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特許7544910接着照査器、判定装置および接着照査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】接着照査器、判定装置および接着照査装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/10 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B61L5/10 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023089305
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 育雄
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-129483(JP,A)
【文献】特開2001-260882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トングレールに接触する押し棒と、
前記押し棒に一端が接触して前記押し棒の直線変位を他端の直線変位として伝える伝動部であって、前記一端の突出量を調整可能な伝動部と、
前記他端に接触するプッシュロッドを有し、前記プッシュロッドの変位を計測することで前記他端の直線変位を計測するセンサと、
判定値を記憶し、前記センサの計測値を前記判定値と比較して、基本レールに対する前記トングレールの接着/非接着を判定する照査部と、
を備え、
前記押し棒と前記伝動部と前記センサとが直線状に連なって配置され、
前記照査部は、前記基本レールと前記トングレールとの間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態における前記センサの計測値に基づいて、前記判定値を更新記憶させる判定値記憶制御部、を有する、
接着照査器。
【請求項2】
前記判定値記憶制御部は、前記センサの計測値が前記設定実行状態における所定の接着方向限界条件を満たしたときの値に基づいて前記判定値を更新記憶させる、
請求項1に記載の接着照査器。
【請求項3】
前記センサは、アブソリュート方式の直線型の第1エンコーダおよび第2エンコーダを有し、
前記第1エンコーダは、前記他端に接触する第1プッシュロッドを有して前記第1プッシュロッドの変位を計測し、
前記第2エンコーダは、前記他端に接触する第2プッシュロッドを有して前記第2プッシュロッドの変位を計測し、
前記第1エンコーダと前記第2エンコーダとは、計測方向が逆向きに設置され、
前記照査部は、前記第1エンコーダ用の前記判定値である第1判定値と前記第2エンコーダ用の前記判定値である第2判定値とを記憶し、前記第1エンコーダの検出値と前記第1判定値とに基づく第1判定と、前記第2エンコーダの検出値と前記第2判定値とに基づく第2判定と、に基づいて前記基本レールに対する前記トングレールの接着/非接着を判定する
請求項1に記載の接着照査器。
【請求項4】
前記第2エンコーダは、前記第1エンコーダとは計測方向が逆向きの逆スケールに設置され、
前記照査部は、前記第1エンコーダの検出値である第1計測値と前記第2エンコーダの検出値を正スケール換算した第2計測値が所定の同値条件を満たすか否かに基づいて前記センサの計測誤りの発生を判定する、
請求項3に記載の接着照査器。
【請求項5】
前記照査部は、前記第1エンコーダの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしたときの値と、前記第2エンコーダの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしたときの値と、に基づいて接着/非接着を判定する、
請求項3に記載の接着照査器。
【請求項6】
一対のトングレールの一方に対して設置された請求項1から5の何れか一項に記載の接着照査器と、前記一対のトングレールの他方に対して設置された請求項1から5の何れか一項に記載の接着照査器と、のそれぞれから接着/非接着の判定結果を入力する入力部と、
前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着である場合には、前記一方のトングレールに係る通過を可能と判定し、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着で、且つ、 前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着である場合には、前記他方のトングレールに係る通過を可能と判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を外部出力する出力部と、
前記設定実行状態における前記接着照査器の前記判定値記憶制御部に所定の更新記憶指示信号を送信する送信部と、
を備える判定装置。
【請求項7】
一対のトングレールの一方に対して設置された請求項1から5の何れか一項に記載の接着照査器と、
前記一対のトングレールの他方に対して設置された請求項1から5の何れか一項に記載の接着照査器と、
判定装置と、
を具備し、
前記判定装置は、
前記接着照査器それぞれから接着/非接着の判定結果を入力する入力部と、
前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非 接着である場合には、前記一方のトングレールに係る通過を可能と判定し、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着で、且 つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着である場合には、前記他方のトングレールに係る通過を可能と判定する判定部と、
前記判定部の判定結果を外部出力する出力部と、
前記設定実行状態における前記接着照査器の前記判定値記憶制御部に所定の更新記憶指示信号を送信する送信部と、
を備える、
接着照査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の分岐器における基本レールとトングレールとの接着を照査する接着照査器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接着照査器は、特許文献1の図11に示すように機械式リレーが内蔵され、東海道新幹線開業時に開発されて以来、現在もその構造はほとんど変わっていない。従来の接着照査器は、特許文献1の図11に示すように基本レール底部に取り付け金具で取り付けられており、既存レールの側面に開けられた貫通孔から押し棒を出して可動レール側面に当てている。可動レールか分岐器が転換されると押し棒が動かされる。可動レールが基本レールに接着すると、押し棒の動きがリレーを動かして接点を動作させて、接着したことを連動装置に知らせるようになっている。そして、接着状態が悪いときや異物介在があると、リレーは動作不十分となり、それを連動装置に知らせることができる。
【0003】
分岐器の接着状態は変化するので定期的な調整は欠かせない。しかも、保守できるのは新幹線が運行を停止している時間である夜間の短い時間で行わなければならない。
接着調整では、基本レールと可動レール間に鉄片を介在させ、押し棒の調整ボルトの長さを変えながらリレーが正常に判定できるように調整しなければならないが、調整ボルトの位置が暗くてスパナが回しにくい。調整が微妙で正しく判定させるまでに何度も介在と調整を繰り返す。しかも、従来の接着照査器は、1分岐器に4台ついているので調整に時間がかかっていた。更に、分岐器の砕石の交換や突き固め時には接着照査器を取り外し、終わった後に取り付けなおして調整するので調整時間が短くなる場合もある。接着照査器に係るこれらの課題を解決するために考えられたのが特許文献2である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-129483号公報
【文献】特開2001-260882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新幹線列車が通過する分岐器全てには定位側・反位側2台ずつ、計4台の接着照査器が設備されている。接着照査器は、分岐器の基本レールの所定位置に取付金具を用いて接着照査器の筐体が取り付けられている。押し棒は、基本レール断面中央の貫通孔を通じて突出し、トングレール側面に接触できるようになっている。
【0006】
従来の接着照査器は、4mm以上で反位接点オン、4mmから2mmの間は接点がブラ、2mmで定位接点がオンするようになっているが、押し棒の動きを、トグル機構を介して接点が動作し、その動作点は、押し棒の位置の調整具合で接点動作が変わる。この押し棒位置は調整ボルトのネジで位置を変更できるが、狭い場所にあり、夜間は見えづらく、スパナが廻しにくいうえ、転換ごとに多少変化するとともにトグル機構の摩擦抵抗変化も加わり、安定するまで試行錯誤となって設定に時間がかかっていた。更に、1分岐器に4台の接着照査器がついているので間合いが限定される接着照査器の設定には保守作業員にかかる負担が大きかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、調整作業がより簡易な接着照査器を実現するための技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の形態は、トングレールに接触する押し棒と、前記押し棒の直線変位を計測するセンサと、判定値を記憶し、前記センサの計測値を前記判定値と比較して、基本レールに対する前記トングレールの接着/非接着を判定する照査部と、を備え、前記照査部は、前記基本レールと前記トングレールとの間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態における前記センサの計測値に基づいて、前記判定値を更新記憶させる判定値記憶制御部、を有する、接着照査器である。
【0009】
第2の形態は、上記の接着照査器において、前記判定値記憶制御部は、前記センサの計測値が前記設定実行状態における所定の接着方向限界条件を満たしたときの値に基づいて前記判定値を更新記憶させる、接着照査器である。
【0010】
第3の形態は、上記の接着照査器において、前記センサは、アブソリュート方式の直線型の第1エンコーダおよび第2エンコーダを有し、前記第1エンコーダと前記第2エンコーダとは、計測方向が逆向きに設置され、前記照査部は、前記第1エンコーダの検出値と前記第2エンコーダの検出値とに基づいて前記センサの計測値を決定する、接着照査器である。
【0011】
第4の形態は、上記の接着照査器において、前記照査部は、前記第1エンコーダの検出値と前記第2エンコーダの検出値とに基づいて前記センサの計測誤りの発生を判定する、接着照査器である。
【0012】
第5の形態は、上記の接着照査器において、前記照査部は、前記第1エンコーダの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしたときの値と、前記第2エンコーダの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしたときの値と、に基づいて接着/非接着を判定する、接着照査器である。
【0013】
第6の形態は、一対のトングレールの一方に対して設置された前記第1から5の何れかの形態の接着照査器と、前記一対のトングレールの他方に対して設置された前記第1から5の何れかの形態の接着照査器と、のそれぞれから接着/非接着の判定結果を入力する入力部と、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着である場合には、前記一方のトングレールに係る通過を可能と判定し、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着である場合には、前記他方のトングレールに係る通過を可能と判定する判定部と、前記判定部の判定結果を外部出力する出力部と、前記設定実行状態における前記接着照査器の前記判定値記憶制御部に所定の更新記憶指示信号を送信する送信部と、を備える判定装置である。
【0014】
第7の形態は、一対のトングレールの一方に対して設置された前記第1から5の何れかの形態の接着照査器と、前記一対のトングレールの他方に対して設置された前記第1から5の何れかの形態の接着照査器と、判定装置と、を具備し、前記判定装置は、前記接着照査器それぞれから接着/非接着の判定結果を入力する入力部と、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着である場合には、前記一方のトングレールに係る通過を可能と判定し、前記一方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が非接着で、且つ、前記他方のトングレールに対して設置された接着照査器の判定結果が接着である場合には、前記他方のトングレールに係る通過を可能と判定する判定部と、前記判定部の判定結果を外部出力する出力部と、前記設定実行状態における前記接着照査器の前記判定値記憶制御部に所定の更新記憶指示信号を送信する送信部と、を備える、接着照査装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接着照査器は、基本レールとトングレールとの間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態におけるセンサの計測値を判定値として記憶する。そして、平常時においては、記憶している判定値とセンサの計測値とを比較して、基本レールに対するトングレールの接着/非接着を判定する。よって、本発明の接着照査器は、従来の接着照査器のように調整ボルトを調整するといった調整作業をしなくてもよい。従来よりも調整作業がより簡易な接着照査器が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】接着照査装置の構成例を説明するための概要図。
図2】接着照査器の構成例を示す上面図。
図3】接着照査器の設置状態を示す縦断面図。
図4】照査部の構成、照査部にて実現される機能部、照査部が記憶するデータ、それぞれの例を説明するための図。
図5】判定装置の構成例を示す図。
図6】制御部の構成例、制御部の機能、制御部が記憶するデータ、それぞれの例を説明するための図。
図7】判定値設定処理の流れを説明するためのフローチャート。
図8】第1計測値、第2計測値の読み方について説明するための図。
図9】接着照査処理の流れを説明するためのフローチャート。
図10】通過可否判定処理の流れを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0018】
図1は、本発明の実施形態である接着照査装置10の構成例を説明するための概要図である。接着照査装置10は、複数の接着照査器100(100A,100B,100C,100D)と、判定装置200と、設定器300と、を備える。
【0019】
なお、図1では、各装置の配置および接続関係を分かり易く示すために、各装置を大きく且つ非統一の縮尺で示している。また、設定器300は、保守点検時にのみ現場に持ち込む機器である。図1では、設定器300を接着照査装置10の構成要素であることを説明するために便宜上1つの図面に記載しており、分岐器付近に常時設置されていることを表すものではない。
【0020】
図1に示す1つの分岐器に配置された接着照査器100は、第1定位側接着照査器100Aと、第2定位側接着照査器100Bと、第1反位側接着照査器100Cと、第2反位側接着照査器100Dと、の合計4台である。
【0021】
第1定位側接着照査器100Aおよび第2定位側接着照査器100Bは、一対のトングレール4のうち、定位において基本レール5に接着する定位側レール4Tに沿って設置されている。第1反位側接着照査器100Cおよび第2反位側接着照査器100Dは、一対のトングレール4のうち、反位において基本レール5に接着する反位側レール4Hに沿って設置されている。
【0022】
図2は、接着照査器100の構成例を示す上面図であって、筐体の上蓋を取り外した状態の図である。図3は、接着照査器100の設置状態を示す縦断面図である。図2および図3では、接着照査器100内の配置構成を分かり易くするために配線の一部等を省略して示している。
【0023】
接着照査器100は、押し棒110と、伝動部120と、第1エンコーダ130Aと、第2エンコーダ130Bと、照査部140と、判定装置接続端子152と、を備える。
【0024】
押し棒110と、伝動部120と、第1エンコーダ130Aと、第2エンコーダ130Bとは、ともに長手方向が直線状となるように連なって配置されている。図2および図3の例では、X軸方向に沿って連なっている。但し、押し棒110は、接着照査器100の筐体105の基本レール側の外側面に突出しており、伝動部120・第1エンコーダ130A・第2エンコーダ130Bは、接着照査器100の筐体105の内部に設置されている。
【0025】
図3に示すように、筐体105は、固定金具107を介して基本レール5に固定されている。押し棒110は、その一端部(X軸プラス方向側の端部)が、基本レール5を貫通する挿通孔6を通じて、基本レール5の内側へ向けて突出する。そして、押し棒110は、トングレール4が基本レール5に接近して接着するまでの過程で、トングレール4の外向き側面(図3ではX軸マイナス方向の側面)によって当接して押される。
【0026】
押し棒110は、固定スリーブ112によって進退自在に支持され、固定スリーブ112に内蔵されているコイルスプリング114によって、トングレール4へ向けて付勢されている。
【0027】
伝動部120は、両端にロッド長手方向を向いた雌ネジ部を有する中央ロッド124と、中央ロッド124の一端(X軸プラス方向側の端部)に螺合する第1調整ボルト121と、中央ロッド124の他端に螺合する第2調整ボルト122と、を有する。
【0028】
中央ロッド124は、筐体105に固定されたロッド支持部126により、押し棒110の進退方向へ摺動自在に支持され、コイルスプリング128により押し棒110の突出方向(X軸プラス方向)へ付勢されている。
【0029】
第1調整ボルト121は、その一端(X軸プラス方向側の端部)が、固定スリーブ112の他端栓116に当接するように突出量が調整される。
【0030】
第2調整ボルト122は、他端(X軸マイナス方向側の端部)に、ボルト軸方向に対して直交する端面である直交面を有しており、当該直交面に第1エンコーダ130Aおよび第2エンコーダ130Bのプッシュロッド131の一端部が当接する。第2調整ボルト122は、押し棒110が押されていない状態において、第1エンコーダ130Aの第1計測値、および第2エンコーダ130Bの第2計測値が、所定の計測範囲内に収まるように物理的な位置関係を初期調整するために用いられる。
【0031】
第1エンコーダ130Aおよび第2エンコーダ130Bは、X軸方向の直線変位を計測するセンサであって、アブソリュート方式のリニアエンコーダ(直線型のエンコーダ)である。第1エンコーダ130Aおよび第2エンコーダ130Bは、基本的には同構造を有するが、計測スケールの方向が真逆を向いている点が異なる。
【0032】
例えば、図2に示すように、第1エンコーダ130Aおよび第2エンコーダ130Bは、プッシュロッド131がスリーブ132内に進退自在に支持されている。プッシュロッド131の一端部はスリーブ132から露出し、プッシュロッド131の他端部はスリーブ132内に収まっている。プッシュロッド131の他端部は、スリーブ132内に内蔵されたコイルスプリング(不図示)により一端部方向へ付勢されている。
【0033】
プッシュロッド131の他端部には、アブソリュート方式のリニアスケールパターンが設けられている。スリーブ132に固定されている読取器133が、このリニアスケールパターンを読みとり、プッシュロッド131の突出量の検出値に応じた信号を、信号線138で接続された照査部140へ出力する。
【0034】
図4は、照査部140の構成、照査部140にて実現される機能部、および、照査部140が記憶するデータ、に関するそれぞれの例を説明するための図である。
照査部140は、接着照査器100の動作を統合的に制御する制御部141である。
照査部140は、マイクロコントローラ142と、データの記憶部143となるICメモリ144と、マイクロコントローラ142と判定装置接続端子152との間の信号の入出力を制御するインターフェースIC146と、を有する。
【0035】
マイクロコントローラ142は、検出値取得制御部20と、計測値決定部21と、計測誤り判定部22と、計測履歴記憶制御部24と、接着判定部26と、判定値記憶制御部28と、判定結果出力制御部30と、計時部32と、の機能を有する。これらの各機能部は、予め記憶されたプログラムをマイクロコントローラ142が実行することにより実現される構成としてもよいし、電子回路等のハードウェアとして構成されるとしてもよい。
【0036】
検出値取得制御部20は、第1エンコーダ130Aの検出値と、第2エンコーダ130Bの検出値の取得に係る制御を行う。例えば、第1エンコーダ130Aから入力される信号に応じて検出値を決定し、第2エンコーダ130Bから入力される信号に応じて検出値を決定する。
【0037】
計測値決定部21は、第1エンコーダ130Aの検出値と、第2エンコーダ130Bの検出値とに基づいて、それぞれの計測値(最新第1計測値41、最新第2計測値42)を決定する。
【0038】
計測誤り判定部22は、第1エンコーダ130Aの検出値と、第2エンコーダ130Bの検出値とに基づいて、計測誤りの発生を判定する。具体的には、最新第1計測値41と最新第2計測値42とを比較して、両者が同値条件(その差が計測誤差および取付位置誤差の範囲内とみなせる所定の範囲内である場合)を満たす場合には計測誤りの発生「なし」と判定し、両者が同値条件を満たさない値である場合に計測誤りの発生「あり」と判定する。
【0039】
計測履歴記憶制御部24は、第1エンコーダ130Aの計測値の履歴データ(第1計測値履歴データ43)と、第2エンコーダ130Bの計測値の履歴データ(第2計測値履歴データ44)と、の記録を制御する。
【0040】
接着判定部26は、センサ(第1エンコーダ130A、第2エンコーダ130B)の計測値をそれぞれの判定値と比較して、基本レール5に対するトングレール4の接着/非接着を判定する。
【0041】
判定値記憶制御部28は、接着判定部26の接着判定結果を、接着判定結果履歴データ47として時系列に記憶する制御を行う。
具体的には、判定値記憶制御部28は、判定装置接続端子152に信号ケーブルを介して接続された判定装置200からの所定の更新記憶指示信号の入力を検出する。そして、基本レール5とトングレール4との間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態におけるセンサ(第1エンコーダ130A、第2エンコーダ130B)の計測値に基づいて、判定値(第1判定値45、第2判定値46)を更新記憶する制御を行う。具体的には、判定値記憶制御部28は、センサ(第1エンコーダ130A、第2エンコーダ130B)の計測値が設定実行状態における所定の接着方向限界条件を満たしたときの値に基づいて判定値を更新記憶させる。
【0042】
「接着方向限界条件」は、トングレール4の接着方向へ限界まで移動したとみなす条件である。例えば、転換動作の所要時間に対して十分短い周期(例えば、1/60秒周期、1秒周期、など)で取得された直近過去と最新の計測値が連続して同値又は略同値の場合に、接着方向限界条件が満たされたと判定される。或いは、直近過去と最新の計測値の差が「0」又は基準値以下になった場合に、接着方向限界条件が満たされた判定される。言い換えると、接着方向限界条件は、トングレール4が停止した状態にあるとみなす条件とも言える。
【0043】
判定結果出力制御部30は、接着判定部26の接着判定結果を、判定装置200へ出力する制御を行う。
【0044】
計時部32は、センサ(第1エンコーダ130A、第2エンコーダ130B)の計測周期等を計時する。例えば、マイクロコントローラ142のシステムクロックを用いて計時する。
【0045】
ICメモリ144は、最新第1計測値41と、最新第2計測値42と、第1計測値履歴データ43と、第2計測値履歴データ44と、第1判定値45と、第2判定値46と、接着判定結果履歴データ47と、タイマーカウンタ49と、を記憶する。勿論、これら以外のデータも適宜記憶してもよい。
【0046】
最新第1計測値41は、第1エンコーダ130Aの計測値の最新値である。最新第2計測値42は、第2エンコーダ130Bの計測値の最新値である。
【0047】
第1計測値履歴データ43は、所定周期で次々に得られる第1計測値のうち、現在から過去所定時間遡った分だけ更新して格納されるデータである。第2計測値履歴データ44は、所定周期で次々に得られる第2計測値のうち、現在から過去所定時間遡った分だけ更新して格納されるデータである。
【0048】
第1判定値45は、第1計測値と比較してトングレール4と基本レール5の間に異物が挟まっている状態を検知・判定するための基準値である。具体的には、保守点検の際に、トングレール4と基本レール5の間に所定の規定介在物(例えば、厚さ4mmの鉄片)を挟んだ所定の設定実行状態における第1エンコーダ130Aの最新第1計測値41で第1判定値45が更新される。
【0049】
第2判定値46は、第2計測値と比較してトングレール4と基本レール5の間に異物が挟まっている状態を検知・判定するための基準値である。具体的には、保守点検の際に、トングレール4と基本レール5の間に所定の規定介在物(例えば、厚さ4mmの鉄片)を挟んだ所定の設定実行状態における第2エンコーダ130Bの最新第2計測値42で第2判定値46が更新される。
【0050】
接着照査器100は、第1判定値45と第2判定値46とに基づいて接着/非接着の判定(接着照査)を行う。
【0051】
接着判定結果履歴データ47は、接着/非接着の接着照査の判定結果(接着判定結果)を時系列に格納する。
【0052】
タイマーカウンタ49は、第1計測値および第2計測値を取得する周期を計時するカウンタ値等である。
【0053】
図5は、判定装置200の構成例を示す図である。
判定装置200は、接着照査器100それぞれから接着/非接着の判定結果(接着判定結果)を入力する入力部201と、分岐器の通過可否判定の結果(通過可否判定結果)を外部出力するための出力部204と、制御部210と、設定器接続端子230と、を有する。
【0054】
入力部201は、第1入力端子202Aと、第2入力端子202Bと、第3入力端子202Cと、第4入力端子202Dと、を有する。第1入力端子202Aには、第1定位側接着照査器100Aからの信号ケーブルが接続される。第2入力端子202Bには、第2定位側接着照査器100Bからの信号ケーブルが接続される。第3入力端子202Cには、第1反位側接着照査器100Cからの信号ケーブルが接続される。第4入力端子202Dには、第2反位側接着照査器100Dからの信号ケーブルが接続される。
【0055】
出力部204は、例えば連動装置(不図示)への信号ケーブルを接続する外部出力端子205を有する。
【0056】
設定器接続端子230には、信号ケーブルを介して設定器300が接続される。
【0057】
図6は、制御部210の構成例、制御部210の機能、および、制御部210が記憶するデータ、に関するそれぞれの例を説明するための図である。
【0058】
制御部210は、マイクロコントローラ212と、ICメモリ214と、インターフェースIC216と、を有する。インターフェースIC216は、マイクロコントローラ212と、各端子(第1入力端子202Aから第4入力端子202Dおよび外部出力端子205、設定器接続端子230)の間の信号の入出力を制御する。
【0059】
マイクロコントローラ212は、接着判定結果入力制御部60と、通過可否判定部62と、通過判定記憶制御部64と、外部出力制御部66と、信号中継部68と、の機能を有する。これらの各機能部は、予め記憶されたプログラムをマイクロコントローラ212が実行することにより実現される構成としてもよいし、電子回路等のハードウェアとして構成されるとしてもよい。
【0060】
ICメモリ214は、第1定位側接着判定結果81と、第2定位側接着判定結果82と、第1反位側接着判定結果83と、第2反位側接着判定結果84と、を記憶する。また、定位側通過可能/反位側通過可能/通過不可能の何れかの通過可否判定結果85と、通過可否判定結果85を時系列に格納する通過可否判定履歴データ86と、を記憶する。
【0061】
接着判定結果入力制御部60は、入力部201を介して接続された接着照査器100のそれぞれから接着判定結果を取得する制御を行う。
【0062】
通過可否判定部62は、分岐器の通過の可否を判定する。具体的には、通過可否判定部62は、一方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「接着」で、且つ、他方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「非接着」である場合には、一方のトングレール4に係る通過を可能と判定する。また、通過可否判定部62は、一方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「非接着」で、且つ、他方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「接着」である場合には、他方のトングレール4に係る通過を可能と判定する。一方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「非接着」で、且つ、他方のトングレール4に対して設置された接着照査器100の判定結果が「非接着」である場合には、通過を不可能と判定する。
【0063】
通過判定記憶制御部64は、通過可否判定部62による通過可否判定の結果を、通過可否判定結果85として記憶させるとともに、通過可否判定履歴データ86として時系列に記憶させる。
【0064】
外部出力制御部66は、通過可否判定部62による通過可否判定の結果を、外部出力端子205を介して連動装置へ出力制御を行う。
【0065】
信号中継部68は、設定器300から入力された信号を、接着照査器100のそれぞれへ中継送信する。具体的には、設定器300から入力された更新記憶指示信号を中継送信する。すなわち、信号中継部68は、設定実行状態における接着照査器100の照査部140(具体的には判定値記憶制御部28;図4)に所定の更新記憶指示信号を送信する送信部69として機能する。
【0066】
図1に戻って、設定器300は、接着照査器100に第1判定値45および第2判定値46を記憶・更新させるための所定の更新記憶指示信号を発する装置である。
設定器300は、筐体301に判定装置200と繋ぐ信号ケーブルを接続するための端子302と、保守作業員が設定実行の操作を入力するための操作スイッチ304と、を備える。操作スイッチ304は、接着照査器100毎に用意される。設定器300は、専用設計された装置でもよいし、タブレット型コンピュータやノート型パソコンなどの携帯可能なコンピュータに、所定のアプリケーションソフトを実行させて設定器300として機能させるとしてもよい。
【0067】
保守作業員は、設定器300を信号ケーブルで判定装置200へ繋ぐ。そして、基本レール5とトングレール4との間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態にした後に、第1判定値45および第2判定値46の設定対象とする接着照査器100の操作スイッチ304を押してONにする。設定器300は、操作スイッチ304が押されると所定の更新記憶指示信号を判定装置200へ出力する。判定装置200は、更新記憶指示信号を操作スイッチ304がONになっている接着照査器100へそれぞれ中継送信する。
【0068】
接着照査器100は、判定装置200から更新記憶指示信号が入力されると、図7に示す判定値設定処理を実行する。
接着照査器100は、更新記憶指示信号が入力されると(ステップS10のYES)、計測を開始する(ステップS12)。計測を開始すると、接着照査器100は、転換動作の所要時間よりも十分短い周期(例えば、1/60秒周期、1秒周期など)で、第1エンコーダ130Aの検出値を最新第1計測値41とし、第2エンコーダ130Bの検出値を最新第2計測値42として一時記憶する。そして、最新第1計測値41を第1計測値履歴データ43に追加し、最新第2計測値42を第2計測値履歴データ44に追加する。
【0069】
但し、接着照査器100は、第1エンコーダ130Aと第2エンコーダ130Bのうち逆スケールが設定されているエンコーダについては、プッシュロッド131が押し込まれると検出値が大きくなる正スケールでの読み値に変換して計測値とする。
【0070】
例えば、図8の例では、第1エンコーダ130Aには、プッシュロッド131が押し込まれると検出値が大きくなる正スケールパターンが設定されている。図8の例では、第1エンコーダ130Aの計測範囲は例えば「0」から「100」とされ、第1エンコーダ130Aの検出値(図8の例では、下向き三角形の位置の値)は、プッシュロッド131が押し込まれるほどより大きな値となる。そして、第1エンコーダ130Aの検出値は、そのまま最新第1計測値41とされる。より具体的には、例えば第1エンコーダ130Aの検出値が「60」であれば、最新第1計測値41は「60」となる。
【0071】
一方、第2エンコーダ130Bには、プッシュロッド131が押し込まれると検出値が小さくなる逆スケールパターンが設定されている。つまり、計測方向が、第1エンコーダ130Aとは逆向きになっている。図8の例では、第2エンコーダ130Bの計測範囲は「100」から「0」であり、第2エンコーダ130Bの検出値(図8の例では、上向き三角形の位置の値)はプッシュロッド131が押し込まれるほどより小さい値となる。当該検出値は、正スケール換算して最新第2計測値42となる。より具体的には、例えば第2エンコーダ130Bの検出値が「40」であれば「60=(10040)」といった具合に正スケールでの読み値に換算して、最新第2計測値42を正スケールの値とする。
【0072】
図7に戻って、次に、接着照査器100は、第1計測値および第2計測値がともに接着方向限界条件を満たしているか判定する(ステップS14)。具体的には、直近過去と最新の第1計測値が同値(又は略同値)であり、且つ直近過去と最新の第2計測値が同値(又は略同値)である場合に、接着方向限界条件を満たしていると肯定判定する。
【0073】
接着照査器100は、接着方向限界条件が満たされている場合(ステップS14のYES)、接着照査器100は、最新第1計測値41を第1判定値45として記憶し、最新第2計測値42を第2判定値46として記憶する(ステップS16)。
【0074】
なお、接着照査器100は、1回の更新記憶指示信号の入力に対して、ステップS12からステップS16を複数回繰り返す構成としてもよい。
【0075】
保守作業員は、設定操作を行ったならば、判定装置200から設定器300を外して調整作業は終了となる。
【0076】
保守作業員は、従来のように1つの分岐器の保守点検に伴い複数台の接着照査器100に対して個別に調整ボルトを回転させるといった調整作業が不要となり、設定器300の操作スイッチ304を取り扱うだけで済むため、従来よりも遙かに簡単に保守点検を行うことができる。
【0077】
図9は、保守点検時以外において接着照査器100が実行する接着照査処理の流れを説明するためのフローチャートである。接着照査処理は、平常時の処理であり、常時実行状態にある。
【0078】
接着照査器100は、接着照査処理を始動するに当たっての事前処理として所定周期での計測を開始し(ステップS20)、以降はステップS22からS42の処理を繰り返し実行する。接着照査器100は、計測の都度、計測誤りの発生を判定する(ステップS22)。具体的には、最新第1計測値41と最新第2計測値42とが同値条件を満たすならば、計測誤りの発生「なし」と判定する。
【0079】
計測誤りの発生「なし」の場合(ステップS22のNO)、接着照査器100は、第1計測値履歴データ43および第2計測値履歴データ44を更新する(ステップS24)。
【0080】
次いで、接着照査器100は、トングレール4の停止判定をする(ステップS26)。「停止判定」は、最新第1計測値41と第1計測値履歴データ43に格納されている1周期前の過去の第1計測値とが同じ値であり、且つ最新第2計測値42と第2計測値履歴データ44に格納されている1周期前の過去の第2計測値とが同じ値である場合に「停止している」と肯定判定する。停止判定を言い換えると、第1エンコーダ130Aの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしているか、第2エンコーダ130Bの検出値が所定の接着方向限界条件を満たしているか、の判定である。
【0081】
停止判定が肯定の場合(ステップS26のYES)、接着照査器100は、最新第1計測値41と第1判定値45とを比較し、最新第2計測値42と第2判定値46とを比較する。
【0082】
最新第1計測値41が第1判定値45より大きく、且つ最新第2計測値42が第2判定値46より大きい場合には(ステップS28のYES)、接着照査器100は「接着」判定する(ステップS30)。もし、最新第1計測値41が第1判定値45以下、および/又は最新第2計測値42が第2判定値46以下の場合には(ステップS28のNO)、接着照査器100は「非接着」と判定する(ステップS32)。
【0083】
そして、接着照査器100は、ステップS30又はステップS32の接着判定結果を、接着判定結果履歴データ47に追加し(ステップS36)、接着判定結果を判定装置200へ出力する(ステップS38)。
【0084】
一方、第1計測値と第2計測値との差が所定範囲を超える場合(ステップS22のYES)、接着照査器100は計測誤りの発生「あり」と判定して(ステップS40)、所定の計測誤り信号を判定装置200へ出力する(ステップS42)。
【0085】
図10は、判定装置200が実行する通過可否判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0086】
判定装置200は、接着照査器100それぞれから接着判定結果を取得し、第1定位側接着判定結果81、第2定位側接着判定結果82、第1反位側接着判定結果83、第2反位側接着判定結果84、を記憶する(ステップS50)。
【0087】
もし、接着照査器100から計測誤り信号が入力された場合は(ステップS52のYES)、連動装置へ所定の異常報知信号を送信する(ステップS54)。
【0088】
もし、接着照査器100から計測誤り信号が入力されなければ(ステップS52のNO)、接着照査器100は接着/非接着の判定をする。すなわち、第1定位側接着照査器100Aと第2定位側接着照査器100Bの接着判定結果がともに「接着」であり(ステップS62のYES)、且つ第1反位側接着照査器100Cと第2反位側接着照査器100Dの接着判定結果がともに「非接着」であれば(ステップS64のYES)、判定装置200は通過可否判定結果85として「定位側通過可能」と判定する(ステップS66)。
【0089】
また、第1定位側接着照査器100Aと第2定位側接着照査器100Bの接着判定結果がともに「非接着」であり(ステップS70のYES)、且つ第1反位側接着照査器100Cと第2反位側接着照査器100Dの接着判定結果がともに「接着」であれば(ステップS72のYES)、判定装置200は通過可否判定結果85として「反位側通過可能」と判定する(ステップS74)。
【0090】
そして、判定装置200は、判定結果を通過可否判定履歴データ86に追加記憶して(ステップS80)、通過可否判定結果85を連動装置へ出力する(ステップS82)。
【0091】
このように、接着照査装置10によれば、保守作業員は接着照査器100の調整作業として行う作業は、設定器300を判定装置200に信号ケーブルを介して繋ぎ、基本レール5とトングレール4との間に規定介在物を挟んで操作スイッチ304を押すだけである。
【0092】
接着照査器100は、操作スイッチ304の操作に応じて、自動的に、第1エンコーダ130Aおよび第2エンコーダ130Bのそれぞれの計測値に基づいて第1判定値45および第2判定値46を記憶する。そして、それ以降はそれらの判定値に基づいて、接着/非接着の接着判定をすることになる。従来の調整作業のように、第1調整ボルト121や第2調整ボルト122を回す作業はしなくてよい。
【0093】
また、接着照査器100は、押し棒110の直線移動量を計測するセンサとして、アブソリュート方式のリニアエンコーダを採用し、且つそれを2つ使用している。センサとしてロータリーエンコーダを採用する従来の接着照査器では、押し棒110の直線移動をセンサの回転運動に変換する機構部が必須となる。しかし、接着照査器100では、そもそもそうした機構部が存在しない。
【0094】
加えて、第1エンコーダ130Aと第2エンコーダ130Bとが互いに計測方向が逆向きとなるように設定されており、一方の検出値を計測スケールに合わせるように変換して計測値を設定するので、押し棒110の直線移動量を確実に計測できる。
【0095】
以上、本発明を適用した実施形態の一例について説明したが、本発明の適用形態はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない限りにおいて適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0096】
(変形例その1)
上記実施形態では、トングレール4の定位側レール4T、反位側レール4Hそれぞれに、2台ずつ接着照査器100を設ける例を示したが、それぞれに3台以上の接着照査器100を設けてもよい。
【0097】
(変形例その2)
上記実施形態では、判定装置200と設定器300とを別体として例示したが、これらを一体としてもよい。すなわち、上記実施形態の判定装置200に操作スイッチ304に相当するスイッチを追加して、設定器300を省略してもよい。当該構成によれば、保守作業員は、判定装置200へ設定器300を接続/取り外す手間が省ける。
【0098】
(変形例その3)
また、接着照査器100から設定器300へ接着判定の結果を出力し、設定器300にて接着判定結果を表示する構成も可能である。具体的には、判定値設定処理(図7)に、ステップS24からステップS32(図9参照)と同様のステップを加えて判定値設定処理でも接着判定をするようにし、更にその接着判定の結果を判定装置200へ出力するステップを加える。判定装置200は、接着照査器100から受信した接着判定の結果を設定器300へ中継する。そして、設定器300は判定装置200を介して受信した接着照査器100毎の接着判定の結果を表示する表示部(例えば、接着判定結果が「接着」の場合に点灯する第1表示部と、接着判定結果が「非接着」の場合に点灯する第2表示部)を備える。
【0099】
当該構成では、全ての接着照査器100の調整作業を終えた後の全体動作確認まで待たずに、調整作業している最中でも接着照査器100の個別動作確認ができるので、作業効率が優れる。
【0100】
(変形例その4)
上記実施形態では、接着照査器100と判定装置200、判定装置200と設定器300とを有線接続して信号をやり取りする構成としたが、接着照査器100、判定装置200、設定器300のそれぞれに無線通信器を搭載し、無線通信で信号をやり取りするとしてもよい。この場合、信号ケーブルの接続/取り外しの手間を省くことができる。タブレット型コンピュータなどのコンピュータに、所定のアプリケーションソフトを実行させて設定器300として機能させる構成では、利便性が一層向上する。
【0101】
(変形例その5)
接着判定は接着照査器100で行う例を示したが、接着照査器100は接着判定を行わず、判定装置200が接着判定を行う構成とすることも可能である。
【0102】
具体的には、当該構成の接着照査器100から、計測誤り判定部22・計測履歴記憶制御部24・接着判定部26・判定値記憶制御部28・判定結果出力制御部30が省略される(図4参照)。また、ICメモリ144からは、第1計測値履歴データ43・第2計測値履歴データ44・第1判定値45・第2判定値46・接着判定結果履歴データ47が省略される。そして、当該構成の接着照査器100は、計測値決定部21で決定した第1エンコーダ130Aの計測値と、第2エンコーダ130Bの計測値とをそのまま判定装置200へ出力する。
【0103】
一方、当該構成の判定装置200からは、信号中継部68が省略され(図6参照)、代わりに、計測誤り判定部22・計測履歴記憶制御部24・接着判定部26・判定値記憶制御部28が追加される。また、当該構成の判定装置200は、ICメモリ214に、接着照査器100別の第1計測値履歴データ43・第2計測値履歴データ44・第1判定値45・第2判定値46・接着判定結果履歴データ47を記憶する。そして、当該構成の判定装置200は、通過可否判定処理(図10参照)のステップS50の前に、ステップS22からステップS36を実行する(図9参照)。
【符号の説明】
【0104】
4…トングレール
5…基本レール
10…接着照査装置
21…計測値決定部
22…計測誤り判定部
26…接着判定部
41…最新第1計測値
42…最新第2計測値
45…第1判定値
46…第2判定値
62…通過可否判定部
81…第1定位側接着判定結果
82…第2定位側接着判定結果
83…第1反位側接着判定結果
84…第2反位側接着判定結果
85…通過可否判定結果
100…接着照査器
110…押し棒
130A…第1エンコーダ
130B…第2エンコーダ
140…照査部
200…判定装置
201…入力部
204…出力部
230…設定器接続端子
300…設定器
304…操作スイッチ
【要約】
【課題】調整作業がより簡易な接着照査器を実現するための技術を提供すること。
【解決手段】接着照査器100は、トングレールに接触する押し棒110と、押し棒の直線変位を計測するセンサ(第1エンコーダ130A、第2エンコーダ130B)と、判定値を記憶し、センサの計測値を判定値と比較して、基本レールに対するトングレールの接着/非接着を判定する照査部140と、を備える。照査部140は、基本レールと前記トングレールとの間に規定介在物を介在させた所定の設定実行状態におけるセンサの計測値に基づいて、判定値を更新記憶する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10