IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電話システム 図1
  • 特許-電話システム 図2
  • 特許-電話システム 図3
  • 特許-電話システム 図4
  • 特許-電話システム 図5
  • 特許-電話システム 図6
  • 特許-電話システム 図7
  • 特許-電話システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電話システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20240827BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H04M9/00 F
G08B25/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023063931
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2019065678の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023089979
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】金子 茂
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-102794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 9/00
G08B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話親機からの電話回線に複数の電話子機が並列接続された電話システムであって、
前記複数の電話子機の各々は、自己に専用の中継部を介して前記電話回線に接続され、
前記中継部は、
前記電話子機に対する前記電話回線の接続状態を切り替える通話接続切替部と、
前記通話接続切替部よりも前記電話回線側に配置され、前記電話回線に複数の前記中継部が接続されても通話品質を維持可能とする所定の交流インピーダンスが設定されたバイアス部と、
を備え
前記バイアス部は、所定の可聴周波数帯域における複数の前記中継部による合成交流インピーダンスが前記電話回線の交流インピーダンスの70%程度以上となるように前記所定の交流インピーダンスが設定されたことを特徴とする電話システム。
【請求項2】
請求項1記載の電話システムであって
前記通話接続切替部は、制御回線による前記電話親機からの制御により前記電話回線の接続状態を切り替えることを特徴とする電話システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電話システムであって
前記電話回線は、電話線と電話コモン線を備え、
前記バイアス部は、
電源線と前記電話線との間、及び前記電話線と前記電話コモン線との間に抵抗部とインダクタンス部を備え、
前記所定の可聴周波数帯域の少なくとも一部において、前記抵抗部より前記インダクタンス部の方が前記交流インピーダンスへの寄与率が高くなるように設定されたことを特徴とする電話システム。
【請求項4】
請求項記載の電話システムであって
前記インダクタンス部は、シミュレーテッドインダクタであることを特徴とする電話システム。
【請求項5】
電話親機からの電話回線に複数の電話子機が並列接続された電話システムであって、
前記電話回線は、電話線及び電話コモン線により構成され、
前記複数の電話子機の各々は、自己に専用の中継部を介して前記電話回線に接続され、
前記中継部は、
前記電話子機に対する前記電話回線の接続状態を切り替える通話接続切替部と、
前記通話接続切替部よりも前記電話回線側に配置されたバイアス部と、
を備え、
前記バイアス部は、電源線と前記電話線との間、及び前記電話線と前記電話コモン線との間にシミュレーテッドインダクタ回路部を備え、
前記シミュレーテッドインダクタ回路部は、抵抗成分とインダクタンス成分との直列回路と電気的に等価であり、所定の可聴周波数帯域の少なくとも一部において、前記抵抗成分より前記インダクタンス成分の方が前記バイアス部における交流インピーダンスへの寄与率が高いことを特徴とする電話システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒区域に設置された電話子機を火災時等に取り上げることで電話親機と通話接続する電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備は受信機から引き出された信号回線に接続された火災感知器により火災を監視し、火災発生時に火災警報を出力するようにしている。
【0003】
また、非常用放送設備が設置される防火対象物となる施設については、非常電話設備の設置が義務付けられており、それ以外の施設にあっても、必要に応じて非常電話設備が設けられる。
【0004】
非常電話設備は、電話子機を警戒区域に設置しており、電話子機を取り上げることで自動的に非常電話装置により電話親機を呼出し、電話親機を取り上げることで通話接続して必要な通話ができる。また、非常電話装置は、電話子機の発信から所定時間以内に非常用放送設備に移報信号を送信して必要な階に非常放送を行う。
【0005】
図6(A)は火災報知設備で使用されている従来のアナログ2線式の非常電話システムであり、図6(B)に電話回線のアナログ音声信号の状態を示す。
【0006】
図6(A)に示すように、非常電話システムの電話親機12と電話子機16は2本の電話線14aと電話コモン線14bからなる電話回線で接続されている。電話線14a側にはコンデンサC10が挿入されて電話親機12と電話子機16を直流的に分離し、コンデンサC10の両側の電話線14aにバイアス抵抗R10,R11を介して例えば直流電圧24Vを印加している。
【0007】
ここで、電話親機12及び電話子機16の何れか一方から他方を見た電話回線の交流インピーダンスZは例えば330Ωであり、電話親機12と電話子機16が通話接続されたとき、図6(B)に示すように、約6Vのバイアス電圧を中心に信号振幅が触れるアナログ音声信号が双方向に伝送され、十分な音量による通話ができる。
【0008】
しかし、このアナログ2線式の非常電話システムでは、子機が複数になったときにその数だけ電話回線が増えることとなり、配線作業に大きな手間が生じていた。
【0009】
そこで、電話回線の一部を共通化する回線接続切替部を設けた非常電話システムが考案されている。電話親機と電話子機は図示しない制御回線により接続されており、回線接続切替部は制御回線経由で電話親機からの信号を受信し、電話回線の接続状態を切り替えている。
【0010】
図7は電話子機側に回線接続切替部を設けた非常電話システムであり、図7(B)に電話回線のアナログ音声信号の状態を示す。
【0011】
図7(A)に示すように、電話親機12に電話線14aと電話コモン線14bからなる電話回線を介して接続された電話子機16側には、回線接続切替部100が設けられる。回線接続切替部100のスイッチ部102には半導体素子を用いたアナログスイッチが設けられるが、一般的に、電源電圧10V以上で動作可能なアナログスイッチは、スイッチ部のオン抵抗が100~200Ω程度あるので使用に適さないが、電源電圧5Vのアナログスイッチになるとオン抵抗が5Ω以下と小さく、使用に適していることからスイッチ部102に設け、スイッチ部102に電源電圧5Vを供給して動作させている。
【0012】
これにより回線接続切替部100のスイッチを通過する信号振幅は電源電圧0~5Vの範囲に収めなければならないので、回線接続切替部102の両側をコンデンサC10,C11で直流カットした上で、バイアス部を構成するバイアス抵抗R12,R13,R14により適切な直流バイアス電圧を印加する。例えばバイアス抵抗R12,R13,R14をそれぞれ47kΩとすることで、約1.7Vの直流バイアス電圧としている。これにより図7(B)に示すように、約1.7Vのバイアス電圧を中心に信号振幅が振れるアナログ音声信号が双方向に伝送できる。
【0013】
バイアス抵抗R12,R13,R14は、スイッチ部102のスイッチオープン時に、電話回線となる長距離配線部がスタブ(配線分岐点から終端処理されていない配線部)になることを避けるため、終端抵抗としての機能も持つ。このためバイアス抵抗R12,R13,R14の配置位置は、回線接続切替部102の左側となる長距離配線側が望ましい。また、コンデンサのリーク電流等による信号の電圧変動を防止するため、バイアス電流を確保することが必要であるため、抵抗値も100kΩ以下とすることが望ましい。
【0014】
また、バイアス抵抗R13,R14を47kΩとすると、
47kΩ//47kΩ≒23.5kΩ
の交流インピーダンスを持つので、電話回線単体の交流インピーダンスを330Ωとすると、電話親機12と電話子機16の何れか一方から他方を見たときの交流インピーダンスは
330Ω//23.5kΩ≒325Ω
となり、ほぼ影響はないといえる。
【0015】
図8は電話親機に対し回線接続切替部を介して複数の電話子機を接続した中継器式非常
電話システムを示す。
【0016】
図8に示すように、非常電話装置10には電話親機12が設けられ、電話親機12から引き出された電話回線14には中継器104を介して複数の電話子機16が並列的に接続されている。
【0017】
中継器式非常電話システムは、中継器104の各々に、図7(A)の回線接続切替部100に示したと同じスイッチ部102とバイアス抵抗R11,R12,R13を備えたバイアス部を設けることで、電話親機12と電話子機16の間の通話接続を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2004-064709号公報
【文献】特開2017-004451号公報
【文献】特開2017-068523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、このような図8に示した中継器式非常電話システムにあっては、スイッチ部及びバイアス部は、中継器104の数だけ並列に接続されることになる。ここで、図7で示したように、バイアス部1つ当りの交流インピーダンスは23.5kΩであるから、例えば中継器104が255台接続されたとすると、その合成交流インピーダンスは
23.5kΩ/255=92Ω
となる。
【0020】
この条件では、電話親機12と電話子機16の何れか一方から他方を見たときの電話回線の交流インピーダンスは、
330Ω//92Ω≒72Ω
まで低下する。この結果として、音声信号レベルは約1/5まで低下し、通話品質が大きく劣化する問題がある。
【0021】
本発明は、電話回線に複数の電話子機を接続しても音声信号レベルが低下しないように交流インピーダンスを維持して通話品質を維持可能とする電話システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(電話システム)
本発明は、電話親機からの電話回線に複数の電話子機が並列接続された電話システムであって、
複数の電話子機の各々は、自己に専用の中継部を介して電話回線に接続され、
中継部は、
電話子機に対する電話回線の接続状態を切り替える通話接続切替部と、
通話接続切替部よりも電話回線側に配置され、電話回線に複数の中継部が接続されても通話品質を維持可能とする所定の交流インピーダンスが設定されたバイアス部と、
を備えたことを特徴とする。
【0023】
通話接続切替部は、制御回線による電話親機からの制御により電話回線の接続状態を切り替える。
【0024】
バイアス部は、所定の可聴周波数帯域における複数の中継部による合成交流インピーダンスが電話回線の交流インピーダンスの70%程度以上となるように所定の交流インピーダンスが設定されている。
【0025】
(バイアス部)
電話回線は、電話線と電話コモン線を備え、
バイアス部は、
電源線と電話線との間、及び電話線と電話コモン線との間に抵抗部とインダクタンス部を備え、
所定の可聴周波数帯域の少なくとも一部において、抵抗部よりインダクタンス部の方が交流インピーダンスへの寄与率が高くなるように設定される。
【0026】
(半導体インダクタ)
インダクタンス部は、シミュレーテッドインダクタである。
【発明の効果】
【0027】
(基本的な効果)
本発明は、電話親機と複数の電話子機が電話回線を介して接続される電話システムにおいて、電話子機は、電話回線の接続状態を切り替える通話接続切替部と、通話接続切替部よりも電話回線側に配置されたバイアス部と、を備え、電話子機が電話回線に複数台接続されたときに、所定の可聴周波数帯域における複数の電話子機による合成交流インピーダンスが電話回線の交流インピーダンスに影響を与えない程度となるようにバイアス部による交流インピーダンスが設定されているようにしたため、電話親機に対する複数の電話子機の並列接続により、抵抗のみのバイアス部の場合は、電話子機の並列接続によりバイアス部の合成交流インピーダンスが電話子機の台数で割った値に下がり、電話親機と電話子機の何れか一方から他方を見たときの交流インピーダンスが低下してしまうが、バイアス部が所定の可聴周波数帯域における複数の電話子機による合成交流インピーダンスが電話回線の交流インピーダンスに影響を与えない程度に高くなるように設定されていることで、電話親機と電話子機の何れか一方から他方を見たときの交流インピーダンスを高い値に維持することができ、音声信号レベルの低下が抑制され、通話品質を保つことができる。
【0028】
(バイアス部の効果)
また、バイアス部は電話回線間に抵抗部とインダクタンス部を備え、バイアス部における交流インピーダンスは、所定の可聴周波数帯域の少なくとも一部において抵抗部よりインダクタンス部がバイアス部における交流インピーダンスへの寄与率が高くなるようにしたため、可聴周波数帯域となる交流帯域でインダクタ部によりバイアス部のインピーダンスが上昇することで、電話子機の接続台数が増加しても複数の電話子機による合成交流インピーダンスが高くなり、電話回線の交流インピーダンスが低下しないように維持することができる。
【0029】
(インダクタンス部の効果)
また、インダクタンス部は、シミュレーテッドインダクタを備えたため、例えば、電話親機に対し例えば255台の電話子機を並列接続したときに電話回線の交流インピーダンスの低下を抑えるに必要なインダクタンス値は300H(ヘンリー)以上であり、このような大きな値をもつインダクタンスコイルはかなり大型化し、中継器内部に組み込むことが事実上不可能といえるが、半導体インダクタとして知られたシミュレーテッドインダクタは、オペアンプ、抵抗、コンデンサで構成されることから、小型であり、中継器内部に容易に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による非常電話システムの概略を示した説明図
図2】中継器バイアス部の基本的概念を示した説明図
図3】シミュレーテッドインダクタとその等価回路を示した説明図
図4】中継器の回路構成の具体的な実施形態を示した回路部
図5図4の等価回路を示した回路図
図6】従来のアナログ2線式非常電話システムを示した説明図
図7】電話回線切替部を設けた従来の非常電話システムを示した説明図
図8】電話親機に中継器を介して複数の電話子機を接続した従来の中継器式非常電話システムを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施形態の基本的概念]
図1は本発明による非常電話システムの概略を示した説明図である。本実施形態による非常電話システムの基本的概念は、非常電話装置10の電話親機12と複数の電話子機16がアナログ2線式の電話回線14を介して並列に接続される非常電話システムに於いて、電話子機16は中継器18を介して電話回線14に並列に接続され、中継器18には、電話回線14の接続状態を切り替える通話接続切替部22と、通話接続切替部22よりも電話回線14側に配置されたバイアス部20とを備え、電話子機16が電話回線14に複数台接続されたときに、所定の可聴周波数帯域(300~3400Hz)における複数の電話子機16による合成交流インピーダンスが電話回線14の交流インピーダンスに影響を与えない程度に高くなるように電話回線14のバイアス部20による交流インピーダンスが設定されているようにしたものである。
【0032】
このため、電話親機12に対する複数の電話子機16の並列接続により、抵抗のみのバイアス部の場合は、電話子機16の並列接続によりバイアス部の合成交流インピーダンスが電話子機16の台数で割った値に下がり、電話親機12と電話子機16の何れか一方から他方を見たときの交流インピーダンスが低下してしまうが、バイアス部20により所定の可聴周波数帯域における複数の電話子機16による合成交流インピーダンスが電話回線の交流インピーダンスに影響を与えない程度に高くなるように設定されていることで、電話親機12と電話子機16の何れか一方から他方を見たときの交流インピーダンスを高い値に維持することができ、音声信号レベルの低下が抑制され、通話品質を保つことができる。以下詳細に説明する。
【0033】
[非常電話システムの概要]
図1に示すように、本実施形態の非常電話システムは、火災報知設備の受信機が設置された防災センターや管理人室などに、電話親機12を設けた非常電話装置10が設置されており、非常電話装置10を介して電話親機12から引き出されたアナログ2線式の電話回線14に対し、警戒区域に設置された複数の電話子機16が中継器18を介して並列に接続されている。なお、電話子機16の最大数は例えば255台であり、また、電話親機12と電話子機16は、親機送受話器と子機送受話器を意味する。
【0034】
電話子機16の中継器18にはバイアス部20と通話接続切替部22が設けられている。通話接続切替え部22はアナログスイッチを備え、図示しない制御回線による電話親機からの制御により電話子機16の電話回線14に対する接続状態を切り替える。
【0035】
バイアス部20は、通話接続切替部22よりも電話回線14側に配置されており、電話子機16が電話回線14に複数台接続されたときに、可聴周波数帯域300~3400Hzにおける複数の電話子機16による合成交流インピーダンスが電話回線14の交流インピーダンス330Ωに影響を与えない程度に高くなるように、電話回線14のバイアス部20による交流インピーダンスが設定されている。
【0036】
このため、バイアス部20における交流インピーダンスは、可聴周波数帯域300~3400Hzの少なくとも一部において抵抗部よりインダクタンス部がバイアス部における交流インピーダンスへの寄与率が高くなるようにしている。更に、インダクタンス部は、小型化を図るため、半導体インダクタとして知られたシミュレーテッドインダクタで構成される。
【0037】
[中継器バイアス部の基本的概念]
図2は中継器バイアス部の基本的概念を示した説明図である。図8に示した従来の中継器方式の非常電話システムでは、電話親機12からの電話回線14に複数の電話子機16を並列接続した場合、抵抗のみのバイアス回路では、電話親機12と電話子機16の何れか一方から見た合成交流インピーダンスが電話回線14単体の交流インピーダンス330Ωに対し大きく減少して音声レベルが低下する問題がある。
【0038】
この問題を解決するため本実施形態にあっては、図2に示すように、バイアス部20にインダクタL1.L2を挿入することで、電話親機12と電話子機16の何れか一方から見た合成交流インピーダンスが電話回線14単体の交流インピーダンス330Ωに対する低下を抑制するように構成する。
【0039】
図2のバイアス部20は、5Vの電源ラインから抵抗R6を介して、電話線14aとの間にインダクタL1と抵抗R01の直列回路21-1を接続し、また、抵抗R6とインダクタL1の接続点をコンデンサC4を介してGND(電話コモン線14b)に接続し、更に、電話線14aと電話コモン線14b(GND)の間に、インダクタL2と抵抗R02の直列回路21-2を接続している。
【0040】
ここで、直流領域ではインダクタL1,L2は無視できるので、電話回線14aと電話コモン線14bに対するバイアス電圧は、抵抗R6,R1,R2をそれぞれ47kΩとすると、抵抗分割により約1.7Vとなる。
【0041】
電話回線14で伝送する音声信号の可聴周波数帯域300~3400Hzの交流帯域では、インダクタL1,L2の交流インピーダンス(jωL)は上昇するため、電話親機12と電話子機16の何れか一方から見た合成交流インピーダンスは、電話回線14単体の交流インピーダンス330Ωに対する低下が抑制され、信号レベルを維持できる。
【0042】
可聴周波数帯域300~3400Hzにおいて、電話子機16を例えば255台並列接続したときの合成交流インピーダンスが、電話回線14の交流インピーダンス330Ωに対し影響を与えない程度(電話回線14単体の交流インピーダンス330Ωの70%程度以上)となるように1kΩ以上とする必要がある。合成交流インピーダンスを1kΩ以上とするために必要な図2のバイアス部20の交流インピーダンスは255kΩ以上であり、このために必要なインダクタ値は300H(ヘンリー)以上である。しかし、このような大きなインダクタ値を実現するインダクタンスコイルはかなり大型となり、電話子機16側に設けられた中継器18に収納することは事実上不可能といえる。
【0043】
そこで本実施形態にあっては、300H以上のインダクタ値を持つインダクタL1,L2を実現するため、点線で示すインダクタL1と抵抗R01の直列回路及びインダクタL2と抵抗R02の直列回路を、それぞれ半導体インダクタとして知られたシミュレーテッドインダクタ30-1,30-2により実現する。
【0044】
[シミュレーテッドインダクタ]
図3はシミュレーテッドインダクタとその等価回路を示した説明図である。図3(A)に示すように、シミュレーテッドインダクタ30-1は、抵抗R1,R2、コンデンサC1、及びオペアンプ32-1で構成され、図3(B)の等価回路に示すように、インダクタL1は、
L1≒C1×R1×R2
となり、抵抗R01は、
R01=R1+R2
となる。
【0045】
例えば、R1=27kΩ、R2=22kΩ、C1=0.47μFとした場合、等価的にL1=280H
R01=49kΩ
の直列回路が実現される。この点は、図のシミュレーテッドインダクタ30-2についても同様となる。
【0046】
[中継器バイアス部の実施形態]
図4は中継器の回路構成の具体的な実施形態を示した回路部、図5図4の等価回路を示した回路図である。
【0047】
図4に示すように、中継器18はバイアス部20と通話接続切替部22で構成される。通話接続切替部22は5V電源により動作するアナログスイッチを使用しており、オン抵抗は5Ω以下と適切な値にある。バイアス部20と通話接続切替部22が配置された電話線14aの両側にはコンデンサC2,C7が挿入接続され、電話親機12及び電話子機16側に印加される24V電源による直流バイアス電圧から切り離している。
【0048】
バイアス部20は、5V電源ラインと電話線14aの間にシミュレーテッドインダクタ30-1が配置される。シミュレーテッドインダクタ30-1は抵抗R1,R2,R7、コンデンサC1及びオペアンプ32-1で構成される。また、シミュレーテッドインダクタ30-1の入力IN(抵抗R1の一端)は抵抗R5を介して5V電源ラインに接続され、またコンデンサC4を介してGND(電話コモン線14b)に接続され、更に、コンデンサC5を介して電話線14aに接続される。
【0049】
電話線14aと電話コモン線14b(GND)の間にシミュレーテッドインダクタ30-2が配置される。シミュレーテッドインダクタ30-2は抵抗R4,R5,R8、コンデンサC3及びオペアンプ32-2で構成される。また、シミュレーテッドインダクタ30-2と並列にコンデンサC6が接続される。
【0050】
ここで、シミュレーテッドインダクタ30-1は、図5の等価回路に示すように、インダクタL1と抵抗R01の直列回路となり、インダクタL1の値は図3に示したように
L1≒C1×R1×R2
となってインダクタ部24-1を構成し、また、抵抗R01は、
R01=R1+R2
となって抵抗部26-1を構成する。
【0051】
また、シミュレーテッドインダクタ30-2は、図5の等価回路に示すように、インダクタL2と抵抗R02の直列回路となり、インダクタL2の値は
L2≒C2×R4×R5
となってインダクタ部24-2を構成し、また、抵抗R02は、
R02=R4+R5
となって抵抗部26-2を構成する。
【0052】
[本発明の変形例]
上記の実施形態に示したバイアス部の回路構成は一例であり、所定値を超えるインダクタ値を実現するシミュレーテッドインダクタ30-1,30-2を備える点以外の回路構成は必要に応じて適宜のバイアス回路とすることを妨げない。
【0053】
また、上記の実施形態は、非常電話システムを例にとるものであったが、電話子機側に通話接続切替部を備えたアナログ2線式の電話システムであれば、適宜の電話システムに適用することができる。
【0054】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0055】
10:非常電話装置
12:電話親機
14:電話回線
14a:電話線
14b:電話コモン線
16:電話子機
18:中継器
20:バイアス部
21-1,21-2:直回路
22:通話接続切替部
24-1,24-2:インダクタ部
26-1,26-2:抵抗部
30-1,30-2:シミュレーテッドインダクタ
32-1,32-2:オペアンプ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8