(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】誘導的に加熱可能なたばこ製品
(51)【国際特許分類】
A24D 1/20 20200101AFI20240827BHJP
A24B 15/16 20200101ALI20240827BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
A24D1/20
A24B15/16
A24F40/465
(21)【出願番号】P 2023093020
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2021128422の分割
【原出願日】2015-05-21
【審査請求日】2023-07-06
(32)【優先日】2014-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/048745(WO,A1)
【文献】特開2000-106270(JP,A)
【文献】特開2004-342540(JP,A)
【文献】特表平08-511175(JP,A)
【文献】特表2005-516357(JP,A)
【文献】特開2008-082700(JP,A)
【文献】特開2004-089704(JP,A)
【文献】特開2002-108124(JP,A)
【文献】特開平02-126588(JP,A)
【文献】特表2009-529872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0096781(US,A1)
【文献】国際公開第2014/016961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/20
A24B 15/16
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生のための誘導的に加熱可能なたばこ製品であって、前記たばこ製品が複数の磁性粒子の形態のサセプタを含むエアロゾル形成基質を含み、また前記エアロゾル形成基質が、均質化されたたばこ材料、繊維、結合剤、エアロゾル形成体および前記複数の磁性粒子の形態の前記サセプタを含む、圧着したたばこシートであり、前記複数の磁性粒子の量が、前記たばこ製品の10重量パーセント~40重量パーセントの範囲である、たばこ製品。
【請求項2】
前記たばこ製品が少なくとも0.008ジュール/キログラムの熱損失を持つ、請求項1に記載のたばこ製品。
【請求項3】
前記熱損失が0.05ジュール/キログラムを超える、請求項2に記載のたばこ製品。
【請求項4】
前記複数の磁性粒子の粒子サイズが5マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載のたばこ製品。
【請求項5】
前記複数の磁性粒子の粒子サイズが10マイクロメートル~80マイクロメートルの範囲である、請求項4に記載のたばこ製品。
【請求項6】
前記磁性粒子が前記エアロゾル形成基質内で均一に分布されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項7】
前記磁性粒子が焼結材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項8】
前記磁性粒子が化学的に不活性の外側表面を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項9】
前記磁性粒子がフェライトでできている、請求項1~8のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項10】
前記エアロゾル形成体がグリセリンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項11】
前記たばこ材料が30マイクロメートル~250マイクロメートルの範囲のサイズのたばこ粒子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項12】
前記サセプタのキュリー温度が摂氏200度~摂氏400度である、請求項1~11のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項13】
前記サセプタのキュリー温度が摂氏240度~摂氏350度である、請求項12に記載のたばこ製品。
【請求項14】
ロッドの直径が3ミリメートル~9ミリメートルの範囲であり、かつロッドの長さが2ミリメートル~20ミリメートルの範囲である、ロッドの形態を持つ、請求項1~13のいずれか1項に記載のたばこ製品。
【請求項15】
たばこ製品およびフィルターが端と端を接する方法で配列され、前記フィルターおよび前記たばこ製品を前記たばこ材料を含むユニット内に固定するためのシート材料で包まれている、請求項1~14のいずれか1項に記載のたばこ製品とフィルターとを含むユニットを備えるたばこ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル発生のための誘導的に加熱可能なたばこ製品に関する。たばこ製品はエアロゾル発生のための誘導加熱装置での使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
電気的に加熱可能な喫煙装置では、例えば、エアロゾル形成体としてたばこ粒子およびグリセリンを含むたばこシートで作られたたばこプラグは、加熱可能なブレードにより加熱される。使用時、たばこプラグは、プラグ材料が加熱されたブレードと熱密着するように、ブレード上に押し上げられる。エアロゾル発生装置で、たばこプラグは加熱されてプラグ材料内の揮発性化合物を気化させるが、従来型の紙巻たばこのようにたばこを燃焼することなく行うことが好ましい。ところが、エアロゾルを発生させるためにプラグの離れた周辺領域を加熱するためには、ブレードの近くにあるたばこの燃焼が完全に防止されないように、加熱用ブレードに最も近い材料は過度に加熱されなければならない。
【0003】
エアロゾル形成基質のために誘導性加熱の使用が提案されてきた。また、たばこ材料内の個々のサセプタ材料を分散させることが提案されてきた。ところが、圧着したたばこシートで作られたたばこプラグの最適な加熱のためのソリューションはこれまで提案されていない。
【0004】
従って、エアロゾル発生のために最適化された誘導的に加熱可能なたばこ製品に対するニーズがある。特に、圧着したたばこシートを含むエアロゾル形成体で作られたたばこプラグの最適なエアロゾル発生が許容されるたばこ製品のニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明による一つの態様によれば、エアロゾルを発生させるための誘導的に加熱可能なたばこ製品が提供されている。たばこ製品は複数の粒子の形態のサセプタを含むエアロゾル形成基質を含む。エアロゾル形成基質は、たばこ材料、繊維、結合剤、エアロゾル形成体、および複数の粒子の形態のサセプタを含む圧着したたばこシートである。たばこ製品内のサセプタは、磁気波として伝達されたエネルギーを熱に変換する能力(本明細書では熱損失と呼ぶ)を持つ。熱損失が大きいほど、サセプタへの磁気波として伝達されたエネルギーがサセプタによって熱に変換される。熱損失は0.008ジュール/キログラム以上、0.05ジュール/キログラムであることが好ましく、サセプタを誘起させるために提供された回路にかけられる単一の正弦波サイクル中に0.1ジュール/キログラム以上の熱損失が可能であることが好ましい。回路の周波数を変化させることにより、1キログラム当たり1秒当たりの熱損失は変化しうる。通常、高周波数の電流は電源によって供給され、サセプタを誘起するためにインダクタを通過して流れる。インダクタ内または回路の周波数はそれぞれ、1 MHz~30 MHzの範囲とすることができ、1 MHz~10MHz、または1 MHz~15 MHzの範囲であることが好ましく、さらには5 MHz~7 MHzの範囲であることがより好ましい。「~の範囲」という用語は本明細書および下記で使用する時、明示的にそれぞれの境界値も開示しているものと理解される。
【0006】
望ましい実施形態で、本発明によるたばこ製品は、少なくとも0.008ジュール/キログラムの熱損失を持つ。熱損失は、回路にかけられた単一サイクル中に達成されうるが、この回路はサセプタを誘起させるために提供され、また回路は1 MHz~10 MHzの範囲の周波数を持つことが好ましい。
【0007】
別の方法として、基質の組成およびサイズを基に最小ワット量または1秒当たりのジュールが公知の場合は、サセプタは望ましい最小ワット量を可能にするのに十分な重量パーセント数として基質内に提供されうる。
【0008】
上述の通り、熱損失は熱を周囲の材料に移動させるサセプタの容量である。熱はサセプタ内で複数の粒子の形態で発生する。サセプタは主に、密着しているかまたは近位にあるたばこ材料およびエアロゾル形成体を伝導的に加熱して、望ましい風味を展開する。こうして、材料によって、およびその周囲へのサセプタの接触によって、熱損失は特定される。本発明によるたばこ製品では、サセプタ粒子はエアロゾル形成基質内に均一に分布されていることが好ましい。これにより、エアロゾル形成基質内の一様な熱損失を達成でき、こうしてエアロゾル形成基質内、およびたばこ製品内での一様な熱分布が生成され、たばこ製品内での一様な温度分布につながる。
【0009】
たばこ製品の一様または均一な温度分布は本明細書では、たばこ製品の断面全体にわたり実質的に類似した温度分布を持つたばこ製品として理解される。たばこ製品は、たばこ製品の異なる領域、例えばたばこ製品の中央領域および周辺領域などでの温度の差が50パーセント未満、好ましくは30パーセント未満であるように加熱されることが好ましい。
【0010】
たばこ製品において単位当たりの最小熱損失0.05ジュール/キログラムによって、その温度で適切なエアロゾル発生が提供される実質的に一様な温度にたばこ製品を加熱できることが分かっている。たばこ製品の平均温度は摂氏約200度~摂氏約240度が好ましい。これは、特にエアロゾル形成体としてグリセリンを含有する均質化したたばこ材料で作られたたばこシート内で、特にさらに詳細に下記で説明するキャストリーフ内で、望ましい量の揮発性化合物が生成される温度範囲であることが分かっている。これらの温度では、たばこ製品の個々の領域での実質的な過熱はされないが、サセプタ粒子は最高摂氏約400~450度の温度に達しうる。
【0011】
サセプタ粒子は、たばこシート内に埋め込まれ、よってエアロゾル形成基質内に埋め込まれる。粒子は固定化され、初期の位置に留まる。粒子は、たばこシート上またはその中に埋め込みうる。粒子はエアロゾル形成基質内に均一に分布されていることが好ましい。基質内にサセプタ粒子を埋め込むことにより、均一な分布は、たばこシートの圧着およびたばこ製品の形成によるたばこ製品形成においても変わらず均一さを保つ。例えば、ロッドは圧着したたばこシートの形態を取ることができ、そのロッドはたばこ製品の要求されるロッドの長さに切断されうる。
【0012】
たばこシートはキャストリーフであることが好ましい。キャストリーフは、たばこ粒子、繊維粒子、エアロゾル形成体、結合剤、および例えば風味も含むスラリーから形成される、再構成たばこの一形態である。
【0013】
たばこ粒子は、望ましいシートの厚さおよびキャスティングギャップに応じて、ほぼ30マイクロメートル~250マイクロメートル程度、好ましくはほぼ30マイクロメートル~80マイクロメートル程度、またはほぼ100マイクロメートル~250マイクロメートル程度の粒子を持つたばこダストの形態としうるが、ここでキャスティングギャップは通常、シートの厚さを画定する。
【0014】
繊維粒子は、たばこの幹材料、茎またはその他のたばこ植物材料、およびその他のセルロース系繊維(リグニン含有量の低い木材繊維など)を含みうる。繊維粒子は低い含有率(例えば、およそ2~15%の率)に対してキャストリーフに十分な引張強さをもたらす要求に応じて選択しうる。別の方法として、繊維(植物繊維など)を上述の繊維粒子とともにまたは代替として使用しうるが、これには大麻および竹などが含まれる。
【0015】
キャストリーフを形成するスラリーに含まれるエアロゾル形成体は、一つ以上の特性に基づき選択されうる。機能的には、エアロゾル形成体は、エアロゾル形成体の特定の気化温度を超えて加熱された時、気化してエアロゾル内のニコチンまたは風味剤または両方を運ぶメカニズムを提供する。異なるエアロゾル形成体は通常、異なる温度で気化する。エアロゾル形成体は、例えば室温またはその付近で安定性を保つが、高めの温度、例えば摂氏40度~摂氏450度などで気化できるその能力に基づき選択されうる。エアロゾル形成体はまた、基質がたばこ粒子を含むたばこ由来の製品で構成されている時にエアロゾル形成基質内に望ましいレベルの水分を維持するのに役立つ、湿潤タイプの属性を持ちうる。特に、一部のエアロゾル形成体は、湿潤剤として機能する吸水性材料、すなわち、湿潤剤を含む基質を湿った状態に保つのに役立つ材料である。
【0016】
一つ以上のエアロゾル形成体を組み合わせて、組み合わされたエアロゾル形成体の一つ以上の属性を利用しうる。例えば、トリアセチンをグリセリンおよび水と組み合わせて、有効成分を運搬するトリアセチンの能力とグリセリンの湿潤性を利用しうる。
【0017】
エアロゾル形成体は、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオールエステル、エステル、および脂肪酸から選択することができ、またグリセリン、エリスリトール、1,3-ブチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレン炭素塩、ラウリン酸エチル、トリアセチン、メソ-エリスリトール、ジアセチン混合物、ジエチルスベリン酸塩、クエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、ベンジルフェニル酢酸塩、エチルバニリン酸塩、トリブチリン、ラウリル酢酸塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびプロピレングリコールといった化合物のうち一つ以上を含みうる。
【0018】
キャストリーフを製造する標準的なプロセスには、たばこを準備する工程が含まれる。このために、たばこは細かく切られる。細かく切られたたばこは次に、その他の種類のたばこと混合され粉砕される。通常、その他の種類のたばこは、バージニア種またはバーレー種などその他のタイプのたばこであり、または例えば違う方法で処理したたばこでもよい。混合および粉砕の工程は切り替えうる。繊維は別個に準備され、溶液の形態のスラリー用に使用されるなどが好ましい。溶液および準備したたばこが次に混合されるが、サセプタ粒子とともに混合されることが好ましい。キャストリーフを形成するために、スラリーはシート形成装置に移動される。例えば連続的なベルトの例えば表面とすることができ、その上にスラリーが連続的に広げられうる。スラリーが表面上に分布し、シートを形成する。シートは次に、好ましくは熱乾燥され、乾燥後に冷却される。サセプタ粒子はまた、シートの形態にされた後に、しかしシートが乾燥される前に、スラリーに塗布してもよい。これにより、サセプタ粒子はシート材料の内側に均一に分布されるが、たばこシートの圧着により形成されたたばこ製品内にもやはり均一に分布されうる。キャストリーフが将来的な使用のためにボビンに巻き付けられる前に、キャストリーフの端が切り取られ、シートは細長く切られうる。ところが、スリッティングはシートがボビン上に巻かれた後で実施してもよい。ボビンは次に、例えば圧着およびロッド形成ユニットなどのシート加工設備に移動することも、将来的な使用のためにボビン貯蔵所に入れることもできる。
【0019】
圧着したたばこシート(例えば、キャストリーフ)の厚さは、約0.5ミリメートルおよび約2ミリメートルの範囲としうるが、約0.8ミリメートルおよび約1.5ミリメートルの範囲、例えば1ミリメートルが好ましい。最大約30パーセントの厚さの偏差が、製造上の許容範囲のために生じうる。
【0020】
サセプタは誘導的に加熱されうる導体である。サセプタは電磁エネルギーを吸収し、それを熱に変換することができる。本発明によるたばこ製品では、誘導加熱装置の一つまたは複数の誘導コイルにより発生した電磁場を変化させることでサセプタを加熱し、それが次に、主に熱伝導により熱をたばこ製品のエアロゾル形成基質に伝達する。この目的で、サセプタはたばこ材料およびエアロゾル形成基質のエアロゾル形成体と熱的に近接している。サセプタが微粒であるという性質から、熱はたばこシート内の粒子の分布に従い発生する。
【0021】
本発明によるたばこ製品の一部の好ましい実施形態で、たばこ材料は均質化されたたばこ材料であり、エアロゾル形成体はグリセリンを含む。たばこ製品は上述の通りキャストリーフで作られていることが好ましい。
【0022】
さらには、最適なエアロゾル形成のための十分な熱を提供、ただし好ましくはたばこまたは繊維の燃焼なしで提供するために、エアロゾル形成体を含む圧着したたばこシートでできており、特に圧着したキャストリーフでできており好ましくはエアロゾル形成体としてグリセリンを含むたばこ製品と組み合わせて、特定の性質を有する特定のサセプタ粒子のみが適していることが分かっている。
【0023】
たばこシート内の粒子の最適な選択および分布により、加熱に必要なエネルギーは低減しうる。ところが、基質から揮発性化合物を放出するのに十分なエネルギーはなおも供給される。エネルギー低減は、たばこ製品と併用されるエアロゾル発生のための誘導加熱装置のエネルギー消費を減少させるだけでなく、エアロゾル発生基質の過熱のリスクを低減しうる。たばこ製品内でのエアロゾル形成体の枯渇を非常に均一かつ完全な方法で達成することで、エネルギー効率も達成される。特に、たばこ製品の周辺領域もエアロゾル形成に貢献しうる。これにより、たばこプラグなどのたばこ製品がより効率良く使用されうる。例えば、従来的にはより広範囲で加熱されていたまたはより大きなエアロゾル形成基質で見られるのと同一量の揮発性化合物をたばこ製品から蒸発させることにより、喫煙の体験が向上したり、たばこ製品のサイズを小さくしたりしうる。こうしてコストを節約したり廃物を減少したりしうる。
【0024】
本発明によるたばこ製品の一態様によれば、サセプタ粒子のサイズは、約5マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲で、また約10マイクロメートル~約80マイクロメートルの範囲、例えば20マイクロメートル~50マイクロメートルの範囲であることが好ましい。サセプタとして使用する粒子についてこれらの範囲のサイズは、たばこシート内での均一な分布が許容される最適な範囲であることが分かっている。小さな粒子が効率的に熱を発生させない表皮効果のため、小さすぎる粒子は望ましくない。さらに、小さめの粒子は、喫煙物品で使用される際に従来式のフィルターを通過しうる。こうしたフィルターはまた、本発明によるたばこ製品と組み合わせても使用しうる。大きめの粒子は、シート材料内で、特にたばこシートの圧着によって形成されたたばこ製品での均一の分布を困難または不可能にする。大きめの粒子は、小さめの粒子ほど細かくたばこシート内で分布されないことがある。さらに、大きめの粒子は、たばこシートの圧着時に相互に接触するように、たばこシートから突き出す傾向がある。これは局所的に発熱量が多くなるため好ましくない。本明細書で粒子のサイズは等価の球径であると理解される。粒子は不規則な形状でもありうるため、等価の球径は等価な体積の球径を不規則な形状の微粒子として画定する。
【0025】
本発明によるたばこ製品の別の態様によれば、複数の粒子の量は、たばこ製品の約4重量パーセント~約45重量パーセントの範囲であり、約10重量パーセント~約40重量パーセント、例えば30重量パーセントであることが好ましい。ここで、当該技術分野の当業者にとっては、様々な重量パーセントのサセプタが上記で提供される一方、たばこ、エアロゾル形成体、結合剤、および水のその重量パーセントを含めたたばこ製品を含む要素の組成を変化させると、たばこ製品を効果的に加熱するために必要とされるサセプタの重量パーセントの調節が必要となることが明らかである。
【0026】
たばこ製品の重量と比較してこれらの重量範囲内でのサセプタ粒子の量は、たばこ製品全体にわたる均一な熱分布を提供するのに最適な範囲にあることが分かっている。さらに、サセプタ粒子のこれらの重量範囲は、たばこ製品を均一にかつ平均温度に、例えば摂氏200度~摂氏240度の温度に加熱するために十分な熱を提供するのに最適な範囲にある。
【0027】
本発明によるたばこ製品の別の態様によれば、粒子は焼結材料を含むかそれからできている。焼結材料は多種多様な電気的、磁気的および熱的な属性を提供する。焼結材料はセラミック、金属またはプラスチックの性質のものとしうる。サセプタ粒子には金属合金が使用されることが好ましい。製造プロセスにもよるが、こうした焼結材料は特定の仕様に合わせうる。本発明によるたばこ製品で使用される粒子のための焼結材料は、高い熱伝導率および高い磁気浸透性を持つことが好ましい。
【0028】
本発明によるたばこ製品のさらなる態様によれば、粒子は化学的に不活性である外側表面を備える。化学的に不活性の表面は、粒子が化学反応を起こしたり、製品が加熱された時に場合によっては望ましくない化学反応を始める触媒の役割を果たしたりすることを妨げる。不活性の化学物質の外側表面は、サセプタ材料それ自体の化学的に不活性な表面としうる。不活性の化学物質の外側表面はまた、化学的に不活性なカバー内のサセプタ材料を封入する化学的に不活性なカバー層でもよい。カバー材料は粒子が加熱される温度と同じ高さの温度に耐えうる。封入工程は粒子が製造される時の焼結プロセスに組み込みうる。化学的な不活性は本明細書では、たばこ製品を加熱することにより生成され、たばこ製品内に存在する化学物質に関して理解される。
【0029】
本発明によるたばこ製品の一部の好ましい実施形態で、粒子はフェライトでできている。フェライトは高い磁気浸透性を持つ強磁性体であり、サセプタ材料として特に適している。フェライトの主な成分は鉄である。その他の金属成分、例えば亜鉛、ニッケル、マンガン、または非金属成分(例えば、シリコン)は様々な量で存在しうる。フェライトは比較的安価で商業的に入手可能な材料である。フェライトは本発明によるたばこ製品で使用される粒子のサイズ範囲において粒子の形態で入手可能である。粒子は例えば、Powder Processing Technology LLC(米国)製のFP350など、完全に焼結したフェライト粉末であることが好ましい。
【0030】
本発明によるたばこ製品のなおもさらなる態様によれば、サセプタのキュリー温度は摂氏約200度~摂氏約450度で、摂氏約240度~摂氏約400度、例えば摂氏約280度であることが好ましい。
【0031】
示された範囲内のキュリー温度を持つサセプタ材料を含む粒子は、ある程度均一な温度分布のたばこ製品、および摂氏約200度~摂氏240度の平均温度を達成できる。さらに、エアロゾル形成基質の局所温度は一般的に、サセプタのキュリー温度を超えないか、または著しくは超えない。こうして、局所温度は摂氏約400度を下回ることができ、それより下ではエアロゾル形成基質の有意な燃焼は起こらない。
【0032】
サセプタ材料がそのキュリー温度に達した時、磁性が変化する。キュリー温度でサセプタ材料は強磁性の相から常磁性の相に変化する。この時点で、強磁性の領域の向きを理由とするエネルギー損失に基づく加熱は停止する。その後、さらなる加熱は、サセプタ材料のキュリー温度に達することで加熱工程が自動的に低減されるように、主に渦電流の形成に基づくものである。エアロゾル形成基質を過熱するというリスクの低減は、キュリー温度を持つサセプタ材料を使用することで支持されうるが、これによりヒステリシス損失による加熱工程はある一定の最高温度までにしか達しないようになる。サセプタ材料およびそのキュリー温度は、最適なエアロゾル発生のためにたばこ製品内での最適な温度および温度分布を達成するために、エアロゾル形成基質の組成に応じて適応されることが好ましい。
【0033】
本発明によるたばこ製品の一態様によれば、たばこ製品は、ロッド直径が約3ミリメートル~約9ミリメートルの範囲であり、約4ミリメートル~約8ミリメートル、例えば7ミリメートルのロッドの形態を持つことが好ましい。ロッドの長さは約2ミリメートル~約20ミリメートルとしうるが、約6ミリメートル~約12ミリメートル、例えば10ミリメートルであることが好ましい。ロッドは円形または楕円形の断面を持つことが好ましい。ただし、ロッドは矩形または多角形の断面を持つものでもよい。
【0034】
消費者によるたばこロッドの容易な取り扱いを促進するために、ロッドは順番に形成されたロッド、フィルター、およびマウスピースを含むたばこスティック内に提供されうる。フィルターはロッド材料から形成されたエアロゾルを冷却できる材料とすることができ、また形成されたエアロゾル内に存在する成分を変化させうるものでもよい。例えば、フィルターがポリ乳酸または類似したポリマーでできている場合、フィルターはエアロゾル内のフェノールのレベルを除去または減少させうる。ロッド、フィルター、およびマウスピースは、ロッドの取り扱いを促進するために十分な堅さを持つ紙で囲んでもよい。たばこスティックの長さは20 mm~55 mmとしうるが、好ましくは長さおよそ45 mmとしうる。
【0035】
よって、本発明の別の態様では、例えば、たばこスティックなどのたばこ材料を含むユニットが提供されており、ユニットは本明細書で説明したたばこ製品とフィルターとを含む。たばこ製品およびフィルターは端と端を接して整列され、フィルターおよびたばこ製品をたばこ材料を含むユニット内に固定するために、シート材料(例えば、紙)で包まれる。
【0036】
本発明についてはさらに、実施形態に関して説明するが、これを下記の図表によって例示する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は均質化されたたばこ材料およびサセプタ粒子を持つたばこシートの概略図である。
【
図2】
図2は圧着した均質化されたたばこシートで作られたたばこプラグを加熱用ブレードによって加熱した温度シミュレーションを示す。
【
図3】
図3は一様なサセプタ微粒子分布を持つ、
図1によるたばこシートで作られたたばこプラグの温度シミュレーションを示す。
【
図4】
図4は
図2によるたばこプラグのグリセリン枯渇プロフィールのシミュレーションを示す。
【
図5】
図5は
図3によるたばこプラグのグリセリン枯渇プロフィールのシミュレーションを示す。
【
図6】
図6は例えば
図2および3による、加熱用ブレードにより加熱し一様なサセプタ微粒子分布を持つたばこプラグの時間に対する平均温度曲線のシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、たばこシート1の形態のエアロゾル形成基質を概略的に示す。たばこシートは、均質化されたたばこ粒子11、好ましくは上述の通りキャストリーフであり、サセプタ粒子10を含む。
【0039】
たばこシートの厚さ12は0.8ミリメートル~1.5ミリメートルであることが好ましく、一方、サセプタ粒子のサイズは10マイクロメートル~80マイクロメートルであることが好ましい。本発明によるたばこ製品を形成するために、たばこシート1は圧着され、折り畳まれてたばこロッドを形成する。こうした連続的なロッドは次に、エアロゾル発生のための誘導加熱装置と組み合わせて使用されるたばこプラグについて要求されるサイズに切断される。
【0040】
図2は加熱用ブレード20によって加熱された円筒形のたばこプラグ2の断面の温度分布のシミュレーション図を示す。たばこプラグは均質化されたたばこ材料およびエアロゾル形成体としてのグリセリンを含む、圧着したたばこシートで作られたエアロゾル形成基質を含む。ロッド形状に形成された圧着したたばこシートはラッパー23(例えば、紙)によって包まれる。たばこプラグの中央には、エアロゾル形成基質を加熱するための長方形の抵抗加熱可能な加熱用ブレード20が挿入される。
図2では温度分布のシミュレーションが行われ、コア温度が中心部で摂氏およそ370度、および周辺部で最低でも摂氏80度となるようなプラグの加熱について示されている。ブレード20の近位領域220での温度は最高で摂氏約380度となる。中間領域221および遠位、周辺領域222の温度は、なおも最低でも摂氏約100~150度となる。こうして、シミュレーション測定によれば、加熱されたたばこプラグのブレードの中間領域および周辺領域は、エアロゾルの形成にはかかわっていないか、またはかかわっていても限定された範囲であるが、少なくとも近位領域220でたばこが完全には燃焼しないようブレードの加熱が限定される場合にそうである。
【0041】
これは
図4にも図示されている。同図には
図2によるたばこプラグのグリセリン枯渇が示されている。加熱5分後に近位領域220でグリセリンが完全に枯渇していることが見て取れる。周辺領域222では枯渇は発生せず、中間領域221では部分的に枯渇する。加熱用ブレードの長方形の断面形状のため、枯渇のない周辺領域222はプラグの一部に限定され、これはブレード20の長い側の横に配列されている。近位領域220は加熱用ブレード20に直接隣接して配列され、ブレード20のそれぞれの長い側に対して最大で半径の約1/3だけ延びる。
【0042】
図3は誘導的に加熱された円筒形のたばこプラグ3の断面の温度分布のシミュレーション図を示す。たばこプラグは
図1で説明したサセプタ粒子を含む圧着したたばこシートでできている。温度シミュレーションに使用されるたばこプラグで、平均サイズが50マイクロメートルの90ミリグラムFP 350フェライト粒子が、エアロゾル形成体としてのたばこ粒子、繊維、結合剤およびグリセリンのスラリーでできたキャストリーフ内に一様に分布される。
【0043】
ロッド形状に形成された圧着したたばこシートは、ラッパー13(例えば、紙)によって包まれる。サセプタ粒子は、たばこプラグ(図示せず)全体に均一に分布されている。プラグは誘導的に加熱されたサセプタ粒子を経由して加熱される。
図3では温度分布のシミュレーションが行われ、プラグ内に均一に分布されたサセプタ粒子に基づきより予想される一様な温度でのプラグの加熱について示されている。中央領域110の温度は摂氏約300度である。円形の中央領域110はある程度大きく、たばこプラグの半径の約半分に広がる。狭い環状の中間領域111内の温度は摂氏約250度で、円周方向に配列された周辺部112の温度は摂氏約200度である。こうして、シミュレーション測定により、グリセリンは比較的均一に、たばこプラグの全体または実質的に全体の領域にわたり気化する。また、グリセリンは、たばこプラグの中間領域111および周辺領域112から気化する。こうして、たばこプラグのすべての領域が、中心的および抵抗的に加熱されるたばこプラグからの公知の温度よりもずっと低い最高加熱温度によってさえも、エアロゾルの形成に使用される。
【0044】
図3のたばこプラグのグリセリン枯渇について、
図5に図示する。グリセリンは中央領域110では加熱5分後でさえもまだ完全に枯渇されていないことが見て取れる。ところが、いくらかの枯渇は中間領域111では既に生じており、周辺部112ではより低い程度で生じている。
【0045】
図2および3によるプラグの温度およびグリセリン枯渇シミュレーション(ただし加熱は約1分および1.5分のみ)は、同じ相対的温度の挙動を示す。1分後、本発明によるたばこプラグは、既に中央・中間領域にわたり摂氏約150~200度の温度に達している。グリセリン枯渇はまだ始まっていない。1.5分後、温度は内部周辺部で摂氏約200度に、中央領域で最高摂氏約280度に上昇した。最低でも摂氏150度の温度は、外側周辺部112にのみ存在する。こうして、グリセリン枯渇は既にたばこプラグの加熱開始から1~2分後に、たばこプラグの広い領域にわたり発生する。
【0046】
本発明によるサセプタ粒子を持つたばこプラグとは対照的に、加熱用ブレードを持つ
図2によるたばこプラグの温度分布は、既に加熱1.5分後に、
図2に示すものとほぼ同一である。加熱1.5分後に、近位領域220は既に最高で摂氏380度の温度、および中間領域および周辺領域で最低でも摂氏約100度の温度を持つ。加熱1分後、加熱用ブレード20周辺の非常に狭い近位領域のみが、摂氏約200度に加熱される。残りの領域は、わずかに高い温度を持つか、または室温のままである。
【0047】
図6では、
図1および
図3によるプラグのたばこプラグ体積での平均温度Tとそれに対する時間tを図示している。線35は本発明によるサセプタ粒子を持つたばこプラグの温度曲線を示し、線25は加熱用ブレードで加熱されたたばこプラグの温度曲線を示す。加熱用ブレードの最高加熱温度は摂氏360度に制限されていたが、本発明によるたばこプラグのサセプタのキュリー温度は摂氏350~400度であった。プラグ均一に分布された粒子を持つプラグ内で、平均温度はずっと早く上昇し、最高平均温度である摂氏約250度に徐々に近づくことが見て取れる。ブレード加熱されたたばこプラグの平均温度の上昇には少し長く時間がかかる。ブレード加熱されたプラグでの最高平均温度は摂氏約220度である。加熱用ブレードによって加熱されていない周辺領域のため、これより高い平均温度に達することはない。
【0048】
1. エアロゾル発生のための誘導的に加熱可能なたばこ製品であって、前記たばこ製品が複数の粒子の形態のサセプタを含むエアロゾル形成基質を含み、また前記エアロゾル形成基質が、たばこ材料、繊維、結合剤、エアロゾル形成体および前記複数の粒子の形態の前記サセプタを含む、圧着したたばこシートである、たばこ製品。
2. 前記たばこ製品が少なくとも0.008ジュール/キログラムの熱損失を持つ、1に記載のたばこ製品。
3. 前記熱損失が0.05ジュール/キログラムを超える、2に記載のたばこ製品。
4. 前記複数の粒子の粒子サイズが約5マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲である、1~3のいずれかに記載のたばこ製品。
5. 前記複数の粒子の量が、前記たばこ製品の約4重量パーセント~約45重量パーセントの範囲である、1~4のいずれかに記載のたばこ製品。
6. 前記粒子が前記エアロゾル形成基質内で均一に分布されている、1~5のいずれかに記載のたばこ製品。
7. 前記粒子が焼結材料を含む、1~6のいずれかに記載のたばこ製品。
8. 前記粒子が化学的に不活性の外側表面を含む、1~7のいずれかに記載のたばこ製品。
9. 前記粒子がフェライトでできている、1~6のいずれかに記載のたばこ製品。
10. 前記たばこ材料が均質化されたたばこ材料であり、前記エアロゾル形成体がグリセリンを含む、1~9のいずれかに記載のたばこ製品。
11. 前記圧着したたばこシートの厚さが約0.5ミリメートルおよび約2ミリメートルの範囲である、1~10のいずれかに記載のたばこ製品。
12. 前記サセプタのキュリー温度が摂氏約200度~摂氏約400度である、1~11のいずれかに記載のたばこ製品。
13. ロッドの直径が約3ミリメートル~約9ミリメートルの範囲であり、かつロッドの長さが約2ミリメートル~約20ミリメートルの範囲である、ロッドの形態を持つ、1~12のいずれかに記載のたばこ製品。
14. たばこ製品およびフィルターが端と端を接する方法で配列され、前記フィルターおよび前記たばこ製品を前記たばこ材料を含むユニット内に固定するためのシート材料で包まれている、1~13のいずれかに記載のたばこ製品とフィルターとを含むユニットを備えるたばこ材料。