(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2023119165
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2023-07-24
(32)【優先日】2023-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512117(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0048984(KR,A)
【文献】特表2004-506339(JP,A)
【文献】特開2010-003699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングチャンネルを有し、更に、前記リングチャンネルに位置する、ガス入り口と、出口と、を有する反応チャンバーと、
第1のコイルが巻き付けられている第1のフェライト磁気コアと、第2のコイルが巻き付けられている第2のフェライト磁気コアと、駆動電源と、を備え、前記反応チャンバーの前記リングチャンネルは、前記第1のフェライト磁気コアと前記第2のフェライト磁気コアとの間にある中空エリアを挿通する少なくとも一つのフェライトトランスと、
を備え、
前記駆動電源は、前記第1のコイルに第1の電圧を有する交流電源を加えて、前記第1のフェライト磁気コアに交番磁界を生成し、
前記第2のコイルは、前記交番磁界の誘導により第2の電圧が生成され、前記第2の電圧は前記反応チャンバーの少なくとも一つの中空円筒管に加えることにより、ホローカソード放電メカニズムによって、前記リングチャンネルにおける作動ガスを励起してプラズマを生成し、
前記反応チャンバーの前記リングチャンネルは、変圧器カップリングプラズマメカニズムによって、前記交番磁界の誘導によって誘導電界を生成することにより、前記プラズマを励起して、前記反応チャンバーの前記リングチャンネル内に、閉じた経路を有する電流を形成することにより、前記作動ガスをさらに解離して前記プラズマの密度を増加することを特徴とするホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項2】
前記反応チャンバーは、リング状キャビティーであり、少なくとも一つの中空キャビティーと、前記少なくとも一つの中空円筒管と、少なくとも一つのバリア構造と、を備え、前記バリア構造は、前記中空キャビティーと前記少なくとも一つの中空円筒管との間に少なくとも一つの隙間を形成して、少なくとも一つの開回路を成し、前記少なくとも一つの中空円筒管は、ダブル開口金属管と単一開口金属管とから構成されるグループから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項3】
前記反応チャンバーは、リング状キャビティーであり、複数の中空キャビティーと、複数の中空円筒管と、複数のバリア構造と、を備え、前記複数のバリア構造は、前記複数の中空キャビティーと前記複数の中空円筒管との間に隙間を複数形成して、複数の開回路を成すことを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項4】
前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管はダブル開口金属管であり、前記ダブル開口金属管は前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することにより、前記リング状キャビティーを構成することを特徴とする、請求項3に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項5】
前記金属キャビティーは、二つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの上側と下側を構成し、前記ダブル開口金属管は、二つあり、前記リング状キャビティーの二つの側辺を構成し、前記ダブル開口金属管の両端は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項4に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項6】
前記金属キャビティーは、四つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの四つのコーナーを構成し、前記ダブル開口金属管は、四つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの四つの側辺を構成し、その両端が、前記バリア構造を介して、隣接する二つの前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項4に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項7】
前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管はダブル開口金属管および単一開口金属管であり、前記ダブル開口金属管と前記単一開口金属管は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項3に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項8】
前記金属キャビティーは、二つあり、前記リング状キャビティーの上側と下側をそれぞれ構成し、前記ダブル開口金属管は、二つあり、前記リング状キャビティーの二つの側辺を構成し、前記単一開口金属管は、二つあり、それぞれ前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項7に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項9】
前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管は単一開口金属管であり、前記単一開口金属管は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項3に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項10】
前記金属キャビティーは、二つあり、前記金属キャビティーは、それぞれ前記リング状キャビティーの上側と下側を構成し、前記単一開口金属管は、二つあり、それぞれ前記金属キャビティーと接続することを特徴とする、請求項9に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項11】
前記第2のコイルは、前記交番磁界の誘導により前記第2の電圧が生成され、且つ前記第2の電圧は、並列であるように前記複数の中空円筒管に加えられ、前記第2の電圧の数値は、前記第1の電圧の数値とM/Nを掛けたものであり、Mは前記第2のコイルの巻き数であり、Nは前記第1のコイルの巻き数であることを特徴とする、請求項3に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項12】
前記第1のコイルが巻き付けられた前記第1のフェライト磁気コアは、変圧器の一次側とされ、前記反応チャンバーの前記リングチャンネルは、前記変圧器の二次側とされることにより、前記変圧器カップリングプラズマメカニズムを利用して、前記リングチャンネルに前記誘導電界を生成することを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項13】
更に、前記第2のコイルと前記中空円筒管との間に位置し、両方と電気的に接続する少なくとも一つのコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記反応チャンバーの前記中空円筒管に供給する前記第2の電圧を制御するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項14】
前記各バリア構造はセラミックリングを備えることを特徴とする、請求項3に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項15】
前記各バリア構造は、更に、シールリングを備えることを特徴とする、請求項14に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項16】
前記反応チャンバーは、アルマイト処理されたアルミニウム製品であることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項17】
前記交流電源の出力周波数の範囲は、100kHz~500kHzであることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項18】
前記交流電源は、定電力または定電流であり、その出力電圧の範囲は300ボルト~500ボルトであることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項19】
前記作動ガスの気圧は、0.5Torr~10Torrであることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項20】
前記作動ガスのガス流量は、10
-2slm~約10
2slmであることを特徴とする、請求項1に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源。
【請求項21】
ホローカソード放電メカニズムにより、作動ガスは、請求項1から20の何れかの1項に記載のホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源において、プラズマを形成し、変圧器カップリングプラズマメカニズムにより、エネルギーが前記プラズマとカップリングすることにより、前記プラズマは放電して電子ドリフト電流を生成して、前記作動ガスをより有効に解離して、前記プラズマの密度を増加することを特徴とするホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ(Plasma)は、半導体プロセスやその他の工業生産で広く使用されており、その利点は、ガス分子を分解して、中性フリーラジカル、イオン、原子、電子、励起分子で構成される高反応性混合物を生成し、プロセスに必要なさまざまな物理的特性および化学反応を提供できることである。従来の色々なメカニズムはプラズマを生成することができる。そのうちの一つは、フェライトトランス磁気コアにより、インダクタンスカップリングプラズマ放電を生成し、その主なメカニズムは、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、一つのフェライトトランス磁気コア502により、リング状真空チャンバー(Toroidal Vacuum Chamber)500内に誘導電界を生成して、ガスを放電する。リング状真空チャンバー500は、一端がガス入り口506であり、他端が出口508である。この方式は、変圧器の原理に類似し、電源がフェライトトランス磁気コア502の一次側コイルと接続して磁界を生成して、リング状真空チャンバー500において、磁気コアにおける磁束の誘導により、電界を生成して、電子ドリフト電流は、駆動されて、リング状真空チャンバー500に沿って流れる閉じた経路を形成し、形成されるリング状を呈するプラズマ構造は、変圧器の単巻の二次側となって、カップリング効率は極めて高くなる。このため、このメカニズムも変圧器カップリングプラズマ(Transformer coupled plasma,TCP)と称する。しかし、リング状真空チャンバー500は、セラミックリング状シート504により電気バリアエリアを形成しないと、フェライトトランス磁気コア502が短絡して、リング状真空チャンバー500に誘導電界を生成することができず、なお、電気バリアエリアは十分に小さくないと、十分に強い電界を生成することができないため、プラズマを励起して安定に保持することができない。一方、フェライトトランス磁気コア502による強い電界は、金属製のリング状真空チャンバー500の影響により、セラミックリング状シート504で構成される電気バリアエリアに集中して、局所放電が偶に生成して、セラミックリング状シート504の破裂を起こして電気バリアを破壊し、更に、逆放電して駆動電源を破壊し、又は反応キャビティーの保護メッキ層の脱落を来す。
【0003】
Anderson氏は、このような方法について、米国特許第3,500,118号および第3,987,334号を提案した。米国特許第4,180,763号では、フェライト磁気コアTCPを照明の用途に適用する。Reinberg氏らは、米国特許第4,431,898号で、半導体プロセスにおいて、プラズマによりフォトレジストを除去する技術を提案した。
【0004】
このTCP技術は、ガスを解離して大量の活性粒子を供給するプラズマ源に適用した。ある高気圧、高ガス流量の応用には、高出力密度プラズマにより、作動ガスの化学活性化、又はガスの性質や成分の変更を行って、これらの化学活性化されたガスを真空処理システムに送ることが必要である。このような応用は、「遠隔プラズマ処理」と称し、(1)遠隔チャンバー洗浄と、(2)ポリマーの表面の遠隔チャンバー灰化と、(3)真空フォアラインでの下流の前洗浄および後処理ガスの削減と、を含む。これらの応用のうちの多くは、大流量(1 slm(standard liters per minute,1分あたりの標準リットル)より大きい)の電気陰性度プラズマ放電ガス(例えばO2、NF3、SF6)と、相対的に高いガス圧力(1 Torrより高く)とに関与する。このため、一般的に、高出力密度ではないと、作動ガスの高度な解離および活性化を実現することができない。
【0005】
高気圧および高流量の動作条件下で、多くのインダクタンスカップリングプラズマ源装置と同じように、TCPの誘導電磁界は、プラズマ放電を点火するには十分強力ではない。このため、その他の方式により、真空反応チャンバーに高強度の電界を導入して、プラズマ放電を誘発することが必要であり、例えば高電圧装置を増設し、又は電気的に絶縁された一部のキャビティーに高交流電圧を導入して、真空窓(例えば石英やセラミック)を介して局所的なRFグロー放電を生成するが、高電圧放電装置および真空窓の寿命により、可用性が制限される。しかし、高電圧放電装置は、依然として高気圧、大流量下でのTCPの安定した励起条件を提供するにはまだ十分ではないため、ある文献は、TCP駆動電源回路に共振回路を加えて高電圧(1~10kV)を生成して、高電圧放電装置に合わせて、エリア放電を有効に生成することにより、TCPに要求されるリング状のプラズマ構造を生成する。しかし、リング状プラズマを生成した後、依然として同じ共振電圧を使用すると、極めて大きい電流が生成してパワー素子を壊れる。このため、回路に高圧リレー(Relay)を増設することが必要であり、そうすると、プラズマを生成した後、電源回路は迅速に非共振回路に変換されて電圧を降下することにより、大電流による損壊を回避することができる。しかし、リレーが故障し、又は制御信号が遅延してリレーを即時に起動することができないと、パワー素子を保護することができず、ひいてはパワー素子を損壊する。別の方面では、高電圧を使用すると、真空キャビティーの絶縁部材が破壞されやすく、電気的短絡を来し、そしてキャビティーの壁面でのメッキ層が脱落して、プロセスキャビティーに流れ込んで粒子汚染を引き起こす。
【0006】
別の方面では、
図2に示すように、従来の技術を使用する、円筒形を呈する放電構造において、円筒600と別の金属602とに相対電圧を加え、適切な動作条件では、ホローカソード効果(hollow cathode effect)を発生することができるため、高速電子とイオンをより効率的に利用できるようになり、比較的低い電圧で高密度のプラズマを生成でき、すなわち、ホローカソード放電(hollow cathode discharge)である。このホローカソード放電効果によれば、高速電子は、静電気に制限され、且つ対向する陰極の表面の間に振動し(すなわち、言われるスイング電子(pendular electrons)を形成し)、このため、陰極降下(cathode-fall)エリアで得られた電子エネルギーの大部分はプラズマ内で散逸される。また、陰極の表面に入射して二次電子の射出を来すプラズマイオンの比率は増加する。研究結果によると、円筒形構造の放電特性は、電圧が小さいときに、電流が少なくなり、低密度の拡散グロー放電(diffuse glow)を呈し、電圧が増加すると、電流が増加して、放電が異常コロナ放電(abnormal glow discharge,AGD)に入り、電圧をさらに増加すると、このとき、ホローカソード放電効果が起こされ、電流の増加速度が大きくなることに従って、プラズマの密度も大幅に増加し、円筒形構造に大面積のプラズマエリアを形成する。ホローカソード放電による電圧は、円筒形構造の寸法および作動気圧によって決まるが、通常は数百ボルト(300V~500V)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、上記の従来のTCPプラズマ技術の欠点を改善することにある。その主な技術は、複数のホローカソード放電(hollow cathode discharge)構造とTCP変圧器カップリングプラズマの反応チャンバーを整合して複合式プラズマ源を構成することにある。本発明では、ホローカソード放電メカニズムを利用して、反応チャンバーにおいて、エリアを分けてプラズマを有効に生成した後、TCPメカニズムはリング状のプラズマ構造を形成しやすく、高出力を有効にカップリングして高密度のプラズマを生成することができる。そうすると、高電圧点火装置や共振作動を使用する必要がなくなると共に、ホローカソード放電メカニズムは、初期プラズマの励起と維持を担当するため、TCP弱電界の欠点を解決することもでき、プラズマの安定性を向上することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、リングチャンネルを有し、更に、リングチャンネルに位置する、ガス入り口と、出口と、を有する反応チャンバーと、
第1のコイルが巻き付けられている第1のフェライト磁気コアと、第2のコイルが巻き付けられている第2のフェライト磁気コアと、駆動電源と、を備え、反応チャンバーのリングチャンネルは、第1のフェライト磁気コアと第2のフェライト磁気コアとの間にある中空エリアを挿通する少なくとも一つのフェライトトランスと、
を備え、
駆動電源は、第1のコイルに第1の電圧を有する交流電源を加えて、第1のフェライト磁気コアに交番磁界を生成し、
第2のコイルは、交番磁界の誘導により第2の電圧が生成され、第2の電圧は反応チャンバーの少なくとも一つの中空円筒管に加えることにより、ホローカソード放電メカニズムによって、リングチャンネルにおける作動ガスを励起してプラズマを生成し、
反応チャンバーのリングチャンネルは、変圧器カップリングプラズマメカニズムによって、交番磁界の誘導によって誘導電界を生成することにより、プラズマを励起して、反応チャンバーのリングチャンネル内に、閉じた経路を有する電流を形成することにより、作動ガスをさらに解離してプラズマの密度を増加することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記反応チャンバーは、リング状キャビティーであり、少なくとも一つの中空キャビティーと、前記少なくとも一つの中空円筒管と、少なくとも一つのバリア構造と、を備え、前記バリア構造は、前記中空キャビティーと前記少なくとも一つの中空円筒管との間に少なくとも一つの隙間を形成して、少なくとも一つの開回路を成し、前記少なくとも一つの中空円筒管は、ダブル開口金属管と単一開口金属管とから構成されるグループから選ばれることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記反応チャンバーは、リング状キャビティーであり、複数の中空キャビティーと、複数の中空円筒管と、複数のバリア構造と、を備え、前記複数のバリア構造は、前記複数の中空キャビティーと前記複数の中空円筒管との間に隙間を複数形成して、複数の開回路を成すことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管はダブル開口金属管であり、前記ダブル開口金属管は前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することにより、前記リング状キャビティーを構成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記金属キャビティーは、二つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの上側と下側を構成し、前記ダブル開口金属管は、二つあり、前記リング状キャビティーの二つの側辺を構成し、前記ダブル開口金属管の両端は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記金属キャビティーは、四つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの四つのコーナーを構成し、前記ダブル開口金属管は、四つあり、それぞれ前記リング状キャビティーの四つの側辺を構成し、その両端が、前記バリア構造を介して、隣接する二つの前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管はダブル開口金属管および単一開口金属管であり、前記ダブル開口金属管と前記単一開口金属管は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記金属キャビティーは、二つあり、前記リング状キャビティーの上側と下側をそれぞれ構成し、前記ダブル開口金属管は、二つあり、前記リング状キャビティーの二つの側辺を構成し、前記単一開口金属管は、二つあり、それぞれ前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記中空キャビティーは金属キャビティーであり、前記中空円筒管は単一開口金属管であり、前記単一開口金属管は、前記バリア構造を介して前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記金属キャビティーは、二つあり、前記金属キャビティーは、それぞれ前記リング状キャビティーの上側と下側を構成し、前記単一開口金属管は、二つあり、それぞれ前記金属キャビティーと接続することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記第2のコイルは、前記交番磁界の誘導により前記第2の電圧が生成され、且つ前記第2の電圧は、並列であるように前記複数の中空円筒管に加えられ、前記第2の電圧の数値は、前記第1の電圧の数値とM/Nを掛けたものであり、Mは前記第2のコイルの巻き数であり、Nは前記第1のコイルの巻き数であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記第1のコイルが巻き付けられた前記第1のフェライト磁気コアは、変圧器の一次側とされ、前記反応チャンバーの前記リングチャンネルは、前記変圧器の二次側とされることにより、前記変圧器カップリングプラズマメカニズムを利用して、前記リングチャンネルに前記誘導電界を生成することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、更に、前記第2のコイルと前記中空円筒管との間に位置し、両方と電気的に接続する少なくとも一つのコントローラーを備え、前記コントローラーは、前記反応チャンバーの前記中空円筒管に供給する前記第2の電圧を制御するためのものであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記各バリア構造はセラミックリングを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記各バリア構造は、更に、シールリングを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記反応チャンバーは、アルマイト処理されたアルミニウム製品であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記交流電源の出力周波数の範囲は、100kHz~500kHzであることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記交流電源は、定電力または定電流であり、その出力電圧の範囲は300ボルト~500ボルトであることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記作動ガスの気圧は、0.5Torr~10Torrであることを特徴とする。
【0027】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、前記作動ガスのガス流量は、10-2slm~約102slmであることを特徴とする。
【0028】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の作動方法は、ホローカソード放電メカニズムにより、作動ガスは、ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源において、プラズマを形成し、変圧器カップリングプラズマメカニズムにより、エネルギーがプラズマとカップリングすることにより、プラズマは放電して電子ドリフト電流を生成して、作動ガスをより有効に解離して、プラズマの密度を増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法には、次のような効果がある。
(1)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、高気圧、高ガス流量下で、高出力、高密度のプラズマを生成することができる。
【0030】
(2)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、高電圧点火装置および共振作動を使用することが必要であるという欠点を無くすことができる。
【0031】
(3)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、TCP弱電界の欠点を解決することができ、プラズマの安定性を向上することもできる。
【0032】
(4)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、必要な作動電圧が小さくなり、真空反応キャビティーに対する破壊を大幅に減少することができ、寿命を延ばすこともできる。
【0033】
本発明の技術的特徴および達成し得る技術的効能の理解を深めるために、より良い実施例と詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来の技術に係るリング状低電界プラズマ源のリング状真空チャンバーを示す模式図であって、
図1(A)は斜視図であり、
図1(B)は断面図である。
【
図2】従来の技術に係る円筒形放電構造を示す断面図である。
【
図3】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の作動を示すフローチャートである。
【
図4】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第1の実施の形態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第2の実施の形態を示す断面図である。
【
図6】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第3の実施の形態を示す断面図である。
【
図7】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第4の実施の形態を示す断面図である。
【
図8】本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源のシステムの作動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0036】
さらに、明細書全体および実用新案登録請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0037】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0038】
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0039】
本発明に係る複合式プラズマ源とその作動方法は、ホローカソード放電(Hollow Cathode Discharge)メカニズムと変圧器カップリングプラズマ(Transformer Coupled Plasma,TCP)メカニズムを合わせる。
図3は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の作動を示すフローチャートである。
図3に示すように、本発明に係る作動方法は、ホローカソード放電工程(ステップS10)を行うことにより、作動ガスにプラズマを生成し、変圧器カップリングプラズマ工程(ステップS20)を行うことによって、エネルギーを有効にカップリングすることにより、このプラズマが放電して電子ドリフト電流を生成して、ひいては作動ガスをより有効に解離して、高出力、高密度のプラズマを生成する。本発明では、ホローカソード放電メカニズムを利用して、反応チャンバーにおいて、エリアを分けて作動ガスにプラズマを有効に生成した後、TCPメカニズムはリング状プラズマ構造を形成しやすく、高出力を有効にカップリングして、高密度のプラズマを生成する。本発明によれば、高気圧、高ガス流量(例えば、1Torrと10slmより大きい)下で、高出力、高密度のプラズマを生成することができる。
【0040】
図4から
図8を参照する。
図4は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第1の実施の形態を示す断面図である。
図5は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第2の実施の形態を示す断面図である。
図6は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第3の実施の形態を示す断面図である。
図7は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源の第4の実施の形態を示す断面図である。
図8は本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源のシステムの作動を示す模式図である。本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源100は、反応チャンバー10と、少なくとも一つのフェライトトランス30と、を備える。反応チャンバー10は、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーであり、中空キャビティー14と、中空円筒管15と、バリア構造16と、を備える。反応チャンバー10は、ガス入り口12と、出口13と、を備える。ガス入り口12と出口13は、それぞれ反応チャンバー10のリングチャンネル11の両端に位置する。作動ガス20は、ガス入り口12を経由して、反応チャンバー10のリングチャンネル11に導入され、且つ解離された作動ガス(すなわち、プラズマ22)は、出口13を経由して反応チャンバー10の外側に導出される。上記のリングチャンネル11とリング状キャビティーとの形状は、リング状を呈することに限定されず、正方形や長方形などの、中空エリアを有するサラウンド形状を呈してもよい。また、本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源100の反応チャンバー10は、例えばプロセスチャンバー(図示せず)と接続し、又は整合することにより、出口13を経由して、前記プロセスチャンバーにプラズマ22を供給することができる。
【0041】
本発明で使用されている作動ガス20の種類は特に限定されず、実際のプロセスの必要によって決定される。例えば、作動ガス20は、例えば不活性ガス、反応ガスやその組合せを含む。本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源100の特徴は、ホローカソード放電メカニズムと変圧器カップリングプラズマメカニズムを合わせることにより、高電圧の電極を増設し、又は高交流電圧を導入して局所的なRFグロー放電を生成することが必要なくなり、従来の高気圧、大流量の作動条件下で、TCPメカニズムの誘導電磁界の強度が不足なため、プラズマ放電を点火することができないという問題を解決できることである。本発明は、外部の高電圧放電装置により局所的なRFグロー放電を生成する必要がないため、従来のTCPのように、作動の可用性が高電圧放電装置および真空窓(例えば石英やセラミック)の寿命に制限されるという問題はない。本発明で使用されている作動ガス20の気圧の範囲は、約10-3Torr~約103Torrであり、且つ上記の気圧範囲における任意の数値および範囲であってもよく、例えば、約0.5Torr~約10Torrであり、又は約0.5Torr~約4Torrであってもよく、気圧の大きさは、作動ガスの種類やガス流量によって調整することができる。作動ガス20のガス流量の範囲は、約10-2slm~約102slmであり、且つ上記のガス流量の範囲における任意の数値および範囲であってもよく、例えば約5slm~約20slmであってもよく、ガス流量の大きさは、作動ガスの種類や気圧によって調整することができる。本発明の構造の設計によれば、作動ガス20の気圧は1Torrより高くでき、ガス流量は10slmより多くできるため、大流量(1slmより多く)及び相対的に高いガス圧力(1Torrより高く)に関与する電気陰性度プラズマ放電ガス(例えばO2、NF3、SF6)に適用することができ、これにより、作動ガス20の高解離および活性化の要件を満たす。
【0042】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源100のフェライトトランス30は、フェライトトランス磁気コア32、34と、駆動電源36と、を備える。第1のフェライト磁気コア32bは、第2のフェライト磁気コア34bと接続してリング状のフェライト磁気コアを構成する。フェライトトランス磁気コア32は、第1のコイル32aが巻き付けられた第1のフェライト磁気コア32bを備える。フェライトトランス磁気コア34は、第2のコイル34aが巻き付けられた第2のフェライト磁気コア34bを備える。反応チャンバー10のリングチャンネル11は、第1のフェライト磁気コア32bと第2のフェライト磁気コア34bとの間にある中空エリア35を挿通する。例えば、
図4から
図7に示す実施の態様のように、反応チャンバー10のリングチャンネル11は、リング状のフェライト磁気コアの中空エリア35を挿通して周る。フェライトトランス30の駆動電源36は、フェライトトランス磁気コア32の第1のコイル32aと電気的に接続し、第1のコイル32aに第1の電圧(V
1)を有する交流電源を直接に加えることにより、第1のフェライト磁気コア32bに交番磁界を生成する。
【0043】
図4から
図7に示す実施の態様のように、本発明に係る反応チャンバー10は、少なくとも一つの中空キャビティー14と、少なくとも一つの中空円筒管15と、少なくとも一つのバリア構造16とを互いに連通するように接続して、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーを構成する。バリア構造16は、中空キャビティー14と中空円筒管15との間に位置し、中空キャビティー14と中空円筒管15との間に少なくとも一つの隙間を形成するためのものである。バリア構造16により、回路に開回路を少なくとも一つ形成することができる。本発明の作動方式の説明の便宜のために、本発明では、反応チャンバー10は、複数の中空キャビティー14と、複数の中空円筒管15と、複数のバリア構造16と、を備えることを例として説明した。複数のバリア構造16は、複数の中空キャビティー14と複数の中空円筒管15との間に位置して、複数の隙間を形成することにより、複数の開回路を形成する。反応チャンバー10は、例えばアルマイト処理されたアルミ製の反応チャンバーとするにより、腐食性活性粒子(例えばNF
3、SF
6プラズマ)の大量流に適している。バリア構造16は、例えば、セラミックリング16aとシールリング16bの組合せ構造を備えるが、これに限定されず、中空キャビティー14に開回路を形成することにより、反応チャンバー10の真空気密性を維持することができれば、全て本発明の保護範囲に属する。シールリング16bは、例えば、真空気密性を提供するための着脱可能なOリングなどの弾性体であり、又は永久的な真空気密性を与える固定ジョイントである。しかし、反応チャンバー10は、真空気密性を保持することができれば、オプションでシールリング16bを省略してもよい。
【0044】
本発明では、反応チャンバー10は、例えば複数のキャビティー(すなわち、上記の中空キャビティー14及び中空円筒管15)を接続して構成され、中空キャビティー14と中空円筒管15との材料は、同じでも異なってもよいが、説明の便宜のために、本発明では、同じ材料を採用する、中空キャビティー14と中空円筒管15とを例として説明する。本発明では、例えばアルミ製の反応チャンバーに対してアルマイト処理を行って保護膜を形成することにより、アルマイト処理されたアルミ製の反応チャンバーを得る。しかし、本発明に係る反応チャンバー10の材料は、これに限定されず、プラズマ22の生成に適している限り、あらゆる材料が本発明の保護範囲に属する。例えば、反応チャンバー10は導電性材料で構成され、又は導電性材料および誘電材料で構成される。適切な導電性材料は、例えばアルミ、銅、ニッケル及び鉄鋼などの金属である。或いは、反応チャンバー10の材料は、コーティングされた金属(例えば陽極酸化処理されたアルミやニッケルをメッキされたアルミ)を採用してもよい。また、反応チャンバー10が導電性キャビティーと誘電材料製のキャビティーを組み付けて構成される場合には、この誘電材料製のキャビティーで上記のバリア構造16と取り替えてもよい。
【0045】
反応チャンバー10のリングチャンネル11は、第1のフェライト磁気コア32bと第2のフェライト磁気コア34bとの間にある中空エリア35を挿通する。駆動電源36は、フェライトトランス30の第1のコイル32aに、第1の電圧(V1)を有する交流電源を直接に加える(すなわち、フェライトトランス磁気コア32を一次側回路或いは主回路とし)ため、変圧器カップリングプラズマメカニズムによって、反応チャンバー10をフェライトトランス30の二次側とすることができる。すなわち、作動ガスがイオン化されたと、リングチャンネル11において、生成されたプラズマ22はフェライトトランス30の二次回路とされるため、第1のフェライト磁気コア32bにおいて、生成された上記の交番磁界の誘導により、反応チャンバー10のリングチャンネル11において、リング状電界が生成される。第1のコイル32aの巻き数はNである場合に、Nは例えば任意の数値であり、反応チャンバー10において、誘導された電圧は駆動電源36の1/Nである。なお、この電圧は、反応チャンバー10の各セクションのキャビティーが接続されている隙間に均等に分配される(すなわち、バリア構造16による開回路の位置)。隙間が八つあるものを例にすると、この電圧は駆動電源36の電圧の1/8Nである。この隙間電圧により、作動ガス20を直接に励起してプラズマ22を生成することが難しいため、本発明は、ホローカソード放電メカニズムにより、プラズマ22の励起を補助する。
【0046】
次に、
図8、
図3から
図7を参照する。駆動電源36は、第1の電流I
1を入力して、フェライトトランス30の一次側コイル(すなわち、第1のコイル32a)に第1の電圧(V
1)を有する交流電源を直接に加えるため、フェライトトランス30の二次側コイル(すなわち、第2のコイル34a)は、交番磁界の磁束Fの誘導により、第2の電流I
2及び第2の電圧(V
2)が生成される。本発明の特徴は、反応チャンバー10に第2の電圧(V
2)を加え、例えば、反応チャンバー10の各セクションのキャビティーに、同じ第2の電圧(V
2)を加えて、ホローカソード放電メカニズムにより、リングチャンネル11における作動ガス20を励起してプラズマ22を生成することにある。上記の第2の電圧(V
2)は、例えば複数の中空円筒管15は並列に接続されているため、同じ電圧を有し、第2の電圧(V
2)の数値は、第1の電圧(V
1)の数値と(M/N)を掛けたものである。Mは第2のコイル34aの巻き数であり、Nは第1のコイル32aの巻き数であり、MとNとは、例えば任意の数値であり、
である。適切な巻き数比を採用すると、この第2の電圧V
2は例えば約500ボルトを超え、ひいてはホローカソード放電の物理的メカニズムにより、中空円筒管15において、安定なプラズマを励起する。本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源100は、オプションで少なくとも一つのコントローラー40を備える。コントローラー40は、例えば第2のコイル34aと中空円筒管15との間に位置し、両方と電気的に接続し、実際の必要によって、オプションでそれに対応する制御信号(例えば
図4及び
図5に示す制御信号C
1~C
4や
図6及び
図7に示す制御信号C
1~C
2)を生成する。これにより、上記の誘導によって得られた第2の電圧(V
2)を制御して、それに対応する複数の中空円筒管15の反応チャンバー10の複数のエリア(例えばエリアA
1~A
4)に供給し、ホローカソード放電メカニズムによって、リングチャンネル11における作動ガス20を励起してプラズマ22を生成する。本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の上記の内容に従って、反応チャンバー10に第2の電圧(V
2)を供給する方法と、コントローラー40により第2の電圧(V
2)を制御して反応チャンバー10に供給する方法とを理解できるはずであり、ひいてはホローカソード放電メカニズムを実行することができるはずであるため、説明を省略した。
【0047】
本発明の特徴は、変圧器カップリングプラズマメカニズムによる上記の交番磁界の誘導により、反応チャンバー10のリングチャンネル11において、誘導電界を生成して、ホローカソード放電メカニズムによって生成されたプラズマ22を励起することができ、ひいては反応チャンバー10のリングチャンネル11において、閉じた経路を有する電流(電子ドリフト電流)を形成し、そして作動ガス20を更に解離してプラズマ22の密度を増加することにある。簡単に説明すると、本発明では、ホローカソード放電メカニズムを利用して、反応チャンバー10において、エリアを分けてプラズマ22を有効に生成することにより、変圧器カップリングプラズマメカニズムによれば、リング状プラズマ構造を形成しやすくなり、高出力を有効にカップリングして高密度のプラズマを生成することができる。
【0048】
本発明の
図4から
図7に示す例では、反応チャンバー10の複数の中空円筒管15は、例えばダブル開口金属管18と単一開口金属管19で構成されるグループから選ばれる。すなわち、中空円筒管15は、オプションでダブル開口金属管18、単一開口金属管19、又はダブル開口金属管18及び単一開口金属管19である。しかし、中空円筒管15は、何れかの形状、材料や寸法を有しても、変圧器カップリングプラズマメカニズムを行うことができれば、全て本発明の保護範囲に属する。上記のダブル開口金属管18とは、両端に開口がそれぞれ設けられている金属管を指す。上記の単一開口金属管19でとは、両端のうちの一方に開口が設けられており、両端のうちの他方が閉じられた金属管を指す。
【0049】
図4に示す第1の実施の態様を例とする場合、複数の中空キャビティー14は四つの金属キャビティー17であり、複数の中空円筒管15は四つのダブル開口金属管18であり、バリア構造16は、八つあり、八つの隙間を構成することができる。四つの金属キャビティー17は、それぞれリング状キャビティーの四つのコーナーとされ、例えば
図4に示す形状を呈する。四つのダブル開口金属管18は、それぞれリング状キャビティーの四つの側辺とされ、なお、八つのバリア構造16は、隣接する金属キャビティー17とダブル開口金属管18との間にそれぞれ位置することにより、これらを合わせると、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーが構成される。
【0050】
図5に示す第2の実施の形態では、複数の中空キャビティー14は二つの金属キャビティー17であり、複数の中空円筒管15は二つのダブル開口金属管18及び二つの単一開口金属管19であり、複数のバリア構造16は、六つあり、これにより、回路全体に4つの隙間を形成することができる。二つの金属キャビティー17は、それぞれリング状キャビティーの上側と下側を構成し、例えば
図5に示す形状を呈する。二つのダブル開口金属管18はリング状キャビティーの二つの側辺を構成し、二つの単一開口金属管19は、それぞれ二つの金属キャビティー17の側辺に位置し、なお、六つのバリア構造16は、隣接する金属キャビティー17とダブル開口金属管18との間と、金属キャビティー17と単一開口金属管19との間とにそれぞれ位置することにより、これらを合わせると、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーが構成される。第1のコイル32aの巻き数はNである場合に、反応チャンバー10での誘導による電圧は駆動電源36の1/Nであり、なお、この電圧は各セクションのキャビティーが接続されている隙間に均等に分配され(すなわち、バリア構造16の位置)、隙間が四つあるものを例にすると、この電圧は駆動電源36の電圧の1/4Nである。
【0051】
図6に示す第3の実施の態様を例とする場合、複数の中空キャビティー14は二つの金属キャビティー17であり、複数の中空円筒管15は二つのダブル開口金属管18であり、複数のバリア構造16は四つある。すなわち、4セットのセラミックリング16aとシールリング16bとを含む組合せ構造は、四つの隙間を構成する。二つの金属キャビティー17は、それぞれリング状キャビティーの上側と下側を構成し、例えば
図6に示す形状を呈し、二つのダブル開口金属管18は、それぞれリング状キャビティーの二つの側辺を構成し、なお、四つのバリア構造16は、隣接する金属キャビティー17とダブル開口金属管18との間にそれぞれ位置することにより、これらを合わせると、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーが構成される。
【0052】
図7に示す第4の実施の形態では、複数の中空キャビティー14は二つの金属キャビティー17であり、複数の中空円筒管15は複数の単一開口金属管19であり、例えば二つの単一開口金属管19である。また、複数のバリア構造16は、四つあり、回路全体に二つの隙間を構成することができる。二つの金属キャビティー17は、それぞれリング状キャビティーの周りを構成し、例えば
図7に示す形状を呈し、二つの単一開口金属管19は、それぞれ二つの金属キャビティー17の側辺に位置し、そのうちの二つのバリア構造16は、それぞれ金属キャビティー17と単一開口金属管19との間に位置し、残りの二つのバリア構造16は、それぞれ金属キャビティー17に位置することにより、これらを合わせると、リングチャンネル11を有するリング状キャビティーが構成される。複数の単一開口金属管19は、二つの金属管を例として説明したが、単一開口金属管19の数量は、実際の必要によって、オプションで二つより多くてもよく、例えば四つあり、又は四つ以上ある。
【0053】
簡単に説明すると、本発明に係る変圧器カップリングプラズマ技術により、プラズマ22をリング状構造に形成することができるため、エネルギーをプラズマ22に伝達することができる。これにより、反応チャンバー10におけるリング状構造プラズマは、変圧器がカップリングする二次側を構成して、誘導エネルギー応答を行う。本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源は、ホローカソード放電メカニズムを利用して、反応チャンバー10において、生成された電界により、高気圧、高ガス流量(気圧は1Torrより高くて、ガス流量は1slmより多い)下で安定なプラズマ22を励起して、十分な自由電子を提供し、フェライトトランス30の誘導によって生成される電界に駆動されて加速され、反応チャンバー10内に、閉じた経路を有する電子ドリフト電流を形成することにより、ガスを更に有効に解離して高密度のプラズマを生成する。変圧器カップリング技術によれば、プラズマ22にエネルギーを極めて有効に伝達することができるが、多くのインダクタンスカップリングプラズマ装置と同じように、誘導電界の強度(10V/cm)は不十分なため、作動ガス20を分解してリング状プラズマ構造を形成することができない。特に、プラズマ22を点火するという目的は、高気圧、高ガス流量下で、高電圧装置(1kVより高い)により、反応チャンバー10(すなわち、真空チャンバー)において、初期放電を生成することによっても達成できるが、高電圧放電装置の寿命および可用性が制限され、且つ反応チャンバー10の真空反応キャビティーを破壞しやすい。特に、変圧器カップリングプラズマは、低電界強度のメカニズムに属し、気圧または気流が乱されると、例えばプロセスが作動ガスの流量を変更するときに、プラズマは不安定になって、リング状プラズマ構造を破壞しやすく、ひいてはプラズマが消える事態は起こる。このため、本発明では、反応チャンバー10の構造を利用して、セグメントに分けてホローカソードプラズマメカニズムと結合することにより、リング状プラズマ構造の形成が容易となると共に、気圧または気流が乱れるときに、リング状プラズマ構造の安定性を向上することもできる。従来の技術に比べて、本発明によれば、必要な作動電圧がより小さくなり、真空反応キャビティーの破壞を大幅に減少することができ、反応チャンバー10の寿命を延ばすことができる。
【0054】
また、本発明に係るTCPプラズマを駆動する電源(すなわち、駆動電源36)は、例えば交流電源と変圧器で構成される。駆動電源36が交流電源であることを例とする場合、採用される交流電源の周波数は、プラズマの駆動の適合性、パワー素子の耐電圧と耐電流、及びフェライトトランス磁気コア32、34の損失によって、適切に選ばれ、その範囲は例えば約100kHz~約500kHzである。交流電源は定電力または定電流で動作可能である。出力電圧の範囲は、例えば約300ボルト~約500ボルトであり、又は数百ボルトのうちの任意の数値や任意の範囲(例えば約300ボルト~約350ボルト)である。従来の技術において、交流電源の負荷インピーダンスは、プラズマを励起する過程中に、低密度のプラズマから安定した高密度プラズマへの変化は極めて大きく、パワー素子にとって大きな課題となる。しかし、本発明によれば、初期のホローカソード放電の強電界と高効率により、一定密度のプラズマを励起することができるため、負荷インピーダンスの動的な変化を大幅に減少することができ、パワー要素の故障確率を降下することができる。そして、従来の技術のように、共振回路と非共振回路が相互作用する方式を採用することが必要なくなるため、本発明によれば、回路の複雑度を降下して、安定性および可用性を向上することができる。
【0055】
本発明に係るホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法によれば、次のような効果がある。
(1)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、高気圧、高ガス流量下で、高出力、高密度のプラズマを生成することができる。
【0056】
(2)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、高電圧点火装置および共振作動を使用することが必要であるという欠点を無くすことができる。
【0057】
(3)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、TCP弱電界の欠点を解決することができ、プラズマの安定性を向上することもできる。
【0058】
(4)ホローカソード放電構造と変圧器カップリングプラズマ構造を合わせることにより、必要な作動電圧が小さくなり、真空反応キャビティーに対する破壊を大幅に減少することができ、寿命を延ばすこともできる。
【0059】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、添付の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 反応チャンバー
11 リングチャンネル
12 ガス入り口
13 出口
14 中空キャビティー
15 中空円筒管
16 バリア構造
16a セラミックリング
16b シールリング
17 金属キャビティー
18 ダブル開口金属管
19 単一開口金属管
20 作動ガス
22 プラズマ
30 フェライトトランス
32、34 フェライトトランス磁気コア
32a 第1のコイル
32b 第1のフェライト磁気コア
34a 第2のコイル
34b 第2のフェライト磁気コア
35 中空エリア
36 駆動電源
40 コントローラー
100 ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源
500 リング状真空チャンバー
502 フェライトトランス磁気コア
504 セラミックリング状シート
506 ガス入り口
508 出口
600 円筒
602 金属
A1~A4 エリア
C1~C4 制御信号
F 磁束
M、N 巻き数
V1 第1の電圧
V2 第2の電圧
I1 第1の電流
I2 第2の電流
S10 ホローカソード放電工程を行う
S20 変圧器カップリングプラズマ工程を行う
【要約】
【課題】ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法を提供する。
【解決手段】ホローカソード放電補助用変圧器カップリングプラズマ源とその作動方法は、ホローカソード放電メカニズムと変圧器カップリングプラズマメカニズムを合わせる。変圧器カップリングプラズマ源は、リングチャンネルを有する反応チャンバーと、フェライトトランスと、を備え、ホローカソード放電メカニズムは、まず、反応チャネル内の領域を分割して、作動ガスのプラズマの生成をより効率的にすることにより、変圧器カップリングプラズマメカニズムはリング状プラズマを形成しやすくなって、高気圧、高ガス流量下で、高出力かつ高密度のプラズマを生成することができる。
【選択図】
図8