくは2000である。本発明において、前記第1の有機溶媒は、好ましくはN、Nージメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルホキシド(DMSO)を含み、より好ましくはN、Nージメチルホルムアミドである。本発明において、前記有機金属触媒は、好ましくは有機スズ触媒または有機ビスマス触媒を含み、より好ましくは有機スズ触媒である。本発明において、有機スズ触媒は、好ましくはジブチルスズジラウレート(DBTDL)またはオクタン酸第一スズを含み、より好ましくはジブチルスズジラウレートである。本発明において、有機ビスマス触媒は、好ましくは、イソオクタン酸ビスマス、ラウリン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、又はナフテン酸ビスマスを含む。
【0041】
本発明において、有機金属触媒は、第1の求核付加反応の進行を促進するのに有利である。
【0042】
本発明において、前記ポリカーボネートグリコールの質量とヘキサメチレンジイソシアネートの体積の比は、5g:0.8~1mLが好ましく、5g:0.8~0.9mLがより好ましい。本発明は、前記有機金属触媒の使用量は特に限定されず、触媒として作用できればよい。本発明において、前記ポリカーボネートグリコールの質量と第1の有機溶媒の体積の比は、5g:10~20mLが好ましく、5g:10~15mLがより好ましい。
【0043】
本発明は、前記溶解については特に限定されず、完全に溶解できればよい。本発明は前記滴下の速度に対して特別な要求がなく、第1の求核付加反応が順調に進行することを保証できればよい。本発明において、前記滴下は攪拌に伴うことが好ましく、本発明は、有機金属触媒とポリカーボネートグリコール溶液とを均一に混合できれば、前記攪拌に特に要求されない。
【0044】
本発明において、前記第1の混合は攪拌条件下で行うことが好ましい、前記攪拌の回転速度は、好ましくは100~200r/min、より好ましくは120~150r/minである、前記攪拌の時間は、好ましくは100~180min、より好ましくは120~150minである。
【0045】
本発明において、前記第1の求核付加反応の温度は、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、前記第1の求核付加反応の時間は、好ましくは1.5~3h、より好ましくは2~2.3hである。
【0046】
本発明において、前記混合及び第1の求核付加反応は独立して、好ましくは保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気は好ましくは窒素雰囲気である。
【0047】
式IIで表される構造を有するプレポリマーを得た後、本発明は前記式IIで表される構造を有するプレポリマー、こはく酸ジヒドラジドと第2の有機溶媒を混合し、第2の求核付加反応を行い、式IIIで表される構造を有するポリマーを得る。本発明において、混合は、好ましくは、こはく酸ジヒドラジドを第2の有機溶媒に溶解し、こはく酸ジヒドラジド溶液を得、前記こはく酸ジヒドラジド溶液と第1の求核付加反応後の系を第2の混合したステップを含む。
【0048】
本発明において、前記第2の有機溶媒は、ジメチルスルホキシドであることが好ましい。本発明において、前記こはく酸ジヒドラジド(SDH)の質量と第2有機溶媒の体積の比は、好ましくは0.5~1g:10~20mL、より好ましくは1g:12~15mLである。本発明において、前記ポリカーボネートグリコールとこはく酸ジヒドラジドの質量比は、5:0.7~0.75が好ましく、5:0.71~0.73がより好ましい。
【0049】
本発明は、前記溶解については特に限定されず、完全に溶解できればよい。本発明において、前記第2の混合は攪拌条件下で行うことが好ましい、前記攪拌の回転速度は、好ましくは100~200r/min、より好ましくは150~180r/minであり、前記攪拌の時間は、好ましくは60~90min、より好ましくは60~80minである。
【0050】
本発明において、前記第2の求核付加反応の温度は、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、前記第2の求核付加反応の時間は、好ましくは0.5~2h、より好ましくは1~1.3hである。
【0051】
本発明において、前記混合及び第2の求核付加反応は独立して好ましくは保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気は好ましくは窒素雰囲気である。
【0052】
本発明は、式IIIで表される構造を有する重合体を得た後、前記式IIIで表される構造を有する重合体、2,2′ービピリジンー5,5′ージカルデヒドと第3の有機溶媒を混合し、重縮合反応を行い、式IVで表される構造を有する重合体を得た。本発明において、混合は、好ましくは、2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒドを第3の有機溶媒に溶解することにより、2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒド溶液、2,2′-ビピリジン-5,5′-ジカルボアルデヒド溶液と第2の求核付加反応後の系を第3の混合したステップを含む。
【0053】
本発明において、前記第3の有機溶媒は、好ましくはN、Nージメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドを含み、より好ましくはジメチルスルホキシドである。本発明において、前記2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒド(BIDI)の質量と第3有機溶媒の体積の比は、好ましくは0.2~1g:2~20mL、より好ましくは0.3~0.6g:3~6mLである。本発明において、前記ポリカーボネートグリコールと2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒドの質量比は、5:0.5~0.6が好ましく、5:0.54~0.57がより好ましい。
【0054】
本発明は、前記溶解については特に限定されず、完全に溶解できればよい。本発明において、前記第3の混合は攪拌条件下で行うことが好ましい、前記攪拌の回転速度は、好ましくは100~200r/min、より好ましくは120~150r/minであり、前記攪拌の時間は、好ましくは20~40min、より好ましくは30~35minである。
【0055】
本発明において、前記重縮合反応の温度は、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、前記重縮合反応の時間は、好ましくは20~40min、より好ましくは25~35minである。本発明において、前記重縮合反応は攪拌に伴うことが好ましく、本発明は前記攪拌に対して特に要求はなく、重縮合反応を完全にすることができればよい。
【0056】
本発明において、前記混合及び重縮合反応は独立して、好ましくは保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気は好ましくは窒素雰囲気である。
【0057】
本発明は、式IVで表される構造を有するポリマーを得た後、前記式IVで表される構造を有するポリマー、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛及び第4有機溶媒を混合し、配位反応を行い、前記変性ポリウレタンを得た。本発明において、前記混合は、好ましくは、
トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛を第4有機溶媒に溶解して、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛溶液を得、前記トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛溶液と重縮合反応後の系を第4混合したステップを含む。
【0058】
本発明において、前記第4の有機溶媒は、好ましくはN、Nージメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドを含み、より好ましくはN、Nージメチルホルムアミドである。本発明において、前記トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(Zn(CF3SO3)2)の質量と第4の有機溶媒の体積の比は、1~2g:60~140mLが好ましく、1g:45~67mLがより好ましい。本発明において、前記ポリカーボネートグリコールとトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の質量の比は、5:0.076~0.16が好ましく、5:0.1~0.152がより好ましい。
【0059】
本発明は、前記溶解については特に限定されず、完全に溶解できればよい。本発明において、前記第4の混合は攪拌条件下で行うことが好ましい、前記攪拌の回転速度は、好ましくは100~200r/min、より好ましくは120~150r/minである、前記攪拌の時間は、好ましくは40~80 min、より好ましくは50~70minである。
【0060】
本発明において、前記配位反応の温度は、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、前記配位反応の時間は、好ましくは0.5~1h、より好ましくは0.6~0.9hである。本発明において、前記配位反応は攪拌に伴うことが好ましく、本発明は前記攪拌に対して特に要求はなく、配位反応を完全にすることができればよい。
【0061】
本発明において、前記混合及び配位反応は独立して、好ましくは保護雰囲気下で行われ、前記保護雰囲気は好ましくは窒素雰囲気である。
【0062】
本発明において、前記配位反応後にさらに好ましくは、前記配位反応後の系を乾燥することを含む。本発明において、前記乾燥の温度は、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃である。本発明において、前記乾燥は、配位反応後の系をポリテトラフルオロエチレン金型及びオーブンに移して乾燥することが好ましい。本発明において、前記乾燥は、配位反応後の系中の溶媒を除去することができる。本発明は、前記乾燥の時間に特に限定されず、溶媒を除去できればよい。
【0063】
本発明において、ポリカーボネートグリコール、ヘキサメチレンジイソシアネート、こはく酸ジヒドラジド、2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒド及びトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛を原料として変性ポリウレタンを製造する反応方程式は、式1に示す通りである。
【0064】
【0065】
本発明をさらに説明するために、以下に実施例を参照して、本発明が提供する技術的態様について詳細に説明するが、これらを本発明の保護範囲を限定するものと理解することはできない。
【0066】
実施例1
【0067】
ポリカーボネートグリコールをオーブン中120℃で3h真空乾燥し、2.50gの真空乾燥後のポリカーボネートグリコールを5mLN、Nージメチルホルムアミドに溶解し、ポリカーボネートグリコール溶液を得た。以下のステップはすべて窒素雰囲気下で行った。
【0068】
ポリカーボネートグリコール溶液にジブチル錫ジラウレート3滴を滴下(攪拌に伴う)した後、0.40mLのヘキサメチレンジイソシアネートを120r/minの回転速度で120min攪拌し、70℃で第1の求核付加反応を2h行った。
【0069】
こはく酸ジヒドラジド0.36gをジメチルスルホキシド5mLに溶解し、こはく酸ジヒドラジド溶液を得た、前記こはく酸ジヒドラジド溶液と第1の求核付加反応後の系を120r/minの回転速度で60min攪拌し、70℃で第二求核付加反応を1h行った。
【0070】
2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒド0.27gをジメチルスルホキシド5 mLに溶解し、2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒド溶液を得、2,2′ービピリジンー5,5′ージカルボアルデヒド溶液と第2の求核付加反応後の系を120r/minの回転速度で30min攪拌し、70℃で重縮合反応(攪拌に伴う)を30min行った。
【0071】
トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛0.076gを5mLN,Nージメチルホルムアミドに溶解してトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛溶液を得、前記トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛溶液と重縮合反応後の系を120r/minの回転速度で60min攪拌し、70℃で配位反応(攪拌に伴う)を1h行った後、75℃で乾燥して溶媒を除去し、変性ポリウレタンを得た。
【0072】
実施例2
【0073】
トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の使用量が0.038gであることを除いて、実施例1の方法に従って変性ポリウレタンを製造した。
【0074】
比較例1
【0075】
ポリカーボネートグリコールをオーブン中120℃で3h真空乾燥し、5.00gの真空乾燥ポリカーボネートグリコールを5mLN、Nージメチルホルムアミドに溶解し、ポリカーボネートグリコール溶液、以下のステップはすべて窒素雰囲気下で行った。
【0076】
ポリカーボネートグリコール溶液にジブチル錫ジラウレート3滴を滴下(攪拌に伴う)した後、0.80mLのヘキサメチレンジイソシアネートを120r/minの回転速度で120 min攪拌した、70℃で第1の求核付加反応を2h行った。
【0077】
こはく酸ジヒドラジド0.73gをジメチルスルホキシド10mLに溶解し、こはく酸ジヒドラジド溶液を得、前記こはく酸ジヒドラジド溶液と第1の求核付加反応後の系を120r/minの回転速度で60min攪拌し、70℃で第2の求核付加反応を1h行った。
【0078】
2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒド0.54gをジメチルスルホキシド10mLに溶解し、2,2′ービピリジンー5,5′ージメトアルデヒド溶液を得、2,2′ービピリジンー5、5′ージカルボアルデヒド溶液と第2の求核付加反応後の系を120r/minの回転速度で30min攪拌し、70℃で重縮合反応(攪拌に伴う)を30min行った後、75℃で乾燥して溶媒を除去し、ポリウレタンを得た。
【0079】
比較例2
【0080】
トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の使用量が0.11gであることを除いて、実施例1の方法に従って変性ポリウレタンを製造した。
【0081】
実施例1~2及び比較例1~2で調製したポリウレタンを赤外線検出し、
図1に示すように赤外線スペクトルを得た。
図1中の1690cm
ー1はエステルカルボニル基中のC=Oの伸縮振動ピーク、1662cm
ー1はーC=Nーの特徴ピーク、1738cm
ー1はエステルカルボニル基中のC=Oの伸縮振動ピーク、1240cm
ー1はエステル基中のCーOの伸縮振動ピークであり、比較例1で調製したポリウレタンの赤外スペクトル中の1581cm
ー1はピリジンの特徴ピークであり、比較例1と比較して、実施例1~2で調製した変性ポリウレタンの赤外スペクトル図では、1581cm
ー1での特徴ピークが消失し、比較例1のピリジンが配位に関与していることを示しているので、特徴ピークは消失した。
【0082】
実施例1~2及び比較例1~2に従って調製した変性ポリウレタンの延伸性能、延伸強度、破断伸び及び靭性を以下の方法で測定した結果を表1に示す。
【0083】
引張性能測定方法:試料を幅2mm、長さ30mmのダンベル型スプラインに加工し、スプラインを万能引張試験機に置いて試験を行うと、引張強度と破断伸びの曲線を得ることができる。
【0084】
靭性計算方法:用Originソフトウェアを用いて延伸曲線を積分し、得られた面積は靭性である。
【0085】
【0086】
実施例1~2及び比較例1~2を用いて調製した変性ポリウレタンの引張強度及び破断伸び曲線図を
図2に示す。
図2から、本発明により調製された変性ポリウレタンは高い引張強度と靭性を有することがわかる。比較例2と実施例1~2のデータから、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛の使用量が大きすぎると、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛が材料内部で凝集して欠陥を生じ、変性ポリウレタンの力学的性質を低下させることが分かった。
【0087】
実施例1~2及び比較例1~2で調製した変性ポリウレタンの蛍光性能、発光強度及び波長を蛍光分光計を用いて測定した結果を表2に示す。
【0088】
【0089】
実施例1~3及び比較例1で調製した変性ポリウレタンの蛍光スペクトルを
図3に示すようにプロットした。表2と
図3とを組み合わせると、比較例1で調製したポリウレタンは357nmで励起され、473nmの蛍光を発することが分かった。実施例1で製造した変性ポリウレタンは353nmで励起し、波長483nmの蛍光を発することができ、実施例2で調製した変性ポリウレタンは355nmで励起され、波長484nmの蛍光を発し、比較例2で調製した変性ポリウレタンは347nmで励起され、波長489nmの蛍光を発した。
【0090】
実施例1で調製した変性ポリウレタン及び比較例1で調製したポリウレタンの形状記憶機能について、試料折り曲げた後、ー4℃で一時形状を固定した後、30℃の環境に置いて、材料は徐々に元の形状に戻ったという方法に従って測定された。
【0091】
図4は実施例1で製造された変性ポリウレタン形状記憶機能過程を検出する実物図であり、ここでa1は実施例1で製造された変性ポリウレタン初期形状であり、a2は折り曲げ後の一時形状であり、a3~a4は徐々に元の形状に戻った過程である。
【0092】
図5は、比較例1の製造で得られたポリウレタン形状記憶機能過程を検出する実物図であり、ここでa1は比較例1の製造されたポリウレタン初期形状であり、a2は折り曲げ後の一時形状であり、a3~a4は徐々に元の形状に戻った過程である。
【0093】
図4及び
図5から、本発明が提供する変性ポリウレタンは良好な形状記憶機能を有し、亜鉛イオンの導入はポリウレタンの形状記憶機能を破壊しなかった。
【0094】
上記の実施形態は本発明を詳細に説明したが、本発明の一部の実施形態にすぎず、すべての実施形態ではなく、本実施形態に従って他の実施形態を創造的ではなく得ることができ、これらの実施形態はすべて本発明の保護範囲に属する。