(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】トカマクプラズマ容器
(51)【国際特許分類】
G21B 1/13 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G21B1/13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132247
(22)【出願日】2023-08-15
(62)【分割の表示】P 2020572913の分割
【原出願日】2019-06-21
【審査請求日】2023-08-17
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バクストン、 ピーター
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス、 ダニエル イグレシアス
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-34188(JP,A)
【文献】特表2017-514120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0046688(US,A1)
【文献】特表2012-512383(JP,A)
【文献】H.Y. Guo et al.,Effect of magnetic geometry on divertor asymmetry and access to high confinement mode in EAST,Journal of Nuclear Materials,2013年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1/00-1/25
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカマクプラズマ容器であって、
トロイダルプラズマチャンバと、
複数のポロイダル磁場コイルと、
上側ダイバータアセンブリと、
下側ダイバータアセンブリと
を含み、
前記複数のポロイダル磁場コイルは、実質対称なプラズマコア並びに上側及び下側ヌルを有するポロイダル磁場を与えるように構成され、前記プラズマコアの外側のスクレイプオフ層におけるイオンが、前記上側及び下側ヌルの一方を通過する磁場によって、前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリそれぞれのダイバータ表面へと向けられ、
前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、
液体金属入口と、
前記液体金属入口の下に配置された液体金属出口と
を含み、
使用時に液体金属が、前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリの、少なくとも一つのダイバータ表面を経由して前記液体金属入口から前記液体金属出口へ流れるように構成され、
前記トカマクプラズマ容器は、液体金属を各液体金属入口まで、対応する流量で供給するべく構成された液体金属供給手段を含み、
前記上側ダイバータアセンブリは、液体金属が流れる一般に下向きの少なくとも一つのダイバータ表面を含み、
前記ダイバータ表面は一定角度に存在することにより、前記液体金属供給手段が液体金属を、対応する流量で前記ダイバータ表面に供給するときに、前記液体金属の前記ダイバータ表面に対する濡れによって、前記ダイバータ表面から液体金属が落下することが防止される、トカマクプラズマ容器。
【請求項2】
前記ポロイダル磁場コイルは対称磁場を与えるように構成される、請求項1に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項3】
前記ポロイダル磁場コイルは、上向きダイバータ表面との相互作用を最適化するべく前記プラズマコアの外側では
、前記トカマクプラズマ容器の赤道面において非対称な磁場を与えるように構成される、請求項1に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項4】
前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、径方向機内ダイバータ表面及び径方向機外ダイバータ表面を含み、
前記液体金属入口及び液体金属出口は、前記液体金属が少なくとも対応する径方向機外ダイバータ表面を経由して流れるように位置決めされ、
前記径方向機内ダイバータ表面は、プラズマのエンベロープの径方向内側に存在するスクレイプオフ層からイオンを受けるように位置決めされ、
前記径方向機外ダイバータ表面は、前記プラズマのエンベロープの径方向外側に存在するスクレイプオフ層からイオンを受けるように位置決めされる、請求項1から3のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項5】
各ダイバータアセンブリが、前記径方向機内ダイバータ表面及び径方向機外ダイバータ表面のそれぞれに対し、対応する液体金属入口及び液体金属出口を含む、請求項4に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項6】
前記径方向機内ダイバータ表面は固体金属から形成される、請求項4に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項7】
前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、
機内ストライクポイントに配置された機内ストライクポイントダイバータ表面と、
機外ストライクポイントに配置された機外ストライクポイントダイバータ表面と、
前記機内ストライクポイントダイバータ表面の径方向内側に配置された機内遠方ダイバータ表面と、
前記機外ストライクポイントダイバータ表面の径方向外側に配置された機外遠方ダイバータ表面と、
前記機内ストライクポイントダイバータ表面と機外ストライクポイントダイバータ表面との間に配置された少なくとも一つのプライベートダイバータ表面と
を含み、
各機内遠方ダイバータ表面、各機外遠方ダイバータ表面、又は各プライベートダイバータ表面は、液体金属が前記機内遠方ダイバータ表面、前記機外遠方ダイバータ表面、又は前記少なくとも一つのプライベートダイバータ表面を経由するが前記機内ストライクポイントダイバータ表面及び機外ストライクポイントダイバータ表面は経由しないで流れるように配列された対応する液体金属入口及び液体金属出口を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項8】
前記ダイバータ表面が鏡映対称に配列されることにより、前記トカマクプラズマ容器の赤道面において、前記上側ダイバータアセンブリのダイバータ表面が、前記下側ダイバータアセンブリのダイバータ表面の鏡映となる、請求項1から7のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項9】
前記一般に下向きのダイバータ表面はチャネルを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項10】
前記ダイバータ表面のうちの少なくとも一つのダイバータ表面の液体金属入口が、対応する液体金属出口の径方向外側に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項11】
前記液体金属はリチウム又は錫である、請求項1から10のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項12】
トカマクプラズマ容器であって、
トロイダルプラズマチャンバと、
複数のポロイダル磁場コイルと、
上側ダイバータアセンブリと、
下側ダイバータアセンブリと
を含み、
前記複数のポロイダル磁場コイルは、実質対称なプラズマコア並びに上側及び下側ヌルを有するポロイダル磁場を与えるように構成され、前記プラズマコアの外側のスクレイプオフ層におけるイオンが、前記上側及び下側ヌルの一方を通過する磁場によって、前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリそれぞれのダイバータ表面へと向けられ、
前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、
液体金属入口と、
前記液体金属入口の下に配置された液体金属出口と
を含み、
使用時に液体金属が、前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリの、少なくとも一つのダイバータ表面を経由して前記液体金属入口から前記液体金属出口へ流れるように構成され、
前記上側ダイバータアセンブリ及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、
機内ストライクポイントに配置された機内ストライクポイントダイバータ表面と、
機外ストライクポイントに配置された機外ストライクポイントダイバータ表面と、
前記機内ストライクポイントダイバータ表面の径方向内側に配置された機内遠方ダイバータ表面と、
前記機外ストライクポイントダイバータ表面の径方向外側に配置された機外遠方ダイバータ表面と、
前記機内ストライクポイントダイバータ表面と機外ストライクポイントダイバータ表面との間に配置された少なくとも一つのプライベートダイバータ表面と
を含み、
各機内遠方ダイバータ表面、各機外遠方ダイバータ表面、及び/又は各プライベートダイバータ表面は、液体金属が前記機内遠方ダイバータ表面、前記機外遠方ダイバータ表面、又は前記少なくとも一つのプライベートダイバータ表面を経由するが前記機内ストライクポイントダイバータ表面及び機外ストライクポイントダイバータ表面は経由しないで流れるように配列された対応する液体金属入口及び液体金属出口を含む、トカマクプラズマ容器。
【請求項13】
前記ポロイダル磁場コイルは対称磁場を与えるように構成される、請求項12に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項14】
前記ポロイダル磁場コイルは、上向きダイバータ表面との相互作用を最適化するべく前記プラズマコアの外側では、前記トカマクプラズマ容器の赤道面において非対称な磁場を与えるように構成される、請求項12に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項15】
液体金属を各液体金属入口まで、対応する流量で供給するべく構成された液体金属供給手段を含む、請求項
12から
14のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項16】
液体金属が流れる各ダイバータ表面が一般に上向きである、請求項
12から
15のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項17】
前記上側ダイバータアセンブリは、液体金属が流れる少なくとも一つのダイバータ表面を含み、
前記ダイバータ表面は一般に下向きであり、一定角度に存在することにより、前記液体金属供給手段が液体金属を、対応する流量で前記ダイバータ表面に供給するときに、前記液体金属の前記ダイバータ表面に対する濡れによって、前記ダイバータ表面から液体金属が落下することが防止される、請求項
15に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項18】
前記ダイバータ表面が鏡映対称に配列されることにより、前記トカマクプラズマ容器の赤道面において、前記上側ダイバータアセンブリのダイバータ表面が、前記下側ダイバータアセンブリのダイバータ表面の鏡映となる、請求項
17に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項19】
前記一般に下向きのダイバータ表面はチャネルを含む、請求項
17又は
18に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項20】
前記ダイバータ表面
のうちの少なくとも一つの
ダイバータ表面の液体金属入口が、対応する液体金属出口の径方向外側に配置される、請求項
12から
19のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項21】
前記液体金属はリチウム又は錫である、請求項
12から
20のいずれか一項に記載のトカマクプラズマ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトカマクプラズマチャンバに関し、詳しくはトカマクプラズマチャンバのダイ
バータに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイバータは、トカマクプラズマ容器の中のデバイスであり、トカマクが動作している
間に、プラズマから廃棄材及び電力を除去することを可能にする。廃棄材は、磁気的に閉
じ込められたプラズマコアから粒子が拡散するときに自然に生じる。廃棄粒子は、燃料(
ジュウテリウム及びトリチウム)、核融合生成物(ヘリウム灰)、及び壁から放出される
より重いイオンの組み合わせである。プラズマを閉じ込めるべく、トカマクは磁場を利用
する。しかしながら、粒子はゆっくりかつランダムに拡散し、最終的に、高流束のイオン
に耐えるように構成される複数のダイバータ表面の一つに衝突する。
【0003】
典型的なトカマクの一側面を通るポロイダル断面が
図1に示される。トカマク100は
、トロイダルプラズマチャンバ101を含む。ポロイダル磁場コイルは、(電流を搬送し
ている)プラズマを閉じ込めるポロイダル磁場を生成する。プラズマ粒子、乱流、波又は
他のそのような現象の間に衝突が存在しなければ、(荷電粒子から作られる)プラズマは
、(一定のポロイダル磁束113の線として表すことができる)磁力線に効果的に結び付
けられる。プラズマは、「プラズマコア」内の一定ポロイダル磁束の線上に閉じ込められ
るといわれる。これは、一定磁束の線が閉じているからであり、いわゆる「閉磁束面」だ
からである。衝突及び他のそのようなプロセスを通して、プラズマは、プラズマコアから
ゆっくり拡散する。一端(通常は下端)にヌル点112を有する「最終閉磁束面」111
が、閉じ込められたコアのエッジを画定する。プラズマコアのすぐ外側の磁束線(「スク
レイプオフ層」)114は、ヌルより下にある機外の(すなわち径方向外側の)ダイバー
タ表面121(この例においてはプラズマチャンバーの下部のチャンネルの底に配置され
る)、及び機内の(すなわち径方向内側の)ダイバータ表面122という2つの表面と交
差する。これらの表面上に廃棄粒子及びパワーが堆積され、その廃棄粒子及びパワーの大
部分は機外のダイバータ表面に与えられる(機内と機外との正確な分離は、スクレイプオ
フ層内の乱流物理学に依存する)。ダイバータ表面は、(スパッタリング及び他のそのよ
うなエロージョンプロセスを介してプラズマが高原子番号イオンによって汚染されるのを
回避するべく)比較的低い原子番号の元素から構成される。これらの元素は、(トリチウ
ムがダイバータ内に保持されるのを回避するべく)金属とされる。適切な金属は、タング
ステン、モリブデン、ベリリウム、鉛リチウム又はリチウムを含む。
【0004】
第2の典型的なトカマクを通る断面が
図2に示される。このトカマクは「ダブルヌル」
ダイバータを有する。「ダブルヌル」ダイバータの原理は、ヌル211、212及び対応
するダイバータ表面221、222、223、224がプラズマコア210の上側エッジ
及び下側エッジの双方に設けられることを除いて、
図1における「シングルヌル」ダイバ
ータと同じである。ダブルヌル構成の利点は、各ダイバータ表面上の熱流束が、シングル
ヌル構成が経験する熱流束のほぼ半分となる点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/063344(A1)号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の一側面によれば、トカマクプラズマ容器が与えられる。トカマクプラズマ容器
は、トロイダルプラズマチャンバ、複数のポロイダル磁場コイル、上側ダイバータアセン
ブリ、及び下側ダイバータアセンブリを含む。複数のポロイダル磁場コイルは、実質対称
なプラズマコア並びに上側及び下側ヌルを有するポロイダル磁場を与えるように構成され
、当該プラズマコアの外側のスクレイプオフ層におけるイオンが、上側及び下側ヌルの一
方を通過する磁場によって、上側及び下側ダイバータアセンブリそれぞれのダイバータ表
面へと向けられる。上側及び下側ダイバータアセンブリはそれぞれが、液体金属入口と、
当該液体金属入口の下に配置された液体金属出口とを含む。上側及び下側ダイバータアセ
ンブリはそれぞれが、使用時に液体金属が、ダイバータアセンブリの少なくとも一つのダ
イバータ表面を経由して液体金属入口から液体金属出口へ流れるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シングルヌルダイバータを有するトカマクの断面である。
【
図2】ダブルヌルダイバータを有するトカマクの断面である。
【
図3】液体金属ダイバータ表面を有するトカマクの断面である。
【
図4】液体金属ダイバータ表面の模式的な例示である。
【
図5】液体金属機外ダイバータ表面及び固体機内ダイバータ表面を有する代替トカマクの断面である。
【
図6】液体ダイバータ表面に対して可能な角度の典型的な例示である。
【
図7】液体金属ダイバータ表面を有する代替トカマクの断面である。
【
図8】液体金属ダイバータ表面を有するトカマクのダイバータアセンブリの断面である。
【
図9】液体金属循環システムの模式的な例示である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
流動液体金属ダイバータ表面を、プラズマ容器内の温度で液体となる金属を使用するこ
とによって与えることができる。かかる表面は、プラズマにおける過渡的な高熱流束事象
(例えばエッジ局在モード(ELM))から迅速に回復し得る。しかしながら、流動液体
金属ダイバータは、ダブルヌル構成で与えることが困難である。液体金属は、ダイバータ
の上向き表面に与えられる(その一方、先行技術のダブルヌルダイバータにとっては上側
ダイバータのダイバータ表面は下向きとなる)か、又は与えるのが困難な非重力手段であ
って、液体金属における「負圧」に起因して不均一な流れをもたらし得る非重力手段によ
って下向き表面に保持されるかのいずれかでなければならない。事実上、液体金属は「天
井」を流れなければならない。
【0009】
上側ダイバータ表面が下側ダイバータ表面に対して対称でなければ、流動液体金属をし
たダブルヌルダイバータを与えることができる。これは、対称磁場又は非対称磁場のいず
れかによって達成することができる。非対称磁場を使用することにより、ダイバータ表面
の位置決めにとって多くの設計自由度が得られるが、プラズマコアを実質対称に維持した
ままプラズマコアの外側に非対称磁場を与える必要性ゆえに、ポロイダル磁場コイルがさ
らに複雑になる。これとは対照的に、対称磁場を使用することにより、ダイバータ表面位
置は厳しい制約を受けるが、ポロイダル磁場コイルの設計は簡単になる。
【0010】
図3は、非対称磁場及びダブルヌルダイバータを有する典型的なトカマク300の断面
を示す。ここで、すべてのダイバータ表面が流動液体金属である。トカマク300は、中
心柱302を有するプラズマ容器を含む。トカマクは、プラズマコア自体311が実質対
称となるように、かつ、スクレイプオフ層312が各ダイバータ表面に向けられるように
、磁場を与えるべく構成されたポロイダル磁場コイルを含む。ダイバータ表面は、上側機
内ダイバータ表面321、上側機外ダイバータ表面322、下側機内ダイバータ表面32
3、及び下側機外ダイバータ表面324である。各ダイバータ表面は、
図4に示される構
造を有し、(内側に冷却チャネルを備えた)構造支持体401を含む。それを経由して液
体金属層402が流れる。この液体金属層は入口403から与えられて出口404へと排
出される。入口は、液体金属が重力を受けて流れるように出口の上方に配置される。ダイ
バータ表面を適所に維持するべく、さらなる支持構造体303が設けられる。(廃棄粒子
及びパワーの大部分を受ける)機外ダイバータ表面が、スクレイプオフ層312と、浅い
角度(例えば2度の角度が文献内で広く引用されてる。これは設計公差によって設定され
る)で交差するように配列される。トカマクはまた、(アクティブ制御システムがプラズ
マを制御できるようにするべく必要な)様々なプラズマ不安定性の成長速度を低下させる
ように作用するパッシブ安定化プレート304を含む。パッシブプレートの最適位置はヌ
ル点近くに存在し、このことは、実行する機能が異なっていてもダイバータシステムの設
計において考慮する必要がある。
【0011】
液体金属が流れる角度は、急なものから浅いものまである。実際のところ、ダイバータ
表面は、部分的に下向きになるように反転させることができる。液体金属の濡れ角及び表
面張力が重力を相殺することができれば、液体金属は表面の下側を流れる。これは、表面
と垂直との角度に依存する。表面、液体金属及び流量の所与の組み合わせに対する臨界角
が存在し、それを上回ると金属は下側を流れることができなくなる(この角度は90°と
なり得る。この点において液体金属は水平下向き表面であっても濡れる)。これよりも大
きな反転角度は、表面の濡れ面積を増大させることによって(例えば、表面の幾何学的形
状を改変することによって、又は表面にチャネル又は追加の粗さを与えることによって)
、液体金属との濡れ角が増大する表面を与えることによって、又は薄い液体金属流を使用
することによって、達成することができる。
【0012】
トカマクの動作中、電磁力が液体金属内に発生し、この電磁力を、液体金属に対する重
力の影響の相殺を補助するように設計することができる。これは、電流と磁場との相互作
用が重力を相殺するように、液体金属を流れる電流を与えることを含み得る。
【0013】
図6は、所定の流量における典型的なダイバータのための許容可能角度の一例を与える
。ダイバータ600は、円弧601(この円弧は当該表面に直交する線の方向を表す)に
よって表される角度範囲に配向され得る。点Bと点Cとの間の円弧のセグメントは、表面
が「一般に上向き」の箇所であり、この用語は、ここでの例において使用される。すなわ
ち、当該表面に直交する線が、上方に延びる成分を有する(たとえ、この成分が急勾配に
対する水平成分と比べて小さいとしても)。点Aと点Bとの間の円弧、及び点Cと点Dと
の間の円弧は、重力にかかわらず液体金属の流れが当該表面上に残るような角度で当該表
面が「一般に下向き」の例を表す。AとDとの間の円弧(BもCも通過しない)は、液体
金属が表面上に留まることができない例を表しており、これらの角度のダイバータは適切
ではない。
【0014】
表面及び液体金属の特定の構成にとって達成可能な反転角度(すなわち、垂直表面と比
較した表面の角度)は、試行錯誤によって決定し得る。例えば、これは、かかる表面を作
り出すことと、(使用中に予想されるものと同様の圧力、温度及び電磁条件にある)真空
チャンバ内のピボットにそれを固定することと、液体金属を、当該液体金属がもはや接着
しなくなるまで、一定角度範囲にわたって表面を経由して流すこととによって行うことが
できる。代替的に、達成可能な反転角度は、当技術分野で周知の適切なシミュレーション
によって、すなわち、濡れ効果及び磁気流体力学効果を考慮した流体シミュレーションに
よって、決定してもよい。
【0015】
液体金属は、径方向内向きに流れてよい。すなわち、各入口403を、対応出口404
の径方向外向きに配置してよい。これにより、液体金属の表面積を流れに沿って減少させ
ることができる(これは、ダイバータ表面が実質的に環状だからである。
図3が中心柱3
02まわりに円筒対称の物体を通る断面であることに留意されたい)。これもまた、機外
ダイバータ表面にとって重要となる。磁場が不在の場合、液体の厚さは流れに沿って増加
し、この効果は磁場の影響をあまり受けずに生じる。これにより、ダイバータがドライア
ウト(すなわち、例えばELMのような過渡的高熱流束事象に起因するダイバータからの
液体金属の実質的な部分が除去されること)から迅速に回復することができる。
図3にお
いてわかるように、機内ダイバータ表面322及び324に対してこれらの随意的な特徴
を達成することは特に難しい(実際のところ、機内上側ダイバータ表面322は、いずれ
の特徴も有していない)。
【0016】
図5に示される代替的な構成において、ポロイダル磁場は対称であり、機内ダイバータ
表面521、523は固体金属(例えばタングステン、モリブデン、又は当業界周知の任
意の他の適切な金属)から作られてよく、他の特徴は
図3と同じである。固体金属が液体
金属ダイバータよりも効果的ではないにもかかわらず、このことの懸念は、機内ダイバー
タにとって比較的少ない。これは、機内ダイバータが経験する熱流束が、機外ダイバータ
よりもかなり低いからである。さらなる代替例として、上側機内ダイバータ表面又は下側
機内ダイバータ表面の一方のみを固体金属から作り、他方のダイバータ表面を、上述のよ
うな液体金属ダイバータ表面としてよい。
【0017】
対称ポロイダル磁場の使用は、固体の機内ダイバータ表面を必要としないし、逆もまた
同様である。対称磁場を液体の機内ダイバータ表面とともに使用してよく、又は固体の機
内ダイバータ表面を非対称磁場とともに使用してよい。
【0018】
さらなる代替構成が
図7に示される。この例において、下側ダイバータ表面323、3
24が
図3と同じ構造を有するが、上側ダイバータ表面721、722は、上側機外ダイ
バータ表面が一般に下向きになるように配列される。
【0019】
前の例では、所与のダイバータ領域の全体(例えば上側機内ダイバータ表面又は下側機
外ダイバータ表面)が液体又は固体のいずれかであることが仮定された。しかしながら、
必ずしもそうである必要はない。
図8はハイブリッドダイバータを示す(下側ダイバータ
表面のみが示されるが、同じ原理がダブルヌルダイバータにも当てはまる)。ダイバータ
は、機内ストライクポイントダイバータ表面801、機外ストライクポイントダイバータ
表面802、機内遠方ダイバータ表面803、機外遠方ダイバータ表面804、機内プラ
イベートダイバータ表面805、及び機外プライベートダイバータ表面806を含む。
【0020】
ストライクポイントダイバータ表面801、802は固体であり、「ストライクポイン
ト」、すなわちヌル811に対応する磁束線810がダイバータに突き当たる位置、に配
置される。遠方ダイバータ表面803、804は、「遠方スクレイプオフ層」、すなわち
機内ストライクポイントダイバータ表面の機内側、及び機外ストライクポイントダイバー
タ表面の機外側のそれぞれ、に配置される。機内プライベートダイバータ表面805及び
機外プライベートダイバータ表面806は、「プライベート領域」、すなわち機内ストラ
イクポイントダイバータ表面と機外ストライクポイントダイバータ表面との間、に配置さ
れる。
【0021】
プライベートダイバータ表面と遠方ダイバータ表面との任意の(又はすべての)組み合
せを、前述のように、液体金属ダイバータ表面としてもよい。この配列により、液体金属
表面が与える付加的な粒子ポンピング(すなわちプラズマからスクレイプオフ層粒子を除
去すること)との組み合わせにおいて、(ピーク熱流束が液体の流れを破壊する程度に十
分に高い場合の)固体ダイバータ表面の高熱流束への耐性の良好なバランスが得られる。
この配列が機能するのは、ダイバータ上の熱流束がストライクポイントからの距離に対し
てほぼ指数関数的に減衰するからである。それゆえ、ストライクポイントにおけるピーク
熱流束が過度に高い場合でも、依然として液体金属ダイバータ表面を、ストライクポイン
トから遠方に離れたところで使用することができる。
【0022】
一代替例として、機内ストライクポイントダイバータ表面と機外ストライクポイントダ
イバータ表面との間に延びる単一のプライベートダイバータ表面を設けてもよい。
【0023】
図9は、液体金属ダイバータ表面とともに使用するための液体金属循環システムの模式
的な例示である。液体金属ダイバータ910は、入口911及び出口912を有する。循
環システムは、ポンプ901及びリザーバ902(プラス関連コンジット及びバルブ)を
含む。リザーバ901は、重力に起因して、一定流量で液体金属を入口911に供給する
。出口912から出る液体金属は、ポンプ901を介してリザーバ901に戻される。
【0024】
代替的に、ポンプを含むがリザーバは含まないシステムを使用してもよい(このときポ
ンプが液体金属を出口912から入口911まで直接供給する)。一般に、一定流量を与
える任意の液体金属供給システムが適切である。特に、下向きダイバータ表面を設計する
とき、流量は、下向き表面を配置できる角度を部分的に決定する。
【0025】
液体金属供給源は、上述した循環システムとしてよく、外部供給源から定期的に補充さ
れるリザーバを含んでもよい。
【0026】
クリーニング手段及び/又はフィルタ手段を、液体金属からあらゆる廃棄物を洗浄する
べく液体金属循環システム内に設けてもよい。代替的又は追加的に、循環システムは、当
該循環システムから液体金属を除去するポート、及び廃棄物が存在しない液体金属と交換
するポートを含んでよい。
【0027】
リチウムは、最低原子番号である(ひいては、プラズマの汚染を最小限に抑える)から
、液体金属ダイバータ表面にとって好ましい金属である。一代替例として、適切に低い原
子番号を有する錫又は他の金属を使用してよい。または、錫・リチウムのような組み合わ
せでもよい。